ラノべ作品の『煉獄姫』と仮面ライダーのクロスssです。
煉獄姫のssが少ないので自己満足作品として描きます。
投稿ペースは不定期、それらのことを承知の上お読み下さい。
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暗闇が屋上を覆っている。月光も雲で隠れ、ただ感じるのは花の香りが鼻腔にへばり付く感触、そして足音だけであった。
月が雲から現れる。やがて、屋上にある死体が眼に映った。まるで池のように広がる血が残酷さを語っている。
唯一立っているのは金髪の少年と、銀髪を垂れ下げている少女。
二人は何の感情も無く、死体にも目もくれずにいた。
「これで全部ですね」
少年は一息つくと短剣を鞘にしまう。そして右横にいる少女に目をやった。
その蒼の瞳の先は死体ではなく綺麗な満月に向かっている。普段外の景色を見ないので、その円と輝きに夢中なのだろう。
「行きましょう——アルト、イオさんが待っています」
「うん——フォグ」
二人は血生臭い光景に背を向け、手を繋ぎこの場を去った——
フォグはアルトを地下牢に送り、今回の仕事の報告を済ました。後日、再び仕事で訪れた建物に来る。
理由は仕事ではない。個人的な理由だ。ここには珍しそうな書物が山のようにあったので、天堂騎士の立場を利用し、本を漁りに訪れたのだ。
もしかしたらお目当ての本が見つかるかもしれない。そう僅かな期待を胸に、彼は本棚の端から手を付ける。
珍しい物ばかりであったが、探している本は見つからない。またそれに似たような内容の物も無く、今は三つ目の本棚の中間まで読んでいた。
すると次の本に手を付けたところ、ある違和感に気付く。
「…?」
この本だけ、本棚から引きずり出すことができない。怪力を持つ自分でもだ。
そこで、その本を押してみると…
「これは…隠し部屋ですか」
それがスイッチだったのか、絡繰りが作動して本棚が半回転し、奥の部屋への通路を見せた。
一体何だろう、と通路を渡り、奥の部屋に入る。
その瞬間——花香が嗅覚を襲った。
その部屋は一面本棚で、床にはカーペットのように資料が散らされている。そして中心には机、何かが置かれていた。
「これは…?」
一見すると腰飾りのようだが。飾りとは言えない代物だ。手で持つとその重量感で分かる。
そして、その腰飾りの近くに置かれていた資料にはこう書かれていた。
「『花香の腰飾り(レンゴクドライバー)』…?」
【煉獄姫×仮面ライダー】
煉獄姫 外伝 仮面の騎士
第一章「煉獄の進化」
「そう怒らないでください、アルト」
王属軍の中で指折りの実力者であるフォグは、とある少女に対し下手になっている。
「…ふん」
その少女——アルテミシア=パロ=ラエ…アルトは頬を膨らませながらそっぽを向いている。
アルトは先日の依頼の日に、フォグが自分を地下牢に送った後すぐに出掛けてしまったことに怒っている。
実はその日以来が終わった後遊ぶ約束をしていたのだが、フォグは報告に向かってしまったため、その約束は叶わなかったのだ。
「今こうして遊んでいますから、これで許してください」
という二人は盤を挟んで遊技(ゲーム)をしている。小さいアルトでもルールが覚えやすい物だ。
「…」
アルトは口を開いてくれない。未だに許してくれないのだ。
そんな彼女に対しフォグは、これ以上機嫌を悪くしないよう、遊技には手加減をしている。
「もう…どうしたら許してくれるんです?」
「…じゃあ」
ここでアルトが硬い口をようやく開いた。
「また遊ぶ約束…してくれる?」
「ええ、勿論です」
彼女は、そんな当たり前のことを要求してきた。
フォグは、それに微笑みながら応える。
「姫様ーーおやつを持ってきましたよーー!」
すると、侍女(メイド)であるイオがバスケットを持ってやって来た。
「とりあえず、おやつにしますね」
そんなフォグの言葉に、アルトは優しい笑顔を見せるのであった。
先日の依頼は、怪しい煉術師達が禁断の術である「煉禁術」を使って何か企んでいるという情報が入ったので、それを潰す仕事であった。
結果、奴らの企みは見事壊せた…と思いきや、フォグが煉禁術で作られた腰飾りを見つけたのだ。
通常の煉術を使い、煉獄の毒気を材料に造った物は、いずれ空気に消えてしまうのだが、煉禁術は造った物を永遠に留まらせることが可能の術。
フォグがこの腰飾りの事を報告しようとしたが、それが無理なことに気付く。
理由は——この腰飾り自体が内部で煉獄への扉を開いており、常に大量の毒気を放出しているからだ。
煉獄の毒気は人体に影響を及ぼす危険な物。故に、「煉術や煉獄の毒気を糧にする能力」を持つフォグでしか所有できないこと。
それも、常に身につけてないとアルトと同じく常時毒気を放射するので周囲に被害が及ぶのだ。
だから自分以外の人間には見せられない物である。
(どうしたものか…)
フォグもこれに対処を困らせていた。まず煉術を起動する鍵器なのは間違いないのだが、用途が分からないのである。戦闘に使うのか、それすらも怪しい。
そんなことを考えていると、とある人間に呼ばれていたことをふと思い出す。
「すいませんアルト、貴方の叔父に呼ばれているのでこれで」
「…じゃあ帰ったらもう一度やろ?」
「はい、約束します」
「だったら…良かった」
アルトは嬉しそうに、自分の顔を枕に埋めた。
これは、絶対に守らねばいけない約束だ。フォグは心の中でそう誓った。
王弟用の執務室にて、リチャード=ミル=ラエとフォグは対峙する。リチャードはフォグ直属の上司であり、たまに呼び出され、冗談を混じって仕事の話をする相手でもある。
「君を呼んで貰った理由は不可思議なことだ」
「不可思議のこと?」
「ああ、君達が倒した煉術師達のアジト…その周囲に見たこともない足跡が見つかったんだ」
そう言うとリチャードは一枚の絵を見せる。それは人間の形に近い足跡を描き残した物であった。しかし、人間の足ではないことは一目瞭然。
前に3本、後ろに1本と、まるで鳥のような形状もあったのだ。
「何ですか…これ」
博識のフォグもこれを知らない。見たこともないのだ。
「この足跡は匍都(ハイト)に向かっている。もしかしたらと思ってね…君には極秘でその調査をして貰いたい」
「調査…?」
「ああ、この足跡の存在と正体を調べて欲しい」
「待って下さい、この足跡の正体は害をもたらすのですか?」
「…その足跡の近くで、成人男性10人の遺体が発見された」
その数が何を意味しているかは分かった。ようするにその10人は殺されたのだ。
足跡の…正体に…
「そんな得体の知れない物が首都に入るのは阻止したい。今日の帰りにでも寄って置いてくれないか?」
「…分かりました。このフォグにお任せ下さい」
「多少のお金を渡そう、匍都でアルトの為に何か買ってあげるといい」
「これは…ありがたく貰っておきましょう」
この王弟はこう言う優しさをくれるので好意的に接しできる。
王弟の施しを受け、フォグは首都へと向かった。
昼の匍都
フォグは命じられた通り、匍都の町を周回している。
と言っても、そこまで警戒はしていない。フォグも、この匍都の住民も、何かが起きるかなんて思ってもいないからだ。
フォグは早めにこの命を終わらせて、アルトのために本か何かを買おうかとしか考えてないからである。
誰もが油断していた——それがいけなかった。
「…」
それは人間の形をしていた。しかしその全身に生えている鼠色の毛が人間であることを否定している。
手足は桃色で染まっており、頭部には小さい目に鋭い嘴。
鳥類だ、人の大きさまでに巨大化した鳩だ。
「きゃああああああああああああ!!!!!」
女性の声が町空に響く。それを合図に周りの人々も逃げ始めた。
鳩は素早い身のこなしで逃げ惑う住民達に襲いかかる。
拳で腹を貫き、嘴で顔を潰す。平和だった町が一気に血に包まれた。
「まさか本当にいるとは…!」
これ以上被害を出すわけにもいかない。フォグは短剣を取り出し、鳩に斬りかかるが…
鳩の手払いにより、遠くまで飛ばされてしまう。
その力は信じられない程強く、フォグもこれには敵わない。
壁に激突し膝を付いてしまう。
「はぁ…はぁ…」
無謀ながらも再び鳩へと向かおうとするが…ここで自分の外見の違和感に気付く。
「…!?」
服を越して、懐から光が漏れていた。紫色の優しい色だ。何事かと服の中を見ると…
「…この腰飾りは…!」
あの建物で見つけた腰飾りではないか。あの腰飾りが独りでに発光しているのだ。突然の出来事に付いていけない。今何が起きているんだ?
その瞬間、フォグの脳裏に突如として映像が流れる。
(…!)
何故かは分からない。しかし、その映像を見た自分は本能的に腰飾りを巻き付けた。
「『起きろ(レェゼ)』」
その言葉によって腰飾りが更に発光を強める。
腰飾りが「扉」から溢れた毒気を吸収しているのだ。
「仮面/蟲/騎手/変わる/勇敢に/戦え!」
誰も聞いた事の無い詠唱を口にし、腰飾りの側面に付いてあったスイッチを押し、こう言い放った。
「変…身!」
「ひぃ…助けて…お願い!」
女性の命乞いを無視し、鳩は手を素早く振り落とそうとするが…
「…!?」
横方向から来た何者かの跳び蹴りに阻止されてしまう。鳩は大きく体勢を崩し、その隙に女性はその場から立ち去った。
いつしか、ここには鳩と「それ」しかいなくなっている。
「…?」
鳩は不思議な物を見る目を向けてくる。首を傾げ、手を組んでひたすら悩んでいた。
「…僕が何者かが知りたいそうですね」
赤く光る目を持った紫色の仮面戦士。首からは赤紫色のマフラーを風で泳がしている。
鎧で隠せない程の筋肉質。誰もが想像できない異様の姿
「僕の名前は…」
指を指しだし、鳩に挑発するかの如くこう名乗った。
「仮面ライダー…パーガトリー」
鳩の前に立つと、パーガトリーは素早く後ろへまわった。
「!?」
そして鳩に拳と脚の攻撃をする。鳩はその攻撃に後退しながら耐えていた。
パーガトリーは両足で鳩の首を挟み、そのまま後ろへ蹴り飛ばす。
鳩は地面に激突すると同時に、その両翼で空を飛び回り始める。
「くっ!」
そしてパーガトリーに突進してまた空高く飛ぶ。空からの猛攻にパーガトリーは劣勢になる。
体当たりと同時に殴って地に落とそうとしたが、鳩は凄まじい速さでとてもじゃないが攻撃を当てられない。
そう——とてもじゃないが。
「茨/縄/鞭/飛びかえ/かの者を/堕天させろ!」
その詠唱と皮切りに、パーガトリーの右腕に長い鞭が現れる。表面には棘がびっしりついており、その攻撃力を証明していた。
パーガトリーが鞭を振るうと、蛇のように鳩の羽に絡みつき、そのまま地面へと墜落させる。
「…!!??」
何が起きたのか分からないのか、鳩はキョロキョロと周りを見渡す。
すると背後からパーガトリーが蹴りをいれてきた。
鳩は地面を転がり、少し離れたところで倒れてしまう。
「跳躍の脚/伸縮する脚/鎧の脚/跳んで/邪の者に/天罰を!」
また新たな詠唱を口にする。するとパーガトリーは自分の身長の倍の高さまで跳び、鳩に足を向けて迫る。
「ライダー…キック!」
煉術によって材質と脚力が上がったパーガトリーの足は、鳩の首の骨をへし折り…
「…!!!???」
かの者を爆発させたのであった。
mdk
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