[モバマス]僕 「雑貨屋か」[小早川 紗枝] (15)





※アイドルじゃなかったら系の話なのでパラレル感覚で見てね







僕の通う高校は観光客で賑わう古風な街並みの地区に近い。
冬の平日は観光客もそれほど多くないということもあり、学校終わりに遊びに行くといえばこの辺だ。
そんなわけで僕もバイト終わりにふらふらと歩いていたらふと目についた店があった。


僕 「雑貨屋さんか」


まだ年度は終わってないけれど時期的には師走の初旬。
そこそこ使い古した文房具たちを思い出し、つい足が向いてしまう。
新年を新しい文房具で迎えて学問に打ち込むのも悪くない。


僕(結構和風なデザインのものが多いなぁ)


和風、という単語から自然と頭に浮かんだのは一人の少女
去年同じクラスだった小早川紗枝だ。
小柄でかわいらしい見た目だけど物腰は優雅で大人びた、というよりどこか神聖な雰囲気がある。
誰に対しても優しく、しかし時折見せる年相応な振る舞いから男子の人気は高く
例に漏れず僕も彼女に恋心を抱いていた。
いや、恋というには大袈裟かもしれない
にこやかに話してくれてはいたがそれは彼女の性格故で僕が彼女と特別仲が良かった訳じゃない。
だから恋というよりもう少し仲良くなりたい、そんな感情のほうが近かったように思う。


僕(でも実際めちゃくちゃ可愛いよなぁ......あんな子とこういう風に雑貨屋さんとか見て回るデートしたい......)


そんな年頃の男子にありがちな妄想をしながら文房具を選んでいく
シャーぺン、ボールペン、ノートに消しゴム、せっかくお洒落な店でも選ぶものはどこにでもあるようなデザインのものばかりだった。


僕(せっかく普段来ないようなところで買うんだから筆箱くらいは和柄っぽいのにしようかな......小早川さんみたいな柄の色違いとかあるかなぁ)


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そんなことを考えていたから僕は最初、目にした光景を妄想のしすぎで幻覚でも見てるのかと思った。
さして大きくもない壁際の筆箱コーナー、僕のすぐ隣で筆箱を眺める着物の少女
さらりと伸びた黒髪を見上げていけば一点を見つめる綺麗な瞳
希代の芸術家が丹精こめて仕上げた彫刻のような横顔はいつまでも見ていられ......


僕 「こっ、あ、小早川さっ、!?」

紗枝「......?あらぁ、奇遇どすなぁ。えぇと、確か去年同じクラスやった......えぇと、」

僕 「えっ、覚えてくれてるん!?ひ、久しぶりだね......?」

紗枝「んー、結構廊下とかですれちごうてる思うけど?」

僕 「あー、ごめんいつも下ばっか向いて歩いてるから......」

紗枝「確かにいっつも伏し目がちかもなぁ。たまーにうちと話した時も目ぇ合わしてくれたことほとんどないし。ほら、今も」

僕 「それは......人と目ぇ合わせるのって結構恥ずかしいし......」

紗枝「人と話すときは目ぇ合わせたほうがええよー?うちと練習してみる?」

僕 「えっ、あ、えっと、じゃあ......」

僕(どうしよう、僕のことを覚えててくれた衝撃だけでもすごいのにこんなかわいい子と目を合わせるとか無理だって!ていうか着物姿可愛い......
あ、ここで断るのももったいないよな......)


そう思って彼女の輪郭の外から彼女の輪郭へ視点を移す
白い肌、柔らかそうな薄桃色の唇、そして彼女の......

ボーン ボーン ボーン ボーン


僕の挑戦を嘲笑うように気の抜ける時計の音が響いた


紗枝「あらぁ、もーこんな時間。ごめんなぁ、うち今日ちょっと用事あるさかいこのへんでおいとまさせてもらいますー。また学校で会ったらちゃんと目ぇ合わせて挨拶してなー。」


そう言って彼女は会計を済ませ店を出る
しゃなりしゃなりと歩く雅な後ろ姿を見ながら僕は自分が逃した魚の大きさを実感していた。

僕(はぁ、別に目を合わせるのが苦手なわけじゃないけど小早川さん相手だと緊張するって......そういえば小早川さんどんな筆箱見てたんだろう)


彼女の視線を追って棚を見る
壁際の棚のさらに上、壁に直接取り付けられた棚にちょこんと乗っている可愛らしくも細やかな装飾があしらわれたその筆箱
値段が可愛くないことは言うまでもなかった。


僕(マジかよ......筆箱一つで自転車買えるくらいっていいのか?あ、でも小早川さんとこってたしか家大きいらしいしな......)


謎の敗北感に襲われつつ、似たような柄で色違いの筆箱をとり会計を済ます
家に帰る間僕の頭はなぜかその筆箱のことでいっぱいだった。


---紗枝「あの筆箱かいらしかったなぁ。」

翌日、僕はまた同じ雑貨屋に来ていた
また彼女に会えるかもしれないと思うと勝手に足が向いていた。
結局学校ではすれ違うこともなかったので余計に期待が高まっていた。


紗枝「あらぁ、また会うたなぁ。〇〇君もここのお店の常連さんやったん?」

僕 「わぁっ!!」


急に後ろから声をかけられ勢いよく振り向いてしまう
その拍子に棚の商品がいくつか落ちてしまった


紗枝「ちょっと驚きすぎとちゃう?て、拾わなあかんなぁ、うちが急に話しかけたからやしお手伝いしますえ~」

僕 「え、ええよ!大丈夫大丈夫!」


二人してしゃがみこんで商品を拾い......

僕 紗枝「あっ」


......落とした物を拾って手が触れ合うとか実際にあり得るのか
すぐに離れてしまった彼女の指は細く長く、それでいて柔らかくて
女の子の手ってこんなに柔らかいんだなぁ、爪も綺麗で少しいい匂いもしたなと場違いなことを思い始めたときだった


紗枝「男の子の手ぇって、こんな感じなんやなぁ......」


あ、好き
少し赤くなっているがどちらかといえば驚きの色が強い彼女の顔を見てそう確信してしまった。


僕 「ご、ごめん!手汗とか気持ち悪かった!?」


我ながら何を言っているのかわからないが誤魔化さずにはいられなかった。
そうしないと思ったことが口から出てしまいそうだったから


紗枝「ん、そないなことあらしまへん。それより、お店に迷惑かけてしもたなぁ......恥ずかしいしはよ出たいわぁ。そこのお茶屋さんにでも避難しまひょか」


どこか無理やりな感じもするが彼女もまた少し混乱しているのだろう
昨日より足早にそそくさと出ていってしまう。

紗枝「はぁ~、恥ずかしかったわぁ。お店の人はええよええよーいうてくれはったけど、うちどうもああいう雰囲気は苦手どす。」

僕 「いや、僕が驚いて勝手に商品こかしただけやから小早川さんは気にせんでええんやで?」

紗枝「そういわれましてもなぁ......ところで、こばやかわーなんて長うていいにくいんとちゃいます?紗枝、でかまいまへんえ?」

僕 「さ、はっ!?」

紗枝「仲ええ子とかは紗枝はんー呼んでるし、短いほうが呼びやすいんちゃいますー?」

僕 「いやでもさすがに馴れ馴れしいんちゃうかな......」

紗枝「ほなうちも〇〇君の下の名前で呼びまひょ、なんて言うん?思えば苗字しか知らへんわ。」

僕 「......P」

紗枝「Pはんやなぁ~」

僕 「っ!」

紗枝「どないしたん?顔赤うなってるけど......」

僕 「女の子に名前で呼ばれることなかったから恥ずかしくて......」

紗枝「ふぅ~ん、ほなうちが初めてのひと、っちゅうわけやねぇ~」

僕 「ぶふぉtぉ!?!?」


彼女はわかってて言ってるんだろうか、そんなこと言われたら男子がどれだけ勘違いするかということを......


紗枝「うち、男の子の友だちてあんまりおらへんから男の子がどんな遊びしてるんかとか前から気になってたんどす。いつもはどんなことして遊んでるん?ちゃんばらとか?それとも独楽とかやろか......」

僕 「こば、えっと、紗枝さんそれいつの時代よ」

紗枝「ふふっ、冗談どす~。」

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紗枝「男の子はそんな遊びしてるんやなぁ、うちぜーんぜん知らへんかったわぁ」

僕 「まぁ僕も実際やったことない遊びとか結構あるけどなぁ」

紗枝「あつはんと話すのたのしいわぁ、今日はもう暗なってきてしもたけどまたこうして話きかせてもらえるとうれしぃわぁ」

僕 「ほんまやもうこんな時間やね。僕も紗枝さんと話すの緊張するけど楽しいで!こちらこそやわ」

紗枝「ほんま?うれしいわぁ。」

僕 「あ、制服もいいけど昨日の着物も綺麗やったよ。」

紗枝「あらあらぁ、照れてまうわぁ。お上手さんやなぁ。今日はちゃんと目ぇも合わせて話してくれたし、だいぶ慣れてくれたーおもてええんやろか?」

僕 「テンションおかしなってんのかもね。自分でもびっくりしてる」

紗枝「ましょーのおんな、っちゅうやつやろか。ほな、また明日今日くらいの時間なぁ~」

僕 「えっ、あ、またねー」


また明日って彼女言ったよな?
明日って土曜だけどこれ気づいてない......?

もう人ごみに紛れて見えない彼女を見ながら明日の予定を思い出していた。

たぶん、不安と緊張と少しの期待を水でといて顔に塗れば今の僕の顔になるんじゃないだろうか
結局僕は昨日彼女と入ったお茶屋さんの近くで待っていた。
だってもしほんとに今日も会うつもりだったら僕がいないと彼女の予定潰しちゃうし......
それに僕も会えるなら会いたいし話したい。昨日好きだって自覚してしまったから
いや、きっと最初から好きだった。けど色々とそれらしい理由をつけて認めなかっただけだ。
どうして認めなかったのかはよくわからない。それでも今好きだと思っていることだけはわかっている
なら僕はそn


紗枝「ふぅ...っ」

僕 「うおっ!!!!」

紗枝「もー、見つけたーおもたらなんやえらい考え込んでるみたいやしうちが横たってもちぃっとも気付いてくれへんなんて、よっぽど真剣なこと考えてはったん?」

僕 「そうやけど耳にふーっはあかん!それはあかん!」

紗枝「くすくす......びっくりさせたろーおもて」

僕 「びっくりした!むしろびくっとした!」


君のことを考えてた、なんてこと言えるはずもない。
ましてや風に揺れる柳のように笑う彼女をみて驚かされたことに嬉しさを感じてしまっていたなんてなおさらだ。


紗枝「ほんまに真剣になんか考えてたんやなぁ。でも一安心やわぁ~。昨日家帰ってからな、明日土曜日やーいうのおもいだして、でも連絡先とかしらへんしーて」

僕 「僕もおんなじようなこと思ったわ。もし来やんかったらどないしよーとか」

紗枝「なんや、おそろいどすなぁ。ほな今日はお茶もおそろいにしまひょか~」

僕 「紗枝さんそういうとこずるいと思うんやけど。」

紗枝「?とりあえずお店お入りやすー」

紗枝「こーひーて初めて飲んだけど、あつはんこない苦いのよう飲みはるなぁ......」

僕 「砂糖とかミルク入れたら飲みやすなるんちゃう?」

紗枝「ほー、試してみよかなぁ............っ、ほんまや、これならうちでも飲めそうやわぁ」

僕 (可愛いなぁ......)

紗枝 「どないしたん?大黒さんみたいなお顔したはるけど」

僕 「いや、今日は洋服なんやなー思って。洋服も似合ってるし紗枝さんはなんでも似合うんやね。えっ、ていうか待って僕そんな顔なってる?ちょっとショックやねんけど」

紗枝「またまたお上手なんやから...もぉ。冗談どすー。それよりうち、今日はあつはんの話が聞きたいわぁ」

僕 「んー、僕のこというてもなぁ、そんなおもろい話ないで?」

紗枝「趣味とか、得意な科目とかでもええよ?」

僕 「じゃあ......」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

僕 「って感じかなぁ。紗枝さんは趣味とかは?」

紗枝「うち?うちは~」

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彼女と話す時間は楽しくて、幸せで、時間はあっという間に過ぎていった
帰り際、連絡先も交換した
連絡先を交換する流れになった時「すまーとほん?いうの難しゅうてなー、うちこういうの弱いんどす」といった彼女も可愛かったなぁ

そして僕たちはよく会って話すようになった
他愛のないことだったり誰と誰が付き合ってるとかのいわゆるコイバナだったり
彼女はやっぱりというかなんというか、そういう恋愛沙汰には疎いらしい
そんなわけで、彼氏がいないっぽいというのもそれとなく聞き出せた
彼女と仲良くなって数週間。もう、告白してしまいたい
さっき別れたばかりだけど意を決して文字を打ち込む

「ごめん、ちょっと言いたいこと言い忘れてたんやけど今日もう一回会える?」

「かまいまへんよー。ほな、あの雑貨屋さんでどうどすか?」


僕 「雑貨屋さんか」

12月24日
はいったばかりのバイト代をおろし、可愛い彼女へのプレゼントを買いに来ていた

僕 「あれ買いたいんですけど」

壁際の棚のさらに上、壁に直接取り付けられた棚にちょこんと置かれている筆箱を指さし僕はそう言った

終わり

処女作なので読みやすいかどうかもわかんないですけど書いてて楽しかったです。
紗枝はんとこういう青春送りてぇよなぁ!!!!

では読んでいただきありがとうございました

ここで終わるんかい!!!
もっと続けてもええんやで
とりあえず乙

すごく良かった
次作もあると期待してるよー

カッコは[]より【】のがメジャーかな

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