八幡「荒廃した世界で」 (8)
ちょうど俺がアメリカに単身、旅行していた時のことだ。某国の実験と呈した核攻撃をきっかけに第三次世界大戦の火蓋が切って落とされた。
国家間の関係がその大戦によって崩れていった。中立や立場を曖昧にしていた国家も、もはやその立ち位置を決めなければならなくなり、やがて世界は二極化された。世界終末へのカウントダウンはその時から、既に始まっていたのだった。
大戦末期の状況については詳しく知らない。日本に帰れなくなっていたから、俺はアメリカで約2年間を過ごしていたし、そこでは強制的に軍に参加させられていた。
だから最初にどちらがそのスイッチを押したのかはわからない。それに今では知りようもなくなってしまった。それぞれの発射管から放たれた無数の核ミサイルは、対象国のみならず世界を核の嵐で襲い、あらゆる生命と文明を破壊してまわった。そして地球は、人の住むことの困難な環境になってしまった。
そんな世界になってもなお、俺はその捻くれた性格と悪運の強さから、もうかれこれ5年も生きてこられていた。死にそうな目にも多々あったが、毎回そういう時に限って持ち前の懐疑心、猜疑心によって救われた。
この5年で俺は、この世界で生き残るには人を疑う心が最も重要であることを学んだ。それは俺が変わらず持ち続けていたポリシーにちょうどマッチしていた。そうわかってからだ。前よりも生きやすいと、俺は少しばかり感じはじめていた。新世界は、俺がありのままに生きることを許してくれたのだった。
そして今、俺は自分の故郷である日本へ帰ってきていた。その目的は自分の家族、特に小町を見つけるためだ。生きてなくとも、せめてその痕跡だけは知りたい。俺が日本を離れて、すでに8年が経っていた。
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メインは小林さんちのメイドラゴンであり、俺ガイル勢からは八幡しか出ない予定です。
ハチマン:全体的に濁った色をしているドラゴン(雄)(見た目はパ〇ドラのヴリトラを想像していただければと)。混沌勢に属し、実力も上位に属するが、基本自ら破壊は行わない。
トールやルコアのように自前でマナを生成し、魔翌翌翌翌翌翌翌翌翌翌翌翌翌翌翌力に変換することができる。
基本的にドラゴンも人間も嫌い。(例外あり)
小林家に住まわせてもらう代わりに、小林の職場で働く。
トール:原作通り、人間を劣等種と見下している。
ハチマンとの関わりを持つ数少ないドラゴンであり、いろいろあって彼を好いている。
カンナ:ハチマンとの関わりを持つ…(ry
彼のことを兄のように慕っている。
ファフニール:原作通り。引きこもり…ヒッキー…ハッ!!((察し
彼らは気が合うだろう…
ルコア:原作通り。ハチマンの事を気に入っているが、彼には苦手意識を持たれている。
エルマ:調和勢。活動の少ないハチマンとの面識はない。
小林:ドラゴン2人を養い、小学校にも通わせる、その財力はどこから来るのか…謎だ。
今作品ではハチマンも共に暮らす。
滝谷真:原作通り。
その他:基本は原作通りとさせていただきます。
(……スカイツリーがない)
ちょうど俺が日本を出る1年前くらいに、スカイツリーが完成したんだっけか。あんまりよく覚えていないが、東京の街では一番高く見えたから印象に残っていた。
今俺は当時京葉線の走っていた駅のホームに立っている。剥き出しの鉄筋や、崩れかけのコンクリートからでは、そこが駅であったかどうかはわからないが、あらかたひらけた作りになっていて、一段下の高架橋沿いに線路が見えるので、恐らく駅なんだろう。場所からして考えると、八丁堀駅だ。昔はここからスカイツリーがよく見えた。
俺はそんな日本の象徴ともいえる建物の変わりように、少しの感慨も浮かばなかった。ここに来るまでにそういった予想はできていたし、戦争が起きて世界が滅んでしまったという事実を、俺はとうの昔に受け入れていた。そもそも、俺はスカイツリーに行ったことない。だから思い出なかったし、行きたいなんてこれっぽっちも考えたことがなかった。
スカイツリー(のあった場所)を横目に、俺は自分の家のあった場所、幕張方面へと歩きはじめた。電車なら2、30分で着くはずだが、徒歩だと恐らく5、6時間かそれ以上かかるだろう。昔なら気が遠くなっていたかもしれないし、俺は運動部ではなかったから、まず無理だ。
しかしこの世界の主な交通手段は徒歩だ。車やバイクも存在するが、その動力となるガソリンがなかなか手に入らないため、殆どのサバイバーたちは歩きでそれぞれの目的地へと向かう。俺もそんな世界で5年も生き抜いてきた。5時間歩くことなど日常茶飯事だった。
2時間ほど歩くと、某テーマパークらしきものが見えてきた。流石の俺も歩いていた線路から外れて、テーマパークへと向かった。少し胸が弾んでいた。
某テーマパークの最寄駅は当然のごとく閑散としていた。乗り捨てられた車やバスは横転したまま、道路や歩道に横たわっていた。白骨化した亡骸も近くにちらほら見られた。
駅の近くにはホテルや商業施設の入った建物などが散在していて、物資を確保するにはうってつけの場所だったが、既に十分すぎるほど荷に入れて背負っていたので、今回はそのまま通り過ぎてテーマパークのゲートへと向かった。恐らくそうでなくとも既に他の誰かに漁られていて、目ぼしいものは見つからなかっただろう。
俺は高校生の頃、一度だけ部活の奴らとその他もろもろとで行ったことがある。まあなんとなく楽しかった思い出だ。今思えばみんなとどこかへ行くなんて、当時の俺は高校生らしい青春(?)を送っていたのかもしれない。最も、その青春について否定的であれこれ御託を並べていた恥ずかしい記憶もあった。とにかくその1ページにこのテーマパークに訪れたことも含まれているだろう。俺はごく普通の、もしくは人より充実した生活を送る、一高校生だったのだ。
テーマパークのゲートは蔦の伸びた草木が茂って、それが各入口に簾のように垂れていた。しかし、二、三箇所だけその幕が綺麗にはけてあって、飛び出した枝の数々が綺麗に整えられているようだった。人の手によるものだとすぐに分かった。
俺は警戒して歩みを止めた。よく見れば奥の方にバリケードのようなものが張られているのも見えた。明らかにここで人々が暮らしている、もしくはコミュニティを築いている跡だった。
(面倒はごめんだ)
俺は元来た道を引き返すことにした。大抵こういうところでは規模の大きいコミュニティができていて、一見よその生存者達に寛容であるが、細かな決まりや隠し事などが裏に存在する厄介な場所でもある。だからなるべく触れない、接触しても必要以上に関わらないのが、この世界を生き抜く教訓であった。それはこの5年で培われたものだった。
そう考えて踵を返した時だ。後ろから俺を呼ぶ声がした。
てす
てす
見てるぞ
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