「君は他の誰かを見てる」 (21)


オリジナルで、短編です。
暇つぶし程度にどうぞ。




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僕には異性の親友がいる。

彼女とは昔からの付き合いでいわゆる幼馴染とも言えるのかもしれない。
でもそれ以上の関係になることはなく、お互いその距離感でいるのが楽だった。

お互いとは言ったものの、それは僕だけだったのかもしれないが。




幼稚園・小学校と放課後は毎日のように彼女と遊んだ。
もちろん他の友達もいたことだってあった。
彼女と遊ぶのは楽しかった。
男の子の遊びでも、女の子の遊びでも、
彼女と一緒に遊ぶことは楽しいことばかりだった。

だからいつも一緒に遊んだ。
そのことについて周りから何か言われることもなかった。




しかし、中学校に上がった頃、周囲では思春期になった男女ということもあってか、
騒がれるようになってしまった。
僕らはそれを疎んだ。
お互いそのつもりもないのだが、周りが囃し立ててくるため、
自然と二人で遊ぶことは減っていった。




それでも中学、高校と進学していっても定期的に遊びに行っていた。
高校ではお互い別のところに通ったこともあって、周りからの野次も減っていた。


その頃からだろうか、彼女から恋愛相談などもされるようになったのは。






「好きな人がいる?」

「う、うん……」

「おー、お前もついにそういう時期が来たか……うんうん」

「な、なに?その反応」





「だってさ、今でもたまにお前と遊ぶけどなんつーの?浮ついた話っつうか……
 そう、恋愛ごとに関してはまったくと言っていいほど話題に上がらないじゃん?」

「う、うん」

「だからてっきりお前はそういうことに興味ないんじゃねーのかなと」

「そんなことないよ!」

「まあ、そうだろうな。こんな話を僕にするぐらいだからなあ」

「まあね……。それでね――」





最初は特に何も思っていなかった。
いや、むしろ大事な友人のことだ。
逆に応援していたぐらいだった。

彼女と会うたびに恋愛事に関する話題が増えていった。
どういう人が好きだの、クラスの誰々くんがかっこいいだの、
彼女はとても嬉しそうに話していた。








僕は次第に相槌の回数が増えていっていることに気づいていなかった。







ある日、彼女が驚く単語を口にした。



「彼氏が出来たの」



と。





面食らってしまい反応するのが少し遅れてしまった。



「あはは、驚いた?」

「あ、あぁ……そうだな驚いたよ」

「自分でもそうなんだよね。まさかこんなことになっちゃうなんて」

「ということはお前から告白したわけじゃないのか?」

「うん……ほらこの間うちの学校文化祭があったじゃない?その打ち上げの時に……」





ああ……と僕は少し納得した。

得てして文化祭などの大きな行事のあとはそういうことがあるものだ。
僕の親友とも言える幼馴染は整った綺麗な顔をしているし、
きっと彼女の学校の男連中から人気はあるのだろう。
そんな彼女のことだ、告白されてもおかしくない。
いやむしろ今まで告白されなかったほうが驚きだ。





そんなことが一気に頭の中を巡り、僕は自分でも気づかぬうちに
当然のことだ、当たり前なんだと自分に言い聞かせていた。






「……そうか、良かったじゃないか」

「え?」

「だってお前最近はそういう話が多かっただろ?ようやく念願叶ったりってところじゃないのか?」

「うん……そうだね」






後悔ってのは後で悔やむって書くから後悔なんだって誰かが言ってた。
この時の僕はたぶんそれを一番理解することができたと思う。







その後、僕も彼女以外の女性と付き合ったり、
彼女もその彼氏とは別れて新しい彼氏を作ったり、
そんなことをしながらもやっぱりお互い遊んだり……。

彼女と会った時に話す恋愛話。
それを聞くたびに僕は彼女を好きになる。
他の誰かを見てる彼女を好きになる。
そんな自分が……嫌になる。





そして心の中で毒づくんだ、




『君は他の誰かを見てる』




と。



以上で投下は終了です。
投下前からわかっていたことですがやはりかなり短いですね。
次回はもっと長い作品を書ければ良いなと思います。

一応この酉で他のものも書いていますし、今後も投下予定です。
また機会があればよろしくお願いします。

切ないな、乙

おつん
きれいに切ないいい短編だったよ
ちょっとした暇がつぶせた

感想ありがとうございます
明日にでも落ちるとは思うので一応最後にあげておきます

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