【モバマス】賭博破戒録ウサミンロボ (23)
天才アイドル池袋晶葉によって作られたウサちゃんロボは、団子製造配布からバックダンサー、PLUMのプラキット(標準小売価格二千円)までこなす優秀なロボである。
ウサちゃんロボは、異星の超科学ウサミン科学によってさらなるパワーアップを成し遂げる。
人はそれを、ウサミンロボと呼んだ!
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ウサミン星に帰る。と突然安部菜々が言い始めたとき、皆はビックリしました。
「え、あの、また戻ってきますよ? ちょっと里帰りするからお休みが欲しいなって言うだけです」
皆は安心しました。
「本当に、私も行って良いのか?」
里帰りの前日、荷物をまとめた池袋晶葉が言いました。
ウサミン星に国賓としてご招待されたのです。
「もちろんです」
「緊張するなぁ、本当に私なんかが国賓でいいのか」
「ここまでウサミン科学を極めた地球人アイドルに興味があるって、ウサミン大王が」
「王制なのか、ウサミン星」
「投票制ですけど」
投票で王様が決まるそうです。
二人はウサミンロボに、留守をくれぐれも頼むと言い残して出発しました。
そしてモバPには、ウサミンロボ統轄権限を渡していきました。これがあれば、地球上の全てのウサミンロボに上位命令を発することかできるのです。
その気になれば地球征服も不可能ではありません。
765プロさえ倒せれば、の話ですが。
そんなある日。
モバPは食堂で遅い昼食の日替わり定食を食べています。
因みにメニューはコロッケ、うずらとウィンナーの串揚げ、コールスロー、ジャガイモとタマネギの味噌汁です。
そこへ、慌てた様子のちひろさんが駆けて来ます。
因みにちひろさんの昼飯は、社長の付き添いでのあさんフレちゃんナターリアと一緒に回らないお寿司です。
「大変です!」
「どうしました、ちひろさん」
「これを見てください」
「これは、事務所未公認ファンクラブの機関紙じゃないですか」
「中身を読んでください」
「ちょい悪ファンでアイドルの心を掴め?」
「それです」
「なんだこりゃ」
「読んでみてください」
「……」
そこには様々な場面での、偶然を装ってアイドルの心を掴む出会い方、出会いがうまくいった場合の食事やお茶への誘い方、誘った先でのセクハラの仕方などが羅列されているのです。
しかも全然心が掴めてません、勘違いというにも恥ずかしすぎる見当違いの口説き文句と行動の数々です。
どう見てもただの犯罪者です。ストーカーです。
熟読したモバPは怒髪天を衝きます。
「このぉおおっ!! 許せねぇ!!!!」
モバPの怒りが頂点に達した時、異次元からミラクルなパワーが送り込まれます。
これをサイバーボミングと言います。
「やっぱりそう思いますよね」
「なんなんですかこれは、こんなふざけた記事、断固抗議しましょう」
「それが……」
「百歩譲ってアイドルたちに出会ってお話がしたい、まではいいでしょう。しかし、なんですか、これ、口説くって、後半なんてほぼセクハラじゃないですか、いや、痴漢だ」
「落ち着いて、もう一度よく見てください」
「ん……、これは……新甲美彼? 木田末央? 者星さらり? ア+スタシア?」
「別人だといわれればそれまでです」
「くっ、卑劣な……」
「まさかとは思いますが、扇動されてしまう馬鹿、もとい、純真なファンもいるかもしれません」
「いい手がありますよ。この記事をすべてスキャンしてください」
「わかりました。しかるべきところに送りつけるんですね」
「いえ、スキャンしたデータは、全ウサミンロボに送ります」
「え」
「くっくっく……勘違い馬鹿、もとい、ちょい悪ファン狩りの始まりだ」
………………………
「その作家には、不遇な時代があってねえ……」
とある古本屋の奥まった棚の前で、鷺沢文香は当惑していました。
地方ロケの合間を縫って、地元の老舗古本屋を見つけたのです。
大規模チェーンなどの攻勢でみるみる数を減らしていく昔ながらの古本屋。
それでも、こうやってひっそりと続けているお店はあるのです。文香にとって、それは聖域ともいえる空間です。
地方の郷土史や、限定発行の今でいうミニコミに近い本。
文香にとっては宝石のきらめきに囲まれているようなこの空間。
そこに現れる闖入者。
男は何やら語り続けていますが、思いっきり間違えています。今、文香が手に取っている本の著者とは別人の話です。
「ふむ」
男は、一人合点に頷いています。
「どうですか、同好の誼で一緒にお茶でも」
うさーーーーーーっ!
駆けつけたウサミンロボのウサミン竹槍が男の尻に突き刺さりました。非殺傷なので安心です。
ほんげー、と悲鳴を上げた男の懐から、未公認ファンクラブ機関紙が出てきます。
ウサミンロボは店の主人と文香にぺこりと頭を下げると、男を抱えて去っていくのでした。
ついでに古本を一冊、「ケイブンシャのウサちゃんロボ大百科」を購入しました。
……………………
「このパンは人間でいうとどの部分なのかな?」
「はい?」
大原みちるは首をかしげました。
パンを差し入れしてくれたファンがいました。パン自体には不審な点がなかったので、みちるは普通に食べ始めました。
なお、みちるに美味しいパンを貢ぐのはファンの間では常識です。崇高なる義務です。当然かつ自明の権利です。大いなる幸福です。
以前はプロデューサーが阻止したり注意したりしていたのですが、ある日空腹に耐えかねたみちるが
「次邪魔したらプロデューサーごと食べますよ」
と宣言したため、プロデューサーは泣いて謝ったそうです。
勿論、みちるに対しておかしな混ぜ物をしたり仕掛けをしたパンを渡す不届き者などいません。
なぜなら、みちるはパンに対するトラップなら10キロ先からでも気付くからです。
今届けられたものもパン自体は普通のパン、いえ、美味しいパンです。
それだけに、差し入れたファンの言葉の意味がわかりません。
「このパンのように柔らかいのかな、みちるちゃんの二の腕」
男の手がみちるの腕へと伸びます。触るつもりです。痴漢です。
うさーーーーーーっ!
駆けつけたウサミンロボのウサミン竹槍が男の尻に突き刺さりました。非殺傷なので安心です。
ぱんげー、と悲鳴を上げた男の懐から、未公認ファンクラブ機関紙が出てきます。
ウサミンロボは男の落としたパンを拾うと全てみちるに渡し、男を抱えて去っていくのでした。
ついでに美味しそうなパンを一つ、事務所へのお土産にするのを忘れません。
………………………
「その眼鏡レンズ職人には、不遇な時代があってねえ」
上条春菜は頷きました。
「やはり、こんな地方にもコンタクトの魔の手が迫っていたんですね」
「え」
安土桃山時代から代々続くガラス工芸、その一部に脈々と受け継がれてきたレンズづくりの匠の技。
春菜が訪れているのは、土産物屋の隅にひっそりと置かれた、そんな伝統を紹介する地元商工会の展示ブースです。
「一介の眼鏡者として、座して看過はできません」
「あ、はい」
「その話を詳しくお願いします」
「え、あ、いや」
「詳しく!」
「え、あの、えーと、あ、あの、外しても可愛いよ」
「あ゛?」
アイドルがしてはいけない顔になった春菜の手が男へと延びます。
うさーーーーーーっ!
駆けつけたウサミンロボのウサミン竹槍が男の尻に突き刺さりました。非殺傷なので安心です。
めがげー、と悲鳴を上げた男の懐から、未公認ファンクラブ機関紙が出てきます。
春菜も我に返ります。
なんかおかしいウサ、とウサミンロボは思いましたが、深く考えないことにしました。
……………………
「その筐体には、不遇な時代があってねぇ」
「へ?」
初代ストリートファイターに夢中になっていた三好紗南は手を止めずに聞き返しました。
「この筐体? ストリートファイター自体じゃ無くて?」
PVの地方ロケに合わせて、各所に眠るレトロゲームを探すのは紗南の密かな趣味です。
ここではほぼ完全稼働の初代ストリートファイターアップライト筐体が稼働していたのですから、紗南はとても喜んでいます。
男はどこかで聞いたようなゲームうんちくを垂れ流し続けます。ところどころで別の話が混ざっているような気がします。
「その筐体だと、ボタンを押す力の強弱で技が決まるだろう」
「うん」
ようやく、ストリートファイター筐体の話に戻ってきました。
「どのくらいの力でどの程度の技になるか教えてあげようか」
「知ってますけど」
「いやいや、力の加減というか優しい押し方を直にね、ほら、色々と」
男の手が紗南の胸へと伸びます。触るつもりです。痴漢です。
うさーーーーーーっ!
駆けつけたウサミンロボのウサミン竹槍が男の尻に突き刺さりました。非殺傷なので安心です。
れげー、と悲鳴を上げた男の懐から、未公認ファンクラブ機関紙が出てきます。
ウサミンロボはついでに太鼓の達人エクストリームをパーフェクトクリアすると、男を抱えて去っていくのでした。
……………………
「よし、いいぞ、ウサミンロボ。この調子で悪いファンを懲らしめ続けるんだ!」
「セクハラワードを発したファンは許してはならんっ!!」
モバPのさらなる命令でウサミンロボの活躍は続きました。
「蘭子ちゃん、ゴスロリぃいいいっ!!」
「行けっ! ウサミンロボ!!」
うさっ!?
「奴はゴスロリという言葉でエッチなものを想起したに違いないっ!!!」
うさー?
「行けっ!!」
うさーーーーーーっ!
ウサミンロボを操るモバPによる、ちょい悪ならぬちょいエッチなファンへの恐るべき粛清が始まりました。
モバPの暴虐は留まるところを知りません。
中には、ちゃんとアイドルの助けになる場合もあるのですが。
「晴、お城のような建物に行こう!」
うさーーーーーーっ!
「本田さんはみんな……」
うさーーーーーーっ!
「ラブライカ……」
うさーーーーーーっ!
「志希にゃんの秘薬」
うさーーーーーーっ!
「いおりんの凸」
うさーーーーーーっ!
765さんも助けます。
「出来たぞ! 理性を……」
うさーーーーーーっ!
「みりあちゃんは私の母になるべき人だ!」
うさーーーーーーっ!
「涼ちん、咲ちん!」
うさ?
………うさ?
…………………………うさ?
うさーーーーー………うさ?
うさーーーーーーっ!
…………うさ?
男ですが助けました。
「ふへへへ、お山が……」
うさーーーーーーっ!
「待ってロボちゃん、あたしあたし、棟方愛海」
うさ!?
「先輩……」
「武う……」
うさーーーーーーっ!
「ロボちゃん、それはユリユリに免じて許すんだじぇ」
うさ!?
ウサミンロボは大忙しです。
「ふははははっ」
モバPは大笑いです。
ちひろさんは心配しています。
「やりすぎじゃないですかねえ。ロボちゃんがほんのちょっとした言葉に反応してますよ」
「そう命じてますからね」
「いいんですか?」
「なにを言っているんですか、ちひろさん」
「迷惑でしつこい勘違いな方々は置いて、多少の妄想は男性である限り仕方ない部分も……」
「ちひろさんの言もわからんではないですが、ここは一つ、厳罰で」
「それに、ちひろさんにだって損な話じゃないでしょう、これ」
「それはそうですが」
「さあ、ロボまだまだ続けるぞ、ちょい悪ファン狩り!」
「ヒャッハーっ!!」
「あ、プロデューサー、輝子ちゃんがキノコ狩りの準備を」
「フヒ?」
「待て輝子、違うから、キノコ狩りじゃないから」
「ち、違うのか……そ、そうか……」
「すまんな、期待させたみたいで」
「い、行きたかったな、し、親友とキノコ狩り」
「今度行こうな、キノコ狩り。俺の分のキノコまで狩っていいから」
ウサミンロボは、最近どんどん過激になっていくモバPの命令をちゃんと覚えていました。
今、アイドル星輝子に「俺のキノコを狩れ」と接近する男性がいます。
うさーーーーーーっ!
「え」
モバPの尻にウサミン竹槍が深々と突き刺さったのでした。
「し、しまった……キノコをセクハラワードに登録していた……」
「あ゛? キノコがセクハラ?」
輝子が、アイドルがしてはいけない顔になりました。
ウサミンロボがこれまでと同じようにモバPを担ぎます。
輝子は、ハイライトの消えた目で見ているだけです。
「は、いかん、やめろ、ロボ」
これまでに捕らえたセクハラファンは全員、地下のドリンク秘密工場で強制労働させられています。運営はちひろさん、監修は帝愛グループなので安心です。
一か月に一度ほど一日外出してシャバを楽しむ班長もいます。福利厚生もばっちりです。
うさうさ
黒いボディにサングラスのウサミンロボ特殊部隊(趣味はボウリング)が現れ、モバPの身柄を受け取ります。
そのままモバPは、地下へと運ばれるのでした。
その後、安部菜々と池袋晶葉がウサミン星から帰ってきたころ、ようやくモバPは地下を抜けだしました。
何故か、アゴが尖っていたそうです。
終われ
以上お粗末様でした
夏コミのブース当選したよ
相変わらずタイトルが卑怯
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