結衣「あのさ……あたし、髪のことで悩んでてね」八幡「髪?」 (20)





八幡「どうした。ハゲたのか?」

結衣「ハゲないし!」





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結衣「何言ってんのヒッキー! 女子に向かっていきなり『ハゲたのか?』ってありえないし!」

雪乃「…………」

結衣「デリカシーなさすぎ! ヒッキー最低!」

八幡(えぇ……ここまで非難浴びるほど俺酷いこと言ったか?)

八幡「いや、髪のことっていうからよ……」

結衣「女子が髪のこと気にしてるっていったらもっと他にあるでしょ! ほら、髪型とか寝癖とか、くせ毛とか」

八幡「いや、それならそうとはっきり言ってくれれば分かる。妙にぼかすからだろ」

結衣「それにしたっていきなり『ハゲ』とか普通聞かないもん! ゆきのんもそう思うでしょ?」

雪乃「ええ、そうね。普通なら女性に対していきなり『ハゲ』発言などしないはずよ」

結衣「だよねっ。ほんとヒッキー意味わかんない」

雪乃「髪という言葉に対してまっさきに『ハゲ』という言葉が口から出てきてしまった」

雪乃「これは比企谷くん、あなた自身の心の問題を反映しているのではないかしら」

結衣「え?」

八幡「は? どういうことだよ」

雪乃「……あなた、自分で気づいていないの?」

八幡「いや、気付くも何も。何の話をしているのかいまいち要領を得ないんだが」

結衣「あっ……(察し)」

八幡(え、何を察してるんですか由比ヶ浜さん……?)

雪乃「そう……」

八幡(ちょっと、何でそんな悲しそうな目をするんだよ……。何なの? 俺を憐れんでるの? わけがわからないよ?)

雪乃「分からないのなら、教えてあげるわ。比企谷くん、あなた最近、頭皮の……いえ、生え際の後退が著しいわよ」

八幡「え……?」

雪乃「それだけではないわ。あなたの……その、後ろ頭」

八幡「後ろ頭がどうした……」

結衣「ヒッキー、後ろ頭の真ん中あたり、ちゃんと確認したほうがいいよ。毛がないとこがあるから。十円玉くらいの大きさの」

八幡「へ……?」

雪乃「おそらく、円形脱毛症でしょうね……」

八幡「う、嘘だろ……?」

雪乃「比企谷くん、私は……嘘はつかないのよ」

結衣「ヒッキー、気付いてなかったんだ……」

雪乃「気づいてても……誰も言ってくれなかったのかもしれないわね」

結衣「……可哀想」

八幡「いや、嘘だと言ってくれ……。俺、まだ高二だぞ? 高二なのに」

雪乃「比企谷くん、たとえ辛い現実だとしても……受け入れなければならないことはあるのよ」

八幡「受け入れる……? 受け入れろというのか、この現実を……」

雪乃「ええ、そうよ。あなたが『ハゲ』てしまったという現実を」

八幡「や、やめろ! 言うな……そのワードを口にするんじゃねぇ……」

結衣「だ、大丈夫! あたしはヒッキーが『ハゲ』てても全然大丈夫だから!」

八幡「俺の頭皮は大丈夫じゃねえだろうが!」

雪乃「現実を受け入れない限り、あなたが前に進むことはできなくなるわ。比企谷ハゲ幡くん」

八幡「やめてくれよ……(絶望)」

八幡(確かに親父も、二十代後半くらいから徐々に髪が薄くなったらしくて、今や幕張の安打製造機みたいな髪型になっている)

八幡(だが、それにしても……いくらなんでも早すぎるだろ。こ、この年で……)

結衣「大丈夫だよヒッキー、ほら、最近のカツラって本物の髪そっくりらしいし。ちゃんと誤魔化せるって」

八幡「誤魔化すだと? ふざけるな!」

結衣「ヒッキー……」

雪乃「比企谷くん……」

八幡「カツラなんて……かぶらねぇ。俺はそんな、見かけだけの薄っぺらい欺瞞じみた方法は嫌いだ」

八幡「偽物なんていらねぇ(カツラ)」





八幡「俺は、本物が欲しい(地毛)」




雪乃「…………」

結衣「…………」

雪乃「そう。それがあなたの答えなのね」

八幡「ああ」

結衣「ヒッキー、頑張って。あたしも応援するから」

雪乃「頭皮に関して悩みがあったら、何でも言ってちょうだい。私も、できる限りの助言はするつもりよ」

八幡「いや、いい。これは俺自身の問題なんだ。自分の問題は自分で解決するさ」

結衣「で、でも……」

雪乃「また一人で問題を抱え込むというの? 『ハゲ』への風当たりは厳しいわ……あなた一人で生きていけるの?」

八幡「俺はいつも一人だ。これまでも、これからも、一人で生きていく」

八幡「たとえこのまま『ハゲ』が進行しようとも、泥臭く這いつくばって戦ってみせる。それが俺のやり方だ」

雪乃「そう……なら、仕方がないわね」


結衣「そんなの! そんなのまちがってる!」


八幡「由比ヶ浜……」

結衣「だってヒッキーは『ハゲ』なんだよ! 『ハゲ』たヒッキーが一人で生きていくなんて……そんなの……そんなの」

結衣「あだし……見でいられないよ……うぅっ……」

雪乃「由比ヶ浜さん……。そんな、あなた……卑怯よ。どうしてあなたが泣くの?」

雪乃「どうして……本当に泣きたいのは……ぐっ……」

八幡「何だよ……何なんだよ……っ」

八幡「何で……お前らが泣くんだよ……」

八幡「泣きたいのは……お……れ……の、う……うぁあ”あ”あ”っ……」

堪えきれずに涙があふれ、みっともなく泣き声を上げた俺の両手が優しく握られた


八幡「お……お前ら……」

結衣「大丈夫だよ。ヒッキーには、あたしたちがついてるから」

八幡「由比ヶ浜……」

雪乃「私たち三人で解決策を探っていきましょう、比企谷くん」

雪乃「今度こそ……まちがえたりしないようにね」

八幡「雪ノ下……」

八幡「……ありがとう、二人とも」


この時、この瞬間に感じた、言葉では言い尽くせない感慨、共感、情念の発露

これこそが、俺が、俺たちがいくら求めても得られないと思っていた『本物』なのだと信じて、これからも生きてゆく


この、薄れゆく頭髪とともに――


                                                (おしまい)

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            ニャーン

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ワロタ
乙です

なんだこれ
乙乙

髪スレ

このハゲー!

ちーがーうーだーろー!!

福浦さんdisってて笑う
おつ

ハゲ幡、いいね!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年12月03日 (日) 09:45:11   ID: V0bhxZ13

また毛の話してる(AA略)

2 :  SS好きの774さん   2018年04月17日 (火) 01:20:38   ID: T5ls2BeG

円形脱毛症の原因の一端が目の前にいるのにスルーされてる どちらも普通に八幡を傷つけてるので 症状の進行待ったなし 

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