【艦これ】鳳翔「天龍型と提督の居酒屋での記録」 (81)




澤野弘之氏の「A LETTER」という曲を聞いて、ふと出来上がりました。




ぜひ曲を聞きながら読んでくださると、幸いです。

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天龍『・・・なんだよ、撮るなよ。・・・・は?記念?やめろやめろ』

天龍『いや別に嫌じゃないけどよ、なんか、恥ずかしいだろ』

天龍『は?怖がってねぇよ!あほか。いやだから別に嫌なわけじゃないって、いや恥ずかしいけどよ』

天龍『あーもういいよ、勝手にしろ・・・・ったく』


天龍『ていうか龍田はおっせえよ、もうさきにふたりではじめるか?』

天龍『・・・わかってるって、待てるよ。ったく堅えやつだな、冗談だよ』


天龍『外は雨だな』

天龍『どしゃぶりだ、どしゃぶり』

天龍『・・・お、電たちがずぶぬれで走ってるぞ、手ぇ振ってやるか、はははっ』


天龍『・・・・・・』

天龍『・・・は?いや・・・提督お前な・・・・俺だって物思いにふけることだってあるわ』

天龍『とくに雨を見ているとな』


天龍『ここの雨は美しいな』

天龍『・・・おいなに笑ってんだよ。ガラじゃないって?はんっ、ギャップだよギャップ』

天龍『雨でも、虹でも、夕焼けでも、美人でも、綺麗なもんは綺麗なんだ』

天龍『それはぜひとも口にすべきだ。恥ずかしがることなんてないんだぜ』


龍田『ごめんなさぁ~い、遅くなっちゃって~』

天龍『おっせえよ、なにやってたんだよ』

龍田『ちょっと解剖のお手伝いを~』

天龍『おうお疲れ!俺らも今来たとこだから!』

龍田『うふふ』


天龍『鳳翔さん枝豆と生みっつー』

龍田『ふたりで何話してたの~?』

天龍『提督がお前の事好きだってよ』

龍田『あら~そうなの~?私もお慕い申しております~』

天龍『ははは、あほだ』

ザァァァァ・・・

龍田『綺麗な雨ねぇ~』

天龍『ああ、そうだな』


瑞鶴『もぉ~なによこの雨~!服ぬれちゃったぁ~』

翔鶴『鳳翔さん、すこし雨宿りさせてください』

天龍『よお』

瑞鶴『あっ!て、天龍一尉!』ビシッ

天龍『かしこまらなくていいぞ、俺ら非番だから』


瑞鶴『し、しかし・・・ひえっ、二尉と一佐までいるし・・・・』

翔鶴『あ、あの・・・・す、すみません、お邪魔しました!』

天龍『あ、お、おい・・・』

龍田『天龍ちゃん嫌われた~』

天龍『なんでだよ・・・』


天龍『提督も笑うなよな。ったく、階級なんてあがるもんじゃねえぜ』

龍田『あら、私は好きよ。いろいろ権限がふえるじゃない~』

天龍『俺は海で戦えりゃそれでいいんだ』


天龍『それにしてもよ、龍田に後輩が懐かねえのはわかるけどさ、俺にまで懐かねえのはおかしいだろ、俺そんなに怖いか?』

龍田『俺様は天龍~ふふ~こわいか~?』

天龍『やめろ!過去をほじくりかえすな!』

龍田『自分でいってたことじゃないの~』

天龍『若気の至りだ。あのころは、なんつーか、こう、いろいろと先走ってたからな・・・』


龍田『天龍ちゃんつよいもの、みんな怖くて近づけないのよ』

天龍『あ~・・・・・まあな・・・・だけど複雑だな・・・・』

龍田『駆逐の子たちには人気じゃない~』

天龍『そうだけどよ・・・そうだけどよ・・・!』


鳳翔『おまたせしました』

天龍『なあ鳳翔さん、俺ってやっぱ近づきにくいっすかね』

鳳翔『そうですねぇ・・・最近入ってきた子はやっぱり近づきにくいんじゃないかしら』

天龍『おぉい・・・まじかよ・・・・』

龍田『ふざけて敵の内臓ちぎったりするからよ~』

天龍『そりゃお前だろ』

龍田『そうだったかしら~』


鳳翔『上下関係もありますしね、天龍さんたち、ここで戦って長いでしょう?』

天龍『何年たつんだ提督?・・・・十三年!?もうそんなたつのか!いや驚いたな・・・』

龍田『この鎮守府が出来てからずっといるものね~』

天龍『そういや提督もだいぶ老けたな・・・・デコも広くなってるし・・・・・いや、そんなに落ち込むなよ』


鳳翔『ふふふ、私は昔の天龍さんたちも、いまの天龍さんたちも好きですよ。とてもあったかい人たちです』

天龍『いや鳳翔さん、こいつは違いますって。だまされちゃいけませんよ』

龍田『あら~?奥歯ガタガタいわせるわよぉ~?』

鳳翔『龍田さんはとても優しい方ですよ。とてもみんなのことを気にかけていらっしゃいますから』

龍田『やだ~もう~・・・照れるわぁ~』

天龍『おっ、まじ照れだ。珍しいな、おい提督、撮っておけよ、めったにみられないぞ』

龍田『いや~いじわる~』


龍田『もう~それより乾杯しましょう~』

天龍『ははは、そうだな。よっしゃ』


天龍『乾杯』

キィン………


天龍『かぁーッ!やっぱ働いた後の一杯は最高だな!』

龍田『天龍ちゃんおじさんくさい~』

天龍『うるせっ、俺よりこいつの方がよっぽどじじいだろ』

龍田『提督はおじさんでもすてきですよ~』

天龍『ははは!だってよ、おっさん。おいおい、だから落ち込むなって』

龍田『時間は止められないですものね~』


天龍『俺らがここにきてから、もう十三年も経つのか………』

龍田『まるで昨日のことのようね~』

天龍『初めの頃は、ほんと何にも無かったよな。施設も物資も、いつでも不足していた』

龍田『提督室に机すら無かったものね~』

天龍『そうそう、最初提督どこで書類書いてたっけ』

龍田『ダンボールの上よ~』

天龍『はははは!そうだった、そうだった!あのころは本当みじめだったよなぁー』


天龍『俺らが寝る部屋すらなかったもんな』

龍田『提督室でみんなで雑魚寝してたわね~』

天龍『駆逐の奴らも提督も一緒になってな。雷の寝言がうるせえのなんのって』

龍田『あの子、夜中に突然爆笑するのよ~?びっくりして毎回起こされてたわ~』

天龍『あはは、そうだったなぁ。あいつが笑うと俺らもつられて笑ってたっけか』


龍田『も~笑い事じゃなかったのよ~?不眠症になりかけたんだから~』

天龍『だからお前、いつも目の下に隈つくってたのか』

龍田『そうよ~、でも原因は雷ちゃんだけじゃなかったのよ~』

天龍『あっ!誰かわかった!提督もわかったよな!』

龍田『じゃあ、いっせーので言いましょう?いっせーの』


『暁!』

天龍『はははは!』

龍田『ふふふ~』


天龍『あいつ、夜中にひとりで小便いけなかったもんな~』

龍田『そうよ~、毎回私がついていってあげてたのよ~?』

天龍『そうだったのか。いやー俺と提督、いっつも爆睡してたから気付かなかったわ』

龍田『人が眠い目こすって頑張ってたのに~、あなたたちは気持ちよく眠っちゃって~』

天龍『あの頃はやらねえといけねえ事いっぱいあったからなぁ。夜になると疲れてすぐ寝てた』

龍田『私も疲れてたのに~、ひどいわ~』

天龍『お前はデリケートすぎんだよ』


天龍『暁かぁ。ほんとなつかしいな』

龍田『ええ、そうね~』

天龍『あいつは何かと手を焼かせる奴だったよ』

龍田『一人前のレディを目指して、いつもから回りしてたわよね~』

天龍『失敗しては半べそかいてたな、かわいいやつだよ』

龍田『ほんとにねぇ』


天龍『でも本当、いい奴だ。優しくて、芯は強い子だ』

龍田『そうねぇ~』

天龍『なんだったけな………ほら、あれだよ………暁がリ級を庇ったあれ』

龍田『………補給路C作戦?』

天龍『ああ、そうだ…………C作戦…………』


天龍『補給路の確保に俺達が向かって、はじめは順調だったよな』

龍田『ええ、提督の指揮も的確だったし、いつもと変わらない退屈な作戦だったわ』

天龍『敵艦隊を破って………帰路の途中に、奇襲にあったんだったな』

龍田『ええ、重巡三隻に、駆逐三隻。突然のことで対応が遅れちゃったのよね』

天龍『………提督の責任じゃねえよ。あれは誰にも予想できなかった』

天龍『………いや、予想できたかもしれねえけど、あの頃はみんな経験を積んでなかったからな』


天龍『死にもの狂いで戦って………弾薬も燃料も底をつきかけたころ、やっと終わった』

龍田『………みっともない戦い方だったわねぇ』

天龍『ああ、あの頃はみんな弱かった。誰も責められねえよ』

天龍『…………雷が沈んだのは、俺達が弱かったからだ』

龍田『………戦争だから、仕方のないことだったのかもしれないわね』

天龍『そうだな………俺達は戦場にいるんだ。みんなが無事って訳にはいかねえさ』


天龍『………そんな理屈、頭では分かってたさ。でも納得できなかった』

天龍『どいつが雷を沈めたのか分からねえのに、俺達は生き残った一匹のリ級をふくろ叩きにした』

龍田『………野蛮だったわね。でも………私は止められなかった』

天龍『俺もさ。電と響が蛮声をあげて一匹のリ級をリンチしているのを、俺はただボーっと眺めてただけだったよ』


天龍『そんとき、俺ら泣いてたっけなぁ。ああ、泣いてたなぁ』

天龍『俺も、龍田も、電も、暁も、響も』

天龍『リ級も』

天龍『訳わかんねえよなぁ。何も考えちゃいねえはずのに、ただ涙だけが流れるんだもんなぁ』


天龍『リ級の身体中が腫れあがって、顔の見分けがつかなくなったころ、こいつを処刑しようって、電が言ったよな』

龍田『そうねぇ。そのとき私達、なんて言ったかしら』

天龍『さあ、覚えてねえな。ボーっと見てたんじゃねえか?』

龍田『そうだったかもしれないわね。私達、何もできなかったものねぇ』

天龍『普段はあねごぶって、あいつらの面倒を見ている気でいたが、いざってときは頭すら動かなかったもんな』


天龍『響がリ級を口汚く罵って、電が折れた単装砲をリ級の頭に向けたとき、』

天龍『暁が電達の前に両手を広げて立ちふさがった』

天龍『あんとき暁が言ったセリフが忘れられねえ。ヒーローもびっくりのセリフ回しだった』


天龍『撃つなら私を撃ちなさい』

天龍『すべての憎しみを込めて撃ちなさい。二度と誰かを恨むことのないように』

天龍『憎しみではじめた戦いは、誰かを憎しみ終えるまで終わらない』

天龍『それはきっと、人も、深海棲艦も、いっしょ』

天龍『だったら、そんな哀しさだけが広がる前にここで終わらせて』

天龍『怨念返しは、もうたくさん』


龍田『…………ふふふ』

天龍『…………ククク、あの暁が言ったんだぞ?』

天龍『夜中にひとりでトイレにも行けない怖がりが、なけなしの勇気を振り絞って言ってのけたんだ』

天龍『あいつだって、殺したいほどリ級を憎んでいただろうに。それでも、』

天龍『善悪の向こうを、暁は見つけていたんだ』


天龍『俺もいままで結構戦ってきたけどよ、敵を沈めるたびに、仲間が沈むたびに暁の言葉を思い出す』

天龍『怨念返しは、もうたくさん、か』

龍田『それからの暁ちゃんたち、成長したものね』

天龍『頼りなかったガキ共が、今じゃ駆逐達のあこがれの的だもんなぁ』

天龍『十三年も戦って生き延びてりゃ、そうなるか』

龍田『あら、それって自慢~?』

天龍『ちゃかすなよ!』


ザァァァァ…………

『もう何なのよ!この雨!』

『ずぶぬれなのです………』

『鳳翔さん、雨宿りしてもいいかな』

鳳翔『もちろん。奥にかけてください。今お茶を用意しますね』

『レディは髪の毛が命なのに~!』

『夜中にひとりでトイレに行けない怖がりはレディとは程遠いのです』トテトテ

『言えてるね』スタスタ

『ちょ、ちょっと!いつの話をしてるのよぉ!―――――』タタタッ………

天龍『………ふふ』


ザァァァァ………

天龍『雷と、暁達に』

龍田『雷と、暁達に』

天龍『………』グビッ

龍田『………』ゴクッ


天龍『それにしてもよ、十年以上も戦い続けてるのに未だに戦争が終わらねえってのはどういうことなんだよ』

龍田『戦局は良くなってるじゃない~、深海棲艦側の一部とコンタクトも取れたし、そろそろじゃないの~?』

天龍『それ前にも聞いた』

龍田『そうだったかしら~』


天龍『そろそろ俺らも限界だっつーの。あっちは新型がバンバン出てくんのに、こっちは間に合わせの装備に旧式の艤装で立ち向かってんだからよー』

天龍『い、いや、別に提督を責めてるわけじゃねえって!お前はよくやってるよ、現にこうして俺らが生きていて、酒を飲んでるんだからさ』

天龍『でもよ、愚痴りたくもなるぜ。死ぬか生きるかの瀬戸際を十年以上、行ったり来たりしてんだからよ』

龍田『私達、何回死にかけたっけ~?』

天龍『数えたこともねえな』

龍田『ふふふ~』


天龍『ほんと、こうして生きてることに幸運の女神のキスを感じざるを得ねえよ。長生きしてるよなぁ』

龍田『提督の指揮のおかげね~』

天龍『いまだにうずしおに突っ込まされるけどな』

龍田『え~?楽しいじゃない~あれ~』

天龍『お前だけだっつーの………』


天龍『えっ?戦いが終わったら何したいかって?』

天龍『うーん………龍田は?』

龍田『私はね~看護師になりたいわ~。沢山の人を癒してあげたいわ~』

天龍『はっ、お前が?無理無理』

龍田『ひど~い、天龍ちゃんが怪我しても治療してあげないから~』

天龍『メスで愉快に斬り刻むのは治療とは言わないんだぞ?』


天龍『俺はな~…………そうだなぁ~…………保育士!保育士になりてえ!』

龍田『………ぷっ』

天龍『あぁ!笑うなよ!おい、提督も笑うなって!』

天龍『ったくよー………せっかく答えたのによー…………ガラじゃねえのはわかってるっつーの………』

龍田『いいえ、似合わないから笑ったわけじゃないのよ』

天龍『ならなんだよ』

龍田『あんまり天龍ちゃんが優しいから~』

天龍『それ笑うところじゃねえだろ』


天龍『でもまぁ、きっとなれねえだろうなぁ』

天龍『どうしてかって?そりゃ俺はこのままずっと艦娘として戦い続けるからだよ』

天龍『戦争ってのは終わんねえよ。人がいがみ合い続ける限りなぁ』

天龍『ましてやその人間様はどんどん増えやがんだから、なおさらな』

龍田『でも、深海棲艦との戦いはいつかは終わるんじゃないの~?』


天龍『そりゃ終わるだろうよ。あっちだって感情のねえモンスターじゃねえんだ』

天龍『戦い続けるのは辛いだろうし、いつかは休戦になるだろうな』

天龍『でもよ、人同士の争いは永遠に消えやしねえよ』

天龍『近頃じゃ、ちらほら水を求める紛争が起こってる。人は水が無きゃ、生きていけねえからな』

天龍『人はようやく水の上を走れるようになったってのに、皮肉なこった』


天龍『人が争う理由なんてそこらへんにいくつも転がってる』

天龍『土地、水、食料、金、社会への不満、恨み、数えだしたらきりがねえ』

天龍『理由が小さけりゃ喧嘩、大きけりゃ戦争さ』

龍田『そうね~戦争が無い時代なんて無いものね~』

天龍『だから俺らは戦い続けなきゃいけないのさ。兵器だからな』


天龍『………悲しそうな顔すんなよ、提督。しょうがねえじゃねえか』

天龍『俺らは兵器だ。それも効率の良い兵器だ。それはお前も分かってるだろう?』

天龍『いくら道徳や倫理を叫んだところで、社会は体のいい理由をつけて俺らの叫びを跳ね返しやがる』

天龍『そんなもんだろ、人間なんてさ』


天龍『近頃じゃ、俺達はネットでアイドル扱いさ。武器を片手に海を駆ける可憐な少女達、へっ』

龍田『天龍ちゃん、ヘタレだしかわいいものね~』

天龍『俺はヘタレでもねえし、かわいくもねえ!』

龍田『そういうところがかわいいのよ~』


天龍『メスガキに武器持たせて喜んでる奴らに道徳や倫理を求めたって、どうしようもねえだろ。そんなもんなんだよ』

龍田『ずいぶん悲観的なのね、天龍ちゃん』

天龍『酔ってるからなぁ。悪いな』

龍田『いいのよ~毒抜きしたって~』

天龍『こんなこと、お前らにしか言えねえしな。溜まるんだよ』


天龍『ん?………ちょ、ちょちょ!なに、なにやってんだよ提督!頭をあげろって!もう遅いんだし他の奴らが見てるぞ!』

龍田『ダメよ提督~、立場があるでしょう~?』

天龍『別に気にしてねえって!別に世の中のいっさいを白い目で見てるわけじゃねえんだからよ!だから顔上げてくれって!』

龍田『ごめんなさいね、みなさん~、提督酔ってるのよ~』


天龍『ったくよー…………ひやひやさせんなよな』

天龍『だからぁ~、言っただろ?世の中のことは嫌いじゃねえよ』

天龍『たしかに、そんなに綺麗な所じゃねえけどよ、急いで出ていくほど腐ってるわけでもねえだろう?』

天龍『まあ………たまに出ていく奴もいるけどさ、それもそれでいいじゃねえか。自分で決めた事だろ?自分が信じた道を行くのが一番いいさ』

天龍『俺はわりかし信じてるよ。人生はすばらしい、ってな』


龍田『私も信じてるわ~、だってみんなに出会えたもの~』

天龍『だよな。こうやって気分がいい酒がお前らと飲めるから、人生はやめられねえよ』

天龍『つらいこともいっぱいあるけどな』

龍田『そんなときはいっぱい泣けばいいじゃない~』

天龍『龍田はそういうとき泣くもんな』

龍田『も~!余計なことは言わないでいいの~』

天龍『ははは、わりいわりい』


龍田『私達って現実よりも~現実を思いわずらう空想に悩んでいるのよ~』

天龍『おっ!龍田節がはじまったぞ!だいぶ酔ってるな、こいつ』

龍田『空想はどこまでも広がるけれども~現実はちょっとしたことで解決するから~』

天龍『ははは、いいぞいいぞ』

龍田『そんなに急いで出ていくほど腐ってるわけでもねえだろう~?』

天龍『それ俺が言った!』

龍田『え~もうおぼえてない~』


天龍『誰の言葉か知らねえけどさ、まったくその通りだよな』

天龍『戦争は終わらねえ。終わらねえけどさ、ちょっと手を加えてやりゃあ、もっと違った道が見つかるかもしれねえよな』

天龍『俺はそれを子ども達に見せてやりたいんだ。争いは終わりません、だなんて澄まし顔で教えたところで何かが変わるわけでもねえんだ』

天龍『だから俺は、俺の戦いを信じて戦い続けるよ。いつかはきっと希望が見つかるさ』

天龍『俺はそう、信じてる』


天龍『だからよ、最期まで付き合ってくれよな。お前ら』

龍田『もちろんよ~ここまで来たんだもの~』

龍田『とことん最期まで付き合ってあげるわ~』

天龍『へへっ、ははははっ!』

天龍『よっしゃ!帰って寝るか!明日も仕事だ!』

龍田『肩貸して~』

天龍『んだよ、ふらふらじゃねえか』


鳳翔『お帰りですか?』

天龍『明日も頑張らなきゃいけないんで!』

鳳翔『ふふふ、いつでもいらしてください。私にできる事ならなんだって手伝います』

天龍『ははは、こりゃ甘えるしかねえな。な?提督』

天龍『あ、そうだ。そのビデオカメラ、鳳翔さんにあずけとけよ。ここに来るたび録画していこうぜ。記念だ!記念!』

鳳翔『わかりました。お預かりします。でも私、メカには疎くって………』

天龍『メカって………』


暁『あっ、天龍!帰るの?』

天龍『おう、こいつを運ばなきゃいけないしな』

龍田『すぅ………すぅ………』

電『あいかわらず龍田はお酒に弱いのです』

響『私達も肩を貸そう』

天龍『そりゃ助かる。んじゃ、提督!俺ら全員の勘定まかせたぜ!』

暁『司令官のおごりなの!?やったー!』

電『男気あふれるいい男なのです!』

響『さすが私達の司令官』

天龍『ははは、ここぞとばかりに調子づきやがって、はははは!』

ザァァァァ………

暁『あー、まだ雨ふってる』

天龍『よぉし、ひとっぱしり行くか!』

響『いいね。雨はいつか止むさ』

電『人の決めゼリフを盗っちゃダメなのです』

龍田『んん~………あんまり揺らさないで~………』


天龍『いくぞ、お前ら!』

天龍『自分の信じた道をどこまでも駆け抜けろー!』タタタッ

龍田『あうう~………気持ち悪い~…………』ブラブラ

暁『もー天龍は酔うとすぐ熱くなっちゃうんだからー!』タタタッ

電『雨に打たれればすこしは冷えるのです!』タタタッ

響『そのくらいじゃ天龍の想いは冷めないよ、残念だが』タタタッ

天龍『おーい!なにしてんだー!提督―!はしれはしれー!』


ザァァァァ―――


タタタタッ―――――



ザァァァァ―――――――




タタタタッ―――――――――――――










――――五十五年後―――――


ザァァァァ・・・




「おばあちゃーん?おばあちゃーん!」

「あっ!おばあちゃんいた!なにしてるのー?」

「昔の思い出を見ていたんですよ」

「わたしたちにもみせてみせて!」

「おばあちゃん~、このひとたちだれ~?」



「おばあちゃんが昔、艦娘だったころの大切な仲間達ですよ」

「あっ!俺知ってる!この人天龍だ!」

「龍田もいる~」

「ええ、そうです。よく知っていたねぇ」

「へへん!俺、天龍にあこがれてるんだ!」

「だから俺っていってるのよね~ふだんは私なのに~」

「ばっ!そんなんじゃねえよ!」


「ふふふ、お前たちはこのふたりによく似ているねえ。優しくて、暖かい」

「ねえ、おばあちゃん!この人たちいまどうしてるのかな!」

「そうさねえ。ここに映っている人たちはみんな、亡くなられたよ」

「亡くなられた?死んじゃったってこと?」

「そうだよぉ」

「ふーん、でもどうしてー?」

ザァァァァ・・・

「そうさねぇ、天龍さんは大破した一人の艦娘を逃がすためにひとりで敵の大軍の立ち向かい、勇敢に散っていかれたねえ」

「かっこいい!すごい!」

「龍田さんは怪我してねえ、戦う事が難しくなったから看護師になったんだよぉ。沢山の人を苦しみから救って、最期はガンで亡くなられたねえ」

「ふぅ~ん~すてきなひと~」

ザァァァァ・・・

「暁さんはねぇ、姫級というとても強い敵と戦って、長い長い戦いの末、相打ちとなって倒れてしまわれたよ」

「駆逐艦が姫級をたおしたの?うそだぁー」

「おばあちゃんはうそつかないよ~しってるでしょ~?」

「だってさー、信じられないもん」

「あの子はねえ、駆逐艦の小さな体に、戦艦のような強い意志を持っていたんだよぉ。誰よりも臆病で、誰よりも強い勇気をもっていたの。立派なレディだったんだよぉ」

ザァァァァ・・・

「電さんはね、たくさんの駆逐艦たちのリーダーになったの。すこし皮肉屋なところがあったけれども、決して味方を沈めさせず、敵の命も奪うことをしなかった。でもそれが仇となって、捕虜に背中を撃たれて亡くなられてしまったねえ」

「なんだそれー、だめじゃん」

「いいえ、ちがうのよ。彼女は命の重さが消えてしまう戦場で、自分が撃たれる覚悟のうえで、敵も味方も救ったのよ。憎しみを抱かず、抱かせずにね」

「おばあちゃんの言ってる事~むずかしいよ~」

「ふふふ、おっきくなったらきっとわかるかもねぇ」

ザァァァァ・・・

「響さんはね、第六駆逐隊で最後まで戦った最後のひとりなの。大切な仲間たちが旅立っても、決して彼女たちが離さなかった想いを受け止め、そして、雪の降るロシアの海で散っていかれたんだよぉ」

「さびしくなかったのかな」

「淋しかっただろうねぇ。でも、奮い立ったのよ。仲間たちが信じた希望のともしびを、決して絶やすことの無いように」

ザァァァァ・・・

「提督はね、深海棲艦と和平を結んだ、ただひとりの人間なんだよぉ。いまも彼女たちとの戦いは続いているけれども、昔ほどはひどくないの。深海棲艦の一部は人と共存することを選んだからねぇ」

「しってる!学校でならった!」

「わたしも~」

「提督は最後までねぇ、艦娘たちを想いながら、たくさんの孫たちに看取られて安らかに旅だったと、噂に聞いたねえ」

ザァァァァ・・・

「おいで、お前たち」ギュゥ

「わはは!」

「うふふ~」

ザァァァァ・・・

「いいかい?彼女達の想いを背負って生きろとは言わないよ。お前たちはお前たちの道をただまっすぐに歩みなさい」

「でも、知っておいてほしいの。いま、私達が生きている世界はすべて繋がって出来ている」

「希望も絶望も、たのしいこともいやなことも、ぜんぶね」

「だから、あなたたちも自分の信じた道を進みなさい」

「それも必ず、誰かの未来につながる道しるべとなるのだから」


「おばあちゃんむずかしいよ!」

「わからない~」

「ふふふ、そうかもねえ。まあ、元気にいなさいということだよ」

「だったら大丈夫!俺はとっても元気!」

「元気すぎてめんどくさいわ~」

「なんだよ!うるせっ!」

「ふふふ~」



サァ…………





「おや………」








「おばあちゃん!雨、やんだ!」



「わぁ~おひさまがまぶしい~」




「そうだねえ…………まぶしいねぇ……………」






「?おばあちゃん泣いてるの?」

「どうしたの~?」

「なんでもないよ。どれ、散歩でもいこうか。手を貸しておくれ」

「やったー!いくぜいくぜー!俺は世界水準を超えてるんだー!」ギュ

「も~うるさ~い」ギュ

「ふふふ」




―――みなさん、あの高く澄み渡る空から私が見えていますか?




「水たまりいっぱいだー!」




―――みなさん、あなた達が信じた希望が私の両手を繋いでいるのを見ていますか?





「あ~みてみて~お空!すご~い!きれ~い!」





―――みなさんが繋いでくださった未来への道は今――――















鳳翔「天龍型と提督の居酒屋での記録」 おわり



乙。感動した…目頭が熱くなるな。

スタンディングオベーションを送りざるを得ない


良い話でした

いい話だった乙

ウルっときた

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年12月29日 (金) 13:40:10   ID: vGpqZllx

無能だから最後の語り誰なのか暫く分からんかったわ。お艦か

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