先生「ﾃﾞｱﾙｶﾗｼﾃ〜」

僕はボ〜っと外を眺めてる。外は春本番の陽気。
あ、ここ中学一年の教室ね。
目の前の先生の声は僕にとっちゃただの騒音でしかないや。
こんな天気だ。僕のような健全な若者は授業などというものに縛られないで、お友達とピクニックでもして過ごすべきだね。
君もそう思わないかい？

おや、左斜め前の女子が左隣の男子にちょっかいかけてる。
イチャコラするんじゃない。まだ授業中だぞ。そのうち先生に…
……あーあ。
男子がうるさいって先生に怒られてやんの。
女の子爆笑してる。
この二人いいコンビだよね。ほんと。

右斜め前の女子は授業に夢中。

髪は紫ツインテ。入学直後の実力テスト、学年トップの秀才らしい。

何でも過疎の村出身らしくて、小学校卒業した時他に生徒いなかったんだって。

結構変わった子だけど、そのシュールさが皆にウケて、早くもクラスの人気者になってるよね。

あ、あと、僕ともよく遊んでくれる。

前の席の女子もツインテだけど黒髪。

こっちは実力テスト学年2位だって。

ほんと、この辺りの席は当たりだね。

わからない問題聞くのに苦労しないわ。

この子は前の席の赤髪女子とよくつるんでるな。あ、あれ、赤髪「女子」で良かったよね？

ずっと赤髪の子見てるなこの子。1分のうちおよそ20秒黒板、10秒ノート見て、あとの30秒ずっと赤髪見てるや。

ほんと仲いいんだな。

当の赤髪は今にも寝そうだけど。おーい。

とまぁ、暇だから周りの生徒ちゃんの観察しちゃった。

あ、僕は逢瀬無心。おうせ、じゃなくて、あおせ、ね。

新学期になるとほぼ100%先生におうせ呼ばわりされる苗字ね多分。



早く休み時間なんないかな。

こちとら授業中は教室眺めてるか、外眺めてるか、早弁するかの３択なんだ。

授業なんてわかんねーし。

早くみんなと遊びたいや。

あ、チャイム鳴った。授業終わった。

遊ぼうぜｲｴ-ｲ。



ｼﾞﾘﾘﾘﾘﾘﾘ



ん？なんだこのけたたましい騒音は？

ん？なんで皆机の下に入ってる？

???

冬眠ですか〜？もう春ですよ〜。



お？机の下から出てきて今度は外へ駆け出していったぞ。

何か黒板に書いてあるな。

お？は？し？も？

なんだこれ。

まぁ、いいか。休み時間だし早弁しよう。今日も美味そうだなぁ。弁当。

あ、みんな帰ってきた。

今度こそ遊ぼーぜ。


え、次教室移動だって？もう移動するのか。

はぁ。遊べないし。つまんない。

今日みんな冷たい。




僕しばらく寝るよ。

授業？そんなの知らない。

僕はふて寝する。誰がなんと言おうと。




おやすみ。



また今度遊ぼう。




今度、ね。

こ、こら。脇腹をツンツンするんじゃない。

眠たいんだから寝かせてくれよ。

ほんと、こっちが遊びたいときに遊んでくれないのに、なんなんだよ、ほんと。



授業？なもん知らねーわ。

こちとら成長期なんですぅ。

成長期は睡眠第一なんですぅ。

ってことで、寝るわおやすみ。

先生がなんか言ってきたらテキトーにごまかしといて。




しばらく起きないし。多分。

ｳｳﾜｧｧｧ、よく寝た。

体が軽い。やっぱり睡眠大事。

…って何だよ。何で皆僕の周りに集まってるんだ？



…そうか？僕の目覚めを祝福してくれているんだね、ありがとう。

僕も寝てる間に大人の体に変身してるようだし、ここもそろそろ卒業かな。



面白かったよ。君たちの学校生活眺めてて。

君たちと遊んでて。



僕を拾ってくれてありがとう、紫ツインテよ。

僕の子も君みたいな子に拾われて、君たちのような人間と触れ合えたら良いな。

でも僕の名前が「逢瀬無心」はないでしょ。

どこぞの武士だよ。

どこぞの悟った強者だよ。



何はともあれ、サヨナラだね。

お互い、これからも頑張っていこうぜ。

黒ﾂｲﾝﾃ「そういえばなんで逢瀬無心なんて名前付けたの？」


紫ﾂｲﾝﾃ「良い質問なん。ズバリ、栓抜き、なんなー。」



おしまい