むかしむかし ちきゅうには
ニンゲンと モンスターという
2つのしゅぞくが いました。
ところが あるとき
2つのしゅぞくの あいだに
せんそうが おきました。
そして ながい
たたかいのすえ ニンゲンが
しょうりしました。
ニンゲンは まほうのちからで
モンスターたちを
ちかに とじこめました。
それから さらに
ながい ときが ながれ……
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〈イビト山 201X年〉
それは 「のぼったものは
にどと もどらない」といわれる
でんせつの山でした。
いま そこから
ひとりの こどもが
「ちか」に おちました。
こどもの なまえ
>>4
メサイヤ
メサイヤ「……」
金色の花の中で、目が覚めた。
どうやら、この花がクッションになって、落ちてきたところを受け止めてくれたらしい。
あたりは真っ暗でよく見えない。
メサイヤは壁伝いに暗闇の中を進み、ルーンの刻まれた門を潜った。
目の前に、大きな花がいた。
「ハロー!
ボクは フラウィ。
おはなのフラウィさ!」
花がこちらを見つめて喋り出した。
「キミは……
この ちていのせかいに
おちてきた ばかりだね?
そっか じゃあ さぞかし
とまどってるだろうね。
このせかいのルールも
しらないでしょ?
それなら ボクが
おしえてあげよう。
じゅんびは いい?
いくよ!」
花は勝手に話を進めた。
目の前に赤いハートが現れる。
「そのハートはね
キミのタマシイさ
キミという そんざい
そのもの といってもいい。
はじめは すごくよわい…
けど LVがたくさん
あがると どんどん
つよくなれるんだよ」
花は慣れたように説明を続けた。
LVとは「LOVE」の略で、これを集めると強くなるらしい。
フラウィ「このせかいではね
LOVEは こんなふうに…
しろくて ちっちゃな
『なかよしカプセル』に
いれて プレゼントするんだ」
フラウィの背後に、白い小さな球が浮き上がる。
球はこちらに向かって、クルクルと回りながら放たれた。
フラウィ「さあ! カプセルを
おいかけて!
いっぱい いーっぱい
ひろってね!」
メサイヤはどうする?
>>9
underpantsみたいにフラウィをはたく
フラウィ「……なにを するの?
いきなり はたくなんて ひどいね
ぼくのLOVEを うけとってはくれないのかい」
フラウィは距離をとって、もう一度白い球を飛ばしてきた。
メサイヤはどうする?
>>11
騙されないぞ、これ良くないものだろ と言う
フラウィ「……騙されるって、なんのことだよ
きみは ここに おちてきたばかりじゃ なかったのか?
このせかいの ルールを 知らないんじゃ なかったのか?
……きみ、名前は?」
メサイヤは、どうする?
>>13
今は勝てないので助けを呼ぶ
メサイヤは「たすけて!」と叫んだ。
声はなにもない暗闇へと吸い込まれていく。
フラウィは、顔をしかめた。
フラウィ「……名乗らないというのかい。
ふーん。へーえ。
どうやら、ボクはキミについて、
かってな おもいちがいをしていたのかもしれない。
きょうみがでてきた。
しばらくきみのこと、みさせてもらうよ。
きみがこのせかいに どんなえいきょうを およぼすのか、
楽しみに、しておくよ」
フラウィは、不気味な笑い声をあげて、メサイヤを睨みつけながら地中へと潜っていった。
足がすくんでいたメサイヤは、脱力して尻餅をついた。
「誰? 誰かそこにいるの?」
どこかから声が聞こえる。
メサイヤが顔をあげると、白くて大きな獣が現れ、こちらを見つけて早歩きで近寄ってきた。
「あなたなの? さっき『たすけて!』って言ってたのは」
メサイヤ「……」
「こわがらなくても だいじょうぶよ。
わたしは トリエル。
このいせきの かんりにんです。」
白い獣は、両膝をついてメサイヤに視線を合わせながら、笑顔で名乗った。
トリエル「まいにち ここをみまわって
おちてきたコが いないか
かくにんしているの。
ニンゲンが このせかいに きたのは
ほんとうに ひさしぶり。
さぁ、いきましょう!
いせきを あんない してあげるわ」
トリエルは立ち上がると、メサイヤに手を差し伸べた。
メサイヤは、その手をとった。
トリエル「こっちよ」
メサイヤは暗闇の向こうに消えていこうとするトリエルの白い身体を、見失わないように着いていった。
辿り着いたのは、大きな建物だった。
荘厳な雰囲気も漂っているが、どこかメルヘンチックな気もする、不思議な建物だ。
トリエル「さあ、あなたは今日から
ここでくらすのよ。
いせきの しかけについて おしえておくわね」
トリエルはボタンのついて床を歩きながら、扉をあけた。
これは侵入者を撃退するためのパズルらしい。
トリエル「よく見て、慣れておいてね」
トリエルにとって、私はもう、侵入者ではないらしい。
トリエル「この部屋は ボタンを押さないと
扉が開かないようになっているの
かべに スイッチがあるでしょう?
それを おしてきてもらえるかしら?」
メサイヤは言われた通り、壁に取り付けられているスイッチを確かめた。
[このスイッチを おすのよ]と書かれている。
こんなものに、なんの意味があるのだろう。
メサイヤがスイッチを切り替えると、トリエルは笑顔で喜んだ。
トリエル「よくできました!
今度はあっちのスイッチも おしてちょうだいね」
メサイヤは、言われた通りに動いた。
Gルート行かなきゃ(使命感)
トリエル「あなたはニンゲンだから
モンスターに おそわれることもあるでしょう。
そんなときに どうすればいいか
しっておかないと いけませんよ」
トリエルは、用意しておいたマネキンとメサイヤを「バトル」させようとした。
メサイヤは、どうする?
>>21
トリエルと戦う
メサイヤは、マネキンには目もくれず、トリエルに向き合った。
トリエルは目を丸くしている。
トリエル「あらあら。
あなたは けっこう じっせんてきなのね。
わかったわ。ここはわたしが
ひとはだ ぬぎましょう」
トリエルは両手を大きく開いて、笑顔で話しかけてきた。
トリエル「バトルになったら、まずはあいてと
『おはなし』を するのよ」
メサイヤは、どうする?
>>23
お話
メサイヤは、トリエルにはなしかけた。
メサイヤ「……こんにちは」
トリエル「こんにちは! そう、よくできました!」
トリエルは、うれしそうだ。
トリエル「きょうは とてもいい天気ね」
メサイヤ「……うん」
この場所に、天気が関係あるとはとても思えなかったが、
メサイヤは、とりあえずトリエルの言うことに同調した。
YOU WIN!
0EXP 0G をかくとく!
トリエル「そう! それでいいのよ。
あなたは さいのうがあるわね」
メサイヤは、すこし照れた。
メサイヤはトリエルの後ろをついていった。
途中、カエルのモンスターがメサイヤの目の前に現れたが、にらめっこしているうちに、トリエルが目で威圧して追いやった。
手を引かれながら、針のむしろのパズルをわたり、メサイヤは大きな廊下に出た。
トリエル「ここまでは よくできました。
でも… つぎは すごくつらい おねがいを
しなければ ならないの。
…… このへやの むこうのはじまで
ひとりで あるいていくのよ」
トリエルは心配そうな目をしながら言った。
トリエル「…どうか、
わるくおもわないで ちょうだいね」
トリエルは踵を返し、ずんずんと進んでどこかへ行ってしまった。
メサイヤはどうする?
>>26
トリエルの言う通り、
1人で歩いていく
メサイヤは、トリエルの消えて行った方へと歩いて行った。
歩いても歩いても同じ景色が続く。とても長い廊下だ。
メサイヤは、トリエルの顔を思い浮かべながら、ひたすらに歩いた。
いつまでも景色が変わらないことに、くじけそうになったが、止まってはいけないような気がして、とにかく歩いた。
しばらくゆくと、左側の壁に柱が立っているのが見えた。
メサイヤは柱を確かようとすると、モフッとしたものにぶつかった。
トリエル「ああ!」
柱の後ろには、トリエルが隠れていた。
トリエル「よ、よくできました!///
あんしんしてちょうだい。おいていったりしないわ。
ここに隠れて、ずっと見ていたのよ。よくここがわかったわね。
わたしを 信じてくれて ありがとう」
トリエルは、メサイヤにハグをした。
トリエル「でもね、このれんしゅうには
とてもだいじな いみがあったの。
…ひとりで おるすばん できるか テストをしたのよ。
わたしは ちょっと ようじが あるから
おるすばん していてね」
メサイヤの両肩に手をぽんと置いて、トリエルは微笑んだ。
トリエル「ここで まっているのよ?
ひとりで あるきまわると あぶないですからね。
…そうだ。あなたに『ケータイ』を わたしておくわ。
ようが あるときは それで でんわするのよ?」
それじゃ、おりこうさんにしていてね。そう言ってトリエルはどこかへ行ってしまった。
メサイヤはどうする?
>>29
寝る
メサイヤは柱を背に座って、リラックスした。
トリエルの用事とはなんだろう。想像もつかない。
預けられたケータイには、白い動物の毛が、一本だけはさまっていた。
メサイヤはふっと息をふきかけて毛を落とし、ポケットにしまった。
どれくらい待てばいいのだろう。わからない。
だが、大人しく待っていれば、きっとトリエルが迎えに来てくれるだろう。
メサイヤは目を閉じた。
そのまま柱にもたれて、ねむってしまった。
しばらくして、ケータイが鳴ったのだが、メサイヤは気づくことなく寝過ごしてしまった。
……夢を見ていた気がする。
誰かが何かを話している。
メサイヤがそれを、隣で聞いている。
夕陽の中の、おだやかな空間だった。
ただただ、おだやかな気持ちになっていたことしか、覚えていない。
メサイヤ「……」
目が覚めると、いつの間にか、地面に横たわるようにして眠ってしまっていた。
トリエルはまだ来ていないようだ。メサイヤは起きて、移動してみることにした。
進んでいくたびに、トリエルの言う「パズル」のようなものが待ち構えていたが、難なく通り過ぎていった。
途中、カエルが目の前に飛び出して来たり、喋る岩にちょっかいを出されたりした。
しばらく進むと、白いオバケのようなものが眼前を塞ぐように横たわっていた。
どうやら「グーグー」と言い続けて、寝たふりをしている。
ムリヤリどかそうか。メサイヤはどうする?
>>33
ウ ウ ウウウウウ と不気味な歌を歌う
耳のそばでどへたくそなこもりうたをうたう
メサイヤは、グーグーと寝たふりをするオバケに対抗して、こちらも唸ってみた。
メサイヤ「ウ ウ ウゥゥウゥウ……ゥゥウウ ゥゥウウ……♪」
「あ……」
オバケはメサイヤの行動に、つい反応を示してしまった。
メサイヤ「……」
「……キミ、なかなかいいネ。いいアンビエンスを かんじちゃッタ」
メサイヤ(?)
「あー……でも、そうだネ……そうだよネ」
オバケはウロウロと悩んだようにうろついてから、遠慮がちに言った。
「ぼくは……ナプスタブルークっていうノ。
いつもは 誰にも会いたくないから
この いせきに いるんだけど…
でも… きょうはネ いいひとに であっちゃッタ…」
メサイヤ「……」
ナプスタ「あ……ゴメン、じぶんがたりするのが クセで… つい」
メサイヤ「……」
ナプスタ「…ジャマだよね。いま どくネ」
オバケはすうっと消えかかった。
メサイヤはどうする?
>>36
いつかまた遊ぼう
メサイヤ「い、いつか」
ナプスタ「……?」
メサイヤ「いつか……また、遊ぼう」
ナプスタブルークは、身体の上半分だけ消えかかった状態のまま、止まった。
ナプスタ「また……そうだネ。また、だネ」
メサイヤ「うん」
ナプスタ「ハハ……ごめんネ。半分消えちゃったまま、話すなんて、失礼だよネ」
メサイヤ「……」
ナプスタ「でも……ありがとウ……」
ナプスタブルークは、今度こそ消え去った。
地面には、ぽつぽつと、濡れた跡があった。
メサイヤは、またしばらく進んだ。
誰でも解けてしまいそうな、簡単なパズルを潜り抜け、ふと気が付くと、大きな黒い木が目の前に現れた。
「たいへん…よていより
ずいぶん じかんが かかってしまったわ」
木の向こうから、懐かしく感じる声がした。
トリエルが、ケータイで電話をかけながらこちらに向かって歩いてくる。
ちょうどメサイヤの持っていたケータイが鳴って、トリエルがこちらに気づいた。
トリエル「まあ! ひとりでここまで来たの?
だいじょうぶ? ケガはない?
こっちへ いらっしゃい。
かいふくして あげましょうね」
怖いことがあったわけでもなかったけど、
トリエルにまた会うことができて、メサイヤは安心した。
トリエル「ずっと ほったらかしにして ごめんなさいね。
あなたを おどろかせようなんて かんがえた
わたしが バカだったわ」
トリエルは、なぜだか心配そうな目をしていた。
大人しく待っていなかったことを、今になって少しだけ後悔した。
トリエル「ふふ……これ以上、隠しても仕方ないわね。
こっちよ。ついていらっしゃい!」
トリエルはそう言うと、ウキウキとしながら木の向こうにある、なんだか可愛らしい家へとメサイヤを案内した。
家の中はあたたかくて、甘い匂いが漂っていた。
トリエル「いいにおいでしょう?
サプラーイズ!
バタースコッチシナモンパイを 焼いたの。
あなたが きてくれた おいわいにね。
ここでたのしく くらして もらいたくて…
だから こんやは カタツムリパイは がまんするわ」
なんだか聞き慣れない恐ろしい単語が聞こえてきた気がするが、気に留めないことにした。
トリエルは、メサイヤをこころから歓迎してくれているようだった。
トリエル「さあ はいってはいって!
ほかにも みせたいものが いっぱい あるのよ」
トリエルは右手の廊下へと歩いて行った。
メサイヤはどうする?
>>41
ヘドバンしながら歌い出す
メサイヤ「VOOOOOOOOOO!!!」ドンドン
メサイヤはおもむろに、頭をぶんぶん振りながら大声をあげた。
トリエル「どうしたの!? どうしたの!?」
慌ててトリエルが飛んできて、荒ぶるメサイヤを抱きしめて落ち着かせた。
トリエル「ごめんなさい。そうよね。
いろんなことが きゅうに たくさんおこったから
つかれて こんらんしてしまったのよね。
きょうのところは、しずかにおやすみなさい。
あなたのための ベッドも ちゃんと用意したのよ。
だいじょうぶ、バタースコッチシナモンパイは
ちゃあんと とっておきますからね」
まだ少し手足をじたばたさせているメサイヤを抱き上げ、トリエルは子ども部屋に行き、ベッドに寝かせた。
トリエル「おやすみなさい。かわいい子」
もふもふの手でメサイヤのおでこを撫で、トリエルは部屋を後にした。
メサイヤはどうする?
>>43
夢の中へ
なにかおもしろいものないかさがしてみる
メサイヤはおとなしく眠ることにした。
寝かされたベッドは、もちろん初めて使うものだけれど、かすかに、私の知っている匂いがしたような気がした。
~
気が付くと、目の前は眩しいオレンジ色だった。
感じられないけれど、ここちよい そよ風を感じる。
感じられないけれど、隣に温かいものを感じる。
感じられないけれど、愛しさを感じる。
私の隣に、誰かがいる。
「…………」
聞こえないけど、何かを話しかけられた。
話せないけど、私は何かを話そうとして……
何も、言えなかった。
そうだ、私は何も言えなかった。
あの子に、何も言えなかった。
言いたいことがあったのに、言えなかった。
今も、ずっと、言えないままだ。
世界は止まっている。
そよ風は吹き続けているけれど、時間は止まっている。
私の世界は、止まっている。
――――――
――――
――
―
目が覚めた。
ここはどこだろう。眠い目をこすりながらベッドをおりると、目の前に、パイのようなものが一切れ置いてあった。
そうだ。これはバタースコッチシナモンパイ。
トリエルが焼いてくれたものだ。
部屋を出て、ぱちぱちと音のする方へと向かってみる。
暖炉のそばで、トリエルが本を読んでいた。
トリエル「おはよう。よく眠れたかしら?」
今が朝なのかどうかもわからないけれど、トリエルはたぶん早起きだ。
メサイヤはどうする?
>>47
なんとなく不安になったのでトリエルママに抱きつく
メサイヤは、本を読んでいるトリエルのおなかへと飛び込んだ。
トリエル「あら! まあ、まあ
どうしたの? いったい」
メサイヤは、特に何も言わなかった。
トリエルは本を置いて、メサイヤの頭を撫でた。
トリエル「こわいゆめでも みたのかしら?
だいじょうぶ。もう心配はいらないわ。
あなたはもう わたしのかぞくよ。
あたらしいかぞくができて、わたしも とてもうれしいわ」
トリエルの服は、あたたかい匂いがした。
「あなたに よませてあげたい ふるいほんが たくさんあるの」
「とっておきの ムシとりスポットにも つれていって あげましょうね」
「それから、おべんきょうは わたしがみてあげますからね」
「いがいかも しれないけれど じつは がっこうの せんせいに なるのが ゆめだったのよ」
トリエルは、楽しそうに喋った。
メサイヤは、相槌をうつ代わりに、トリエルのおなかへ顔をおしつけた。
ゆるやかな時間が流れた。
メサイヤはトリエルに抱き着いたまま、暖炉の方を見た。
ゆらめくオレンジの炎が……
ほんのすこし、夢の中の景色を、思い起こさせた。
トリエル「……どうしたの?」
メサイヤ「……>>50」
さっきたくさん生えてた黄色い花は何?
あれも食べれるの?
トリエル「きいろいはな?
ああ あのはなは このせかいに
わずかしか さいていない
きちょうな はななのよ。
わたしのへやにも おなじものが かざってあるわ。
ただ、食べることはできないわよ。
もしかして、おなかが空いたのかしら?
バタースコッチシナモンパイが まだたくさんあるけど たべる?
それとも なにかべつのものを つくりましょうか?」
メサイヤは、べつにお腹が空いているわけではなかった。
トリエル「どうしたの?
なにか いいたいことが あるなら
なんでも いってちょうだいね」
メサイヤ「>>52」
街とか人が沢山いる場所に行きたい
トリエル「え……」
メサイヤ「…………」
トリエル「…………」
トリエルは表情を氷らせ、黙ったまま、本をとじた。
トリエル「……わたしは ちょっと
ようじが あるから……
ここで まっていなさい」
そう言うと、トリエルは、そそくさとどこかへ行ってしまった。
階段を降りる音が聴こえた。
メサイヤは、様子のおかしいトリエルを追いかけた。
階段を降りると、無機質な廊下が続いていた。
しばらく歩くと、トリエルが背中を向けながら立ち尽くしていた。
トリエル「まちや ひとが たくさんいるばしょ…
あなたは、『おうち』に かえる
ほうほうを しりたいのね?」
メサイヤは、うなずいた。
トリエルは、振り向かずに言った。
トリエル「このさきに いせきのでぐちが あります
そのむこうは ちていのせかい。
いちどでたら もう なかへもどれません。
これから わたしは その でぐちを こわします。
もう にどと だれも ここから いなくならないように」
トリエルの声は、冷え切っていた。
トリエル「いいこだから、おへやにもどっていなさい」
トリエルは、すたすたと廊下を進んでいった。
メサイヤは走って追いかけた。
トリエルは立ち止まって、また振り返らずに喋った。
トリエルの声は、メサイヤがまだ聞いたことのなかった、つめたいものだった。
トリエル「ここに おちた ニンゲンは
みな おなじ うんめいを たどる…
わたしは このめで なんども みてきました。
ここへ きて…
ここを でていって…
そして、しんでしまう。
あなたは なにも しらないの…
この いせきから でれば…
あなたは かれらに… アズゴアに… ころされてしまうわ」
トリエルが、どんな顔をしているのか、メサイヤは、わからなかった。
怒っているようで、悲しんでいるようで、焦っているようで、絶望しているようだった。
さっきまでかんじていた、あたたかさは、
いまでは、すっかり かんじられなかった。
トリエル「これは あなたを まもるためなの…
…おへやに もどるのよ」
メサイヤはどうする?
>>56
ぼくを あなたの ペットにしようとするのは やめてほしい
ぼくは あなたの さびしさを まぎらわせるために うまれてきたんじゃない
トリエル「っ……」
先ほどから、肩のひとつも動かさなかったトリエルが、明らかに反応示した。
そして、ゆっくりとこちらを振り向いた。
悲しさと、悔しさと、みじめさに満ち溢れた目をしていた。
トリエルの想いが、メサイヤの心に、刺さった。
トリエル「…………」
メサイヤ「…………」
トリエル「……とでも……っ」
トリエル「なんとでもっ……いいなさいっ!」
トリエルはそう叫んで、メサイヤに背を向けた。
トリエル「とめても ムダよ。これが さいごの けいこくです。」
トリエルは、また無言でずんずんと奥へ歩いて行ってしまった。
メサイヤは、全力で追いかけた。
やがて行き止まりにつきあたって、トリエルが立ちどまった。
メサイヤはその後ろに立った。
トリエル「どうしても でていくと いうのね…」
メサイヤ「…………」
トリエル「そう… あなたも ほかの
ニンゲンたちと おなじなのね。
なら のこるしゅだんは 1つしかない…
わたしを なっとくさせて ごらんなさい。
あなたの つよさを しょうめいするのよ」
トリエルに、ゆくてをふさがれた。
トリエルは、メサイヤと目を合わせようとしない。
両手をあわせて、魔法攻撃を放ってきた。
メサイヤは必死に避けたが、攻撃は強烈で、大きなダメージをうけてしまった。
トリエルは、よそよそしい態度をしているが、なおもいくつもの火の玉を飛ばしてくる。
強さを証明すると言っても、メサイヤは、決して強いわけではない。
話し合いで解決しようとしても、何を話せばいいのかもわからない。
メサイヤは、どうする。
>>60
炎の動きをよく見る
ずっと ここに とじこめ られる なんて ごめんだね
いっそ わたしを ころしてよ
といって戦闘態勢を解く
メサイヤは、トリエルから放たれる炎弾をよく見つめた。
ぎゅんぎゅんと通り過ぎる火の玉を、ギリギリのところで避けようとする。
頬が焼けた。髪が焦げた。
もうとっくに、身体に力が入らない。
それでも、なんとか炎を見つめて避けつづけた。
やがて、メサイヤは気づいた。
とっくに自分が動けなくなっていることに。
そして、自分が避けているのではなく、トリエルがわざと火の玉を当てないようにしているのだとわかった。
メサイヤは、下を向きながら火の玉を打ち出し続けるトリエルを見つめた。
トリエル「……何を、しているのっ……」
メサイヤ「…………」
トリエル「たたかうか、にげるかしなさい!!」
メサイヤは、どうする。
>>63
残る力を、なんとか振り絞って、メサイヤは言い放った。
トリエルの攻撃が止んだ。
トリエル「…………」
メサイヤ「…………」
トリエル「……おねがいだから、おへやにもどって」
トリエルは、きのう、メサイヤをベッドまで連れて行ったときと、同じ目になっていた。
トリエル「わたしが ちゃんと おせわをする… やくそくするわ」
トリエル「たしかに ここは なにもない ところだけれど…」
トリエル「わたしたち きっと たのしく くらしていけると おもうの」
メサイヤは、トリエルの目を見つめ続けた。
トリエル「…これいじょう、わたしを こまらせないで ちょうだい…」
メサイヤ「…………」
トリエル「おねがいだから、おへやにもどって」
メサイヤ「…………」
トリエル「…………」
メサイヤ「…………」
無音の空間で、ぼろぼろになったメサイヤと、トリエルは、見つめ合った。
やがて、トリエルはふっと笑った。
トリエル「フフフ……」
メサイヤ「…………」
トリエル「わたし ほんとうに ダメね……
こどもひとり まんぞくに すくえないなんて」
トリエル「……いいの。わかっているわ。
いっしょう ここで くらすなんて あなたはイヤよね。
なれてしまうと いせきは とてもせまい ところだもの。
ここは あなたにとって よい かんきょうとは いえないわ。」
メサイヤ「…………」
トリエル「わたしの のぞみも…
さみしいきもちも…
しんぱいも…
あなたの ために いまは ぜんぶ わすれましょう」
トリエルは、両手をあげた。
場に張りつめていた緊張感が、解け壊れた。
トリエル「あなたが どうしても いくというのなら…
わたしは もう とめません。
でも いちど このとびらの そとに でたら…
にどと ここへは もどらないこと。
どうか わかって ちょうだいね」
トリエルはそう言うと、しゃがんでメサイヤを抱きしめた。
つよく、つよく抱きしめた。
トリエル「さようなら。わたしの だいじなこ…」
トリエルは、今まで何人ものニンゲンが、同じ運命を辿るのを見てきたと言った。
きっと何度も何度も、こうやって、ニンゲンたちを送り出してきたのだろう。
メサイヤはトリエルを抱きしめた。
これが、きっと、彼女との最後の時間。
たった一日でも、家族でいられたことを、感謝した。
そして、ずっと胸に秘めていたことを、静かに打ち明けた。
メサイヤ「……わたしは」
トリエル「……?」
メサイヤ「わたしは……この先に、行かなければいけない」
トリエル「……そうね。あなたには、かえるところがあるんだものね」
メサイヤ「……そうじゃないの」
トリエル「?」
メサイヤ「わたしは……あるひとを、さがしにきたの」
トリエル「!!」はっ
メサイヤ「わたしのたいせつなひとが……きっと、このせかいのどこかにいる」
トリエル「…………」
メサイヤ「……だから……わたしは、この先に、行かなければいけない」
トリエル「……あなた……」
トリエルは、慈愛に満ちた顔をしていた。
トリエル「あなた……おなまえは?」
メサイヤ「……メサイヤ」
トリエル「メサイヤ……そう。あなたは、やさしいこね」
メサイヤ「…………」
トリエル「あなたなら、だいじょうぶ。きっと、そのひとをみつけだせるはずだわ」
トリエルは、満開の笑顔になった。
メサイヤ「……トリエル……」
トリエル「いいのよ。わたしのことは……もう」
メサイヤ「…………」
トリエル「いきなさい。わたしの だいじなこ」
トリエルはそういって、最後にきゅっと強く抱きしめて、帰っていった。
私は、目の前の大きな扉を、ゆっくりと開けた。
おお、喋った
ながいながい廊下を歩く。
どんどん暗くなってゆく。
じきにあたりが真っ暗になってしまう。
すると、目の前に、にょっきりとフラウィが現れた。
フラウィ「……なるほどね。
キミのことが ようやく わかりかけてきたよ。メサイヤ。
こんなこともあるんだね。
キミは、このせかいにとっての イレギュラーみたいだ。
キミ、あれだろ? ともだちか だれかを さがしに来たんだろう?
キミには、ニンゲンのともだちがいた。
そのニンゲンは、このせかいに、いぜんおちてきた ニンゲンのひとり。
キミは そのてがかりを さがしに きたってわけだ。
まったく がっかりだよ。
もっと おもしろいことが おこるとおもったのに…
ふたをあけてみれば こんなことか。
つまらないバグだね。追いかける価値もないよ」
フラウィは、吐き捨てるように言った。
メサイヤは、フラウィをにらみつけた。
フラウィ「でもまあ、かんしんしたよ。
てっきり、トリエルをころして むりやり前に すすむとおもってたからさ。
きみ、じぶんでは うまくやったつもりでしょ?
でも このせかいでは ころすか ころされるかだ。
たまたま じぶんのルールが つうようしたからって いいきに なるなよ。
たったひとりの いのちを すくったからってさ」
フラウィは不気味な笑い声をあげた。
メサイヤは、悪魔みたいな顔をするフラウィを、まけじとにらみ返した。
フラウィ「さぞかし、いいきぶんだろうね。
きみは こんかい だれも ころさなかった。
だけどさ、もしも こんご さつじんきに でくわしたら どうする?
そいつに なんども なんども ころされて…
とうとう こころが くじけたら?
そのときは どうするの?
イラだちに まかせて そいつを ころしちゃう?
ああ、そうさ。ころしてしまえばいい。
キミは 異端者だ。
キミが なにをしたって このせかいは なにもかわらないよ。
ころしたいなら、ころせばいいんだ。
そして おともだちを みつけて さいかいのあくしゅと いこうじゃないか。
その ちにまみれた てでさ」
フラウィは、メサイヤに顔を近づけて、吐き捨てた。
フラウィ「せかいを かえる ちからを もたない
キミに ようはない。
だけど あがくだけ あがいてみなよ。
ひまつぶしには なるだろうからさ」
四方八方から反響するフラウィの狂った笑い声を、目を閉じて、黙って跳ね除けた。
気が付けば、暗闇の中に、一人になっていた。
目の前には、大きな大きな扉がある。
メサイヤは、意を決して、
大きな扉を、開いた。
ANCHOR TALE
面白い 支援
gじゃないだと!?
大きな音を立てて、扉は勝手に閉まった。
もう二度と開くことはないと思わせるほど、重く重く。
抜けた先には、高い木々と雪道が広がっていた。
メサイヤはぎゅっぎゅっと雪を踏みしめながら、何の音もしない静かな道を進んでいった。
この道はどこへ続いているのだろう……そんなことを考えていたとき、後ろの方で何か音がした。
振り返ると、木の枝が粉々に折られていた。
あたりを見渡しても誰もいない。
先に進もうとすると、背中に重いものを感じた。
……誰かが、いる。
メサイヤは無視するように前へと進む。背中にかかる重圧が増す。誰かの視線を強く感じる。
ふと、目の前に木の柵のようなものが現れた。
ただ丸太を組んで作ってあるだけで、門にしては殺風景すぎる。
なんだろうと思いながら見上げていると……後ろから、雪を踏みしめる音が聞こえた。
後ろにいる。
もうそこまで来ている。
メサイヤは振り返るに振り返れない。
背中のすぐ後ろにヒンヤリとしたものを感じる。
誰かが真後ろに立っている。
「お い 、ニ ン ゲ ン」
メサイヤ「っ……」
「はじめて あうのに
あいさつも なしか?
こっちを むいて
あくしゅ しろ」
メサイヤは、おそるおそる振り返る。
目の前に、誰かが立っている。
「誰か」は、こちらに手を差し出していた。
メサイヤは……意を決して、その手を思いきり掴んだ。
……下品な音が鳴った。
音はすぐに雪景色の中に吸い込まれ、静寂が戻ってくる。
目の前には、パーカーを着た白くて大きなガイコツが、笑みを浮かべていた。
「……手に ブーブークッションを
しかけて おいたのさ。
おやくそくの ギャグ だよ」
ガイコツはパーカーのポケットに両手を突っ込んで、満足そうに笑った。
メサイヤはあっけにとられた。
「それはそうと、アンタ ニンゲンだろ?
ははは、ウケるな」
ガイコツは肩を揺らした。
「オイラは サンズ。
みてのとおり スケルトンさ」
サンズ「ニンゲンが こないか
ここで みはってろって いわれてんだ。
っつっても… オイラてきには
ニンゲン つかまえるとか どーでもいいんだけどな」
ガイコツ……サンズは笑い飛ばすようにいった。
まだ少し警戒しているメサイヤを見て、ニタニタと笑顔を浮かべる。
サンズ「でも おとうとの パピルスは
すじがねいりの ニンゲンハンターだぜ。
あ、うわさをすれば… パピルスが きたっぽいな」
サンズは空虚な目でメサイヤの後ろの方を見ながら言った。
メサイヤは驚いて振り返ったが、特に誰もいなかった。
サンズ「とりあえず、この ゲートっぽいのを くぐれよ。
ふつうに とおれるだろ?
パピルスが つくったんだけどさ、 イミないよな」
メサイヤはサンズに視線で押されながら、ゲートっぽいのをくぐった。
背の高い木々の林がひらける。
サンズ「その ちょうどいい かたちの
ランプに かくれてくれ」
メサイヤは言われるがままに、メサイヤと同じ背格好のランプに身を潜めた。
すると、先の方から、赤いマントを羽織った背の高いガイコツが、のしのしとやってきた。
サンズ「よう パピルス」
パピルス「よう! …では ぬぁぁいっ!!
パズルを ちょうせい しておく ようにと
8日まえに いいつけたのに…
いまだに なにも せず!
かってに もちばを はなれて フラフラと…!
こんなところで なにを しているのっ!!」
サンズがパピルスと呼ぶガイコツは、雪を踏みしめながら怒り散らした。
まったく動じていないサンズは、肩を揺らして笑う。
サンズ「そこの ランプを 見てたんだ。
いい ランプだろ? おまえも 見ろよ」
メサイヤは一瞬ギクリとした。
自分から隠れていろといったくせに、なぜこちらに注意をむかせようとするのか。メサイヤにはわからない。
しかしパピルスはこちらに見向きもせず、地団駄を踏んで怒りをぶちまけた。
「そんな! ヒマは! ぬぁぁいっ!!
ニンゲンが ここを とおったら どうする!
ニンゲンの しゅうらいに そなえるのだぁっ!
そして! かならず! このパピルスさまがっ!
ニンゲンを つかまえて やるのだぁっ!」
パピルスは曇り空を指差しながら高々と叫んだ。
サンズの言っていた「すじかねいりの ニンゲンハンター」というのは、嘘ではないようだ。少なくとも気合いだけは。
パピルス「そうすれば、このパピルスさまの
のぞみは すべて かなう!
にんきものになって、そんけいされて…
ついに あこがれの ロイヤルガードになって……」
スカスカの胸に手を当てて未来の展望を夢見るパピルス。
サンズはパピルスの発言を特に気に留めずに、適当に相槌をうった。
サンズ「それなら、この ランプに
そうだん してみるのが いいかもな」
メサイヤ「!」ぎょっ
サンズはランプではなく、ランプの奥に隠れるメサイヤを見つめながら言った。
しかしパピルスは、またもドンドンと地団駄をふんだ。
パピルス「ちょっと!
てきとうな こと いわないでよ!
この くされ スケルトンめっ!
まいにち なーんも せずに
ホネくそ ほじって ばっかの くせに!
そんなだと えらいひとに なれないんだぞ!」
サンズ「いやいや。こうみえても
トントンびょうしに しゅっせ してるんだぜ?
…スケルトンなだけに?」
サンズは渾身のジョークをキメた。
パピルス「さむっ!」
パピルスには こうかは いまひとつのようだ。
パピルス「はぁ… なんで おれさま ほどの
いだいな スケルトンが こんな くろうを
しないと いけないのか…」
パピルスがフラフラとしながら苦悩をこぼす。
サンズは一歩前に踏み出した。
サンズ「おいおい たまには
かたのちから ぬけよ。
これが ほんとの ホネやすめ…!
…なんつって」
パピルス「ぬぁぁぁぁぁ!!」
サンズが2発目をキメて、パピルスの怒りは頂点に達したようだ。
パピルス「もういい! オレは
じぶんの パズルの かんりで いそがしいんだ!
まったく… ニイちゃんは ほんとに
『ホネ』の ずいまで なまけものだな!」
今度はパピルスがジョークをキメた。
サンズはスルーした。
パピルス「ニャハハハハハハ!」
パピルスは笑いながらどこかへいってしまった。
サンズ「よし もう でてきていいぜ」
メサイヤはランプを離れる。
パピルスは、もうどこか見えないところまで行ってしまったようだ。
サンズ「はやく いかないと パピルスが もどって くるぜ?
そしたら…
オイラの キレッキレの ダジャレが
ふたたび さくれつ するぜ?」
今のうちに早く進めということらしい。
メサイヤはサンズにお礼を言って、パピルスの足跡が続く方へと向かった。
サンズ「なあ ちょっと いいか?」
メサイヤ「?」
サンズ「ああみえて パピルスは
ここ さいきん ずっと おちこんでる…
アイツの ゆめは ニンゲンに あうことだから
アンタ あってやってくれよ。
だいじょうぶ。 パピルスは
そんなに キケンな やつじゃない」
サンズは曇り空を見上げながらいった。
パピルスがキケンなやつじゃないことは、メサイヤもなんとなく察していた。
サンズ「だから ひとつ よろしく たのむぜ。
オイラは このさきで まってる」
サンズはメサイヤと反対の方向へ行ってしまった。
だが「このさき」というのは、パピルスが向かっていった方向のことだろう。
メサイヤはきびすを返し、再び雪道をぎゅっぎゅっと歩いた。
おつ
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