【艦これ】ぬいぐるみ提督【地の文多め】 (118)
こんばんは。
過去に舞風をアップしたものです!
今日はこの前の舞風の前身の話を
投稿していきたいと思います!!
〇オリジナル提督
〇オリ設定
〇口調・キャラ崩壊注意
〇寝落ち・遅刻等だらしがない
今回のお話は舞風とあまり関連がないので(同じ鎮守府、登場人物はありますが)
読まなくても続き物では無いですが、一応置いておきます!
【艦これ】舞風がすこし変だな…【地の文多め】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491389733/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492517962
『ある者に聞いた。提督に人権はないのかと。』
『その者は答えた。提督は人間ではないのだと。』
―――ぬいぐるみ提督
1700(ひとななまるまる)
一般に17時とか午後5時と呼ばれる時間。
こうなると、日は傾き世のお父さんお母さんたちは仕事を終えて…
ある者は家へ、またある者は呑みにいくぞーとばかりに夜の街へと帰っていく。
提督の定時も、そんな平和な時間に一応は定められているのだが。
『ひが~し~。おつかれ~やーまー。おつかれ山~』
鎮守府部屋希代の関取、おつかれ山関。今年は綱とりも掛かっている大事な一番です。
『にーし~。仕事の~やーまー。仕事の山~』
そして対するはサービス残業部屋の力士、ここまで無敗。
時間いっぱい、両者見合って…。
『はっけよーい! 残った残った~!!』
…結果は今日も残業部屋の勝ち。
土俵一杯、というか机一杯。山のように積まれた書類を前にして、提督は現実を放り投げて今年の綱とりを
逃すのであった。
「司令。コーヒーをお持ちしました」
『あぁ。すまない』
提督の仕事はまだ終わらない。
提督にとって定時とは時間を知らせるハト時計のハトのようなものであり、
鳩よりもカモメが好きな提督にとっては…最早どうでもいいものであった。
『…平和の象徴ハトぽっぽも、ここじゃ憎まれるだけなのかもしれないな』
「…? お夜食はやきとりになさいますか?」
提督のつぶやきを夜食のリクエストだと思ったのか、
秘書艦である妙高はやや驚いた顔をして自分の上官のボヤきを受け止めていた。
『…そういうんじゃないんだが。…まぁ、それもいいか』
鎮守府名物、提督と秘書艦の取り留めの無い会話。
一般には少しズレた会話と見られることの多いこのやりとりも、
世の中が平和であるということの証拠なのかもしれない。
そう思うと、この仕事の山もそれほど悪くは無いのかもしれないのだが…
やっぱり憎い相手は憎い相手。書類は急にかわいくはなったりはしないのである。
『…さてと。まったりしてても仕事は終わらないからな。とっとと片付けるか!』
ひと息をついてからの職務復帰。提督は自分の何倍もの背丈を誇る書類の山に挑み、
更にその何倍も大きな自分の秘書艦に、コーヒーのおかわりを要求する。
「司令。あまり無理はなさらないでくださいね?」
『大丈夫だ。この身体に乳酸は溜まらない』
無機物の身体が疲れるということはない。
人間を辞めた時。
少なくともこの変化だけは本人にとってプラスであるのだと、
この鎮守府の“ぬいぐるみ提督”は前向きに捉えているのであった。
『覚悟しろ仕事の山関。今日こそはキサマに黒星をだなぁ…ぁぁあああっ!! 妙高っ!
コーヒーこぼしちまった!! 早く!! 書類が黒くなる前に、早く!!』
あやうく本当に黒星を付けそうになる、ちょっとマヌケなぬいぐるみ提督。
この物語はそんな彼と、彼を取り巻く艦娘たちの物語である。
―――特型駆逐艦・吹雪型一番艦・ふぶ…なんとかさん(前編)
人には誰しも向き不向きというものがある。
名前を覚えるのが苦手なくらいは多めに見て…あぁ、いや。努力はしているんです。はい…。
提督の朝は早い。
秘書艦よりも先に起きて、諸々の雑事をこなし、自室兼執務室に戻ってきてから二度寝をする。
そして、自分のことを寝ぼすけだと思ってくれている秘書艦が起こしにきてくれるまでの時間が…
自分にとって唯一の至福のひとときなのである。
「司令。朝ですよ」
『………あぁ。今起きる…』
半ば強引な形で“呼び方を変えて貰って”からこっち、妙高には秘書艦を勤めて貰っている。
なんでそんなことになったのかは、また機会があったら話そう。
ともかく、うちの秘書艦は妙高で提督の身体はぬいぐるみであった。
…これでも、先月くらいまではきちんと人間やっていたのであるが。その話もまた今度だ。
今は仕事が待っている。
「今日の予定は…」
食堂までの道のりで大まかに今日の予定を確認しておく。
バインダーを片手についてくる秘書艦はたまにそちらに目が行き過ぎて歩幅の違う人様の頭を踏みつけてくるのだが…
それも今では見慣れた鎮守府の光景となってしまっている。
「…そのために、毎日牛乳を飲んでいるのですっ」
食堂では既に朝食を摂り終わっていた面々がなにやら談笑していた。
話の流れ的には、背とか…まぁ、背とかの話題なのだろう。きっと…。
「あ。司令官。おはようっ」
電と雷の雷電(らいでん)コンビ。
名前を纏めると怒られてしまうので、そう呼ぶのは心の中でだけにしておく。
まぁ、仲のいい4姉妹の内の似ている2人である。
「司令官さんも牛乳を飲むと大きくなれるのでしょうか?」
『…どうなんだろうなぁ?』
電から、きちんと1メートルの距離を保って受け答えをする。
この鎮守府では、多分他の鎮守府には無いであろうルールが幾つか存在している。
そのひとつ
“提督は床面上において艦娘に1メートル以上近づかないように勤めること”
というのはこれがなかなかに難しいものであった。
人間を辞めてしまってから、背丈は神様に1メートル40センチほど返却してしまい、
上を見上げると相手によってはスカートの中が…
「む…っ。司令官、また私達のこと避けてない?」
『適正距離を保とうとしているだけだ。気にするな…』
駆逐艦の歩幅で一歩近づかれたら、こちらは三歩下がらなければならない。
無駄に歩数が多くなるせいか、仲には嫌われてるんじゃないかと不必要に心配する艦娘も居たりするのだが…
この規則を破ったところを目撃されると、最悪こちらの命がなくなったりするので、
ここはカンベンしていただきたい。
「司令官さん。逃げないでほしいのです」
『逃げてるんじゃないっ。いや、逃げてはいるのか。ともかくだ。そっちこそ、なんで近づいて来るんだ?』
ついには壁際に追い詰められ、あと一歩踏み込まれると死ぬというところまで来てしまうのだが…危ないところを頼りになる秘書艦に助け出される。
「お二人とも。司令とお話する時はきちんとテーブルについていただいてからにしましょうね。それでしたら、司令も逃げ出さずに済みますし。ね?」
「「はーい…」」
雷電姉妹は、やや言いたいことを残しながらも包囲網を緩めて通り道を作ってくれる。
やれやれ。こんな身体になってから、朝ごはんひとつ食べるのにもひと苦労なのである。
「あら~?」
『っ!!!!』
提督が艦娘に近づいてはいけないというのは、下から見上げた際にスカートの中が
見えたりとかしてしまう、というのが主な原因であった。
しかし、それを承知の上で…正確には破ったらおしおきが待っているのを承知の上で、
構わず踏み込んでくる艦娘というのが居やが…いや、いらっしゃ…違うな。
いらっしゃりやがるのである。
「なにか面白いお喋り? 私も仲間に入れてもらいたいな~。なんて…」
…そう。
主にこの龍田とか龍田とか龍田とか龍田とか…。
「聞いて、龍田さん。司令官ったらひどいのよ?」
一度夕飯(?)で抜けます!
お読み頂いている方いらっしゃいましたら
一度失礼しますm(__)m
再開は、2430時くらいを見込みにしています!
トリップつけて
レスありがとうございます!
寝落ちしてました…
今日は、21時頃から更新したいと思います!
読み辛い
読もうと思えない
ここの提督はホントにぬいぐるみサイズだったのか
大☆遅☆刻
すみません…
更新を始めます!
軽巡洋艦、龍田(たつた)。
我が鎮守府発足時から共に戦っているメンバーのひとりであり、
鎮守府赴任暦は現秘書艦である妙高よりも長い。
それ故に、人の弱いところを知り尽くしている艦であり、時折こうして命に関わる規模で
からかってくる、ひじょーーに困った人物なのである。
『緊急回避態勢っ!!!』
龍田との距離は既に30センチ足らず。死角から攻め込まれほとんど足元じゃないかという位置にまで接近を許してしまっている。
このままでは死よりもキツイおしおきタイムに送り込まれてしまう。
しかし、こちらとていつまでも同じ手を喰ってはいない。
提督流処世術は日進月歩。
常に進化を繰り返し、こういう時に備えた緊急回避態勢を既に己の中に確立させていた!!!
「あら~? これはどういう格好なのかしら?」
>>21レスありがとうございます!
そうですね!
妙高の膝丈位を設定しています!
>>20レスありがとうございます!
改善できるように頑張ります!!
『見て分かるだろう。この態勢であれば決して上を見ることはないし、接近したことを謝ることだって同時に行うことが可能なのだ』
『一晩悩んでひらめいた、これぞ究極の防御形態っ!!!』
両手を床に突き、そこに打ち付けんばかりの勢いで頭を下げる。
「司令官。それって“土下座”っていうやつなんじゃない?」
「司令官さん。全力で謝っているのです…」
『………偶然の一致だ。確かに謝意はあるが、これはこれで列記とし、ぎゃああああ!!!』
…命と引き換えに何か大切なものを失った頭の上を、
今何か重たいものを乗せた車輪のようなものが通過していく。
「む? 今、何か轢いたか?」
『ぎゃあああっ!!!』
通過したのは食器を載せた移動式配膳台の車輪。
その後確認するかのように台車を戻し、再度人の頭を轢きに来た艦娘は那智。
「なんだ。キサマだったか」
『なんだ…じゃ、ない!! それと、お、往復して確かめるな…っ!!』
重巡洋艦、那智(なち)。
妙高型重巡洋艦の2番艦。
つまりは妙高の妹なのだけれども…この姉妹、四人が四人見事に違う性格をしていて、
那智は妙高よりもずっと堅い…
というか、手加減の無い感じの性格をしていた。
…あぁ。ちなみに“キサマ”という呼び方というか呼ばれ方は、
今現在使われている“おのれキサマ”的な相手をめの仇にでもしたかのようなものではなく、
昔のというか本来のというか“貴様(あなたさま)”という目上を指して言う言い方だったりする。
…自分の妹の頭を高らかと掴み上げながら、妙高はどこかへと歩いていってしまう。
ウチの妙高は、とてつもない握力を誇る鎮守府最強の秘書艦である。
どのくらい凄いのかというと、500円玉を指の関節だけで曲げられるくらい…
といえば分かって貰えるだろうか。
はじめて彼女と話す人物は、ボーリング談義でもしてみるといい。
普通のボールとマイボールとでは中身が違うのだと力説してくれることだろう。
「…やれやれ。やっと朝食にありつける…」
冷めて、どこか寂しい感じになってしまっている目玉焼き。
反対にぬるくなって全ての食欲が失せてしまいそうになる牛乳と、ひえあわ白米の雑穀ごはん。
昨日ドイツの知り合いが大量にソーセージを送ってくれたそうなので、
近々このメニューにジャーマンな感じのものが加わってくれることだろう。
そして、本日の出撃メンバーを前にして作戦の最終確認。
まだ妙高が戻ってきていないので、本日作戦にあたる艦娘ひとりひとりに自ら細かな指示を伝えておく。
『本日の出撃は周辺警戒と当鎮守府に新たに配属となる新人艦娘を迎えに行くことである。』
『出撃時には6名だが、帰還時には8名となる為、陣形を再度確認しておいてくれ』
通常、出撃翌予定というのは前もってある程度決まっているのだが、機密レベルの高い作戦や緊急時においては急遽艦隊が組まれるという場合もある。
『旗艦古鷹(ふるたか)。基本的に指揮は任せる。何かあった場合はすぐに連絡をしてくれ。急ぎ待機班を向かわせる』
「わかりました。重巡古鷹、精一杯頑張りますっ」
古鷹型重巡洋艦、一番艦古鷹。
ぐーたらな妹を持つ、割としっかりとした姉である。
同じ重巡洋艦の妙高と比べると若干小柄というか、年下っぽい印象を受けるのだけれども、実は彼女よりもこの鎮守府では先輩で元秘書艦だったりもする。
『叢雲(むらくも)。旗艦後の新人の案内は任せたぞ。
間宮さんとかおるこさんには話を通してあるから、部屋の内装のリクエストとかはそっちに回してくれ』
「わかったわ。それより、またトイレの蛍光灯が切れてたわよ?」
特型駆逐艦、五番艦叢雲。
一匹狼な性格をしているクセして意外と世話焼きだったり微妙に寂しがりやだったりと…まぁ、めんどくさ…。非常に可愛らしい駆逐艦である。
『マジか…替えてまだ2ヶ月とかじゃなかったか?』
「知らないわよ。またハズレでも引いたんじゃないの?」
ちなみに、彼女は我が鎮守府の記念すべき初期艦でもある。
秘書艦が移り変わりをしていく中であっても気づいた点をこうして教えてくれている、
やっぱりめんどくさ…いや、非常にありがたい存在なのであった。
「そちらの方は、あとでこちらで確認しておきますね」
『そうしてくれると助かる。こっちは、この後出撃が控えてるからな…』
「お勤め、ご苦労様です。叢雲さんも、ありがとうございます」
「ま、まぁ。たまたま私が最初に気づいただけだし…」
…任命は続く。
『暁(あかつき)。叢雲に着いて案内を手伝ってやってくれ。
何か気づいた点があったら別途こちらに報告も頼む』
「司令官。案内だったら、暁ひとりに任せてくれてもいいのよ?」
暁型駆逐艦、一番艦暁。
先に出てきた雷と電の姉である。
四姉妹の一番上であるという自覚なのか、まだまだ幼さの塊のような駆逐艦なのだが、
常に一人前のレディであろうと背伸びをしている、非常に微笑ましい。
『叢雲には午後に別の指令がある。だから途中からはそうさせて貰うよ』
「ほんとに? じゃぁ、頑張っちゃうんだから♪」
『…大井(おおい)。まぁ、程々に頼んだぞ』
「…なんで私が。提督、私これから北上さんと遊びにいく予定があるんですけどっ」
『そういうのは希望予定表に出せっつってんだろ!』
『思いつきでその日に行動しようとするな!!
大体、キマシ分足りねぇんだよ!! テメェらは!!!』
重雷装巡洋艦、大井。
同じ重雷装巡洋艦の北上を愛する、我が鎮守府のキマシ担当艦である。
「だって、しょうがないじゃない。急にさっき遊びに行きたくなったんですもの」
『…第一だ。北上は今日戦闘待機班だぞ。お前が抜けても北上が抜けられない…』
「はぁ…じゃぁ、しょうがないわね。…北上さん」
『まぁ、出迎えが終わったら好きなだけいちゃついててくれ。
…我が艦隊の愛すべきヌートリア!』
「はいっ。雪風。がんばりますっ!!」
げっ歯類型ヌートリア級駆逐艦、我が艦隊の愛すべきヌートリア。
元は『雪風(ゆきかぜ)』という名前だったのだが、
とある事情により改名することになった…なんとも名前の長い特殊な駆逐艦であった。
「あのぉ…しれぇ。ひとつお伺いしたいのですが…」
『む? なんだ? 我が艦隊の愛すべきヌートリア』
「…雪風のこと、新人さんにもその…我が艦隊のって紹介するつもりなんでしょうか?」
困った顔でこちらを伺う我が艦隊の愛すべきヌートリアを前に、
こちらの方が困惑してしまう。
『あたりまえだろう? 名前がどんなに長かろうとも、提督としてはきちんと紹介しなければならないのだ。だから安心しろ。我が艦隊の愛すべきヌートリア』
「いや、あの。そういうことではなくて、ですね…」
『まぁ、我が艦隊の愛すべきヌートリアがどうしてもというのであれば…
古い名前で紹介しても構わないんだが…』
「はいっ。是非っ。そうしていただけると幸いです」
…女の子というのは複雑である。
ちなみに、館内放送で彼女の名前を呼ぶ時もきちんと我が艦隊の愛すべきヌートリアと
呼ぶようになっている。
一応言っておくが、これはイジメとかではなく本当に複雑かつ哀しい出来事があって、
そこから彼女を救い出す為に……
まぁ、長くなるのでこの話はまた今度にしよう。
本日はこの辺にしたいと思います!
読んでいて下さる方、いらっしゃいましたらありがとうございました!
明日は出来るかな…?
出来る限り頑張ります!!
乙
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/:.个: . __▽__ ,./:∠:._{>o<} < お ま た せ
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人:.:.:.: (・x ・l ト {〉 ノi:.:./
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⊂ノ⊂ノ 」.|
お手数ですが、オンラインゲームトップより
ゲームの再開をお願いいたします。
乙。
設定が面白いし丁寧かつテンポ良く書かれてる。取り敢えずブクマ行き。
ぬいぐるみとはいえ提督っぽい格好なのか、動物のぬいぐるみに提督の魂が憑依したのか。
>>38レスありがとうございます!
>>39ま っ て な い
>>40レスありがとうございます!
提督っぽい姿をしたぬいぐるみです!
では、更新開始したいと思います!
任命に時間を掛け過ぎているせいで、そろそろ騒がしくなってきている。
あと2名で全員なので、ここはさっさと終わらせるべきなのだろうけれども…。
『…………』
執務室に呼び出したのは全部で7名。
うち、出撃するのは6名。さらにそのうち5名に任命を終え、残すは駆逐艦が1名。
「…………」
『ぁー…えーーっとだな…』
「…………」
…両の手をグーで握り、自分の名前を呼ばれるのを今か今かと待っている駆逐艦。
………白状しよう。
…今。不覚にも、その名前をどうしても思い出せない自分が居るのだ。
『…ちょっと待ってくれ。今!! 今!! 思い出すから…』
「司令官っ。頑張って下さい!」
…先のヌートリアの件とは違う理由で、この鎮守府には提督にきちんと名前で呼ばれない艦娘というのが数名存在している。
…分かっている。全部自分が悪いのだ。
『ぇーっと…。特型駆逐艦の…』
叢雲の妹で、割と最近鎮守府にやってきた艦娘。
がんばりやさんで、朝の走りこみは長良(ながら)に並ぶ勢いで毎日こなしている…。
……ぶぶ漬けみたいな名前のやつ。
『そうかっ!! ぶぶきだ!!』
「ちがいますっ!! 吹雪(ふぶき)ですっ!」
急ぎ机の下に隠れるが、艦娘の追撃はバンバンと机を叩き容赦の無い追撃をしてくる。
…経験はないが、防空壕に逃げ込むのっていうのはこんな感じなのだろうか。
次に買う机はもっと頑丈なものにしよう。
『飛鷹(ひよう)。バックアップは任せたぞ』
「わかったわ。それより、いい加減覚えてあげなさいよ? 可哀想じゃない」
『…善処する!』
海上待機班及び戦闘待機班。
艦娘が出撃すると、その補給の為に鎮守府の資源から燃料と弾薬を消費する。
その限りのある資源をやりくりする為に、出撃の際には艦隊の燃費などを考慮した編成を行わなければならない。
しかし、あまり燃費ばかりに気をとられていると実際に予期せぬ戦闘などが発生した場合に大きな被害を被る(こうむる)。
そして、当たり前のことだが失われた命は戻ってはこない。
…なので、この鎮守府では有事の際にいつでも駆けつけられるよう作戦海域付近に
戦闘待機の状態でいつでも動ける別働隊を置くようにしていた。
勿論、この別働隊だってタダではない。遠洋にいけば行くほど燃料は余分に食うし、部隊編をするにあたっては人数だって必要になってくる。
最初から戦艦を動かせばいい…なんて、定例の提督会議ではよく言われるのだけれども、
各々の練度(レベル)やバランスのことを考えると現状ではこれがベストなんだと思っていた。
余計な戦闘が起きなければ、重装備の艦隊を動かすより安く済む。
待機部隊はこんな感じのコンセプトで、あくまで保険として配備されている、
やや特殊な艦隊だと思ってもらえればいい。
これで、一旦ご飯食べてきます!
「航空母艦飛鷹(ひよう)以下3名。鎮守府出撃ドッグにて待機。了解しました。」
「まぁ、今回は近場だし何も無いだろうけど。何かあったらすぐに駆けつけるから、
遠慮なく呼んで頂戴」
飛鷹は資源のことなんか考えなくていいからと、提督の前でも一切の遠慮をすることなく古鷹に話していた。
まったく。鎮守府赴任時から居る艦というのは、どいつもこいつも遠慮が無いものだった…。
「司令官っ。ここに名前、書いておきますから。帰って来るまでにちゃんと覚えておいてくださいねっ!」
全レスはやめとけ
乙
こんばんは!
皆様ご意見などありがとうございます!!
なるべく早くカキコ初心者感を脱せるように頑張ります!
今日は、少し書き貯めした分を一気に投稿したいと思います!
家にまで仕事を持ってくるとこうなるんですね(白目)
えーっと…ふゆきだったっけ?
「吹雪(ふぶき)ですっ!!」
『わかった。わかったから。善処するっ』
…そのうち本気で殴られたりするんじゃないだろうか。とりあえずメモ書きを受け取って一番上の引き出しにしまいこんでおく。
よし。
これで最悪、引き出しを引けば名前が出てくる。有事の際はそれで解決するとしよう…。
―――特型駆逐艦・吹雪型一番艦・ふぶ…なんとかさん(後編)
「ダーンケ♪ さっきはありがとうね♪」
はじめまして。私は重巡プリンツ・オイゲン。
本日この鎮守府にやってきました。新人です。
「アトミラールさんがぬいぐるみさんだったのにはびっくりしたけど、
吹雪ちゃんも凄いんだね~」
着任早々、駆逐艦の女の子に助けて貰うことになって、
この鎮守府がちょっと他のとは違うのかなぁって、今ちょっと思っているところです。
ついさっきの事です。
鎮守府にやってきた私は、執務室という場所に案内されてアトミラールさんに挨拶をすることになりました。
「…この扉の向こうにあいつが居るんだけど、最初に言っておくわ。
自己紹介の時はくれぐれも気をつけなさい」
駆逐艦の叢雲ちゃんが真面目な顔をしてちょっとおっかない事を言い始めました。
迎えに来てくれた人たちはみんな優しそうで、いい人たちなのかなぁって思ってたんだけど、考えてみたらここは軍隊。
アトミラールさんはとっても厳しい人なのかもしれませんでした。
「えっと…そんなに厳しい人なの?」
「そうじゃないわ。けど、あいつは人の顔と名前を覚えるのが極端に苦手で…」
叢雲ちゃんは吹雪ちゃんを見ながら、ともかく気をつけるようにとだけ言って詳しいことは教えてくれませんでした。
「ともかく。自己紹介だけはきちんとしなさい。一度変な風に覚えられたら、一生その名前で呼ばれることになるから…」
「そ、そうなんだ…」
よく分からないけれど、ともかく挨拶は大事。
ドイツ出身の艦娘として、やっぱりしっかりとしないと。
「入るわよ?」
『あぁ。ちょっと待ってろ』
ここのアトミラールさんとは旧知仲だっていう叢雲ちゃんに連れられて、私達は執務室の中へと入っていく。
『待ってろって言っただろうに』
「いいじゃない。どーせ扉を開けにくるぐらい。こっちでやるわよ」
勝手に入ってご立腹のセリフが飛んでくるんだけど、叢雲は特に気する様子もなくて…
割と普通にアトミラールさんと話していた。
あとで聞いたんだけど、ここのアトミラールさんはノックをしたらわざわざ開けに来てくれるんだって。
これって、日本の“おもてなしのこころ”っていうやつなのだろうか?
「わぁ。ほんとうにぬいぐるみさんなんだ…」
今日はこれにて!
いつも見てくださっている方ありがとうございます!
乙
乙!
今日も更新していきます!
おもてなしの心にも驚いたんだけど、もっと驚いたのはアトミラールさん自身だった。
歩いて、おしゃべりするぬいぐるみさん。
噂には聞いていたけど、ここのアトミラールさんは本当にそんな人でした。
『これでも昔は人間だったんだけどな。まぁ、いいか。それは。
はいこれ。粗茶だけれども…』
そして出されるアイスのグリーンティー。
グラスに入れられてシロップで甘めに整えられたそれは、とても甘くて美味しい。
渋いって思ってた日本茶のイメージとはまるっきり反対の飲み物だった。
「ダ、ダンケ…です」
『まぁ、もっと気楽にしてくれ。この鎮守府じゃ、提督より艦娘の方が偉いんだから…』
「え、えーっと…」
…それは多分、流石にウソだと思った。
アトミラールさんは緊張している私達を笑わせようとして、
きっと冗談を言っているんだと思う。…多分。
「…潜水艦。U-511です」
…っと、そうこうしてる間に先を越されてしまう。
そうだった。私達は着任の挨拶にきたんだった。忘れてた。
『あぁ。ちょっと待ってくれ。今記憶する…』
机の上に立ってから、こっちに向き直っていざと構えを取るアトミラールさん。
その後ろには秘書艦の妙高さんと、なぜか12.5センチ連装砲を抱えたままの吹雪ちゃん。
他のみんながドックで艤装を解除してきたのに、なんで彼女だけ武装したままなのか。
ちょっと気になっていたんだけど…。
「わっ。あ、アトミラールさん? 目が真っ赤だけど、大丈夫?」
『あぁ。これが記録モードなんだ。ちょっと諸事情で人の顔と名前を覚えるのが苦手でな。こうして一発撮りで頭の中に記録して、間違えないようにしているんだ』
…録画モードなのかな?
確か、ドイツで使ってたDVDデッキにも録画する時に赤い丸が出てたような気がする…。
「潜水艦。U-511です。ゆぅとお呼びください。少し、遠出してきました…」
『分かった。ゆぅだな。遠路遥々、よく来てくれた。よろしく頼む』
…叢雲ちゃんが気をつけろと言っていたのは、このことだったのかな?
あぁ、そっか。一発撮りの記憶方法で…だからさっき吹雪ちゃんは…。
『で、そっちは…』
「あ、はいぃっ!!」
いけないいけない。あれこれ考えているうちに私の番が来ちゃった。ちゃんと挨拶しないと…。
「えーっと!!」
自己紹介。自分のことを相手に知って貰う為に、名前とか簡単に趣味とかを簡潔に答えるもの…だったんだけど。
「重巡。プリンツ…ックシ!! オイゲンです」
…私はその最中に突然クシャミをしてしまった。
「あれ…えーっとー…」
周りのみんなの空気が一瞬にして変わる。これが日本でいうところのやっちまった感っていうものなのかな?
『…プリン串? 随分変わった名前だが、ドイツだとそういうものなのか。あぁ、名前であれこれいうのは失礼か。すまないすまない』
「ちがっ。アトミラールさ…!!」
命名、プリン串置いてけ。
きっと、吹雪ちゃんや雪風ちゃんは今の私のように自己紹介で失敗とかしてあんなことになっちゃったんだと思う。
そして私も…。
「あのっ、アトミラー…!!!?」
着任早々最大のピンチ…だと思った次の瞬間。
私の目に飛び込んできたのは、影の挿した笑顔のまま、
アトミラールさんのすぐ後ろで12.5センチ連装砲を振り下ろす。そんな吹雪ちゃんの姿だった。
「…妙高さん。今の、セーフでしたでしょうか?」
「…そうですね。多分、大丈夫だと思います」
…録画モードを殴って止めて貰った。
これって、助けて貰ったってことなのかな?
「ふぅ。よかったぁ。オイゲンさん。もう少しでプリン串になるところでした」
「よくやったわ。吹雪。流石にそんな変な名前で呼ばれるのは可哀想だものね」
…みんな、特に驚くことなく普通に話している。
この鎮守府だと、これが普通の光景なのかな? よく、わからないけど。
ともかく私は助かったみたいだった。
『ん…あぁ。すまない。えーっと…』
…と、ここで意識を取り戻したアトミラールさんが起き上がって、周囲を見渡し始める。
『…えーっと。何があったんだ?』
「えっとですね。今、突然電気が落ちてきてですね」
…すごいウソが来た。
こんなのすぐにバレるんじゃないかと思ったんだけど…。
「こう、司令官の頭の上にどーんっ。って。ねぇ、妙高さん」
「えぇ。指令がお休みの間に直しましたが…今度本格的な修繕が必要かもしれません」
『…そうなのか。今月に入って2回目だな。予算編成、組みなおさないといけないかな…』
…アトミラールさんは本当に信じたみたいだった。
そして…。
『…っと。その前に。待たせて悪かったな。ゆぅと…あと、あぁ。まだ名前を聞いていなかったな』
「はい。重巡プリンツ・オイゲンですっ」
ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!ダンケ!!
アトミラールさんは見事にその部分だけ忘れてくれてて、私は吹雪ちゃんに助けられるかたちで今度こそきちんと自己紹介をすることが出来たのだった。
今日はここまでです!
本日もありがとうございました!
こんばんわ!
今日も更新始めていきたいと思います!
「ダンケ、ダンケ。本当にありがとう♪」
「いいんですって。それより…」
何か気になることでもあったのか、吹雪ちゃんは不思議なことを聞いてきた。
「オイゲンさんは司令官のことをアド…あとみ…?」
「あぁ。アトミラールさんのこと?
ドイツだと提督さんは、Admiral(アトミラール)さんっていうんだけど…」
「そうなんだ…。ドイツ語って、難しいんですね」
私も、英語読みのAdmiral(アドミラル)の方がこの国では一般的って聞いたことが
あったし、私も皆に合わせて呼んだ方がいいのかな?
こういう時、日本では和(わ)の心っていう調和の精神があるって…。
「それは多分、そのままでいいと思うわ。誰がなんと言おうと、司令官は司令官だし、
大人っていうのはそういうのはいちいち気にしないものだって、前に聞いたことがあるわ」
廊下を並んで歩く暁ちゃんは、そのままでいいって言ってくれた。
私的にはそっちの方がいいんだけど…
やっぱり、新人は大人しくしていた方がいいんじゃないのかな…?
「暁の言うとおり。あんまり堅くなるものじゃないわ。」
「さっき見て分かったと思うけど、あいつはそこのところ割と適当だし。
…そうね。妙高くらいね。司令って呼んでくれって頼んでたのは」
…えーっと、村雲じゃなくて難しい漢字の“叢雲”ちゃんもそう言ってくれている。
だったら、私も遠慮しないでもいいのかなって、そう思えてきた。
この鎮守府で呼び方を指定されているのは、さっき居た秘書艦の妙高さんだけ…。
凄く素敵な人で、秘書艦のお仕事もズバーっとこなしちゃう凄い人だって聞いてたけど、
やっぱり秘書艦っていうのは特別なのかな?
「それなんですけど、なんで司令官は妙高さんだけ…。
やっぱり、お二人は特別なご関係なんでしょうか?」
うんうん。そこのところ、私もちょっと気になっていた。
恋人同士だとか、そういう関係?
でも、なんだろう。ドイツで見るような恋人同士って、名前で呼び合うとか、
そういうのだった気がする。日本とドイツだとやっぱり色々と違うのかもしれない。
「なんだ。そんなこと…。関係はどうか知らないけど、妙高の呼び方が変わったのはもっと変な理由からよ。」
「あんたも知ってるでしょ? あいつの仕事は“提督だけじゃない”って」
「それって…もしかして…」
…うーん。よくは分からないのだけれど、叢雲ちゃんがそうよと頷いた途端。
吹雪ちゃんは廊下の真ん中で悲鳴を上げていた。
すれ違う子たちが遠巻きにこっちを見ているのが、なんだかとても恥ずかしい…。
「えぇーっ!! ウソ。えぇーっ!! 私、もっとロマンチックなのを想像してたのにーっ!! えぇー!!!」
…ど、どうしよう。叫んでた吹雪ちゃんが壊れちゃった。
私はどうしたらいいのか分からないまま、一人オロオロとしてしまうのだけれど…。
これって、ガールズトークっていうやつなのかな?
前にビスマルク姉さまが、こういうのは男の人はあんまり面白くないって思うし、
そもそも入ってこれないからデート中とかにはしない方がいいって言ってたけど…
事情を知らないと女の子の私でも入っていけませんよ、お姉さま~。
「…落ち着きなさい。新人が驚いてるでしょう…」
「あっ。そっか…。ごめんなさい。私ったら、急に取り乱しちゃって…」
「ううんっ。いいのいいの、それより。…どうしたの?」
話の流れは…大体分かったんだけど。
途中からは、多分本当にこの鎮守府を知らないとついていけない内用だったんだと思う…。
こんなことで、この先上手くやっていけるのかなぁ…。
「なんでもないわ。ただ、ちょっと吹雪がカン違いをしてたってだけよ」
「……そうなんだ」
…案の定。叢雲ちゃんはその話について詳しく教えてはくれなかった。
きっと、まだまだ私が来たばかりで馴染めてないせいなんだろうけど…。
…ううん。落ち込むのはやめよう。
これからきっと、戦って戦果を上げていけば上手く馴染んでいけるはずだから…。
…でも、アトミラールさんのお仕事がアトミラールさんだけじゃないっていうのは、どういうことなんだろう?
やっぱり気になるけど…。
「じゃ、私はこれから違う任務があるから。後は任せたわよ」
「私も、睦月ちゃんたちと約束があるから。
これで。オイゲンさん、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそ♪ よろしくお願いします♪」
今日はここまでです!
また明日も更新できるようにガンバリンス!
おやすみなさい(-_-)zzz
乙
更新頑張っていきたいと思います!
気を取り直して、私は2人を見送り残った暁ちゃんに鎮守府の中を案内して貰うことに
なった。
「それじゃ、後はこの暁(あかつき)が案内させて貰うわね」
「うん。よろしくね♪」
暁ちゃん。暁型駆逐艦の一番上のお姉さん。
背伸びしている感じがとってもキュートで可愛らしい子って言ったら怒られちゃうかな?
「この鎮守府は陸と海にいろんな施設があって、同じのが2つあったりとかもするの」
「同じのが2つ…?」
「そうよ。射撃訓練施設は2つあるの。陸地で的を狙えるのがこっち、海の上でやる場合はこっちの施設を使うの」
地図の上を指差しながら、暁ちゃんは色々と教えてくれる。
海上訓練場は使うのに事前の申請が必要で、使用中は出撃したり帰投(きとう)する艦隊は注意しないといけない。
そうだよね。魚雷とか砲弾とか、訓練用のでもあぶないもんね。
陸地のは空いてたら誰でも使ってよくて、こっちは模擬弾や訓練用の艦載機専用…っと。
しっかり覚えておかなきゃ。
「酸素魚雷、だっけ? それも撃てたりとかするの?」
「当然よ。魚雷は海でしか使えないから、海上訓練場でしか撃てないけど。
申請すればどんな武器でも試せるわよ?」
「へぇ~。そうなんだぁ」
酸素魚雷。ちょっと楽しみだったんだよね~♪
どんな感じなんだろう。
「倉庫も二箇所あるのよ。普段使う資源を保管しておく倉庫と、
もしもの時に備えて空襲とかに耐えられるようにって、地下に大きな倉庫があるの。」
「倉庫から倉庫に物を運ぶのも、暁たちの大事な任務のひとつなんだから」
「そっかぁ。偉いんだね~」
「むぅ…」
褒められて嬉しい反面、子供扱いしちゃったからか怒ってる暁ちゃん。
うーん。ちょっと失敗しちゃったかな?
こういう時は話題を変えて、ちょっと気分も変えるのがいいって、
ビスマルク姉さまが言ってたし。よーし。
「そ、そういえば。ここに来る前に、ここに間宮さんっていうのがあるって聞いたんだけど、それってどういうところなの?」
「間宮さん? そうね、折角券も貰ったし行ってみるのもいいかもしれないわね」
甘味処(かんみどころ)間宮(まみや)っていうのは、
給糧艦(きゅうりょうかん)間宮さんの運営しているお店だった。
だからみんな間宮さんって呼んでるのか。納得納得。
そこのおすすめメニューのスペシャルあんみつ。
これがとっても甘くて美味しいの♪
もっと驚いたのはその量。
これほんとに一人で食べていいの? って思うくらい大っきい器に高らかと、ほんっとに沢山あんみつが入っていて…ってぇ!?
「えぇっ!! なにあれ!?」
お店の奥の方から“のれん”っていうひらひらした仕切りをめくって、特大ビッグサイズのあんみつが運ばれてきた。
「あれば一番大きいサイズよ」
「…Muximum(マキシムム)」
「そう。通常の4人分で、暁たちもあれを頼む時は第六駆逐隊のみんなで食べるの」
…そうだよねぇ。私のコレで1人分だもん。あれはきっと大勢で…なんて思っていたら、
和服みたいな服を着た人の前にどかって置かれていった。
あの人、あれを1人で食べるの!?
「あら。もう来たのね♪」
「…今来たところです」
…と、思ったら。もう1人、色違いの服を着た人がその向かいに座る。
そうだよね。流石に1人では…って思ってたらもうひとつ運ばれてきたぁ!!
「お待ちどうさまです。間宮特製すぺしゃるあんみつです。流石にこの大きさのは、
一度に運べませんね」
…あの二人、本当にあのサイズを食べるんだろうか。
他に誰か来るのかなって思ったんだけど、二人とも自分の目の前にそれを移動させ、
さも当然のことのようにスプーンでそれぞれ食べ始めた。
「加賀さんと赤城さんね」
「加賀…赤城…。それって、もしかして一航戦の!?」
第一航空戦隊。通称、一航戦(いっこうせん)。
ドイツで聞いたことがあった。なんでも、2人で敵艦隊3部隊も沈めたとか、
もっと凄い人なんかは軽空母でありながら敵の大艦隊をひとりで足止めしただとか…。
ともかく、そんなすごい人たちのことだっていう。
この鎮守府はボーキサイトが使いたい放題だって聞いてたのは、そんな人たちが居るからなのだろうか…。
「軽空母の一航戦? 誰のことだろう…」
お休みなので日中から更新します!
「…長生きしていたいのなら、そのことに関しては触れない方がいいわよ」
いつの間にか食べ終わっていた青い方の人、加賀さんがこっちにやってきて話しかけてくる。
長生きしてたいならって、そんなに怖い話なのだろうか…。
「見慣れない顔ね。貴女…」
「あっ、はいっ。重巡プリンツ・オイゲンです。
今日付けでこの鎮守府の配属になりましたっ。よろしくお願いしますっ」
「……正規空母。加賀よ。よろしくお願いするわね」
上から下まで、こっちをじーっと見られている。私、何かおかしかったかな?
「加賀さん。そんなに見つめちゃ、あたらしい人が緊張しちゃうわよ?」
「…そういうつもりはないのですが」
…よかった。
どうやらこの人は、基本が少し堅いっていうだけの人みたいだった。
あんみつを食べながら幸せそうな顔で助けてくれた赤城さんに、ダンケダンケ…。
「赤城です。よろしくお願いしますね」
「はいっ。こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
一航戦。
なんか、すごい人たちと出会っちゃったけど、この先上手くやっていけるのか…
やっぱりちょっと不安かもしれない…。
「………ピッケル?」
あんみつを食べ終えた加賀さんの手に、ちょっと小さめのピッケルを見て私は暁ちゃんにそれが何なのか尋ねたんだけど…。
「ピッケル? なにそれ?」
…暁ちゃんは、そもそもピッケル自体を知らないみたいだった。
「これは鶴嘴(つるはし)よ。ピッケルとは用途が違うわ」
「ツルハシ…」
七色に光る不思議な道具を、加賀さんは今から装備品の格納庫にしまいに行くんだという。
私たち艦娘は出撃の時に自分の艤装(ぎそう)を身に付けるんだけど、
任務によって使う武器とか装備が違う時があって、
その回の出撃で使う装備をしまっておくのが格納庫だった。
私も使うことになるから、ちょっと見ておきたいんだけど…。
「案内しましょうか?」
「ほんとにっ!? ダンケ…じゃなかった。ありがとうございますっ」
先輩に対してだもの。しっかりと挨拶をしないと。
「それじゃ、後は加賀さんに任せるわね。私は、もう1人の方の様子を見てくるわ」
そう言って、暁ちゃんはゆぅちゃんのところに行ってしまう。
うぅ~。本当はもうちょっと居てもらいたかったんだけど、ゆぅちゃんはゆぅちゃんで心配だったし…。
「もう1人?」
「あ、はいっ。私の他に、ゆぅちゃんっていう潜水艦の子が来ています。」
「今は、多分はっちゃんっていう子と一緒にいろいろ見て回ってるかな。潜水艦と重巡だと、いろいろ見て回るところが違うからって、二手に分かれたんです」
「…そう」
元々知り合いだった子が居るゆぅちゃんが、今はちょっとだけ羨ましいなと思いながら、
私は加賀さんの後ろについて廊下を歩いていく。
さっきからすれ違う人たちが、みんな“あぁ…”っていう顔をして立ち止まったり、
一歩下がったりとかしてるんだけど、これが一航戦
の迫力なんだろうか…。
「貴女…」
「は、はいっ!!」
突然話しかけられて驚いてしまう。
やっぱり、少しおっかないなぁ…この人。
「オイゲン…だったわよね。この鎮守府のこと。ドイツではどう言われているのかしら?」
…ドイツでの評判。
実のところ、そんなに有名っていうわけじゃないんだけど、
調べると凄いところなんだなって思う場所だった。
「えーっと、アトミラールさんがぬいぐるみさんで、時々艦娘みたいに出撃するって聞いてます。それと、ボーキサイトが使いたい放題だって…」
伝統の寝落ちです…
今日は21時くらいを目標に頑張りますので、
よろしくお願い致します!
ま た か
お休みキター!
書きだめていた分をここで出します!
改めてお付き合いくださいm(__)m
ボーキサイト。
私たちが艦載機を飛ばすにあたって、どうしても必要なものでとっても貴重なもので
空母の人たちなんかはこれが大好きだったりする。
ただ、とっても希少なもので、それが使いたい放題だなんてのはさすがに無いんだろうって思ってたんだけど…。
「…そう。…この先、何があっても貴女は口を挟まないこと。いいわね?」
「ぁ…。はい…」
…加賀さんは静かにそう言って、また歩き始めた。口を挟まないっていうのは…喋るなってことだよね?
一体どうしてのかなって思ったんだけど…。
「アトミラールさんっ!!?」
『…………』
…この鎮守府に来て、色々と驚かされっぱなしだけれど、
曲がり角を曲がったところでアトミラールさんが床に頭を突いている姿は…
今までとは違った種類の驚きだった。
「…見てはいけません」
アトミラールさんは汚れた“茶色いツルハシ”をこっちに向かって差し出すようにして…。
…アトミラールさん。どうしてそんな土下座スタイルでいるんだろう…。
「…言ったはずです。口を挟まず…何も見ずについてきなさい」
「は、はい…」
加賀さんはアトミラールさんにいちべつもくれることなく、完全に無視して先へと進む。
そして次の曲がり角で…。
「ア、アト…」
「しっ!!」
…今度は銀の色をしたツルハシを前にして再び土下座スタイルのアトミラールさん。
というか、ここまで一本道だったはずなんだけど、どうやって先回りしてきたんだろう…?
「…………」
(はいっ!! 分かりました。黙っています!!!)
今度口を開いたらタダじゃ済まない。日本神話みたいな感じで、無言の圧力に頷く私は最早何も訪ねることなく加賀さんの後に続く。
…よく見ると、壁に幅30センチくらいかな。周りより綺麗になっている道みたいなのが
あった。これ、アトミラールさんが通った道なのかな?
「…っ!!?」
まさかね…なんて思っていると、私達のすぐ横の壁を土下座した姿勢のままのアトミラールさんが物凄い速さで駆け抜けていった。
そして、その後はまるでモップで拭いたみたいに綺麗になっている。
ジャパニーズ…雑巾がけだ、これ。
「…もう少し、吹き斑(むら)がなければいいんですけど」
「あ、あの…これって一体…」
喋ったらいけないって、加賀さんが話してるんだからOKだよね?
私はこの怪現象のことを率直に加賀さんに尋ねてみた。
「提督が出撃しているというのは、さっき貴女が言ってたわよね」
「は、はい…」
「それは間違いではないのだけれど、正しくは主にバシー島方面に限って出撃しているのよ。
…ボーキサイトを掘りにね」
「ボーキサイトを…」
ボーキサイト発掘の達人。
アトミラールさんのもうひとつの顔はMiners(炭鉱夫)だと加賀さんはそう言っていた。
「エアートペ、シュタットング…だったかしら? ドイツ語だと」
「Erdbestattung(エアートベシュタットゥング)。…って、それだと土葬って意味ですよ?」
「そう…」
…あ。訂正はしないんだ…。
「それで、そのピッケル…じゃなかった。ツルハシは…」
「これはノルマなのよ。厳正に行われた抽選の結果、
その日に掘って帰って来るボーキサイトの量を示しているの。先程からあの人はその結果を覆そうとしているのよ…」
はぁ…。それで土下座してたんだ…アトミラールさん。
「おそらく、最後の曲がり角でまた頭を下げているのでしょうけど、まじまじと見てはダメ。話しかけるのも禁止。相手に反撃の隙を見せるのは許しません」
「は、はい…」
加賀さんは…一体何と戦っているのだろう。まるで深海棲艦を相手にしているみたいに、
鬼気迫るオーラで私に無視するよう迫ってきた。
…そして、加賀さんの言うとおり最後の曲がり角の向こう側でアトミラールさんは金色のツルハシと菓子折り三段重ねをこちらに差し出して土下座していた。
「…………」
「……あのぉ。加賀、さん?」
そのあまりに真剣なお願いしますオーラに、流石の加賀さんもちょっと考えたのか…な?
「…仕方ありません。お気持ちだけ頂いておきます」
…あぁ、でも全然実際はそんなことはなかった。
積まれた菓子折りだけを回収して、加賀さんはすたすたと格納庫の中へと入っていき、
本日のツルハシは虹色です、おめでとうございます…ってアトミラールさんに告げるのだった。
「…いつまでも絶望にくれていないでください。新人の目には私がいじめているように
見えてしまいます」
「いや、あの…」
どう見てもいじめてるというか…その…なんていったらいいんだろう。
そんな状況なんだけど…。
『あぁ。そうか…。すまない。これでも加賀はやさしいんだ』
「やさしい…」
スキンシップっていうやつなのかな?
それともちょっと違う気はするんだけど…。
『ノルマだって初期の頃の3分の2くらいに減ってるし、最近じゃノルマの倍掘ったら
帰ってきていいって言ってくれるようになったくらいだ』
これで一旦出かけてきます!
帰ってきたらまた更新し始めます!
一旦乙
こんばんわ!
今日も頑張っていきたいと思います!
まぁ、深く聞いたらきっと加賀さんに綺麗に消されてしまうんだろうし、
私はこの件に関して何も言わないようにしておこうと思った。
『さてと…今日も今日とて虹と決まったわけだし…。大人しく行ってくるかなぁ。バシー島』
「Gluckauf(グリユックアウフ:どうかご無事で)」
…そう言って格納庫へと消えていくアトミラールさん。
でも…ほんとうにバシー島でそんなボーキサイトがとれるのかな?
「前にドイツ海軍がバシー島を調べた時は、ボーキサイトなんてとれないって話だったって聞いたことがあるんですけど…」
「彼が言うには、探し方が悪いんだそうよ。現に彼は毎回ボーキサイトを持って帰ってきているし、それは到底一個人がどこか別の場所に隠しておける量では無いわ」
「へぇ~。アトミラールさんって、凄いんですね」
「お父上が炭鉱夫をなさっていたと、前に聞いたことがあるのだけれど…」
「アトミラールのお父様が…」
「血統書付き(サラブレッド)といえば、私達空母の中では有名な人物よ。彼は」
「サラブレッド…」
なんだろう。ちょっとカッコいいかも…。
今度、お姉さまにお手紙で教えてあげよう。
「…他に見たいところがあれば案内するけれど、どこかあったかしら?」
「あ、えーっと…」
どこが見たいって言われても、そもそも何があるのかよく知らないというか、
わからないんだけど…折角親切にしてもらってるんだし、変なこと言ったら失礼だよね?
「…じゃぁ、入渠ドッグと食堂あたりを案内しようかしら?」
「あ、はいっ。よろしくお願いします」
どう答えたらいいのか迷っていた私を見て、加賀さんは普段使いそうな施設なんかを案内してくれた。
入渠用のドッグはドイツみたいに個室じゃなくて、とーっても大きなお風呂だったし、食堂はさっき見た間宮さんよりもずっと大きなところだった。
ここではアトミラールさんも私達艦娘といっしょにごはんを食べることも多いんだって。
「…ところで貴女。山へはもう行ったのかしら?」
「やま? 山って、山…ですか?」
…山に、何かあるのかな?
確かに、この鎮守府は近くに山があったけど…。
「…そう。何も聞かされていないのなら、貴女には関係がないっていうことなのでしょう。裏の山の向こうには鎮守府で管理している畑があるのよ」
「畑。ですか?」
ここの鎮守府では、艦娘のお仕事の中に農作業っていうのがあるらしかった。
加賀さんが言うには、なんでも、もしも補給線が絶たれた時に自給自足出来ているかどうかっていうのはとっても大きい問題になるんだって。
…確かに、あんなに食べる人が多いんだったら、大変なんだと思った…。
あと、他にもいろいろと理由があるらしいんだけど、加賀さんは追々知ればいいって言って、詳しくは教えてくれなかった。
「機会があれば、その内に案内されると思うわ」
「そうですか…」
農作業って…私したことないんだけど、上手くやれるかな?
…ううんっ。なんでも経験だって、ビスマルクお姉さまも言ってたし、
やる前からしょげてたって仕方が無い。がんばらないとっ。
「明日からは貴女も出撃すると思うから。今日は早めに休んでおくといいわ」
「はいっ。がんばりますっ」
「……あまり張り切り過ぎて、失敗することのないように」
「は、はい。気をつけます」
宿舎の前で加賀さんと別れて、私は今日から自分の部屋になる場所を改めて見回す。
アトミラールさんが私に宛がってくれたのは3人ひと組の大きな部屋だった。
最初。1人部屋とどっちがいいかって聞かれた時、ちょっと迷ったんだけど、
やっぱり早く慣れるためには他のみんなと一緒に居る方がいいって思って大部屋にして
もらったのだ。
私は一緒の部屋の人が戻ってくるまでの間に届いていた自分の荷物の荷解きをしながら
洋服を入れるクローゼットを探したんだけど…。
「……あれ? クローゼットが無い??? あれ?」
艦娘はクローゼットを使っちゃいけないのかな?
アトミラールさんのお部屋にはちゃんとあったし…
やっぱり、そういうところは上官と部下の仕切りみたいなのがあるのだろうか…。
「そこの下のところ。引き出しになってるのよ。真ん中があんたのところだから。はい、これ。名札」
ちょっとした隔たりを感じていると、お部屋に叢雲ちゃんが入ってきて洋服を入れる場所を教えてくれる。
この部屋。畳の床が入り口から一段高くなってたんだけど、高さを利用した床下収納に
なってたのだ。どおりで、畳の上で見渡しても収納スペースが見当たらないと思った。
微妙な更新でしたがここいらで、
お休みなさい!
乙
こんばんわ!
今日も更新頑張っていきたいと思います!
「え? でも、たったこれだけなの?」
個人用の収納スペースを引っ張り出して服を入れると、もうほとんど場所は残っていなかった。
これじゃ、帽子とかドライヤーとかブラシとかレターセットとか、
テレビとかが入れられない…。
「テレビって…あんたそんなものまで持ってきたの?」
「うん。日本は凄いストイックな国だから、部屋でテレビとか見られないって聞いてて、
それで自分で持ってきたの。」
「あ、アトミラールさんにはナイショにしててっ。お願いっ」
「…そんなの。バレたって何もありゃしないわよ」
「そうなんだ…。よかった。言葉の勉強をするのに、テレビってすっごい便利なのよね」
「…そういうちゃんとした理由があるんだったら、尚のこと文句なんか言わせないわ。
あいつには私から言っておくから、テレビはそこら辺にでも堂々と置いておきなさい」
叢雲ちゃんはアトミラールさんとかなり仲良しらしく、上官でも臆することなく
意見を言っている、凄い子だった。
…というよりも。この鎮守府は、私がイメージしていた日本っていう国と大分違っていた。もっとこう、堅いっていうか“びしーっ”としたイメージだったんだけど…。
「ただいま戻りました。叢雲殿、新しい方はもう…あぁ、来られてましたか。はじめまして、自分。あきつ丸であります」
今起こったことをry
完全に寝落ちです、本当にありがとうございました。
「は、はじめ…まして…」
…居たっ。私のイメージしていた感じの人。
お部屋の入り口で、すっごい綺麗に敬礼しているこの人も一緒のお部屋の人みたいだった。
「あきつ丸。あんまり堅苦しいのはやめときなさいって、昨日言ったでしょ?」
「申し訳ない。しかし、自分はこれが素…なのであります」
「素ねぇ…。ま、いいけど…」
あきつ丸…ちゃん? さん?
どう呼んだらいいんだろう。
「自分のことは、どうとでも呼びやすいようにお呼び下さい。
元々自分は陸軍所属で、海軍のみんなとはちょっと違うようなのであります」
強襲揚陸艇あきつ丸。
なんだか、とっても強そうな名前の人なんだけど…
叢雲ちゃん曰く、陸でこの人に勝てる人っていうのは本当に限られているんだって。
「そんな。自分など、長門殿や妙高殿に比べたらまだまだ…」
「比較対象が戦艦や妙高の時点でおかしいんだって気づきなさい。…まぁ、いいわ。
ともかく、これで揃ったわね」
「うむ。そうでありますな」
あきつ丸さんはペットボトルに入ったオレンジジュースとポテトチップの入ったビニール袋を持っていて、ちゃぶ台っていう背の低いテーブルの上いっぱいにそれを並べる。
「さぁ、それじゃパーっとやるわよっ♪ 新入りの歓迎会っ」
「歓迎会って、私のっ!?」
「他に誰が居るっていうのよ。この鎮守府じゃね、新入りの歓迎会は同じ部屋のメンバーで行うって決まってるのよ」
「そうであります」
わぁ。なんだかわるい気がするけど、嬉しい。
「ダンケ♪ 二人とも、感謝。ありがとうっ♪」
「大袈裟ね。まぁいいわ。久しぶりにポテトチップとか食べれるし。悪い気はしないわね」
「叢雲殿はほんとうにポテトチップスが好きでありますね」
「い、いいじゃないっ。普段は滅多に食べれないんだからっ」
「そうでありますね。叢雲殿はのり塩、自分はコンソメが好みででありますが、プリンツ殿は如何なさいますか?」
「ほぇ? 私? 私は…」
ドイツに居た時はこういうのを食べたことがなかったから、どれがいいのか…。
うーん。どれもかわいい袋で迷っちゃうな…。
「こういう時は、端から開けてみんなで楽しみましょ♪」
「そうでありますな♪」
テーブルの上でいろんな袋が開けて並べられる。
それはドイツでは見たこともなかった色んなフレーバーのチップスで…。
やっぱりのり塩王道だよな
どうしよう…。手が止まらないっ」
「…あんまり食べ過ぎると太るわよ?」
「分かってはいても、ついつい手が出てしまうものなのであります。
この誘惑にはなんども抗いがたい…反省」
遠くドイツの地で頑張っているビスマルク姉さま。
この国には、とてもおそろしいものが沢山ありました…。
「あぁ、そうそう。オイゲン殿はお酒は飲まれるのでありますか?
もし飲まれないのでしたら、夜に近づいてはならない部屋というのを後でお教えするのであります」
「ふぇ? 近づいちゃ、いけないお部屋?」
「…食べてから返事しなさい。…でも、そうね。それは大事ね…」
お行儀のわるかった私に、叢雲ちゃんが影の挿したような顔でしっかりと聞いておくようにと念を押してくる。
「…そんなに凄いの?」
ドイツだと正直、結構そういうのにはうるさかったんだけど、ここの鎮守府だと、規律っていうのは結構ゆるいみたいで、
許可が下りると夜な夜な宴会をするお部屋というのがあるみたいだった。
私は…そんなに好きっていうわけじゃないんだけど、
ビスマルクお姉さまは確か飲んでたかな…?
「…うむ。迂闊に部屋の前を通りかかると、そのまま巻き込まれるのであります」
「翌日の出撃に差し支えがあったりすると、そこのグループは一週間禁酒。」
「更にバツとして鎮守府の清掃を命令されるの。ちなみに、巻き込まれた側もそうだから。覚えておきなさい」
「ぅ…。そうなんだ…」
ゆるいどころか、それって結構厳しいんだけど…この国だとそれが普通なのかな?
私ひとりの失敗で二人に迷惑を掛けないように気をつけないと…。
「まぁ。ここは司令があんなだし、私はあんまり気にしてないんだけどね」
「叢雲殿はここの初代秘書艦でありますから、提督殿とは誰よりも長い付き合いなのであります」
「へぇ~。そうなんだ」
「…無駄に古い仲っていうだけよ。別に大したことじゃないわ」
叢雲ちゃんはそう言うけど、秘書艦って結構凄い立場だったりする。
私も頑張って、早くアトミラールさんやみんなの役に立ちたいな…。
そして私達はちょっと遅めの消灯時間を向かえ、翌日の出撃に備えるのでした。
『本日の任務は新体制に慣れて貰う為の周辺警戒任務だ。戦闘が起きる可能性は低いが、
くれぐれも油断はしないように』
アトミラールさんの言葉に全員が返事をする。
アトミラールさんはひとりひとりの顔を見て、ひとりひとりの名前を呼んで…。
『ぁー…えーっとだな…』
…そしてまた、吹雪ちゃんの番で言葉に詰まる。
アトミラールさんっ!がんばって!!
『…っ!! そうだ。確か引き出しに…』
…立派にカンニングだけど、昨日吹雪ちゃんが名前を書いた紙を思い出して
アトミラールさんは引き出しを開ける。そして、勝ち誇ったような笑みを浮かべて…。
『吹雪(ふぶゆき)!!』
「吹雪(ふぶき)です!!!」
…盛大に読み方を間違えていた。
「なんでそこで間違えるんですかっ!!」
『仕方ないだろうっ。さっき出撃したのが初雪(はつゆき)と深雪(みゆき)と白雪(しらゆき)だったんだっ!! 情状酌量の余地を求める!!』
…吹雪ちゃんがしっかりと名前を呼ばれるようになる日は、まだまだ先のことみたいだった。
がんばって、吹雪ちゃん。アトミラールさん。
以上で完結です!
何回も途中で寝落ちしたりしましたが、
何とか完成しました!
依頼をしてきます!
読んで頂けた皆様本当にありがとうございました!!
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乙
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