元・魔王「な~んで転生したら人間になっとるんじゃ!(12)

魔王「群雄割拠していた魔界をちょいっと纏め上げ、人界の奴らを恐怖のずんどこに落とし入れようとしたのは良い」

魔王「手始めに人の大陸の三割と人間勢力を六割程削ってやったのは、我ながら良い仕事をしただろう」

魔王「やってくる勇者を千切っては投げ、千切っては投げ、反逆を起こそうとする部下も千切ってやった!」

魔王「まあ数百年ほどそうやって恐怖政治を徒に築いてだな、ふと自分が死んだ時のことを考えたらいてもたってもいられなくてな」

魔王「番も居ない、当然直系の子孫も居ない、養子も居ないしぶっちゃけ信頼できる部下があまり居ない。魔王として長くやり過ぎたせいでそこらへんに気を配ってなかった……余の唯一の失敗はそれだろうな」

魔王「そこで天才たる余は気づいた――『産まれ変わってもう一度魔王をやれば良いのだ!』と!」

魔王「後はこう、ちょちょいのちょいだ。まあ余は天才だから? 転生の法とか余裕でできちゃうし? 天才だし?」

魔王「まあ、そんな訳で死ぬときもあまり気負いはしておらなんだ。『いずれ第二、第三の余がお前を――』なんて言ったわけだ、事実だし」

魔王「我ながら完璧、我ながら見事、我ながら天晴れな隙のなさ...」

魔王「しかし、しかしだ――――――」

赤子「おぎゃぁ! おぎゃーっ!」

産婆「ふぇっふぇっふぇ…なんと覇気のある赤子じゃぁ……時勢が時勢なら正しく天下の豪傑か、はたまた世を震わす悪鬼羅刹になるか否か…ふぇっふぇっ」

魔王(なぜ……なぜ……)

男性「見てくれお前……今この子、君のことを見ただろう!?」

女性「何言ってるのよあなた、この子は今あなたのことを見たのよ!」

産婆「ううむ、宿星は天に輝き、今宵は風が騒がしい……ふぇふぇ、この婆や…最期にこのような子を見るとは思わなんだ…」

魔王(なぜ……)



魔王(なぜ、よりにもよって人間の赤子に転生しておるのだぁぁーっ!?)

赤子「おんぎゃぁーーーーっ!!!」

男性・女性「「なんて可愛いんだ(のかしら)!」」

逆引きの結果が一致しないとかで投稿できなくてキレそうになっちまっただよ
TSにするか迷うけど凄く迷うから寝て考える

女の子だとほぼ幼女戦記だな

幼女戦記は設定盛りすぎて耳キーンなるわ

女の子でも花屋になってターニャ化を免れる√がワンチャンある

別に男児でもよかろ
聖帝の脚を刺し貫いたあの子のような、ドラマティックな人生送ってもいいんじゃぜ?

幼女が出てくれば実際幼女戦記、一理ある
だがステゴロ至上の魔王系ヒロインと幼馴染み勇者の血沸き汗散る青春成長譚も悪くないのでは? サムは考えた

赤子「…………」

父親「まったく、可愛い姫様だ…御覧、もうあんなに大人しくなっている」

母親「あらほんと、あんなに泣いていたなんて思えないわ……大人しい子になるのかしら、それとも優しい子?」

父親「ははは、君に似て優しくて綺麗な子になるよ」ポンポン

母親「まあ、あなたったら……」ポッ

赤子「………」(……まったくもって分からん。転生と言っても無作為なものではなかった筈…順当にいけば事前に準備していた器に魂が移る算段だった。)

赤子(しかし現状は、ここがドコで、イツで、このヒト共が誰なのか分からん、おまけに私は貧弱なニンゲンの赤子と来た!)

赤子(……仕方ない、やむを得んがここはこの肉体の成長を待つ他ない…なに、魔王として返り咲けないこともないのだ、今はただ、期を待つとしよう)

赤子(――幸い、”世話役”は二人も居るのだ。下の世話までされるのはあれだが文句は言えまい…”親”というものは子に対して無償の愛を捧げる者らしいから裏切られる心配もあるまい)ニヤッ

父親「ははは、この分だとこの子にも次が…おや見ろお前!笑っているぞ!」

母親「あぁ…神よ! なんて可愛らしいんでしょう! 抱っこさせて頂戴!」キャッキャッ

赤子(……ぐっ、しかしこうもちやほやされると調子が狂う…臣下に持ち上げられていたのと同じはずなのに…解せぬ)



『―――――様!』

『――う様!』『まお――!』

『魔王様!』

『魔王様!』『猊下!』『閣下!』『我等が王!』

『どうか!』『どうか!』『どうか!』『御命じを!』

『我等が前に道を示して下さい!』

『我等にすべきことをお命じ下さい!』』

『おお、魔王様!』『ああ、魔王様!』『魔王様!!』



『『『■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!』』』

赤子(――――――っ……)ジクッ

父親「……どうしたんだいお姫様、おねむかな?」

母親「ん、あなたの抱き方が乱暴だからじゃないのかしら」

父親「おいおい、キミも初めての子供だろう? 分かるのかい?」

赤子(同じだ、私を盲目的に慕い、私の為に尽くす……本で読んだ如何なる親も、そうやって子に接していた)

母親「貸して頂戴、あなた」

父親「ああ良いとも、この世に彷徨い出でて久しいこの子を暫く休ませてあげてくれ」

赤子(前の私は”親”と言うものをとんと知らなかった、与えられなかったし、そもそもそんな者が居たのかもわからん。だが、臣下も、親も、同じものの筈だ)

母親「――よしよし、良い子ね。私の可愛い娘」ユラユラ

赤子(けれど、なぜだろう――なぜかは分からないが)

母親「ふふ、この子はまだ神様の世界を覚えてるのかしら、人だった前のこと、天に召します主の愛し子よ……」

赤子(こうされていると、酷く、落ち着くような――全てを忘れてしまえるような……これが、赤子というものなのか?)

母親「あなたがこの世に馴染む前に、どうか神の手が連れ去ってしまわぬよう、もう少し我々にお預けくださいますよう―ー…」

赤子(――――――あぁ、なんだか、ひどく、ねむい…………)コテッ

赤子「…………ふ、みゅ…」スゥスゥ

母親「ほら見てあなた、寝てしまったわ」ヒソヒソ

父親「凄いやお前、もうお母さんになっているんだね」ヒソヒソ

母親「なんでかしら、分かるのよ…この子がこうして欲しいんだって」ヒソヒソ

父親「ああ、そうか……僕も早く父親にならないとな」ポリポリ

母親「なに言ってるのかしら、あなたは…もう」クスッ

父親「あれ、なにかおかしなことでも…?」キョトン

母親「我が子に対して父親になりたいと思った時点で、あなたはもう立派なお父さんなのよ?」クスクス

父親「……あ、ふふ…なんだか急に自覚が出て来たぞぅ」

母親「頑張ってね、お父さん?」

父親「ああ、お母さん……いやしかし、可愛いなぁこの子は!」ナデナデ

母親「ええ、そうねぇ…私の子じゃないみたい、なんだかこう―――――」


「人外の、美貌のような―――――」

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