高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「休日のカフェテラスで」 (40)

――おしゃれなカフェ――

高森藍子「はい、加蓮ちゃんっ」(手をマイクの形にして加蓮の方に出す)

北条加蓮「……?」

藍子「インタビューですよ。ほら、加蓮ちゃん。お願いしますっ」

加蓮「う、うん」

藍子「ほらほらっ」ズイ

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……何か喋ってくれないと、インタビューになりません」

加蓮「いや、それならお題みたいなのを出してよ……」

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――まえがき――

レンアイカフェテラスシリーズ第53話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」

~中略~

・北条加蓮「藍子と」高森藍子「靄々の桜流しに」
・高森藍子「加蓮ちゃんの」北条加蓮「膝の上に 2回目」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「探り合いのカフェで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「9月に入った頃のカフェで」

藍子「お題……。なら、カフェについて」

加蓮「カフェについて」

藍子「カフェについてっ」

加蓮「……藍子の方が詳しいでしょ?」

藍子「そういうことではなくて、ええと……。。なんて説明すればいいのかな……」

藍子「情報や、知識とかではなくて。加蓮ちゃんのお話が聞いてみたいんです」

加蓮「それってこの前みたいな、私の見てる物がー、てヤツ?」

藍子「そんな感じでしょうか。こう、加蓮ちゃんにとってのカフェとは、みたいな」

加蓮「私にとってのカフェ、かー」

藍子「教えてください、加蓮ちゃん」

加蓮「カフェ……」ウーン

加蓮「……」

加蓮「……藍子がいる場所?」

藍子「わ、私だって自分の家とか事務所にいることだってありますよ。そんな、カフェにしかいないみたいなこと言わなくても」

加蓮「え? カフェに住んでるんじゃないの?」

藍子「住んでません! 加蓮ちゃんだって、私の家に何度も来てるじゃないですかっ」

加蓮「あれはほら、藍子のもう1つの家的な」

藍子「それはどっちかっていうと事務所の方ですっ」

加蓮「じゃあ……こう……。人間の藍子の居場所はあの家で、アイドルの藍子の居場所は事務所ってことにしよう」

藍子「それなら、カフェが居場所の私は何になるのでしょう?」

加蓮「……、カフェの妖精?」

藍子「カフェの妖精なら、確かにカフェにいるのも納得ですね」

加蓮「ってことは、私は妖精に会いに行っている女の子」

藍子「なんだか、アニメに出てくる魔法少女みたい」

加蓮「パス」

藍子「えー」

加蓮「それ奈緒の役だから。だから妖精はパス」

藍子「確かに、アニメのキャラクターを演じるなら奈緒ちゃんの方がそれっぽいですよね」

加蓮「ねー。……私も挑戦してみよっかなぁ」

藍子「?」

加蓮「カフェの見習いとかどう? 住み込みで見習いしてるの。だから藍子の家はここなの」

藍子「それなら、家に帰らなくなっちゃうのも……?」

加蓮「いつか藍子は自分のカフェを持つのかな」

藍子「ふふっ。それもいいかも♪」

加蓮「……いや待って」

藍子「また、新しいお話を思いついちゃいましたか?」

加蓮「実は藍子は人間ではなかったの」

藍子「どこからそんなお話が!?」

加蓮「そのままフツーにやっても面白くないかなーって思って」

藍子「普通でいいじゃないですかっ」

加蓮「藍子は本当はカフェを乗っ取ろうとする悪い魔女だった。元々のカフェの持ち主が寿命とかで死んじゃって……」

藍子「な、亡くなってしまって……?」

加蓮「本性を表した藍子は! 遂にカフェを乗っ取った! ……っていうのはどう?」

藍子「……」

加蓮「♪」ドヤッ

藍子「……とりあえず、私を悪者にしないでください」プクー

加蓮「えー。ここから大魔法使い藍子ちゃんを討伐しに行く加蓮ちゃんの、壮大で感動のストーリーが始まるところだったのに」

藍子「加蓮ちゃん、そういうの好きですよね」アハハ

加蓮「藍子の元に向かった加蓮ちゃんは藍子に寝返って人類征服に協力することになりました。ハッピーエンドだね」

藍子「どこがどうハッピーなんですか!?」

加蓮「ちいさい頃の加蓮ちゃんが、人間なんて滅んでしまえって言ってた!」

藍子「またそういうことを! もう……加蓮ちゃんがそうなら、私だって人間側についちゃいますからねっ」

加蓮「人間と魔女は協力して加蓮ちゃんをやっつけるのでした。人類は平和になりました。ハッピーエンドだね」

藍子「それならお話としてはハッピーエンドかもしれませんけれど……それだと、加蓮ちゃんがハッピーじゃないですよね?」

加蓮「甘いよ藍子。誰かが幸せになる時、誰かが不幸せになる。それが世の中だよ」

加蓮「アイドルだってそうでしょ? 自分がオーディションに合格したなら、誰かが不合格になってる」

藍子「うぅ、また反論しにくいことを」

加蓮「藍子が幸せになった時、加蓮ちゃんは不幸せになってる」

加蓮「でも、それでいいんだよ。私は、藍子が幸せなら、それでいいの」

藍子「加蓮ちゃん……」

加蓮「だから、大魔法使い・藍子。胸を張って生きなさい。あなたは自分の手で幸せを掴み取ったのだから……」

藍子「……ぐすっ。次の世界では必ず、加蓮ちゃんのことも幸せにしますからね……!」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……次の世界って?」

藍子「さあ……?」

加蓮「ていうか藍子、今なんかちょっとガチで泣いてなかった?」

藍子「気のせいです」

加蓮「泣いてた」

藍子「じゃあ加蓮ちゃんのせいです。加蓮ちゃんに泣かされてしまいましたっ」

加蓮「えー」

□ ■ □ ■ □



藍子「加蓮ちゃんにカフェのことを聞いてみると、私の名前を挙げてくれた……」カキカキ


加蓮(ノートとにらめっこしてる藍子を見てるとこう、イタズラしたくなるなぁ。……メロンソーダおいしー)ゴクゴク


藍子「それだけ加蓮ちゃんにとって、私=カフェというイメージが強いみたいです……」カキカキ


加蓮(ほったらかしにされるのムカつくなー。あと5分経ったら何かしちゃろ)ホオヅエ


藍子「嬉しい反面、ちょっぴり複雑……」カキカキ


加蓮(……髪をちょっと上げる感じで、髪飾りには澄んだ水色の……羽根っぽいヤツ。うーん、それだけじゃ足りないかなぁ)ウーン


藍子「私と加蓮ちゃんは、カフェでよくこういうお話をしていて……」カキカキ


加蓮(知的っていうより大人っぽくしてみたいんだよね。あーでも知的なのも捨てがたいかな)マゼマゼ


藍子「つまり加蓮ちゃんにとってカフェとは、私こと高森藍子が魔女になる場所である……と」カキカキ


加蓮(メーガネー、メーガネー。めがねのうたー♪ ……ハッ。何今の。これもあの妖怪まあまあメガネどうぞの仕業かっ)グヌヌ


藍子「……あれ? どうしてこんなお話になってしまったのでしょうか」

加蓮「さー?」ゴクゴク

藍子「こういう時は一度最初からやり直そう。まずはもう1度、加蓮ちゃんにお話を――」

藍子「って加蓮ちゃん何か飲んでる……。いつ注文したんですか?」

加蓮「ん? これ? さっき」

加蓮「藍子がブツブツ言い出してノートとにらめっこし出して、割とすぐに」マゼマゼ

藍子「そうだったんですか。ぜんぜん気づきませんでした」

加蓮「集中してたっぽいからねー」ゴクゴク

藍子「ごめんなさい。やり始めたら、周りが見えなくなっちゃってたみたいです」

加蓮「ほったらかしにされて寂しかったよーもー」

藍子「ふふっ、ごめんなさい。……な、何か変なこととかしていませんよね?」

加蓮「してほしかったの?」

藍子「そうじゃなくてっ」

加蓮「やっぱりインタビューって言えばメロンソーダだよね」

藍子「いつもそうなんですか?」

加蓮「うん。なんとなく注文してるんだ。藍子も飲む?」

藍子「今はあんまり、炭酸の気分じゃありませんから」

加蓮「上のクリームのところだけとか、いいよ?」

藍子「それなら、ちょっぴりだけ」アーン

加蓮「ん」ズイ

藍子「あむあむ……♪」

藍子「……も、もう一口だけ」ジー

加蓮「や、やだっ。やっぱりあげないっ。このクリームもソーダもぜんぶ私のものだっ」マゼマゼ

藍子「ふふっ♪ いいですよ。今加蓮ちゃんにもらっちゃったら、ぜんぶ食べちゃいそうですから」

藍子「私は、何か別の物を注文しますね。すみませーんっ」

加蓮「ほっ」

藍子「うーん。……何にしよう」

加蓮「決めてから呼びなさいよ。店員さんも、何も直立不動で待たなくても」ゴクゴク

藍子「うぅ、急いで決めなきゃ」

加蓮「じゃコーヒーで。苦くなくて、大人っぽいヤツ。……銘柄? あー……えーっと……」

加蓮「とにかくそういうヤツでっ。飲むのは藍子だから、そこのところもよろしく~」

藍子「あっ……それでお願いしますね。はいっ♪」

藍子「……びっくりしました。加蓮ちゃんが今、飲みたいものをピタリと言ってくれて」

加蓮「これくらいはね?」

>>11 1行目の加蓮のセリフを一部修正させてください。
誤:メロンソーダ
正:クリームソーダ



藍子「大人っぽいコーヒーって、やっぱり苦いイメージがありますね」

加蓮「超真っ黒だったりね。砂糖とかミルクなんて当然邪道」

藍子「あるだけで、なんだか緊張感が増してしまいそう」

加蓮「わかるー」

藍子「クリームソーダがインタビューされる側の飲み物なら、コーヒーはインタビューする側の飲み物ですっ」

加蓮「わかるー」

藍子「雑誌の記者さんやテレビの方も、コーヒーばかり飲んでいますよね」

加蓮「ファミレスに入ったらまずコーヒー1杯! 的な?」

藍子「的なっ」

加蓮「なんでコーヒーって大人っぽいイメージなんだろうね」

藍子「やっぱり、苦いからでしょうか」

加蓮「苦かったら大人かー。じゃあ、甘かったら?」

藍子「ちょっぴり子どもっぽいかも」

加蓮「辛かったら」

藍子「辛かったら……。辛かったら? 何になるのかな……?」ウーン

加蓮「男の人っぽい、とかになる? ほら、激辛ラーメンとかに挑んでる男の人とかそんな感じ」

藍子「あ~」ポン

藍子「あ、でも、大食いでも激辛チャレンジでも、女性の方もよくやっていますよ?」

加蓮「マジ?」

藍子「はい。それにちょうどこの前、茜ちゃんが番組の企画でやっていましたから」

加蓮「あぁ。……ちなみに何を食べてたの?」

藍子「激辛のおにぎりです」

加蓮「おにぎり?」

藍子「おにぎり」

加蓮「激辛でおにぎり?」

藍子「はい。おにぎり」

加蓮「……おにぎり?」

藍子「おにぎり」

加蓮「おにぎりってどうやったら辛くなるの?」

藍子「さあ……? 辛い食材をいっぱい入れてみるとか?」

加蓮「トウガラシとかかな」

藍子「茜ちゃんが食べていたのは……真っ赤なおにぎりでした。うぅ、思い出すだけで汗が出ちゃいそう」

藍子「でも茜ちゃんはそれが楽しかったみたいで、この前、事務所で再現しようとしていました」

藍子「……全力で止めました」アハハ

加蓮「その時に事務所にいなくてよかったよ」

藍子「私をかばってくれた未央ちゃんが被害に遭ってしまって……」グスッ

加蓮「未央ならどうせケロッとしてるだろうから大丈夫大丈夫」

藍子「む。未央ちゃんだって傷つく時は傷つくんですよ?」

加蓮「その時は茜だってほったらかしにしないでしょ。大丈夫大丈夫」

藍子「……ふふ。そうかもしれませんね♪」

藍子「結局、辛いイメージは茜ちゃん、ということになるのでしょうか?」

加蓮「じゃ辛いのはは茜で。あとは……何があったっけ?」

藍子「うーん……。辛いのと、甘いのと、苦いのと……」ユビオリカゾエ

藍子「あっ、店員さんっ」

加蓮「コーヒーの匂いがすごいねー。ほら藍子。お望みのが来たよ」

藍子「いただきますっ。ごくごく……」

加蓮「ん? 店員さん……へー、コーヒーの銘柄早見表ってあるんだ。え? くれるの? ふふ、さんきゅ。勉強しとくね」

藍子「ふうっ。美味しい……♪」

加蓮「……私見逃してないよ? 今後ろ手でガッツポーズしたでしょ」

藍子「?」

加蓮「店員さん逃げたー。顔赤くして逃げちゃった」

藍子「……? 次のお客さんの注文が入っていたのでしょうか。なら、悪いことをしちゃったのかな……?」ゴクゴク

加蓮「絶対それはないから安心していいよ」

藍子「ふぇ? どうして分かるんですか?」

加蓮「加蓮ちゃんマジック」

加蓮「それよりさ、インタビュー? の続きをやろうよ。何か聞きたいこととか、話してほしいことがあるんでしょ?」

藍子「あっ、そうでした! では、さっきの……なぜか私が魔女になっちゃったお話は、なかったことにして」

藍子「ごほんっ。加蓮ちゃんにとって、カフェとはどんな場所でしょうか?」

加蓮「改めて聞かれると難しいよね……。うーん……」

藍子「どんなささいなことでもいいんです。教えてください」

加蓮「まずは……コーヒーの匂いがするところ?」

藍子「今日は、いつもより匂いが強く感じられますね。目もばっちり開いちゃいそう」ゴクゴク

加蓮「背筋も伸びちゃうよねー。で、耳を済ますと食器や調理の音が聞こえてきて」

藍子「ふんふん」カキカキ

加蓮「人の声が聞こえたりして」

藍子「人の声が聞こえて」カキカキ

加蓮「目を上げればそこに藍子がいる」

藍子「そこに私こと、高森藍子がいます」カキカキ

加蓮「愉快な店員もいるよね」

藍子「楽しい店員さんがいる、っと」カキカキ

加蓮「気がついたら時間が溶けてなくなっています。これもやはり藍子ちゃんのゆるふわ空間が原因だと思われます。つまり藍子は時間を奪う魔女なのです」

藍子「つまり、私こと高森藍子は時間を奪ってしまう魔女――」カキカキ

藍子「加蓮ちゃんっ」プクー

加蓮「あははっ」

藍子「加蓮ちゃんは、どうしても私を魔女にしたいんですね」

加蓮「そうなったら弟子入りだー。何か教えてよ」

藍子「加蓮ちゃんに教えられること……何かあるかな?」

加蓮「まずはゆるふわ空間の作り方から」

藍子「教えるも何も、あれは無意識になっちゃうから」

加蓮「教えることは何もない、技術は盗め、か。なるほどー、さすが藍子。大物だね」

藍子「私そんなこと全然言ってない……」

加蓮「でもさ、いつの間にか時間が過ぎているっていうのは大切じゃないかな」

藍子「時間が過ぎていること?」

加蓮「私ね。ずっと昔から、いつも時間を短く感じてるの」

藍子「時間が、短く……」

加蓮「いつからかな。病院っていう牢獄を抜け出して……ううん……それからすぐの頃は、自分には何もできないって叩きつけられて」

加蓮「その頃はまだ、時間が長く感じられた。毎日がつまんなかった」

加蓮「でもさ。アイドルになってから、藍子とここで話すようになってからは、時間がどんどん無くなっていくの」

加蓮「一度モバP(以下「P」)さんに相談してみたんだ」

加蓮「そしたらPさん、笑って答えてくれた」

加蓮「それは毎日が充実してるからだ、って」

加蓮「そっか、って思って……そういえば学校の先生が同じこと言ってたな、って」

加蓮「おかしいよね。先生が言っても全く信じられなかったことなのに、同じことをPさんに言われたら納得できたんだもん」

加蓮「言った相手が違うのもあるかもしれないけど、なんていうか……実感できてたのかな」

加蓮「今の私の毎日が充実してて、毎日が幸せだってこと」

加蓮「もしかしたら私、その時に初めて、自分が幸せなんだって気付けたのかもね」

藍子「加蓮ちゃん……」

加蓮「……って……あ、あれ? ……あははっ。ごめんね? ついシリアスモードに……」

加蓮「え、ええと、とにかく私が言いたかったのは、えと……」

加蓮「ほら、カフェは時間がすぐになくなっちゃう場所だってこと!」

加蓮「で、それでもいいやって思える場所っ。それが私にとってのカフェってことなの!」

加蓮「……で、いい?」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「なんとか言ってよ。なんかダメなこと言ってるみたいじゃん!」

藍子「あ……ううん。駄目なんかじゃありませんよ。つい、聞き入ってしまいました」

藍子「加蓮ちゃんにとってのカフェは、時間がなくなっちゃう場所で、それでもいいって思える場所」カキカキ

加蓮「うぅ~。改めて復唱されると、ちょっと照れちゃうな~」

藍子「……私、少し意外でした」

加蓮「意外?」

藍子「加蓮ちゃんはずっと昔から、自分が幸せだって気づけているんですね」

加蓮「え? うん、まぁ……。実際、Pさんと出会えてアイドルになれたことってすごく良かったことなんだし」

藍子「ちょっぴりほっとしました。加蓮ちゃん……幸せを見落としてしまうことがありそうだな、って思っちゃうことが、時々ありましたから」

加蓮「そう?」

藍子「ちょっぴりだけですよ?」アハハ

加蓮「見落としてたのかなー。見落としてたのかも。時間があっという間にすぎちゃったら、見逃す物も多くなるのかもね」

藍子「もしそうなら、時には時間を長く感じることも、大切なのかもしれませんね」

加蓮「でもさー、やっぱり楽しい時間ってさ?」

藍子「あっという間になくなっちゃいますよね!」

加蓮「ねー」

藍子「難しいですね~」

加蓮「インタビューはそんな感じでいい?」

藍子「あ、はい。……ごほんっ」スワリナオシ

藍子「では、今日のインタビューはこれでおしまいです。加蓮ちゃん、お話、ありがとうございました」ペコッ

加蓮「いえいえー。じゃあまたねー」

藍子「へ?」

加蓮「あれっ?」

藍子「……もしかして、1人になりたい気分でしたか?」

加蓮「いや別に……」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……あ、ほら、コーヒー残ってるし、それ飲んでから考えてもいいんじゃない?」

藍子「加蓮ちゃんこそ、クリームソーダ、まだ半分以上も残っていますよ」

加蓮「ホントだ。喋りだしたら飲まなくなっちゃうんだよね、こーいうのって」

藍子「あっ、そこ、クリームが垂れかけてますっ」

加蓮「おっといけない。拭いてー、混ぜてー」グルグル

藍子「私も残ったコーヒーを頂きますね。ごくごく……」

加蓮「……」ミアワセ

藍子「……」ミアワセ

加蓮「……ぷくっ」

藍子「あはははっ」

加蓮「変なのー」

藍子「勘違いっ」

加蓮「てっきり藍子、インタビューしにここに来たのかと思っちゃったから」

藍子「それは目的の1つです。加蓮ちゃんに誘われたから、せっかくならやっておこうかな、って」

加蓮「そういえばそれの目的何だったの? あ、ネタバラシしちゃダメな感じ? ならいーけど」

藍子「説明していませんでした。実は私、今、雑誌のコラムを書かせてもらっているんです。カフェについてのことで」

加蓮「おー」

藍子「最初は、知っているカフェの写真と料理の紹介、それから行った時の感想みたいな物を載せてもらっていたんです」

藍子「短期連載だったのが、読んでくださる方が多かったみたいで……。ファンレターも頂いちゃって。それで、もっと書いてほしい、って頼まれちゃいました」

加蓮「そんなことやってたんだ。全然知らなかったなぁ」

藍子「コラムって言っても、すっごく短い物ですから」

加蓮「それで私へのインタビューなんだね」

藍子「はい」

加蓮「これで私もとうとうカフェアイドルデビューかなぁ」

藍子「お揃いですねっ」

加蓮「カフェユニットとか組んじゃったりしてさ。こう、制服っぽい衣装で」

藍子「それいいかも! 私、カフェの制服、着てみたかったんですっ」

加蓮「着ちゃえ着ちゃえ。そのままステージに上がっちゃえ」

藍子「それなら、加蓮ちゃんはお客さん役とかどうですか?」

加蓮「お客さんかー。衣装にすごく悩みそう。それにステージっていうより公演とかになりそうだね」

藍子「カフェ公演?」

加蓮「お客さんの加蓮ちゃんが、店員の藍子ちゃんとひたすらぐだぐだと――」

藍子「それ、あんまり公演にはならなさそう……」

加蓮「……うん。やっぱりカフェの魔女・藍子ちゃんを私が討伐しに行く話にしよう」

藍子「それだと違う公演になっちゃいそうです」

加蓮「カフェガールズ」

藍子「カフェガールズ?」

加蓮「どうせなら私も店員側でいいかなって。で、ファンのみんなにコーヒーとか出したりするの。銘柄もちゃんと勉強してからね」

藍子「もしかして、加蓮ちゃんも制服を着てみたいんですか?」

加蓮「藍子に言われたら興味が出ちゃった」

藍子「本当に演じる日が来るかもしれませんね」

加蓮「でも今は、藍子のコラムの話だよ」

藍子「そうでした。今日のお話、載せるようにしてもいいですか?」

藍子「いつも一緒に行く、仲良しさんのお話。……なんて感じでっ」

加蓮「いーよいーよー。あ、でも無駄にシリアスっぽいところはカットで。あんまり重たい話にするのもダメでしょ?」

藍子「割と何でもアリみたいですし、いいと思いますけれど……。それに今の加蓮ちゃんのお話、とっても大切なことだと思いますよ。ぜんぜん無駄なんかじゃありませんっ」

加蓮「私が嫌なの。それに藍子のコラムなんだし、ほのぼのしてた方がいいじゃん」

藍子「……分かりました。じゃあ、最後の「時間がなくなっちゃう場所で、それでもいいって思える場所」って部分だけいいですか?」

加蓮「んー。それくらいならオッケー」

藍子「はーい。それより前の加蓮ちゃんのお話は、私の胸の中にしまっておきますね」

加蓮「その薄っぺらい胸じゃ明日のうちにあちこちに広まっちゃいそ――」

藍子「さて、加蓮ちゃんのお話をもう1回まとめなきゃ。ぜんぶコラムに掲載することになりそうですからっ」

加蓮「ごめんなさい冗談です」

□ ■ □ ■ □



藍子「コーヒー、ごちそうさまでした」パン

加蓮「クリームソーダまだちょこっと残ってるけど、インタビューすることってもうないの?」

藍子「とりあえず、次のコラムの分は確保できましたから」

加蓮「そっか」

藍子「また困った時に、お話、聞かせてくださいね」

加蓮「はーい」

藍子「困ってなくても聞かせてくださいっ」

加蓮「じゃあ逆に私が困らせてやる」

藍子「ええ!?」

加蓮「ふふっ」

藍子「もうっ。……それで――」

加蓮「?」

藍子「今度は、色々なカフェに行って、そこで食べた物のお話や体験談、あと感想かな? を、コラムに載せる予定なんです」

藍子「何回かに分けて、連載って形にするって、Pさんが言っていました」

加蓮「うん」

藍子「行く場所も、何箇所かは決めていて」

加蓮「うんうん」

藍子「…………」ウーン

藍子「うん。やっぱりそうしようっ」

加蓮「?」

藍子「ねえ、加蓮ちゃん」シンケンナカオ

加蓮「改まってどしたの」

藍子「一緒に、行きませんか?」

加蓮「……何に?」

藍子「ですからカフェにです。コラムを書くためのカフェ巡り。加蓮ちゃんも一緒に行きませんか?」

加蓮「え、私が?」

藍子「私1人だと、色々と不安で……。加蓮ちゃんがいてくれたら、すごく安心できますから」

藍子「店員さんにお話を聞く時とか、アポを取る時とかも、加蓮ちゃんがいてくれるだけでもっと上手くできそうですっ」

加蓮「そう?」

藍子「はいっ。あと、加蓮ちゃんなら私の気づかないことにも気づいてくれるかなって……」

藍子「私と加蓮ちゃん、2人分の気づきがあれば、もっといい感じのコラムになると思うんです」

藍子「それに――」

藍子「そういうのがなくても……一緒に行きたいなぁ、って」

加蓮「……ん……」ズズ

藍子「だって私と加蓮ちゃん、もうずっと前からカフェ仲間じゃないですか! せっかくカフェのことをやるんだから、一緒にやりたいですっ」

藍子「きっといっぱい、楽しいことがあると思うから……。そういうの、加蓮ちゃんと分け合いたいなぁって」

加蓮「…………」ズズ

藍子「……ダメ、ですか?」ウルウル

加蓮「…………」ゴクン

加蓮「あざとい」ベチ

藍子「あうっ」

加蓮「そんな顔したらだいたいの人が頼みを聞いてくれるって思ってるでしょ。世の中の男ってアホだなーとか思ってるでしょ」

藍子「そんなこと思ってませんよ!? それに加蓮ちゃんは女の子ですっ」

加蓮「知ってる」

藍子「へ? あ、あはは、そうですよね。加蓮ちゃんは女の子――」

加蓮「違うって……。まぁいいや」

加蓮「言っとくけど藍子の言うほど私は役に立たないよ? お荷物になる未来しか見えないし」

藍子「そんなことないです」

加蓮「気の利いたこととか言えないよ?」

藍子「むしろ思ったままを言ってほしいです。私、そういうのはなかなか言えないから……」

加蓮「前みたいに体調崩して計画がパーになるかもしれないよ?」

藍子「その時は、また加蓮ちゃんの家に押しかけちゃいます!」

加蓮「……」

藍子「……」ムンッ

加蓮「……ふふっ。誘ってくれてありがと。じゃあ、私もついていっちゃおっか!」

藍子「! はいっ♪」

加蓮「藍子とカフェ巡り……カフェ巡りかー。……ふふっ」

加蓮「いっぱい準備しなきゃ。地図アプリに、パンフレットに、あと口コミを調べてー。あっそうだ。コラムの書き方とか勉強してみるのも良さそ――」

藍子「加蓮ちゃん。一緒にやるっていうのは、準備からですよ?」

加蓮「あ……そうだね。また1人で考えちゃってたかも。早速作戦会議、始めちゃう?」

藍子「始めちゃいましょう! まず、既に行くって決めているカフェですけれど――」

加蓮「待ってよ藍子。それなら飲み物を注文しなきゃ」

藍子「そうでしたね。今日から加蓮ちゃんもインタビューする側の人です」

加蓮「インタビューする側の飲み物と言えば?」

藍子「コーヒーっ」

加蓮「すみませーん!」

藍子「あはっ♪」



加蓮「……ごめん、お腹ちょっと苦しいから私は何もいらないや」

藍子「え、えええぇ……」

加蓮「クリームソーダって結構お腹いっぱいになるんだよねー……。ゆっくり飲んでたし尚更。だから言ったでしょ? お荷物になる未来しか見えないって」

藍子「なら、加蓮ちゃんの分まで飲んじゃいますね。店員さん、コーヒーのおかわり、お願いしますっ」



おしまい。
読んでいただき、ありがとうございました。

おつですー

モバのアンケートの回答が、レンアイカフェの影響受けまくりで自分でもびっくりでしたー

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