【艦これ】加賀「赤城さんの部屋」 (25)

艦これSSを投下します。

赤城さんの話です。18レス予定。

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加賀「提督」

提督「なんだ加賀。深刻そうな顔をして」

加賀「提督は……その……」

提督「どうした? 歯切れが悪いな」

加賀「いえ、その。空母寮に……来たことはあるかしら」

提督「空母寮? 何度かあるが……別に用がなければ行かないな。あそこはおまえらの家みたいなものだろう」

加賀「ええ、まあ。家ね、私達にとっては」

提督「そうだろう。いわば女の園だ。男の俺が踏み入っていいところではない」

加賀「その、仰る通りではあるのだけれど……赤城さんの部屋を、見たことはあるかしら」

提督「赤城の部屋?」

加賀「ええ」

提督「いや、ないな。加賀のほうがよく知っているだろう」

加賀「いえ。それが、先日、初めて赤城さんの部屋に入ったのよ」

提督「先日?」

加賀「……具体的には、3日前」

提督「初めてか?」

加賀「そうね」

提督「赤城はもう2年以上いるし……加賀だって似たようなもんだろう」

加賀「それは、そうなのだけれど……」

提督「?」

加賀「赤城さん、起きるのが早いの」

提督「……は?」

加賀「私が朝起きて、洗面所に向かうと、ほぼ用意を終えた赤城さんがいるのよ」

提督「いくら早いったって……2年間ずっとか?」

加賀「ずっとよ。たまに歯を磨いているところを見たことはあるけれど、寝ぼけた赤城さんを見たことがないわ。起こされることはあっても、起こしたことはない」

提督「加賀が出動で赤城が休日のことだってある」

加賀「提督は赤城さんがオフのところを見たことがある?」

提督「そりゃ……ん……? いや、休みなのに訓練してるのは、見たことがあるが……」

加賀「赤城さん、オフでもほぼずっと部屋にいないのよ。自主トレしてたり、散歩とかしてたりで」

提督「いや……さすがにおかしいだろう。赤城とて艦娘といえど人間だ。休むことくらいある」

加賀「そうね。私は見たことがないけれど」

提督「……マジ?」

加賀「大いにマジよ」

提督「いや、待て。何度かあいつの外出申請を受けたことがある」

加賀「どこまで?」

提督「……街。買い出しに行くと言っていたが……そういえば、全部ただの買い出しだった気がするな」

加賀「そうね。何度か付き合ったことがあるけれど、本くらいしか買わないのよ」

提督「おい。なんか怖くなってきた」

加賀「でしょう。それで、さっきの話に戻るのだけれど」

提督「ああ、赤城の部屋」

加賀「そう。入ったのよ、3日前に。気になって、赤城さんの部屋で、お茶でもしようって」

提督「……どうだった?」

加賀「何もなかったわ」

提督「……」

加賀「寮の支給品の、ベッドと、机、棚」

提督「そうだな。どの部屋にもあるだろう」

加賀「それしかなかったわ」

提督「……なんか、あるだろ、いろいろ。金剛なら紅茶が並んでるし、そういう私物」

加賀「私だって多趣味な方ではないけれど、部屋にはそれなりに物があるわ。着替えとか、お菓子とか、なんだかんだ、生活感が出る」

提督「ああ。俺の部屋なんて汚くて嫌になる」

加賀「だけどね、赤城さんの部屋には何もなかったわ。棚に本があったけれど、大した量じゃない。聞いたら、読んだら売ってるそうよ」

提督「仕送りでもしてるのか?」

加賀「赤城さんは海軍の名家の出よ。家はむしろ裕福なほうだし、一度聞いたら実家は資産運用で長者番付に載ってるそうよ」

提督「……いや、待て。赤城はあれだろう、食事が趣味みたいなものだ」

加賀「まあ、確かに、よく食べるほうではあると思うけれど」

提督「だろう。給料全部使ってんじゃないか」

加賀「あのね、提督。私たちは命を賭けて国を守っているのよ。しかも艦娘は誰でもなれるってわけでもない、いわば超難関資格を要する特殊職よ」

提督「……まあ、知ってるよ。おまえらすげえ給料いいよな」

加賀「そうね。食費だけで使い切ろうと思ったら、毎食叙々苑に通ってもおつりがくるわね」

提督「……気になるな、加賀?」

加賀「ええ、とても」

提督「……おるか!」

川内「おそばに!」

提督「川内、赤城の私生活について何か知ってるか」

川内「スーパーストイック仕事鉄人深海棲艦絶対殺すマンってとこかな」

加賀「……私生活は?」

川内「筋トレと弓の稽古と読書」

提督「マジ?」

川内「マジ。最初サイボーグかと思ったよ」

提督「……センテンス・スプリング!」

青葉「こちらに!」

提督「何かあるか」

青葉「ありません!」

提督「次」

青葉「あっ、待って!待って提督!一応ある!ありますよ!」

提督「なんだ。あるのか」

青葉「といっても、大した情報ではないですが。街に出てる赤城さんの写真がこちらに」

加賀「ほう」

提督「……飲み屋で焼き鳥食ってるな」

川内「食べてるね。ひとりで」

加賀「あ、ここ行ったことあるわ。赤城さんが連れてってくれました」

青葉「ちなみにおひとりで6千円ほど飲み食いした後、ナンパに寄ってきたチャラ男相手に15分ほど説教して、ついにキレたチャラ男が――」

加賀「どうなったの?」

青葉「胸ぐらを掴もうとした瞬間、宙を舞ってました」

川内「だろうね。赤城さんだもんね」

提督「……貴重な情報ではあるが、今以上の情報ではないな」

青葉「ちなみに説教はあと15分続きましたが。お役にたてず申し訳ないです」

提督「構わん。あとで俺のほうから赤城に言っておく」

提督「さて、加賀」

加賀「はい」

提督「いったい赤城は、給料をどうしていると思う?」

加賀「まあ、いろいろと、推測はできるけれど」

提督「暴飲暴食」

加賀「NON。いくら赤城さんがよく食べよく飲むといって、艦娘の給料を使い切ることは恐らく不可能。青葉の情報からも、食費で使い切るほどではない」

加賀「貯金」

提督「NON。赤城の口座は個人のものではない。どうやら実家と口座を共用しているようだ。加賀が言った通り赤城の実家が裕福なら、貯金なぞ大して意味を成すまい」

提督「ゲーム課金」

加賀「NON。赤城さんはスマホやパソコンは持っていないし、ガラケーも通話とメール機能しかないものを持っているわ」

加賀「夜な夜な街で遊んでいる」

提督「NON。川内が気付かないわけがない」

加賀「つまり」

提督「そう。川内や青葉に気付かれることなく、俺や加賀に悟られることもない、それでいて膨大にお金を消費することができる。そんな方法だ」

加賀「ないでしょう、そんなの」

提督「うむ。ない。思いつかない」

赤城「人の財布事情でそんなに盛り上がらないで下さい」

提督「うおわぁあっ!!」

加賀「あっ……赤城さん……」

赤城「まったく……私が私の給料をどう使おうと構わないでしょうに」

提督「いや、その通りだ。すまんな、度が過ぎた」

加賀「ええ、ごめんなさい、赤城さん」

赤城「あ、いや、そんな謝られることではありませんけど……」

提督「なんだ。教えてくれるのか」

赤城「別にやましいことはないですが……お金の使い道なんて、どうでもいいじゃないですか」

提督「……まあ、確かに。なにか趣味はないのか?」

赤城「強いて言えば読書ですが……読み返すことはないので、すぐ売ってしまうだけです」

加賀「毎日私より早く起きてるのは?」

赤城「ただの習慣ですよ。そこまで不思議でもないでしょう」

提督「休みの日まで稽古してるのは?」

赤城「別に深い意味はありませんよ。したいからしてるだけです」

提督「……ほう、そうか」

加賀「提督?」

提督「いや、なんでもない。時間をとらせてすまなかったな、赤城」

赤城「いえ。それでは。行きましょうか、加賀さん」

加賀「ええ……そうね。行きましょう」

提督「赤城」

赤城「あら、提督……夜更けに一人で散歩だなんて、提督ともあろう方が危ないですよ」

提督「ここ横須賀の警備を抜けて俺に辿りつくまでに、いったいどれだけの壁があることやら」

赤城「まあ、並の人間では無理でしょうね。川内さんもいますし」

提督「そうだろう。風にでも当たりたい気分だったのでな」

赤城「おや、風流ですね。護衛がてら、ご一緒しても?」

提督「ああ。俺も話し相手が欲しかったところだ」

赤城「ええ。私も提督に話したいことがあったんです」

提督「このあいだのことか?」

赤城「察しが良いですね。そうですよ」

提督「戦災孤児への寄附、すごい額だそうだな」

赤城「ああ、ご存知でしたか……ええ、まあ。こちらの鎮守府に着任してから、ほぼ毎月、送り続けてますから」

提督「どうしてそこまでするんだ?」

赤城「いけませんか?」

提督「いや。理由を知りたいだけさ」

赤城「まあ、概ね、考えておられる通りかと思いますが」

提督「……おまえも戦災孤児なのか?」

赤城「そうですね。記憶はほとんどありませんが、実の両親は他界しています」

提督「そうだったのか……知らなかったな」

赤城「人に言うようなことではないですし、父……義父ですが、父も人に言いたがりませんから」

提督「海軍中将だったか」

赤城「はい。若いころ、実父とは海軍学校で切磋琢磨し合った仲だったそうです」

提督「ああ、それで……」

赤城「ええ。義父には子供がいませんでした。実父は深海棲艦の手によって殺されましたし、母はその後を追うように、病気で亡くなったそうです」

赤城「幼い私を、今際の際に母は父の古い友人である義父に頼んだそうです。生前、そういう約束をしていたようで」

提督「『もしも俺が死んだなら――』か」

赤城「縁起でもない、ですよね」

提督「そうだな。いつ死ぬかわからん職である以上、仕方のないことだが」

赤城「そうして義父のもとで何不自由なく育った私は、ある日、艦娘の適性試験を受ける機会がありました」

赤城「そこで、知ったんですよ。『赤城』の適性があることを」

提督「……なぜだ?」

赤城「何がです?」

提督「死ぬかもしれんのだぞ」

赤城「そうですね。死ぬかもしれません。海は怖いです」

提督「……じゃあ、なぜ……」

赤城「私は実父の顔を知りません。思い出せません。母の顔もです」

赤城「父がかつてそうであったように、人類の敵と戦いたい。変ですか?」

提督「いや。少しも」

赤城「……本当は、自分でもわかってるんですよ。こんなもの、ただの復讐でしかない」

赤城「五航戦の子たちには矢に邪を込めるな、などと教えておきながら、私の矢は憎しみでまみれている」

赤城「こんな様では、『赤城』の艦霊に、申し訳が立たない」

提督「そんなことはない。おまえの射は美しいよ」

赤城「ありがとうございます、提督。お優しいんですね。でも、誰にもわからなくても、私には、わかってしまうから」

提督「たとえ赤城の矢が泥にまみれていても、おまえが命を救ったのは事実だろう」

赤城「……そうですね。そうであれば、いい」

提督「赤城。俺はおまえのことを信頼しているよ。たとえ憎悪であっても、おまえの矢は多くを救ってきた。そしてこれからも、多くを救う」

赤城「そういう、考え方もありますか」

提督「ああ。しない善よりする偽善だ。実は俺も汚職まみれのクソ提督でな。毎朝憲兵と挨拶して袖の下を通す日々だ。青葉に撮られちゃえらい目に遭う」

赤城「ひどい上官ですねえ」

提督「まったくだ。そんな男が日本防衛の要を担う艦隊の提督とはな。日本も終わりか」

赤城「いったい大本営はなにをしてるんですかねえ」

提督「さあな。それじゃ赤城、俺は寝る。明日もよろしくな」

赤城「ええ、おやすみなさい提督。明日もよろしくお願いします」



赤城「……かっこつけちゃって、提督。憲兵に賄賂なんて渡してないくせに」

赤城「みーんな知ってますよ。あれ、戦災孤児への寄附だって」

赤城「まったく。いい提督に恵まれましたね、本当に……」

終わりです。
赤城さんかっこいい…かっこよくない…?
初期赤城さんの仕事超人っぷりはボイスから伺えるのでぜひwikiでも見てみて下さい。
びっくりするほど仕事に関することしか言いません。

HTML化依頼だしてきます。

赤城さんを語るならあの放置ボイスははずせないと思うんだ乙

乙ー

海軍なのに憲兵定期

同じく仕事人間キャラの赤城さん好きです
乙でした

乙です
こういう赤城さんの話は最近なかったから新鮮な感じしたな

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