【モバマス】「ウサミンロボのクリスマス」 (16)


 【モバマスSS】です。

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 つけっぱなしのテレビからジングルベルの唄が聞こえます。
 事務所では、ちひろさんとモバPが書類仕事をこなしていました。

「世間はすっかりクリスマス一色ですね」

 ちひろさんの言葉に、モバPは当たり前のように返します。

「そりゃあ、12月24日ですからね」

「今年はサンタさん、行けそうですか?」

 モバPは、ちひろさんの問いに懐かしげに首を振ります。

「あー、去年は頑張って、小学生アイドルに配ろうとしましたよね」


「途中でイヴちゃんに怒られましたけどね」

「本気で怒っていたわけじゃないですけれど、来年からはプロに任せろって言ってましたよね」

「サンタのプロなんですよね、彼女……」

「彼女というか彼女の一族というか……」

「とりあえず、イヴのリクエストで、屋上には煙突作ってありますから」

「あー、女子寮の突貫工事って……」

「はい。空調ダクトを煙突もどきに改造しました」


 その時、盛大な音が響きました。
 どんがらがっしゃんと事務所の外壁を何かが転がっていく音です。

 まるで、何者かが煙突から入ろうとして失敗して転げ落ちていくような音です。

 うさーーーーーー!

 上から下へ、流れるような悲鳴も聞こえます。
 そして地面との激突音も。

「ちひろさん、今のって」

「うさっ、て叫んでましたね」

 モバPは、窓を開けて外を見、そして、下に顔を向けます。


 サンタ服を着たウサミンロボが、めり込んでいた地面から起き上がって駆け出していくところでした。

「ウサミンロボでした」

 コーヒーを入れるために立ち上がっていたちひろさんに言います。

「ロボちゃん何やってんでしょうね。あ、コーヒーどうします?」

「ミルク無しで砂糖多め、お願いします」

「はーい」

 そのとき、机の上の電話が鳴ります。
 ポットを片手に持ったまま、ちひろさんが受話器を取りました。

「はい、もしもし」


 ポットを置くちひろさん。

「はい、はい、え、はい、わかりました」

 受話器を置くと、再びポットを手にとってちひろさんはモバPのカップを準備します。

「電話、何だったんですか?」

「女子寮からです」

「何かありました?」

「どんがらがっしゃんと寮の外壁を何かが転がっていく音がしたそうです」
「まるで、何者かが煙突から入ろうとして失敗して転げ落ちていくような音だったそうですよ」


「あ、もしかして」

「あいさんが外を覗いたところ、走って行くウサミンロボの後ろ姿が見えたそうです」

「サンタ服は」

「着てたそうです」

 ちひろさんはコーヒーを煎れ、モバPは無言で受け取りました。
 そして一口。

 ♪~素直に追いかけて
 ♪~勇気で追いかけて

 モバPのスマホの歌詞付き着メロです。


 モバPはちひろさんから投げかけられる殺気にも似た鋭い視線を浴びながらメールをチェックしました。

 メールを読み終わると、コーヒーをさらに一口飲みます。

「未央からのメールでした」

「内容を聞いてもいいですか?」

「今夜はオフで、自宅で家族と過ごしているはずなんですけどね」

「まさか」

「どんがらがっしゃんとマンションの外壁を何かが転がっていく音がしたそうです」
「まるで、何者かが煙突から入ろうとして失敗して転げ落ちていくような音だったそうですよ」


「……あの、未央ちゃんの家に煙突はないと思うんですが」

「やっぱり、空調ダクトではないかと」

「はあ、あの、もしかして」

「お兄さんが外を見たところ、サンタ服を着たウサミンロボが逃げ出していったそうです」

「ああ……」

「やっぱり、もう少し考えるべきだったんでしょうか……」

 モバPはコーヒーを飲みきりました。


「しかし、スポンサーからのたっての要望だったんです」

 ちひろさんは首を振ります。

「プロデューサーだけのせいじゃありませんよ」

「いや、これは俺のミスです。こんな日に、イヴに生放送の仕事を入れるなんて……」

「つまりイヴちゃんは、サンタのお仕事の一部ををウサミンロボ部隊に委託したんですね?」

「はい」

「失敗してるみたいですけれど」


「サンタ服を着慣れていないせいで、ことごとく失敗しているようですね」

「あの、さっきの未央ちゃんで」

「事務所と女子寮を含めて十軒目です」

「あ……」

「桃華の家と巴の家ではそれぞれボディガードと若い衆総出で追われたようです」

「反撃は、してないですよね」

「アイドル関係者ですから、それはありません。しかし、無事逃げ切ったことでボディガードや若い衆の方々が自信を失ったそうで……」


「仕方ありませんよ、相手はウサミン科学の粋を尽くしたスーパーロボットです」

「これ以上騒ぎが大きくなる前に何とかしましょう」

 どんがらがっしゃん

 再びの落下音にちひろさんが窓の外を見ると、ウサミンロボの後ろ姿が見えます。

「再チャレンジしているようですね」

「ロボちゃんは真面目だから、成功するまでやり続けますよ、これ」

「すぐに晶葉と菜々に連絡しましょう」


「やめさせるんですか? それはそれでイヴちゃんが困るのでは?」

「いえ、方法を変えさせます」

 モバPはすぐに晶葉と菜々さんに連絡を取りました。

「すまんが、ウサミンロボ達に伝えてくれ。玄関から堂々入れ、と」

 そして数分後。



 未央の家のチャイムが鳴りました。
 事務所正面玄関のインターホンが鳴りました。
 女子寮の受付にウサミンロボがフリーパスで入りました。

 うさっ!

 うさの元気なご挨拶と共に、ウサミンロボ達が次々と寮の部屋、事務所、そしてアイドル達の自宅にお邪魔してプレゼントを配っていきます。

 家によっては突然の珍客に大喜びです。

 こうしてウサミンロボは無事、イヴのお仕事のお手伝いが出来たのでした。






   終われ


ちょっと(かなり)短いけど、夜になってからなんとか間に合わせた。
後悔はしていない。




 
 冬コミ出ます。

 前にこちらで投下した
「超攻速ウサミンロボ」
「ウサミンロボと海を行く」
「空飛ぶウサミンロボ」
 の三本を、台本形式から書き換えて繋げて加筆再編集しました。

「ウサミン星から海陸空へ」
 三日目て-07bで頒布します。
 他サークル様のついででもあれば、よろしく


乙っす。
やっつけ感が。

いやおたくのサークルのついでにサークル巡りしている人もいるかもよ?

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