見滝原に微笑む刹那(まど☆マギ×ネギま!) (685)
お断り
本作では、まど☆マギ側の原作設定に就いて
こちらの都合で一つ意図的に変更した部分があります。
かなりの部分、特に前半は原作知識前提の内容になります。
それでは、スタートです
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1491067306
==============================
何故
彼女なのか?
何故
彼女は微笑むのか?
心から
そう思うのなら
魔法少女に
なりなさい
× ×
「………夢オチ?」
鹿目まどかは、眠たい声で確認していた。
お気に入りのぬいぐるみがあって、
朝の太陽が花柄のカーテンを透かしているいつもの寝室。
ひどく、殺伐とした夢を見たと思った。
廃墟の中で痛々しく、余りにも痛々しく戦い、傷付く少女。
どちらかと言うと子どもっぽいと自覚しているまどかから見て、
長い黒髪の、華奢にも見えるけど何処か大人びて、
そして言い知れぬ悲壮感が突き刺さる少女がいた、そんな夢。
いつもの寝室、いつもの日常の光景を寝ぼけ眼にとらえるだけで、
それは優しい日常の片隅へと遠ざかる。
ーーーーーーーー
「あーさ、あーさっ」
両親の寝室では、三歳になる鹿目タツヤが、
ベッドの布団をぽかぽか叩いて楽し気に叫んでいた。
飛び跳ねヘアーのパジャマ姿で家庭菜園の父への挨拶を済ませたまどかは、
その寝室の引き戸を気持ちよくすぱーんっと開く。
「おっきろぉーっ!!」
「うっひゃあぁーっ!!!」
そのまますぱーんっとカーテンを開き、陽光と共に布団を引っぺがすまどか。
ベッドの上で悶絶する鹿目詢子、まどかとタツヤの母。
「おきたねー」
鹿目家の朝は愉快に始まる。
ーーーーーーーー
「最近どんなよ?」
洗面台で並んで歯磨きをしながら、詢子は娘に尋ねた。
「仁美ちゃんに又ラブレターが届いたよ、
今月になってもう二通目」
「直かにコクるだけの根性もねぇ男は駄目だ」
母と娘の女子トーク。
志筑仁美は小学校以来のまどかの友人、詢子とも知らない仲じゃない。
ちょくちょく頂くラブレターへの対応に困っている、と言うのも分かる、
ふんわりと気立てのいい可愛らしい本当の意味でのお嬢様。
まどかの担任の早乙女和子は詢子の個人的な友人だったりする。
まどか曰く、何でも和子先生は昨日現在で彼氏の事をのろけまくりなので
ぼちぼち継続期間が新記録、との事だが、世の中そんなに甘くはない。
と、付き合いの長い親友鹿目詢子の直感が囁く。
でもって、問われるままにそんな面々の恋愛模様をお話ししているまどかは
そっちの方には全く以て疎かったりする。
姉御肌の詢子としては、それが歯痒かったり微笑ましかったり。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
つい先ほどまでの寝坊助が何処に出しても恥ずかしくない、
大人に言わせれば、とてもこれだけの子持ちには見えない
バリキャリ美女にメタモルフォーゼする。
毎朝の事ながら、そんな母の、一人の格好いい女性の姿に、
鹿目まどかは惜しみなく憧憬の眼差しを送る。
ーーーーーーーー
「どうかな?」
「ああ、いい感じ」
「うん、美味しい」
しっとりとしながら心地よい歯ざわりも残る。
家庭菜園発の茄子の浅漬けは、好評を以て朝食のお供に迎えられた。
まどかの父、鹿目知久は、まどか曰く家事の天才であり、
素晴らしい菜園の主でもあった。
それはそのまま、こうやって白いご飯が美味しい浅漬けに直結している。
まどかの知る限りパン食の時期も長かったと思うが、
何かのきっかけでこうなっている。
どっちにしろ、父の天才っぷりが微動だにしていない事を実感しながら、
まどかはいつも通り美味しい朝食を堪能する。
インゲンの味噌汁にオクラの和え物。
まどかはそのどれもこれも大半が自家製である事に今更ながら感心しつつ、
野菜多めのメニューでもネバネバオクラは元気の素だと
何時ぞや詢子が笑ってウインクしたのを思い出す。
「コーヒー、お代わりは?」
「おー、いいや」
知久の誘いに、時間を確認した詢子がぐーっとコーヒーを飲み干し、
家族とのスキンシップを交わして出勤に就く。
まどかに残された時間も、決して長いものではなかった。
ーーーーーーーー
朝の通学路で、友人の志筑仁美に母からのアドバイスを伝えたり、
自分には少々派手だ、と思いつつ
気合いの入った母に押し切られる様に装着したリボンを
友人の美樹さやかに手荒く褒められたり。
何時もの様に姦しく、
鹿目まどかは見滝原中学校の自分の教室に到着する。
朝のHRでは、担任の早乙女和子先生が
彼氏に振られて爆発すると言うまどか達にとっては割とよくある光景を経て、
転校生紹介と言うイベントが開始される。
一日の授業を終えて放課後、
まどか達が行きつけのフードコートで一服していた時には、
美樹さやかは快活に大笑いしていた。
確かに、まどかの知る限り今朝初対面の筈の転校生が
夢の中で出会った様な気がしたり、
その転校生が自分に対して何やら意味深に運命的な発言をしたり、
実際たった今まどかがそうした様に、
それをさやかに伝えれば、それはさやかなら裏表なく笑うだろう。
その事はまどかにもよく分かる。
しかも、その転校生がストレートの黒髪も見事な美少女で、
勉強OKスポーツOKのハイスペック万能選手と来たら尚の事。
もう一人、同伴している志筑仁美は、くすくすと可愛らしく笑いながらも、
或は本当に何所かで会った事があるのでは、と、
落ち着いた分析を披露する。
かくして、お嬢様らしくお稽古事に向かった仁美と分かれ、
まどかとさやかは行き着けのCDショップへと足を運んだ。
さやかは、級友である上条恭介へのお見舞いを選ぶのだと言う。
まどかにとってさやかが小学校からの幼馴染なら、
上条恭介とさやかは幼稚園以来の幼馴染。
実際、割と長い付き合いのまどかともそうであるが、
特にさやかとは、男女にしては気の置けない間柄、
それがまどかの知る上条恭介。
だけどまどかは知っている。
男勝り、お転婆、そう言って、周囲も本人すら、
何処からも否定する声は出ないだろう。
そんなさやかが、何時しか恭介の話をする時に見せる様になった、
それは紛れもなく女の子の顔。
そちら方面には疎い、と自認しているまどかでも
見ているだけで胸の高鳴りを覚える、そんなさやかの表情。
そして今、その表情は些か陰りを帯びている。
それは、別に失恋した訳ではなく、
当の上条恭介が入院してしまったから。
それも、将来を嘱望されたヴァイオリニストの卵である恭介が、
交通事故でまともに動かせない程に左手を痛めた。
その事にさやかは心を痛め、回復を祈っている。
まどかも又、二人の友人として
「………助けて………」
まどかは、CDの試聴を止める。
「………助けて………」
「?、?、?」
聞こえる。
余りのダイレクトさに、当初は試聴していたCDの音声かとも思ったが、
まどかは確かに聞いていた。
それも、頭の中に直接響く様な未体験の救援要請。
戸惑うのも当然だった。
ーーーーーーーー
「まどか、こっちっ!!」
「さやかちゃんっ!」
まどかは、白煙と共に親友美樹さやかの叫びを聞いていた。
謎の声に誘われる様にショッピングモールからその改築エリアに侵入し、
そこで、半ばボロ雑巾と化した謎生物と、
それを追跡していたらしい謎の転校生暁美ほむらと遭遇した。
今朝、転校生として同じ教室で遭遇したばかりで
少々言葉も交わしているので謎と言う程でもない筈なのだが、
少なくとも今朝彼女が着用していた見滝原中学校のものとは違う学生服、
どう見てもコスチュームプレイの類に見える服装で
狐だか猫だかなんだかよく分からない謎の小動物を追跡している、
でもって虐待している疑いが濃厚なのだから
謎の転校生と言っても差し支えは無いだろう。
しかも、同級生として言葉を交わしたら
尚の事謎が深まるのが暁美ほむらだったりする。
少なくとも美樹さやかはそう受け取ったらしいが、
それでこちらに向けて消火器を噴射すると言う
相変わらずの有り余る行動力決断力にまどかは改めて感心する。
そして、さやかと共に文字通り逃走しながら、まどかは異変に気付いた。
「あれっ? 非常口は? どこよここっ?」
さやかも気付いたらしい、気付かない方がおかしい。
「変だよ、ここ。どんどん道が変わって行く」
まどかもさやかも、彼女達、中学生に限らず、
実体験としてこの状況を言語化する事は簡単ではないだろう。
強いて言うならば、改装中の殺風景なビルディングを走っていた二人は、
いつの間にか、何やら不気味な絵画の中を思わせる、
そんな得体の知れない奥行き不明の空間の只中に存在していた。
そんな不気味な空間の中で、
まどかとさやかは更に不気味に何かに包囲されていた。
一見すると蝶々の様な。
但し、その大きさは少なくとも人間の子どもに匹敵するバカでかさ、
羽を使って歩行し髭の様な変な飾りがあり。
更に、その化け物蝶に加えて
自律行動するハサミやら鉄条網やらがうじゃうじゃと現れて二人に迫る。
まどかもさやかも、これが自分に対して友好的なファンタジーである、
と受け取る事は出来なかった。
「冗談だよね?
あたし、悪い夢でも見てるんだよねっ?
まどかっ!?」
「?」
叫ぶさやかの横で、まどかは何かを目で追っていた。
何かが二人の側を飛んで、ひゅんっ、と通り過ぎる。
「何、これ?」
さやかが発した問いへの直截な答えは独鈷、と言う事になるが、
生憎、それはさやかの語彙には含まれていなかった。
三口の独鈷が二人を囲み、一口が二人の真上に向かう。
次の瞬間、二人の周囲は衝撃波に飲み込まれたが、
二人は直接的な打撃を感じなかった。
ーーーーーーーー
「何、これ?」
巴マミも又、問いを発した。
パトロール中、魔女の痕跡を察知して
改装中のエリアに侵入、魔女の結界に突入した。
そして、どうもまずい事になっているらしい、
と察知して救助を急いだ。
そこまでは割とよくある流れだった。
しかし、その地点に到着する少し前に強烈な攻撃が行われた。
そして、到着した時には、
桜花の余燼を僅かに残し、
獲物に群がっていた少なからぬ使い魔は見事に一掃されていた。
「危ない所だったわね」
抱き合って震えていた二人の後輩に、マミは声を掛けた。
「その制服、あなた達も見滝原の生徒なのね。二年生?」
「あなたは?」
「自己紹介したい所だけど、今はそれどころじゃないわね。
使い魔は魔女と一緒に引っ込んだ? 確かめなきゃいけない事がある」
ぶつぶつ呟く先輩を、まどかとさやかは怪訝そうに眺める。
「弱まってる今なら、あっちに逃げたら逃げられるから。
後でお話ししましょう」
そのまま、マミは結界の奥へと走り去った。
(新手の魔法少女? 確かめないと………)
「うひゃあっ!!」
「さやかちゃんっ!?」
まどかがさやかの視線を追うと、そちらでは長く艶やかな黒髪が翻っていた。
まどかは何かを言おうとしたが、
取り敢えず、たった今告げられた先輩からの助言を
正反対に無視して突っ走るさやかを追跡するのが先だった。
ーーーーーーーー
「どうしてここにいるのかしら?」
後輩にたった今言われた事を真正面から無視されては、
マミの声に怒りがこもるのも無理からぬ所だった。
さやかもまどかも、それはよく分かる。
「い、いや、その、あっちに敵がいた、と言いますか………」
「そう。じゃあ、ここを動かないで」
マミはすっぱり会話を切り上げ、正面を見る。
「見て、あれが魔女よ。
さっき、あなた達を襲っていたのは使い魔。
魔女を倒せば使い魔も消える」
「倒す、って………」
三人がいるのは、得体の知れない空間の中で、
ホールの中二階に繋がる通路、
そのホール入口周辺、の様な場所だった。
そして、そのホールのど真ん中に巨大な怪物がいる。
その形状は辛うじて蝶々と何か、と呼べる意味不明な代物で、
少なくとも一人の少女が「倒せる」相手には見えない。
「下がってて」
マスケット銃で床を突き、二人の後輩をバリアで守ったマミは、
そのまま人間離れした跳躍でホールの真ん中に降下した。
(いる………)
真正面に薔薇園の魔女、周囲に使い魔、それはいい。
問題は、
(もう一人、いる)
マミは、その事を察知していた。
魔女や使い魔ではない、恐らく自分達と近い存在。
それがこの近く、このホール内にいる筈だが、
現時点では視界に入らない、敵か、味方か?
マミは少々の苛立ちを交えて小さな使い魔を踏み潰し、
憤激した魔女の椅子アタックを交わし砲火を交えて
戦いの火蓋は気って落とされた。
使い捨てのマスケットが次々と火を噴き、
マミにとっては順当に魔女を追い込んでいく。
「ああっ!!」
美樹さやかが叫び声を上げた。
状況的に言って自分達を助けてくれた、
そして、魔女と言うらしい化け物相手にも
不思議な技で丁々発止対抗していた謎の先輩。
そんな先輩に使い魔なるものが群がり、
その使い魔の群れはぶっとい蔓と化して先輩をぶうんと持ち上げ、
ホールの壁に叩き付けていた。
実の所、これもマミにとっては想定内の出来事だったが、
次の瞬間に異変は起きた。
「?」
自分を締め付ける力が緩み、マミは訝しむ。
見ると、蔓は根本から切断され、
そのままバラバラの使い魔の死体と化して消滅していった。
(見つけた)
マミが、心の中でひとりごちる。
どちらかと言うと小柄な少女、
背負っている筈が背負われている様な馬鹿でかい刀、
見る人が見れば野太刀と分かる代物を携えている事が、
彼女をより小柄に見せる。
そんな少女が不意にマミの視界に現れ、魔女に一撃加えていた。
「神鳴流奥義・斬岩剣っ!」
距離を取った魔女に瞬時に追いつき、
野太刀の一撃で巨大な魔女を揺るがす。
少なくとも、人間業ではない。
「凄い………」
最初から想像の埒外とは言え、更なる展開に
まどかもさやかも見入っていた。
小柄な少女の背丈程もある巨大な刀。
その一振り一振りが又、
常識外れな衝撃を放って巨大な魔女をぶん殴っている。
「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!!」
舞い散る桜華と共に、強烈な斬撃が魔女を押す。
そして、魔女がホール内の一点に追い込まれている事をマミは見逃さない。
果たして、野太刀少女が大きく飛び退いたそのすぐ後に、
魔女は地面から噴出したリボンによって雁字搦めに拘束されていた。
ーーーーーーーー
「ティロ・フィナーレッ!!」
「やった………」
到底抱え切れていない巨大な抱え筒が魔女とやらに致命傷を与えるのを見て、
美樹さやかは脱力しながら呟いた。
「さやかちゃんっ」
そして、親友鹿目まどかの声に、さやかは我に返る。
通路にいるまどかとさやかに、ホール側からざしざしと接近して来る者がいる。
それは、たった今までホールにいた筈の、
背丈程もある野太刀を担いだ一人の少女。
さやかと同年代にも思える華奢な少女がそんな野太刀を正確に振るっていた、
その事からして尋常ではないのだが、
今、さやかが感じている彼女の佇まいは戦場の軍人か侍か。
ピン、と張り詰めたものがさやかを震わせる。
こうして見ると色白で端正な顔立ちである事が、
より鋭く、清冽なイメージをさやか達に突き付ける。
まどかとさやかが息を飲んでいる間に、
バリアの境界真ん前で足音は止まった。
「………ケガはありませんか?」
さやかは、目をぱちくりさせてその問いを聞いていた。
「………あ、あのっ………
大丈夫です、有難うございましたっ!!」
ぱたん、と、体を折り、まどかは叫んでいた。
「………良かった………」
顔を上げたまどかは、優しい微笑みを見た。
まどかがそう思った時、小さく礼を返された。
真面目で、そして、少し寂し気な表情をまどかは見ていた。
「あ、えっと、はい大丈夫です、ありがとうございました」
さやかも慌てて頭を下げる。
「あなた、何者?」
背後からの詰問に対しても、
彼女は静かな微笑みと共に振り返った。
振り返りながら何かを摘み上げ、
マスケットの銃口を向けている相手に向けて放り出す。
「見つけておきました、差し上げます。
そちらの邪魔をするつもりはありませんので」
「有難う。他所の魔法少女なのかしら?」
「申し遅れました」
巴マミが真正面から見たその眼差しは、
自分が向けている銃口にも何に対しても余りにも静かで、
マミが息を飲む程に落ち着き払っていた。
「桜咲刹那、退魔師です。
そちらのあなたも、そろそろこちらに加わりますか?」
==============================
今回はここまでです>>1-1000
続きは折を見て。
まーた駄作うんこホモ実写と紐絶番朝鮮人実写版がクロスとか
シュタクソのダルしか得しねぇぞ白糸台創設者SS早よ建てろよ底辺婦女子提督艦これ動画バッドしてんじゃねぇぞ考え剥げ
30代以上の男性声優は松潤ギアス様以外全員禿か髭ボーボーの叔父さん
それでは今回の投下、入ります。
>>17
==============================
「………あ………」
さやかが周囲を見回す。
得体の知れない空間は現実的な改築中のビルに姿を戻していた。
そして、桜咲刹那の言葉に応じる様に、暁美ほむらが姿を現す。
そして、まどかが気づいた事がある。
今日転校して来たほむらとはその朝のHRが初対面の筈で、
幾度か直接顔を合わせてもいるが、
まどかが知っていたほむらの表情は鉄面皮そのもの。
それ以外の表情は知らなかった。
だが、今のほむらは戸惑っている。それを隠し切れていない。
「まどかぁ」
そして、さやかが小さな声で危険を促す。
「あなた、この子、キュゥべえの事が見えるのね?」
マミは、ほむらを無視する様にまどかに声を掛ける。
「助けてくれてありがとう。この子は私の大切な友達なの」
「は、はい。私、呼ばれたんです。助けて、って、直接頭の中に」
「ふうん、そういう事」
そして、マミは改めてまどか、さやかとほむらを見比べる。
「生憎だったわね、魔女はもう片付いたわよ」
「私が用があるのは………」
「呑み込みが悪いのね、見逃してあげるって言ってるの」
マミが放った威嚇の言葉に、場の空気は再び張り詰めた。
「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」
「………後悔するわよ」
「次は、お友達になれそうなタイミングで会いたいわ。
お互いのためにも」
微笑みと共に告げたマミに、ほむらは無言のままで踵を返した。
「あなたは………タイマシ、って言ったわね。
魔法少女じゃないのかしら?」
「違うね。僕は彼女と契約した覚えは無いし、
魔法少女とは違う様だ」
マミの問いに答えたのはキュゥべえだった。
「はい、私は退魔師。
あなた達マギカ、魔法少女とは少々別の存在です。
そして、彼女達は救兵衛に見込まれた様ですが、
少し、話をすり合わせた方がいいのでは?」
「そうみたいね」
頭の回転が速い。
桜咲刹那と名乗った少女にその事を感じながら、
マミも最初からそのつもりだった提案に同意する。
そして、まどかに抱かれたキュゥべえに治癒の魔力を施術する。
「助かったよ、マミ」
「お礼はこの子たちに、私は通りがかっただけだから」
「どうもありがとう。僕の名前はキュゥべえ」
キュゥべえはマミとの問答通り、まどかに礼を言った訳だが、
言われたまどかにして見ると、
ぬいぐるみの様な謎の生物が人語を喋っている時点で
その奇怪さに一歩退いてしまう。
「あなたが、私を呼んだの?」
「そうだよ。鹿目まどか、それと美樹さやか」
「何で、私達の名前を?」
名前を呼ばれ、怯みを見せながらさやかが尋ねる。
「僕、君達にお願いがあって来たんだ」
「お、お願い?」
まどかがやや怖々と聞き返す。
「僕と契約して、魔法少女になってよ」
愛らしく頷き、告げるキュゥべえを
桜咲刹那は涼し気な眼差しで眺めていた。
ーーーーーーーー
「美味しい、マミさんこれ美味しいです」
「これめちゃうまっすよ」
「美味しいです」
マミが一人暮らしをしているマンションのフラットで、
彼女が差し出したシフォンケーキとハーブティーは
三人の訪問者から惜しみない賞賛を以て迎えられた。
キュゥべえに選ばれた以上他人事ではない、
と言う事で、マミはまどかとさやかに
魔法少女に関する基本的な知識を教える。
ソウルジェムから魔法少女、魔法少女から魔女、
願いの対価としてソウルジェムを得て結界に潜む魔女と戦う。
マミとキュゥべえの口から、
世界の秘密の一端がその様に語られる。
「あの転校生も、えっと、その、魔法少女なの?
マミさんと同じ?」
「そうね、間違いないわ。かなり強い魔力を持っているみたい」
話は進むが、魔法少女同士、正確には魔法少女であるほむらが
契約を司るキュゥべえを襲撃した事に就いて、
まどかとさやかはなかなか理解が出来ない。
「これがグリーフシード、魔女の卵よ」
「た、卵………」
「運が良ければ魔女が何個か持ち歩いている事があるの」
マミが取り出したグリーフシードを、
まどかとさやかは怖々と眺める。
「大丈夫、その状態では安全だよ。
むしろ役に立つ貴重なモノだ」
キュゥべえがそういう中、
マミは再び自分のソウルジェムを取り出し、グリーフシードを近づける。
「見てて」
「あ、綺麗になった」
「こうやって、消耗した魔力を元通りにする。
それが、魔女退治の見返り。
だから、同じエリアに魔法少女が増え過ぎると、
魔女、グリーフシードの奪い合いなんて事も起こる。
それを避けるために、鹿目さんの契約を阻止しようとして………」
「それで、あんな風にキュゥべえを?」
ここまでの行きがかりで、
ほむらに対して余り虫が好かないさやかが非難を込めて言った。
「多分、そういう事でしょうね。ところで………」
その辺りまで黙って聞いていた刹那にマミが声を掛けた。
「あなたは一体どういう人なのかしら?
助けてくれた事は感謝するけど、退魔師、って」
マミの問いに、刹那が向き直る。
「夕凪」の銘を持つ野太刀を前から肩に掛け、
目を閉じてじっと聞くだけの刹那は眠っている様にも見えたが、
それにしては独特の緊張感を漂わせていたのも確か。
制服と銃士の様な魔法少女スタイルを忙しく行き来していたマミに対して
刹那はカジュアルなパンツにシャツのスタイル。
ロングとまではいかなそうな綺麗な黒髪を
サイドポニーに束ねているのはやや個性的とも言えるが、
それだけに背丈に余りそうな夕凪の、
そしてその普通の格好で魔女を半ばぶちのめした行動の違和感は只事ではない。
「大きく言えば、魔法使いと言う事になります」
「………」
その言葉を聞いた三人が三人、反応に困っていた。
「救兵衛との契約で魔法の力を得るあなた達魔法少女、
こちらでは主にマギカと呼びますが、
そのマギカに対して、私達は言わば土着の存在です。
古今東西の物語に出て来る魔術師、魔法使い。
その伝承の中には過去に存在したマギカに就いて語ったものもある様ですが、
そうでないものもかなりの数に上る。
その、そうではないもの、
マギカとは別の所で科学とも違う力を発展させて来た。
それが我々であると理解して下さい」
「………」
「ええっと、その………」
マミとさやかが言葉を探している中、まどかが怖々口を開く。
「その、絵本の中の魔法使いって事ですか?」
「そういう事になります」
真面目に答える刹那だったが、
ふっ、と、優しい先生の様な笑みを浮かべていた。
「もちろん大雑把な答えですが、
あなた達マギカと比較するならちょうどいい定義です」
「なるほど」
さやかも、なんとなく理解した様だった。
「魔法少女がいるなら魔法使いがいてもおかしくない、
そういう事ね?」
「そんな所ですね」
マミの理解に刹那が答える。
「中でも退魔師は、それもあなた達の魔女とは別の
土着の魔物、悪霊を退治する事が本来の仕事です」
「い、いるの、そういうの?」
「ええ。まあ、大概のものは
目立った害が出る前に我々が対処していますが」
「そうなんだ………」
質問したさやかが引きつった反応をする。
「さっきも言ったけど、魔女の存在も普通の人には分からないわ。
結界の奥に潜んで普通の人には見えない。
そして、人を誘い込んで命を奪う。
一般には原因不明の自殺や行方不明として処理されてる」
マミの改めての説明に、
まどかもさやかも改めて先程の自分達の危険に息を飲む。
「そういう訳で、本来私達魔法使いとあなた達マギカは交わらない存在。
伝承上、両者が交わった事や技術的に交流した事もあった様ですが、
現状では我々はそちらには関わらない、原則としてそういう事になっています。
あなた達にはあなた達の利害がある。
只でさえ双方ともに世間に隠れた力のある存在。
それが、二つの別々の勢力が関わり合っても
トラブルの懸念の方が大きいですから」
「そうね。私達としては契約した以上、
妙な人達に邪魔されずに魔女を退治させてもらいたい所ね」
「それはこちらでも理解しています。
只、一方で我々、私達が属している組織ですが、
こちらは公益目的の活動も行っています。
ですから、最近この見滝原近辺の魔女の発生件数に就いて
懸念されるものがあるとして、実態調査のために私が派遣されました」
「組織?」
「現在は関東魔法協会と言う組織に所属しています」
マミの問いに刹那が答え、
急に、変に現実的になった事をさやかは感じ取る。
「その、関東魔法協会?」
少々戸惑っているのはマミも同じらしい。
「はい。私達の管轄する裏側の秩序を司る魔法使いの組織です。
当面の所、直接あなた達と接触するのは私だけになると思いますが。
もちろん、あなた達の縄張りを荒らすつもりはありません。
そもそも、私がグリーフシードを得ても仕方がないですから。
そういう訳ですので、
当面はあなたと協力して活動したいのですが」
「話は分かりました」
刹那の説明に、紅茶を傾けていたマミが答えた。
「助けてもらった恩もある。こちらの邪魔はしない、
と、約束してくれるなら、むしろ歓迎よ」
「助かります」
マミの言葉に、刹那はふうっと息を吐く。
「そして、鹿目さん、美樹さん」
マミが二人に向き直った。
「キュゥべえに選ばれたあなた達には、
どんな願いでも叶えられるチャンスがある。
でもそれは死と隣り合わせなの」
「ううう………」
「うわぁ、悩むなぁ………」
そして、改めてマミの魔女退治に同行して魔女退治がどういうものか、
命懸けで叶えるべき願いはあるか、
それを見定めようと言うマミの提案、それを二人が受け容れるのを、
再び眠った様な桜咲刹那は片目を開いて聞いていた。
ーーーーーーーー
「なんか、サムライって感じだったよねー」
とうに陽の沈んだ帰り道、さやかが隣を歩くまどかに言った。
「あの、桜咲刹那って人。
刀持ってたのもそうだけど、無口で礼儀正しくてとにかく固い感じで、
侍って言うか、用心棒の先生って感じ」
「ウェヒヒ………」
さやかの的確な例えにまどかは苦笑する。
しかし、まどかの印象は少々違っていた。
大体の所、一見した所は、
まどかもさやかと同じ印象は持っている。
「………でも………」
「ん?」
「桜咲さん、優しい人なんじゃないかな?」
「そうかな? うん、助けてくれた訳だし、
悪い人じゃないかも知れないけど。
悪い人って言ったら、あの転校生?
キュゥべえを襲ったりして、マミさんが追っ払ってくれたけど」
「悪い子、なのかなぁ?」
「じゃないの? それじゃあまどか、又明日」
「うん」
ーーーーーーーー
「ただ今………」
「お帰り、まどか」
普段より随分遅い帰宅のまどかだったが、
それを迎えた知久はいつも通り穏やかだった。
「ママは?」
「ああ、まだかかるみたいだね」
「そう」
知久は、先輩からお呼ばれして遅くなると言う
電話連絡をまどかから受けていた。
話している内に用意が出来て、まどかは食器をテーブルに運ぶ。
「いただきます」
まどかは少し遅い、温かな夕食を口に運ぶ。
「ご馳走様」
「お粗末様でした」
いつも通り美味しい夕食、穏やかで優しい父。
現実に戻って来た感じ、と言うものをまどかは実感していた。
それと共に、どっと疲れを感じる。
とんでもなく非常識な事が色々あり過ぎて、疲れを忘れていた感じだ。
今夜はお風呂に入って早く休もう。
その誘惑が力一杯に今のまどかを引き寄せる。
もしかしたら、今日の非常識全部が夢オチになってるかも、
なんて事まで考えたくなる、まどかにとってはそんな一日だった。
ーーーーーーーー
「………」
桜咲刹那の視線の先には、四角い一軒家が存在していた。
土地と金に余裕がある郊外の内に思い切って建てて買った、
と言う感じで細々としていない。
庭付き一戸建て二階建てとしては、
表向きガラス戸の多いどっしりとした建物に、畑の一つも出来そうな、
と言うか実際出来ている広々とした庭も魅力的だ。
「動かないで」
背後からの声に、刹那は素直に両手を上げる。
「桜咲刹那、退魔師とやらがここで何をしている?」
「暁美ほむらさん、と言いましたか?」
「質問に答えてくれるかしら?」
「帰宅する途中ですけど」
「死にたい訳?」
「そのつもりなら一つ忠告しておきましょう」
「!?」
ほむらが構えていたM9拳銃。その銃口の先が、ぶれた。
銃口の先が刹那の頭をとらえていた筈が、
とらえていたと言う事実が不意に、揺らいだ。
と、思った次の瞬間には、
刹那の肘を腹に叩き込まれたほむらの体が大々的に路上を滑っていた。
「か、はっ………」
「神鳴流に飛び道具は効きません………?」
びゅうっと風の様な勢いで移動した刹那は、
吹っ飛んだほむらを捕獲しようとした。
しようとしたその時には、
ほむらの姿は刹那の視界から消えていた。
「だからと言って」
ほむらの振り下ろした
4番アイアンのヘッドの下にあった筈の刹那の頭部は、
すぐ近くの地点にすいっと移動し、
その時には、ほむらが水月に拳を叩き込まれて体をくの字に折っていた。
「こちらで私に挑むと言うのは、もっと無謀でしょうね」
いかにもつまらなそうな刹那の言動に、ほむらは戦慄を覚える。
元々特殊能力の一点を除けば直接戦闘向きではないほむらだが、
魔法少女単位で考えても桜咲刹那、生半可な相手ではない。
(つっ、痛覚遮断っ!)
刹那がほむらと少し距離をとった瞬間、
ほむらは消耗を覚悟しつつ刹那から離れる。。
そうしながら、刹那の手が光を帯びているのを歪む視界にとらえる。
「匕首・十六串」
「!?」
距離を取ったほむらに、何口もの匕首が飛翔して迫って来る。
(これはっ!?)
銃器を用意しようとするが、間に合わない。
それ以前に、そういう対処が出来る代物なのか、
「稲交尾籠………」
バシュウッ、と、周囲が一瞬強い光に包まれた。
「………」
刹那が正常な視界を取り戻し、
自らが展開した捕縛結界を確認する。
果たして、その中は空だった。
ーーーーーーーー
「秘剣・百花繚乱っ!!!」
暁美ほむらを見失い、夜の住宅街で歩みを進めていた桜咲刹那は、
大きめの公園にざしざしと立ち入り、振り返り様に夕凪を振るっていた。
衝撃波が土煙を起こし、刹那は術の影響で舞い散る桜華に目を凝らす。
ぶうんっ、と、一見すると野太刀離れした非常識な勢いで、
刹那は夕凪を斬り上げる。
ギインッ、と、何か鉄棒とでも打ち合った様な手応えはあった。
刹那は夕凪の棟を肩に掛け、鋭い眼差しで気配を伺う。
「斬鉄閃っ!!」
夕凪の斬撃から強力な「気」を放った時には、
刹那は身を交わしていた。
「アデアット」
それでも執拗にまとわりつく鋭い斬撃を、
刹那は左手の「白い翼の剣」で辛うじて受け流す。
「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!!」
そして、刹那は力一杯の一撃を叩き込む、が、
やったか、とは思わない。
手応えが無いのは最初から分かっていた。
取り敢えず、脅威は去った様だ。
ーーーーーーーー
「どうだった?」
住宅街、夜の路上で問いが発せられる。
「強いね、並の魔法少女じゃ叶わないんじゃないかな?」
「キリカでも?」
「こちらの術で作ったズルを正攻法でぶち破りかねない、
それ程の実力だったよ。
だけど織莉子がやれと言うなら、それは些細な事さ」
「そう」
美国織莉子は、ひゅっ、と、小さな水晶球を二つ放った。
一つ目の球が空に消え、少し遅れて二つ目が飛翔する。
「折り紙?」
ひらひらと降って来たものを見て、呉キリカが言った。
「かみにんぎょう、かしらね?」
それを掴んだ美国織莉子が言い、ぽいと放り出す。
その折り目のついた紙片は、
空中で、ぼっ、と紅蓮の炎に包まれた。
==============================
今回はここまでです>>19-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>32
× ×
「ええええっ!?」
「どうしましたのっ!?」
「い、いや、なんでもないなんでもないあはははは」
朝のHR終了後、最初の休み時間にガタンと立ち上がって絶叫した美樹さやかに
友人の志筑仁美が目を丸くして声を掛け、
さやかは頭を搔いてごまかしてみせる。
「そ、そうですの」
「ウェヒヒヒ」
その側で鹿目まどかも苦笑いしているが、
さやかとまどかは目と目で通じ合っていた。
魔女やら魔法少女やらの騒動に巻き込まれた翌日。
或は夢オチでは、と言うまどかの現実逃避は、
まどかの寝室でぬいぐるみに紛れて
朗らかに朝の挨拶を決めたキュゥべえが簡単に打ち破ってくれた。
魔法少女の素質が無ければ
キュゥべえの存在を認知する事は出来ないと言う事で、
見える者には得体の知れない、でも可愛らしい小動物であるキュゥべえは
登校するまどかにまとわりついてそれを見たさやかを驚かせたり、
そんな二人を見た仁美を驚かせたりもした訳だが、
その辺りの事は割愛としておく。
実用的な面では、まどかとさやかはキュゥべえを介する形で
三年生の先輩である魔法少女巴マミと
テレパシーのチャンネルを繋ぐ事に成功した。
昨日キュゥべえを襲撃したと言う暁美ほむらも
まどか、さやかと同じ教室にいる訳だが、
学校で滅多な行動はとらないだろう、と言う予測で話を止めていた。
そして、今、もう一度マミとのテレパシーを繋いだ所、
伝わって来た話はなかなかの急展開だった。
「桜咲、さんが転校して来た、って」
「三年生だったんだ………」
ひそひそ話していたつもりのまどかとさやかは、ガタッ、
と言う物音に視線を走らせる。
そこでは、暁美ほむらが目を見開いて立ち尽くしていた。
ーーーーーーーー
昼休みに屋上で改めて鹿目まどかと美樹さやかに釘を刺したり、
その際に別の校舎の屋上から巴マミに無言の威嚇を受けたり
帰りのHRの後に同級生からのお茶のお誘いを丁重に断ったりしながら、
暁美ほむらの本日の学校生活は終わりを迎える。
(これって、本当は佐倉杏子辺りのやり方じゃないのかしら?)
そして、時間停止を使いながら
近隣の高層ポイントに移動して双眼鏡を覗く。
ーーーーーーーー
(ここは………)
地上に戻ったほむらがしばらく歩き続け、到着した先には
解体も先延ばしにされている廃墟と化したビルが存在していた。
「何か、御用でしょうか?」
屋内に入り、エントランスで周囲を見回していたほむらは、
不意に背後から声を掛けられる。
しかし、これはほむらのシミュレーションの一つでもあった。
ほむらが、振り返り様に大振りの軍用ナイフを振り抜く。
「!?」
しかし、次の瞬間、ほむらの表情を占めていたのは狼狽そのものだった。
「それが、時間停止の絡繰りですか」
桜咲刹那が左手に握る「白き翼の剣」の切っ先は、
ほむらが左腕に装着した盾に突き立てられていた。
その盾で動き出した絡繰りが、
歯車に剣の切っ先を噛んで強制停止する。
歯車から刃が抜ける、が、ほむらはとっさに地面を転がる。
この様子では、刹那が発動を逃す事は絶対に無いだろう。
ほむらが腿に装着しておいたスローイングナイフを放った。
その瞬間、刹那がほむらの視界から消え、
ほむらはバッと振り返る。
(間に合わ………)
そもそも銃弾が効く相手なのかどうかはとにかく、
ぐわっと目の前に迫っていた刹那にM9拳銃を向けながら、
ほむらの頭はどの程度のダメージを許容すべきか、
と言う損切りを考えていた。
その、刹那がぐいっと後退し、
飛んで来た一本の棒が二人の間を槍の様に突き抜ける。
「アベアット」
次の瞬間、「白き翼の剣」はカードに戻り、
振り返った刹那が
自分に打ち下ろされた一撃を鞘のままの夕凪で受け太刀する。
タンタンターンッとエントランス中央階段に足音が弾け、
踊り場でガン、ギン、ガンッ、と打撃が衝突する。
(銃剣術、我流ですね)
相手の流儀を冷静に把握しながら、
刹那が居合抜きを一閃する。
本来、野太刀である夕凪は居合には決定的に不向き、
と言うより物理法則そのものに抵触するものであるが、
その辺りは神鳴流剣士だから、と言う事になる。
刹那が回避している巴マミの攻撃は、
無から有、空中に次々とマスケット銃を発生させて
その神出鬼没な武器でぶん殴って来ると言うトリッキーさもあるが、
その殴り合いの技量自体、決して侮れるものではなかった。
刹那は再び跳躍して階段を下り、
その後をマミが放つ銃弾が追跡する。
(敷地も含めてそこそこ広い、
騒音も含めて多少の銃声も目立たない、か)
ババンッ、と、先回りする様にエントランスの床に銃弾が弾け、
ちょっと遅れて刹那が着地する。
普通であれば、上から狙い撃ちされる方が不利。
但し、刹那は神鳴流剣士。
但し、
「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!」
夕凪の一閃と共に、
床からぶわっと噴き出したリボンが散り散りに刻まれた。
「アデアット………?」
そして、刹那は振り返り様に仮契約カードから匕首を呼び出し、
ほんの一瞬、心の中で小首を傾げる。
そして、目の前に現れた巴マミの姿に向けて、
その胸の真ん中に手裏剣として匕首を打ち込む。
「斬鉄閃っ!!」
次の瞬間、前方からぶわっと迫っていたリボンの群れが
刹那の斬撃が巻き起こす「気」によって細切れに粉砕される。
エントランスから見下ろしていた巴マミが、
手にしたリボンを放り出して地面を蹴る。
そのリボンの先では、
絡め取られた二体のちびせつながもがいていた。
「神鳴流秘剣・百花繚乱っ!!」
渦巻く強風、衝撃波に、ほむらは思わず腕で目を抑えていた。
「続ける?」
恐らく頸動脈のすぐ上に夕凪の刃を向けられ、
つーっと汗を浮かべながら荒い息と共にマミが尋ねた。
「魔力の塊の零距離銃撃は、厳しいかも知れませんね」
胸の真ん中にマスケットの銃口を押し付けられ、
つーっと汗を浮かべながら荒い息と共に刹那が答える。
ーーーーーーーー
「一体、どういう事なのかしら?」
双方武器を引きながらマミが尋ねた。
「仮にも見滝原の魔法少女と事を構えると言うのなら、
昨日の協力の話どころか、私と戦う羽目になるわよ」
「私も、そのつもりは全くないのですが」
「じゃあ、私の体に残る記憶はなんなのかしらね?」
しれっと言う刹那に思わずほむらが口を挟む。
「昨日から背後から拳銃を向けられたり
つけ回されてナイフで斬り付けられたり
と言った事が続いていましたので、少々手荒な対処をしましたが」
「暁美さん?」
「否定する程間違ってはいないわ」
マミにじとっとした視線を向けられ、
ほむらはファサァと黒髪を払って答える。
「その点は、お互い裏で動いている者同士。
あなた方にとって得体の知れない私が
こちらをうろついている訳ですので、
私がそちらの立場でも分からないではありません」
書き方でと禁の糞クロスやってるやつだとわかった
糞スレ量産すんな
「じゃあ、こちらが余計な事をしなければ
あなたもこちらの邪魔はしない、
これは再確認させてもらっていいのね?」
「はい」
「改めて言うわ、この人は桜咲刹那さん、
普段は魔女ではない魔物を退治する退魔師。
魔法少女とは違う、
キュゥべえの契約ではない魔法使いと言うカテゴリーに入る人で、
今は、こちらでの魔女発生に就いて調査をしているそうよ。
魔法使いだからグリーフシードも必要ない。
私はこの人に協力する事に決めた。
その意味は、分かるわね暁美さん」
じっ、と、マミとほむらが目と目で押し合う。
「マミさぁーんっ!!!」
その時、表から素っ頓狂な叫びが聞こえた。
「美樹さんっ!?」
「どういう事よっ!?」
意外な展開に、ほむらも又叫び声を上げる。
「元々、鹿目さんと美樹さんを連れて
魔法少女体験コースの最中だったのよっ」
(又、っ)ギリッ
ーーーーーーーー
三人が表に飛び出すと、
美樹さやかが斜め上に指さしてわわわわと声を上げていた。
「おおおおっ!!!」
刹那が夕凪を居合抜きし、
周辺の地上にいる一同が刹那を除き腕で目を抑える。
果たして、刹那の斬撃と共に巻き上がった強風が
屋上から落下して来たOL風の女性をとらえ、空中に巻き上げる。
「やった、っ」
鹿目まどかに縋りつかれながらさやかが声に出した。
「!?」
次の瞬間、自然の強風が空中のOLの軌道を大きく狂わせた。
「くっ!」
刹那が両腕を×字に組み、指をバキッと内側に折る。
そんな刹那を、マミが風の様に追い越した。
マミが放った大量のリボンが面積をとって
OLを下からとらえ、地面に軟着陸させる。
「巴さん、彼女を頼みます」
「分かったっ!」
刹那が建物の外周を回り始め、ほむらがその後を追う。
「気づいてる?」
ほむらが尋ねた。
「ええ。確かに、波長が普通の魔物とは少し違いますが」
(と、すると、他所の魔女が移動して来たのか)
二人が非常口の螺旋階段にたどり着く。
刹那が刀印を組み印を切って符を放つ。
そして、空間の歪みに飛び込んだ。
ーーーーーーーー
結界の中は、抜ける様な青空だった。
青空のど真ん中に、大量の洗濯紐が縦横無尽に張られている。
本当はもう少し太い紐なのだが、
その紐が大量のセーラー服の袖から袖に貫通している図は
洗濯紐にしか見えない。
(こいつが来たの)
「秘剣・斬空閃っ!」
その、空中を走る紐の一つを踏みしめて暗い笑みを浮かべるほむらの側、
別の紐の上で刹那は早速に夕凪を一閃。
空から降って来た一見して教室用の机が刹那を避けて四散する。
広々とした屋外空間に騒音が響き、
結界でなければ通報殺到だろう、と刹那は思う。
かくして、機関銃の掃射を受けた使い魔が一掃される。
(天狗之隠蓑の類か)
ほむらが掃射したM249を目にして、刹那が見当を付ける。
一旦銃撃が止まったタイミングで刹那が動き出す。
降り注ぐ使い魔もざざざっと斬り伏せ、そのまま大きく跳躍する。
「(こいつが本体、魔女)斬岩剣っ!」
空中で遭遇した「委員長の魔女」、
黒いセーラー服から計六本の腕、四本の袖にスカートから二本、
を突き出した巨大で奇怪な怪物に刹那が一撃を加え、
近くの紐に着地するが致命傷とまではいかない。
「斬鉄閃っ!!」
委員長の魔女がスカートからばばはばっと吐き出した使い魔は
刹那が夕凪の斬撃から放った「気」に飲み込まれて一掃される。
(この程度なら、多少時間をかければ)
そうしながら、刹那は目算していた。
多少面倒だが経験から言って無理な相手ではない。
取り敢えず、自分が直接「飛ぶ」までの事はないと。
その時、刹那はこれまで空中に張られていた洗濯紐とは
別のものが空中をよぎるのを見た。
洗濯紐を捉えて張られたのは、細長い黄色い絨毯だった。
はっきり言って穴だらけだが、元がリボンと考えると上等。
それに、どうも見た目は穴だらけでも簡単に踏み抜けない絨毯らしい。
「桜咲さんっ!」
絨毯の出所からマミが叫ぶ。
刹那がその絨毯に飛び乗り、
そのまま委員長の魔女の真下へと走る。
「………」
刹那の足が、「空を蹴った」。
「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!!」
委員長の魔女を飛び越した刹那が、落下しながら放った一撃。
「え?」
委員長の魔女は、弾き飛ばされる様にある方向に斜めに落下していた。
(くっ!)
「暁美さんっ!?」
マミが新たなリボンを撒き始めた頃には、
適当な紐の上に移動して時間停止を解除したほむらが
魔女のスカートの中めがけてRPG-7の引き金を引いていた。
ーーーーーーーー
「拾ったから使わせてもらったけど、受け取るわよね」
結界の解けた非常階段周辺で、
マミがほむらにグリーフシードを手渡す。
「ええ………有難う」
「どういたしまして」
二人が、些かぎこちなく言葉を交わすのを刹那は眺めている。
儀礼的と言えば儀礼的、
三人が戦闘に関わりグリーフシードが絡む以上、
「受け取らない」事を含めて筋を通さない事の許されない状況。
刹那は、少なくとも突っ張っているほむらの方が何処か気後れしている。
そんなほむらの一端を察していた。
「巴マミ………巴さん」
じゃりっ、と、地を踏みしめてほむらが言葉を発した。
「何かしら?」
「今、協力した事にはお礼を言わせてもらう。
だけど、あの娘達を連れ回すのは反対よ。
私達の危険に付き合わせるべきではない、
それだけは言って、おきます」
「そう、あなたの考えは分かった」
ほむらの言葉にマミも真面目に応じ、
ほむらは一礼すると踵を返して裏側から敷地を離れた。
ーーーーーーーー
「ここは?」
廃ビルの入口側、待機していたさやかと交代で
マミの介抱を受けていたOLが意識を取り戻した。
「や、やだっ、私、どうしてあんなこと、っ!?」
「大丈夫、もう大丈夫です」
少しの間朦朧としていたが、その後でパニックを引き起こしたOLを
マミは優しく抱き締めていた。
「大丈夫、悪い夢を見ただけです」
「一件落着、って感じかな」
泣き崩れるOLを宥め、落ち着かせるマミ、
それを見てさやかが言う。
確かに、今回は申し分のないハッピーエンド。
そう思って、刹那はマミを見ていた。
弱っているとは言え年上の女性を相手に、
マミはそれなりに慣れているのだろう、とも思うが、
やはり、本当に優しく、責任感の強い娘。
刹那はマミの事をそう把握し、そして、好ましく思う。
「まどか?」
「………」
一見すると少し怖い感じで、話しかけ難い雰囲気もある。
あの、持っている日本刀みたいだ、とも思う。
だけど、もしかしたらこれが本当の顔の様な気もする。
今こうして無事解決した二人、
マミとOLの二人を見ている刹那の穏やかな、
優しくすら見える横顔を見て、
鹿目まどかはふと、そんな事を感じていた。
==============================
今回はここまでです>>33-1000
続きは折を見て。
修正です
>>35
桜咲刹那が左手に握る「白き翼の剣」の切っ先は、
↓
桜咲刹那が右手に握る「白き翼の剣」の切っ先は、
失礼しました。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>46
× ×
学校が終わり、夕暮れ。
巴マミを先頭に鹿目まどか、美樹さやかが道を歩いていると、
前方に見知った顔が見えた。
「桜咲さん」
まどかか声を上げ、桜咲刹那が小さく頭を下げる。
マミがメールで刹那に通り道を知らせて、
都合が合えば合流する。そういう話だったが、
基本、ここ何日かの「体験ツアー」に刹那は黙って同行していた。
「マミさんも凄いけど桜咲さんも強いから、百人力ですよー」
さやかの言葉に刹那は小さく頭を下げ、
さやかはにししと笑うがまどかはちょっとした違和感を覚える。
こういう時、マミはたしなめる事はあってもくすぐったそうな感じを見せる。
だが、恐らく刹那は基本が真面目なのだろう、
この人相手に、余り調子に乗らない方がいい様にも感じていた。
ーーーーーーーー
「いますね」
とっぷりと陽が暮れてから、刹那がぽつっと言った。
「自分で察知する事が出来るのね」
ソウルジェムを手にしたマミが言う。
「私達が扱うものとは似て非なるものですが、
多少の経験があれば応用が利きます」
刹那がさり気なくまどかとさやかの前に立つのを後目に、
マミがソウルジェムを掌に乗せて夜の公園にザシザシと前進する。
ーーーーーーーー
この日の「体験ツアー」の結果は使い魔一匹、
さやか曰くここ数日は外れ続け、と言う事になる。
結界によって異界化した公園の中で、
マミは人間大の大きさの、
銃身が人間の背丈に匹敵するアンティーク拳銃を発砲して
危なげなく使い魔を仕留めていた。
そのまま、帰り道の石橋を歩きながら、
巴マミの身の上話や美樹さやかの願いへの少々の苦言、等も交わされたが、
桜咲刹那は一行に影の様に寄り添い、黙って歩いている。
「それでは、私が送って行きますので」
「お願いするわ」
かくして、巴マミと別れて刹那とまどか、さやかが帰路に就く。
ーーーーーーーー
「じゃ、まどか」
「うん」
「それでは」
無言の帰路。
さやかと別れ、まどかと刹那が二人並んで歩いている。
「鹿目さん」
「はい」
「先程、話に出た上条君、と言うのは?」
丁寧だが、まどかにとって意外な問いだった。
「………クラスメイトです。
私とは小学生の時から、さやかちゃんとは幼稚園の時からの幼馴染で」
「あの話の様子では、何かあったんですか?」
「はい。小さい頃からヴァイオリンを弾いてて、
詳しく知らない私が聞いても凄く綺麗で、何度も表彰されて。
でも、交通事故で左手に大怪我をして、それで………」
「そうですか。大怪我をして、見込み等は?」
真摯な刹那の問いに、まどかは首を横に振る。
「凄い大怪我だった、って事は分かってるけど、
それ以上の詳しい事は」
「その、ケガをしたと言うのは、何時の話ですか?」
「×月×日です」
「
………………
…………そう、ですか…………
………………
」
答えた刹那は、天を仰いでいた。
「さやかちゃん、魔法少女になるのかな………」
「魔法少女の願い、救兵衛との契約でその上条君のケガを治す、
そういう事ですか?」
刹那の問いに、まどかが頷いた。
「上条………名前を伺えますか?」
「上条、恭介君です」
「上条恭介君ですか。
その様子ですと、美樹さやかさんは彼にそうした、
幼馴染と言う以上の想いがある様に聞こえましたが」
刹那の言葉に、まどかは小さく頷く。
「上条君の話をする時のさやかちゃん、
凄く綺麗で、いつもはあんな風なのに凄く女の子で、
それで………」
「少し、危険ですね」
今まで我関せずだった刹那の言葉に、まどかが刹那を見た。
相変わらず真面目な、やや険しい表情だった。
「巴さんも口を酸っぱくして言っていますが、
元来魔法少女の在り方は命に関わる危険なものです。
契約自体がそういうものとは言え、
私情で、特に彼女の様な性格で突っ走るのはかなりリスキーです。
巴さんも釘を刺していましたが、全否定はしませんが早まらない様に、
巴さんとも相談して少し目を配りましょう」
淡々と、だが真摯に言う刹那に、まどかは小さく頭を下げた。
「有難うございます、桜、咲さん」
「呼び難いですか?」
「え、あ、ごめんなさい」
「いいですよ、刹那と呼んで下さっても。
平均的に呼び難い名字の様ですから」
「は、はい、刹那、さん」
まどかの呼びかけに、
刹那は静かな微笑みで応じていた。
「あの、刹那さん?」
「ああ、いえ」
その後で、ふっ、と斜め下を見た刹那にまどかが声をかけ、
刹那が向き直って応じた。
「そろそろですね。
それでは、お休みなさい」
「お休みなさい」
礼儀正しく応じるまどかを、
刹那は好ましい眼差しで見送った。
ーーーーーーーー
住宅街の無人の路上で、桜咲刹那は大きく、
魔法少女基準と言ってもいい大きさで大きく跳躍していた。
「あなたも、なかなか凝りませんね」
そして、気が付いた時には、
目を見開いた暁美ほむらの真ん前に立った桜咲刹那は
左手でほむらの右腕を掴みながら
匕首の切っ先を限りなく零距離に近い距離感でほむらの脇腹に向けていた。
「あれだけ凄まじい殺気を放っていては、素人でも気が付きます」
そう言って、刹那はほむらから手を離す。
「あなたの目的は何?」
「先にも言いましたが、魔法協会の退魔師として、
最近増加傾向にある見滝原近辺の魔女の動向を
公益目的で調査しています。
そのために、魔法少女である巴マミさんに同行しているところです」
「………他の二人、
鹿目まどか、美樹さやかに就いては?」
「あの二人は巴マミさんに同行していますね」
「つまり、あなたとは関係ないと?」
「現時点では、私にとっては関わりを持った民間人と言う立場です。
その場合、私の目の届く範囲では人道上の対応はしますが、
基本的にはそちら側、マギカの側で対応すべき事でしょう」
「筋論ね」
「それで、あなたの目的はなんなのですか?」
「あの二人………特に、鹿目まどかの契約を阻止する事。
それが私の目的よ」
「そうですか。
それは、今の所そちら側の問題ですね」
「ええ。無駄に争うつもりはないわ」
双方、踵を返して歩き出す。
刹那の言う通り、現時点の大元である巴マミと話を付けるしかない。
しかし、余り上手く行った試しがないので気が重い。
心の中でその様に嘆息しながら、ほむらは目的地に歩みを進めていた。
==============================
今回はここまでです>>47-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>52
見滝原市内、夜の住宅街。
コッコッと歩みを進めていた呉キリカは、
スマホを取り出して無限にして有限なる愛のメッセージを受け取る。
そして、掌にソウルジェムを乗せて少々黙考。
「ステッピング・ファングッ!」
変身早々、夜の路上で飛び道具を射出する。
次の瞬間には、月に届けとばかりに跳躍していた。
着地したキリカが、さささっと近くの曲がり角を曲がり、塀に張り付く。
(ヴァンパイア………)
ーーーーーーーー
暁美ほむらと分かれた桜咲刹那は、途中、ぴたりと足を止めた。
そして、指を額に当てて少し黙考すると、
迂回路を経ながら元来た方向へと猛スピードで移動を開始していた。
目立たぬ事を確認してタンターンッと跳躍で距離を縮め、
無人の歩道に着地する。
「………」
刹那の手は、真っ二つに切り裂かれた紙人形を拾い上げていた。
刹那はその場で片膝をつき、左手で夕凪の鯉口を切る。
刹那の耳がひくりと動き、
刹那は鯉口を戻してすっと立ち上がる。
ありふれたタクシーがロロロロと現れ、刹那を僅かに照らして通り過ぎる。
その時には、既に刹那の感知する所から脅威らしきものは消失していた。
背中に少々の喚き声を聞きながら、刹那は踵を返してその場を後にする。
「おぉーい、帰ったぞおぉーっ。
やぁーったれっかぁスダレハゲェェェ………」
ーーーーーーーー
「近いな」
風見野市内でパトロールを行っていた佐倉杏子は、
ソウルジェムの反応に薄い笑みを浮かべる。
そして、到着した先は一軒の廃屋だった。
杏子はその中をソウルジェムで照らし、結界の入口を暴き出す。
ーーーーーーーー
「シッ!」
まだ私服のまま、杏子は槍を払い使い魔を追い払う
最近、少々稼ぎが悪い。
燃費を考えなければならない。
「?」
そして、ソウルジェムを確かめながら杏子は首を傾げる。
(なんだ、この反応?
魔女が二匹? ってのも違うみたいだけど………)
結界の最深部が見えて来る。
杏子は、紅の魔法少女姿に変身してその入口へと歩みを進める。
ーーーーーーーー
「………」
相変わらず薄気味の悪い魔女結界の最深部。
佐倉杏子は、そこで、舞を見ていた。
白と紅の和装。
白い水干の広い袖がふわりふわりと宙を舞い、
紅袴の足さばきも不自由なく流れる。
それと共に、両手の白扇も開き、閉じ、
何かのメッセージを伝える。
素晴らしく長い黒髪が、
時にさああっと広がり時にゆらりと流れ二つに割れ三つに割れ、
それでも艶やかな美しさを損なわない。
艶やかな黒髪に色白な肌、墨絵に描いた様な目鼻立ちは、
お上品な日本人形を思わせる。
だが、時に激しい程に躍動する舞姫は、
お人形さんと言うには活動的に過ぎる。
活動的に過ぎる。
佐倉杏子の唇は、不敵に歪んだ。
==============================
今回はここまでです>>53-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>55
佐倉杏子から見て、舞姫の動きは馬鹿速い訳ではない。
だが、ふわりふわりと使い魔を交わし、
時には白扇が魔女の攻撃を反らし、受け流している。
(魔力、だよな)
それは、杏子も感じる。
だが、魔女を力押しで退けるタイプの動きではない。
パワーの量以上に、流れる様に優美な動きが
確実に魔女を翻弄している。
それは、計算し尽くされたものなのか、
或は、それ以上の何かか。
少なくとも、素人がこの速度で魔女と対したら五秒で終わる。
思わず見惚れていた、等と言う事を杏子本人は決して認めないだろうが、
そんな杏子が半歩前に出る。
舞姫が、とーん、と一息に魔女に向けて間合いを詰めていた。
「!?」
次の瞬間には、右手の白扇が化けたゆらめくビームの様なものが、
魔女をぶち抜き爆発させていた。
杏子が、不敵な笑みを浮かべる。
(隠して、やがった? この魔力の量………)
ーーーーーーーー
「おいっ」
跳躍し、着地し振り返った杏子は、
改めて不敵に笑みを浮かべた。
真正面から見た舞姫は杏子と同年代だろう、
やはり色白の、素晴らしい黒髪ロングがよく似合う
日本人形の様に可愛らしい女の子だった。
それが、振り返り様に喉元に突き付けた筈の杏子の槍の穂先を、
その時にはすすすっと右にずれて交わしていた。
舞姫が、たーんっと後ろに跳躍する。
鼻で笑った杏子が、だっ、と距離を詰めながら槍を変化させた多節棍を放つ。
「もらっ、!?」
絡められたのは、杏子も同じだった。
(ビームはこれかっ)
多節棍に絡み付いていたのは、白扇が化けて伸ばされた南京玉簾だった。
僅かな魔力を帯びてほんのり光っている。
恐らく、杏子の力に合わせて魔力で強化しているのだろうが、
いざとなったら魔女を瞬殺する所まで魔力を乗せられる。
その魔力量自体只事ではない。
簾が白扇に戻り、双方後ろに跳躍して距離を取る。
(こいつ………)
杏子が前を見た瞬間、目にしたのは微笑みだった。
ふうわりと柔らかく、とろける様な笑顔。
欠片も見えない敵意、或はそれが底無しの何かを邪推させる。
「こっちで反応がありましたっ!!」
遠くから聞こえる声に、杏子が舌打ちをする。
「又、うぜぇのが来やがったっ!!」
ーーーーーーーー
「あっ、あなたっ!」
「佐倉杏子っ!!」
「あばよっ!!」
魔女結界内を進む人見リナ一行。
そこに、奥から佐倉杏子が駆け付け、
リナ達の叫びを無視してすれ違い走り去って行く。
「反応が消えた」
リナの隣で、ソウルジェムを掌に乗せた佐木京が言った。
「先を越されたか………」
リナが後ろを振り返りながら応じる。
「人がいるぞっ!!」
それは、結界の奥へと先行した朱音麻衣の叫び声だった。
リナ達が魔女エリアらしき最深部に入ると、
そこには、髪の長い私服姿の少女が佇んでいた。
「見ない顔ですが、どうしてここに?」
「いつの間にかと言いますか」
リナの問いに、
同年代ぐらいの少女がはんなりした口調で応じた。
(魔女はいない、佐倉杏子に退治されたか………)
(あーあ、無駄足。
いい加減あいつと縄張り分けとかしない?)
リナチームがテレパシーで状況を確認する。
「それでは、この状況はもうすぐ収まりますから、
この辺りは物騒ですから早く帰る事です」
「おおきに」
いかにも育ちの良さそうな黒髪の少女から丁寧な一礼を受け、
リナチームも撤収の支度に入った。
× ×
「刹那さんっ!」
放課後の見滝原市立病院正門付近で、
病院から出て来たまどかが桜咲刹那と遭遇した。
「どうしました?」
「ま、ま、魔女っ」
「何ですって?」
まどかの言葉に、刹那の目が鋭くなる。
「魔女の卵が、駐輪場に。
今、さやかちゃんが見張ってて、わたしはマミさんを呼びに」
「分かりました。私が美樹さんの護衛につきますから
すぐに巴さんに連絡を」
「はいっ」
ーーーーーーーー
「桜咲さん?」
「何をしているんですか?」
結界内部で、振り返ったさやかは押し殺す様な刹那の声を聴いた。
「自分がどれだけ危険な事をしているか、分かっているんですか?
ここで卵が孵化したら命の危険があるんですよ」
「最悪、契約する事も………」
言いかけた所で、さやかは刹那に胸倉を掴まれていた。
「実戦経験も無しに安全を確保出来ると思っているんですか?」
「………ごめん」
さやかが言い、刹那が手を離す。
「どうしても、放っておけなかったから。
この病院でグリーフシードが魔女になったら、
居場所が分からない内に弱ってる人が犠牲になる、って」
「そうですね、確かに、そういう事はあります」
ようやく、刹那が肯定的な事を言った。
「うん」
「何か、ここに特別な事情でもあるんですか?」
「………」
刹那の問いに、さやかが頷いた。
「まず、自分の身を守る事を考えて下さい。
魔女退治は命懸けです。
守る側が自分を守れないでは話になりません」
「うん………」
「………」
さやかが、刹那の言葉が途切れた事に気づく。
刹那は、鋭い眼差しであらぬ方向を見ている。
「………何をしているんですか………」
「ご、ごめんなさい」
「いえ、あなたの事ではありません」
押し殺す様に呟く刹那にさやかが頭を下げるが、
刹那ははっとした様にさやかに答える。
そして、刹那は夕凪の鯉口を切り、目を閉じて片膝をつく。
「………動き出した、様ですね」
「う、うん」
「巴さん、近くまで来ていますね救兵衛」
「そうだね、孵化が確定して魔力をセーブする必要がなくなった。
僕がテレパシーで案内しているからすぐに到着する筈だよ」
「では、私は急用が出来ましたので失礼します」
「へ?」
「もうすぐ巴さんが到着しますが、
くれぐれも油断の無い様に。
救兵衛、巴さんにもそう伝えて下さい」
「分かった」
キュゥべえが答え、さやかが言葉の意味を理解した頃には、
刹那はばびゅうんっとばかりにその場から姿を消していた。
ーーーーーーーー
「な、何?」
キュゥべえからの事前連絡を受け、
猛スピードの刹那を見送りながら巴マミが目をぱちくりさせる。
刹那はそのまま、夕凪で使い魔を蹴散らし
マミとまどかが元来た方向へと吹っ飛ぶ様に姿を消す。
マミも又、魔力をセーブする必要がなくなった事で
魔法少女に変身して使い魔を一蹴しながら
まどかと共に最深部へと駆け抜ける。
「お待たせ」
「間に合ったぁ」
ドアを開き、結界の最深部に踏み込んだマミと
でっかいケーキの様な物陰に隠れたさやかが言葉を交わす。
「桜咲さんは?」
「結界の入口の方に走って行ったけど」
さやかの問いに、マミが答える。
「まさか、逃げた?」
「まさか………」
「元々、魔女退治は魔法少女の仕事、そのための見返りもある。
今まで美樹さんを守ってもらっただけでも御の字よ」
さやかの言葉にまどかは疑問を覚えるが、
マミは筋論で話を進める。
「気を付けて、出て来るよ!」
キュゥべえの叫びと共に、グリーフシードが孵化して魔女が姿を現した。
「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」
一見するとちょこんと座った小さなぬいぐるみの様な魔女、シャルロッテを、
マミはマスケットでぶん殴り銃撃しリボンで浮上させて、
「ティロ・フィナーレッ!!」
一際でっかい設置型大砲の直撃弾を食らわせた。
「やったあっ!!」
見事な手際からの鮮やかな一撃に、
マミの展開したバリアで守られながらまどかとさやかが歓喜の声を上げる。
「おおおおお………」
「え?」
マミが一瞬戸惑ったのは、聞こえて来た雄叫びと自分を覆う黒い影。
「神鳴流秘剣・百花繚乱っ!!!」
「え………えあららあっ!!!!!」
「マミ、さん?」
まどかとさやかが、
桜華と共に突き抜ける強烈な衝撃波に吹っ飛ばされるマミの様を、
動きに沿って首を動かし眺めている。
「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!!」
次の瞬間には、マミのいた辺りに立った刹那が
すぐ側に迫っていたぬいぐるみから空飛ぶ人食い怪物に変化した
シャルロッテに一撃を食らわせていた。
「匕首・十六串、稲交尾籠っ!!」
複数の匕首と共に封印術が発動し、
匕首と共に放たれた幾つもの封印の帯がシャルロッテを縛り上げる
「一体何をしているんですかっ!?」
「た、助かったわ。
それにしても、容赦なく吹っ飛ばしてくれたものね」
刹那の怒声に、ようやく立ち上がったマミが答えた。
「ええ、達人なら一日一発や二発程度では死なないと
師匠からも教わりましたから。
それぐらい危険な………」
「ティロ・フィナーレッ!!」
刹那が本格的に何かを言おうとした刹那、
その横を、マミが発砲した
大砲レベルのデリンジャーの砲弾が通り過ぎた。
「斬鉄閃っ!!」
そして、身近に迫っていたシャルロッテを刹那が一撃する。
「あの、捕縛結界を?」
「ええ、私もそれでやられかけた」
驚きを示した刹那にマミが言った。
「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!」
「ティロ・フィナーレッ!!!」
二弾攻撃の結果、刹那は分析を完了した。
「つまり………脱皮型の魔女で外側は想像以上に頑丈」
「そういう事、みたいね」
肩で息をする刹那とマミが見解を一致させている間にも、
シャルロッテは結界を飛び回り貪欲に獲物を狙う。
刹那が跳躍して一撃を加え、マミも砲撃に出るが決定打が出ない。
「何を、しているんですか?」
「えっ?」
刹那がぽつっと呟いた怒りの籠った言葉に、
マミが聞き返した。
「何をしていると聞いている。
何をしているんですかあなたはっ!?
あなたは、守るためにいるんでしょう、
今は、影ながらに拘る時ですか?
そこで指を咥えて見ている心算ですかっ!?」
==============================
今回はここまでです>>56-1000
続きは折を見て。
せっちゃんだけではつまらへんよ!ネギ君も是非出て来てほしいな!
懐かしいなおい
と言ってもUQアニメ化するんだったか
感想どうもです。
今の名探偵コナンの監督って、昔ネギま! も撮ってたんですなぁ
ほな、今回の投下、入ります。
==============================
>>64
「斬鉄閃っ!!」
叫ぶや否や、桜咲刹那はすぐ側に迫っていたシャルロッテに夕凪を振るう。
その時には、巨体に似合わぬ俊敏さで
「気」の衝撃波を交わしたシャルロッテが結界の空高く飛び上がっていた。
「ひっ!?」
ぐわっ、と、自分達に向かって来たシャルロッテを見て、
鹿目まどかと美樹さやかが抱き合い震え上がる。
「!?」
その爆発音に、巴マミは目を見張った。
「ほむら、ちゃん?」
バリアに囲まれたまどか、さやかの前方に立っていたのは、
魔法少女姿の暁美ほむら。
そして、素早く迫撃砲を構えたほむらが、
狙いをほむらに変えたシャルロッテを砲撃する。
見ると、ほむらの周囲、まどかとさやか、ほむらがいる
台地の様な一角には大量の迫撃砲が林立していた。
「どうしてあの娘が?」
「斬岩剣っ!!」
目を見張ったマミの前で、
刹那の夕凪がシャルロッテを一撃していた。
「詮索は後っ!
暁美さん、その二人の防御頼んでいいですねっ!?」
「そうさせてもらうわっ!」
刹那の問いにほむらが怒鳴り返した。
「巴さん、そろそろキメますよっ!」
「分かったっ!」
「神鳴流奥義、雷鳴剣っ!!」
同意が取れるが早いか、
刹那の夕凪がシャルロッテに雷撃を伴う強烈に一撃を繰り出す。
逃れようとして台地に向かったシャルロッテを、
ほむらが迫撃砲で迎え撃つ。
「巴さん、いいと言うまでそこを動かないで下さいいいですねっ!」
「え、ええ。ティロフィナーレッ!!!」
言ってる先から急接近して来たシャルロッテに
マミが抱え筒の一撃を食らわせるが、
やはり決定打にはならない。
「匕首・十六串………」
「その技はっ………!?」
刹那を援護しようとしたマミが、刹那に手で制せられて出遅れる。
台地のほむらも目を細めた。
(まさか、桜咲刹那………)
「攻略法」を知っているほむらの勘が働く。
「刹那さんっ!」
「さっ、さささささっ」
バリアの中の二人が卒倒寸前に陥る。
ばくんっ、と、シャルロッテの口が動いた時には、
刹那は目にも止まらぬ速さで横っ飛びしていた。
「稲交尾籠っ!!!」
次の瞬間、シャルロッテの全身がぴんっ、と、直立していた。
その口からは、本来封印に使う稲妻の帯が
大量にはみ出して稲光を帯びていた。
「やらせてもらうわよっ!!」
マミの叫びに刹那は小さく頷きマミは跳躍していた。
バンバンバンッ、と、側面を銃撃され、
封印帯をぶはっと吐き出したシャルロッテはそちらを向く。
「ティロ………」
マミは、シャルロッテがぐわっと大口を開くのを見据えていた、
リボンを手にしたマミが、後方に跳躍した。
「フィナーレッ!!」
魔砲弾が、真っ直ぐシャルロッテの大口の中へと吸い込まれる。
ーーーーーーーー
「助かったぁ………」
バリアが解除され、さやかは腰を抜かして荒い息を吐いた。
「どれだけ危険な事か、少しは骨身に染みたかしら?」
一瞥したほむらに、さやかは小さく頷いた。
「あ、あの、有難うほむらちゃん」
怖々と口を開いたまどかに、ほむらはふんっと背を向けた。
「………暁美さん、グリーフシード」
ほむらが、マミに差し出されたグリーフシードを奪い取った。
「大口叩いて私を拘束した割には随分な苦戦だったわね、
一般人二人連れ歩いておいて」
「このっ………」
「それに就いては言い訳の仕様も無いわ」
マミがさやかを制し、素直に応じた。
「桜咲さんがいなければ私の命はなかった」
「その場合、二人の命も無かった………
って、分かってるのかしら、巴マミ、っ」
「身に染みて」
「確かに、その点は考えた方がいいですね」
マミの背後から現れた刹那が付け加えた。
「私がいる時は最悪でも二人を逃がしますが、
それ以外の時は本気で考えた方がいいです」
「そうさせてもらうわ。
二人にも怖い思いをさせて、本当にごめんなさい」
「い、いえ」
「あたし達が付いて来たんですから」
頭を下げるマミを、まどかとさやかが取り成す様に言う。
「それはそれとして、どうやってあの拘束を?
まさか、そこまでの魔法を?」
「私が破壊しました」
マミの言葉に、刹那がしれっと言った。
「桜咲、さん?」
「先程引き返した時に、暁美さんを封じていた封印の鍵を一撃して、
それからこちらに戻って来ました。
かなり頑丈な術式でしたので、完全な破壊は無理でしたが、
あれだけ傷がつけばこじ開けるのは時間の問題で」
「どうしてそんな事を?」
「私がそれがいいと判断しました。
実際、今回も助力が得られた訳ですし、
彼女の行動パターンから見て無暗に敵対するのは得策ではない、
少なくとも魔女退治に於いて直接対立した事はない。
私はそう見ましたが」
刹那の言葉に、マミは顎を摘んで黙考する。
「私は帰らせてもらう」
「助かりました」
ファサァと黒髪を払って踵を返すほむらに、刹那は丁重に声をかける。
「分かったわね」
すれ違い様に、ほむらがまどかに声をかけた。
「桜咲刹那は元々よそ者、魔女と戦う魔法少女ですらない。
巴マミがどれだけ強くても何が起きるか分からないのが魔女との戦い。
次に何かあったら、今度こそ命は無いわよ。
それが分かったら、これ以上関わるのはやめなさい」
押し黙ってしまったまどかとさやかをしり目に、
ほむらはその場を後にしていた。
ーーーーーーーー
「お待ちどう様」
今日は何となく大人しいマミルームのリビングで、
マミが紅茶とケーキを用意して来た。
「いただきます」
「いただきまぁす。
なんか、ほっとしたらお腹すいちゃった」
「そうだねウェヒヒヒ………」
さやかの感想は、まどかの実感でもあった。
「………少し、浮かれすぎてたかも知れない。
もう、ひとりぼっちじゃないんだって。
だから鹿目さん、さっきの話は一度保留と言う事で、
お互い、少し頭を冷やして考えた方がいいわ」
「………分かりました」
「さっきの話?」
マミとまどかの会話に、刹那が反応を示した。
「………はい、私も魔法少女になろうかな、って思ったんですけど」
「願い事が決まったんですか?」
「いえ」
「よく、分かりませんね」
「私………昔から、得意な学科とか、人に自慢出来る才能とか、何にもなくて。
これから先、ずっと、人に迷惑をかけていくのかなって。
それが嫌でしようがなかったんです。
でも、マミさんと会って、誰かを助けるために戦っているのを見せてもらって、
同じ事が私にも出来るかも知れないって言われて、
何よりも嬉しかったのはその事で」
「………」
「だから私、魔法少女になれたら、それで願い事は叶っちゃうんです。
こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、
胸を張って生きて行けたら………それが一番の夢だから………」
「何を、焦っているんですか?」
まどかの話を聞き、紅茶を傾けた刹那が口を開いた。
「私達は、まだ中学生です。
魔法少女はかなり突発的な契約を行っていますが、
大部分の人間と言うものは、
人間としての力で努力して未来に向けて生きています。
そこで、地味でも派手でも大きくても小さくても某かを成し遂げています。
確かに、魔法少女の契約は期間限定。
そして大きな素質を持っているあなたであれば
大きく人間離れした一つの成果を上げる事が出来るかも知れません。
しかしです、率直に言います、
少なくとも今、あなたが命懸けの賭けをすると言う理由が、
理屈で言えば理解に苦しむ。
リスクとメリットのバランスが滅茶苦茶ですから。
感情としては分からないではありません」
「あたしもそう思う」
同意したのはさやかだった。
「うん、今のまどかがわざわざ命懸けの契約をする理由が分からない、
って、そう思うのが当たり前だと思う。
今日みたいなの見たら特に。
なんかその、もやもやするのって分からないでもないけどさ、
こないだも言ったでしょ、幸せ馬鹿で何が悪いって。
何て言うか、大した願いがないんだったらそれでいいじゃん、
それだけ幸せだって事だし、少なくとも死ぬよりはさ………
あ、マミさんには申し訳ないかも知れないけど」
「ううん、美樹さんの言う通りよ。
改めて実感した、これは命を懸けた契約だって。
それに見合うもの、その覚悟を求めるのはむしろ当然よ」
「大体、迷惑なんてあたしだってかけっぱなしよ。
まどかにだって色々無茶付き合わせたしさ。
でも、魔法少女じゃなくたって、
まどかはあたしの嫁になるのだー」
「ウェヒヒヒッ!?」
「だから、今回はこうやって、生きてて良かったって事で、
急ぐ事ないよまどか」
「う、うん」
さやかに抱きすくめられ、苦笑いを浮かべながらもまどかは頷いた。
「私もそう思います」
「正直ちょっと惜しい、けど、
私自身揺れてると先輩として責任持てないってのもあるし」
「はい、もう少し、考えてみます」
みんなが真摯なのが分かった。
自分でも幼いと思った思いを、決して馬鹿にしたり無碍にしたりはしなかった。
返答したまどかには、今はそれで十分だった。
ーーーーーーーー
「さて」
とうに陽も暮れた見滝原市内の路上で、
暁美ほむらは曲がり角の先にいた桜咲刹那に声をかけられた。
「今度はあなたが追いかけて来たのかしら?」
「そういう事になりますね」
ほむらの問いに、刹那が応じる。
「ここを通るであろう事も分かっていましたから」
「何故?」
「それが、あなたの行動パターンだからです」
ほむらは、落ち着き払った刹那と対峙していた。
「あなたは守るために行動している、そういう事ですね?」
「何の話かしら?」
刹那が年上だから、と言う事もあるのだろうか、
刹那の言葉、眼差しは丸で全てを見透かす様で、
ほむらは口先でとぼけながらも心は半ば以上圧倒される。
「あなたの行動パターンから、大体の推測は出来ます。
陰ながら見守る、そしていざとなったら手も出す。
それがここまでのあなたの行動パターンです。
あなたは、一貫して守るために行動している」
「あなたには関わりの無い事よ」
そう言いながらも、意思の力でじっ、と、刹那の目を見据えながらも、
ほむらの足は意思が無理に留めなければ後退しそうになる。
「あなたの推論が正しいかどうか、その返答も拒否する。
邪魔をすると言うのなら容赦はしない」
「あくまで私と争いますか?」
「あなたが割り込んで来ると言うのなら」
「そうですか」
「もういいかしら?」
返答も聞かず、ほむらは歩き出す。
「一つ、忠告します」
すれ違うほむらに刹那が声をかける。
「守る場合、距離感が大事だと言う事はあります。
しかし、陰ながらに拘り過ぎると、
却って見えなくなる事もあります」
ほむらが足を止める。
「………結界で助けてもらったお礼、言ってなかったわね。
………ありがとう」
振り返り、頭を下げるほむらの前で刹那も小さく礼を返す。
踵を返してほむらが立ち去るのを、刹那は黙って見送る。
ーーーーーーーー
見滝原市内、とあるビルの屋上で狙いを定めるレミントンM700。
そのスコープの中心には、
マンション建築現場側を歩く桜咲刹那がとらえられていた。
ーーーーーーーー
風見野市内、公園付近。
ソウルジェムを掌に乗せた佐倉杏子がニッと犬歯を見せる。
夜の公園に踏み込み、変身しながら結界に飛び込んだ。
「そらっ!」
槍を一閃、まずは使い魔を蹴散らす。
「昨日は妙な邪魔が入ったからな。
いい加減、狩らせてもらうぜっ」
「………アぁ…亜………イ…ぃ異………ウぅ右………
………エ…ぇ…餌………オ…ぉ於………」
==============================
今回はここまでです>>67-1000
続きは折を見て。
レジェンドソルジャーライダーズ・アギト 3大ライダー超決戦ビデオ
レジェンドソルジャーライダーズ・アギト 3大ライダー超決戦ビデオ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493147441/)
よろしく!
ベジータ「今年のGWは結成☆アイカツ8!2016だとーー!!」
ベジータ「今年のGWは結成☆アイカツ8!2016だとーー!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1493392866/)
よろしく!
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>76
ーーーーーーーー
龍宮真名は、レミントンM700を置いて床ギリギリに横っ飛びしていた。
「!?」
美国織莉子は、自分と真名との間で空中に展開した水晶球が
次々とあらぬ方向に弾け飛ぶのを見ながら、
自らも横に跳躍し、新たな水晶球を飛ばす。
「?」
真名を狙って飛んだそれは、何かが弾けて微妙に軌道が反れる。
その時には、真名が向けた銃口が織莉子を捉えていた。
「オラクルレイッ!!」
ドドドッ、と、発砲された自称モデルガンデザートイーグルの弾丸を
魔法少女出力で跳躍した織莉子が交わし、
織莉子が放った水晶球が身を交わした真名の側を通り
今二人がいるビル屋上の鉄柵に抉り込まれた。
(特別速い訳ではない。こちらの攻撃をかなり際どく回避して
こちらに吸い付く様な攻撃。
勘がいい? いや、マギカであれば………)
デザートイーグルの銃口を上に向けた真名と
周囲に水晶球を浮遊させる織莉子がじりっ、じりっ、と油断なく向き合う。
「美国、織莉子か?」
口に出した瞬間、真名を伝う汗が、つーっと一筋追加された。
「私の事をご存じで?」
「一応、現地情勢は頭に入れる事にしている。
マギカ、魔法少女か?」
「あなたは魔法少女ではない。
しかし、一般人と言うには無理があり過ぎる」
すっ、と、一度両膝を曲げ伸ばし直した織莉子が言った。
ピン、と、織莉子が指を弾き、
返却のために飛来した五百円玉を真名が左手で受け取る。
「まして、ここからこちらの駒を狙い撃ちしよう等と言うのであれば、
それは、宣戦布告以外のなんなのですか?」
「お見通しか」
織莉子の言葉に、真名はふっと息を吐いて言った。
「そちらが仕掛けて来た事情は何だ?」
「魔法少女の事から手を引きなさい、
私達は救世を成し遂げる」
「後は剣と銃で語る所か?」
「この辺りにしておきましょう。
余りここに長居はしない方がいい。但し」
真顔で見据えられた瞬間、
真名は織莉子を撃ち抜こうとした我が手を心で制していた。
「警告は今回だけです」
ーーーーーーーー
「美国織莉子?」
見滝原市内のアパートの一室で、桜咲刹那はスマホに向けて問い直した。
「ああ、最近自殺した見滝原市議会議員の娘だ」
「それが、マギカだと?」
刹那が、再び問いを発する。
「お前が言っていた長爪のマギカの仲間、
彼女は駒だと言っていたがな」
「その、美国織莉子がそっちに行ったと言うのか?」
「ああ、その事実と彼女の戦闘スタイルから言って、
マギカとしての能力は恐らく予知の類、
程度は分からないが厄介だぞ」
「まあ、そうだろうな」
そう言いながら、刹那の口調は落ち着いていた。
「マギカは強い、
少なくとも力だけで言えば私達でも生半可に戦える相手ではない」
「その様子だと、他にもやり合ったのか?」
「ああ、流石に地元の主となると実力も相当なものだ。
しかも、今のこちらの魔法を超えたものも素質次第願い次第と言った所か。
長爪とその主人との衝突は不可避だろうが、
まあ、上手くやるさ。手伝い感謝する」
「何、その辺りの話はついてるからな。
只、気を付けろ」
「ああ」
「美国織莉子、あいつは強いぞ。
戦闘力も侮れないが、
人を引き付け、呑み込む何かを持っている。
何処か脆さが見えるが、だからこそ強い。
出会いによっては向こうに従っていたかも知れないな」
「覚えておこう」
ーーーーーーーー
「尾ッほ頬ぉー、肺ホー
蘭・卵・覧♪乱♪」
風見野市内の結界内で、
佐倉杏子は魔女退治の真っ最中だった。
そこそこヴェテランである杏子だったが、
今回は、彼女に言わせればなかなかにウザイ相手だった。
巨大な顔から手足や別の首が伸びるゾンビの様な外見だが、
倒された振りをして復活する、
伸びる首が多方向から噛みついて来る、と、実に鬱陶しい。
対して、杏子もヴェテランらしく、
相手に合わせて多節棍に変化させた槍を広く展開し、
多面展開する相手に範囲攻撃で反撃する。
「ウぐ虞、ヒ魏ぎぎ………」
かくして、魔女は目の前で赤い体液を垂れ流して呻いている。
杏子も少々疲れを感じる。
勝利は間近、後はこの働きに見合うグリーフシードが落ちるかどうか。
頭の片隅でそれを思いながら、
槍を構えた杏子はタッ、と、地を蹴った。
==============================
今回はここまでです>>79-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>83
「血?」
杏子は、魔女から流れ出した体液の奇妙な動きに気付く。
「目くらましか? しゃらくさいな」
杏子が、こちらに向かって来た液体を槍で払う。
「!?」
薙ぎ払った、そう思った血は一瞬で枝分かれして、
何本もの太い触手と化して杏子の両腕両脚に絡み付きながら
強力な溶解力を展開する。
(まいったな、これ死ぬじゃん………)
両腕両脚をまともに切断され、走馬燈も浮かばない。
シケた諦めが杏子の心をよぎったその時、
杏子に迫っていた魔女本体が、飛来した光る帯に巻き取られた。
(な、っ?)
バシイッ! と、高圧電流の様に強力な魔力が
光る帯から魔女を一撃する。
それと共に、何処からともなく澄んだ、独特の歌声が聞こえて来る。
杏子の場合育ちの関係から特に縁遠かった訳だが、
聞こえて来たのは御詠歌だった。
魔女を締め上げていた帯の光が強まり、
反比例する様に、魔女はぐずぐずと腐れ落ちて、消滅した。
「………いぶきどのおおはらへ………」
ーーーーーーーー
「ん、んー………」
むずかっていた近衛木乃香が目を開く。
「気が付いたか?」
「ああ、あなた」
自分を見下ろす佐倉杏子の顔を確認し、
木乃香は杏子の腿の上に乗せていた頭を上げる。
そして、周囲を確認する。
廃屋、教会だろう。
教会の廃屋の長椅子に横たわって眠っていたらしい。
「ここは?」
「見ての通りの空き家だよ。
あたしの事を助けてくれたみたいだけど、
そのままぶっ倒れて寝込んじまったから、そのまま連れて来た」
「それはおおきに」
「いや、礼を言うのはこっちの方だよな………」
座り直してにっこり頭を下げる木乃香に、
ペースを崩された思いの杏子が応じる。
「で、あんた一体何なんだ?
どうも魔法少女じゃないみたいだけど、
普通の人間ってだけでもないよな」
「そやなぁ………敢えて言うなら魔法使い、やな」
「魔法使いだ? いや、まあ、確かにそう言われても否定は出来ないな。
取り敢えず、分かる様に説明してもらおうか?」
「んー、まあ、つまり、魔法使いはあなた達マギカ、魔法少女と比べるなら、
元々の才能と特殊な修行で魔法を身に着けて
影で活動している人達、とでも言うんかな。
うち、あんまり攻撃魔法は得意やないんですけど、
さっきは急ぎで全部終わらせなあかんて、少し無理してもうて」
「いや、無理ってレベルじゃねーよ。
魔法使いがどれぐらいかは知らないけど、
見た感じ魔女を魔力のごり押しだけでぶっ潰して、
それであの大怪我治してくれたんだからさ。
それはホント感謝する」
「おおきに。ほんまやったらそちらさんとは余り関わる事はないんやけど、
少し事情がありまして」
「事情?」
「はいな。人を探すのに見滝原の魔法少女と接触するつもりやったけど、
電車乗り過ごしてしもて。
それで、この辺りでも少し情報を集めようと思ってな。
それで先日、公園で母子連れを狙っている使い魔を見かけて、
取り敢えずこっそり追い払って、
後は地元のマギカに任せよ思うて見張ってたんやけど、
途中で魔女に気付かれてもうて」
そう言って、木乃香はごそごそとポケットを探る。
「これ、その時のグリーフシード。
うちには必要ないものやし、地元の人が使うのが筋やから」
「ああ、それなら遠慮なく」
「それで、佐倉さんの事を探してたら魔女らしき魔力を感じて、
それで、さっきの現場に行き合わせた訳で」
「じゃあ、これ返すためにわざわざ」
「はいな。マギカの人達にとっては大事な事や聞いてますから」
「へっ、律儀だねぇ………人を探して見滝原に?」
「はいな、恐らくあちらの魔法少女に関わっているだろうと」
「そいつも、魔法使い?」
「うちの大切な仲間、友達です」
「なるほどねぇ………
そう言や、あたしの名前知ってるのか?」
「あの時、後から来たマギカの人が言うてました、
佐倉杏子さん、で合ってます?」
「ああ」
「うちは近衛木乃香、言います」
「このか、ね。
なんか、妙な連中にうろつかれたくはないんだけど、
あたしの命の恩人ではあるからな。
見滝原の魔法少女、それならどの辺を当たればいいか、
大体見当もつく。後で教えるよ」
そう言って、杏子はごそごそと何かを探り始めた。
「くうかい?」
「おおきに」
ーーーーーーーー
「きゅっぷい」
「少し、外してくれるかしら?」
美国邸で、
漆黒に近づいたグリーフシードを飲み込んだキュゥべえに織莉子が告げた。
「織莉子っ! 駄目だよ無理したら。
戦うんだったら私が………」
「ごめんなさい、今回はそれだと意味が無かったから」
「ああー、狙撃、だったっけ?」
「ええ、あの刀使いをあなたが狙う、
そこを狙ってスナイパーが狙撃する」
「それを先読みして織莉子が………で、そのスナイパーは?」
キリカの問いに、織莉子が首を横に振る。
「一流のスナイパーは戦うためのあらゆる能力を身に着けている、
これは本当みたいね。それとも、彼女が別格なのかしら?」
「女だったのかい?」
「ええ、一見凄く大人びても見えるけど、私達と同年代ね」
「そいつ、魔法少女?」
「魔法少女ではない、だけど、普通の人間でもない。
刀使いと同類と思っていい。
あの場では、警告して引かせるのがやっとだった」
「とにかくっ! 織莉子はもうこれ以上危ない事をしたら駄目だからねっ!!
刀使いだろうがスナイパーだろうが、織莉子がやれと言うなら私が刻むよ」
「ありがとう、キリカ。
今回も、グリーフシードを集めてくれただけでも」
「私は織莉子の矛であり盾なんだから」
==============================
今回はここまでです>>84-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>88
× ×
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」
放課後、帰宅した巴マミは、
自宅を訪れた後輩を快く迎えていた。
「あら、今日は一人?」
「はい、もしかしたら後で来るかも知れないって」
「そう」
玄関先で言葉を交わし、
鹿目まどかはリビングへと足を進める。
「刹那さん」
まどかに声をかけられ、
リビングで正座していた桜咲刹那が小さく頭を下げる。
「美樹さんは?」
マミが台所に立っている間に、刹那が尋ねる。
「上条君の所。
いいCDが手に入ったって言ってたから。
だから、一人で………」ウェヒヒヒ
「そうでしたか」
意味ありげな笑みと事情を話すまどかに、
刹那もふっと微笑みを返す。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか」
ーーーーーーーー
「空振りだったわね」
「そういう日もあります」
逢魔が時の魔女探索で一通り歩き付くし、
繁華街近くの歩道でマミと刹那が言葉を交わした。
「昨日、あれだけの激戦でしたし」
「そうね、たまには早く帰って休ませてもらおうかしら」
刹那の言葉に、マミが応じる。
「鹿目さんは?」
「はい、ちょっと買い物を」
「そう、それじゃあ」
まどかの返答を聞いてマミがにっこり笑い、
刹那が小さく頭を下げて取り敢えず解散となった。
ーーーーーーーー
「?」
ちょっとした買い物を終え、
駅前通りから帰路に就こうとしていたまどかは、
そこで少々不思議な光景を目にしていた。
「仁美ちゃん」
目の前を歩いているのは志筑仁美。
まどかのクラスメイトで小学校時代から仲のいい友達。
だが、ここにいると言うのは、少々不思議な光景。
「お稽古事は? ………」
地元でも名士の娘で立場も物腰もお嬢様そのもの。
こんな所にいる筈が無いぐらい多忙な筈ではあるのだが、
まどかは、たった今、思い当たる節を見つけてしまった。
「あぁら、鹿目さん、ご機嫌よぉ」
一見普通でも、長い付き合いのまどかには分かる。
微かに酔っている様な、覚束ない口調。
そして、首筋に「魔女の口づけ」。
「仁美ちゃん、何処に行くの?」
「とても素晴らしい所ですわ。
そうだ、鹿目さんもご一緒に」
そう見えるのか実際そうなのか、
動き出した仁美の動きは、ぎくしゃくと、
まどかには何処か人形染みたものにしか見えなかった。
進行方向を同じくする人が徐々に増加する。
ーーーーーーーー
仁美の後を追う内に、まどかは廃工場の中に入り込んでいた。
工場の作業場らしきスペースには、
仁美を含め相当な人数が集まっているが、
明らかに精気を欠き、それでいて、
得体の知れない希望にその目を輝かせている。
「俺は駄目なんだ………
こんな小さな町工場一つ切り盛りできなかった。
今の時代に俺の居場所なんて、あるわけねぇんだ」
この工場の経営者らしき中年男性が椅子に掛けたままぶつぶつと言い、
その妻らしき女性がバケツを用意する。
女性の行動が、塩素系洗剤と酸性洗剤の混合である事に気づいたまどかは、
本格的に意味不明な供述と共にまどかを制止する仁美を振り切り、
今正に殺人瓦斯を放とうとしていた
バケツを奪い取り、窓へと投げ捨てた。
「ひっ!?」
肩で息をしながらほっとしたのもつかの間、
未だ以て正気を失い、ゾンビ的な挙動と化した志筑仁美以下の集団が
今正にまどかをどうにかしようと迫っていた。
とっさに、逃げ出せない程に足がすくんだまどかは、
もう一度、ガラスが割れる音を聞いた。
「失礼」
集団の先頭にいた志筑仁美が、当身を受けてくずおれた。
気付いた時には、まどかは、
下から太ももと背中を支えられる形で宙を舞っていた。
「刹那さんっ!?」
「ご無事でしたか」
まどかを抱きかかえたまま、
集団から離れた場所に着地した桜咲刹那が小さく頷いて言った。
「あ、ありがとうございます」
「これは、魔女ですか?」
「は、はい、魔女の口づけが」
「そうですか」
「刹那さんっ!」
野太刀夕凪の鯉口を切った刹那にまどかが叫ぶ。
「大丈夫、無傷は難しいかも知れませんが、
出来る限り無事に終わらせます。
秘剣・斬空閃っ!!!」
早速に、「気」の螺旋があらぬ方向へと吹き飛ぶ。
「逃げて下さい、ここは私が」
「気」の一撃を受け、吹き飛ばされた入口シャッターを見て刹那が言った。
「えっ、あ、あのっ………」
「魔女は奥ですね。この程度の一般人、なんとでもなります。
………足手まといです」
「は、はいっ!」
刹那の言葉を聞き、まどかがたたたっと入口に向かう。
「斬岩剣っ!!」
早速に、集団が寄って来る前に刹那が「気」を一撃し、
精神的ゾンビ集団を牽制する。
ーーーーーーーー
「?」
昨日は激戦、
今日は割と埃っぽく探し回った割には空振り。
帰宅して、夕食後一風呂浴びた巴マミは、
リビングの鏡台に向かう途中でスマホの着信に気付いた。
「メール? 鹿目さん?」
==============================
今回はここまでです>>89-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>93
巴マミは一度鏡台前の椅子に掛け、
スマホのメールを確認する。
パチンと指を鳴らし、
後ろ髪に魔法少女カールを展開しながら立ち上がった。
そして、その場にバスタオルを打ち捨てたマミは、
ちょっと嘆息して明日の用意の制服他一式に手を伸ばす。
ーーーーーーーー
「暁美さんっ」
その瞬間の、暁美ほむらが見せた嫌そうな顔は、
先輩の度量として見なかった事にする。
取り敢えず、時間節約のために
途中途中屋根を飛び飛びショートカットしながら駅前近辺に到着した巴マミは、
そこで目についた暁美ほむらに向けて叫んでいた。
「何処に行くの?」
「関係ないわ」
「奇遇ね」
ダッと走り出したほむらと並走しながらマミが言った。
「鹿目さんからメールが入った。
魔女らしきものがこっちの方向に誘導してる、ってね」
「!? まどかはっ!?」
「魔女に口づけされた友達を放っておけないと、
こっちの方向に向かった。それ以上の事は分からない」
「………この先に、おあつらえ向きの廃工場があります」
「オッケー」
ーーーーーーーー
「これは………」
廃工場に入ったマミは、死屍累々の有様に目を凝らす。
「………全員、気を失ってるだけみたいね………」
次の瞬間、マミの背後から一続きの銃声が響く。
「使い魔」
頭上で撃ち抜かれたものを把握し、マミが呟く。
「発砲した以上長居は出来ない、速く片付けましょう」
マミがその言葉に頷いた頃には、
M16を抱えたほむらが壁沿いに走り出していた。
ーーーーーーーー
ほろ
ほろほろ
ソウルジェムで魔力を感知し、
ドアの一つを空けてその奥の魔女の結界に飛び込んだ暁美ほむらは、
一瞬、目の前の光景に立ち尽くした。
ほろ
ほろほろ
ブチッ
ブチッ ブチッ
「くっ!」
とにかく、ふわふわと降下して来る、
薄気味悪い天使ギミックの様な使い魔をM16で追い散らす。
「ティロ・フィナーレッ!!」
そんなほむらの背後から、
接近していた魔女を狙ってマミが砲撃をかけたが
魔女は間一髪、使い魔を巻き込みながらもその一撃を回避する。
ほろ
ほろほろ
ブチッ
ブチッ ブチッ
ドン、ドンドンッ、と、迫る使い魔を使い捨てマスケットで片づけながら、
マミはじろっと周囲を見回す。
「あっちねっ」
「気を付けてっ! この魔女は」
何処かサイケデリックで視界の良くない結界の中、
魔女本体の気配を察知してマミが飛び出す。
「このっ!」
一旦M16を放り出したほむらが、ゴルフ用アイアンを振るう。
ここの使い魔は案外面倒くさい。
浮遊しながらゆらゆらと接近していた魔女を一度牽制し、
さっと米軍仕様M9拳銃を抜いて使い魔を撃ち抜く。
ほろ
ほろほろ
ブチッ
ブチッ ブチッ
ほむらが少々使い魔のペースにはまっている間にも、
マミは空飛ぶモニターとでも言うべき魔女本体を追って
空中に次々と生じせしめたマスケットを拾っては撃ち拾っては撃ち、
ドン、ドンドンッ、と着実に追い込みをかけていた。
すとーんっ、と、体勢を整え、片手持ちしたマスケットを真正面に、
その射線に魔女を捕らえてタイミングオッケー。
ここでど真ん中撃ち抜いて、一気にティロ・フィナーレと、
マミの脳裏にはその道筋が一直線に描かれていた。
ほろ
ほろほろ
巴マミが、ぱちくりと瞬きをした。
「お父、さん」
ブチッ
ブチッ ブチッ
「お父、さん、お母さん………」
「私、一人だけ、願った………」
「あの子、助けられなかった………」
ほろ
ほろほろ
ブチッ
ブチッ ブチッ
「巴マミ、桜咲刹那、何を………」
苦り切った暁美ほむらが、
気配に気づいてハッとそちらを見る。
その時には、
魔女はほむらのド真ん前に存在していた。
ヤバイヨネー
シンジャエバ
イッテクルネ
ハンタイダワ
ミンナシヌシカ
バカナワタシヲ
「こ、のっ………」
ほむらが、意思の力を振り絞り拳銃を構え直す。
ウレシイ、ナ
「あああああーーーーーーーーーっっっっっ!!!」
ほむらが、絶叫と共に、斜め下の床?に向けて拳銃を発砲する。
その、無意味な行動と共に、すとん、と、両膝から力が抜けた。
ぶんぶんっ、と、ほむらが頭を振る。
だが、その時には、禍々しい気配は肌に感じそうな、
そんな所まで接近していた。
「!?」
光を、見た。
眩しいものを感じたほむらが顔を上げると、
小型のオーロラ、光る帯の様なものが、
獲物に迫っていた使い魔達を一掃していた。
「なぁ………何してるん?」
他人から言われる事もあって、最近の暁美ほむらは、
己の黒髪には少々自信を持っている。
しかし、ころころと穏やかな声に振り返ったほむらが
そちらに見たのも又、実に見事な長い黒髪だった。
「何してくれたんやろなぁ」
ひゅんっ、と、
巨大な槍の様に突き出された光る帯を魔女が辛うじて交わした時、
ほむらが聞いていたのは、のんびり、はんなりと、
トゲ一つ見えないからこそ底の見えない声だった。
そして、ほむらはもう一つの気配に気づく。
「佐倉、杏子?」
佐倉杏子は、それなりに百戦錬磨の魔法少女である。
実戦経験も豊富、魔女相手にも、
頭と能力のある魔法少女が相手であっても、
それなりの強者として通して来た。
何よりも魔女狩り、グリーフシードを欲する強欲な合理主義者。
その強欲な強者佐倉杏子は今、結界の入口近くで
コメカミに汗を伝わせて苦笑いを浮かべていた。
「
うちの
大事な大事な大事な大事な大事な(以下略
せっちゃんに、
何
してくれはったんやろなぁ?
」
==============================
今回はここまでです>>94-1000
続きは折を見て。
乙
こ、このかお嬢様たくましくなりましたね…
コメントどうもです。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>101
水干紅袴の近衛木乃香が、するりと周囲を伺う。
伏せたその目は、墨絵に描いた様だった。
それと共に、ミニオーロラの様な光の帯が
しゅるるっと木乃香の手に引き戻される。
(魔力、そのものっ?)
引き戻された光る帯は、光を失い南京玉簾、そして扇へと姿を変える。
光る帯の正体を知ったほむらは戦慄した。
要は、これも非常識に巨大化出来る南京玉簾に魔力を乗せた
半・ビーム兵器みたいなもの。
魔法少女から見てそれ自体に不思議はない。
だが、光と化した魔力そのものの威力、出力が只事ではない。
そして、それを十分コントロールしていると言う技量も。
一差しの舞と共に、爽やかな南風が結界を吹き抜けた。
「くっ!」
頭の中を強制的にかき回していた悪夢が雲散霧消し、
それを感謝する暇もなくほむらは魔女に拳銃を向ける。
木乃香が南風を放ったその隙に、
モニター型のハコの魔女
H.N.Elly(Kirsten)がすうっと木乃香に接近する。
「………アデアット………いでよ、建御雷………」
ほむらの斜め後ろでバズーカ的なものを構えた巴マミは、
一瞬、その視線の先に「鬼」を見ていた。
「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!
秘剣・百花繚乱っ!!!」
ほむらとマミと杏子と木乃香は、首を右から左に、
結界の端から端までハコの魔女の行き先を目で追っていた。
「
神鳴流奥義・斬岩剣!!
雷鳴剣っ!!!
極大・雷鳴剣っ!!!!
神鳴流決戦奥義っ、
真
雷光剣っっっっっ!!!!!
」
「えーっと、終わった?」
佐倉杏子がグリーフシードが物理的に存在しているかを懸念していた頃、
結界の入口近くで、
突入早々遠くに輝く汚ねぇ花火を眺めていたさやか☆マギカが呟いた。
ーーーーーーーー
人数だけでもカオスとしか言い様の無い状況を悪化させないために、
間違いなく警察沙汰になりそうな廃工場から撤収。
一同は夜の河川敷広場へと移動していた。
「どうしてここにっ!?」
「お知り合い?」
とにもかくにも叫び声を上げた桜咲刹那に巴マミが問いかけた。
「古くからの友人です」
「魔法使いね」
刹那の紹介と共にほむらが言った。
「どうも、近衛木乃香言います」
「ご丁寧に」
言葉通り、はんなり丁寧に頭を下げる木乃香にマミも礼を返す。
「とにかくお嬢様、どうしてこの様な場所に?」
「んー、それがなー」
ーーーーーーーー
「おーい近衛ーっ」
「はいな」
数日前の放課後、近衛木乃香は学校の廊下で
クラスメイトの朝倉和美に呼び止められていた。
「あんた、桜咲と一緒じゃなかったの?」
「んー、せっちゃんも最近色々忙しいみたいでなぁ」
ころころと笑って答える木乃香だったが、
何処か不思議そうな和美の表情が僅かな不安を呼んでいた。
ーーーーーーーー
「ちょっとこっちの情報網に引っ掛かったんだけど、
最近、見滝原に行ってるみたいなんだよね桜咲」
「見滝原?」
誘われるままに女子寮の和美の部屋を訪れた木乃香は、
そこで思わぬ情報を聞かされた。
「しかも、そっちの学校に転校してるし」
「てんこう?」
取り敢えず、意味が分からなかった。
「書類上は短期の国内留学かな?
取り敢えず、今ん所はあっちの学校に在籍してるって事なってるね」
「はやー、そんな事もあるんやな」
「驚いた?」
和美が、いつものキツネ目で言った。
「まあ、何か事情でもあるんやろ」
「まあー、そんなトコだろねー。
最近、連絡とかは?」
「それがなぁ、仕事関連で少し麻帆良を留守にする、
携帯も出られなくなると思うてそれっきりやから。
うちも邪魔したら悪いてそのままにしてたんやけど」
「んー、防犯関係のデータ、動画解析とかしてみても、
桜咲の行動範囲はその短期留学に合わせて
見滝原市内を割とあっちこっち動き回ってるみたいだね」
「物の怪でも出たんかなぁ、
ネギ君のプランとはちょっと関係無さそうやし」
小首を傾げる木乃香を、
キツネ目の和美は相変わらずおとぼけ可愛いと眺める。
「只、その辺りの事で、ちょっと気になる事があるんだわ」
「気になる事?」
口調もそうだが、木乃香に聞き返された和美は真面目な顔で頷いていた。
「マギカ、魔法少女、って知ってる?」
「サギタ・マギカ?」
「マギカだと、私らならそうなるか」
そう言って、和美はテーブルにコピー用紙を広げてペンを走らせ始める。
「いちおー私もだけど、私達魔法使い、
それとはちょっと違う魔法少女、ってカテゴリーがある訳。
その魔法少女の事を魔法使いと区別してマギカ、って呼ぶ呼び方があるって事」
「魔法少女なー」
「そ、魔法少女。どっちかってとフィクションならビブリオンとか、
そっちの方面が近いかな?
魔法使いとは別に、そういう娘らが実在してるってんだよねこれが」
「はー、そんなんほんまにいるんや」
「うん、私もこっちに関わって裏情報収集してる内に引っ掛かったんだけどね。
で、桜咲、そのマギカ、魔法少女に関わってる節があるんだな」
「せっちゃんが?」
「そ、この見滝原って所がさ、
どうもその魔法少女管轄の事件が増加してるんだわ。
本来、魔法使いはマギカ、魔法少女の事には関わらない筈なんだけど、
どうもこのタイミングが気になるんだよね」
「魔法少女管轄の事件?」
「魔法少女は魔法少女で、
彼女達が専門で退治するモンスターがいるみたいだね。
それがかなりヤバ目な怪物みたいでさ、
こっち側で関わる物の怪はある程度共存出来るけど、
魔法少女の方は、基本、人的被害、はっきり言って人を食う。
しかも市街地に発生するから放っておくとどんどん死人が出るって
物騒な連中らしいんだよねこれが」
「そんな事にせっちゃんが?」
「桜咲って人選に、この時期に長期に見滝原に出向いてるって、
可能性は低くないんじゃないかな。
近衛に伝わってないって事も含めてね」
「うちが? どういう事?」
「さっきも言ったけど、
私達魔法使いと魔法少女は基本、不干渉の立場を取ってる。
実際、今まで関わって来なかった。
なんか、色々利害関係があって、
迂闊に関わるとトラブルになるって事みたいだね。
だけど、見滝原関連の裏情報見てると、
本来魔法少女マターで対処する被害がちょっと洒落にならなくなってる。
だから、こっちから桜咲が派遣された。
仮説を立てるならこの辺りかな?」
「人を食うモンスター………せっちゃんなら………」
「まあ、桜咲なら大概大丈夫だとは思うけどね」
「当然や」
「だけど………」
話を続ける和美は、真面目な顔をしていた。
「魔法少女、って、相当なものらしいよ。
イメージだけど、実際ビブリオンとかそっち方面の魔法少女、
あれが本当にいたら現実的な戦闘力はどうなるかってね」
「んー、かわええ感じで結構わやな事になりそうやなぁ」
「そんなんが対処する怪物が相手だからね。
ま、桜咲なら問題ないとは思うけどさ。
只、見てる限り一人で行ってるのかな桜咲。
こっち側の業界関係者の情報にも引っ掛かりがないって事は」
「そやなぁ………ネギ君やアスナも最近はご無沙汰やし、
うちも聞いてへんかったさかい」
ーーーーーーーー
木乃香から経緯を聞いていた刹那は、手で額を抑えていた。
「それで、相談しようにもネギ君もアスナもいぃひんし、
何か危ない事になってへんかケガしてへんかて」
「そうでしたか。ご心配をおかけしましたお嬢様」
刹那は、嘆息してから深く頭を下げた。
「お嬢様?」
周囲から不審の声が上がった。
「はい、こちらにおわす近衛木乃香、
このかお嬢様は魔法協会トップであり京都の呪術世界を司って来た
近衛家の直系の御令嬢です。
私、桜咲刹那は近衛に仕える桜咲家、協会に属する神鳴流剣士として
このかお嬢様の側近くに仕えるものとしてもがもがもがっ!!!」
「だからー、お嬢様やなくてこのちゃん呼んでぇなて
言うてるんですけどなぁ」
ここの魔法少女達の中でも遜色ないどころか
普通にぶちのめしかねない桜咲刹那が、
口に指を突っ込まれて頬っぺたを広げられている前で、
刹那の頬っぺたを内側から広げる木乃香は京娘の微笑みで応じている。
取り敢えず、かなり「いい性格」のお嬢様であろう事は、
暁美ほむらも理解した。
「それで佐倉さん、あなたはどうして?」
「ああ、その、このかお嬢様にちょっと借りが出来ちまってな。
なんだかんだで、そっちの桜咲さんの所に案内する事になったって事。
見滝原の魔法少女と合流してるんじゃないかって言うからさ。
縄張り荒らすつもりはないから心配すんなよ」
「ええ、分かったわ」
マミと杏子が、適当な距離感で言葉を交わしていた。
「おおきに、有難うございます」
木乃香に丁寧に頭を下げられ、杏子も小さく頭を下げた。
「近衛さんの事情は呑み込めたけど、
美樹さん、あなた魔法少女の契約したの?」
「はい」
マミの質問にさやかが応じた。
「それで、早速魔女探してる内にまどかが走って来て、
魔女見つけたらマミさんにも連絡する予定だったんですけど、
もうマミさんには連絡して仁美も関わってるって言うから
放っておけなくて突入したらあんな感じで。
デビュー戦は又今度、って所ですなー」
「………」
後頭部で手を組んでカラカラ笑うさやかを、
言葉程ふざけてはいないとは分かりつつ刹那は静かに見ていた。
「美樹さん」
「はい」
刹那に声をかけられ、さやかも少々緊張する。
「では、ちょっと変身していただけますか?」
「ん? いいですよ」
さやかがソウルジェムを掌に乗せる。
杏子が怪訝な顔でマミを見る。
どうやら、マミも気付いているらしい。
刹那が左手の夕凪の鯉口を切った事に。
==============================
今回はここまでです>>103-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>111
美樹さやかの体が光に包まれ、
その姿、衣服は魔法少女と呼ぶに相応しいものへと変化する。
胸元の青を基調とした肩出しビスチェタイプのトップスと
白いミニスカートのボトムは、
実用性と言うよりもゲームの女剣士を思わせる。
「美樹さん」
変身したさやかに桜咲刹那が声をかけ、
さやかがそちらを見ると、
刹那は左手に握った野太刀「夕凪」をすうっと持ち上げていた。
「美樹さやかっ!」
暁美ほむらが叫んだ、その時には、
刹那はさやかの前方ですらりと夕凪を抜き、
さやかの目には八双に構える刹那の姿が映っていた。
(あたしっ!?)
さやかはとっさに飛び退き、
振り下ろされた夕凪がごうっと唸る勢いで空を切る。
その刃が誰に向けられたか?
その、さやかにとって些か非常識な結論は、
刹那の二刀目で確信に変わる。
「さやかちゃんっ! 刹那さんっ!?」
「近づかないでっ!」
その事態に悲鳴を上げたまどかの腕を、
叫び声と共に暁美ほむらが掴み巴マミがまどかの前に立つ。
「何すんだ、よっ!?」
胴突きからの薙ぎを交わしたさやかは、
魔法で生み出した刀の様なサーベルと言うかサーベルの様な刀の様な剣で
刹那の袈裟斬りをギリギリと受け太刀していた。
横目を使ったまどかはぎょっとした。
まどかが視線を向けた佐倉と言う少女は、
そんな「真剣勝負」を不敵な笑みと共に眺めていた。
ガン、ギン、ガンッ、と、夕凪と剣が打ち合い
さやかが荒い息を吐いて飛び退く。
「なっ!?」
さやかは、驚愕した。
少なくともダースに近い剣が一斉にミサイル化して襲撃する。
流石に刹那なら死にはしないだろうが、
と、思ってその攻撃を仕掛けた。
さやかがその攻撃を放った、と、思った時には、
刹那の姿はもうさやかの目の前にあった。
まどかから見て、さやかはぎゅん、ぎゅん、ぎゅんっ、と、
白い独楽の様にマントに身を包んで回転しながら
河川敷のあっちこっちへと瞬間移動している。
それは、佐倉杏子から見たら、
刹那の一撃一撃を辛うじて交わして
這う這うの体で逃げ回っている様にしか見えない。
「ああああっ!!」
刹那に向けて跳躍したさやかの両手に、剣が握られていた。
振り下ろした右手の剣が、夕凪に受け流される。
「く、っ!」
さやかが突き出した左手の剣の突きがぎゃりぎゃりぎゃりっと反らされる。
「かはっ!」
「さやかちゃんっ!」
左の剣に何が当たった? と、さやかが思った時には、
その剣を反らしていた夕凪の鞘の先がさやかの腹に叩き込まれていた。
さやかの体が魔法少女単位で大きく吹き飛ぶ。
ずしゃあっと全身で河川敷に着地したさやかに刹那はすぐに追いついていた。
「こ、のっ!」
立ち上がったさやかの前で、刹那は右手と左手を持ち換えていた。
さやかの顔面を狙った横殴りの鞘を、さやかは瞬時にしゃがんで交わす。
刹那の背面宙返りと共に、さやかが振り抜いた剣が空を切る。
刹那が着地した時、夕凪の刀身は鞘の内にあった。
「斬鉄閃っ!」
「くっ!」
刹那が居合抜きと共に放った「気」を
さやかは横っ飛びに交わす。
体勢を立て直したさやかの目の前で、
刹那は左手にカードが握っていた。
「アデアット」
刹那がぼそっと呟いた時には跳躍したさやかが二刀を振り下ろし、
その斬撃は虚空を切っていた。
「匕首・十六串」
「ああっ!?」
気が付いた時には、
さやかの周囲には匕首に結ばれた捕縛魔法が展開していた。
「くっ、この………」
「稲交尾籠」
「あああああっ!!!!!」
「さやかちゃんっ!!」
封印の帯に縛り上げられ、足掻いていたさやかだったが
帯を走る雷の一撃に悲鳴を上げてばったり倒れた。
封印が解かれる。立ち上がろうとするが、体が言う事を聞かない。
そして、目の前に夕凪の切っ先が向けられていた。
「何、を………」
「あなたは、私の術を見た事がある筈です」
地を這いながら殺意すら籠った眼差しを向けるさやかを、
刹那は冷ややかに見下ろしていた。
「魔女は戦闘力が高い上に悪知恵がある、
人を食うために恐ろしく狡猾に魔術を用います。
その様では、死にますよ」
「だよなー」
淡々と言う刹那に、頭の後ろで両手を組んだ佐倉杏子が続いた。
「わざわざ声かけて刀見せつけてから斬り付ける
アホな殺し屋がいるかっつーの」
「な、何?
じゃあ、あたしに教えてくれた、って言うの刹那、さん?」
「そこのマミ先輩、甘いトコあるからなー」
「その辺りの事は保留にしておきましょう。
今の桜咲さんが正しいかどうかはとにかく、
桜咲さんの言葉は否定出来ないわ」
「………じょーだんっ、今まで味方ヅラして不意打ちだよ」
拘束を解かれたさやかは、荒い息を吐いて座り込む。
「では、改めて真剣勝負をしたら私に勝てると?」
「………ごめん、無理」
「それに、チーム戦では善意悪意に関わらず、
特にあなたでは味方の射線に立って共倒れしかねない。
実戦とはそういうものです」
「………そう………」
「全体的には丸っ切り素人ですが、体はよく動かしている様ですね、
恐らく女子にしては拳の喧嘩も心得ている。目と勘は悪くない。
なってしまったものは仕方がありません、
あなたの性格です、あなたとしては大真面目に考えた結果なのでしょう。
あなたを心配している友のためにも、死にたくなければ精進する事です」
「魔法少女の事を教えた私にも責任はある。
出来るだけの事はするから」
「ありがとう、マミさん」
手を引こうとするマミを制する様に、さやかが一人で立ち上がった。
「つつつ………」
「さやかちゃん、大丈夫?」
「結構、大丈夫じゃねーって………ちょっと待って」
立ち上がったさやかは、一度光に包まれてから変身を解除した。
「さやかさん、言いました?」
そんなさやかに声をかけたのは木乃香だった。
「さやかさん、回復の魔法使うんやなぁ」
「ああ、うん、願い事もそうだったからかな?
ケガとかなら結構治せるみたい」
「良かったぁ」
「だってさ、出番なしだな」
「せやな」
口を挟んで来た杏子に、木乃香は邪気の無い笑顔で応じる。
「?」
「近衛さん、もしかして回復魔法を?」
尋ねたマミに、木乃香がにっこり応じる。
「いやー、すげぇすげぇって、
このお嬢様の回復魔法、今みたいにちゃっちいのじゃねーっつーか、
魔法少女でもあんだけ出来るのはいないんじゃねーの?」
「魔法使いの中でも例外です」
杏子の言葉に、刹那が続く。
「そもそも、このかお嬢様の本来の魔法は治癒、
それも体質的な素質が桁違いです。
だから、攻撃魔法は技術的には中ぐらいも知っているかどうか、なのですが」
「ああー、物理、魔力の多さでごり押しの力押しだったよな。
それで通っちまうぐらい圧倒的って事かよ」
杏子の言葉に、刹那が頷いた。
「えーと、桜咲さんって近衛さんの友達なの?」
さやかが、改めて尋ねる。
「はいな、どうもせっちゃんが無茶してもうて」
「いや、いいっすよ。
あの人とかから見たらあたしの方が無茶だってのはその通りなんだろうし。
あんな強い人でもやられそうになるんだから、
本当にこのザマのあたしなんか幸せバカの甘ちゃんなんだろうね」
「さやかちゃん………」
「でもさまどか、なっちゃったもんは仕方がないってのも本当だから、
精々頑張る、頑張って強くなって、死んだりなんかしないから」
「うん………」
「その意気や」
「ありがとうございます」
そして、ぺこりと頭を下げたさやかから一度離れて、
木乃香は刹那に合流する。
「厳しいなぁせっちゃんは」
「今後は本当に命のやり取りになりますから」
「せやな。それでせっちゃん、
せっちゃんはどうしてここに?」
「およその所は朝倉さんが推察した通りです。
協会からの要請で、見滝原を中心に
魔女発生率が妙に上がっている地域の調査に。
只、本来魔女は魔法少女と言う独自勢力が対処しています。
通常不干渉である魔法使いと魔法少女が大っぴらに関わり合いになるのは
色々不都合がありますので、内部的にも秘密裡の調査で、
お嬢様にはご心配をおかけしました」
「そう。うちも勝手に追いかけて来てごめんなぁ」
「いえ、私が至らぬばかりで。
そういう訳で、私はもう少しこちらに留まります。
今のケースが落ち着いたら連絡します」
「ん、きっとやで」
刹那と木乃香はお互いぺこぺこ頭を下げていたが、
最終的には生真面目に答える刹那に木乃香がにっこり微笑んでいた。
「んじゃー、あたしもこれで帰るわ。
他所の縄張りでマミ先輩に加えてこんな凄腕でおっかねーのがいるんじゃ
獲物掠めるどころじゃねーって」
「あらそう」
やれやれな態度の杏子にマミが素っ気なく言い、
杏子が不敵な笑みを返す。
どうも、ほわほわな木乃香と背筋が冷たくなる「本物」の刹那に当てられ、
杏子からも毒気が抜けた所があるらしい。
「それでは、私も今日は少し仕事がありますから」
「あたしも、ホントは話したい事もあるけど、
今日は休みたい」
刹那に続き、さやかも離脱を告げた。
「そう、お茶をしながら今後の事も、って思ったんだけど」
「はい、それは明日から、って事にしてくれたら」
「ええ、待ってる」
ーーーーーーーー
「つ、っ………」
「ほらぁ」
夜道で膝をついた刹那に、
前から現れた木乃香が呆れた様に声をかけた。
「お嬢様っ?」
「だからこのちゃん言うてぇな。
大丈夫、せっちゃん?」
「ええ、ちょっと、脚に来ましたね」
そう言って、刹那は僅かに自嘲の笑みを浮かべる。
素人にいきなりテレポート紛いの移動を連発されて勘が狂った。
本気であれば瞬動で容易に対応出来る程度のスピードではあったが、
その、モードの切り替え時を僅かながら見誤った。
「ほらぁ、お腹から血ぃ出てる。
無理に血止めしてたやろ」
「皮一枚かすめただけです。
先輩ヅラして、私の方が調子に乗り過ぎましたかね?
どうでしょうか? 暁美ほむらさん?」
「あの青魚にはあれぐらいでちょうどいい。
幸い、あなたは実力も人間的にも彼女から信頼され、認められている。
あなたは正しいわ桜咲刹那」
「そうですか、それはどうも」
木乃香がくるくる舞っている側で、
すいっと現れたほむらと刹那が互いに小さく頭を下げる。
「………近衛木乃香、さん」
「はいな」
「もしかして、桜咲刹那はあなたのボディーガード?」
「大切な友達」
刹那が何かを言う前に、
木乃香はにっこりと、きっぱりと答えた。
「だから、せっちゃんに何かあるなら、
うちはせっちゃんを守りたい」
真っ直ぐと、真摯に。
そんな木乃香の言葉にほむらは何も言えない。
刹那は目を閉じ、ふっと、静かに微笑んでいた。
==============================
今回はここまでです>>112-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>120
× ×
「………時にお嬢様」
「はいな」
マミルームのリビングで、桜咲刹那は近衛木乃香に尋ねた。
刹那が木乃香と再会したり美樹さやかが魔法少女の契約を交わしたり、
前の日の夜にそんなこんながあったため、
その時に積み残した話題も含めて、
放課後に改めてこうしてマミの部屋に集まっている訳ではあるが、
「何故お嬢様がここにおられるのでしょうか?」
「マミさんがお茶に誘ってくれてなぁ」
「………巴さん?」
「近衛さんと意気投合して連絡先交換してたの」
「美味しいお菓子ご馳走してくれる言うさかい。
お愛想言うてるみたいにも聞こえなかったし、
せっちゃんとも知らない仲やないみたいやし」
「そうですか」
そう言って、刹那は小さく息を吐く。
「でも、ほんまに美味しそうな匂い………」
「それは期待していいっすよ」
口を挟んだのは美樹さやかだった。
「マミさんのケーキ、めちゃうまっすから。
それに、このかさんの言う通り、
マミさんお菓子作りすっごく楽しんでますから」
「それは楽しみやなぁ」
さやかの言葉に、木乃香はころころと笑って応じた。
ーーーーーーーー
「美味しい」
「有難う」
紅茶を傾け、素直に賞賛する木乃香にマミも喜びを露にする。
「こんな美味しいお紅茶、久しぶりや」
「ホントに、紅茶の味とか、
このダージリンの香りなんてホントにあるんだなあって
ここで初めて知った感じで。
やっぱりお嬢様? こんな美味しい紅茶飲んでたの?」
「せやなぁ」
這い寄りそうなさやかの言葉を、
木乃香はふわりと微笑んで交わしていた。
「アッサムもええ塩梅で」
「有難う」
ストレートティーを楽しんでいた木乃香が
つつ、と、カップにミルクを加えながら言う言葉を聞きながら、
マカロンを並べていたマミが目を細めて応じた。
「それで、昨日からの話が色々と………」
皆が程よくお菓子を楽しんだ頃合いを見てマミが言いかけるが、
そんなマミを刹那は掌で制していた。
「?」
皆が不思議そうな視線を向ける中、
スマホを手にした刹那の表情は鋭かった。
ーーーーーーーー
「このお店、潰れてたのね」
マミのマンションから歩いて十五分以内の所で、
廃墟を見上げたマミが言った。
「中、なのかな?」
ソウルジェムを手にしたさやかが言う。
「一時的に人払いをかけました、突入出来ます」
「助かるわ」
近くの道から戻って来た刹那が言い、
マミが真面目な口調で応じた。
「刹那さん、でいいかな?」
「ええ」
建物に侵入しながら刹那とさやかが言葉を交わしていた。
「刹那さんの仲間が見つけたっての?」
「はい、たまたま奇妙な魔力を察知したと」
「見つけた」
マミのソウルジェムの光が廃墟の空間に扉を映し出し、
変身したマミを先頭に
刹那、木乃香、さやか、まどかが結界の中に侵入する。
ーーーーーーーー
「ま、ざっとこんなモンだぁね」
「そうですね」
夕暮れの路上で、そっくり返るさやかに刹那があっさりと応じた。
「あ、はは………」
「人数から言ってもオーバーキルに近い状態でしたから。
実質的なデビュー戦には丁度良かったのでは」
「うん、手ごたえはあったよ、
思い切り手伝ってもらったけど、
あたしがこの手で魔女を狩ったんだ、って」
乾いた愛想笑いを浮かべたさやかだったが、
刹那の真面目な言葉にさやかも真面目に応じていた。
「桜咲さんも言ってたけど、今日のを見たら筋はいいと思う。
だけど、今日はちょっと上手く行き過ぎだから。
明日はお休みだし、これから色々教えるわよ」
「お願いします、マミ先輩」
マミの言葉に、さやかがぺこりと頭を下げた。
ーーーーーーーー
「わぁー、かわええなぁ」
「お気に入りなんです。
この歳でちょっと恥ずかしいけど」
「そんなんあらへんて」
なんとなくノルマ達成気分の解散の後、
夜闇が迫る前の時間、
鹿目まどかの寝室はちょっとばかり盛り上がっていた。
河童のぬいぐるみを抱いてご満悦の木乃香の後ろで、
桜咲刹那は優しく微笑んでいる。
何故にこういう事になっているのかと言えば、
先程のお茶会のちょっとした話題で、
さやかがからかったまどかのぬいぐるみ、
その話題に木乃香が食い付いた結果だった。
ーーーーーーーー
「お帰りかい?」
「お邪魔しました」
一階リビングで、訪問時にも出会った鹿目知久に
木乃香と刹那も礼儀正しく一礼する。
「………そこにお庭で?」
「そう、父が作ってるんです」
「いっぱいや、それによう熟れてるなあ」
「でしょう」
今度は知久が運んで来た笊に木乃香の目は引き付けられ、
まどかも誇らし気に後に続く。
「赤いトマトに、胡瓜も瑞々しゅうて。
これサラダもええけどお漬物なんか………」
「そう、ぬか漬けもピクルスも美味しいんですよ」
「?」
刹那は、ちょっとしたズレを察知していた。
まどかの言葉をよそに、つと床に座った木乃香は、
少し考えてにんまり微笑んでいた。
そして、木乃香は立ち上がりスマホを使う。
「もしもしマミさん? うち、うん、明日の事やけど………」
「お嬢様?」
通話を終えた木乃香は向き直り、
微笑んで知久を見る。
「あのー、すいませんけど………」
ーーーーーーーー
「で、一体あなた方は何をしているんですか?」
一旦麻帆良に戻る木乃香を送って駅に向かっていた筈が、
きな臭い気配を追跡して路地裏に入った結果、
刹那の右手の夕凪と左手の白き翼の剣は
さやかの剣と佐倉杏子の槍をギリギリと反らしていた。
「この馬鹿が使い魔を狩るって言うからちょっと教育してやってたんだよ」
「んだとぉ………」
杏子が吐き捨てる様に言い、
ぐわっ、と、戦闘を再開しようとしたさやかは、
目の前に夕凪の切っ先を見ていた。
「使い魔だって人を襲うんでしょ、放っとけないでしょ」
「卵産む前の鶏絞めてどうすんの?
人を何人か食ったら魔女になってグリーフシード孕むんだからさ。
悪りぃけど、あたしってそういう奴だからお嬢様」
「魔女を狩ってくれる分、いないよりはマシやなぁ」
「おっ、お嬢様の方が話が分かるってか」
「魔法少女は、グリーフシードが無ければ現実問題として困るのでしょう。
魔法少女であれなんであれ、出来る事と出来ない事があります。
己の技量を弁えて出来る事をするしかありません。
その上で佐倉さん、ここはまだ見滝原です。
ここで狼藉を続けると言うのであれば、
巴さんの友人、協力者として私が一仕事する事になりますが」
「ああー、そうだな。
なんか見かけちまったんで手ぇ出しちまったけど、
今日ん所は帰らせてもらうわ」
「こんの………」
夕凪の棟で脛を払われ、宙を飛んで突っ込んで来た美樹さやかを、
佐倉杏子は振り返りもせずすいっと交わしていた。
そして、そのままトントーンッと建物の屋根に跳躍して姿を消す。
「刹那さん、っ………」
「もう一度聞きますが、
自殺願望でもあるのですかあなたは?」
白き翼の剣の切っ先を見ながら、
さやかはゆっくり立ち上がる。
「魔法少女と言えど綺麗事だけではない、
自分の利益を考えなければならない、と言う事ぐらいは聞いている筈です。
それに、魔女を狩っている以上、
ヴェテランの魔法少女にあなたが勝てる道理が無い。
それぞれに自分と使命の間を命懸けで生き抜いている相手に、
昨日今日で安易に何かが出来ると思いますか ?」
「ん………このかさんはどう思うのよ?」
「せやなぁ、難しいけど、
魔法の世界で色々難しい事見て来たさかい。
分かるのは、あんまり他人様に無理は言えへん言う事や」
「分かった、分かりました。
正直、ちょっと納得いかないけど、
何て言うか、理屈でもなんでも、勝てると思える要素ないし」
「勘違いしないで下さい。
世の中は強ければ正義、と言う事はありません。
それに、あなたの義憤は、自分が銃を持っていて
目の前の市街地を猛獣が歩いている以上当たり前の感情です。
只、つい先日まで一般人だったあなたと
魔法少女の常識は必ずしも一致しない、
そこを見誤ると結局何も守れない、そういう事です」
「少し、考えてみる。面倒かけてすいません」
ーーーーーーーー
木乃香を見送り、
一度見滝原市内のアパートに帰宅した桜咲刹那は、
夜道を進み再度外出していた。
「又、会いましたね」
「そうね」
テクテクと遅い帰路についていた暁美ほむらは、
正面から登場した桜咲刹那と淡々とした挨拶を交わしていた。
「昨日は、なかなか手強い魔女でした」
ほむらの歩みに合わせながら、刹那が言った。
「あなたの言う通り、魔女の能力は単純な力押しだけじゃない。
特殊な魔術を使うし悪知恵も働く。
そこを読み違えると、あなたや巴マミでも面倒な事になる」
「おっしゃる通りです」
ほむらの言葉に、刹那が素直に応じた。
「まして、美樹さやか」
「心配ですか?」
ギリッと歯噛みするほむらに刹那が尋ねた。
「厄介事は面倒なだけよ」
「そうですか」
ファサァと黒髪を払うほむらに刹那が応じた。
「嫌なものを見ました」
「昨日の魔女の事?」
「ええ、そういう能力の魔女なんでしょうね」
「ええ、嫌な能力よ」
ほむらが言い、ふと言葉が途切れる。
「桜咲刹那」
「はい」
「正直、私にはよく分からなかった。
只、誰しも自分の中に蓋をして自分でも見たくないもの、
隠しておきたい事の一つや二つはある。
それは理解している」
「………助かります………
受け容れてくれた人がいる」
「?」
「このかお嬢様もそうです」
「改めて聞くけど、守るべき人なのかしら?」
「ええ、その事だけは、決して譲れません」
そう言った刹那は、
半ば無意識に左手で夕凪を持ち上げていた。
「今日もなかなか疲れました。
そろそろ明日に備えるとしましょう」
「そうね」
二人は、静かに言葉を交わし、分かれた。
==============================
今回はここまでです>>121-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>129
× ×
「こんにちはー」
「お邪魔します」
休日の昼下がり、新米魔法少女美樹さやかとその親友鹿目まどかは、
予定通り学校と魔法少女の先輩である巴マミの自宅を訪れていた。
「ああ、いらっしゃい」
「あ、このかさん」
フラットの玄関で出迎えたのは近衛木乃香、
マミと同じ学年のこの先輩との間では、
ごく最近の会話の中で名前呼びに馴染んでいる。
たおやかな木乃香にはそういう柔らかさがあった。
「あれ? マミさんお風呂?
って言うかこのかさんも洗い髪」
部屋に入りながら、水音を耳にしたさやかが尋ねた。
「うん。台所で手伝どうてくれてたんやけど、
ちょっとドジ踏んでもうてなぁ、
二人で粉の入れ物爆発させてもうた」
「あははは………」
「ウェヒヒヒ………」
木乃香の語る武勇伝に乾いた笑いを漏らしながら、
まどかはリビングに視線を向ける。
そこでは、やはりマミと同学年、最近転校して来た桜咲刹那が
相変わらず用心棒の先生よろしく夕凪を抱えて座っている。
双方目が合って、ぺこりと頭を下げた。
「お待ちどうさん」
文字通りお手並み拝見していたさやかは、
あの魔法装束に黒髪の大和撫子京女だからもしかしたら日本茶?
とも思ったが、木乃香が運んで来たのはまごう事無き紅茶、
それも薫り高い逸品だった。
さやかが知っているのはマミの手並みぐらいだが、
沸いた瞬間の熱湯をティーポットに注ぎ、
さらりとタイミングを見極める木乃香の手際は
確かにマミに通じるものがあり、
そして、素人目にも手馴れていた。
「いただきます」
唱和と共に始まるお茶会。
「美味しいです」
「うん、美味しい」
「ありがとう」
まどかとさやかが声を上げ、木乃香がにっこりそれに応じる。
「いい香り」
さやかが改めて香りを味わう。
マミのものとは微妙に違う、それぐらいは分かる。
だが、どちらが上とか下とかはさやかには分からない、
つまり、どちらも美味しい。
「ダージリンのオレンジペコ、
バランスのいいディンブラにキームン。
香り高さとアフタヌーン向けのパンチが絶妙。
私の手持ちと近衛さんが用意したものをブレンドしたものだけど、
塩梅、って本当に深い意味がある言葉ね」
「おおきに、マミさんにそう言うてもらえたら」
ミルクを足した紅茶を傾けてからころころと鈴を転がす様に言い、
ぺこりと頭を下げた木乃香はそのまま台所に向かう。
確かに、そう言われると、くっきり見える個性を上手くまとめた木乃香に対し、
マミの紅茶は全体に柔らかく包み込む様な、それがさやかにも解りかけていた。
「サンドイッチ」
木乃香が運んで来たそのものの名前を、さやかが告げる。
「お昼にお腹空けておいて、って言われてはいたけど、
なんか、可愛いサンドイッチですね、
お茶会にぴったり、って言うか」
「ええ、お茶会用のフィンガーサンドイッチね」
「いただきます」
さやかとマミが言葉を交わす側でまどかが手を合わせ、
他の者もそれに倣った。
「美味しい。ビーフとかサーモンとか、
こんな美味しくって可愛いサンドイッチになるんだ」
「おおきに」
さやかの賞賛に木乃香がにっこり応じる。
「これって、胡瓜?」
「そうなの」
さやかの言葉にまどかが言った。
「このかさん、家の朝もぎ胡瓜を分けてくれって」
「へえー、まどかパパの、美味しいもんねー。
そりゃ楽しみ。美味しいっ。この味付けって」
「少ししっとり時間を置いた薄切りパンのサンドイッチ。
スモークサーモン、ローストビーフと胡瓜のサンドが三種類。
スタンダードにワインビネガーの胡瓜サンド、
チェダーチーズに胡瓜のサンド、これって………」
「塩麹ですか?」
「当たりや」
まどかの答えに、木乃香がにっこり応じた。
「色々よく合うとは聞いてたけど、こういう使い方もあるのね。
味付けも組み合わせも、絶妙のバランスでとても美味しい」
最近の流行りではあるが、
バランスの取れた和洋折衷をマミも素直に賞賛する。
「おおきに、有難うございます。
まどかさんのお庭の胡瓜が見事でしたから
無理言うて分けてもらいまして」
「パ、父も喜んでいました」
「こんな美味しいお野菜、本当にありがとう」
まどかの言葉に、木乃香が改めて礼を述べた。
ーーーーーーーー
「どれぐらいがいいん?」
「それじゃあ、このぐらい」
サンドイッチ、スコーンに続き、
ヴィクトリア・サンドを木乃香が切り分けて回る。
「美味しかったです、ご馳走様でした」
一通りのメニューが終わり、まどかが丁寧に礼を述べた。
「おおきに」
「すっごいなーこのかさん」
割りとボリュームのあるティーメニューに、
ふーっと満足の息を吐いてさやかが続く。
「見た目すっごい大和撫子なのに、
前に見たあの魔法の衣装、あれ、白拍子ですよね?」
「そういう事になるなぁ」
さやかの問いに木乃香が応じる。
「ちょっとネットとかで調べたけど、本当にあんな感じなんですね。
昔のお姫様なんかは十二単だったけど」
「あれ、ちょっと動けへんから少なくとも戦いには不向きみたいやな」
「あー、なんか歌番組でも階段下りられないとか言ってたっけ。
その大和撫子の木乃香さんが、
こんなティータイムまで仕切っちゃうんだから」
「ええ、見事なものよ。
どなたかジェントルマンから教わったのかしら?」
「そやなぁ」
ふふっと笑って口を挟むマミに、
木乃香も柔らかく笑って応じる。
「お茶って、このかさんもしかして日本のお茶も出来るんですか?」
「んー、少しは出来るかな」
「ひゃー、仁美もそうだけどいるもんだ」
木乃香の答えに、さやかが如何にも大袈裟な態度で笑いを誘う。
「………」
「?」
先程まで、後で考えるなら
やや不自然なぐらいに朗らかに振舞っていたさやかが、
その勢いをふと途切れさせて、刹那と目が合った。
「刹那さん」
「はい」
刹那の返事と共に、さやかが座ったまま深々と頭を下げた。
「刹那さん、あたしに剣を教えて、下さい」
「………」
さやかの願いに、刹那は沈黙で応じた。
「あたしも魔法少女になって、剣が武器で、
刹那さん強いし、それに、凄く厳しいけど、
それだけ正しい事言って、あたしの事心配してくれた。
だから、これからも刹那さんに………」
「………私に、その資格はありません」
途中で静かに遮る刹那の返答を聞き、さやかは顔を上げる。
ふっ、と、微笑む刹那の顔を見た。
「買い被りにも思える私への評価、嬉しく思います。
しかし、私自身も修行中の身。
神鳴流は一朝一夕に習得出来る剣ではありません。
まして、あなたは魔法少女としての力を持ち、これから魔女と戦う。
だからこそ、中途半端な技術を与える訳にはいきません。
私は、何時までここにいる事が出来るか分からない。
出来る事なら、巴さんにお願いしたい。
何よりも魔女退治に習熟していて、
飛び道具も、近接戦闘の能力も極めて高いですから」
「ええ、元々私が勧めた事でもあるから、
美樹さんの事は私が引き受ける。私では不足かしら?」
「い、いえ、とんでもないです。
マミさんに教えてもらえるなら」
「あなたの誠実な申し出に応じる事が出来ず、申し訳ない」
「いえ、こちらこそ、
色々面倒かけて、無理言ってすいませんでした」
「ほな、もう一杯如何?」
「ええ、いただくわ」
固い話が一段落したのを見計らい、
木乃香の誘いにマミが応じた。
==============================
今回はここまでです>>130-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>136
ーーーーーーーー
「蜂の魔女、って感じかな?」
和やかなティータイムも終わった夕方、
パトロール先で発見した魔女結界の中で、
ぶんぶん飛び交って襲い掛かって来る蜂の様な使い魔を斬り伏せながら
美樹さやかが言った。
「ええ、あれが本体みたいね」
確かに、巨大な蜂を思わせる浮遊体を目で示し、巴マミが言う。
蜂の巣を思わせる結界の中には、ハニカム状の空洞が空いた大きな壁があり、
その空洞の一つに鹿目まどかと近衛木乃香が待機している。
その側で、何匹もの使い魔が一刀両断され、
その時には、桜咲刹那が野太刀夕凪を鞘に納めていた。
「数が減らない………」
マミが、うじゃうじゃと襲い掛かる使い魔を撃ち落としながら呟く。
「………大本を叩かなくちゃ駄目ね。
美樹さん、使い魔より魔女の方を集中して狙いましょう。
相手の動きを止めるの手伝ってもらえる?」
「うん」
マミの求めに応じて、さやかが跳躍した。
マミのリボンが空中の一際大きい蜂型魔女を縛り上げ、
さやかが投擲した剣が更に魔女を釘付けする。
「美樹さん、こっちに戻って下さい!
巴さんはそのまま魔女をっ!」
「えっ?」
「え? 分かったっ!!」
突然の刹那の言葉に、
二人とも若干戸惑いながらも言う事を聞いていた。
「美樹さん、巴さんを、そして周囲をよく見ていて下さい。
その上で、必要な事を行って下さい」
「分かりました」
さやかの理解力から言って抽象的過ぎる刹那の指示だったが、
それでも、さやかはそれに従う姿勢を見せる。
「…よし! 見掛け倒しのトロイ子ね」
一方のマミは、不可解と言うべき突然の介入に
ヴェテラン魔法少女として引っかかるものを覚えたものの、
凄腕の退魔師である刹那の手並みと誠意はここまで見せて貰っている。
それに、勝利の手ごたえがマミを些か鷹揚にしていた。
「ティロ………!?」
かくして、リボンで拘束した魔女に向けて、
マミが巨大マスケットを向けた。
その瞬間、マミは体勢を崩していた。
「百烈桜華斬っ!」
「!?」
地面が波打ち体が投げ出された、マミがそう思った次の瞬間には、
急接近していた刹那が豪剣を振るっていた。
生々しい植物質の破片が飛び散り、マミは何かに気付く。
「マミさんっ!!」
一瞬遅れて接近して来たさやかも、二刀を振るって、
マミに向かっていた巨大な蔓を切り刻む。
そのバックアップを受けて、
体勢を立て直したマミも再び砲口を上空の魔女に向け直した。
「こいつかあっ!!!」
マジカルな火薬の轟音が響く中、
蜂型魔女の結界の一部、と思わせながら潜伏していた植物型の魔女。
その中心部と思われる花に、さやかの一刀が振り抜かれる。
(浅いっ!)
刹那が心の中で舌打ちして、一度鞘に納めた夕凪の鯉口を切る。
瀕死の植物魔女の巨大な蔓が、頭上からさやかを狙う。
「神鳴流………」
「ティロ・フィナーレッ!!!」
その攻撃が振り下ろされる前に、
花の中心をマミの破壊的な一撃が貫いていた。
ーーーーーーーー
「分かってたの?」
魔女結界を出た後で、マミが刹那に尋ねた。
「結界内で放たれていた魔力の波長、
基本が同一特徴の筈の魔女と結界に奇妙なズレを感じました。
魔女退治に慣れている魔法少女では却って分からないかも知れません」
「ええ、一つの結界に二体の魔女、私も初めて経験したわ」
「あっぶなかったー。
あたしなんて、刹那さんにヒント貰っても出遅れてたから、
これで戦ってたの二人だけだったら………」
「確かに、危なかったわね。
貴重な体験だったわ。美樹さんにとっても」
「ああやって、マミさんに見えない所を助けなきゃいけない、
それが一緒に戦う事なんだって」
「魔女と言うのは想像以上にトリッキーな存在です。
だからこそ、パートナーがいるなら、
一人では守り切れない所を補う重要な役割になります」
「はい」
むしろ進んで刹那の言う事を聞く、そんなさやかをまどかは見ていた。
さやかは、思い込みが強い所がある一方で勘はいい。
喧嘩っ早い所がある一方で信義に厚い清々しさも持ち合わせている。
厳しいが、圧倒的な程の強さと戦いの現実を
目の当たりに見せて筋を通す刹那の言葉は、さやかにも届いている様だ。
ーーーーーーーー
「ほな、うちはこれで」
「はい」
「ご馳走様でしたー」
魔女退治も終わり、
見滝原の仮の自宅に戻る刹那と木乃香が分かれる。
「こんにちはー」
「よう」
そんな日暮れ過ぎの路上で、ひょいと目の前に現れた木乃香に、
佐倉杏子が些か不機嫌そうに応答する。
そして、二人は近くの公園のベンチに座っていた。
「さっきも魔女結界で見かけましたなぁ」
「偵察だよてーさつ、風見野も魔法少女が増えてるからなぁ。
けど、マミとあのヒヨッコ、
それにサムライ女まで一緒じゃ出る幕ねーよ」
「さいですか」
「しかし、あの桜咲刹那、おっそろしく強いな。
強いってだけじゃない、とにかく実戦を知ってる。
ヴェテランのマミよりも上かもな。
あいつも、誰かに教えてたのか?」
「んー、そう見えますか?」
「ああ、あいつ、目配りも教え方も、
まあ、素人じゃねーよ」
「それはどうも」
そう言って、木乃香が差し出したのはバスケットだった。
「昼間、マミさん達とお茶会だったんですけど、
元々、アフタヌーンティーは余る程作る、て習慣がありましてなぁ」
「いけすかねぇ」
「要らへんかった?」
「食い物を粗末にする訳ねーだろ。
………旨い」
「おおきに」
「?」
木乃香が、つと、近くの木陰に視線を向ける。
「あら、あなた」
「ゆまっ!」
そこから現れた人影を見て、木乃香の呟きと共に杏子が声を上げる。
「あたしんトコには来るなっつっただろ」
「きょーこ………」
姿を現した幼女、千歳ゆまを杏子が睨みつけ、
ゆまはそれでも杏子を見つめている。
「………食うかい?」
杏子が諦めた様に差し出したサンドイッチに、
ゆまががぶりと食らい付いた。
「美味しい」
「有難う」
ゆまの言葉に木乃香が応じて、二人はにっこり笑い合う。
木乃香の見る所、本当は杏子も満更ではないらしい。
杏子が自販機に立ち、言葉こそ少なくても充実した短いティータイムが終わる。
「ありがとー」
その場を離れるゆまに、木乃香も手を振り返す。
「………知り合いか?」
ゆまの姿が消えるのを待つ様に、杏子が口を開いた。
「最初にこっちに来た時、使い魔に尾行されててなぁ、
知らない内に追い払ろうたからうちの事は知らんと思うけど」
「ああ、あたしもあいつの事を魔女から助けてさ、
それで懐かれたんだ。ウザイったらねーよ」
「そう」
横を向く杏子に、木乃香はにっこり微笑みかけた。
「………あいつ、千歳ゆまって言うんだけど、親に痛めつけられてる」
「何?」
「勝手言うけどさ、お嬢様。
あたしはこんなだ、警察なんかに出入りはし難い。
もし、ちょっとお人好しをしたいって思うなら、
あいつの事、役所にでも伝えてくれないか?」
「………覚えておく」
「サンキュー。飯、旨かったぜ」
「おおきに」
ーーーーーーーー
「遅うなった………」
途中での買い物が意外と長引き、
小走りに駅に向かう木乃香の耳に会話が引っかかった。
「大変大変」
「どうしたんだい?」
「あっちの公園で、小さい女の子が大怪我してるの」
「なんだって?」
「私、スマホ忘れちゃって、あなた持ってない?」
「ごめん、私も忘れたんだ」
恐らく二人共自分と同年代だろうと、木乃香は見て取る。
背が高くスタイルのいい、何処かふわっと上品な少女と、
対照的にボーイッシュで
ちょっと気取った感じにも見える少女の会話を小耳に挟み、
木乃香は駆け出していた。
ーーーーーーーー
「ゆま、ちゃん」
「………」
木乃香が到着した時、
公園の一角に倒れていた千歳ゆまは明らかに危険な状態だった。
「ゆまちゃん、しっかりしてゆまちゃん」
「ん、ん………」
「ケガしてるな、待っててな、すぐに………」
「だめ、なの、おいしゃ………」
「え? ………(この傷)」
ゆまの話を聞きながら、
木乃香は学んだ手順で大怪我をしているゆまの傷を確認する。
「おいしゃさん行くと………
「民生委員」てひとがうちにくるの
ママ…すごくおこるの…だからおいしゃ………」
「分かった、もう少し我慢してな。
ごめんなぁ………」
(これ、すぐに治したらあかんのや。
生命維持確保しながら警察から救急車と児童相談所に………)
蹲る様にゆまを診ていた木乃香が、
スマホを取り出そうとしたその時、後ろ首に衝撃を感じていた。
ーーーーーーーー
見滝原市内、夜の住宅街。
街灯の照らす夜の生活道路で暁美ほむらと桜咲刹那がすれ違い、
刹那が小さく一礼するのに合わせてほむらも小さく頭を下げる。
刹那がぴたりと足を止め、スマホを取り出した。
それに気づいたほむらが振り返り、ぎくりとする。
刹那が一瞬浮かべた壊れた笑みは、
それを見たほむらの心中でほむらの血を凍らせた。
刹那が目を通したメールの本文には、
このスマホの持ち主を預かっています。
………駐車場跡地でお待ちしています
と、書かれていた。
==============================
今回はここまでです>>137-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>146
ーーーーーーーー
「119番に繋がって放置された電話ボックスの側に倒れていました」
「診察の結果、可能性は高いと」
「既に児童委員も接触を始めています、病院から通告を入れてもらえれば」
「一時保護は措置出来ますか? それまで入院の説得はしますが強制力は」
「………お願いします………先生」
見滝原市立病院救命病棟の一角で関係者が協議を続ける中、
観察室のベッドで、幼い急患はぱちりと目を覚ます。
「きょー、こ………」
ーーーーーーーー
「美国織莉子、呉キリカ、近衛木乃香」
麻帆良大学工学部で自分に任された研究室で、
葉加瀬聡美はPCを操作しながらスマホで通話する。
「この三名の携帯位置情報がその工場跡に集まっています。
もっと言うと、………の公園からほぼ一緒です」
ーーーーーーーー
「と、言う事だ。
あからさまに過ぎる、とも言える訳だが」
聡美からの情報と共に、龍宮真名はそうスマホに告げた。
「だが、接点である事に違いはない。
今、他に接点はない」
相変わらずの生真面目な声、返答だった。
ーーーーーーーー
真名との通話を終えた桜咲刹那は、
夜の見滝原の街を猛スピードで動いていた。
それも、街の裏から裏へ。
街の闇に潜む魔を秘かに狩る、
それは退魔師である刹那の元々の在り方。
故に、その闇の内に潜む者あらば………
チリ、ン………
刹那は路地裏で足を止め、野太刀「夕凪」の鯉口を切った。
「貴方の…」
刹那が振り返り様に振るった一刀は、
大振りの刃に受け太刀されていた。
「名前、教えて…」
「京都神鳴流、桜咲刹那」
刃が弾け、双方飛び退く。
「後は、司命神にでも尋ねる事だ」
ーーーーーーーー
呉キリカは、美国織莉子の矛にして盾として、
織莉子の側に控えていた。
織莉子は、駐車場跡地の中心近くに目を閉じて立っている。
キリカはその周辺を警戒する。
全くの空き地である。加えて、近辺に設定したキリカの魔法もある。
今までのあの女のパターンから言っても、
それだけなら初動で不利は無い、キリカはそう踏んでいた。
キリカがそんな、僅かな余裕を思い浮かべた瞬間、織莉子が目を見開く。
そして、織莉子はバッと腕を動かし、
キリカから見て全く明後日の方向に水晶球の群れを放っていた。
(へっ?)
ほんの一瞬、自分の間が抜けた事をキリカは否めなかった。
織莉子が放った水晶球は、何かの力の塊、
漫画的に言えば「気」の様なものの直撃を受けて砕け散り、
そして、水晶球が向かっていた方向から、突如現れた黒い影が跳躍していた。
「こ、のっ!」
しかし、そこはキリカ、即座に自分の存在意義を思い出し、跳躍する。
ずしゃあっ、と、着地したキリカが脇腹を抑える。
受けた一撃がもう少し深ければ、肋骨は確実だっただろう。
「やるやんか」
黒い影は、そのまま黒い学ランだった。
鋭く裂けた学ランの袖に視線を走らせ、ニット帽の小僧が不敵な笑みを見せる。
その時には、織莉子は更に水晶球を放っていた。
(なんで?)
一瞬キリカがそう思う、無の空間に放たれた筈の水晶球は、
直径が広げた腕程もある馬鹿でかく平べったい鉄の塊の飛来で砕け散る。
「!?」
織莉子がザッと飛び退く。
織莉子のいた辺りに、
上空からじゃららっと鎖が降り注ぎ、虚空を拘束する。
「な、に、を、しているっ!!」
ターンッと跳んだキリカの怒号と共に、
織莉子の側でキリカの鈎爪と二刀流の苦無が激突する。
(こんなデカイの、どこにっ!?)
ギリギリと押し合いながら、キリカの心中に混乱が生ずる。
今のキリカの相手は恐らく女だが、それにしてはバレー選手向きの大柄。
それが、たった今まであの学ラン小僧共々影も形も見えなかった。
女、それも多分同年代、
しかも一見してコスプレ忍者と言う格好と今現在の強さから言って
「同業者」と言う目もある、その特殊能力かも知れないが、
テレポートなのかなんなのか、
そこが分からないと、ちょっとまずいかも知れないと、
僅かばかりの焦りがキリカの頭をよぎる。
ギインッと、キリカの爪が苦無を力で押し退け、
更にびゅうんっと一振りされて接近していた学ラン小僧を牽制する。
学ラン小僧は、不敵に笑い身軽に後退する。
(キリカ)
キリカの頭に愛する織莉子の声が響く。
(ステッピング・ファング、全方位に)
(分かった)
キリカがざっと身構え、その目が狙いをつける。
「させるかあっ!!」
=============================
今回はここまでです>>147-1000
続きは折を見て。
そろそろキモいから首吊ってくれない?
乙
ええーっすずねまで絡むの!?
小太郎楓とネギま側も多く参戦してきて混迷としてきたな
感想どうもです。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>150
ーーーーーーーー
「炎舞っ!」
「斬岩剣っ!!」
見滝原の路地裏で、
大量に飛来する炎の剣を「夕凪」の一閃が放つ気が弾き飛ばす。
その時には、桜咲刹那の振るう野太刀「夕凪」は
襲い来る大剣を受け太刀し、弾き返していた。
「剣術は自己流。しかし、斬る事には慣れていますね。
魔女も、人も」
「………人間を斬った事は一度も無い。
恐らく今回が………」
ぼそっ、と、漏れた一言に刹那の唇が微かに緩み、
目にも止まらぬ勢いで距離が詰められる。
ふわっ、と、セーラー服状の上着が翻り、
相変わらず野太刀の物理的限界を無視した刹那の居合抜きが交わされる。
すとんっ、と、刹那の前方に敵が着地する。
一瞬ショートカットにも見える様に長い髪の毛を首の辺りで束ね、
見たまま似たもので例えるなら、黒いショートパンツ・セパレーツ水着の上に
前の開く改造セーラー服の上着の袖だけ通して
カッターナイフ状の大剣を構えている。と言う時点でもちろん非常識な存在。
そして、そのセーラー剣士天乃鈴音は、
もう一つの武器を発動すべくその手を差し出す。
「桜火!」
「秘剣、百花繚乱っ!!」
流石にこの場では、交わすだけでは騒ぎが大きくなり過ぎる。
瞬時に判断した刹那は、
自分に向かって来る猛火を更に大きな「気」で一息に飲み込んだ。
「!?」
一瞬爆発に眩んだ視界の中で、刹那は鈴音に斬り付ける。
「アデアット!」
そして、次の瞬間には、
左逆手に握った匕首で鈴音の大剣の刃を辛うじて滑らせていた。
たんっ、と、刹那が距離を取る。
「匕首・十六串………」
刹那の呪文と共に幾つもの匕首が飛び、
匕首が尾を引く捕縛結界が鈴音を捕らえた、筈だった。
その時には、中に誰もいない捕縛結界を無視した刹那が
振り返り様に夕凪を振り下ろし、その兜割りの一刀を鈴音が受け太刀していた。
ぎいんっ、と、鈴音が弾き返し、後ろに跳ぶ。
そして、刹那の視界からふっと姿を消した。
(やはり視覚効果の魔法を使う、か。
何とか気配は追っているが………!?)
そこに、乱入して来た「もの」があった。
乱入して来たものは複数、それは炎の塊。
よく見ると、箒にまたがった魔法使いの形の炎が
何処からともなく飛来して二人の戦場に割り込んでいた。
(これは、西洋魔法の精霊術っ?)
そして、炎の精霊が四散した戦場に、
額を腕で押した天乃鈴音が僅かばかり苦い顔で照らし出された。
「!?炎舞っ!!」
鈴音が放った大量の炎の剣が飛来する大量の火炎弾と激突し、
火炎弾をすり抜けた剣は炎の壁に遮断される。
「チッ!」
自分に向けて飛来した紐を思わせる炎を、
鈴音が大剣で弾き飛ばす。
そして、自分の側に着地していた新たな敵に向けて駆け出していた。
「!?」
相手は、ゴシック調の黒衣に身を包み、
後ろ髪を一度両サイドにアップで巻いて垂らした同年代の少女。
それを一刀両断しようとした刹那、
鈴音の視界の中で相手の像が揺らいだ。
「炎楯」
そして、振り下ろした刃は相手の掌から現れた炎の壁に妨げられていた。
「陽炎を、炎を扱えるのは貴方だけじゃない」
飛び退いた鈴音がざっと振り返る。
「桜火っ!!」
そして、鈴音の火炎砲が鈴音に迫っていた水の戒矢と激突し、
周囲が即席の霧に包まれた。
その時には、鈴音は、二体、三体、と、
鈴音に迫っていた得体の知れない黒マントの敵を斬り伏せていた。
(………この手応え、魔力で作られた使い魔?)
ーーーーーーーー
「ヴァンパイア・ファングッ!!」
「とっ!」
工場跡の駐車場跡地では、呉キリカが鈎爪を更に連結された長爪を振るい、
キリカに迫っていた学ラン小僧犬上小太郎が危うく飛び退く。
その時には、ぎゅるると迫っていた
巨大手裏剣の軌道をキリカの長爪が何とか反らす。
(キリカッ!)
美国織莉子がキリカにテレパシーを飛ばし、キリカが織莉子の側に戻る。
そこに迫ろうとした小太郎が危うく足を止める。
その時には、織莉子の周囲にはいくつもの水晶球が発生していた。
小太郎と、長身忍者長瀬楓が身構えた時には、
水晶球は織莉子の周囲で一斉に爆発していた。
「通さないよっ!」
「チッ!」
周囲が白煙に包まれ、
織莉子が窓から背後の建物に逃げ込んだと察知した小太郎が後を追うが、
キリカの爪が危うく小太郎の体をかすめる。
「えっ? つっ!」
「相手は俺やろ、姉ちゃんっ!」
キリカが驚いた僅かな隙に、
小太郎の手からいきなり叩きつけて来た強風に煽られて
キリカの背中が建物の壁に激突した。
(消え、た? 気配も無しに?)
キリカは未だ驚きを禁じ得なかった。
この辺にいた筈の長瀬楓がかき消す様に姿を消して気配も感じられない。
確かに、キリカともまともに戦える程に素早い相手ではあったが、
それでもバスケかバレーでもやって欲しいタイプの、
見た目の忍者とは不釣り合いな程のタッパの持ち主。
まだ白煙の残る中とは言え、
キリカが全神経を尖らせていた建物側に突っ込んだなら
幾らなんでも分からない筈が無い。
「続けるんか、姉ちゃん?」
「………とーぜんっ!!」
キリカの優先順位ははっきりしていた。
そんな奴が建物に入ったのなら、一刻も早く後を追う必要がある。
ーーーーーーーー
美国織莉子は、工場の事務所棟の階段を上り、
廊下を走りながら心の中で舌打ちした。
「あんたの用はこのお嬢さんか?」
軽口の様だが、全然笑っていない。
織莉子の視線の先では、
槍を小脇に抱えた佐倉杏子が近衛木乃香を連れて織莉子に殺意を示していた。
「このか殿」
そして、織莉子の背後から現れた楓が木乃香を呼ぶ。
「お仲間か?」
杏子の問いに木乃香が頷く。
「あなたは?」
織莉子の質問には、厳かさすら感じられた。
「ああー、あたしは佐倉杏子。
今は風見野だけど、この辺の鼠の穴にはちょっと土地勘があるからな。
なんでかなー、ゆまと言いお嬢と言い、
どうして、あたしの知り合いばっか手ぇ出してくれたかね?」
ようやく、笑みを見せた杏子は穂先を前に向けた。
次の瞬間、ふわっ、と、織莉子の周囲に水晶球が浮遊した。
「くっ!」
廊下が白煙に包まれ、側の窓ガラスが割れる。
割れた窓から一つだけ水晶球が飛び込んできた。
「逃げやがったか」
窓から下を見て、杏子が吐き捨てる。
楓は、水晶球に潰された紙人形を拾っていた。
=============================
今回はここまでです>>153-1000
続きは折を見て。
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>158
ーーーーーーーー
時計の針を少々巻き戻す。
「………」
がらんとした事務室跡の一角で、
近衛木乃香は小さく嘆息していた。
足首近くに巻かれた鎖は二つの鉄アレイと繋がれ、
連結部を南京錠で止められている。
そして、パクティオーカードは鍵と一緒に部屋の隅の机に置かれていた。
「カードも、って事は知ってるんかなぁ………」
ガンッ、と、不穏な音と共に、入口のドアが開く。
「わざわざ外付けで鍵つけてるんだからなー」
「杏子ちゃん?」
「よっ」
そちらを見た木乃香に、杏子は気さくに声をかけた。
「どうしてここに?」
「ああ、ゆまの奴が報せに来てさ。
ここらの裏道にはちょっとばかし土地勘もある」
「ゆまちゃんが?」
「ああ、助けようとしてくれたんだって? ありがとな」
言いながら、杏子はいとも簡単に鎖を破壊する。
「立てるか?」
「大丈夫」
「食うかい?」
(なんか食べてばかりやなぁ)
杏子の問いに、木乃香は微笑みを張り付かせて応じる。
「あんたさらったの、どういう奴だった?」
「すぐに意識飛ばされてもうてなぁ、何となく覚えてるのは白と黒」
「間違いない、おりことキリカ、ゆまはそう言ってた。
格好から言っても、そっちの人間じゃなきゃ魔法少女だろうよ」
「今、うちに手出してる以上、魔法使いは無いと思う」
「じゃあ魔法少女か」
杏子の問いに木乃香は小さく頷いた。
「これから、ケジメつけるんどすか?」
「ああ、あんたと前の件は貸し借り無しっつっても、
ゆまといいあんたと言い、
あたしの知り合いばっか絡んでるのは魔法少女としてちょっとな。
只魔女を狩ってるだけならとにかく、
近所で薄気味悪い動きされるのも気に食わねぇ」
「ほな、行きますか」
「乗り気だな」
カードを回収し、しゃきっと動き出した木乃香に杏子が言う。
「出来ればそちらさん、マギカで片を付けて欲しい話ですので」
「いいのか?」
「急がないと、血の雨降るかも知れません」
「あー………」
耳障りだけは軽やかに聞こえる木乃香の言葉に、
杏子は記憶を辿り天を仰ぐ。
==============================
今回はここまでです>>162-1000
タイミング的に勝手な縁でお祝い即興してみました。
おめでとうございます。
続きは折を見て。
どすかwwwwどすかってwwwwそんなこといわねえよwwww4んでこいよ
>>165
自分もそう思う、多分木乃香の台詞には無いなと。
原作にあんまりない人間関係で京都弁書こうとしたら
どの辺を標準にしようか迷走しましたですはい
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>164
ーーーーーーーー
しゅるるっ、と、自分に接近していた黒い触手を斬り払い、
天乃鈴音はその源へと跳躍した。
「!?」
霧の残る中、標的を見定め、隙だらけ、と踏んで斬り付ける。
次の瞬間、鈴音の手に硬い手ごたえが響く。
「かはっ!」
腹にいいパンチの感触を覚え、鈴音の足がずしゃあっと後ろに滑る。
前方にいるのは、ゴシック調の黒衣に身を固めた
金髪のお姉さん系美少女。
どうも鈴音が知る魔法少女と言うにはおかしいが、
だからと言って「普通」の範疇ではない。
取り敢えず、触手でパンチされた事は理解出来た。
「陽、ろ………」
とにかく視覚をごまかさなければまずい、何時もやっている事だ、
そう思って実行した鈴音だが、何時も通りにならない。
感覚で察したのだが、
術の基となる炎と水分のバランスが意図的に狂わされている。
「ちっ!」
斜め後方に気配を感じ、鈴音は跳躍する。
やはり黒衣姿の三つ編み黒髪に眼鏡の少女が、
鈴音に向けて拘束性の水魔法を放っていた。
そして、跳躍した鈴音の目の前では、桜咲刹那が
野太刀「夕凪」を八双に構えていた。
鈴音の剣と刹那の夕凪が衝突し、弾け、鈴音は着地する。
「おおおおっ!!!」
迫っていた触手の群れを斬り払った鈴音は、
そのまま一挙に距離を詰め、
触手の源である金髪少女の黒衣の隙間、
その白い肌に魔法で精製した短剣を突き立てた。
その時には、鈴音の右腕には鈍い痺れた痛みと共に触手が這い上っていた。
「これは一体どういう事ですか?」
何本もの触手で鈴音を縛り上げた金髪美少女
高音・D・グッドマンが、首を傾げて刹那に尋ねる。
「キリサキさん」
「何ですって?」
刹那の答えに高音が聞き返す。
「ホオズキ市を中心に何人もの少女を惨殺している連続殺害事件です」
「その犯人が彼女だと?」
「武器、太刀筋から言ってまず間違いないと」
「そうですか。まだよく分かりませんけど放置も出来ませんね。
拘束の上で協会の指示を仰ぎます………」
「!?」
高音が言いかけた時、刹那が手から気弾を放つ。
次の瞬間、飛び込んで来た円盤の様なものが
鈴音を拘束していた触手を切断していた。
「!? 神鳴流奥義、斬岩剣っ!!」
刹那が、自分に迫っていた触手を斬り払い、
間に合わないと見るや触手の群れに向けて奥義を放った。
「きゃああっ!!」
爆発音と共に、もう二人の黒衣の少女、
巻き髪の佐倉愛衣と三つ編み眼鏡の夏目萌が引っ繰り返っている。
(今、一瞬見えたのは、水蒸気爆発?)
「おおおぉーっ!!!」
「何をしているんですかっ!?」
高音の叫びが響き、刹那が気が付いた時には、
刹那が振るった夕凪は高音の黒衣から生じた影のヒレによって
ギリギリと防御されていた。
「いない。メイ、ナツメグッ、キリサキさんの探索をっ!」
「敵はもう一人、恐らく幻術使いです。
深追いは避けて下さい!!」
「分かりましたっ!」
愛衣と夏目萌がそれぞれの魔法で飛翔する。
「高音さん、麻帆良の学園警備が何故ここに?」
「とぼけているのですか? 3Aです」
「3A?」
「ええ、そちらの3年A組が妙な動きを見せたから追跡して来たんです。
この見滝原に入った事は確かなのですが、それ以降は不明。
学園祭、魔法世界………あのクラスが裏で動いている時は、
往々にしてとんでもない事が起きていますから。
それで、あなたは?」
「私は協会の内密の命令で、この辺の不可解事件に就いて
こちらで関わるべきものか予備調査を行っていた所ですが」
「それで、出て来たのがキリサキさんですか」
「キリサキさん一人ならとにかく、
バックアップを考えると追跡した二人が気がかりです。
私は別行動をとりますので高音さんはあの二人を追って下さい」
「分かりました。後でもっと詳しい話を」
ーーーーーーーー
「しっ!」
「とっ!!」
犬上小太郎が呉キリカの剣とも言えるサイズの鈎爪を交わし、
その次の瞬間全身を地面スレスレにした小太郎の足払いをキリカが交わす。
たんっ、と、小太郎が後方に跳躍して距離を取り、
地面から沸いた何頭もの黒狗をキリカが手も無く斬り伏せる。
「この感触、使い魔かい?」
「まあー、そんなモンやなっ!」
そう言った時には、
小太郎は猛スピードで迫っていたキリカの爪を間一髪で交わしていた。
「幾らなんでも速すぎや、
この妙な感触、なんぞズルしてるな」
学ランの首筋に新たな隙間を感じ、
つーっと汗を感じながら小太郎が呻く。
どうも、そのトリック、種が割れない事には、
獣化モードを使う事も躊躇された。
「おっ………」
「神鳴流奥義・雷鳴剣っ!!」
小太郎が到着を察するや否や、駐車場跡地が大爆発した。
「斬岩剣っ! 百烈桜華斬っ!!!」
「いきなり全開やな………」
小太郎がつーっと汗を流して呟いた通り、
キリカは早速にドカンドカンと叩き込まれる壮絶な斬撃を
ガンギンガンッと辛うじて受け流し後退していた。
「ヴァンパイア・ファングッ!!」
キリカが後ろに跳びながら放った、
長く連結された大量の爪が重い一撃を地面に穿ち、
二人がそれを交わした隙にキリカは屋根へと跳躍する。
その追跡に動いた小太郎を、刹那が左腕で制した。
「お嬢様は楓が保護しました」
「おう、そうか」
刹那の言葉に、小太郎がふうっと息を吐く。
「それで、どうしてここに?」
「朝倉さんや」
「朝倉さん、ですか」
又、と言う言葉を飲み込み刹那が応じる。
「ああ、なんか刹那姉ちゃんが色々調べてる関係で、
コノカ姉ちゃんもマギカやらの絡んでるこの街に
ちょっと出入りしてるて聞いてな。
それで、一応俺らもこっちに来てたんやけど、
そしたら、朝倉さんから遅うなっても
コノカ姉ちゃんと連絡がとれんて言うて来て。
それで匂いを辿ったりなんだりかんだりで
あの白黒コンビが最後に絡んでたのは確実て事で」
「ああ、それで合ってる。
そういう事だから楓と合流して麻帆良に戻ってくれ。
お嬢様には、当分こちらに出入りしない様に。
それから、間違っても、
「白き翼」や3Aで秘密部隊を編成してこちらに乗り込んで来る、
等と言う事が行われない様に楓に釘を刺しておいて下さい」
「それで、刹那姉ちゃんは?」
「もう一仕事残っているからな。折を見て連絡する」
過去には割と色々修羅場をくぐって来た犬上小太郎は、
その事務的な言葉を、奥歯ガタガタ言い出しそうな心地で聞いていた。
==============================
今回はここまでです>>167-1000
続きは折を見て。
乙
うーむ 基本的に個人な魔法少女が対抗するには
3-Aは組織として強すぎるなww
とはいえ刹那以外は撤退か
自演乙
感想どうもです。
やらかした………
ここまで何度も使った「シーカ・シシクシロ」の漢字
「匕首・十六串呂」の「呂」が全部抜けてた………
完全に私のミスです、すいません。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>172
ーーーーーーーー
薔薇の花咲く夜の庭園。
麻帆良学園の夏服制服姿で無言で歩みを進める桜咲刹那は、
今、彼女が手にしている野太刀「夕凪」の
鞘の内にも等しく隠し切れぬ冷たい切れ味を漂わせる。
そんな刹那の周囲で、景色が急変する。
(これは………魔女の結界か)
「神鳴流秘剣・百花繚乱っ! 奥義・斬岩剣っ!!」
刹那が夕凪の鯉口を切ってから、
再び鞘に納め周囲に薔薇の花を見るまで。
刹那にとっても客観的にも、
それはするりと通り過ぎた一つの流れにしか見えないものだった。
「あら、片づけてくれたの?」
「匕首・十六串呂」
余りの勢いに結界を飛び出して
庭園のテーブルに落下した鉄の塊を思わせる魔女の破片を眺めて
庭園の主が声をかけた時には、
複数の匕首が猛然と空を切っていた。
自分達へと飛来する何振りもの匕首を前に、
美国織莉子はタッ、と横っ飛びし、
呉キリカは剣にも等しき大きさの鈎爪で弾き飛ばす。
その時には、庭園内の別の場所が爆発と共に白い煙に包まれ、
更に違う場所で、刹那は夕凪の刃を大きな水晶球に兜割りに叩きつけていた。
「な、に、を、しているっ!!!」
刹那は振り返り様、
猛然と自分に迫っていたキリカの爪の斬撃を夕凪で受け流す。
(下がってっ!!)
織莉子の脳に、叩き付ける様なテレパシーが流れ込む。
(こいつは、ヤバイ)
夕凪と鈎爪がチャンバラを展開する。
「私には、分かる………」
キリカがぼそっと呟く。
(だから、ここは私に任せて)
ガン、ギン、ガンッ、と、
夕凪と鈎爪がぶつかりながら相手を追跡し、詰め、それを交わしての攻防は、
丸で庭園内を竜巻が吹き千切る様だった。
「神鳴流奥義、斬岩剣っ!」
「うわっ!」
刹那に迫ったキリカが、刹那の剣が巻き起こす「気」の、
それに伴う地面の爆発に足を止める。
「斬岩剣! 斬岩剣っ!」
「とっ、わっ!」
その後も、キリカが迫る度に二人の間を爆発が塞ぎ、
それは丸で、キリカの目の前に土の壁が次々と現れているかの様だった。
「神鳴流秘剣・百花繚乱!
斬岩剣、斬鉄閃っ!」
キリカが桜華と共に突き抜ける「気」を交わした時には、
刹那は既に目の前に迫っていた。
ドドンッ、と、庭園を揺るがす勢いで、
幾つもの気の塊がそこここで爆発し、
アクロバティックに交わし続けるキリカだったが、
「お前」
低い声の方向に刹那が一刀を振るうが、それは鋭く空を切る。
「どこで、何をしている?」
「くっ!」
刹那が斜め後方に刀を振るう。
そして、刹那はブラウスの袖に鋭い裂け目を見た。
「織莉子に殺意の刃を向け、
織莉子が愛する父親の薔薇をここまで踏み躙った」
刹那の目の前で、キリカは伏せていた顔をすうっと上げて、
一筋の流血と共に頬に走る紅い傷を露にする。
「お前、もう、許されないよ」
「アデアット!」
次の瞬間、キリカの両手首辺りから延びる、
柄まで刃の鎌型武器とでも言うべき鈎爪が
刹那の右手の夕凪と左手の匕首に受け止められる。
「次、次次次次い、っ………」
興に乗って攻撃を展開していたキリカが、たっ、と飛び退く。
匕首を分裂させて放った捕縛結界がボウズに終わった、
と、悟った瞬間には、刹那は匕首を仮契約カードに戻していた。
「斬岩剣っ! 百烈桜華斬っ!!!」
「人が変わったのかな、刀使い?」
その場から飛び退き、荒い息と共にキリカが言った時には、
キリカは既に横殴りの斬撃を交わしていた。
「技のキレ、何よりも殺意が尋常じゃないね」
そう言ったキリカは更に飛び退き、
流血する左腕を右手で掴む。
「元々、私の任務はお嬢様の護衛。
意図してお嬢様に手を出そう、等と言う事は、
発想から根絶やしにする必要がある」
チャッ、と、切っ先を前方に向けた刹那は、
次の瞬間には斬り付けた一撃を
×字に組んだ両手の鈎爪に受け止められていた。
「君は、人を斬る事が出来るのかい?」
「先程、キリサキさんとやらに遭遇した」
刃が弾け、双方の間合いが開く。
「彼女は言っていたよ。
自分は人間を斬った事は一度もない、とな」
「ふうん」
にまっと笑ったキリカは、
普通に見たら容易に膀胱から尿道までがフルオープンになりかねない
刹那の眼差しを視界にとらえながら、
自分をかすめる野太刀の突きをすれすれに回避する。
「それなら私のやるべき事もはっきりしてる。
この身に代えて、ここから先には
永久に一歩も進ませない、とねっ!!」
ダッ、と、間合いを詰めたキリカを刹那が間一髪で交わし、
キリカの鈎爪が目の前の薔薇の茂みを一撃する。
「神鳴流奥義・百烈桜華斬っ!!」
キリカは後ろに跳びながら、
空中に大量の桜と薔薇が舞い散るのを目の当たりにする。
「又、君の罪が増えたみたいだね刀使いっ」
「斬鉄閃っ!!」
「ああぁあーっ!!! もう、っ、許、さないっ!!!」
一段とスピードを増したキリカの攻撃を、
刹那は夕凪を振るい交わし続ける。
「こ、のおっ!!!」
キリカの爪が薔薇の茂みを払い、
とっさに身を低くして交わした刹那がそのまま横っ飛びに逃げる。
「(バランス崩した?)もらったっ!!!」
跳躍して一撃したキリカの鈎爪を刹那は地面を転がって交わし、
振るわれた鈎爪が地面を抉る。
そして、キリカは、目を見開いた。
「い、っ、な、に? ………」
キリカの両足の裏、片膝をついた右の脛に、激痛が走っていた。
「薔薇、の、棘? まさ、か? あああっ!!!」
地面に散乱する残骸と左前方に低くにじり寄っていた刹那を発見し、
振るった爪を交わされたキリカは叫び声を上げていた。
そのキリカの左の腿には、薔薇の枝が束で突き刺さっている。
「この、威力、武器強化の、魔法?」
「只の「気」だ」
「漫、画みたい、薔薇の棘も、それで………」
キリカは飛び退いて距離を取るが、何時も通りとはいかない。
「神鳴流秘剣、風塵乱舞」
「くそっ!!」
痛みもあり、対処する間もなく、
ほぼ目の前から容赦なくキリカの顔を狙った大量の薔薇の枝は
顔の前で×字に交差したキリカの腕に突き刺さる。
「くそっ、おおおお、っっっ!!!」
その時には、キリカの右足を夕凪の鞘が払い、
その鞘はそのままキリカの右の脛を一撃していた。
そして、立ち上がろうとしたキリカは目の前に夕凪の切っ先を見る。
「薔薇の棘で全身バラバラって、悪趣味だね。
そんなに、君を怒らせたかな刀使い?」
次の瞬間、夕凪の鞘がキリカの横っ面を直撃した。
「
………このちゃ………私への人質として、
このかお嬢様の身に危害を加えた。
………貴様………
楽 に 死 ね る と で も 思 っ た か ?
」
にいっと笑ったキリカの腹に、鞘の底が叩き込まれる。
「と、言いたい所だが、私も急ぐ身だ。
貴様の飼い主美国織莉子の居所を吐くか
ここで本当にバラバラにされるか、今すぐ………!?」
次の瞬間、キリカの姿を見失いタンッと後ろに跳躍した刹那は、
流血する左腕を握っていた。
「くっ!」
辛うじて振るった一刀が、ガキンと攻撃を弾き飛ばす。
「(スピードが上がってる、だとっ!?)
斬空掌・散っ!」
「無駄無駄無駄あっ!!!」
周囲に気弾を放った刹那は息詰まる感覚と冷汗を感じながら、
周囲の激しい動きに対して自らの動揺を鎮め、
一刀両断に刀を振り下ろす。
「惜しい」
刹那の眼前で、キリカがにまあっと笑う。
「まさに、チャンスは前髪、だね。
さあもっと、もっともっと私に見せてくれよ。
君の、愛の形を。君は、私の魂の姉妹なのか!!」
額から流れる血を腕でぐいっと拭うキリカの前で、
刹那は紐の切れたサイドポニーから流れる自らの黒髪に
僅かばかりの鬱陶しさと恐怖を覚える。
「そのケガにそのペースだと、何分、いや、もう何秒も身が持たない。
だからと言って、スピードを緩めたら私の剣の餌食。
どちらにしろ貴様は詰んでいる」
「結構」
刹那の警告に、キリカは目を見開いた。
(更にスピードをっ!?)
野太刀の長い刃が、
キリカの攻撃を見切って複数の鈎爪をギリギリと防御する。
「がああっ!!」
刹那が鈎爪をキリカごと力任せに弾き飛ばす。
それだけでも、想像もしたくない激痛の筈だ、と、刹那は察する。
「
結構だ!
たかだか私が死ぬ程度で私のすべてが守れるなら
大いに結構!
」
一際速い一撃を、刹那が夕凪で受け流す。
「お、おお………」
「もう一度だけ聞く………」
「質問は受け付けない。
私に対するすべての要求を完全に拒否する!」
「(あの痛みの中、最早壊れている、か)
………残念だ………」
刃が、交わる。
ぎゅるんっ、と、鈎爪に絡まれた夕凪が宙を舞った。
「(もらった)あ、ああ………」
そして、気が付いた時には、
刹那に渾身の一撃を斬り付けたキリカは低く空を飛んでいた。
「あああっ!!!」
そして、コントロール不能のまま薔薇の茂みに全身突っ込む。
(合気道か何か? 自分の力をそのまま流された。
刀を囮にそれを待っていた。
剣だけじゃないとは思ったけどここまで………)
キリカが体勢を立て直そうとした時には、
刹那は目の前まで迫っていた。
(空手?)
武術の、ではなく、キリカの目には武器が見えなかった。
「アデアット」
ガサッ、と茂みが鳴り、
刹那の右手から突如現れた匕首は、
次の瞬間刹那の手に肉を抉る鈍い感触を伝えていてた。
==============================
今回はここまでです>>175-1000
続きは折を見て。
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>184
実戦居合で狙うのは血脈。
抜き打ちの長匕首を
闇雲に相手の胴体に刃を叩き込んでしまったと察した時点で、
桜咲刹那はそのまま相手の血肉を切り裂き刃を振り抜いた。
「あ、あ………あぁあーっ!!!!!」
既に衣装の純白を見た目の半ばも赤く染め、
よろりと後退した美国織莉子の背後から絶叫が聞こえた。
「匕首・十六串呂っ!!!」
仕留めた、と、思った所からの齟齬は僅かにでも焦りを産む。
ここしかない、と言う一撃必殺であれば尚の事。
大きく跳躍した呉キリカが、織莉子と刹那を飛び越え着地する。
その時には、振り返った刹那の周囲を分裂した匕首が舞い、
「………あ………」
完璧なタイミングで刹那とキリカの間に滑り込んだ織莉子の全身に、
一斉に飛翔した匕首が突き刺さった。
「お、りこ………」
キリカの呻きを聞きながら、刹那も血の気が引く心地だった。
アーティファクトの長匕首本体、
その刀身は織莉子の胸に深々と吸い込まれ、
匕首を握る刹那の右腕は織莉子の両手にがしっと掴まれていた。
「キリカ………早く………キリカッ!!!」
刹那は、既に負わせたキリカの重傷の効果を僅かばかり祈ったが、
文字通り血反吐を吐いた織莉子の叫びの前にそれが無駄である事も悟っていた。
「!?」
上空から、予想外の金属音が響いた。
刹那がそちらを見ると、大跳躍したキリカが、
巨大な手裏剣を鈎爪で弾き飛ばしている所だった。
着地したキリカが、ガン、ギンガンッ、と、何者かと素早く攻撃を打ち合う。
「楓かっ!?」
刹那の叫びに、両手に大型苦無を握った長瀬楓が糸目を軽く笑わせる。
着地したキリカがテレパシーを受信して、目を見開いた。
「は、やく………早くっ!!!」
織莉子の叫びと共に、キリカが走り出した。
先程、魔女の破片に破壊されたテーブルに走り、
ぱしっ、と、グリーフシードを拾うと、その場を一目散に逃げ出す。
楓がその後を追跡した。
ーーーーーーーー
到底瀕死とは思えなかった手の力が緩み、
刹那は織莉子の胸板を思い切り蹴り付け匕首を引っこ抜いた。
「美国織莉子」
血塗られた切っ先を向けながら、
その場に両膝を着いた織莉子に声をかける。
「何故、この様な事をした?」
刹那の怜悧な問いに、織莉子は静かに微笑んだ。
「わたしの世界をまもるためよ」
「そうか………」
すっ、と、切っ先を前に右腕を脇に引いた刹那は、
茂みの音に振り替える。
「お、俺や俺」
割と本気で命が危ない事を予感しながら、
引きつりを隠した声で小太郎が言った。
「どういう事だ? お嬢様はっ?」
「だ、大丈夫やっ!」
今度こそ本気でチビリそうな叫びを聞きながら、
小太郎は慌てて返答する。
「大丈夫、ちゃんと安全な場所にいる。
それより、ちょっとまずい」
「ん?」
「少し派手に暴れ過ぎた、警察が本気出してる。
近場でもかなりしつこく動いてるらしいわ。
急いでここ離れないとまずいて」
「分かった」
返答した刹那は、既に仰向けに倒れ込んだ織莉子を一瞥すると、
アーティファクトで助かったと思いつつも
一度血振りをしてから匕首をカードに戻す。
「………悔、しい………なぁ………」
ーーーーーーーー
(魔女魔女魔女魔女魔法少女でもいいどこかにいないかいないかいないか
魔女よ魔法少女よ私の愛のため私の無限に有限な愛のため
グリーフシード寄越せえぇぇぇぇぇっっっっっっっっっ!!!)
このハイペースでは気休めにしかならない浄化を根性で繋ぎ、
呉キリカは疾走する。
とある公園にたどり着き、魔女の結界に滑り込む。
「邪魔あっ!!!」
そこで、魔女が作った袋に全身呑み込まれるも、
その袋を鈎爪で一撃で切り裂き、転倒する。
(自分の、血。あー、かなり、キテ、る………)
いかに魔法少女でも、自分の流血に滑って転倒して、
認識が現実に追いついたのが精神的に響いて来る。
そんなキリカの上空を、どう見ても手で投げるサイズではない
でっかい手裏剣が飛行し、目の前の魔女をぶった斬った。
「これが、魔女でござるか」
背後の声も気になるが、今はとにかくグリーフシードを回収し、
自分のジェムに当てる誘惑を壮絶な意志力で振り切ってしまい込む。
「あの、刀、使いの、仲間だな………」
「で、ござるな」
「!?」
キリカの目の前で、ぶわっ、と、人数が倍々ゲームに増加した楓が
一斉にキリカに襲い掛かった。
「い、いやいや、分身の、術?」
辛うじてその第一陣を凌いだキリカが息を切らせて言う。
「効いてるで、ござるかな?」
そう言いながら、印を組んだ楓は又、
横に分身を始める。
「ふぅー、ん………面白バカみたいっ!」
叫びと共に、キリカの両腕からは今までに増して、
何本もの鈎爪が鋭く飛び出した。
「………一手で十手だ………」
次の瞬間、両腕から大量の鈎爪を伸ばしたキリカの前で、
どおんと煙玉が爆発した。
「小細工を………」
キリカが、自分に迫る何人もの楓の気配を捕らえた。
「さあ、散ねっ!」
キリカが生やした大量の爪が、
一斉に襲撃を掛けた楓の姿をまとめて切り裂く。
(この、手応え、って事は………)
とん、と、背中を押す感触がキリカの心に戦慄を呼ぶ。
「本体、って、奴? ………」
「で、ござるな」
背後から重い「気」を振動的に撃ち抜かれ、
前のめりに倒れ込んだキリカの手は、
その身を起そうとして血だまりに滑る。
自分の瞼の重さを、キリカの最後の理性が叱咤していた。
「(………私は、まだ………絶、対に………)
………織、莉子………」
==============================
今回はここまでです>>213-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>217
ーーーーーーーー
「織莉子っ!!!」
「気が付いたでござるかな?」
ガバッと跳ね起きた呉キリカが感じたのは、
穏やかな声と畳の香りだった。
「お、前っ!」
「ニンッ!!」
ーーーーーーーー
「取り敢えず、穏やかに話をするつもりになったでござるかな?」
「うん、と言ったら解いてくれるのかい?」
「そうでござるな。多少の痛み止めはしたとは言え、
その傷で今動けば手足が物理的にバラバラになるでござるよ」
「ああ、手当をしてくれたんだね。ありがとう。
ソウルジェムも無い真っ裸じゃ仕方がないか」
鎖を解かれたキリカが首を鳴らして言った。
和室に敷かれた布団でしっかり休んでいた自分。
今までの記憶と照合すると、頭が不具合を起こして馬鹿笑いしたくなる。
「ソウルジェムとやらはあちらにあるあれでござるな。
出血がひどかった故、元の服は今洗濯して乾燥中でござる」
「そう………恩人は、あいつ、桜咲刹那の仲間なんだろう?」
「そういう事になるでござるな」
「あいつに引き渡す?」
「いいや」
「じゃあ、着るものが欲しい。今すぐに。
すぐに織莉子の所に、急がないと、愛が、死んでしまう………」
「それは、大丈夫でござる」
「なんだって?」
「大丈夫でござる」
目の前の糸目ののっぽは大柄な事もあって雰囲気に頼りがいがある。
本当ならばパニックになっている自分を容易に想像出来る状況で、
キリカは妙な安心感を覚えていた。
「ねえ、私に何か変な薬でも飲ませた?」
「即座にショック死してもおかしくない状況でござったからな。
鎮痛剤に当たる薬湯を少し強めに含ませたでござるが」
「その、せいかなぁ。
君は敵で私の愛が死にかけている筈なのに、
言葉一つを何故か信じてもいい気がする」
「光栄にござる」
穏やかに微笑む楓を前に、
キリカはふうっと息を吐く。
「桜咲刹那………見抜いてたのかな」
「ん?」
「薔薇の棘、合気、隠れ居合抜き。
あれだけの剣の使い手、
何て言うか、凄い正統派の武術をやってるって私にも分かる。
それが、ギリギリまで手の内が分からない、
凄くトリッキーで卑怯なぐらいの攻撃を連発して来た。
私が言うのもなんだけど、プライドはないのか、ってぐらい」
「刹那は誇り高き剣士でござる」
「だろう!」
「そして、その剣を何のために使うか、
何が大切なものであるかを知り、
それを守るためには、己すらも只一振りの剣と化す。
剣はそのための道具に過ぎない。
それが刹那でござる」
「………………」
キリカは天を仰ぎ、布団に背を着けた。
「明日には一応の決着がつく。
それまで少し、身を隠すでござるよ」
ーーーーーーーー
「生き、てる?」
薔薇の庭園で、半身を起こした美国織莉子に
水干姿でしゃがみ込んだ近衛木乃香が小さく頷いた。
「あなたが、私を助けたと言う事?」
「そういう事になりますなぁ」
白扇で口元を覆い、木乃香は答えた。
「どうして?」
「せっちゃんに人殺しさす訳いかんからなぁ。
だから
」
木乃香は、閉じた扇の先を織莉子に向け、
すっと立ち上がる。
「せっちゃんはあんたらには絶対負けへんし、
だからと言うて、次にうちに手ぇ出したら、
うちに関わる勢力が総力挙げて
草の根分けても探し出して八つ裂き言う事になりますえ」
木乃香の言葉に、織莉子はくすっと笑みを漏らした
「ごめんなさい、真面目に聞いてるけど、
お上品な素振りで臆面もなくバックを出して来たわね」
「守らなあかんものがありますよって。
そのためなら、使えるものは何でも使います」
「そう」
ふっ、と、力を抜き、織莉子は静かに立ち上がる。
「桜咲刹那、あなたにとってそれほど大事な存在なのね。
あなたは恐らく生粋のお嬢様。
本来、それを誇示し振り翳す事を潔しとしない程に。
そして、そんなプライドを些細と切り捨てられるぐらい、
彼女はあなたにとって大切な存在」
そう言って、織莉子はふっと笑った。
その目の前で、木乃香はとろける様にはんなり微笑み頷いていた。
「肝心な事がまだだったわね」
「肝心な事?」
「命を助けてくれて、ありがとう」
「どういたしまして」
「まして、あなたを攫った私を」
「おおきに、それもうちのためですよって。
もう一度言いますけど、次はありまへんえ」
「それならば、灯しなさい」
二人は、真顔で向き合っていた。
「あなたの、その光で、桜咲刹那の道に陽を灯しなさい。
キリカを探さないと、絶対に無茶してる。
急ぐのに、体は治っても今、精度の高い………」
焦りを見せる織莉子の前で、木乃香はにこにこ微笑んでいた。
× ×
「夜が明ける………」
佐倉愛衣が、ホオズキ市の住宅街の一角で呟く。
「完全に見失った………一度お姉様達と合流して………」
ドンッ
「あ、ごめんなさい」
「………大丈夫………」
曲がり角を曲がろうとして人対人の衝突事故を起こした愛衣が、
身を起こしてすーっと首を動かす。
「ちょっと待って!」
愛衣の叫びに、天乃鈴音が足を止めてくるーりと後ろを向く。
そんな鈴音の前に、愛衣がさささっと回り込んだ。
「待ちなさいっ! キリサキさん、見つけました………」
「邪魔」
「え?」
「仕事中、みんな待ってる」
「あ、ああ、ごめんなさい………じゃ、なくってっ!!」
愛衣が、新聞の束を抱えてタッタッタッと走り去る鈴音の後を追う。
曲がり角を曲がった所で、
タッタッタッと通り過ぎる鈴音の側で
愛衣はきょろきょろ周囲を見回していたが、
その唇は薄く笑っていた。
「アデアット」
鈴音の姿が見えなくなった辺りで、
愛衣は魔法具であるオソウジダイスキ、
簡単に言えば空飛ぶ箒を取り出してその場でふわりと浮遊した。
ーーーーーーーー
見滝原の仮住まいであるアパートに戻った刹那は、
浴室でシャワーを浴び、ぐっ、ぐっとその手を拭っていた。
ふうっと嘆息してから浴室を出て、
体を拭った辺りで音に気が付く。
それは、「最重要」を示すものだった。
「こ、これは学園長、この様な時間にっ!!」
スマホで電話を受けた刹那は、
その場で深々と頭を下げる。
「こ、この度はこのかお嬢様を、私がいながら、
何と申し上げて………」
「うむ、その事も関連してじゃが………」
「………積極的攻撃をやめろ、と?」
「色々と事情は聴いたが、
元々はこちらが魔法少女のテリトリーに割り込んでの事。
このかには当分そちらに近づかない様にその辺りの事も注意しておいた。
無論、この件に就いては刹那の非ではないと、重々理解した上の事じゃ。
故に、そのままそちらで元の任務に戻る様に」
「ご温情、感謝いたします。
美国織莉子、呉キリカをこちらから攻撃する事はやめて
見滝原での元の任務に戻る様に、と言うご指示ですね?」
「そういう事じゃ、引き続きよろしく頼む」
==============================
今回はここまでです>>218-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>224
ーーーーーーーー
「間違いないのですね?」
ホオズキ市内で佐倉愛衣に合流した高音・D・グッドマンが確認する。
「はい、あの新聞販売店に。どうやら住み込みの様です」
「そうですか。キリサキさんの動きは夜間、それを待ちましょう」
高音の言葉に愛衣と夏目萌が頷き、踵を返す。
「夕凪新聞、ですか………」
こうして場所を把握した後、愛衣と高音、夏目萌は、
近場のファミレスでモーニングを頼んでいた。
「配達中を見つかったって事は、逃げ出さないですかね?」
「多分………ないと思う」
萌の言葉に、愛衣が言う。
「根拠は?」
高音が尋ねる。
「彼女は、私に見つかってからも淡々と新聞配達を続けていました。
もっと言うと、桜咲さんや私達に面が割れても平然としています。
念のため、認識阻害を張った上空から彼女の帰りを待っていましたが、
取り敢えず普通に戻って来ています。
とにかく、ネットなんかで確認したキリサキさんだとするなら、
彼女、普通じゃないです」
「キリサキさんが普通だったら困るけど」
「普通だから普通じゃない」
萌の言葉に愛衣が真面目に答える。
「つまり、キリサキさんが全く普通に新聞配達の勤労少女をしている、
と言う事ですね」
「そうです」
高音の答えに愛衣が頷く。
「だから、印象ですけど、
これから「普通」を捨てて逃げ出すとは考えにくい」
「そうですか………メイ」
「はい」
「あのキリサキさんの実力、どう見ましたか?」
「魔法のスペックは高い。
だけど、術師の練度が何処か追い付いていない。
剣士が外付けの魔法具で強力な魔法を使っている、
そういう印象でもあります」
愛衣の言葉を、高音は黙考して聞いていた。
「協会には?」
「少し待ちます」
萌の問いに対する高音の答えは、
二人にとって少々意外なものだった。
「何か、嫌な感じがします。
3Aや桜咲刹那も、私達が全く預かり知らない所で動いていた。
思い過ごしならいいのですが、キリサキさんの被害は看過出来ない。
この一日二日に限っては、私達は個人的に行動します。
そして、偶発的にキリサキさんを確保して、
それから協会の指示を仰ぎます」
ーーーーーーーー
魔法使い、魔法少女、結構な激動の夜が終わり朝が来て、
一部に例外はあったものの、
その後に続いたのは至って平凡な学校生活だった。
「美樹さんですか?」
「ええ」
放課後、夕暮れ過ぎに、
スマホを使っていた巴マミと桜咲刹那が言葉を交わす。
「元々、上条君のお見舞いの後で合流の予定だったけど、
ちょっと予定が変わってこっちには来られないって」
「そうですか」
かくして、この日は二人で魔女退治の散策を開始する。
ーーーーーーーー
「おや」
「あっ!」
夜、自宅を飛び出しそのまま走り出した鹿目まどかは、
それから程なく桜咲刹那と遭遇していた。
「どうしました?」
「さ、さやかちゃんがっ!!」
ーーーーーーーー
「一体何をしているんですかっ!!」
高速道路上の跨道橋に、
下の走行音にも負けない大喝が響き渡る。
「救兵衛におよその事は聞きました。
それが、一度は私に剣を教わろうとした者の行動ですかっ!?」
「刹那さん、ごめん………」
既に魔法少女姿で槍を担いでいる佐倉杏子の側で、
制服姿の美樹さやかが目を反らす。
「駄目だよさやかちゃんっ」
「いいでしょう」
まどかが先にさやかに駆け寄る中、
刹那は、野太刀「夕凪」を無造作な程に抜き放ち、
切っ先を前に向けて歩き出す。
「荒稽古を付けましょう。
あなたには過ぎた玩具を弄ぶその性根、叩き直します。
五体満足で帰れるとは思わないで下さい」
「ヒュウッ」
「さやかちゃん謝ってっ!!」
大真面目にザシザシと迫る刹那の姿に、
杏子が口笛を吹きまどかが悲鳴を上げる。
まどかも知っている、刹那の剣には嘘も冗談も無い事を。
しかも、今の刹那には大真面目に加えて何処か不機嫌な気配がある。
そして、さやかの気性もまどかにはよくよく分かっている。
「ごめん、まどか。
刹那さん、これだけは譲れないんだ。
止めたいなら………」
「さやかちゃん、ごめん!」
まどかが、光り出したソウルジェムをさやかの手から奪い取る。
そして、跨道橋から下の高速道路へと投げ捨てた。
「チッ!!」
即座に刹那が駆け出し、高速道路へと飛び降りる。
「任せて」
そこで、刹那は一瞬だけ、真横に暁美ほむらの姿を見た。
「………あれ? ………」
刹那が戻った時には、
跨道橋の床に横たわっていた美樹さやかが、
鹿目まどか、佐倉杏子、暁美ほむらに囲まれて
目を覚まし身を起こしている所だった。
「………つまり、ソウルジェムは魂の器で、
百メートル以上離れたら肉体から魂が離脱して死亡した状態になる。
そういう話をしていた、と言う事ですか?」
「そういう事になるね」
「あんた、冷静だな」
「多少、場数を踏んでいると言うだけです」
杏子の言葉に、刹那が応じた。
「とにかく………」
コメカミに指を押し付けたほむらが口を挟む。
「この事を巴マミに話すのは少し待ちましょう」
「そうですね。
今のこの状況を見ても、彼女にしても相応のショックはある筈です」
「そうだね、正直ショックと言うかなんと言うか」
刹那の言葉に、さやかが乾いた笑いと共に言って立ち上がる。
「あなたも、落ち着くのは難しくてもこれ以上短気を起こさないで下さい。
あなたが、得た力で人を助け、
様々なものをもたらした事は確かなのですから。
折を見て少し話しましょう」
「うん。今はちょっと、帰らせてもらうわ」
さやかが、ぎこちなく笑みを浮かべながらぎくしゃくと動き出す。
「まどかさん、彼女をお願いします」
「うん。一緒に帰ろう」
「うん………」
「あー、あたしも帰るわ」
かくして、三々五々解散して行く。
最後に残った刹那が、ぽつりとつぶやく。
「………それでも、終わる道がまだ残っている」
ーーーーーーーー
チリ、ン………
「貴方の名前…教えて?」
夜のホオズキ市内。何時もの魔女探索のパトロール中、
魔法少女詩音千里は路地裏でその声を聞いた。
「教えて…貴方の名前」
「…答える義務はないわ」
「そう…残念ね」
「伏せてっ!!」
千里は、突如割り込んだ怒号に従った。
「くっ!」
ぶおっ、と、周囲の地面に一瞬燃え立つ火線が走り、
そのまま蛙飛びした千里は、振り返り様に魔法拳銃を発砲する。
「紫炎の捕らえ手っ!」
「桜火っ!」
横を向いた鈴音は、飛んで来た炎の捕縛魔法を
剣から放った炎で呑み込む。
「火の9矢!」
「炎舞」
「風楯っ!(手数が多過ぎるっ!)」
上空から監視していた箒から飛び降り、介入した愛衣は
鈴音が放った大量の炎の剣に攻撃魔法を相殺され、
更に斜めに降り注ぐ炎剣に対して防御を張る。
「エルサルマ………風楯っ!!!」
愛衣が次の魔法を放とうとした時には
鈴音はごうっと迫っており、
鈴音が振るう大剣を愛衣は防御魔法で、
更に魔法の箒オソウジダイスキで受け流す。
鈴音がぶうんっ、と、剣を大きく横薙ぎし、
大きく飛び退いた愛衣が胸元を抑えた。
(かなり、硬い………)
(黒衣でなければ真っ二つね)
詩音千里は、
肌面積の大きな水着にセーラー服マントと言うのが近い大剣の少女と
巻き髪に黒衣姿で箒を振るっている少女の争いを油断なく見ていた。
当初は割り込んだ黒衣をセーラーマントが凌ぐ形で、
今は灰色のセーラーマントが押している。
千里の見た所、黒衣の攻撃距離は遠距離、
対して、セーラーは遠距離も使えるが基本が剣士タイプ。
黒衣はセーラーマントの距離に捕まってしまい防戦一方。
そうなると、こちらも遠距離タイプの千里も迂闊に介入出来ない。
どうもあの黒衣が異常に堅牢らしく、
そうでなければ一度や二度はグロ画像を見ていた頃だ。
「チサト、大丈夫っ!?」
「良かったっ!」
望んでいた近距離の到着に千里が叫んだ。
「あっちの灰色が多分、キリサキさん。
かなりの剣の使い手で遠距離の炎も使うから、
第一は捕獲、手に余るならって事でお願い」
「オッケーッ! 行くわよこの変態キリサキ魔っ!!」
鈴音の視線が動いた一瞬で、愛衣はタンッと飛び退き、
突入した千里の魔法少女パートナー
成見亜里紗の大鎌の柄が鈴音の剣と激突する。
「えっ?」
「紫炎の捕らえ手っ!」
「チッ!」
亜里紗が鈴音をぶち抜いた、と思った鎌が空を切り、
その側で、正確に鈴音を狙った捕縛魔法を
炎をまとった鈴音の剣が叩き落す
(キリサキさんは幻術の様なものを使ってる?
だけど、黒い少女は恐らくそれを見抜いてる)
千里が推測する間にも、亜里紗と愛衣の即席コンビは、
特に打ち合わせるでもないまま割と効果的に動いていた。
「メイプル・ネイプル・アラモード………」
「炎舞………」
「紅き焔っ!!」
「よっしゃあっ!!
鈴音が放った大量の炎剣を空を舐める火炎が呑み込み、
その後から亜里紗が突撃して剣と鎌の柄が衝突する。
その間に、地面に幾筋かの火線が走り、周囲を照らす。
(今度こそ………)
「かはっ!!」
一瞬不愉快気に眉を動かした鈴音は、
下から振られた鎌の柄を腹に打ち込まれ、
咳き込みながら足を後ろに滑らせた。
「もらったあっ………」
「桜火っ!!」
「のわっ!!」
トドメとばかりに大振りに振り被った亜里紗を強力な火炎魔法が襲い、
亜里紗は慌てて身を交わす。
「くっ!」
そのまま愛衣に駆け寄ろうとした鈴音が、ステップを始めた。
鈴音の前方では、愛衣がステップを踏みながら
鈴音の足元を狙って次々と速射の火炎弾を撃ち込んでいる。
「狙いは分かるけど、ちょこまかウザイ………」
今すぐにでも背中に鎌を叩き付けたい亜里紗が
的を絞れない苛立ちを口にする。
「桜火っ!」
「風楯っ!!」
それでも鈴音が発動した巨大な炎を愛衣が防御し、
その間に迫っていた鈴音の一刀を、
愛衣がバーベル持ちした箒で受ける。
「らあああっ!!」
その間に背後から亜里紗が迫っていたが、
一瞬早く動いた鈴音の剣が
ぶうんと横薙ぎに亜里紗を牽制する。
(いけるっ!!)
詩音千里が、魔法拳銃を構えた。
「正義の使徒、高音・D・グッドマンここに見参!!!」
さっ、と、そちらに視線を向けた成見亜里紗は、
目が点になった。
その視線の先の空中には、馬鹿でかい黒いエイリアン、
とでも呼ぶしかない代物が浮遊している。
「メイ、よく時間を稼ぎました、
私が来たからには決まったも同然。
さあキリサキさん、神妙に縛につきなさいっ!!」
千里が放った魔法解除弾は、
黒衣姿の夏目萌を引き連れ、
その背景に巨大な触手影人形を浮遊させながら
この戦場に勇躍踊り込んだ、
黒衣姿の高音・D・グッドマンの
颯爽たる勇姿へと真っ直ぐ吸い込まれて行った。
「………えーと………私、まだ何もしてなかったよね………」
==============================
今回はここまでです>>225-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>234
「紫炎の捕らえ手っ!」
「流水の縛り手!」
ものを言ったのは、踏んだ場数の差、
その突発的な異常事態に対する耐性、経験値だった。
「くっ」
「しまっ!? 私が、こんな精神攻撃にっ!!」
一瞬の静寂の後、佐倉愛衣と夏目萌が放った捕縛魔法は、
物陰から現れて半ばショートした思考で事態を把握しようとした日向華々莉と
大剣の切っ先を斜め下に向けて棒立ちで瞬きしていた天乃鈴音を直撃していた。
「あれが、キリサキさんですか?」
「はい、恐らくキリサキさんとその仲間です」
高音・D・グッドマンが愛衣に確認をとる。
「それでは、改めて………」
そして、高音とその仲間が円陣の形で仮契約カードを用意する。
「「「アデアット!!!(((変身フォーム)))」」」
「終わった?」
「何が、どうなってんの、これ?」
改めて、成見亜里紗が詩音千里に尋ねる。
「さっきも言ったけど、
多分、あの水で縛られてる剣使いがキリサキさん、だと思う」
「ふーん、で、あっちは………ん?」
そこで、亜里紗が何かに気付いてツカツカ動き出す。
「ちょっと、あんたマツリ? 何やってんのこんな………」
「アリサ? ………危ないっ!!」
「!?」
「お姉さまっ!?」
次の瞬間、高音が腕から伸ばした影の鞭が
間一髪で亜里紗の大鎌を絡め取り、刃を地面に突き刺していた。
「くっ!」
亜里紗は馬鹿力で地面から刃を抜き、高音が鞭を消滅させる。
「アリサ、そっちは敵じゃないっ!!」
「メイ、彼女がキリサキさんではっ!?」
「違うっ! お姉さまは彼女を止めて、
あなた、彼女に魔法解除をっ!!」
愛衣がさささっとその場を仕切り、隙を突いて駆け出す。
高音が呼び出した影法師を亜里紗が切り裂いている間に、
千里が亜里紗を銃撃する。
「あれ?」
「わっ!」
亜里紗がきょとんとしながら影法師に押し囲まれ、
華々莉は背後から頭にバケツを被せられて声を上げる。
「あなた、幻術か催眠術を使いますね、
それも魔力を込めた高度なものを。
この人の目を見たら駄目です」
愛衣の言葉に、華々莉が鼻を鳴らす。
「大丈夫っ!?」
「ハルカ先輩っ」
そこに駆け込んで来たのは、奏遥香と日向茉莉だった。
「キリサキさん一味の身柄を確保しました、魔法少女です」
「キリサキさんの?」
「スズネちゃんっ!?」
鈴音の顔を見た茉莉が声を上げた。
「知り合い?」
「同じクラスに転校して来た天乃スズネちゃん」
遥香の問いに茉莉が答えた。
「あれ、双子の姉妹かなんか?」
亜里紗がくいっと顎を動かす。
「ちょっと待って、彼女は魔法の催眠術を使う、
目を見たら危ない」
千里が茉莉を制した。
「じゃあ、十数える間に一度変身を解除して
ソウルジェムをこちらに渡しなさい。
事が事です、キリサキさん相手に選択の余地はありません、
従うか、自分が同じ目に遭うか選んで下さい」
遥香が槍先を向けて二人に命令し、二人がそれに従うのを確認する。
それを見て、拘束魔法が解除された。
「えー、っ、と………つっ………」
華々莉に接近した茉莉は首を傾げていたが、
その内、地面に膝をついて呻き始めた。
「ちょっ?」
「大丈夫?」
軽く狼狽する亜里紗の側で遥香が駆け出す。
「呪い、の様な痕跡が感じられます」
茉莉の頭に手を乗せた愛衣が言い、
それを聞いた千里が茉莉を銃撃した。
「お姉、ちゃん?」
「催眠術で存在を忘れさせてた?」
茉莉の反応を見て、高音が呟いた。
「お姉ちゃん? これって何? どういう事なのっ!?」
茉莉が華々莉の肩を揺さぶり、華々莉が鼻で笑った。
「どうですか、メイ?」
「医術は専門外ですが、こちらも魔力が感じられます」
「つまり、彼女も何等かの洗脳を」
鈴音の頭に掌を当てていた愛衣に千里が訪ね、愛衣が頷く。
「う、あ………あぁあああーーーーーーーーーっっっっっ!!!」
千里が鈴音の魔法を解除した後、鈴音は少しの間きょとんとしていたが、
次の瞬間、周囲を絶叫が貫いた。
「あ、あああ、ああ………」
「あーあ、やっちゃったぁー」
華々莉の唇が、にまあっと歪んだ。
「あなた、何をしたのっ!?」
怒鳴り付ける遥香を、華々莉は鼻であしらった。
「私は、スズネちゃんを助けてあげてたんだよ。
ニセモノの記憶で蓋をしてっ!
辛いでしょ? 痛いでしょ?
やっちゃったのはあいつら、あんたのお仲間。
終わるよ、みんな、あんた達が地獄の窯の蓋を開けたせいでね。
アーッ、ハッハッハッハッ!!」
「このっ!」
亜里紗が振り上げた拳を千里が抑えた。
「ソウルジェムが急激にっ、私の手持ちで………」
「あ、ああ、あ………つ、ばき………」
「!?」
「ああ………ツバキ………」
「ツバキ、知ってるのっ!?」
そこに、駆け寄ったのは茉莉だった。
「ねえ、ツバキの事、知ってるの?
うん、知ってるよね、ツバキと一緒にいた娘なんだからっ!」
「………マツリ?」
「ずっと、ずっと探してた、ツバキの事も、スズネちゃんの事も。
ううん、スズネちゃんの事は忘れてたけど、
でも、ずっと、ずっとずっと会いたかった、
ツバキと一緒にいたスズネちゃんにっ!!」
茉莉が鈴音の手を取り、茉莉の前向きな目が、
焦点の合わない鈴音の目をしっかりととらえる。
「………後でいいなら………少し、長い話になる」
鈴音の返答に、茉莉が小さく頷いた。
「で、あんた達って結局なんなの?」
「あなた達は恐らく魔法少女、マギカ、ですね?」
亜里紗の言葉に、愛衣が質問を質問で返す。
「マギカ? あの魔法少女のマギカですか」
高音の言葉に愛衣が頷いた。
「マギカであれば、契約の使い魔がいる筈ですが」
「僕の事かい?」
高音の言葉に、物陰からキュゥべえがひょこっと姿を現す。
「彼女たちはマギカ、魔法少女なのですか?」
「そうだね」
「キュゥべえ、彼女達は魔法少女じゃないの?」
「違うね、魔法少女とはちょっと違う」
遥香の問いに、キュゥべえが言う。
「私達は魔法使いです。
簡単に言えば、ある程度の隠れた素質を持つ人間が、
自分で修行をして魔法を身に着ける。
そういうカテゴリーの存在がある、と、理解して下さい」
「私達魔法使いは世の中の裏側で世の中のお手伝いをする存在。
本来、あなた達魔法少女には干渉しない立場を取っているのですが、
今回は行きがかりでこの様に関わる事になりました」
「はぁー、そんなのがいるんだ」
愛衣と高音の説明に、亜里紗が言った。
「何にせよ、私達のチームを助けていただいた事、
有難うございました。
遥香が頭を下げ、他のチームメイトもそれに倣い
高音以下も礼を返す。
ーーーーーーーー
「分かりました」
高音がスマホの通話を切る。
「魔法協会としては、キリサキさん事件は
非のある無しに関わらず魔法少女内部の抗争事件、と言う事で、
犯人も確保出来た事ですし、
これ以上関与せずにあなた達に一任すると言う事です」
「分かりました」
高音の言葉を遥香が引き受ける。
「ねえ」
千里と亜里紗に引き立てられながら、華々莉が言葉を発した。
「魔法使い? あんた達、魔法少女にちょっかい出して何やってんの?」
「行きがかりで正体不明の連続殺人事件に遭遇しましたが、
私達には帰還命令が出ています」
「見滝原の刀使いは? なんかさ、素直なスズネちゃんに、
あいつが魔法少女の守護者だー、とか吹き込んだ奴がいたみたいでね。
お陰でノルマなんか全っ然こなせなかったの。
他に魔法少女から狙われる様な事やってんの?」
「地元と協力して節度を持って動いているとは聞いています。
それ以上の事は分かりません」
「あ、そ」
「ほら、行くわよっ」
鼻で笑って引き立てられる華々莉を見送りながら、
高音は指で顎を撫でて黙考していた。
× ×
「おはよー」
「おはよー」
(鹿目さん)
見滝原中学校の校門から玄関に向かう途中、
鹿目まどかは脳内に響く声に背筋を伸ばす。
(マミさん)
(お早う、鹿目さん。美樹さんは?)
(あ、あの、今朝は風邪でお休みするって)
(そう)
「どうかしましたか?」
まどかと並んで歩いていた志筑仁美が、
ふと上の空な姿を見せたまどかに声をかける。
「あ、うん、風邪、さやかちゃん大丈夫かな?」
「そうですわね。
さやかさんが風邪でお休みなんて、珍しいですから」
ーーーーーーーー
「あたしはね、高すぎるものを支払ったなんて思ってない。
この力は、使い方次第で、
いくらでも素晴らしいモノにできるはずだから」
風見野市内の一角で、決意を込めた言葉が放たれる。
「この分なら、持ち直すか」
桜咲刹那は、廃教会の屋根の上で、
建物の中から聞こえるその青い言葉を耳にしながら呟いた。
「そろそろ、戻るか………」
身を起こしながらも、
刹那は一応顛末を聞き届けようと耳を澄ませる。
「バカヤロウ! ………」
ーーーーーーーー
「何が、起きているの?」
昼休み、二年生校舎の屋上と三年生校舎の屋上入口近くで、
それぞれ暁美ほむらと巴マミが、
前方で翻る黒いサイドポニーを眺めながら棒立ちで呟く。
「わーっ」
「すっごーいっ」
三年生校舎の屋上では、巴マミと同じクラスの女子生徒数人が
黄色い歓声を上げていた。
彼女達のクラスには最近同性の転校生が転入して来ており、
普段はむっつり不愛想な転校生が何となく興味を示したので
スマホでこっそり見ていた洋楽動画をそのまま見せたところ、
一分以内の謎の挙動を経て今に至っていた。
「ウ、ウェ、ヒヒヒ………」
ほむらの隣では、
ほむらと少々込み入ったお話しをする予定だった鹿目まどかが
思わぬ成り行きと素晴らしくハイスペックな完コピダンシングに
取り敢えず笑うしかなかったので乾いた笑いを漏らす。
その間にも、まどかの前方では、
アニメの中のアイドルダンスが、
投げキッスと共にハイクオリティで再現されていた。
==============================
今回はここまでです>>235-1000
続きは折を見て。
>>239差し替えです
==============================
「私は、スズネちゃんを助けてあげてたんだよ。
ニセモノの記憶で蓋をしてっ!
辛いでしょ? 痛いでしょ?
やっちゃったのはあいつら、あんたのお仲間。
終わるよ、みんな、あんた達が地獄の窯の蓋を開けたせいでね。
アーッ、ハッハッハッハッ!!」
「このっ!」
亜里紗が振り上げた拳を千里が抑えた。
「ソウルジェムが急激にっ、私の手持ちで………」
「あ、ああ、あ………つ、ばき………」
「!?」
「ああ………ツバキ………」
「!?」
頭を抱え蹲る鈴音に駆け寄ったのは茉莉だった。
「スズネちゃん、私、覚えてるマツリの事っ!」
「………」
「マツリだよっ。お話ししたよね、ツバキの事も」
「マツ、リ………」
「ずっと、ずっと探してた、ツバキの事も、スズネちゃんの事も。
スズネちゃんの事は忘れてたけど、でも、ずっと、ずっとずっと会いたかった、
ツバキと一緒にいたスズネちゃんにっ!!」
茉莉が鈴音の手を取り、焦点の合わなかった鈴音の目が
茉莉の前向きな目を捕らえた。
「………又、話がしたい。
後で………少し、長い話になる」
鈴音の返答に、茉莉が小さく頷いた。
==============================
差し替えは以上です。
一言で言って読み込み不足による修正、ごめんなさい。
今回はここまでです、続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>243 >>244
ーーーーーーーー
オハヨー
オハヨー
「さやかちゃん、おはよ!」
「おはようございます、さやかさん」
「あ、ああ。おはよっ」
朝、せせらぎ流れる通学路で、
何時もの三人が合流し、挨拶を交わす。
「んー、ちょっとばかり風邪っぽくてね」
「さやかちゃん………」
(ふむ………)
並木、と言うか林に近い木々の中で、
桜咲刹那はそんな三人の姿を捕らえ心の中で呟く。
(空元気、ですか………視線?)
そして、改めてさやかの視線を追う。
(松葉杖の少年………成程………
………あの様子は少し厄介………彼女も?)
どちらかと言うと自分に不向きな方面の懸念に、
刹那は小さく嘆息する。
ーーーーーーーー
「?」
「どうしましたの、さやかさん?」
帰りのHRを終えた教室で、
つと視線を上に向けたさやかに志筑仁美が尋ねた。
「ん、いや、鼠かなって。気のせいかな?」
「嫌ですわね」
少し眉を潜めた仁美は、気を取り直して
きりっとした眼差しを親友に向ける。
ーーーーーーーー
「あら」
教室で帰り支度をしていた巴マミは、
スマホを取り出して小さく声を上げる。
「どうかしましたか?」
そんなマミに、最近クラスメイトになった桜咲刹那が声をかけた。
「ええ。美樹さん、風邪は治ったんだけど
用事が出来たので今日は先に行っててくれって」
「そうですか。私もこれから用事がありまして」
「桜咲さんも?」
「ええ、すいません」
「謝る事は無いわ。元々私の側の仕事なんだから」
「では、失礼します」
相変わらず折り目正しいクラスメイトをマミは見送る。
多分、友達と言ってもいいと思うのだが、
一方で他人行儀に見えるのは、
最近はちょっと崩れた所が見えても折り目正し過ぎるからだろうか。
ーーーーーーーー
(わあー)
何時ものファーストフード店で着席した美樹さやかは、
少し後に入って来た女性客を見て、少々見惚れていた。
それは、同席した友人志筑仁美も同じ、
或は、もっとお熱かも知れないと、
仁美と付き合いの長いさやかは察知していた。
さやかから見て、その女性客はよく見ると少女なのは分かるのだが、
年齢は少し年上と言った所か。
ロングと言う程ではない黒髪をポニーテールに束ね、
サングラスをかけていても美人の部類に入るのは分かる。
何より、取り立てて逞しくも見えないむしろ小柄な体格の筈が、
SPか、と言いたくなる黒いパンツスーツが何故かドハマリして見える。
そんな、年頃の女の子がふと見惚れる凛々しい雰囲気を身にまとっている。
こほん、と、仁美が咳払いをして、さやかがそちらを見る。
その一瞬に、黒スーツの少女は、
さやかの背後の背もたれの裏側にすっと触れていた。
「………それで、話って何?」
気を取り直して、さやかが仁美に尋ねる。
その頃には、二人の意識を外れた黒スーツは少し離れた席に着席し、
ジャケットの内側から伸ばしたイヤホンを耳に差していた。
ーーーーーーーー
さやかが帰宅して、改めて外出した時には、既に陽は沈んでいた。
これから、闇に潜む怪物を退治に行く正義の味方。
と、心を奮い立たせようとするだけで、鼻の奥が辛くなる。
そして、街灯の下に立つ大事な友達の存在に気付き、
又、胸に来る。
「まどか」
さやかが声をかける。
それでも、付いて来てくれる、付いて行きたい、と、
心からさやかを気遣ってくれる。
付き合いの長いさやかにはその真情がよく分かる。
だからこそ、その綺麗な心に触れて、
さやかはとうとう泣き崩れる。
「あんた、何で……何でそんなに、優しいかなぁ……
あたしには、そんな価値なんてないのに……」
ーーーーーーーー
影の魔女の結界内。
おぞましく、悲しい光景を前に、
目を見開き立ち尽くしていた佐倉杏子の横を、
ばびゅんっ、と、何かが突き抜けて通り過ぎた。
「ア、ハハ?」
自分を縛り上げ、持ち上げていた触手が消し飛んだ、
と、思った時には、
そう思ったさやか自身も強烈な打撃で弾き飛ばされていた。
「やばっ!」
前方の光景に尋常ならざるものを察知した杏子が、
まどかの元に走った。
「神鳴流決戦奥義、真・雷光剣っ!!!」
杏子がまどかをかばう中、
結界そのものを揺るがす様な大爆発が巻き起こる。
「おいっ、大丈夫か!?」
「まどかっ!!」
「う、うん、大丈夫」
「桜咲刹那っ!」
「いや………」
怒りの形相で顔を上げるほむらを杏子が制する。
「信じらんねぇけど、安全だった。
こっち飛ばさない様にあの威力コントロールするって、
どんだけなんだよあいつ」
杏子がごくりと息を飲む前で、
爆風にその身を転がしていたさやかがゆらりと立ち上がった。
そのさやかに、刹那は「白き翼の剣」の切っ先を向けていた。
「じゃま………するなあっ!!………」
「………はは………」
杏子が、乾いた笑いを漏らす。
馬鹿でかい建御雷の一振りと共に、さやかが血迷って振るった刀身は
鍔元からへし折れてどこかに吹っ飛んでいた。
「おふっ!」
そして、「白き翼の剣」の柄の底がさやかの腹に叩き込まれる。
「この………」
さやかが顔を上げた瞬間、刹那の裏拳がさやかの頬を捕らえる。
「こ、の………」
「痛くないですか?」
その声は、静かに響いた。
(なみ、だ?)
「私は、痛いです」
そして、刹那はどん、と、掌でさやかの胸を押した。
「これは、あなたの体と心が血を流して得たものです。
返却する事は私を侮辱する事と心得て下さい」
杏子は、さやかに背を向けて立ち去る刹那を見送り、
グリーフシードを手にすとんと両膝をついた
さやかの肩をぽんと叩く。
「いい先輩じゃん。あんまし独りで意地張んなよ。
何せアレだからな、
力ずくでも独りにさせてくんねーんじゃね?」
==============================
今回はここまでです>>245-1000
続きは折を見て。
始まったか………
原作プロローグは余韻だったけど、
13巻冒頭から繋げて来たか。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>250
ーーーーーーーー
「何やってんだ?」
佐倉杏子は、魔女の結界を出た所で、
そこに突っ立っている桜咲刹那に尋ねる。
その刹那は、ネコミミ和風メイド服と言う
堅物な刹那にしてはキテレツな姿で、
建御雷の切っ先を体の正面の地面にドン、と、突き立て、
杏子から見て薄気味悪い笑みを浮かべて立っている辺り、
悪い予感しかしなかった。
「皆さんには、
これからちょっと
ミーティングに参加していただきます」
「ミーティング?」
行きがかり上、杏子と一緒に結界を出た美樹さやかが尋ねる。
「ええ、巴マミさんを交えて、
ソウルジェムの事等々に就いてすり合わせを行います」
「どうしてあなたが仕切ってるのかしら?」
「私の事情です」
暁美ほむらの問いに、刹那はにっこり返答した。
「このパーティー、あなた達は否定するでしょうが、
私から見たこのパーティーはこのまま行けば早晩瓦解します。
余所者だからこそ見える事もありますから。
そうなると、こちらとしても色々困るものでして」
「お断り、って雰囲気じゃなさそうだなぁ」
槍を肩で担いだ杏子と刹那が笑みを交わす。
そして、その一瞬の壮絶なやり取りに、
美樹さやかは目を見張った。
「今の、見切れるのかよ」
大槍を手槍のサイズに戻した杏子が、
「白き翼の剣」を八双に構えた刹那に言う。
なお、この場合の手槍とは槍術用語であり、
二分割してはめ直す様な携帯用ではない。
「身近に如意棒使いがいますので」
「やるじゃん」
次の瞬間、高速の剣と槍が再び打ち合い、弾ける。
「!? 百烈桜華斬っ!」
馬鹿長くなった槍の柄がゴム化し、
柄のしなりと共に刹那を狙った槍の穂先が
刹那の斬撃に乗せた「気」のカーテンに弾き飛ばされる。
その時には、杏子はそこに踏み込み斬り付けた刹那の一撃を交わしていた。
刹那が振り下ろした「白き翼の剣」が持ち上がる前に、
本来の機能に戻った槍の柄が上から剣を押さえつける。
「す、ごい………」
その激突に、さやかが息を飲む。
魔法少女だからこそ分かる、
やはり杏子はヴェテランの魔法少女であり、刹那は強者の剣士。
到底今の自分が及ぶ実力ではない、と。
ぎゃりっ、と、槍と剣が一回転し、横殴りの槍の柄を跳び越えた刹那が
タタッ、と動いて袈裟斬りに斬り付ける。
そして、空を切った「白き翼の剣」に、
上から槍の柄が叩き付けられた。
「アデアット!」
「白き翼の剣」が地面に叩き落され、刹那の新たな得物を杏子は鼻で笑う。
「どうしたどうしたあっ!?
そんなちっこいのであたしの首の届くのかよおっ!?」
叫んだ杏子が、手槍サイズの槍で幾度も突き、払いを繰り出すが、
刹那も流石にしぶとく交わし続ける。
ニッ、と、笑った杏子の目の前で、杏子の槍が多節棍に化け、
膨大な節の連結棍が、範囲攻撃と言うべき規模で浮遊を始めた。
「匕首・十六串呂、稲光尾籠っ!!」
「!?」
次の瞬間、そのまま刹那を縛り上げようと高々と動いた連結棍が、
その直前に刹那の結界術式の雷帯に絡め取られた。
「くっ!」
杏子が、自分が絡め取られる前に一度多節棍を消滅させる。
その時には、刹那の手からも得物が消え、
杏子は刹那の当て身をすれすれで交わしていた。
(まっ、ずいっ………)
もちろん、魔法少女は基本スペックが人間離れして強い。
しかし、それは現状退魔師である刹那もやり様によっては似た様なものだ。
そして、魔法少女同士で争う事はあっても、
魔法少女の仕様は魔女と戦う事を基本としている。
「あんた、素手もイケる口かよっ!?」
「神鳴流は武器を選ばずです」
「くそっ!」
ハメられた、と、杏子は腹の中で吐き捨てる。
自分は実戦経験はあるし、汚い事だって平気だ、と、杏子は思っていたが、
この清廉誠実を絵に描いた様な桜咲刹那こそ、実戦にも誠実と言う事だった。
気に入った、と言いたい所だが、
目下その的が自分だと言う所が最大の問題だった。
我流の素手喧嘩が魔法少女基準でも決して弱くない杏子だからこそ、
鍛錬に鍛錬を重ねた洗練された動きのキレ。
その鍛え抜いた芯があるからこそ、そこからあらゆるパターンに
応用と自信で応じる事が出来る刹那の桁違いな技量が分かる。
仕切り直そうにも、明らかに杏子の基礎を読み切っている刹那は、
杏子が槍を作り出す前に素手の間合いからの攻撃を途切れさせない。
「そらっ!」
一瞬の隙を突き、復活させた槍で突きの一撃を繰り出す。
そして、この時も、杏子の勘はハメられた、と警報を響かせた。
果たして、杏子は頭上に刹那の気配をとらえる。
つまり、跳び越えられた。
杏子が振り返るが、槍の重みに引きずられた体がワンテンポ遅れる。
「浮雲・桜散華」
ずっがぁーんっ、と、迫力の投げ技一閃。
只の倉庫街と言う場所柄、
まともな人間ならばトマト的な何かになりかねない馬鹿げた地響き。
「つーっ………」
「白き翼の剣」を回収しつつ接近する刹那の前で、
杏子は半身を起こしてぶんぶん頭を振る。
「つえぇなぁ、せっちゃんは」
その瞬間、ここにいる大半の者が異変に気付く。
「白き翼の剣」の刃を杏子の首筋に向けた辺りで、
刹那はぱちくりと瞬きをしていた。
「らあっ!」
「!?」
次の瞬間、杏子の頭頂部が刹那の鼻を一撃していた。
「おふっ!」
そして、杏子の拳が刹那のリバーをとらえる。
「おら、あっ………?」
距離を取った杏子が、刹那の頭に槍の柄を振り下ろす。
それは、建御雷に受け止められた訳だが、
そこで、ここにいる全員が、
何かゴゴゴゴゴゴゴゴと聞こえそうな異変に気付く。
「え、ええと、どうかした? せっちゃん?」
思わずあは、は、と笑って尋ねた佐倉杏子の記憶は、
ピキッ、と言う幻聴と共に
白黒反転した恐怖の目を見た辺りで一時中断されていた。
「神鳴流決戦奥義、真・雷光剣」
建御雷を一振りした後、桜咲刹那は、
「白き翼の剣」を肩に掛けて美樹さやかに向けてにっこり微笑んだ。
「棟打ちですのでじきに目を覚ますでしょう。
ちょっと予定を変更して
DEAD OR ALIVE
と言う事になりましたが、
ミーティングに参加すると言う事に異存は?」
暁美ほむらの足首に繋がる稲光尾籠の一帯を握って
とてもとても可愛らしく微笑む刹那の目の前で、
ゆっくり首を横に振る
美樹さやかの瞳のハイライトは節電モードに入っていた。
==============================
今回はここまでです>>251-1000
続きは折を見て。
まずは訂正です。
>>253 >>256
○「稲交尾籠」
×「稲光尾籠」
です。すいません。
アニメはこのペースか。
雑誌連載ん時、神鳴流的に結構とんでもない技使われて
え? ってなったのも懐かしい。
時刻もよろしい頃合ですか。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>256
ーーーーーーーー
「こんな時間にすいません」
見滝原の夜景を望む丘の上のお花畑で、
マミに対した刹那がぺこりと頭を下げた。
「いいわ、ちょうど一仕事終えて帰る所だったから。
それでも桜咲さんからのお願いって
それだけの事があるんでしょうから」
そう言って、巴マミはちろりと刹那の周囲を見回した。
「………それで、佐倉さんに暁美さん?
確かに、この面子での話し合いだと聞いてはいたけど」
「この面子で良かったのか?」
「ええ。桜咲さんの誘いなら考えがあっての事でしょうしね」
杏子の問いに、マミが応じる。
「信用あるんだな」
「誠実な人だとは思うわ。
理由があるとは言え、魔女とも何度か一緒に戦った」
「戦場の絆、って言いたいの?」
「取り敢えず、今の所は心強い味方。
そう思わない理由は無いわ」
まず間違いなくかつての戦友。
言葉を交わすマミと杏子を見て、
さやかにもその辺りの見当はついていた。
「まず、先日少々ハプニングがありまして、
そこでここにいるメンバーが知ったある情報を共有すべき、
と言う結論に達しました」
「共有すべき、情報?」
そこで、マミは改めて周囲を伺う。
刹那は真顔でほむらも相変わらず表情を消している。
だが、最近は、この後輩暁美ほむらも
何か無理をしていそうだと段々分かって来た。
そして、さやかと杏子は間違いなく気まずそう。
「最初に断っておきたいのですが、
俗に霊魂とか幽霊とか言われるものは、
間違いなくこの世に実在します」
刹那の言葉を聞き、正面に立つマミが目をぱちくりさせた。
周囲の面々も、刹那の切り出し方に半分は同じ気持ちだったが、
それでも、理屈として繋がる事は理解している。
「何を、言っているの?」
「すいません、おかしな話にしか聞こえないのは理解していますが、
話の順序としてここから始めるべき事でして」
「それは、退魔師として真面目に言っているの?」
「はい」
マミの問いに、刹那は真面目に返答する。
「………それなら、一度ぐらい会いたいものね、父と母に」
「既に極楽浄土より見守ってくれているものと推察します」
「有難う」
「うちは、あの死に様じゃそれ無理っぽいんだけどさー。
来るなら来いって感じだけど、まだ会った事ねーや」
「ごめんなさい、変な事言って」
「いや、いいよ今更」
「えーと、じゃあ刹那さんも悪霊退散とかやってるの?」
マミと杏子がいわゆる湿っぽい会話を交わす中で、
さやかが話を進める。
「ええ、どちらかと言うと私の同僚の方が専門ですが。
教室に取り憑いた幽霊を剣と拳銃で追いかけ回した事もありますし」
「アハハハハ(ナイスジョーク)」
「そういう訳で」
一片たりとも嘘偽りを言ったつもりの無い刹那は、
近くのさやかの乾いた笑いを意に介さず話を進める。
「まず、大方のイメージに近い形でそうしたものが存在する。
その事は理解して下さい。
この際、直ぐに信じられなくても、
まずはその概念を前提に話を聞いて下さい」
「分かったわ」
何時も通りの真面目な口調に、
マミもお仕事モードで真面目に返答した。
「まず、通常の状態ですと、霊魂は肉体とセットになっています。
霊魂と肉体は頭と臍の緒の魂の尾で肉体とケーブル接続された状態で、
普段は肉体に吸収されて収納されています」
「そのケーブルが繋がったまま肉体と霊魂が分離すると、
幽体離脱、って言うのよね。
そして、死神がケーブルを切断する事で人は死ぬ。
漫画なんかだとこういう話になるのかしら?」
「それで合っています。
そして、一連の霊魂と肉体のシステムに関して、
少々特殊に改造している存在があります」
「………魔法少女ね」
「その通りです」
「この集まりで、只でさえオカルトな話。
忘れそうになるけど、魔法少女だって普通から見たら特殊過ぎる存在。
魔法使いじゃなければ魔法少女、そう考えるのが自然でしょう」
回答の速さに刹那がやや目を見張り、マミが応じた。
刹那がチラッと視線を送った杏子が、ふっと不敵に笑みを見せる。
成程マミがボンクラであれば魔法少女としてここまで生きていられる訳がない。
「そこまで理解して下さるなら、
これから言う事を気をしっかり持って聞いて下さい」
「ええ」
「あなた達魔法少女の魂はソウルジェムになっています」
「ソウルジェムに?」
「はい。救兵衛は魔法少女の契約に当たり、
少女の霊魂を抜き取って固形化している、それがソウルジェムです。
但し、抜き取った上で魂を肉体を電波接続している様な状態にしているために、
ソウルジェムを所持している限りは精神が肉体を動かす事に支障はない。
そういう仕組みになっている様です」
マミが改めて周囲を伺う。
まずさやかと杏子の表情に隠せない憤りが浮かんでいる。
もちろん刹那が言っていると言う事も含め、
冗談の類の話ではない事は確かな様だ。
「そう………」
マミが、黄色いソウルジェムを掌に乗せた。
「これが私の魂。
どうしてそういう事になっているのかしら?」
「魔法少女として効率的に戦闘を行うため、だそうです。
肉体と精神が不可分である場合、肉体の損傷は死に直結する。
精神を魂と言う形で分離してしまえば、
理論上はこのソウルジェムが破壊されない限り、
幾ら肉体を破壊しても生き続ける事が出来る。
只、実際には完全に別物と言う訳にはいかないので、
肉体のストレスは濁りと言う形でソウルジェムにも反映される事になります」
「………少し、付いて行けないんだけど。
ええ、桜咲さんの説明は真面目で丁寧だった。
だから、多分理屈としては理解しているんだと思う」
「そうですね。今、初めて聞いたと言うのなら突拍子もない事ですね。
今の話には続きがあります。
肉体と魂の電波接続、その距離は百メートルが限度。
それを超えると、接続が切れて肉体は死亡した状態になる。
実の所、美樹さんのソウルジェムが事故で体から離れて、
それで、ここにいる面々はその事実を知った、と言う状態です」
「じゃあ、その現場を見たのね?」
「ああ」
最初に聞かれた杏子が、そっぽを向いて答える。
「美樹、さん? 死に至る、って今………」
「うん、少しの間意識失ってたみたい」
「すぐにソウルジェムを取り戻して
距離を近づけたから復帰する事が出来た。
そうじゃなかったら、
肉体そのものが死亡した状態で時間が経過したら危ない所だった。
死亡に伴う肉体の損傷が進行したら、肉体も魂も完全に死んでしまうから」
さやかに続き、ほむらが説明した。
「救兵衛はいますか?」
「何だい?」
「キュゥべえ」
刹那に呼ばれ、現れたキュゥべえにマミが声をかけた。
「今の話、本当なの?」
「そうだよ」
「どうして、そんな事を?」
「彼女も言った通り、魔法少女として、効率的に戦うためさ。
生命そのものである魂を、肉体と言う脆弱な器に入れたまま
魔女との戦いをさせる訳にはいかないからね」
「そう、言ってたね」
キュゥべえの言葉に、さやかが続いた。
「直接攻撃を受けたら、人間の肉体なんて簡単に壊れてしまう。
本当ならとても耐えられない痛みだから、
魂さえ分離しておけば、肉体は魔法で治す事が、出来る、って」
「………そう………」
「巴マミ、大丈夫?」
「心配してくれるの?」
ほむらの言葉に、マミが笑みを浮かべた。
「ごめん、なさい。美樹さん」
マミが、深々と頭を下げた。
「私はいい、契約しなければ死んでただけの事だから。
だけど、美樹さんは、
私が魔法少女の道を教えて、そして、契約を結んだ。
こんな事になるなんて知らなかった、
だから教える事が出来なかった私が、美樹さんを………」
「いい、ですよ。キュゥべえに騙されてたんですから。
マミさんも、あたしも」
「騙すなんてひどいなぁ。ちゃんと聞いた筈だよ。
魂を差し出すに足る願いはあるのか、って」
「ああ、そうだね」
さやかが天を仰いだ。
「確かに、医学の限界。本当だったらこうでもしなきゃ、
あたしの人生と引き換えにしても絶対に出来ない事をしてもらった。
それは本当の事だからね」
「少し、外してもらえますか?
あなたがここにいると、悪い予感しかしません」
「君に呼ばれて出て来たんだけどね」
既に殺意の籠る眼差しを丸で意に介さず、
キュゥべえはその場を離れる。
「そこで、もう一つ問題があります」
刹那が話を続けた。
「むしろ、こちらの方が本題です」
刹那の言葉を聞きながら、マミとさやかは少々訝しんだ。
刹那が言ったその時、
ほむらの表情がこわばったのを二人は見ていた。
「それは、美樹さんの事です」
「あたし?」
刹那の言葉に、さやかは自分を指さし
ほむらは少々意外そうにさやかに視線を向けていた。
「色々断片的に情報を得ています、
それは、ここにいる皆も同じです。
ですから、まず、周知の事実から確認します。
美樹さやかさん」
「何?」
「あなたが契約した理由、契約の対価は、
幼馴染でクラスメイトの上条恭介の左腕のケガを治す事、
それで間違いはないですね?」
「うん。間違い、ないよ」
「不十分な説明だったとは言え、
現代医学の限界を超えた願いを、
己の命を懸ける事になってもかなえる必要があった。
そこには、それだけの個人的な想いがあった。
この、誰でも行き着く当然の推測に誤りはありますか?」
「………ない、よ。うん。
これで否定したら馬鹿みたいだよね今更」
さやかが、ははっ、と笑って答えた。
「その想い、伝える心算は、あるんですか?」
「ないよ。無理でしょそれは。
だって、あたしもう、ゾンビなんだしさ………」
そこまで言って、さやかは息を飲んだ。
その鼻先に、長匕首の切っ先が向いている。
「巴マミさん、佐倉杏子さん、暁美ほむらさん、そしてあなた。
事情はどうあれ、命懸けの魔女との戦いを共にした。
私の大事な人の恩人、最近出来た学友。
私自身、大事な人への侮辱を聞き流す程人間は出来ていませんが、
あなたは、皆の前で今の言葉をもう一度言えますか?」
ぽろり、と、大粒の涙がさやかの頬を伝い、
さやかはそのまま座り込み泣き崩れた。
「泣きたい時は泣いて下さい。魂の濁りもまとめて洗い流して。
怖いのも、悲しいのも死にたくないと言うのも
愛しく思うのもそのために醜くあがくのも、それは、人間だからです」
「仁美に、仁美に恭介、恭介を取られちゃう、
取られちゃうよぉ………」
ーーーーーーーー
タイミングを見てマミがさやかにハンカチを渡し、
さやかが顔を拭って立ち上がった。
「少し、現実的な話をしましょう」
それを見て、刹那が口を開く。
「その事での負い目がなくなったとしても、
あなたが上条君に告白をする、と言う事には
極めて大きな問題が生じています」
刹那の言葉に、さやかがぐっと正面から刹那を見据える。
「あなたは、己の魂を賭して上条君の左腕を治した。
言い替えるなら、それは、大き過ぎる恩義であり負い目です。
到底、対等な恋愛が成立しない程に」
さやかは、ぐっと目を見開きながら頷いた。
「私は、あなたの事を聡明な人物だと思っています」
「は? いや、だって、
可愛いかも知れないけど賢い、って事はないんじゃないかな?
だって、今だってそう。契約しちゃってからさ、
心の中こんなぐちゃぐちゃで自分が何したかったのかも本当は分からない」
「本当に大切な、守るべきものは何か?
あなたは、直感でそれを見抜く目とそれに従う行動力を持っています。
それは、最初に只の人としてあの異常な結界で鹿目さんと共にいた時から。
時に馬鹿みたいに見えるのは、小賢しさに負けないからです」
そう言って、刹那はふと天を仰いだ。
「時に台所的な俗称でも呼ばれる私達の年頃、
それも誰もが経験を持たない命懸けの魔法少女が絡めば
経験不足の未熟さ、間違いが生ずるのは当然の事です」
「刹那さんにそう言ってもらえるのは嬉しい、嬉しいよ。
でも、あたしって、そんな綺麗じゃない、と思う」
「見返りを求める気持ちですか。それはそうでしょうね。
犠牲を払う以上、それを求めるのは自然な欲求です。
それでも、救兵衛の説明に欠ける所があったとしても、
今までの命懸けの戦いを見て、それでも選択したのはあなたです。
今、守らなければならない、救わなければならないと。
己の勝手な願いだと理解して、美しくないと自覚し、
己を押し留め相手を思いやる理性を持っている。それで十分です」
「………有難う」
小さく頭を下げるさやかに、刹那が小さく頷く。
「時に美樹さん」
「うん」
「仁美、と言うのは、先日廃工場で救出したお友達の事ですか?」
「うん」
答えたさやかは、少し辛そうに下を向いた。
「鹿目さん。その仁美さん、育ちのいいお嬢さんとお見受けしましたが」
「はい、志筑仁美ちゃん。
えっと、この辺りだと名門のお嬢様、って言われてる。
だからお稽古事とかも凄く大変で。
小学校からのお友達なんですけど、凄く優しくて、いい娘で………」
「うん、いい娘だよ仁美。
優しくて上品で美人で、恭介とも、お似合い、だよ」
はあっと息を吐く刹那。
そこは、さやかの言葉を聞いた全員が共感する。
「なるほど、仁美さんと恭介君は、
そういう事になっていると」
「明日、告白するって。
あたしが幼馴染だから一日だけ待つ、って言ってくれたんだけど、
それでも、あたし、言えなかったから、だから」
「では、三日待ってもらいましょう」
間髪入れない刹那の言葉に、さやかがぽかんと目を見開く。
「向こうが勝手に設定したタイムリミットです。
その程度の申し入れがあっても然るべきでしょう」
「い、いや、ちょっと待って刹那さんっ」
「想いを告げる、と言う事は、本当に勇気が要る事です。
魔女と戦う勇気なんか問題にならない、って言うぐらい」
「そうね」
刹那の物言いにマミがくすっと応じて、
その時のさやかの狼狽に杏子も苦笑する。
「ですから、その三日でどちらの選択をしたとしても、
それは、あなたが精一杯、真摯に考えた末の結論。
誰がみっともないと言おうが、尊いものです」
「と、この人はいい人だから。
その分あたしが思いっ切り大爆笑して残念会してやるよ」
「はあっ!?」
叫んださやかは天を仰ぎ、狂った様に笑い出すさやかの姿に、
周囲がやや引き気味となった辺りでさやかは前を向く。
「あー、なんか、色々真面目に話して
思いっ切り笑って泣いて、少しすっきりしたかも」
「美樹さん」
「はい」
ふうっと一息ついたさやかに刹那が声をかけた。
「魔法を知っていますか?」
「刹那さん達、魔法使いなんでしょう?」
「ええ。只、これは魔法使い、或はそれ以外の者たちにとっても、
本当に初歩的で、そして最も尊い魔法です」
「何、それ? この流れって恋の魔法とか教えてくれる訳?」
「そんな魔法があるの、桜咲さん?」
「マミ………」
さやかを押し退ける勢いで、
瞳から大量の星を飛ばしながら食い気味に尋ねている
年上の少女の名を杏子が呟く。
「ええ、ありますよ」
「「何それっ!?」」
ずいっと迫るボーイッシュなショートカット少女と
ツインドリルなグラマーガールに
桜咲刹那は優しい微笑みを見せた。
「
わずかな勇気が
本当の魔法
」
ーーーーーーーー
山中の高木の枝で、龍宮真名は望遠鏡を覗いていた。
「取り敢えず平和に終わった、か」
望遠鏡の視界には、木陰から木陰へと林道に沿って移動する
暁美ほむらの姿がとらえられている。
(仮に敵意があったとしても、あの距離から刹那を討ち取る等)
鼻で笑い、一応視界が続く限り、異変危険の検索を継続する。
==============================
今回はここまでです>>257-1000
続きは折を見て。
生存報告です
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>269
× ×
「状況は?」
昼休みの廊下で、風の様に現れた桜咲刹那が鹿目まどかに耳打ちし、
まどかが小さく首を横に振る。
まどかが振り返った時には、既に刹那の姿はそこにはなかった。
ーーーーーーーー
「巴さん、転校生と仲いいよね」
「桜咲さん、ちょっと怖い感じだけど」
「でも、二人とも何話してるんだろ?」
「なんか、すっごい真面目な怖い顔してるんだけど………」
ーーーーーーーー
放課後、混雑を始めた廊下で、
巴マミと桜咲刹那にたたたっと駆け寄る者がいた。
「さやかちゃん、いなくなっちゃった」
まどかの言葉に、マミが額を抑え刹那が斜め下を見る。
「それで、例の件、美樹さんはまだ切り出していないんですね?」
「うん、まだ話してないと思う」
「そうですか………巴さん」
刹那の言葉に、マミは小さく頷いた。
ーーーーーーーー
「ん?」
見滝原中学校周辺の路上で、
刹那がたたっと風の様に近くの物陰に移動した。
「何をしているんですかこんな所で?」
「散歩だよ散歩、食うかい?」
「あら、風見野の魔法少女がこんな所でお散歩?」
刹那が貰い物のアンパンを食している隣で、
マミが杏子に質問を重ねた。
「で、いちおー言っとくが見失うんじゃねーのか?」
ーーーーーーーー
静かに移動しながら、刹那は自分のスマホを取り出した。
「もしもし、状況は?」
「私のGPSに合わせてついて来てくれ」
「分かった。学園祭で使った残りを用意したが」
「私がOKを出すまでは待ってくれ。
相手は志筑家だ、大事は出来るだけ避けたい。
それから、MSを見かけたら連絡をくれ」
「ロストしたのか?」
「そういう事だ、オーバー」
「どうしたの?」
「ええ、ちょっと仕事仲間と」
電話を切った刹那にマミが声をかけ、刹那が答える。
「この進路ですと、行先は公園ですかね?」
杖を突いている上条恭介に合わせて
前方をゆっくり進む恭介と志筑仁美を見て、刹那が言った。
ーーーーーーーー
「これって………」
マミの呟きに、刹那が頷く。
「緊張感が伝わって来ます。
これは、決めるつもりですね」
「あっちの坊やの方は?」
「気づいている様に見えますか?」
「ありゃ全然気づいてないな」
大きな緑地公園に入り、物陰を移動しながら、
刹那とマミ、杏子は
遊歩道を進む恭介と仁美の状況に就いて一応の結論を出す。
その時、刹那のスマホが振動した。
「ポジションはとった、
事態は危険水域と見るが、どうする?」
「そこから狙えるか?」
「ああ………いや」
「どうした?」
マイクから聞こえた舌打ちに刹那が尋ねる。
「タイミングが悪いな、西日の反射が酷い」
「人口の滝か………ちょっと待ってくれ」
スマホをしまい、刹那がさっと周囲を見回す。
「どうした?」
杏子が声をかけるが、その時には、
おおよその見当はつけていた。
「マジか?」
「巴さん、美樹さんを探して下さい、恐らくこの近辺にいます。
佐倉さんは」
「分かった」
ーーーーーーーー
入口は、遊歩道の構造物の一角にあった。
「おらあっ!!」
ブラッドオレンジに渦巻く空を背景に、
絵画模様の地面に立つ佐倉杏子の大槍一閃。
魔女の結界に突入した杏子に
ゾンビの如き動きでぎくしゃくと群がって来た人型の使い魔達が
ひとまとめに蹴散らされる。
「ここはお任せします。私は魔女を」
「ああっ!」
その間に、杏子が声を聞いたと思った時には
刹那はひとっ跳びの勢いで魔女の気配へと突き進む。
「出たな。神鳴流奥義・斬岩剣、斬鉄閃っ!!」
刹那は、魔女の本体を見つけるや、
そちらから群がって来た使い魔を一蹴する。
「すまないが先を急ぐ、一度に決めさせてもらうぞ。
神鳴流秘剣・百花繚乱………」
ーーーーーーーー
「うらんんんんんっっっっっっっっっ!!!!!???」
「!?」
使い魔相手にもうひと暴れしていた杏子が衝撃に目を向けると、
大量の桜華と共に桜咲刹那が全身吹っ飛ばされて戻って来た所だった。
「なん、だあっ!?」
そして、杏子は舌打ちして上の方に槍をふるう。
「ミサイルだあっ!? うぜえっ!!!」
まず自分に向けられた飛翔物を弾き飛ばしてから、
数を増す使い魔を切り裂いていく。
「ぐ、っ………」
ずしゃあっと、辛うじて受け身を取りながらも
白黒絵画な地面を全身で滑り終えた刹那が立ち上がろうとする。
「ぐ、っ………(あばら? こんな、時にっ)」
一旦しりもちをついた刹那が、手の甲で唇を拭う。
「な、何!?」
「が、せん、もん………」
背後からの声に、刹那がとっさに声を出す。
「魔女!? 大丈夫っ!?」
「え、ええ………」
「いや、脂汗酷いって、今治すから」
本当に敵だったら即斬していた所だが、
それでも断る間もなく、
当てられた掌からの感触に刹那が一息ついたと言うのも本当の所だった。
「助かりました、っ(脚も少し、か)」
「魔女はあっちだね。あんまり無理しないで、
たまには弟子もどきの活躍でも見ててよ師匠っ」
==============================
今回はここまでです>>271-1000
間が空いてすいません。
続きは折を見て。
ネギまとはなつかしなー今UQやってるけども
禁書クロス書いてた人か
今も書いてると知ってなんか嬉しいぜ
感想どうもです
>>277
ありがとうございます。
月日が経つのは早いものです。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>276
「このおっ!!」
わらわらと群がる使い魔を斬り伏せ、美樹さやかは魔女を探す。
(なんか、美術の教科書って感じ?
でも、あの刹那さんがやられそうになったって相当………)
周囲を伺い、
自分のいる結界の状況を把握しながらさやかが心の中で呟く。
(魔力、こっちかっ)
サイズの大きな魔力をさっちし、さやかは駆け出す。
(もしかして、あれ? ………)
魔力の出所に走ったさやかが、
使い魔を片付けながらそれらしいものに見当をつける。
「どけえっ!!」
そして、さやかは行先から一斉に群がって来た使い魔を二刀流で片付け、
跳躍していた。
「これで………!?」
跳躍したさやかか、一見すると建物にしか見えない魔女に
渾身の二刀を叩き込もうとマントを翻す。
次の瞬間、さやかの体は弾き飛ばされていた。
「(これ、って………?)このおおおっ!!………?」
空中で魔女を睨み付けたさやかが、
魔力を練って空中に何振りもの剣を発生させる。
後方に弾き飛ばされていたさやかか、
遠ざかる魔女の正面に向けてその剣を一斉に飛翔させた。
「………え、っ?」
違和感、次に痛み。
さやかはとっさに痛覚を遮断する。
(や、ばい?
あんときはヤケだったけど、覚えてて、良かっ、た?)
地面に叩き付けられたさやかは、
左の腿を剣に射抜かれた左脚を引きずり、
胸のど真ん中を貫通して突き刺さり、
墜落の弾みでもう少々肉を抉った別の剣をどうしようか少々思案する。
「!? (ミサイル、って………)」
「さやかあっ!!!」
侮れない雄叫び攻撃で苦しめて来た使い魔を片付け、
佐倉杏子が爆炎上がる戦場に駆け付けた。
「た、たた………」
「おらあっ!!!」
直撃に近いミサイル攻撃を受け、
立ち上がろうとするさやかの側で、杏子の槍が使い魔を一蹴する。
「サン、キュー。」
「おっ」
杏子が魔女を見た時、魔女には大量の黄色い紐が巻き付いた所だった。
「ティロ・フィナーレッ!!」
魔女の背後からの爆発音と共に、魔女はその姿を消した。
ーーーーーーーー
「た、たたた………」
魔女の消滅を確認したさやかが、取り敢えず身を起こし立ち上がる。
「おいおい、ひどい有様だって」
「あ、ホント。
ちょっとヤバかったんで痛覚切ってたから」
そして、さやかはずぼっずぼっと体から剣を抜き、
空いた穴やら折れた骨やらを魔法で修復する。
「ん?」
そして、気配に気づきそちらを見る。
「あ………」
「さ、やか?」
「あ、きょうす………」
「く、来るな」
「え?」
「来るな、来るな化け物っ!
さやかに化けて僕らを騙すつもりかっ!?」
「ち、ちょっと恭介? 仁美っ………」
「騙されませんわっ、
さやかさんに化けてわたくしたちを騙すつもりですのっ!?」
「おいっ、お前ら………」
杏子が剣呑な眼差しと共に動き出そうとした時に、
さやかは踵を返していた。
「匕首・十六串呂」
「へっ?」
青春の逃避行へと駆け出した美樹さやかは、
気が付いた時には幾筋もの帯の中に絡め取られていた。
「稲光尾籠」
「へ? えええええっ!?!?!?」
「………」
稲光と共に帯が消え、
その場にぱったり倒れたさやかを杏子は少々不思議そうに見下ろしていた。
「さて、あなた達」
百戦錬磨の杏子からしてそうであるからして、
目が点になっていた上条恭介と志筑仁美が振り返ると、
そこでは見覚えのない少女が優しく微笑んで声をかけて来た。
「取り敢えず、逃げたら無事は保障しませんよ」
目の前で野太刀夕凪をすとん、と、地面に突き刺され、
微笑む刹那の前で恭介は左腕の杖を手放し仁美に支えられた。
「初めまして、私は桜咲刹那、
最近転校して来た見滝原中学校の三年生です」
「それはご丁寧に、
見滝原中学校二年生志筑仁美です」
「あ、二年生、上条恭介です」
刹那に合わせて丁寧に一礼する仁美を見て、
恭介もそれに倣っていた。
この時仁美は察していた。
この桜咲刹那と言う自称先輩、
少なくとも余所行きの立ち居振る舞いを叩き込まれた人物であると。
「既に、この空間が
あなた達の常識が通じない状況であるとご理解いただけると思いますが」
「それは、確かに」
刹那の言葉に仁美が応じる。
「それを前提に論より証拠から始めましょう」
「?」
言葉と共に刹那が腕を×字に組み、
二人はそれを不思議そうに眺める。
「!?!?!?」
ここにいるほぼ全員、
行きがかり上少し遠くで成り行きを見守っていたマミを含めて目を見張る。
「暴れたら危ないですよ」
そして、気が付いた時には、
距離を飛ばす様に接近していた刹那の両腕に抱えられる形で、
恭介と仁美は空中に浮遊していた。
「非常識な話である事を、実感いただけましたか?」
「はい」
コクコクコクコク首を縦に振る恭介の側で、
刹那の問いに仁美が応じていた。
「簡単に言いましょう。
この世界には、あなた達が知らない所で人間を食らう魔物がいる。
そして、それを退治する側の者もいる。
私もそうですし、美樹さやかさんもしかりです」
「さやかが!?」
恭介が驚きの声を上げる隣で、
仁美が力強くこちらを見るのを刹那は見ていた。
「そうです。詳しい事情は申し上げられませんが、
事情により彼女はテレビのヒーローの様な使命、能力を持つ身となっています。
つまり、あの様な魔物を狩る立場です。
ですから、先ほどあなた達が見た様に、
身体や回復の機能が人間離れして強化されている所もありますが、
中身、少なくとも頭の中身は
間違いなくあなた達の知っている美樹さやかさんです」
「………謝らなくては………」
ぽつりと言った仁美に、刹那が小さく頷く。
「そ、そうだ、さっきさやかに、っ………」
恭介が気が付いた時には、その鼻先に夕凪の鞘の底が向けられ、
恭介は腰を抜かしそうになった。
「もちろん人に知られてはならないミッションであり、
今回はその無知と言う事で、むしろこちらの不手際と言う事で聞き流しますが、
私としても、
大切な仲間を侮辱された時為すべき事は心得ているつもりです」
「はい」
一瞬、杏子ですらひやりとする眼差しが向けられたが、
それでも、恭介は精一杯の返答を返す。
刹那は静かに微笑んでいた。
「では、先ほどの私の説明を聞いたと、
美樹さんにはそう伝えて、後は今まで通り接してあげて下さい。
今後、この件に関しては深く関わらず、もちろん他言無用で」
「はい」
「分かりました」
「只、少々よろしいですか?」
「はい」
ついっと目で促され、仁美がちょっと恭介を離れて、
歩き出した刹那に接近する。
「そういう訳で、実の所さやかさんがこの役についたのはごく最近の事でして、
あなたに悪気が無いのは重々理解しているのですが、
その事でここ数日些か精神的な負担が大きかったと言う事情がありましてですね。
長くは言いません、私がさやかさんから無理に聞き出した例の案件を
せめて三日だけでも延長していただけないかと。
これは、あくまでお節介な先輩からの勝手なお願いとして、
嫌なら聞き流していただきたいと」
「分かりました。
魔物とやらから助けていただいた事、侮辱してしまった事は本当ですから、
こうした貸し借りを放置するのは余り好きではありませんので」
「ありがとうございます」
「………愛されているのですのね、さやかさん」
「少々面倒ですが、むしろだからこそ好ましい気性だと」
「ですわ」
思わずほおほおほおーっと呼吸する刹那に、
仁美は実に魅力的な微笑みを返し、
刹那の優しい微笑みに見送られて仁美は秘かな想い人の元に戻る。
ーーーーーーーー
「さやかっ!」
「さやかさんっ!!」
「ん、んーっ………」
薄目を開き、見覚えのある顔を認識したさやかがガバッと跳ね起きた。
「ここ、って………」
「良かった、気が付いた」
恭介がほっと胸を撫で下ろし、さやかが周囲を見回す。
さやかが横たわっていたのは、公園のベンチだった。
「あ、あの、さやか………」
「桜咲先輩から伺いました」
毅然とした態度で言う仁美に、さやかが目を見開いた。
「詳しい事情は教えていただけませんでしたが、
何やら人を害する魔物を狩る特別なお仕事をなさっていると。
先程は事情も分からず酷い事を言ってしまい、
本当に申し訳ありませんでした」
「ごめん、さやか」
仁美に続き、恭介も深々と頭を下げるのを見て、
茫然としていたさやかもくしゃっと笑った。
「うん、いいよ、分かってくれたんだったら」
「良かった」
「いやー、そりゃあんなのびっくりするよねー」
「うん。よく分からないけど、有難うさやか。
それに、ごめんね」
「有難うございます」
「どういたしまして」
「さやかさん、少々女同士のお話を」
「………分かった」
仁美に促され、さやかと仁美が石造りの柱の陰に移動する。
「この様な騒ぎがありましたから、
今日の所は保留させていただきます。
ここは一度、休戦と言う事に致しましょう。
近い内にリミットをお話合い出来ましたら」
「………分かった、仁美がそう言うなら」
「それでは」
魔女退治の作戦会議に匹敵する眼差しで応じたさやかの前で、
仁美がにこっと笑って大きな声を出す。
「そういう訳で、今後もさやかさんはさやかさん、
その事に変わりはないと言う事を」
「うん、そうしてくれるんなら」
仁美の言葉にさやかが言い、恭介も頷いていた。
「いい先輩ですわね」
「うん」
「………白き翼のナイト様………
いえ、サムライですか」
「ん?」
仁美の呟きをさやかが聞き返し、
仁美は可愛らしく微笑んだ。
ーーーーーーーー
「余り無理しちゃ駄目よ。桜咲さんは魔法少女ではないし、
私も美樹さんや近衛さん程得意なタイプじゃないんだから。
悪くすると後遺症が残るわよ」
「面目ない」
公園の構造物の陰で、刹那の脚を手で包み込みながらマミが言い、
脂汗を浮かべていた刹那がぺこりと頭を下げる。
「おーおー、無理しないでさやかに頼んどきゃ良かっただろうに」
「………先輩の矜持、ですかね」
「だわな」
佐倉杏子と桜咲刹那が苦笑を交わし、杏子が紙箱を差し出す。
「食うかい?」
==============================
今回はここまでです>>278-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>288
× ×
「大きいねー」
「芸術ね」
「芸術、ねぇ………」
巨大なダビデ像を見上げ、
素直な感想を漏らした鹿目まどかに暁美ほむらが続く。
その側にいるまどかの幼馴染美樹さやかは、と言えば、
巨大な芸術には少々思う所があるのか
やや複雑な感慨を漏らす。
「近衛さん」
「こんにちは」
その側で巴マミと近衛木乃香が挨拶を交わす。
「遠路はるばるおおきに」
「こちらこそ、お招きいただいて」
「有難うございます」
丁重に頭を下げる木乃香にマミも礼を返し、
まどかもそれに倣った。
「来てくれたんやなぁ」
「ああ、ご馳走してくれるって言うからな、
作法は期待するなよ」
「おおきに」
不敵に笑って言う佐倉杏子に木乃香がにっこり応じ、
どうにも叶わない、と杏子は苦笑する。
マミの側にいたまどかは木乃香の隣に視線を移す。
「いらっしゃい、麻帆良にようこそ」
「有難うございます」
ふっ、と、まどかと目が合った桜咲刹那が優しく微笑み、
双方丁寧に礼儀を交わす。
(桜咲刹那………)
その様子をほむらが伺う。
「転校生、二つばかり言いたいんだけど」
「何かしら?」
「やっぱり、刹那さんこっちがホームだよね、
特にこのかさんの隣。
の、割には、まどかと目と目で通じ合ってる。
やっぱ、保護欲誘うのかなまどかって」
どうも聞こえそうな声でひそひそ問いかけるさやかの声を聞き、
ほむらとしては変に鋭い青魚の顎の下に銃口を突っ込む事を
一瞬の妄想で済ませて素知らぬ顔を作る。
取り敢えず、週末を利用しての木乃香からのお茶会の誘いが
多少の伝言を経てこのメンバーに齎され、
こうして麻帆良学園都市女子校エリア
ダビデ広場に集合して今に至っていた。
それに合わせて、
見滝原に滞在していた桜咲刹那も一度麻帆良に戻っていたらしい。
「ほな、行こか」
「え、ええ」
木乃香の声に、つと周囲に視線を走らせていたマミが応じた。
ーーーーーーーー
「わあー」
今度こそ、まどかとさやかが感嘆の声を上げた。
「近衛さん素敵」
「おおきに」
マミの言葉に、振袖姿の木乃香が素直に応じた。
「うんうん、マジ可愛いっすよ、
なんか舞妓さんみたいと言うか」
「おおきに」
さやかの言葉に木乃香がにっこり微笑み、
さやかは脇腹に鈍い痛みを覚える。
「何? 転校生?」
「この場合、舞妓さんって言うとちょっと失礼なのよ
京都のお嬢様には」
さやかの囁きに、
肘鉄を打ち込んだほむらに代わりマミが渋い顔で囁く。
「あ、いや、あはは、流石は京都のお姫様、
でもホントに可愛いですよ」
「はい、お人形さんみたいです」
「おおきにな」
そんな挨拶を交わしながら、まどかが視線を動かす。
「て言うか、刹那さんも格好いいですよ」
さやかの言葉に、白小袖緋袴の刹那が小さく頭を下げた。
「そろそろ、始めましょう」
かくして、一同毛氈に移動する。
「でも、学校の敷地にこんな所あるんですね」
「普段は茶道部で使こてるけど、空きがあって申請通ったさかい」
周囲の日本庭園を見回すさやかに木乃香が言った。
取り敢えず、事前にマミから一応の注意を受けていたとは言え、
この庭園で実際がさつ者の自分が見ても溢れる気品が眩しい
振袖姿の木乃香を前にして、
自分の格好を見て上条恭介のコンサートを経験していて良かった、
と美樹さやかは思う。
付け加えると、その点はまどかもおよそご同様、
マミも一応のドレスコードを把握し、ほむらは制服姿で
杏子も、まあ見苦しくはないと言う辺り。
木乃香の一番側に正座したマミと木乃香が言葉を交わし、
マミに合わせて一同もお辞儀をする。
「お先に」
「頂戴します」
まずはお菓子の羊羹が回される。
実際にはマミも丸暗記に近かったが、
それでも、他の面々はこちらで用意されていた懐紙を使い
マミに倣って菓子を食する。
平均的に言って、上品な甘さ、取り敢えず美味しいのは確か、
と言うのがここの面々に辛うじて分かる評論だった。
ここまでの手順も、そして、茶を点てる手前も淀みなく、
木乃香からマミに茶碗が回される。
マミが口をつけ、杏子に続きさやかに。
「………曜変天目………」
ぼそっ、とした杏子の囁きに、さやかの手が止まる。
ダラダラダラと汗を流しながら、
さやかがガチガチガチと主人席に顔を向ける。
そちらでは、木乃香は相変わらず
天然なんだか京女なんだかと言う微笑みを返す。
「悪い冗談よ」
少し叱責する様なマミの囁きが聞こえ、
さやかがようやく茶碗に手を伸ばす。
さやかからまどか、ほむら、最後に刹那。
「結構なお点前でした」
「おおきに」
「有難うございました」
まあ、平均的には、
真面目な素人中学生はこんなものだろう、と言う茶席だった。
「はぁー」
「ウェヒヒヒ」
脱力するさやかにまどかが苦笑いするが、
にこにこ微笑みを向ける木乃香を含め
お互い不快なものではない。
心地よい緊張感と敬意。さやかは、又あの演奏を聞きたい、と思った。
ーーーーーーーー
「ほな、続きは………」
「ごめんなさい」
「え?」
めいめい動き出した辺りで、言葉を遮るマミに木乃香が聞き返す。
「ちょっと、お友達から急ぎの連絡で、先に行っててくれるかしら?
用事が済んだら連絡するから」
片手で謝るマミに、ちょっと困惑しつつも木乃香が頷き一同が動き出した。
一度東屋の陰に入ったマミが、先行した面々を追う様に動き出す。
ーーーーーーーー
(見滝原にもそこそこあるけど………)
日本庭園を出た巴マミは、
女子校エリアの路上で周囲の光景に少々心を奪われる。
(こういう西洋意匠、私は好きだけど………)
次の瞬間には、マミは駆け出していた。
ーーーーーーーー
ヨーロッパ風の建物と建物の間、
黄金に近い黄色の輝きと共にそこに駆け込んだマミは、
耳で追って斜め上を見る。
そちらでは、人影がタンタンターンッと壁を蹴って別の壁へ、と言う形で、
上へ上へと跳躍している。
その時には、マミの肩にはバズーカ的なものが担がれていた。
「!?」
砲弾は跳躍する人影をすり抜けて追い抜き、
上空で弾けて幾筋ものリボンを降らせる。
人影は、跳躍から落下に転じ、地面をジグザグに動き始める。
一瞬、相手がマミを狙った一瞬をとらえ、
マミが右手に握ったアンティーク拳銃を発砲する。
その銃弾は鋭く交わされ、マミの目の前で、
動きにデタラメさが加わったゴム鞠の様な跳躍が弾ける。
ざっ、と、振り返ったマミが左手の拳銃を発砲した時には、
マミは腹の下に気配を感じていた。
路地裏に、ごうっと旋風が一回りした。
「バスケットかしら?
得意のアクロバティックを少し過信したわね」
マミの右手に握られたリボンが、
目の前で魔法拳銃を握る相手の右手を引きつりながら白い首に絡みつく。
「降参して付け回す理由を話すなら綺麗に治癒してあげる。
暴れるなら、死ぬわよ」
魔法アンティーク拳銃を左手に握り見下ろすマミから見えるのは、
ざっとくくった黒髪、地面に赤い血を吸わせている撃ち抜かれた左足の甲。
ビスチェタイプの黒い衣装から
半ばはみ出した白い膨らみその豊かさを示す深い谷間。
==============================
今回はここまでです>>288-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>294
「!?」
捕獲した尾行者の右腕と首に絡み付いていたリボンが切断され、
巴マミはざっと飛び退く。
リボンを切断した銃弾が近くの壁にぴしっと着弾したかと思うと、
マミは両手持ちしたマスケット銃を斜め上の空に発砲していた。
「く、っ」
「ちっ!」
その間に、リボンを逃れた尾行者明石裕奈が左足を引きずってその場を逃れ、
マミは飛来する銃弾を避けて裕奈と距離をとる。
(あの隙間から狙い撃ち、っ!?)
魔法でばばっと生成するマスケット銃で反撃を行いながら、
立ち並ぶ建物の隙間を抜ける敵方の銃弾にマミが舌を巻いた。
無論、魔法の力により、
その銃弾は本来のマスケット銃の威力よりも遥か遠くの空を貫く。
「ゆーなっ!?」
「あ、ああ」
表通りに出た所で、裕奈は無理に笑顔を作る。
「どうしたん!? 今治すなっ!」
路地裏では、たんっ、と、後ろに跳躍しながら、
マミが両手のマスケットを発砲する。
その銃弾は地面に突き刺さっていた。
地面に突き刺さった銃弾からぶわっ、と、膨大なリボンが下から上に噴出し、
巴マミはリボンの壁を前にしながら建物の壁から壁へ、
手に持ったリボンをアンテナや鉄柵に絡めながら上へ上へと跳躍していた。
ーーーーーーーー
「!?」
すたんっ、と、巴マミが建物の屋根に着地した所で、
次の瞬間にはスリップして屋根に手をついていた。
マミが、右手に生じさせたアンティーク拳銃で、
自分の右足首に絡み付き引っ張られたピンク色のリボンを銃撃する。
その次の瞬間には、
とんとんーっと弾む動きで急接近して来た相手を認識し、
びゅびゅっ、と、振られた棍棒を交わし、マスケット銃の打撃で弾き飛ばす。
相手が距離をとったためマスケットで発砲したが、
その相手は見事な跳躍で横に交わす。
(バスケットの次は新体操?
魔力も感じるしレオタードって間違いなく魔法で変身の類。
動き自体、跳躍に柔らかさも少し、いや………)
ガンガンガンッ、と、棍棒とマスケット銃が叩き合い、
ぱあーんっ、と、発砲したがその銃弾は彼方へと無為に飛び去る。
(かなり、厄介ね)
空中で、ピンクと黄色のリボンが絡み合い、引っ張り合う。
マミが手を放し、
ピンクのリボンを引く佐々木まき絵が姿勢を崩した瞬間、
マミはばばばんっと屋根に発砲して後ろに跳ぶ。
「わっ!」
屋根に埋まった銃弾からぶわっと黄色いリボンが噴き出し、
たたたっと接近して間一髪リボンに飲まれそうになりながらも
まき絵は一度後ろに跳躍し、迂回していた。
(もらった、あっ? ………)
>字型のステップ跳躍でリボンを避け、
そのまま斜め前方にいるマミに跳躍したまき絵は、
華麗な捻りと共に目の前のマミのベレー帽を棍棒で一撃し、
ぼこんっ、と言う感触がまき絵の手に伝わる。
その瞬間、たんっ、と後ろに跳躍しながらまき絵がリボンを放った。
次の瞬間には、マミの形をしていたリボンがぶわっと解けて膨張し、
ごうと渦巻きまき絵を飲み込まんとした大量の黄色いリボンに
まき絵が放ったピンクのリボンが絡み付き、縛り上げていた。
膨張したリボンがまき絵の手で締め上げられ、
まき絵はその向こうに一瞬、マスケットを構えたマミの姿を見る。
マスケットから放たれた銃弾が、
まき絵の左手から放たれた棍棒を弾き飛ばす。
その時には、まき絵は高々と跳躍していた。
ざざっ、と、双方向き直して対峙する。
まき絵が棍棒を、マミがマスケットを構え直そうとした所で、
マミは一瞬視線を横に向けた。
きらっ、と、遠くの銀の光を目に感じたマミがたんっ、と、飛び退く。
そちらからの銃弾が屋根の上を突き抜け、
マミが両手持ちしたマスケットをだだだんっと屋上に撃ち込みながら、
その銃弾から噴出するリボンの壁に足を止めるまき絵を後目に
マミは屋根から別の屋根へと跳躍した。
ーーーーーーーー
「!?」
麻帆良学園都市女子校エリア内にある取り壊し予定の店舗ビルの屋上で、
龍宮真名は愛銃レミントンM700を置く。
そして、背後に颯爽と現れた巴マミの姿を二挺拳銃で容赦なく撃ち抜き、
その巴マミに化けていた大量のリボンが渦巻いて真名を襲撃するのを
少々高価な爆符で吹き飛ばす。
真名がその身を翻し二挺拳銃を発砲する。
マミは、それを横っ飛びに交わしながら両手のマスケットを発砲する。
「!?」
(今回はコスト割れだな)
高く跳躍していた真名は、
爆符の爆発と共に真名は床に空いた穴へと消える。
「!?」
着地した真実は、
前方の天井が爆発して何かがぶち抜けるのを目の当たりにする。
その天井から瓦礫と共に落下して来た巴マミは、
ぱん、と、柏手を打つ。
外側に開く両手の動きに合わせ、何挺ものマスケット銃が空中に浮遊した。
(威力はある、大量に発生させる事も出来るが
マスケットはマスケット、足利義輝タイプか)
廊下を低く跳躍し、頭上を突き抜ける銃弾を感じながら、
真名は二挺拳銃を発砲する。
双方の銃弾が交わされ、たんっ、と、双方が前に跳んだ。
どんどんっ、と、双方が手にした拳銃、マスケットを発砲し、
双方が身を反らしたそのすぐ前の空中を銃弾が飛び去った。
ーーーーーーーー
「ほら、埒が明かないわ」
取り壊し予定の店舗ビルだった瓦礫地帯で、
一歩程度の距離の龍宮真名にマスケット銃を向けた巴マミが言った。
「ああ、そうだな」
片手拳銃の龍宮真名が、
右手に握るデザートイーグルの銃口をマミに向けたまま低く呟く。
次の瞬間、マミの左手が彼女の首元からリボンを引き抜き、
猛スピードでマミに迫る五百円玉を弾き飛ばす。
たたんっ、と、瓦礫の上で双方距離を取り、
びゅう、と、マミが振り下ろしたリボンの房が
飛来する五百円玉を叩き落とす。
「!?」
そして、双方が銃口を向け直そうとした瞬間、
その足元で衝撃が弾けた。
「どうもー」
「あなたはっ!?」
そこに現れた明石裕奈が二挺の魔法拳銃を手ににへらっと笑い、
それを見たマミが声を上げる。
「うん、色々有耶無耶にして欲しいって言う
ここまでの努力は非常にありがたいんだけど、
ここは一つ私に預けてくれないかな?」
「それは、学園警備からの要請と受け取っていいのか?」
「その辺は、さ。話通しとくから頼むわ龍宮さん」
「………いいだろう」
「って、事で、それぞれみんなここ離れて、
あなたは私に付いて来て。
そうした方がいいと思うよ、この状況見ても」
「そうね、是非納得のいく説明をいただきたいものね」
ーーーーーーーー
「派手にやったねー、
近づいただけでも口ん中じゃりじゃりしてる」
第二体育館のシャワー室で、
土埃を洗い流しながら裕奈が言った。
「シャワーを浴びて、と言うかそれ以前に、
ケガは大丈夫なの?」
その裕奈に案内され、
裕奈の隣のシャワーブースでシャワーを浴びながらマミが尋ねる。
「うん、大丈夫。
身近に治癒魔法使える仲間がいるから」
「近衛さんの事?」
「あれは特別、
あれ程じゃなくてもまあ筋はいいって言われてる私の仲間」
拭いた体を着替え筒に包み、
黒髪をバスタオルで拭いながら裕奈がブースを出る。
「そっちこそ、ケガない?」
同様に、ブースから出て来たマミに裕奈が声をかけた。
「ええ、これからお友達と合流するから、
シャワーを借りて正直助かった」
「どういたしまして」
「もっとも、元はと言えばあなたのせいなんだけど、
一体あなたは何者でどういうつもりなの?
あなたも魔法使いでいいのかしら?」
「最後の質問に就いてはYes、
魔法使いの明石裕奈、よろしく凄腕のマギカさん」
「巴マミよ、魔法使いが私達魔法少女に敵対するつもりなのか、
きちんと説明して頂戴」
「分かった」
真面目に釘を刺すマミに、
少々軽薄にも見えた裕奈も真面目に応じた。
ーーーーーーーー
「マミさん、遅いね」
「何やってんだろ?」
麻帆良学園女子中等部寮643号室で、
テーブルの前に座ったまどかとさやかがひそひそ話をする。
「お待たせ」
そして、台所から木乃香がお盆を持って現れた。
「美味しい」
木乃香が入れた紅茶に、さやかが声を上げる。
「やっぱり、このかさんの紅茶って美味しいわ、
マミさんもそうだけど、
あたしなんかがやるのとは段違いだもんね」
「美味しいです」
「おおきに」
さやか、まどかと木乃香が言葉を交わす中で、
ほむら、杏子と刹那もめいめい紅茶を楽しむ。
ーーーーーーーー
マミは、肩の上からこちらを見る子どもと目が合い、
くすっと微笑んでいた。
裕奈はマミを案内して教会に入り、
ちびっこシスターをおんぶした同年代のシスターと言葉を交わす。
小さなシスターはすとんと着地して、
おんぶしてくれたシスターと共にその場を離れる。
その仲の良さそうな二人をマミは微笑ましく見送っていた。
「そうだね、何処から話そうかね?
取り敢えず、折角麻帆良に来たのに
不快な思いをさせたのは謝る、この通り」
「それは、ここからの説明次第ね」
「そうだね」
裕奈とマミが、中央近くの長椅子に並んで座る。
もちろん油断なく目を配っていたつもりだが、
この時点で、マミはもう余り悪い印象を持ってはいなかった。
この明石裕奈、さっぱりとして見える気性はさやかにも似ていて
憎めない明るさと芯の強い真摯さが見える。
確かに割と本気の攻防はあった訳だが、
利害の衝突で刃物沙汰になりかねない、
そういう日常を送っているのはマミも同じだ。
大体、ダメージ自体は裕奈の方が大きいもので、
譲れないものがあっても、それが常に個人的な好悪に直結するとも限らない。
先程は、湯殿に通せば丸腰の所を襲撃出来る、
と思っているなら魔法少女相手にむしろ好都合だと誘いに乗ったが、
全くそんな事もない善意のお誘いだった。
「さっき、学園警備とか言ってたわね」
「うん、まあー、私の所属、かな?
魔法使いの事は知ってるんだよね?」
「ええ、一応の事は桜咲刹那さんから聞いてる」
「そ。この麻帆良学園そのものが関東の魔法の一大拠点であり
関東魔法協会の中枢って事になるんだけど、
関東魔法協会の正式な組織として麻帆良学園の警備に当たるのが学園警備。
私はそこでエージェントの見習いをしている。
もう少し言っちゃえば、学園警備と3Aの二重スパイってとこかな?」
「二重スパイ、ってそんな事言っちゃっていいの?」
「それじゃあ、パイプ役って事にしとく?
3年A組が独自にあなた達マギカ、
魔法少女と接触して動いているみたいだから、
そっち関係で何かあったら報せる様にって先輩から言われててさ。
そしたら、このかちゃんがあんたらこっちに呼ぶって小耳に入ったから
探り入れてたらこんな感じになったって事で」
ーーーーーーーー
「でも、凄いっスねーこのかさん」
「ん?」
「だって、あんなばっちり野点して、
それで紅茶もこんなに美味しいって。
正に和洋折衷流石はお嬢様」
「ややわー」
「ま、旨いモンは旨い」
さやかの誉め言葉に木乃香がころころ笑い、
楽な姿勢でクッキーを口にしながら杏子が言った。
「ふふっ、うちも知ってたけど教えてもろたからなぁ」
暁美ほむらが一人静かに紅茶を傾け、ちらっと視線を走らせる。
「それはもしかして、この子が関わりあるのかしら?」
「えっ?」
ーーーーーーーー
「3年A組、って、学校のクラスみたいに聞こえるんだけど」
「そうだよ」
マミの問いに、裕奈はあっさり応じる。
「ええと、ごめんなさい。
学園警備が魔法協会の正規の組織なのはいいとして、
学校のクラスとの二重スパイ?
そう言えば、この学校自体が………」
「うん、麻帆良学園と関東魔法協会がイコール、
現実問題としてこう説明しても否定するほど間違っていない」
「それじゃあ、あなた達のクラス、ここの学校は魔法使いの学校か何かなの?
あの、えーと例えばホg………」
「あーごめんちょっと違う。
確かにそれこそイギリスにはガチでそういう学校もあるみたいだけど、
麻帆良学園に関しては微妙に違うんだわ」
「訳が分からないわ」
「そうだね」
微笑み、同意しながら裕奈はスマホを操作する。
「どっから説明したらいいかなーって思ったけど、
やっぱりここからかな?」
「………この子? ………」
ーーーーーーーー
「図書館?」
ほむらが目で指した先、写真立ての写真を見てさやかが言う。
「ではないわね、個人の書庫かしら?」
「うん、ちょっと高い所にあるねこの本棚」
「それに、さっきからよく見かける制服だから、
ここの学校の行事、或いは調べもの」
「ああ、さっきからよく見かける顔が二つ程写ってるな」
ほむらの推測に続き、
杏子が視線を走らせた先で刹那はポーカーフェイス、
このかがにっこり微笑んだ。
(近衛木乃香はとにかく、
桜咲刹那のこの柔らかい笑顔。そして………)
「可愛い」
さやかが、ぽつりと言った。
「何て言うか、国際色豊かなの?
金髪の女の子とか白人の男の子とか」
「いや、ちょっと待て」
そこで杏子が言う。
「子ども、だよなこれ?」
「そうね、明らかに子どもなのに同じ制服を着てる。
男の子の格好も、ちょっと珍しいと言うか」
「あれ? もしかしてこのかさんの紅茶って?」
話を元に戻したさやかに、木乃香がにっこり微笑んだ。
「そうや、一緒によう勉強したなぁ」
「この子って………」
ーーーーーーーー
ネギ・スプリングフィールド
==============================
今回はここまでです>>295-1000
続きは折を見て。
F9 色盲絵師 福島 炎上 業者 まどか☆マギカ マギアレコード アニメ板
https://2ch.me/vikipedia/F9
それでは今回の投下、入ります。
==============================
ーーーーーーーー
>>306
「白人? 可愛い男の子ね」
「でっしょー」
スマホを手ににへらっと笑った明石裕奈の横顔を、
巴マミは微笑ましく見ていた。
まるで、自慢の弟を誉められた様だと。
そして、裕奈がすっすっとスマホを操作する。
「これが、3年A組、私達のクラス」
「………見知った顔が何人もいるけど………
この子、さっきの男の子よね?」
「うん。ネギ・スプリングフィールド、
私達の担任の先生」
ーーーーーーーー
「これが、うち達のクラス3年A組や」
女子寮643号室で、
近衛木乃香がミニアルバムの集合写真を見せていた。
「あ、このかさんに刹那さん………
さっきの男の子?」
「ますますおかしいわね」
美樹さやかの言葉に暁美ほむらが続いた。
「その辺りの事は、私から」
口を開いたのは、桜咲刹那だった。
「最初に、今私達がいる麻帆良学園。
この学園自体が、関東魔法協会とイコールに近い関係にあります。
表向き普通の学校で、
実際に普通の生徒や教師も少なからず在籍していますが、
その中枢は魔法組織である、そう思っていただいて結構です」
「そういう学校あるんだ」
「丸で秘密結社ね」
「そう考えていただいても構いません」
さやかに続いたほむらの言葉に、刹那が同意を示す。
「そして、この少年、ネギ・スプリングフィールドは、
私達3年A組の担任の先生です。
イギリスの魔法学校を首席で卒業し、
学業成績と形式の上では大学卒業相当の飛び級が認められています。
そして、魔法学校の卒業実習を兼ねて
この学校の私達のクラスに担任教師として着任した」
「子ども、ですよね」
「弱冠十歳です」
やや怖々と尋ねたまどかに刹那が答えた。
「いやいや、幾らお勉強が出来たって………
まさか、魔法で支配してるとか?」
「そんな事は出来ませんよ」
さやかの言葉に、刹那はふふっと笑って言った。
「第一に、そういう魔法の濫用は禁止されています。
第二に、学校自体が魔法組織で、
教室内にはネギ先生を超える実力者がいるぐらいです。
かく言う私も、少なくとも当初の時点ではその中にいました」
「魔法使いの学校、ねぇ」
刹那の説明に佐倉杏子がお手上げした。
「答えを言えば、ネギ先生が才能に恵まれた誠実な努力家だった。
確かに大変な事も多くありましたが、
それを乗り越えるだけの力量も持ち合わせていました」
「………それに、形の上で私立みたいだから、
余り目に余るケースは正式に排除も出来る」
「それも無いとは言いません。
言わば、前提ですね」
ほむらの言葉に刹那が応じた。
「十歳の、先生ねぇ」
「ええ。ですから、少なくとも最初の段階では、
今でも少なからず、クラスの生徒からは可愛い弟扱いもされていますが、
それでも、一生懸命先生としての役目を果たすネギ先生に、
私達もそれに応じて来たと言う事です」
「ふうん」
そんな、さやかと刹那のやり取りをほむらは横目で見ていた。
「あなた達は、その中でも親しかったと言う事かしら?」
「否定はしません」
ほむらの問いに刹那が答える。
「色々あったからなぁ」
木乃香が、そう言って天を仰いだ。
「うん、色々あってな、
ネギ君この部屋に住んでるん」
「は?」
木乃香の言葉に、さやかがぽかんと応じた。
「最初にこの学校に来た時、ネギ君の住む所が決まってのうて、
それでうち達の部屋に住めばいいってお爺ちゃんが」
「このかお嬢様の祖父は麻帆良学園学園長であり、
関東魔法協会の長でもあります」
「魔法世界のザ・お嬢様がここにいる」
刹那の説明にさやかが乾いた笑いと共に言い、
木乃香はにこにこ受け流す。
「ネギ先生は優れた魔法使いであり、この麻帆良は魔法の拠点。
木乃香お嬢様も、本来は一般人としての生活が家の意向でしたが
最終的には魔法に関わる事となりました。
そこで、魔法に関わる様々な事件、出来事があり、
私達、私やお嬢様、ネギ先生、アスナさん、
他の皆さんが関わっていく事になったのです」
「アスナさん?」
「それは、もう一人のルームメイト、と言う事かしら?」
鹿目まどかが聞き返し、すっと周囲を見たほむらが続いた。
「そう、この部屋は今、
うちとアスナ、ネギ君の部屋として使こてるさかい」
そう言って、木乃香はふふっと少し寂し気に微笑む。
「でも、そんな可愛い子で凄い魔法使いって会ってみたいかな?」
「それは、少し難しいですね」
さやかの言葉に刹那が苦笑する。
「魔法の世界で少々大きな出来事がありまして、
ネギ先生とアスナさんはそちらの関係でここを離れる事が多くなりましたから」
刹那の言葉と共に、まどかはちらっと木乃香の顔を見る。
何処か寂し気なのはそのせいか、と。
「ネギ先生が凄いのは聞いたけど、
アスナさんもそれ程の人物なの?」
「そういう事になります」
「………ちょっと、寂しいなぁ」
ほむらの問いに応じた後に刹那が言い、
木乃香がぽつっと口にした。
「京都からこっちに来て、うちがちょっと馴染めんかった時に
最初に友達になったのがアスナやったから。
今言うたみたいに私立の学校で人の異動も少ないさかい、
ずっと一緒やったから、いない事が多くなると寂しいわ。
うちの事もネギ君の事も力一杯引っ張ってくれて。
ネギ君も、ここで一緒になって、弟が出来たみたいで楽しかったからなぁ」
「そうですね」
はんなりと言葉を紡ぐ木乃香と優しい口調の刹那を、
ほむらは静かに見ていた。
ーーーーーーーー
「ごめんなさい、担任の、先生?」
「うん。まあ、付いて行けないのは当然だと思うけど」
教会で、聞き返したマミに裕奈が言った。
「ネギ先生、ネギ・スプリングフィールド。
イギリスの魔法学校を首席で卒業した天才魔法少年。
形の上では飛び級の大学卒業扱いだとかで、
魔法学校の卒業実習もかねてこの学校の先生になったって事。
この学校、麻帆良学園は実質的に魔法使いが作って
裏から仕切ってる学校だからね」
「そういう学校、だったわね」
「そ、関東魔法協会の長が学園の学園長ってぐらいで、
生徒にも教師にもその筋の人間が大勢いるからね。
まあー、私も知ったのはつい最近、
ってぐらい普通の生徒も結構いる訳だけど」
「ちょっと、集合写真をもう一度見せてもらえるかしら?」
「どうぞ」
裕奈が差し出したスマホを、マミは改めて見直す。
「あなたと桜咲さん、近衛さんね。
それから、さっきのスナイパーと新体操の娘もいるわね」
「こっちは佐々木まき絵。
私と同じ時期にこっちの世界に首突っ込んだんだけどさ、
私の親友だから、私が大怪我したの見て
反射的に巴さんに突っ掛かって行ったんだね。
それは私が悪かったし私からもよく話しておくから許してあげて」
「それで、こっちのスナイパーは?
佐々木さんは新体操の技量はとにかく実戦は素人っぽい粗があった。
だけど、スナイパーは尋常な使い手じゃない」
「龍宮真名、巴さんの言う通り魔法使いの凄腕スナイパー。
この人の事は、正直言って私にもよく分からない。
3年A組でも話す機会は少ないし、
依頼で動くタイプだから魔法協会とのパイプはあるんだろうけど、
どういう筋で動いているのかまでは把握出来ないんだ。
さっきのは多分行き掛り上私を助けようとした訳で、
これはどっちかって言うと私のドジで
龍宮さん自身は筋の通らない事はやらないと思う。
それで、こっちから聞くけど、
巴さんはどうして魔法使いの事を知ったの?」
「桜咲さんの方から接触して来た。魔女の結界でね。
あなた達魔法使いは本来私達魔法少女には関わらないとも聞いてるけど、
見滝原の魔女の発生率が高くなってるとかで、
そちらの魔法協会の内内の指示で調査しているって」
「成程ねぇ。それでここに来たのは?」
「近衛さんに招待されたから。
以前に見滝原でも紅茶のお茶会を開いた事があって、
それで、今度は麻帆良で野点に招待したいと」
「ちょっと待って、刹那さんが魔法少女の調査をしていたって?
魔女、って、そっちで狩ってるモンスターの事だよね?」
「ええ、魔女を狩るのが私達魔法少女の使命。
桜咲さんが関わって来る迄は、そこに魔法使いが関わる事は無かった」
「それは、刹那さんとこのかちゃんが?」
裕奈の問いに、マミが首を横に振った。
「近衛さんは桜咲さんを勝手に追いかけて来たみたいね、
桜咲さんも驚いていたみたいだから。
桜咲さん、近衛さんも明石さんのクラスメイト、でいいのよね?」
「うん、3Aのクラスメイト。
只、特に刹那さんに関しては詳しいって程詳しい間柄でもないけどね」
「やっぱり、魔法協会の魔法使いなの?」
「と、言うか、ネギ・パーティーのコア・メンバーだね」
「ネギ・パーティー?」
マミの問いに、裕奈は椅子に指で同心円を描き始める。
「色々あって、特に夏休みにね、
それで3年A組は私も含めてかなりの部分魔法関係に染まっちゃったんだけど、
魔法関係、それ以外含めてネギ先生を中心としたパーティーが出来てるんだ。
参加した時期が幾つかに分かれるんだけど、
はっきりコア・メンバーなのは」
裕奈がスマホの集合写真を指す。
「ネギ君、神楽坂明日菜、近衛木乃香、桜咲刹那。
この四人で間違いないと思う。
元々刹那さんを除く三人は女子寮の同じ部屋に住んでるし」
「ネギ先生も?」
「うん。まだ子どもだからって事で、
成り行きでそういう事になった流れだけどね。
でも、魔法関係の事でもかなり早い段階でこの三人はつるんでたって聞いた。
そして、刹那さんとこのかちゃんは故郷の京都で大親友。
その縁でアスナの剣の師匠で、
刹那さん普段はちょっと冷徹で怖い人に見えるんだけど
特にこの三人には心開いてる感じかな。
それで、ネギ先生からの信望も厚い」
「ええ、私も桜咲さんは信頼に値する人だと思う。
命がけの魔女退治に何度も同行しているから間違いない」
「その辺は間違いないと私も思うよ。
只、こっちの仕事始めて分かったんだけど、
刹那さんって所属が結構複雑でね」
「魔法協会じゃないの?」
「と言うか、近衛家の直属なのかな?
刹那さんが使う剣術は京都神鳴流、
この流派は京都で陰陽師とかと一緒に魔物退治してたそういう流派。
フィクションだとあの狂言の人がやってた映画とかの怨霊退治の裏側に、
って言ったらもっと分からなくなるか」
「大丈夫、ゴ○ラの人がやってたあの映画ね?」
「それで合ってる。
近衛家はその時代からの京都の超大物で、
今でも格式、能力ともに
日本の魔法、呪術のトップに君臨していると思っていい。
だから、青山家を宗家とする神鳴流も近衛家とは密接な関りがあった。
歴史の教科書的に言うと、京都の朝廷の下で魔物を退治していたのが神鳴流で、
その京都の朝廷の権力者で
今でも魔法、呪術の裏側に君臨しているのが近衛家って事になるから」
「やっぱり、エージェントってそういう事を調べるの?」
「まあ、それも仕事ではあるんだけど、
実際これ分かり易く調べて来たのはまき絵。
文字通りの新体操バカで勉強とかさっぱりだったんだけど、
こっちに関わってから、やたらこっち側の歴史とかにドハマリしてね。
まあ、関わったものは仕方がないって事で、
知り合った関係者も支障の無い限りの事は教えてくれてるみたいで」
「つまり、桜咲さんは京都の近衛家と?」
「そっちの影響が強いんじゃないかな?
今の近衛家は、当主の近衛近右衛門が関東魔法協会の長で麻帆良学園の学園長。
近衛近右衛門の娘婿の近衛詠春が京都在住で
関西呪術協会の長で近衛の義理の親子が東西の魔法・呪術の長を務めてる。
近衛詠春の前の名前は青山詠春、
つまり神鳴流宗家青山家の出身で実際めちゃ強い剣の達人。
近衛近右衛門の娘と近衛詠春の間に生まれた娘が」
「近衛木乃香」
マミの言葉に、裕奈が頷いた。
「つまり、今の近衛家は近衛と青山、
西と東、魔法と剣ががっちり絡んだ上に君臨してる状態になってる。
神鳴流の剣士として関東協会に属してる刹那さんが
実質的な直属なのもまあ当然だね。
学園警備から見ても独自の指揮系統で動いてる節があるし、
このかちゃんの護衛でもある訳だし」
「やっぱり」
「そう見えた?」
「ええ、漫画や時代劇でよく見る関係に見えた。
幼い頃からのお付きの者で、お嬢様は友達として心から慕ってる。
お付きは形の上では遠慮してるけど、本当は大切な友達だと思ってて、
お互いにその気持ちは通じ合ってる。
これが執事だったらちょっとしたラブストーリーな関係よ」
「まあねー」
くすっと笑って言うマミに、裕奈がくくくっと笑って答えた。
「そういう事、見りゃ分かるよね。
西と東、魔法と呪術、剣術まで加わって頂点に君臨している、
裏の魔法のスーパーサラブレッド、って、家柄だけじゃなくて、
潜在的な能力も桁違いに高いのがこのかお嬢様」
「知ってるわ、
それは私達から見てもとんでもない魔力を持っているから」
「うん。そして、そのこのかお嬢様が京都にいた時、
護衛としてつけられたのが刹那さん。
いわゆるご学友って奴だね。
流派的にも、この時は関西呪術協会の所属だったのかな?
このかちゃんがこっちの学校に来たのに合わせて
刹那さんもこっちに来て、
それに合わせて関東魔法協会に移籍したみたいだけど、
今の東と西は上で繋がってるからね。
なーんか今から思えばこっち来たばっかの頃は
このかちゃんが色々声をかけても刹那さんの方で素っ気なくしてて
このかちゃんが落ち込んでたみたいな事もあったみたいだけどさ」
「それは、多分護衛の任務を優先したから。
だから物理的にも精神的にも客観的な視座を得るために、
大切だからこそ敢えて距離をおいた。
彼女はそういう人じゃないかしら?」
「ご名答。でも、中等部の修学旅行以来かな、
なんか打ち解ける事があったみたいで、
そっからはもうじゃれつくこのかちゃんを
刹那さんとしても内心嬉しい熱々の幼馴染っぷり。
なんか、その頃に魔法絡みで色々あったみたいで、
それでアスナとも繋がって、
学校ではアスナとこのかちゃんが親友だったからね。
それでこの四人がコアな関係で結びついたって事」
「アスナさん、ね」
「うん、まあ、私立って事で長い事クラスメイトしてるけどいい娘だよ。
自分ではがさつ者って言ってるけど、
なんか馬鹿みたいに楽天的で情に厚くて。
ネギ君とか刹那さんとか、実の所このかちゃんも、
ちょっと重く考え過ぎる真面目なタイプだからさ、
アスナがいて丁度いいバランスになってる。
ネギ君の事とか、正面から止められるのアスナか千雨ちゃんぐらいだし。
ああ、千雨ちゃんってこの娘ね。
普段はちょっと距離取った感じだけど、実は頭もハートもいい奴で。
真面目過ぎて優秀過ぎて、可愛いお子ちゃまなのに一人で抱えすぎなネギ君に、
真正面から向き合っていい感じにブレーキ役になってるのかな。
だから、ネギ君からも相当信頼されてって言うか心が通じ合ってるみたいでさ」
「いい仲間、お友達なのね」
「まあー、この四人は特別かな?
ネギ君がこの学校に来てから、
私達が知らない間にも随分色々あったみたいだけど、
その辺の事をこのメンバー中心で解決してたって言うし、
それで付き合い長かったり同居してたり、
もうファミリーって言ってもいいレベルだわ」
裕奈があははっと笑うのを、マミも微笑ましく眺めていた。
ーーーーーーーー
「マミさん、まだかな?」
643号室でアルバムを見ながらわいわいしている中、
まどかがぽつりと言った。
「折角こちらに来たんですから、一度外に出ますか。
散歩がてらカフェにでも。
巴さんには連絡を入れておきましょう」
刹那が言い、めいめいそれに同意を示す。
「あの、刹那さん」
「はい」
そこで、さやかが刹那に声をかけた。
「仁美や恭介に説明してくれたって。
有難うございました。
お礼、言いそびれてすいません」
「いえ、私も急にこちらに戻って来ましたから。
それで、その後の進展は?」
真面目な顔で尋ねる刹那にさやかは笑って首を横に振る。
「色々あったから一時休戦だって。
いい友達持ったよあたし。
本当に、いい友達、いい仲間を持った、ね、まどか」
「ウェヒヒヒ」
「気ぃ付けろよ」
そこに杏子が口を挟む。
「そういう事に女の友情は無いって言うからな、
案外そう言っといて」
「あー、そう言えばアーニャちゃんもいつぞや言うてたなぁ、
向こうにはちょうどいい諺があるて」
「うん、分かってる」
さやかがにこっと笑い、紅茶の残りを口にした。
==============================
今回はここまでです>>308-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>319
ーーーーーーーー
「なんか、歴史的って言うか」
「うんうん、歴史の重みを感じるね」
麻帆良の西洋風の街並みを歩きながら、
鹿目まどかと美樹さやかが改めて言葉を交わす。
「………おい」
「気が付きましたか?」
佐倉杏子の言葉に桜咲刹那が応じた。
「ねぇ、まどか………」
「何?」
ちょっと口調が変わったさやかにまどかが聞き返す。
「結界?」
「えっ?」
暁美ほむらが発した聞き慣れた単語にまどかが聞き返した。
「まさか、でも、これって………」
「さやかちゃん?」
「だって、人が、他にいない」
さやかの言葉に、まどかがハッとして周囲を見回した。
車が通らないのはとにかく、他の歩行者の姿すら見えない。
「脱出します。佐倉さん、しんがりをお願い出来ますか?」
「おう」
刹那の冷静な言葉に、杏子が不敵に笑って答えた。
「では、他の人は私について来て下さいっ!」
刹那が建物に向けてダッと走り出し、杏子を除く面々がそれに続いた。
次の瞬間、路地から飛来して来た幾つかの光の塊を
杏子の槍が弾き飛ばす。
(光の矢? 一つ一つがちょっとした打撃攻撃ってか)
そして、杏子は、路地からざざざっと姿を現した
黒いローブ姿の相手を見据える。
「なんだ、てめぇ?」
返答代わりに、又、幾つもの「光の矢」が杏子を襲い、
杏子はそれを苦も無く叩き伏せる。
更に、不意の突風が一瞬杏子の視界を妨げる間に、
黒ローブは杏子との距離を詰めていた。
「おらっ!」
黒ローブが、杏子の横殴りの槍を交わす。
「の、野郎っ!」
二度、三度と槍の打撃、そして突きを交わされ、
いらっ、と来た杏子が、馬鹿長く変化した槍を振り上げた。
そして、杏子の一振りと共に、馬鹿長い多節棍が
杏子の前方の空間を範囲攻撃でもする様に展開した。
「(これで)どうだ、っ!?」
百戦錬磨の魔法少女佐倉杏子が、締め上げた、
と、その感触まで妄想した瞬間、
黒ローブは集中して巻き付いた多節棍のすぐ横にいた。
(なん、だぁ? 確かに普通じゃねぇがこっちの基準で特別速い訳じゃねぇ、
テレポートや幻術でもない、只、交わしただけに間違いない。
なのにここまで一発も?)
杏子が、再び飛んで来た光の矢を、体を開いてやり過ごす。
「うぜぇうぜぇうぜえっ!!!」
杏子が槍を手元に戻し、
黒ローブを狙って突き、払い、そのどちらもするする交わされる。
(しま、っ!?)
とっさに自分の顔の前で槍を振るった杏子が、その迂闊さを呪う。
杏子の目の前で槍の柄に破砕されたのは、複数の試験管だった。
かくんと膝をついた杏子の瞼が、急速な睡魔に屈する。
ーーーーーーーー
「桜咲刹那、これはどういう事っ!?」
「詮索よりも安全を確保します」
「ああもうっ、雨とか降ったっけっ!?」
路地裏を走りながらほむらの問いを刹那が流し、
さやかが悪路に悪態をつく。
「!?」
ほむらが気配に振り返った次の瞬間には、
そこに存在していた黒いローブの「敵」にほむらは一撃され、
吹っ飛ばされたほむらの背中が近くの建物の壁に叩き付けられていた。
「ほむらちゃんっ!」
「お嬢様鹿目さん私の後ろにっ!!」
「こ、んの野郎っ!!!」
瞬時に変身して飛び掛かったさやかの一刀を、
黒ローブはすいと交わしてさやかの後ろ首に手刀の一撃を加える。
「さやかちゃん!!」
どうと地面に倒れ込んだ親友の姿にまどかが今度こそ悲鳴を上げた。
「だい、じょうぶ………」
「まどかっ!! ………!?」
さやかが呻きながら身を起こそうとし、
頭を振り、ざっと前に踏み出したほむらは強制的に足を止めた。
「なっ!?」
「なに、これ?」
地面から噴き出した、
大量の紐の様な水に雁字搦めにされているほむらを見て
ようやく身を起こしたさやかが目を見開く。
たっ、と、刹那が一瞬で間合いを詰め、野太刀「夕凪」を抜き放った。
野太刀で居合、と言う物理法則に挑戦する神鳴流剣士ならではの一撃を、
黒ローブはするりと交わして地に潜る様に姿を消す。
「な、何よこれっ!?」
「捕縛結界です」
ほむらの問いに刹那が答える。
「学園警備とこちらの仲間に救援要請を出します。
美樹さん、それまで暁美さんのガードを、
任せて大丈夫ですか?」
「おーけーおーけー、
杏子や刹那さんに結構ボコられてるからね、
この程度なんて事ないって、ててて」
「冗談じゃないわっ! まどか、っ」
「見た所、直ぐに解除するのも力ずくで突破するのも無理です、
私が安全な所まで誘導しますから大人しくしていて下さい。
ここで無理をしても消耗するか最悪大怪我です」
「って、事だからここはあたしに任せといて。
今度来たらぶった斬る」
コメカミに汗を伝わせながら、
大股開きで正眼に構えたさやかが宣言する。
「それでは、お嬢様はしんがりをお願いします」
刹那の言葉に、近衛木乃香は力強く頷く。
「分かった。まどかちゃん、うちとせっちゃんから離れんといてなっ」
「はいっ」
「大丈夫や、せっちゃん強いんやから!」
ーーーーーーーー
「もしもし? うん、こっちで確保して………
何、それ?」
「?」
教会で、着信したスマホの通話を終えた裕奈の目が見開かれていた。
「どうしたの?」
「襲撃、された」
「!?」
「こっちに来てる巴さんのお仲間が襲撃されてるっ!」
「襲撃、って、魔法使いなのっ!?」
「質問の答えはイエス、
そうとしか思えないけど誰がやってるのか分からない。
今、刹那さんがガードして安全な所に避難中、私も出るっ!!」
「置いて行くとか言わないでしょうねっ!?」
ーーーーーーーー
路地裏を抜け、行き着いた先は世界樹前広場だった。
「「アデアット!」」
巨大な神木「蟠桃」に向かう巨大な上り階段の幾つもの踊り場。
簡単に言えばそういう作りの「世界樹前広場」にたどり着いた桜咲刹那は、
夕凪と長匕首の二刀で上段から突っ込んで来た斬撃を弾き飛ばした。
「下がってっ!」
まどかを背に隠した水干緋袴姿の木乃香が、
飛来した水晶球を魔法障壁を込めた白扇からの強風で吹き飛ばす。
「あなた達、ここで、
麻帆良で私達を手に掛けると言う事の意味を理解していますか?」
「何者を敵に回そうが、私の救世を成し遂げる」
呉キリカを前衛に従え、
広場の上段に現れた美国織莉子の宣言だった。
「匕首・十六串呂!」
「とっ!」
ドドドドッとまとめて打ち込まれた匕首手裏剣を
キリカが横っ飛びに交わした。
「アデアット! お嬢様っ!!」
「はいなっ!」
みょんみょんみょん
「おおおっ!!!」
刹那の手で文字通りぶった斬る勢いで振るわれた建御雷を、
キリカが這う這うの体で交わす。
本当の所を言えば、木乃香の魔力供給を受けた建御雷の一撃は、
キリカとしてもチビらなったのを自慢したくなるぐらいの
とんでもない威力の上にスピードだった。
「!?」
織莉子が放った水晶球が、遠くからの銃弾を受けて砕け散った。
織莉子がたたたっと階段を下りながら水晶球を放ち、
銃弾が水晶球や地面に弾ける。
「上ってっ!!」
「はいなっ、まどかちゃんっ!」
「はいっ!!」
刹那が叫び、牽制されている織莉子、キリカを後目に
木乃香とまどかが階段を上り
刹那がしんがりについて二人の敵を牽制する。
ーーーーーーーー
「正義の使徒、高音・D・グッドマン、見参っ!!!」
「おー」パチパチパチ
「魔法使い? 早速だけどこれ、解いてくれないかしら?」
路地裏で、捕縛結界に拘束されたほむらが
颯爽登場した高音に要請した。
「メイ」
「はい………これは………メイプル・ネイプル・アラモード………
………きゃあっ!!」
「メイっ!?」
ほむらの足元の魔法陣を確認しながら呪文を詠唱していた佐倉愛衣が
すってーんっと転倒した。
「大丈夫、です」
「何やってるのよ」
「いや転校生ちょっと偉そうだから」
「これは、魔法陣で人をとらえる捕縛結界ですね」
「ええ、丸で地雷ね」
「その通りです。基本を踏まえながら幾つか嫌なトラップが仕掛けてある、
手作業でこれを外すのはちょっと、骨ですね」
「今、携帯用の破砕装置を手配してはいますが、それ程のものですか」
「そこそこ手間がかかってますし、よく勉強していると思います」
「あれは魔法使いよね?
まどかが魔法使いに追われて逃げているってどういう事なのかしら?
急がないとまどかが………」
「この結界の中で焦ってもケガするだけです、少しだけ時間を下さい。
桜咲さんと近衛さんが一緒であれば安全な筈です」
「ええ、ここでマギカ、魔法少女を襲撃する魔法使い、
その意味は分かりません、至急究明する必要がありますが、
あの二人が一緒なら大丈夫でしょう」
ーーーーーーーー
「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!」
「くっ!!」
建御雷の一閃と共にすごいばくはつが巻き起こり、
下段から刹那に迫るキリカも後退を余儀なくされる。
「織莉子っ!」
「釘付け、みたいね」
動こうとする先に銃弾が弾けている状態の美国織莉子も苦い口調で言った。
ーーーーーーーー
「ちょっと待って」
裕奈と共に現場に急ぐマミが、
裕奈を引き留めて指輪から変化させたソウルジェムを取り出した。
そして、掌に乗せたソウルジェムの感触を頼りに移動を始める。
「な、何?」
「気づかなかった? 私達は本当に目的地に向かっていた?」
言葉と共に、変身したマミが走り出し、
マミの髪飾りの黄色い輝きが空中に壁の様に広がった。
「オッケー行くわよ」
駆け出したマミが突き抜ける様に到着したのは、
世界樹広場だった。
「マミさんっ!!」
「鹿目さんっ、もう大丈夫っ!!」
広場の最上段近くから叫ぶまどかとマミが言葉を交わした。
「これって………」
「ちょっとだけ中和したけど、
根本の発生源があるみたいね」
「もしもし、こちら世界樹広場、保護対象者発見、
エリアが人払いの結界に飲まれてる、発生源の特定と排除お願いします」
「お邪魔は嫌われるわよ」
スマホを使う裕奈の前で、マミが両手に持つマスケット銃が
飛び掛かって来た呉キリカの刃爪をギリギリ抑える。
「ちいっ!」
通話を終えた裕奈がどんどんどんっと魔法拳銃を発砲し、
キリカが飛び退いた。
「なんとか、なりそうですね」
上へ上へと進んでいた刹那が、ふうっと一息つく。
「………せっちゃん?」
木乃香の言葉と共に刹那が天を仰ぎ、
裕奈の目も見開かれた。
ーーーーーーーー
「正義の使徒、高音・D・グッドマン、見参っ!!!!!
………馬鹿なっ!?」
「世界樹広場」に飛び込んだ高音が叫び声を上げた。
「どう、して?」
「な、何?」
高音、愛衣、魔法使い二人の反応にさやかが聞き返す。
「手間をかけ過ぎたライトアップイベント、
じゃなければ魔法的な何か、みたいねその反応」
ほむらが言い、前を見たさやかもようやく異常に気付く。
「さやかちゃんっ、ほむらちゃんっ!!」
その瞬間、視界が真っ白になった。
「まどかあっ!!!」
その場に呆然と突っ立っていたほむらが、肩を叩く感触に我に返る。
「あそこに、いたよね?」
ほむらに尋ねるさやかの声は、震えていた。
「ねえ、さっき、たった今まどかあそこにいたよね、
刹那さんとこのかさんと一緒に?」
「まどか?
まどかああああっっっっっ!!!!!」
==============================
今回はここまでです>>320-1000
続きは折を見て。
時刻もよろしい頃合いでしょうか。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>330
「まど、か? ………」
「なんだよ、これ………
まどか? まどかっ!? 刹那さんこのかさんっ!!!」
麻帆良学園都市世界樹前広場では、呆然と突っ立っていた暁美ほむらの横で
美樹さやかが階段を途中まで駆け上って叫び、スマホを取り出した。
「駄目だ、携帯も繋がらなくなってる。
いたよね、さっき絶対いたよね………」
「だ………」
「まどか、まどかどこまどかっ!?」
「黙りなさいっ!!!」
広場を震わす様な一喝に、
一同が肩で息をするほむらに視線を向ける。
「間違いなく魔法、魔法使いの領分の話よね?
説明出来るのは誰っ!?」
「明石さん」
ほむらが叩き付ける様に尋ね、マミが促した。
「魔法、世界だと思う」
裕奈がぽつっと言い、
マミは、苦い顔で小さく首を横に振る高音・D・グッドマンに気づく。
そこに、新たに数人の集団が駆け込んで来る。
今度はスーツ姿の大人が中心だ。
「初めまして、麻帆良学園教師葛葉刀子と申します。
マギカの方々ですか?」
「はい」
その中の一人、魔法少女達も見覚えのある馬鹿でかい棒を手にした
長身の美女が挨拶し、マミが応答する。
「魔法使い………もしかして神鳴流の方ですか?」
「はい」
マミの問いに刀子が答える。
「学園の魔法教師として、この事態の収拾に参りました」
「まどかは何処? 魔法世界って!?」
噛みつく様に尋ねるさやかに刀子は小さく頷いた。
「不安はもっともです。
魔法に関わる者が住まう別の空間、それが魔法世界です。
まどかさんは出入り口のトラブルでそちらに転移したものと思われます。
只、有能な魔法使い二人が同行していますし世界自体も安定しています。
マギカの皆さんとは言え、
こちらの魔法の世界の事はまだ機密と言ってもいい存在。
こちらで無事に送り届けますので、今日の所はお引き取りいただきたい」
刀子の丁寧な一礼に、
今度こそ噛み付きそうに動いたさやかをほむらが腕で制する。
「分かりました」
ほむらが淡々とした口調で言う。
「まどか、鹿目まどかはあなた達で送り届けてくれるんですね?」
「約束します」
「分かったわ」
「おいっ」
ほむらに続いて同意を示したマミに杏子が声を尖らせる。
「分かりました、それでは必ずお願いします」
「承りました、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
マミと刀子が双方丁寧に頭を下げる。
ーーーーーーーー
「なーに、まき絵?
見せたいものがあるって………」
その夜、自分も住まう麻帆良学園女子中等部寮に戻っていた明石裕奈は、
自室とは別の部屋を訪れていた。
「!?」
ダッ、と、室内に飛び込み仮契約カードを抜き出す裕奈。
そのカードを持った右手がきつい締め付けと共に引っ張られ、
裕奈は体勢を立て直す間もなく、
ぐにゅっ、と、胸に硬いものが押し付けられていた。
「まき絵、亜子っ!!」
同時並行で、裕奈に同行していた
大柄な少女大河内アキラも玄関からリビングに飛び込む。
「おっと、手を上げな」
すっ、と、無造作なぐらいに槍の穂先を向けられ、
アキラは足こそ止めたが、その目の力はむしろ倍増しになっていた。
「お、っ」
「何をしている?」
槍の柄を手掴みにしてアキラが低く問う。
槍を向けた佐倉杏子は奪い返そうとしたが、
取り敢えず相手が人間である事を標準に力を込めた槍が動かない。
成程、アキラはこの年頃の女子にしては明らかに長身で
一見するとモデルの様にスタイルがいい。
だが、モデルにしては全体に力強過ぎる。
それは、十分な肉付きを見せるスタイルもそうだし、
豊かな黒髪の美少女と言ってもいい顔立ちは、今は侍の様に凛々しい。
まあ、それにしたって尋常ではない馬鹿力だが。
「!?」
杏子が鼻で笑った、かと思った時には、
槍が尋常ではない長さに変化し、更に多節棍に変化してアキラを縛り上げる。
「降参っ! 他の子は関係ないから手ぇ出さないでっ!」
リボンで縛り上げられリビングに転がされているこの部屋の本来の住人、
佐々木まき絵と和泉亜子を横目に、
右手をリボンで引かれ
アンティーク拳銃の銃口を胸に押し付けられた裕奈が叫ぶ。
ーーーーーーーー
麻帆良学園女子中等部寮大浴場「涼風」では、
忙しい一日も終わりに近づき、
佐倉愛衣が掛け湯代わりにシャワーブースに入っていた。
「!?」
心地よく汗を流していた愛衣が、不意に、
左腕を掴まれ右の脇腹に硬い感触を覚える。
背後から促されるまま回れ右をした愛衣は、
その鼻先に刀の切っ先を見た。
「ちょっと、顔貸してもらえる?」
ーーーーーーーー
「!?」
女子寮の一室で巴マミ、佐倉杏子に監視されていた明石裕奈は、
突如として増えたキャストに目を丸くする。
「メイちゃんっ!?」
「明石さんも、ですか」
得物を手にした暁美ほむら、美樹さやかの手で
裕奈の側に座らされた愛衣に裕奈が声をかけ、言葉を交わす。
「グリーフシード、あるかしら?
お風呂からここまでだと流石に」
ほむらがマミに囁き、グリーフシードを受け取る。
ーーーー(回想)ーーーー
(引き返すつもり?)
「魔法使いの性質上、テレパシーはむしろ危ない」
世界樹広場を出てから、ほむらが小声でマミに言う。
そして、一同は一度、「図書館島」裏手に移動していた。
「よく、こんな所見つけたわね」
「街の死角を見つけるのはあたしらの日常だからな」
ほむらの言葉に、一度先行して潜伏先を探した杏子が言う。
「大体分かった、情報提供感謝する」
「私が連れて来たんだもの、他人事じゃないわ」
マミから分かる限りの事を聞いたほむらが取り出したのは
複数の小型カメラだった。
「本来は魔女関係のために用意していたものだけど、
動画をスマホで遠隔視聴できる。
一台は今言った佐々木まき絵の部屋、もう一台は女子寮の大浴場近く、
廊下の天井に設置しましょう」
「お風呂?」
ほむらの言葉にさやかが聞き返す。
「メイ、と呼ばれていた魔法使いを押さえる。
タイプ的に見て金髪の先輩は捕獲しても骨が折れそうだから」
「佐々木まき絵さん、明石裕奈さんの大事な友達みたいね」
「嫌かしら?」
ほむらの問いにマミが首を横に振る。
「状況が状況だから、部屋のドアが開いた瞬間に、でいいわね。
暁美さん、かなりの魔力を使う事になるけど」
「一応グリーフシードのストックは用意して来た」
ーーーー(回想終わり)ーーーー
「!?」
リビングで拘束され転がされていた佐々木まき絵が、
自分の魔法練習杖をしゅっと床に滑らせた。
愛衣がそれを手に立ち上がった瞬間、
マミが首元から抜いたリボンが鞭と化して愛衣の右手を叩き、
そのまま愛衣に絡み付いた。
「手荒な真似をしてごめんなさい」
結論として、体に複雑に巻き付いたリボンで
腕を胴体に縛り付けられた愛衣を前にマミが口を開いた。
「だけど、このままはいそうですか、と帰る訳にはいかないの」
マミの声は、丁寧だからこそ凄味があった。
「今すぐ私達を解放して下さい。
ここで誰かが大声を出せば、
あなた達は3年A組と関東魔法協会を直接敵に回す事になる。
マギカであっても五人やそこらでどうにかなる体制ではありません。
今なら穏便に、鹿目まどかさんの無事はお約束します」
「巴マミ、ちょっと全員にリボンを」
ほむらの言葉に、マミが小さく頷く。
ほむらに耳打ちされたさやかが、
リビングの一角で床に向けてするりと剣を落とす。
「今、あなた達は止まった時の間にいる。
私達の言う事を聞かないと言うのなら、
この学校の人間はここにいる全員の
両腕両脚を砕かれた白骨死体を見る事になる」
「嘘ですね」
空中で静止する剣を前に、
ほむらの言葉に愛衣が応じた。
「マギカの仕組みを正確には知りませんが、
魔力を使っているのは間違いない。
で、あれば、そんな長時間の時間停止が出来る筈がない、
魔力が持たない」
「ああそう」
ほむらは、敢えて苛立った口調を作り、
青髪ショートカットの少女にざしざしと接近する。
「亜子っ!」
生来色素が薄くショートカットの髪が青っぽく見える和泉亜子が、
米軍制式M9拳銃を手にした
ほむらの急接近にぶるりと震え、裕奈が声を上げる。
「取り敢えず両腕両脚に一発ずつ、でいいかしら?
他の全員分を見せつけてから直接体験してもらう、
取り敢えずその程度の時間はあるわ」
「分かった、分かってる事は全部話す。
元々、私がそっちの立場だったとしても、
あれで友達がいなくなって納得して帰れとか言える話じゃないから」
「分かりました」
裕奈に続き、愛衣も折れた。
「有難う、そしてごめんなさい。
全部私達が悪いって事でいい。
だから教えて頂戴」
二人の返答にマミが頭を下げた。
==============================
今回はここまでです>>331-1000
続きは折を見て。
年末近くでアニメも最終回。
色んな笑いで観てましたが、
まずは楽しませてもらいました。
時刻もよろしい頃合いですか。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>338
「そちらの和泉亜子さん?」
「はいっ」
ツインドリルヘアーの少女に名前を呼ばれ、和泉亜子の声が跳ねる。
麻帆良学園女子中等部寮、
その自分の部屋にいた所を二人組のコスプレ少女に襲撃され、
あっと言う間に拘束された。
実の所、亜子も同居人の佐々木まき絵も、
この手のトラブルには多少の免疫がある。
そして、コスプレが只のコスプレではない、と言う事も理解出来る。
その亜子から見ても、二人組のコスプレイヤーは相当な実力者だ。
亜子達の知るトップクラスには及ばないだろうが、その道の素人ではない。
「今、リボンを解くから
バスタオルと着る物とバスルームを借りられるかしら?」
「分かった」
自分が手にしたリボンの震えに気づいたツインドリル少女巴マミが言い、
その事に気付いた亜子もしっかりした声で応じる。
亜子としても状況が状況であり、怖いものは怖い。
だが、夏休みの経験により、
その前とは比べ物にならないぐらいには腹が座っていた。
少なくとも、誰かが傷つこうと言う時に
僅かばかりの覚悟を決められるぐらいには。
もう一つ、これもその時の、絶対的な善悪とは別の
筋の通った者、通らない者、些かの暴力的な世界に触れた経験則として、
既に四人に増えたこの襲撃者達、
多分、対応を間違えなければ余り理不尽な事はしない。
そう亜子は直感した。
「大丈夫? 風邪引いてへん?」
「大丈夫、です」
和泉亜子と佐倉愛衣の拘束が解かれ、
亜子は、マミに横目で見られながら、
マスケット銃の銃口を向けられてその場に座り込んだ愛衣を
バスタオルで包み込む。
ーーーーーーーー
佐倉愛衣の着替えが終わり、
亜子とマミが飲み物を用意してから全員の拘束が解除された。
「乱暴の上に恥ずかしい思いまでさせて、本当にごめんなさい」
「慣れてますからモトイ
全部は肯定出来ませんが、
明石さんの言う通り状況から言ってお気持ちは分かります」
マミが頭を下げ、テーブルの前に座る愛衣が、
亜子から渡されたドクダミ茶のカップを
両手持ちにして啜りながら答える。
「それはごめん、本当に」
「申し訳ないと思ってる」
さやかとほむらが頭を下げ、明石裕奈が頷いた。
その背景では「悪かった」と言っている佐倉杏子に
大河内アキラが小さく頷いている。
「佐々木まき絵さん?
昼間にも会ったわね。巴マミです」
マミがまき絵に声をかけ、
マミに目で促されて他の面々も名乗りを行うが、
まき絵はじっと伺うだけだった。
「この人達は魔法少女、マギカ、って言って、
私達とはちょっと違う魔法を使う人達なんだ。
ちょっと色々あって正直トラブルになってるんだけど、
本当なら私達の敵じゃない。このかちゃんや刹那さんの友達でもあるから」
「そうなん?」
明石裕奈が説明を行い、亜子の言葉にマミが頷く。
「こちらに、魔法使いに何か非があったと言うのか?」
「それに就いては、特にあなた達を巻き込んだ事は本意じゃなくて
重ねて申し訳ない事をしたと思ってる。
だけど、私達の仲間、友達が、魔法に関わって姿を消してる。
だから、こんな形で魔法協会に関わる人達を秘かに引っ張り出して
どうしても事情を聴きたかった」
アキラの言葉にマミが答えて何度でも頭を下げる。
「この子達も、半分行き掛りだけど魔法は使える、
こっち側に関わってて守るべき秘密は守るから」
「それが本当ならきちんと事情を話して欲しい」
裕奈に続き、アキラが言う。
「まどかが、鹿目まどかと言う、
私達と一緒にここに来た同級生がいなくなったのよ。
あの世界樹とか言う大きな木が光って、
そこにいた筈のまどかが姿を消した。
言っておくけど、まどかは私達と行動を共にしていても魔法少女じゃない、
能力的には只の一般人だった」
「それ見た」
ほむらの言葉にまき絵が続き、亜子が頷いた。
「世界樹が光ってるから又、なんかあったのかって」
「又、って何っ!?」
「落ち着いて暁美さんっ」
勢い込んでまき絵を引かせるほむらをマミが嗜める。
「ええ、そうね。
ここからは穏やかに教えていただけるかしら?」
「ええと、鹿目まどかさん? あなた達の仲間の。
彼女は多分魔法世界にいる」
ほむらの言葉に、裕奈が説明を始めた。
「それはさっき聞いた、魔法世界と言うのは何処にあるの?」
「火星」
「オーケー美樹さやか、適当に腕と脚を十本ばかし斬り落として。
あなたなら後で繋げられるでしょう」
「魔法使いと言うのは、宇宙人か何かなのかしら?」
「それに近いのもいる、だから少しだけ真面目に聞いてくれるかな?」
ほむらとマミの反応に、裕奈が応じた。
「位相って言うんだけど、異次元空間って言えば分かるかな?
火星にある異次元空間、別の世界別の次元。
そこが魔法の世界。
その魔法の世界と繋がるゲートがこの麻帆良学園にあって、
ゲートが作動したら地球のこっちの世界から
火星にあるあっちの世界に一瞬で移動出来るんだ」
「じゃあ、まどかはその、火星にある異次元空間にいる、
そう言いたい訳?」
今度は自主的に腕の一本も居合抜きしそうなさやかに、
裕奈は小さく頷いた。
「火星とか異次元とか魔法の国とか言っても、
こちらの世界同様に普通の人間の秩序はあります。
現在は治安やインフラも安定していて、
こちらの世界との通信や交通も整備されています。
一緒に転移したのがあの二人ですから、
あの二人は実力もあってあちらの世界にも明るいですから
滅多な事にはならない筈です」
「それを信じろと?」
「お願いします」
ほむらの言葉に愛衣が頭を下げ、さやかも浮かした腰を下ろす。
「丸で神隠しね」
マミが嘆息して言った。
「鹿目さん達が魔法の世界に、って、
どうしてこんな事になったのかしら?」
「答えなさい」
マミが問い、沈黙する愛衣にほむらが言葉を重ねる。
「分かり、ません」
「分かる事を話して」
苦し気に言う愛衣にほむらが迫る。
「元々、ゲート自体はこの学園の図書館島地下にあるものですが、
今年の夏休みまでは休止、閉鎖状態でした」
「図書館、島?」
「図書館の島」
さやかの言葉に裕奈が応じる。
「湖の中の島が丸ごと図書館になってるんだ、
あれは一種の古代遺跡だね。
実際の所は大昔の魔法使いが作った重要ポイントとかでさ」
「そこにその、ゲートがあると言うのね?
休止中だった、と言ってたけど、今は違うの?」
「半分は」
マミの問いに、愛衣が答える。
「夏休み中の情勢の変化でゲートの再稼働実験はスタートしていました。
その実験中の事故による稼働、それが関東魔法協会の暫定的な見解です」
「物凄く歯切れが悪いわね」
ほむらの言葉の愛衣は頷く。
「あり得ないんです」
「あり得ない?」
「はい、麻帆良、関東魔法協会の魔法は、
科学技術と高度に融合しながら開発が進められています」
「ふーん、科学と魔術とか絶対に交差させちゃいけない
みたいなイメージもあるけど、違うんだ」
「はい」
さやかの言葉に愛衣が答える。
「ですから、備蓄していた魔力エネルギーの流通制御の一部に
コンピューターを取り入れる。
そこで何等かの誤作動が生じて暴発する程の魔力エネルギーが流出する。
その可能性はなんとか理解できます」
「うん」
「只、それでゲートを作動させるとなると、話は別です。
これは、「魔法」なんです」
「魔法?」
愛衣のどこか抽象的、概念的な話にマミが聞き返した。
「術式を組み魔法を発動させる事は、
ゴーストの無い機械には出来ません。
今回の出来事はどう見ても只の魔力漏れじゃない。
そのタイプの暴発であれば
もっと無秩序に物理的な損害、よしんばゲート現象に限定しても
人間三人の消失程度では済まない筈ですから」
「仕掛けた人間がいる、と言う事ね。
その心当たりは?」
ほむらの言葉に愛衣が首を横に振り、
ほむらが米軍M9拳銃を向けても愛衣はその銃口を見据える。
「分かってた事だろ」
リビングの床で体勢を崩していた佐倉杏子が口を挟んだ。
==============================
今回はここまでです>>339-1000
続きは折を見て。
F9 マギアレコード こうへい 同一疑惑 ネット 2ちゃんねる荒らし 嫌儲
https://2ch.me/vikipedia/F9
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>345
「あたし等を襲撃した魔法使いがいるんだ、
そいつらじゃねーの?」
「その正体が分からないんです」
杏子の言葉に愛衣が応じた。
「私達は魔法生徒であり学園の魔法秩序を司る学園警備です。
だからお姉様………
私の先輩の高音先輩は、あの後あなた達を追って事情聴取を、
と言う意見でしたが上から止められました。
魔法世界に関わる事である以上、
これ以上外部の、それも魔法使いでも容易に対処出来ない
あなた達マギカが関わる事は物理的にも情報的にも避けたい、
それが学園の魔法先生魔法教師の方針であると」
「隠蔽かよ」
「もちろん、事件の調査は行いしかるべき対応はする筈でした」
吐き捨てるさやかに愛衣が言った。
「只、あの場では機密保持が優先されて
襲撃事件に関する初動の対応が手薄になった。それも事実です。
だから改めて伺います。
あなた達は一体どういう行動をしていたんですか?
そもそもどういう理由で麻帆良にいたのか?
明石さんからある程度の事を聞いてはいますが」
「私達は近衛木乃香さんのお招きでこちらにお茶会に来た、
それだけの事よ。
桜咲さんとの関係はそちらの明石さんにも説明したからいいかしら?」
愛衣の問いに、まずはマミが説明した。
「はい、およその事は伺っています。
付け加えますと、今回の事件後、
学園長から学園警備に情報提供がありましたから」
「学園長、って言うと」
「近衛木乃香さんの祖父に当たります」
さやかの言葉に愛衣が応じる。
「桜咲刹那さんによる見滝原での調査に就いては、
学園長マターの予備調査と言う事で、
あなた達の事も含めて学園長に情報が上がっていました。
加えて、今日のお茶会に就いても、
近衛木乃香さん、桜咲刹那さんから学園長に上がっていた情報が、
今回の事件の発生を受けて学園長からこちらに降りてきました。
元々は他意の無い私的な会合、友人関係と言う位置づけでしたから」
「あなた達が把握していた訳ではないと?」
「私達は独自に桜咲さんが見滝原でマギカに関わっていた事を把握しました。
しかし、それはほとんど偶然みたいなもので、
その事に就いて公式な事前連絡はありませんでした」
マミの問いに愛衣が答える。
「それで、野点の後であなた達は巴さんと別れたんですよね?」
「うん」
愛衣の問いにさやかが答えた。
「私は、そちらの明石裕奈さんが私達の事を付け回していたのに気が付いて、
状況を把握するために一度離脱して、後はご存知の通りよ」
「あたし達は野点の後で寮のこのかさんの部屋にいたんだけど、
途中で離れたマミさんからの連絡もないしカフェで待とうって事になって。
それで、表に出て歩いてたらいつの間にか人通りがなくなって」
「………人払い?」
さやかの言葉に、愛衣がぽつりと言う。
「私達は佐倉杏子にしんがりを任せて、
桜咲刹那の先導で路地裏に逃げ込んだんだけど、
そこでも魔法使いに襲撃されたわ」
「ああ、任されたはいいけど、
そこで襲撃受けて不覚を取って気が付いたら眠り込んでたって事」
ほむらと杏子が状況を説明する。
「その辺だね、連絡入ったの」
「連絡? 誰から?」
裕奈の言葉に、ほむらが質問した。
「刹那さん。元々同じクラスでもそんなに仲いいとかじゃなかったんだけど、
私が学園警備のエージェント始めたから、
その時に仕事用のアドレスとか交換した方がいいって言われてね」
ーーーー(回想)ーーーー
「あなたが動いていたのは分かっています。巴マミさんはそちらですか?」
「今、魔法使いからの襲撃を受けています。
ちびせつなを待機させますから、××丁目の屋上に学園警備を寄越して下さい。
私は保護対象者を連れて世界樹前広場に向かいます」
ーーーー(回想終わり)ーーーー
「それで、明石さんからの要請で
私達が暁美さん、美樹さんを発見したと言う事ですね」
愛衣の言葉に裕奈が頷いた。
「それで、魔法使いからの襲撃を受けたんですね?」
「ああ、魔法少女じゃなけりゃ魔法使いだろうけど、
多分魔法使いだな」
「そうね、なんとなく私達とは違うと思う」
杏子とほむらが愛衣に答える。
「どんな相手でしたか?」
「黒いローブにフードで顔はよく見えなかったな。
なん、って言うか薄気味悪い」
「薄気味悪い?」
「ああ、スピードはあたしらから見たらそこそこ、
幻術とかテレポートとかそんな感じでもないのに、
なんか上手く攻撃が当たらない。
その内に不覚を取って眠らされたって感じでさ」
「こちらのは単純な強さが尋常じゃなかったわ」
杏子に続き、ほむらが言った。
「テレポートらしき技術を使うけど、
何より単純な実力がかなり強い筈よ」
「あたしもそう思う」
ほむらに続いてさやかが言う。
「刹那さんとかマミさんとか杏子とか見て来たけど、
匹敵するかそれ以上の使い手だと思う。
あたしは全然叶わなかった」
「どんな攻撃を?」
「光だな、曲がって飛ぶ光、殴られるぐらい痛い光か」
「サギタ・マギカ」
杏子の言葉に、愛衣が呟いた。
「それから、理科に使う試験管、
そいつを割ったら睡眠ガスが出たって感じで」
「こっちは体術ね」
杏子に続いてほむらが言う。
「とにかく目にも止まらぬ速さで殴られるわ交わされるわ、
他に言い様がないわ」
ほむらの言葉にさやかも頷いた。
「もしかして、魔法使いって基本そんなに強いとか?」
「それは無い」
さやかの言葉に裕奈が言った。
「巴さんの強さは私も身を持って味わったけど、
私はとにかく龍宮さんとガチバトルする巴さんレベルが普通とか
それは流石にないわ」
「そう思います。
マギカの強さに関してはさっきのとは別に私も少々体験しました。
むしろマギカの側が反則的に強い部分があるぐらいです。
基本的な考えとして、マギカを簡単に圧倒する魔法使いがいるなら
それは相当強い部類に入る筈です」
裕奈の答えに愛衣も続いた。
「あの、私が縛られた捕縛結界、あれも魔法よね?」
「ええ、あれは風の捕縛結界ですね。
魔法陣を踏んだら発動するタイプの。
基本を踏まえた上で嫌な仕掛けが幾つもしてあって、
解除するのに骨が折れました」
愛衣の言葉に、ほむらが顎を指で撫でて黙考する。
「後、世界樹広場にもなんかいたけど、
あっちこそマギカっぽくなかった?」
「そうね、どちらかと言うと私達に近いものに感じた」
「一応報告は聞いていますが、詳しくお願いします」
裕奈とマミの言葉に、愛衣が要請する。
「白バケツ」
裕奈の言葉に、ほむらが目を見開く。
「白いふわふわの衣装を着た女、多分あれがメインだね。
白くてふわふわでバケツみたいにでっかい帽子被って。
前衛で黒っぽい、腕に直接刃物を装着したみたいな
やったら速い切り裂き魔がセットで。
多分あれ、白いのが後詰の指揮で黒いのが前衛、
私達魔法使いにとっては典型的なコンビネーションだから」
「暁美さん?」
裕奈の説明の後、マミがほむらに声をかけた。
「魔法少女、間違いないわ」
「知り合いなの?」
ほむらの言葉にマミが尋ねた。
「直接の知り合いではない。
見た事がある、と言う程度かしら。
その、白黒コンビの事で何か分かった事は?」
「それなんですが、少しおかしいんです」
ほむらの言葉に、愛衣が言う。
「ナツメグさん………こちらの仲間が
街の防犯ツールから追跡したんですけど、結論を言えば逃げられました。
世界樹のフラッシュが最も強くなった隙に監視の目を免れて逃走し、
世界樹前広場から逃走するあの二人の姿を
後から街頭の防犯カメラ等から把握しようとしたんですけど、
どういう訳かぷっつりと消えているんです」
「消えた?」
聞き返したマミに愛衣が頷く。
「はい、念のため機材やデータの確認も行われましたが
異常はありませんでした。
ですから、考えられるのはカメラの無い裏道中心のルートを
完全に選択して逃走した、それが偶然なのか必然なのか」
ほむらは、あり得る、と言う言葉を心の中に留める。
「その、図書館島地下のゲートはどうなってるの?
誰かが魔法を使って動かした、って話だったわよね?」
「理論的にはそういう事になる筈です」
マミの言葉に愛衣が応じる。
「只、あそこは危険過ぎて
その辺の魔法使いでも近づく事すら容易ではありません」
「図書館が危険、って」
言いかけたさやかが、真面目な表情の愛衣を前に言葉を飲み込む。
「先程明石さんも言いましたが、
図書館島は古の魔法使いが作った重要ポイントです」
「それって、呪いの本とかどっかの官能小説家が聞いた天使のお言葉とか
文字が目に入っただけで全身から血が噴き出して死ぬ本とかがあるとか?」
「そう思っていただいて構いません」
さやかの問いに、愛衣が真面目に応じる。
「幸いにしてそんなものに直接触れた事はありませんが、
あっても不思議ではありません。
地上部分を中心に、大半は普通の図書館です。
図書委員とは別に、
図書館探検部と言う大学を本部とする部活動があるぐらいです」
「図書館、探検部?」
マミの問いに愛衣が頷く。
「図書館を中心とした図書館島自体が一種のラビリンス、迷宮ですから、
その解明を行い図書館島内の探検、研究を行うための部活動です。
それでも、一般生徒が立ち入る事が出来るエリアは
魔法使いによって確実に限定されています。
図書館島で本当の立ち入り制限エリアに無闇に立ち入ったりしたら、
魔法使いでも命はありません」
「どういう図書館なのよ………」
愛衣の説明にほむらが呆れる。
「報告によると、今回の事件に際して、
地上にいた宮崎のどかさんが、
綾瀬夕映さんに世界樹が異常発光していると携帯で連絡して、
図書館島地下で調べ物をしていた綾瀬さんが
直ちにゲート近辺の調査を行っています。
この宮崎さん、綾瀬さんは共に図書館探検部の部員であり、
同時に、3年A組の生徒、魔法使いでもあります」
「ネギ・パーティーの中でも古参だね」
愛衣の言葉に裕奈が付け加え、スマホを操作する。
「かなり早い段階、少なくとも私よりも前から
ネギ君の近くで魔法に関わって、色々修羅場も潜ったって聞いてるよ。
特に本屋ちゃん、この前髪ちゃんね。
この娘が宮崎のどかなんだけど、
前はあんな大人しかったのに愛の力だねー」
あははっと笑う裕奈の側で、魔法少女達は首を傾げていた。
「で、このでこっぱちが綾瀬夕映。
見た目ちっちゃいけど実際小回りが利いて、
魔法関係でもかなり研究してるって切れ者だよ」
「只、綾瀬さんとしても、ゲート周辺は危険過ぎて
その時も直接は接近出来なかった。
確かに図書館島地下まで伸びる世界樹の根に
魔力の異常流入の形跡を見たが、それ以上の事は把握出来なかった。
そう証言していたと学園警備には報告が上がっています。
実際、学園警備としても迂闊に近づけないので
ゲートの直接調査は後回しになっています」
「そんなに、ヤバイの?」
「そういう事になります」
さやかの問いに愛衣が答える。
その時、一同はノックの音を聞いた。
「明石、こっちにいるか?」
==============================
今回はここまでです>>347-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>355
「入れた方がいいと思う、そっちのためにも」
「任せる」
明石裕奈と巴マミが言葉を交わし、裕奈が玄関に向かった。
「どうやら、当たりみたいだな」
「この人………」
新たに入って来たのは三人。
その先頭の、眼鏡の少女を見てマミが呟く。
「そ、長谷川千雨、綾瀬夕映、宮崎のどか。
ま、ネギ・パーティーの中でも結構コアな面子だね」
「誰だ、こいつら?」
紹介する裕奈に、先頭の眼鏡少女長谷川千雨が尋ねた。
「用件は? 今日の世界樹の件?」
「ああ」
「じゃあ、それも含めて説明するから取り敢えず座ってよ」
「うち達の部屋………」
和泉亜子の呟きをよそに裕奈が言い、
女子寮二人部屋の人口密度がいよいよ危機的状態になるが、
その事以外は当面平和に事が進む。
「まず、この人達だけど、
巴マミさん以下、魔法少女、マギカ、そう呼ばれている人達」
「存在は知っているです」
「ああ、裏の情報収集してたら多少はな」
裕奈の言葉に、夕映と千雨が応じる。
「本屋ちゃんとゆえちゃんの事はさっき話したよね、
図書館探検部にしてネギ・パーティーのコアメンバーな
ネギ先生ラブラブコンビ。
それから、ネギ・パーティーの裏番長の千雨ちゃん」
「なんじゃあそりゃあぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
ぽーっと赤い顔で顔を見合わせるのどかと夕映の側で千雨が絶叫した。
「おい、どういう紹介だよっ!?」
「だってさー、実際問題最初のガチパートナーな
アスナは完全お姉ちゃんモードで
このかもどっちかって言うと甘々お姉ちゃん、
刹那さんは良くも悪くも師匠ポジで図書館二人はこの様。
バランサー的にネギ君にガツンて直言出来るのって千雨ちゃんでしょ」
「だからってなぁ………」
「それで、問題はここからなんだけど………」
「おいっ!?」
身を乗り出した千雨が、裕奈の目を見て浮かせた腰を下ろした。
「千雨ちゃんはどうしてここに?」
「ありゃ、見るからに魔法関係の異常事態だろ。
あんだけ世界樹が光ってて最近学校にいないネギ先生や神楽坂はもちろん、
近衛や桜咲とも音信不通。
いっそ学園警備と繋がってる明石を探してたんだけど、
佐倉がここにいるって事はビンゴって事だな」
「はい」
千雨の言葉に佐倉愛衣が応じた。
ーーーーーーーー
「マギカに絡んだ一般人が目の前で消えた、ってか。
それこそなんだそりゃだ」
裕奈と愛衣から一通りの説明が終わり、
千雨はバリバリ頭を掻いた。
「ナツメグさんを通じて調べましたが、
鹿目まどか、桜咲刹那、近衛木乃香、三人の携帯電話の電波も
ほぼあの時点に合わせて現在に至る迄消失しています」
「つーと、ますます推測通りだろうな」
愛衣の言葉に千雨が言った。
「ゆえちゃんと本屋ちゃんもその用件で?」
「だろうな、私とはそこの廊下で会ったんだけど」
裕奈の言葉に千雨が言った。
「発想はおよそ千雨さんと同じです。
何か分かっている事、出来る事が無いか、
それを確認に来ました」
夕映の言葉にのどかも頷いた。
「ゲートが図書館島の地下にある、と言ったわね?」
「ええ、そうです」
暁美ほむらの問いに夕映が応じた。
「そこまで案内しなさい。
この人達の話を聞く限り、ゲートとやらが発動して
まどか達が火星の異次元の魔法世界に飛ばされた事は確実。
何か分かる事があるかも知れない」
「お勧め出来ないですよ」
「危険だから?」
夕映の言葉に、マミが問いかける。
「その通りです」
「それに、ゲートは魔法使いにとっての重要機密、
部外者、それもマギカの方を無断で案内したと言う事になりますと………」
「部外者?」
愛衣の言葉に、美樹さやかの言葉が剣呑に尖った。
「そういう事よ」
ほむらが続ける。
「その部外者を魔法の国とか言うファンタジーに飛ばしてくれたのは
一体何処の誰なのかしらね?」
「悪いがこっちの方が筋通ってるだろ。
勝手に巻き込んどいて部外者扱いとかさ」
ほむらの言葉に千雨が続いた。
「でも、本当に危険ですよ」
「魔法少女ナメるなってーの」
「調子にのんなよヒヨッコ」
「それでも、美樹さんの言う通り、
私達はかなり危険な状況でも自分の身は自分で守って来たわ。
手がかりがあるなら見逃せない」
のどかの忠告に、最後はマミが言った。
「分かりました。図書館探検部員二名の一存としてご案内します。
可能な限りの事はしますが、
自分の身は自分で守って下さい」
夕映の言葉に、魔法少女達が頷く。
「と、言う事は、私達がついてくのはちょっとまずいんだけど、
千雨ちゃんは?」
「私はパスだ、図書館島の地下とか冗談じゃない」
裕奈の言葉に千雨が身震いして言った。
「言っとくが、その辺のからくり屋敷程度に思ってたらマジで死ぬぞ」
「ええ、気を付けるわ」
「巨大怪獣とかマジでいるからな」
「そういうのあたし達の仕事だし」
マミとさやかの返答に、
千雨は嘆息して手で追い払う。
ーーーーーーーー
「なんだ、こっから入るのか?」
図書館島の図書館裏遺跡群に到着し、佐倉杏子が言った。
他でもない、杏子達がつい先程まで合流場所に使っていた所だ。
そして、夕映、のどかを先頭に魔法少女達が扉の中に入る。
「なかなか、やるですね」
リボンを次々と繰り出して
階段に絡めたリボンにぶら下がりながら降下する巴マミを先頭に、
地下に向かう巨大な螺旋階段を軽々と降下していく魔法少女達に
夕映が感想を漏らす。
「結構、って言うかすっごい深かったねー」
地下通路で、腕で汗を拭いながらさやかが言う。
「気を付けて下さい、この先の通路には侵入者対策の………」
夕映が説明を続けている頃、
さやかの足元ではカチッと音を立てて石畳がへこみを見せていた。
ーーーーーーーー
「広い」
「この先なのかしら?」
「まあ、そういう事になりますが………」
阿鼻叫喚の末に辿り着いた地下の巨大空洞で、
さやかに続いてマミが尋ね、夕映が答える。
「あれって、サイズから言っても世界樹の根っこなのかしら?」
「改めて非常識な大きさね」
壁や天井から突き出している
植物性のオブジェっぽくも見えるものを指して、
マミとほむらが言葉を交わした。
「雨?」
さやかが呟いた次の瞬間には、
さやかと、さやかに飛びついた杏子は岩の地面を転がっていた。
「つーっ、なんだ、よ?」
「は、はは、マジで怪獣? ………!?」
さやかと杏子が見上げた先で、
西洋風のドラゴンが翼で羽ばたきながらガバッと口を開き、
間一髪杏子の張ったバリアが火炎放射の直撃を防いだ。
「ティロ・フィナーレッ!!!」
気が付いた時には、
魔法少女四人組はリボンで繋がれて止まった時の中にいた。
「どう見る?」
ほむらがマミを見て言う。
「硬いわね」
マミが答えた。
「効いてる手応えが全然ない。
硬さ、速さ、攻撃力、
私達四人がかりでも勝てるビジョンが見えないわ」
「同感だ」
マミの言葉に杏子も吐き捨てる様に言った。
「どうするですかっ!?」
「撤収だっ!!」
時間停止が解除され、夕映の叫びに杏子が応じる。
その時には、大量の迫撃砲の砲弾が空中で爆発し、
マミが大量のマスケットを地面に撃ち込みながら後退していた。
「わああっ! もう動いてるっ!!!」
地面から伸びて一時はドラゴンを埋め尽くす様に絡み付いた
大量の黄色いリボンがブチブチブチと容易くちぎられるのを見て、
撤退中のさやかが叫んだ。
ーーーーーーーー
「お帰り」
麻帆良学園女子中等部寮佐々木まき絵・和泉亜子の居室で、
飛び込むなり寝っ転がったり両手を床について
総員荒い息を吐いている面々を見て裕奈が言い、愛衣が大汗を浮かべる。
「はーい、元気が出るお茶入ったよー」
「ああ、サンキュー」
「って、効き過ぎじゃないこれ?」
「なんか、危ないお茶じゃないでしょうね」
亜子が運んで来たお茶を、まず杏子が有難く受け取り、
その強烈な威力にさやか、ほむらが声を上げた。
「で、どうだった?」
「簡単に出入り出来ない場所だと言う事は理解したわ」
「だろうな」
裕奈の問いにマミが答え、千雨が嘆息しながら支度を続ける。
「こっちは、ちょっと分かった事がある」
千雨の言葉に、一同が注目した。
「メリケン帰りのアニメ監督がいてな」
言いながら、千雨がノーパソを操作する。
「こっちで魔法と拳と剣と萌えなOVAなんかを監督してから、
長年続いてるミステリーアクションの劇場版監督に抜擢されて、
結果、ミステリー・アクション・ボンバーが
ミステリー・アクション・アクション・アクション・
ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・ボンバー・
ボンバー・ボンバー・ボム・ボンバー・ボンベスト
ぐらいに進化したとも言われている訳だが。
で、そのボンバーマン監督に少し遅れてそっちの映画に合流した脚本家が
十八番にしてるギミックがあってだな。
元々実写の刑事ドラマなんかを長くやってた人だが、
今やこれが出たらこの人だと分かる、ってぐらいの大好物な使い方さ」
千雨の操作がそれまでのせわしない動きから、
カチッ、と、短いクリックが終わり、或いは始まりを告げた事が
素人目にも分かった。
ノーパソに表示されているのは、
裕奈達には見覚えのある地図と大量の顔写真だった。
「たった今あんたらが調べに行った通り、
世界樹と図書館島には密接な繋がりがある。
世界樹が光ってゲートが起動した、って事だからな。
だから、あの時間、図書館島出入り口を中心に、
保存されてた防犯カメラの映像データから
取り出せるだけの人間識別データを取り出して分析に掛けた」
「あー、ホントこういうの科学捜査のドラマとかに出て来そう」
「京都辺りの奴か」
画面の中でパパパパパッと取捨選択される光景に、さやかと杏子が言った。
「で、そいつを
他の可能な限りのデータベースとも連動させて分析した結果」
千雨の操作と共に、
画面の中で膨大な顔写真がどんどん減少し、一人に絞り込まれる。
「あすなろ市?」
「あすなろ市の御崎海香」
画面に大きく表示された写真とデータを前に、
マミと千雨が結論を口にした。
==============================
今回はここまでです>>356-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>365
「簡単に言えば、麻帆良、特に図書館島周辺の防犯カメラデータを核に、
アクセス出来るありとあらゆるデータをクロスチェック演算して、
今回の事件に関連して怪しい要素が濃い奴を割り出す。
私がやったのはこういう事だ。
問題なのは、何をもって怪しいと言うべきなのか、だけど、
まあ、その辺りの事は話せば長くなる。
で、怪しいと言うべき要素が見過ごせないぐらいに集結してるのが」
「御崎海香、あすなろ市の中学生ね」
長谷川千雨の説明に、巴マミが続けた。
「まず、事件の後で、
図書館島裏口の比較的近くにいた事が防犯カメラで確認されてる。
そして、麻帆良の外の人間。
しかも、ベストセラー作家と来た」
「ベストセラー作家?」
千雨の言葉に暁美ほむらが聞き返す。
「ああ、一応こんな事になってる」
千雨が差し出したのはウェブ辞書のプリントアウトだった。
「現役中学生って事で本人は表立って目立つ事は控えてるらしいが、
こいつらが電子の海で八方手を尽くして一晩かからずやってくれた」
「イエス、ちう様!」
「は? 空飛ぶネズミ?」
「あら、可愛いわね」
「光栄であります」
ふわふわ姿を現した電子精霊に美樹さやかとマミが反応し、
精霊も律儀に返答する。
「これ、千雨ちゃんが使役する電子精霊ね」
「インターネット、電子的な通信、データに関わる事なら
大概なんとかしてくれるです」
「すげー」
「いやー、それほどでも」
明石裕奈と綾瀬夕映の説明にさやかが感心し、
電子精霊が実に嬉しそうに反応した。
「このタイミングで他所から図書館島に、
ってだけでも結構高得点で怪しい上に、
あんたらも関わって来たからな。
あすなろと見滝原は目と鼻の先だ」
「こっち側に関わりがあるってのか?」
千雨の言葉に、佐倉杏子が鋭い声で呟く。
「かもな。その御崎海香先生のあすなろ市での行動パターンを
防犯カメラデータ等から割り出した結果、なんだが」
「魔法少女」
千雨が画面に表示させた地図を見て、マミが呟いた。
「根拠は?」
千雨が尋ねる。
「時刻と場所よ」
「だな」
マミに続いて杏子が言った。
「あー、確かにね。只の夜遊びにしては意味が分からない。
この件の関係抜きにしても
あたしらならそう推測するわこれ」
「ええ、これなら美樹さやかでも分かるわね」
「成程」
背景であたしの動きについてこれる? 根競べなら負けないわドガガガガと
大汗を浮かべる亜子の前で展開する壮絶バトルをおいておいて
千雨が納得した口調でカチカチ操作を進める。
「で、今度は逆にあすなろ市でのデータを収集した。
御崎海香の自宅は夢の印税生活でぶっ建てた御崎海香御殿」
「おおーっ」
画面に表示された豪邸にさやかが声を上げる。
「その周辺にある防犯カメラの映像と
今回の事件前後の麻帆良の防犯カメラ映像、
まずはそいつをクロスチェックすると」
画面に、ぱぱぱぱぱっと複数の顔写真が
防犯カメラ映像とセットで表示される。
何れも、女子中学生と言って矛盾の無い外見だ。
「あすなろ市の御崎海香御殿周辺に常時出没してるこいつら、
今日は近い時刻に図書館島周辺に出入りしてる。
で、このグループのあすなろ市での行動範囲」
「だろうな」
画面に表示された地図の画像に、杏子が言った。
「こん中に一人、見知った奴がいる」
「魔法少女?」
さやかの問いに、杏子が頷いた。
「和紗ミチル、魔法少女だ」
「今の行動範囲と時刻を見る限り、
今のメンバーは御崎海香さんを含めて
一つの魔法少女チームと見るのが自然ね」
杏子の回答に続けてマミも結論を導き出した。
「………転校生?」
そこで、さやかはほむらの様子に気付いた。
「………まどか………
まどかは、魔法の世界にいる、のよね?」
「状況から見てそう考えるのが自然です」
ほむらの問いに、愛衣が答える。
「それは、今から図書館島の地下から行ける所なの?」
「今は無理です」
続けての質問に愛衣が答えた。
「元々、図書館島地下のゲート再稼働作業は
協会内でもトップシークレットの扱いで進められてきました。
何故こんな事になったのか、正確な情報は降りてきていません。
そもそも、ゲートと言うもの自体、その起動には魔力の蓄積が必要ですから
仮に図書館島のゲートが実用化されていても今は難しい筈です」
「冗談じゃ、ない」
愛衣の答えに、ほむらは震える声で言った。
「こんな、訳の分からない状況で、まどかは」
「そうね」
続けたマミの言葉も、明らかに厳しいものだった。
「正体不明の魔法使いに魔法少女のグループまで関わってる。
そんな状況で私達と一緒だった鹿目さんがいなくなった。
とても安心なんて出来ないわ」
「あんたら、魔法の世界に行くつもりか?」
「ええ」
千雨の問いに、ほむらが即答した。
「まどかがそこにいると言うのなら」
「行くに決まってるでしょ、まどかは魔法少女ですらないんだからね。
そんな魔法の国とかに勝手に連れて行かれたって言うんなら、
まどかのお友達、魔法少女さやかちゃんとしては絶対に見過ごせない」
「しかし、稼働したばかりの図書館島のゲートをすぐに動かす事は出来ません」
「かなり突発的な事だったみたいですね。
既に周辺の魔力反応は消失していて、
再稼働のための魔力補給には相当な時間がかかるです」
ほむらとさやかの言葉に、愛衣と夕映が答えた。
「図書館島以外のゲートは? あるんでしょう?」
マミが千雨を見て、千雨がノーパソを操作した。
「ここじゃないとすると、次はウェールズか」
ノーパソを操作する千雨に注目が集まる。
「次にゲートが開くのはウェールズ」
「ウェールズ、って、イギリスの?」
「ああ、大体の時刻は………」
マミの問いに千雨が答え、画面にデータを表示する。
「………無理ね」
マミが言った。
「とてもじゃないけど、今から行ける時間じゃない」
「仮に物理的に可能だったとしても、手続きが間に合いません。
魔法協会内の手続きで許可が出ない限り、
魔法的なセキュリティーに阻まれてゲートには接近できません」
マミに続いて、愛衣が言う。
「無理を、通すか」
千雨か、ぽつりと言ってスマホを取り出した。
「私だ、ああ、こんな時間に悪いな………」
==============================
今回はここまでです>>366-1000
続きは折を見て。
Happy Merry Xmas!
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>371
ーーーーーーーー
「わあ」
美樹さやかが思わず感嘆の声を漏らした。
さやか達のいる部屋に現れたのは、
同年代の同性が一目でそう感嘆するぐらい、
金髪白人の血縁がありそうなスタイル抜群美少女、
と言う表現がぴたりと当てはまる雪広あやかだった。
「何か、容易ならざる事態が出来したと伺いましたが?」
雪広あやかはきりっとした態勢で長谷川千雨に質問する。
身なりも姿勢も、上品でいて力強い、そういう印象だった。
「ああ、こいつは雪広あやか、3年A組のクラス委員長で、
魔法の関係にもある程度通じてる。
魔法少女、マギカ、って知ってるか?」
「多少の事は。それに、世界樹が光った事も関係が?」
「大ありだ、かいつまんで説明する」
正規に関東魔法協会所属の任務に当たっている佐倉愛衣としては、
本来秘匿事項となっている今回の事件の関係者を勝手に増やされて
正直頭を抱えたい所だった。
しかし、雪広あやかは魔法協会、どちらかと言うと
「英雄」ネギ・スプリングフィールドが進める
巨大プロジェクトに大きく関わるVIP的外部協力者。
本来3Aでもストッパー役の千雨が
予想外のスピードで歩を進める事に飲まれているのも実際だった。
「その様な事が………」
千雨にマミが加わって、魔法少女の事から今回の事件の経緯まで、
あやかにおよそのあらましを説明した。
その時、電子精霊が千雨に接近し何やら耳打ちする。
「………ヤバイかもな」
改めてノーパソを操作した千雨がぽつりと漏らす。
「これ以上、何が?」
「あすなろ市の件だ」
マミの問いに千雨が言う。
「今まで聞いた話をコアにして、
あすなろ市中心に関連情報をクロスチェック再演算した。
防犯カメラ、学校、携帯電話、
インターネット接続等等の情報をかき集めてな。
佐倉杏子さん?」
「ああ」
「これは、あんたの知り合いか?」
「ああ」
千雨が表示したのは、和紗ミチルのデータだった。
「彼女の特異点は二つ。
まず、御崎海香邸に出入りしている
魔法少女のグループと見てまず間違いないが、
同じ条件のグループの中で彼女だけ麻帆良に入ったデータが無い」
「魔法少女じゃ、ない?」
「あり得るかも」
マミの言葉にさやかが続く。
「まどかみたいに
魔法少女以外で魔法少女に同行してるケースもあるから」
「そうじゃなくても事情があって今回はパスした?」
さやかの言葉に思案顔のマミが続く。
「そしてもう一つ、和紗ミチルはここ最近学校を欠席し続けてる」
「あたしがあいつに会ったすぐ後からだ」
千雨が表示したデータを見て杏子が言った。
「もう一つ、本格的にヤバイ話がある」
「勿体ぶらないで」
ほむらの鋭い言葉に、千雨が頷いた。
「時期だけで言えば、
この和紗ミチルの不登校の直後から、あすなろ市を中心に、
私らと同年代の少女の失踪事件が続出してるって事さ」
「なん、ですって?」
マミの言葉を聞きながら、千雨がノーパソを操作する。
「まず、さっきの魔法少女の説明にも出て来たが、
正体不明の少女の失踪は、魔女に食われた魔法少女である可能性がある。
そういう話だったな?」
「ええ」
千雨の問いにマミが答える。
「だとしても、統計的におかしい。
警察が事件性を認知しているケースすら目立ってるから
そこから本格的に警察その他の情報にアクセスして
統計の再演算を実行した訳だけど、
今に至る迄この期間のあすなろ及びその周辺の
同年代の少女の家出、失踪、それも事件性を疑われるレベルのもの、
その発生率が明らかに跳ね上がってる。
そして、やっぱりその事を疑ってる刑事がいた」
「特○係の登場って奴?」
「警察全体の取り組みから見て、そんな所みたいだな」
字面だけは軽口めいたさやかの言葉に千雨が言う。
「関連情報にやたらアクセスしてる刑事のPCをこっちで逆に把握した。
彼女は、この流れを一連の失踪事件と見てリストアップしてる。
もっとも、その刑事は和紗ミチルの不登校の前から追跡していたらしいが、
やはりここ最近で跳ね上がってるらしい」
「………その、失踪者のリストとかって?」
「ああ、今んトコ警察では一連の事件と言う見方をとっていない。
だが、その刑事が独自にリストアップしてたのがこれだ」
「………いた………」
マウスを操作していた杏子が呟いた。
「飛鳥ユウリ、あすなろの魔法少女だ」
「失踪したのは、和紗ミチルさんの不登校の少し前ね」
杏子の答えに、マミが続ける。
「いいんちょ」
そして、千雨は改めてあやかに向き直る。
「はっきり言って、状況はかなりまずいぞ。
魔法使いに魔法少女、得体の知れない事件が絡んで底が見えない。
今回のテロリストの正体は分からないが、
形の上では魔法使いが魔法少女に宣戦布告した形になっちまった」
「長谷川さんっ!」
千雨の尋常ならざる表現に、愛衣が悲鳴を上げた。
「そうね」
それに続いたのは厳しい口調の巴マミだった。
「この事に就いて納得できない状況が続くなら、
魔法使いから魔法少女に対する敵対の意思ありとして、
この事を私の知る限りの魔法少女に通達する事も考えてる」
「待って下さいっ!」
マミの通告に、愛衣の声が縋り付いた。
「確かに不穏な事は否めませんが、
鹿目まどかさんの事は桜咲さん達に任せて下さい。
あの二人が一緒なら、
一般人である鹿目まどかさんの安全を第一に行動する筈です。
あの人達がガードしている一般人をどうこうするなんて、
魔法使いだろうが魔法少女だろうがまず無理です。
遅くともお二人がガードしている間に
協会で保護して無事送り届けると約束しますから」
戦闘モードに近い眼差しの巴マミに、愛衣は懸命に頭を下げる。
「個人的にはあなた達を信じたいと思ってる」
それが、マミの返答だった。
「だけど、魔法少女同士ですら常に平和とは言えないのが現実なの。
まして、実際に事が起きてる時に、
あなた達を信じて任せろ、と言われるだけでは
時間も短過ぎて知らない事が多すぎる。
そんな状況で私達のお友達、
それも一般人をそのままにしてはおけない」
「それで、あなた達が魔法世界に行くの?」
そこで、宮崎のどかが口を挟む。
「行くよ、行き方さえ分かれば」
答えたのは美樹さやかだった。
「それに、意味があるとは思えない」
「は?」
さやかが聞き返そうとするが、
むしろ穏やかにさやかを見ているのどかの綺麗な瞳が
さやかの言葉を封じる。
「鹿目まどかさんには、このかと桜咲さんがついてる。
二人はあの世界にも通じてるし実力もトップクラス。
あなた達は、実力があるとは言え魔法の事情をほとんど知らない。
あちらの世界は市街地は整備されてるけど、
迂闊にそこから出たらモンスターの森や砂漠が普通にある、
そこにはあんなドラゴンもいるし現地の人達の習慣もある。
私はそこでトレジャーハンターもしてたけど、
何も知らないあなた達が勝手に人を探しに行って、
それに意味があるとは思えない」
この年頃は小さな年の差が敏感に分かる。
一見大人しそうに見えるのどかだが、実年齢はさやかの一つ上。
今本人も言っている経験のためか、
やんちゃ者のさやかをちょっと圧するぐらいには腹が座っているらしい。
「それでも行くさ。こんな言葉もあるからね。
やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい」
「一時代を築いたライトノベルに出て来る台詞ですね。
もっとも、それは負けフラグの様ですが」
「さやかちゃんはしぶといからね。
それなら映画だろうがスピンオフだろうが
何度でも復活してやり遂げるよ最後まで」
そっと口を挟んだ綾瀬夕映にさやかが言い返す。
「あたしは、ずっとあがいて、後悔しそうになって、
それでも選んで、あたしの事を待っててくれて………
まどかがいなくなって、後悔なんてしたくない」
「そちらさんは?」
「決まってるわ」
千雨に促され、暁美ほむらが答えた。
「私は、私の手でまどかを守る。
私のすべき事はそれだけよ。
魔法使いやドラゴンが跋扈している異常な状況で、
意味も分からず放り出されたまどかを
得体の知れない他人に任せ切りになんかしない」
長谷川千雨は、一つ年下の少女、
暁美ほむらの殺意の籠った眼差しを頷いて見返した。
「明石、佐倉」
そして、千雨はその二人を見た。
「腹、くくるしかないみたいだな」
「長谷川さん?」
千雨の言葉に愛衣が聞き返す。
「私らだって、行き掛り上協会と衝突した事もある。
他人に実害が出てる時に、
そうそうこっちの都合よくばかりは行かないさ」
「それは、あなた達はネギ先生達と一緒で………」
「外部の、それも簡単にはねじ伏せられない魔法少女って
敵に回したらもっと厄介だと思わないか?」
「ええ、事に及んでは只でやられるつもりは毛頭ないし、
鹿目さんの事で納得出来なければ退くつもりもない」
千雨の言葉に、マミが真面目に続いた。
「まあな」
続いたのは佐倉杏子だった。
「こっちが魔法少女って知った上で招待されて、
それで、魔法使いと魔法少女に襲撃されてこの様、ってなると、
ちょっとそれ面倒くさいで済ませるには限度があるじゃん」
「それは、無益な争いです。
私達は鹿目まどかさんに危害を加えるつもりなんて毛頭ありません。
危険を避けるなら、こちらを信じて救助を待って下さい」
それでも、愛衣は精一杯声を押し殺して告げた。
「いいんちょ」
「はい」
千雨の呼びかけに、あやかは真面目な顔で応じる。
「ちょっと、試しに考えてみてくれないか」
ーーーーーーーー
ノーパソに向かっていた長谷川千雨は、
短い打鍵と共にふうっと息を吐いた。
「じゃあ、お二人さんはこの手筈で。
ギリギリの所だけど、ゼロじゃない」
千雨の言葉に、ほむらとさやかが頷く。
「あすなろ市の魔法少女グループは残りの二人で当たるのか?」
「そうね」
「ま、そういう事になるな」
千雨の問いに、マミと杏子が返答した。
「図書館島関係の事、頼めるか?」
「分かった」
「了解です」
「って事だ」
のどかと夕映の返答を受け、千雨が向き直る。
「明石、佐倉、学園警備は一旦引いてくれ。
こっからは3Aと魔法少女で進める」
「はいそうですか、と言う事になると思っているんですか?」
「時間が無いんだ」
怒りを秘めた声で聞き返す愛衣に、千雨が押し被せる様に言った。
「元々、不干渉の関係だった魔法使いと魔法少女が両方絡んだ事件、
ってだけでも対処は難しいんだろ。
魔法少女は魔法少女で勝手にやる気だし、
魔法使いには魔法使いの秩序があるんだろ」
「ええ、ですから………」
「魔法少女は、身内が消えてまともに説明も出来ない事態に本気でキレてる。
これでこっちが邪魔に見える動きをしてみろ、最悪殺し合いだ。
ネギ先生以下の四人組が留守で、
上の方に直に話を通せるパイプが無い。
あんた達だけが灯篭の斧で中途半端に協力するってのはリスクが高過ぎる。
それなら、今ここでの事は見なかった事にした方がお互い話が早い。佐倉」
前を見続ける愛衣に向かい、千雨はほんの僅か前に動いた。
「戦争の引き金を引く心算か?」
明石裕奈から見て、普段は礼儀正しく、
年相応に可愛らしい年齢後輩キャリア先輩な佐倉愛衣は、
魔法使い、魔法協会でのキャリアでは裕奈の先輩。
実際は同年代でも指折りの俊才である努力家らしく、
根っこの所は強い芯と負けん気を持っている。
それが、千雨から、自分達が関わっている事件の事で、
確かに理屈は通っているが一蹴に近い形での撤退を求められて、
一瞬それでも食い下がろうと言う表情を見せてから、
歯噛みが聞こえそうな動きで斜め下を向いていた。
そんな愛衣と、
クラスメイトでもある千雨の顔を見比べた明石裕奈は、
訝し気にちょっと首を傾げていた。
「明石、どうだ?」
「仕事に関してはメイちゃんの方が先輩だから、
私は指示で動くだけ」
千雨の問いに、裕奈はふっとごまかしの笑みを交えて答えた。
「勝手に、して下さい。
私達は何も知らなかった、それでいいんですね?」
「恩に着る」
「感謝するわ」
愛衣の言葉に千雨とマミが言い、
裕奈の眉は益々訝しく動いていた。
裕奈が見習いでも魔法協会に属して改めて分かった事として、
今の3年A組、その中のネギ・パーティーはかなり独特な存在だった。
元々千雨は愛衣の一つ年上であり、何より、あの夏休みの実績がある。
裕奈は千雨を裏番長、と呼んだが、
裕奈が後で聞いた所では、夏休み以前の学園祭からも
今や「英雄」であるネギの側でコアな活躍をしていた。
そして、それが出来るぐらいに頭も回る。
そんな千雨に理屈と現実的なパワーバランスで圧倒されて、
愛衣は自分の正規の持ち場で黙らされる。
今は「こちら側」でもある裕奈としては、
色々な意味での自分の中途半端がもどかしくなる。
「明石裕奈」
その呼びかけに、裕奈は思考を止めた。
「一つ、確かめたい事がある」
それを言ったのは、暁美ほむらだった。
「何?」
「今、まどかの側で彼女を守る桜咲刹那、
クラスメイトでもあるあなたから見て、
一体どういう人物なのかしら?」
ほむらの問いに、裕奈は指先で顎を押し上げながら少しだけ考える。
「誠実な人」
それが、裕奈の答えだった。
「うん、クラスメイトで、
魔法協会の関係で関わる事もあるけど、誠実な人だね。
誠実で寡黙なサムライ」
「見たままね」
マミがくすっと笑い、裕奈がニカッと笑みを返した。
「でも、中身は結構普通な女の子の所もあってさ、
それが又かわいーんだ」
「分かる」
ふふっと笑って言ったのは、美樹さやかだった。
「でも、凄く真面目だから、
このかの事だって、今見たら心の底から大好きなのに、
このかに悲しい顔させても昔は距離をおいた護衛に徹してた。
本当は自分が一番友達でいたいのに、
守るためにそうするべきならそうし続けてた。そういう娘だよ。
色々厳しいけどそれも優しいからで、凄くいい娘だから」
裕奈の真面目な言葉に、さやかは真面目な顔で下を向いた。
「今はこのかともアスナとも、ネギ君ともすっごくいい関係で、
誰よりも強いサムライしながらすっごく可愛い女の子になってる。
それでも、何より守るべきものは絶対、命懸けで守り抜く。
だからさ」
そう言って、裕奈は自分を見据えるほむらをしっかと見返す。
「だから、鹿目まどかちゃん、
あんた達の大切な友達の事も、刹那さんなら必ず、
それこそ命を懸けてでも守り抜く筈だよ。
まー、今の魔法世界に、
あの二人を本気にさせる程の脅威があるとも思えないけどね」
==============================
今回はここまでです>>372-1000
続きは折を見て。
すいません
>>374差し替えます。
==============================
「まどかみたいに
魔法少女以外で魔法少女に同行してるケースもあるから」
「いや、だからミチルは間違いなく魔法少女だって。
あたしはいっぺん会ってるんだから」
「だったら、事情があって今回はパスした?」
杏子の言葉に、思案顔のマミが続ける。
「そしてもう一つ、和紗ミチルはここ最近学校を欠席し続けてる」
「あたしがあいつに会ったすぐ後からだ」
千雨が表示したデータを見て杏子が言った。
「もう一つ、本格的にヤバイ話がある」
「勿体ぶらないで」
ほむらの鋭い言葉に、千雨が頷いた。
「時期だけで言えば、
この和紗ミチルの不登校の直後から、あすなろ市を中心に、
私らと同年代の少女の失踪事件が続出してるって事さ」
「なん、ですって?」
マミの言葉を聞きながら、千雨がノーパソを操作する。
「まず、さっきの魔法少女の説明にも出て来たが、
正体不明の少女の失踪は、魔女に食われた魔法少女である可能性がある。
そういう話だったな?」
「ええ」
千雨の問いにマミが答える。
==============================
差し替えは以上です。
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>383
>>384
ーーーーーーーー
「取り敢えず、お茶でも飲んで考える?
私の部屋すぐ近くだから」
「いえ、取り敢えず………」
麻帆良学園女子中等部寮、
佐々木まき絵、和泉亜子の部屋を出て少し歩いた所で
明石裕奈はスマホを取り出した。
側を歩く佐倉愛衣、大河内アキラの注目が集まる。
ーーーーーーーー
「色々言いたい事はありますが」
裕奈と愛衣は、女子中等部エリアダビデ像前の広場で、
腕組みする高音・D・グッドマンの眉がひくひく動くのを見ていた。
「まずはメイ、着衣一式携帯電話ごと
お風呂場に置いたまま何処かに出歩く、と言うのは
如何に女子寮でもはしたない、では済まない事だと思いますが」
そう言って、高音はビニール袋に入った一式を愛衣に押し付ける。
「メイと連絡がつかない上に、
事件性すら疑われるレベルの忘れ物が寮からこちらに連絡があったので
明石さんに電話してみた訳ですが、
一体何事か、当然説明いただけますね? メイ?」
そこで、ようやく高音は愛衣の様子に気付く。
高音にとって愛衣は、長いか短いかはとにかく、
魔法の鍛錬からちょっとした戦場気分も含めて
そこそこ濃い付き合いをして来た相手だ。
その高音から見て、愛衣は明らかに憔悴していた。
それも精神的なものだ。
確かに疲れる一日ではあったが、
何時間か前に分かれた時の事を考えると、
何も無しにここまで憔悴するとはちょっと考えられない。
「何が、あったのですか?」
「ああ、うん」
目を閉じて後頭部を撫でていた裕奈が、
左目を開いて高音を見る。
恐らく厄介事だろう、と、高音は覚悟を決めようとする。
ーーーーーーーー
「何と言う………」
裕奈からのおおよその説明を聞き、
高音は絶句し愛衣は下を向いていた。
「あなた達は、それを看過したと言うんですか?」
「あの場で止めようとしたら、本気で殺し合いになってた」
ビクッ、と肩を震わせる愛衣の隣で、
裕奈はむしろ高音の目を見据えて言った。
「ええ、今のは只の質問です。
魔法少女の火力は私も知らない訳ではありませんから、
その判断を責めるものではありません。
こちらで加担したのは長谷川千雨、雪広あやか、
綾瀬夕映、宮崎のどか、これでいいですね?」
「はい」
高音の問いに、裕奈は迷わず答えていた。
「ふざけた真似を………」
裕奈は息を飲んだ。
高音は麻帆良学園系列の聖ウルスラ女子高等学校の生徒、
性格は悪く言えば頑固で指導も厳しい。
その分真面目で育ちの良さが見える礼儀正しい先輩。
それだけに、口調に呪詛の籠った呟きは尋常ではなかった。
「ネギ先生の下で、
強大な魔法の実力を持って学園や魔法世界を救う中心にいた。
だから今回もそれを押し通そうと言うのですか。メイ」
「はい」
そこで、ようやく愛衣は怖々と顔を上げた。
「3Aと魔法少女が結託して横車を押そうとしている。
その事に就いては、これからフェイト先生に報告して対処を求めます。
ええ、学園内の魔法関連事件、その調査に関わる学園警備への暴挙として、
私からフェイト先生、魔法先生に厳重に抗議します。
………ふざけるな………」
高音の最後の言葉は、僅かに震えていた。
最近こちらの世界に関わった裕奈は、
お祭り娘の地はなかなか変わらず、高音からもしばしば雷を落とされている。
だからこそ、この事態が高音の心の何に触れたのか、
それぐらいは分かる心算だった。
「高音さん」
だからこそ、裕奈はごくりと喉を動かし、拳を握り、
それでも、口に出した。
「何ですか?」
高音が聞き返す。高音は確かに頑固だが、
責任感が強く、頑迷ではない。
後は、自分次第と裕奈は一度深呼吸をする。
「私も、彼女達を追って今回の事件の調査続行を」
そこまで言って、裕奈はぐっと踏みとどまる。
そして、本当にチビりそうな高音の目をしっかりと見返す。
「本気で言っているんですか?」
「本気です。これは、麻帆良学園の中の魔法の事件です。
人が三人消えてて正直何が起きてるのかも分からない。
手がかりは、動き出したグループの後を追う、
今はもうそれ以外には、現実問題として、ない、んじゃないかと、
そう思いますっ!」
「だから、あなたのクラスの暴挙に追随しろと?」
「私も、っ、今回の事はやり過ぎと言うか
やっていい事じゃない。私も、そう思う」
「あなたがそう言うのでしたら、間違いなくそうでしょうね」
「だけど、その事と調査とは別です、
目の前に手がかりがあるんですから」
「そうやって、又、済し崩しに3Aが事件を解決して
私達がそれを手伝って目出度し目出度し、
と言う事にする心算ですか?」
「高音さんっ」
裕奈は踏み留まって前を見て、
高音も決して退かない眼差しでそれを見返した。
「私は、高音先輩を尊敬しています」
裕奈の言葉を聞きながら、高音は裕奈をじっと見据えた。
「力だけを持って魔法協会に入った私に、
高音先輩、メイ先輩は魔法使いの事を一つ一つ教えてくれた。
私が調子に乗って、高音さんから雷を落とされた事も一度や二度じゃなかった。
魔法なんて力、好き勝手に使ったらいけないって私にも分かる。
力があるからこそ、何かあったらフォローしなきゃいけない事もいっぱいある。
高音さんもメイちゃんも、
その事にずっと誠実に向き合って努力して積み重ねて、私にも教えてくれた。
魔法協会で高音さんの下について、少しは教えてもらったつもりです」
「それでもあなたは3Aにつくと言うのですか?」
「それでも、高音さんも分かってますよね?
これが只事じゃない、只の魔法のトラブルじゃないって。
襲撃に関わった魔法使いの正体は不明、
魔法少女のグループの関与まで浮上してる。
協会の具体的な動きも見えないで、こっちに手がかりが見えてる。
そんな状態で、一般人が巻き込まれて安否が分からないんです。
だったら、魔法使いとして………」
「私は、あなたよりもずっと長く魔法使いをしています。
身の程を弁えず藪を突く事の怖さもあなたよりは知っています。
いいえ、あなたはその意味では、
3A、ネギ先生と言うとてつもない素質揃いの身近で、
あなた自身が並み以上の素質の持ち主として
魔法に覚醒したと言う環境はむしろ悪かった。
あなたは、お母様の遺志を継ぐと言って魔法使いを志願した。
優秀な魔法使い優秀なエージェントであった
あなたのお母様ですら、任務中に落命した。
見習いが軽々しい事は言わないものです」
「私は………」
裕奈は、ぶら下げた手で改めて拳を握った。
「私は、何も知らなかった、母さんの事を」
「明るくて優しい、強い母だった。
あなたにとっては、
娘の母親としてそれで十分だった。違いますか?」
高音の言葉に、裕奈は小さく頷いた。
「それは、明石教授の意思でした。
それを押してあなたに教えたあの時の判断が正しかったか、
今でも私は自問自答します」
「私は高音さんに感謝してる」
「それならば、あなたが知った先人の犠牲に学ぶ事です。
事は、魔法使いに魔法少女まで関わっている。
私も最近関わりましたが、
彼女達は侮れないどころか敵に回したら本気で危険です。
魔法使いとして、ヒヨコとも言えるかどうか分からない雛鳥が。
これは、表向きのスキルや火力の問題じゃない、あり方の事です」
「怒ってたんだ」
「?」
「魔法少女のみんな、本気で怒ってたよ。
大事な仲間、友達がこんな事になって、
魔法使いの範囲でこんな事になって、それで何も分からないって。
刹那さん達と付き合ってたなら、魔法使いの強さだって分かってた筈。
それでも、一般人の友達のために衝突、戦争覚悟で戻って来て
躊躇なく最短ルートのやり方でこっちに迫って来た。
あの娘達、それぐらい本気で怒って、本気で心配してた。
大事な人がいなくなるって、そういう事じゃないの?
私達のテリトリーで私達にもよく分からない事態が進行してる。
それに、もっと、嫌な予感がする」
「まだ何かあるんですか?」
「千雨ちゃん、長谷川千雨」
「ああ、3A側の今回の首謀者だと言っていましたね」
「それがおかしい、おかし過ぎるんだ」
裕奈の絞り出す様な声に、高音は訝し気に眉を動かす。
「確かに、千雨ちゃんは本当の所を言えば
情に厚くて優しくて、だからネギ先生からも信頼されてて。
だから、魔法少女の側につく、ってのも分からないでもない。
それでも、それでもあの千雨ちゃんはおかしかった」
「私も、そう、思います」
そこで、愛衣が口を開く。
「あの夏休みの時も割と側にいる事がありましたけど、
あの人、何と言うか、あんな話し方をするとは………」
愛衣の言葉に、裕奈が頷いた。
「千雨ちゃん、長谷川千雨は、能天気な3Aの中では、
どっちかって言うとスカしてる、ノリが悪い、
そっちに近い態度をとってる。
それだけ慎重な娘で、
それに、魔法じゃない日常を大切にする娘でもあるんです。
少なくとも、こっちの世界の事に関して
やたらと無理押しするタイプの娘じゃない」
「確かに、私もそういう印象を持っています」
とうとう高音も思案して同意を示す。
「千雨ちゃんが怒るって言ったら、
むしろ常識とか安全圏が崩れる時。
そうじゃなかったら、慎重派だから
自分からごり押ししてリスクを負う様なタイプじゃない。
率先して魔法の事に関わって仕切りたがるタイプでもないし、
こんなやり方してたら、明日にでも
フェイト先生からのチョーク責めじゃ済まないって事も分かってる筈。
何より、人を踏み付けて押し除けるみたいな言い方、
根が優しいからちょっと距離取ってる千雨ちゃんが好き好んでやる筈がない。
何て言うか、千雨ちゃんから自分の事みたいな
嫌な危機感がひしひしと伝わって来てたって言うか
………焦ってる………」
「彼女が、何かを知っている、とでも言うのですか?」
「それもあり得る」
やや青ざめた高音の問いに、裕奈が答えた。
「だから、このまま訳も分からない状態が続けば、
何か凄く嫌な予感がするんです。
分からないままじゃ済ませられない。高音さん………
高音先輩、私に、僅かな勇気を使わせて下さい」
深々と頭を下げる裕奈の前で、高音がはあっと嘆息する。
高音から見て、裕奈は頭の痛い後輩だった。
高音の下につけられた、あの3A出身のお祭り娘。
力だけはやたらと持っていて、
羽目を外して高音から雷を落とされた事も一度や二度じゃない。
気が付いた時には、裕奈は宙に浮いていた。
「メイは念のためです。
夜は長い、少し頭を冷やしなさい」
「ちょっ、高音さんっ!!」
裕奈と愛衣は背後に現れた巨大な黒衣の触手に持ち上げられ、
高音は裕奈の叫びを背にカツカツとその場を後にしていた。
ーーーーーーーー
「高音さん?」
長い様な短い様な時間の後、高音がダビデ像前の広場に戻って来て、
僅かに浮いた裕奈と愛衣の足がすとんと着地した。
そして、高音は裕奈に資料を押し付ける。
「今回の事件に就いて、ナツメグが調査を行いました。
結果、ゲートのある図書館島周辺の防犯カメラの映像から、
麻帆良の外部の人物が割り出されました」
裕奈は、何処かで聞いた話を聞きながらちょっと首を傾げる。
「御崎海香、撮影された顔面と各種データベースを照合した結果、
あすなろ市の女子中学生作家、なのだそうです。
この、御崎海香と言う少女の周辺調査と接触を行い、
事件に関して何か見聞きした事でもないかを確認して下さい。
エージェント明石裕奈………返事は?」
「は、はいっ!」
「………ナツメグが言っていました………」
「?」
「こういう場合、学園警備が防犯カメラ映像を調査するためには、
閲覧許可を申請した上で、防犯目的で防犯カメラデータを提供されている
ミラーサーバにアクセスするのが通常手順です。
しかし、今回は、事件直後から提出されていた許可申請は棚ざらしにされ、
調査のために正規にアクセスした痕跡も無い。
それなのに、何かアクセスした形跡はある。
きな臭いものを感じたナツメグは、
学園警備のダミー活動で顔を繋いでいたルートから、
店舗等の防犯映像の生データを直接確保しておいて
今回分析に用いたと言う事です」
「やるね………」
「跳ね返りも地道にやるものです」
裕奈の言葉に高音が答える。
「この御崎海香と言う人物に就いて、私はそれ以上の事は知りません。
出張先での聞き込み調査である以上、
現場の判断で臨機応変に対応するのはエージェントの務めです。
メイは、魔法使いとして経験の浅い明石裕奈のバックアップを。
私自身、緊急時としてこの指示を出していますが、
軽率の疑いがある事も否定はしません。
あくまで魔法先生の指示を待つと言うのなら指示を留保しますが、
あなた達の判断は?」
「エージェント明石裕奈、
只今の高音・D・グッドマン先輩の指示、了解しました」
「佐倉愛衣、同じく了解しました」
「明石裕奈、佐倉愛衣」
「「はい」」
「魔法使いの誇りにかけて、
あなた達の本当の魔法と言うものを見せてみなさい」
「「はいっ!」」
高音から見て、裕奈は頭の痛い後輩だった。
それでも、弱小でもバスケットボール部員で、
からりと明るく笑いながら、先輩に対して真っ直ぐな眼差しを向けて来る。
そして、お調子者に見えて、存外聡い。
頭の回転も速く、よく見ている。根っこの所で大事な所を把握している。
「硬い」と言われている高音だからこそ、
チームとして欠落を埋め合わせる必要が分からない程愚かでもない。
愛衣は優秀な魔法使いで可愛い妹分。
姉貴分である高音共々、誇り高き魔法使いは
面を張られて張られっぱなしのタマではない。
==============================
今回はここまでです>>385-1000
続きは折を見て。
2018年にはまだ40時間以上ある筈なのですが…………
おめでとうございます!
それでは今回の投下、入ります。
==============================
ーーーーーーーー
>>394
「………ウェヒヒヒ?」
光に包まれた、と思った後の鹿目まどかの視界に広がる光景は、
彼女の脳内処理能力を相当大幅にオーバーしていた。
どこから記憶を辿ればいいのか、
確か、自分は見滝原に住んでいて、
強くてたくましい母、優しくて頼りになる父、
夢いっぱいの可能性をもつ弟
がいて、見滝原に引っ越してから美樹さやかと、志筑仁美と友達になって。
見滝原中学校に入った。
魔法少女なるものと魔法使いなるものと魔女なるものにほぼ同時遭遇した。
魔法少女の巴マミ先輩、その日に転校して来た、
やっぱり魔法少女だった暁美ほむら、
そして、魔法使い、退魔師だと言う桜咲刹那と関わる事になった。
そこに、魔法少女の佐倉杏子、
刹那の親友だと言う魔法使いの近衛木乃香も加わり、
魔法少女とか魔女とか魔法使いと言う時点で、
時々命が危なくなる程度には色々なんやかんやがあった。
そして、魔法使いの実力者だと言う近衛木乃香の招きに応じて
麻帆良学園都市でお茶会に参加して、
楽しい時間を過ごしていた。
ところが、そこから外出した途端に何者かの襲撃を受け、
逃げ回っている内に、大きな木のある広場で光に包まれた。
理屈で言えば、大体こんな感じで脳内プレイバックする。
そこまで筋道を立てて、
突っ立っていたまどかは改めて周囲の景色を確認する。
一言で言えば荒野。
その中に、巨大な石造りの何かが見える。
少なくとも、自分がいた筈の麻帆良の街中ではない。
そこで、まどかは思案する。
魔法少女、魔法使い、と来たからには何が来ても余り不思議ではない。
では、今度は、近年本屋にもWeb小説辺りにも
溢れ返っている異世界転生とやらか。
その場合、もしかしたら半々ぐらいで
輪廻転生と言う事になるが、それはちょっと洒落にならない。
まだまだパパとママにはいっぱいいっぱい甘えて
タツヤの彼女のツラぐらいはおがんでやりたい。
取り敢えず、わたくしこと鹿目まどかといたしましては、
不意打ちに後ろから突き落とされる程恨まれた覚えもなければ、
お盆もお正月もクリスマスも家族向けバレンタインデーも
日本西洋どっちのカボチャ祭りも等価に楽しむ程度の
平均的日本産女子中学生であり、
別に信心そのものに喧嘩を売るつもりはないので、
辛辣なジョークを交えた気合の入った演説で
戦場を飛ぶ来世を迎える等と言った展開は御免こうむりたい。
その思考の理屈の趣旨を少々分かり易い例示を交えて意訳したが、
およそそんな事を思案していた鹿目まどかは、
であるからして、今、目の前で
見事な翼の巨大なトカゲが素晴らしくギザギザな歯を見せて
風を切ってこちらに突っ込んで来る、
等と言う展開もさもありなん、と、思考的には結論付けつつあった。
「神鳴流奥義・斬岩剣っ!!!」
その轟音が、まどかの意識を「こっち側」に引き戻した。
「ごめんなー、痛かったやろ。
でも、ちょっとあの娘にオイタは堪忍や。
ほな、あっち行ってなー」
「ご無事でしたかっ!」
目の前に、桜咲刹那の安堵の顔を見たまどかは、
近衛木乃香の声を聞きながらその場にへなへなと頽れた。
ーーーーーーーー
「あの、刹那さん………」
「この状況の説明、ですよね」
話の早い刹那に、立ち上がったまどかがこくんと頷く。
「まず、ここは魔法の国、魔法世界です」
「魔法世界?」
「はい、その通りです」
「魔法の世界、って、つまり、
えーと漫画やアニメに出て来るみたいな魔法の世界で
別の世界って言うか………」
「そう思っていただけるなら、話は早いです。
場所としては、火星の異次元空間にある様です」
「あーまどかちゃん、大丈夫やから瞳のハイライトオンしてな」
「あ、はい、カセイノイジゲンなんですね」
「ええ、理屈としてはそういう事になりますが、
元の世界に無事戻る方法は確立されていますので
その辺りの事はご安心下さい、失礼」
鹿目まどかは、一礼して跳躍した桜咲刹那が、
斜め上結構上空でプテラノドンの魔改造か何かみたいなの一撃して
まどかの隣に戻って来て一礼するその間、億のつかない35秒を
大汗を浮かべて眺めていた。
ーーーーーーーー
「少し、手間取りましたね」
「ごめんなさい、私が足手まといで」
「とんでもないっ!」
陽の沈んだ後、荒野の中の焚火の前で、
頭を下げるまどかを刹那が両手で制した。
「そもそも、魔法少女に関わっているとは言え、
一般人を勝手に魔法の世界に連れて来てしまった事自体、
身近にいた魔法使いとして大変な責任ですから」
「さっきも言ってましたけど、理由は分からないんですか?」
「両方の世界を繋ぐゲートが暴走した、
それは確実なんですが、事態は明らかにイレギュラー。
現在使われていなかったゲートが急に稼働した結果です」
「焼けたえー」
そこで、にこにこ笑った木乃香がマンガ肉を二人に差し出す。
「いただきます」
「………どうですか?」
「はい、ええと普通に美味しいって言うか、
本当に普通のお肉みたいだし、
刹那さんが一生懸命戦ってくれてたのも分かりますから」
「そうですか。では、食べたら休んで下さい。
明日には市街地に到着します。
そこで普通の食事と寝床も用意できます、
そこから帰りの算段もすぐにつけます。
ですから今夜だけはご辛抱を。
安全だけは私が必ず」
「はい………あの」
「?」
「刹那さんも寝ないと」
「大丈夫」
そこで、木乃香が口を挟む。
「うちが交代するさかい、
うちでも見張りぐらいは出来るえ。
心配してくれてありがとな」
木乃香がにっこり笑い、
まどかが、何とか材料をかき集めた寝床に身を横たえた。
ーーーーーーーー
オ オ オ オ オ オ オ…………
英国、某基地内。
長谷川千雨と雪広あやかのアーティファクトとコネを総動員して、
日本国内某基地からこの基地迄を
地球上で科学的に最も速いであろう乗り物で直行した結果として、
暁美ほむらと美樹さやかはバケツに顔を突っ込んでいた。
「はいはーい、乗り物酔いは収まりましたですわねー」
顔を上げた二人が見たのは、
どうも十代後半ぐらいであろう快活そうな女性であった。
「雪広のお嬢様からあなた達の事を最高スピードで、
とのオーダーによりわたくしが選ばれた訳でございますから、
それでは早速参りますわよ」
かくして、二人はあれよあれよで
ジャガーEタイプの座席にふらふらと到達する。
「シートベルトオッケー歯の食いしばりオッケーですわね。
信号機オール進めの根回しオッケー、
それではエンジン全開出発進行でございますわよおっ!!!!!」
ーーーーーーーー
「………ウェヒヒヒ?」
夜も明け、程なくして新・オスティア都市部に到達した鹿目まどかは、
脳内での過密処理に難渋しながら通りに突っ立っていた。
「あー、やっぱりそうなるわなー」
「大丈夫ですよ」
目の前で、にっこり微笑む刹那の顔を見て、
まどかの脳内ではようやくカシャンと噛み合った。
「見ての通り、獣やら魔物やらに見える人達も色々いますが、
ええ、彼らは人と言って差し支えの無い存在です。
我々と同様の感情も頭脳も意思疎通もあります。
そして、このオスティアの都市部は相応の秩序も保たれています。
私達がついていますから、海外旅行程度に気を付けていれば大丈夫です」
「まあー、今回は逃げ隠れする必要もないしなー」
「は、はい、有難うございます」
「それでは早速、寄りたい所がありますので」
「はい」
かくして、刹那を先頭にした三人組が到着したのは、
巨大な扉の前だった。
==============================
今回はここまでです>>395-1000
本年最後の投下の可能性が大ですので
一言ご挨拶を。
よいお年を。
続きは折を見て。
遅ればせながら
新年あけましておめでとうございます。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>401
× ×
連合王国ウェールズ国内
「はーい、お車はここまででございますわよーっ」
運転手が陽気に声をかけた時、ジャガーEタイプの各席では
辛うじてマウス・ピースを吐き出した美樹さやかと暁美ほむらが
べろんと舌を出して脱力していた。
「出発の前に、お食事のご用意がありますわ」
「「いただきます…………」」
人里離れた緑豊か過ぎる一帯で、
少しばかり車を離れていた運転手が用意した食事に、
二人の魔法少女はふらふらと両手を合わせる。
「………それでもその有様で食が進むのは、
なかなかの根性でございますわね」
「うん、さっきの基地で出すもん全部出しちゃったし」ガツガツガツ
「作りだけは頑丈に出来てるから」モシャモシャモシャ
「ふふっ、気に入りましたわ」
「でも、今度はもっと穏便に、
折角のイギリスだから優雅にティータイムとか洒落込みたいわー」
「なかなか、簡単にお似合いとは言えない事ですわよ」
「お互いにね」
\アハハハハハハ/
「それではどうも」
「ご馳走様でした」
「それでは、お気を付けになって」
スターゲイジーパイとハギスをお腹いっぱいご馳走になり、
さやかとほむらがぺこりと頭を下げて運転手も陽気に見送った。
「いやー、なんか凄い人だったね」
「確かに、凄い運転だった。魔法少女じゃなかったら心臓止まってたかも」
「言えてる。まあ、流石に今回だけの付き合いだろうけど」
「そう願いたいものね、少なくとも同乗者としては」
ーーーーーーーー
さやかとほむらがジャガーから離れてどれぐらい経過したか、
二人は霧の中にいた。
「駄目ね」
ほむらが携帯機器を見て言った。
「スマホと軍用のGPS、
用意はしておいたけど、完全に妨害されてるわ。
この分だと方位磁針も当てにならないと思った方がいい」
「で、気が付いてるよね」
「誰に言っているのかしら美樹さやか?」
自分のソウルジェムを掴んださやかの側で、
ほむらが手だけファサァと架空の黒髪を払う。
二人共麻帆良で用意されたフードつきのローブ姿だった。
「この空間、結界の類よ」
「だったら………」
「ええ、私達が知っているものとは異質な部分はあるけど、
魔力を辿って行けば辿り着ける………その前に………」
「!?」
最近まで疎遠、と言うか避けていた部分のある「転校生」に
バッと手を握られ、やはり慣れない感情を抱きながらも、
さやかはほむらと共に走り出していた。
「引っ張らない様に気を付けて」
「オッケー」
ほむらが注意しているのは空中に浮いている紐であり、
その先にはゴムボールが縛り付けられていた。
「霧の中からこっち囲んでた?」
「ええ、だから、
迷う前に時間停止を解除して又方角を確認するわよ」
× ×
「あの、ここって………」
魔法世界新・オスティアの一角で、
鹿目まどかは巨大な門を見上げて問いを口にした。
「温泉です。このオスティアは現在は観光都市、
中でもこの巨大温泉は魔法世界の中でも
極めて高い知名度を誇っています」
「これが、温泉………」
桜咲刹那の回答を受けて、
自分の知識がどれぐらいだろうか、と思いながらも、
それでも桁違いに大規模そうな建物を前にまどかは瞬きをする。
「この温泉は魔法世界でも一種の聖域、
ですからここで少々確かめたい事もあります。
只、鹿目さんがこうした所が苦手だと言うのでしたら………」
「いえ」
真摯な態度の刹那の言葉に、
まどかはにこりと笑顔で応じた。
「今、お風呂に入れるんだったらそれはとっても嬉しいなって。
魔法世界の温泉ってちょっと興味あるしウェヒヒヒ」
「そうですか」
「せやせや、こんなんなる迄お風呂無しって、
女の子には辛いとこやなー」
もちろん作為的に言った部分はあっても、
およそ正直な事を言ったまどかに近衛木乃香が気さくに声をかけ、
刹那もほっとして返答する。
ーーーーーーーー
「ウェヒヒヒヒヒ」
まどかが知る温泉、入浴施設、温泉レジャー云々を
まとめてぶち込んで桁を一つ二つ外した様な光景の中、
鹿目まどかは借り物のタオルをぶら下げて突っ立っていた。
「相変わらず凄いなぁ」
「はい、凄いですウェヒヒヒ」
「気に入ってもらえて何よりです」
隣からまどかに声を掛ける木乃香にまどかも素直に目を輝かせた。
そして、きょろきょろ辺りを見回していたまどかが、
つーっと視線で半円を描く。
「相変わらず、こっちの人はスタイルええなぁ」
「そうなんですねウェヒヒヒ」
すらりと背が高くそれでいてボンキュボンで
生物学的レベルで異国情緒過ぎる美女二人組が通り過ぎるのを
つーっと目で追っていたまどかに木乃香がにこにこ声を掛けた。
改めて、いよいよどの温泉に、と、まどかが思った刹那、
手近な湯舟からどっぱーんっと水柱が上がる。
「彼女は狼藉には不慣れなあちらの世界の一般人ですので、
オイタはご遠慮いただけますかね?」ギリギリギリ
「いやいや、背丈こそおちびさんでも、
あの全体のふわふわ感は愛情に包まれてすくすく育ったもの。
故に、ちょっと見の大きさだけでは測れぬ
健康に育ったそのぷにぷに感こそがモフフフフ
その上であの至高の白絹の肌に包まれた慎ましき………」メキメキメキ
「それが遺言ですか?」ギリギリギリギリ
「えーとウェヒヒヒ」
「気にしない気にしない、気にしたら負けや、さ、お風呂入ろ」
「はい」
最近知り合った美少女剣士とこの辺では割と見かけるタイプの褐色の女の子が
普通に硬そうなお風呂の床で寝技の応酬をおっ始めたのを横目に、
鹿目まどかは大汗を浮かべながら未知の入浴に心躍らせた。
ーーーーーーーー
「ふぅーっ」
とにもかくにも、とてつもない数の湯舟から
木乃香に手を引かれるままに温泉を堪能し、
少々体が茹った所でまどかは湯を上がる。
「んー」
「?」
床に立ち、タオルでまとめた髪の毛を解いたまどかに
湯舟の中から木乃香が微笑みかける。
「髪解くと感じ変わるなぁ。
その、ちょっとうぇーぶしたのが可愛ええわ」
「私はこのかさんのすっごく綺麗な長い黒髪が羨ましいですけど」
「ややわー」
木乃香がころころ笑いながら湯を上がり、
まどかが羨む黒髪をタオルから背中にさらりと流す。
「あの、暁美ほむらちゃんも」
「はい、さらさらの綺麗な黒髪で美人で」
「まどかちゃんも可愛ぇよ。可愛い小動物系と言うか、
隠れファンとかクラスに一杯いるんと違う?」
「ウェヒッ、ママみたいな………
あ、ごめんなさ、い………」
調子に乗って人込みでおしゃべりが過ぎた上での感触に、
頭を下げようとしたまどかが目をぱちくりさせる。
確かに、体に当たった時点で、肌に触れた感触がちょっと変わっていた。
「ぬい、ぐるみ?」
最初、キュゥべえの事をぬいぐるみだと思った。
確かに、今見ているのも、形状自体はぬいぐるみに見えない事もない、
只、問題はそのサイズだった。
ここにいる時点で着ぐるみではなさそうだ、
確かに、今まで見ていてこの手の人がいても不思議ではない。
それはその通りであるのだが、それでもやはり見た目微妙に可愛くても
サイズが多分ヒグマ越えでそのままの姿の生き物で、
「もしかしてあっちの世界の娘かい?」
「ウェヒッ?」
そして、まどかは気さくな中年女性に声を掛けられていた。
「こっちの世界でも北の方だと私らの同類は少ないからね」
「あ、あのっ、私達の世界の事をっ?」
「ああー、ちょっとだけ知ってるよ。
昔、こっちに来た娘達を世話した事があってる。
アンタ、ちょっとあの娘に似てるかね。
ほら、そんな風に可愛らしく笑う所も」
「ウェヒヒヒ」
気さくに笑う、どうやらかなり懐の深い女性らしい
でっかく温かそうな熊のぬいぐるみに優しく話しかけられ、
まどかもほっと笑みをこぼしていた。
ーーーーーーーー
「あら」
「おや」
木乃香とまどかを追っていた刹那は、
ふと近くの浴槽に視線を向け、声を掛ける。
そちらでは、浴槽の中の岩の島で刹那と同年代の少女の一団が寛いでいた。
それぞれタオルを手にしているが、元々ここは女湯、
それも彼女達が女子校育ちと言う事もあってか、タオルの身に着け方もまちまち。
集団の中心となっているのは、
ツインテールの金髪から「角」が覗いている褐色肌の少女。
彼女を中心とした一団の大半は、
この風呂場にはよくいる人間と獣、或いは幻想獣の特徴を備えているが、
角ツインテールの隣のきちっとした黒髪ショートカットの少女達だけは
人間以外の外見上の特徴は見当たらない。
==============================
今回はここまでです>>402-1000
続きは折を見て。
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/74.html
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/39.html
https://www65.atwiki.jp/sajest/pages/47.html
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>409
「ユエの友達の?」
「はい、桜咲刹那です」
岩の島から声を掛けられ、刹那はぺこりと頭を下げる。
相手は、魔法世界の独立学術都市
アリアドネーの騎士団の騎士団候補生グループ。
その中でも、綾瀬夕映が一時所属していたために、
刹那とも面識のあるグループだった。
そうすると、声を掛けて来た少女、
褐色肌に頭から垂れる耳を持ったコレット・ファランドールは
島から湯に入りざばざばと刹那に近づいて来た。
「やっぱり! ユエは元気?」
「はい、とても。あなた達との再会を心待ちにしています」
可能なら手を取らんばかりに食いついたコレットの質問に、
刹那も優しい微笑みで返答する。
コレットが動作からしてぱあっと明るくなり、岩の島にも喜色が広がる。
「それはそうと」
刹那が言葉を続けた。
「アリアドネーの騎士団候補が集団でこちらに?」
「あら?」
いつの間にか湯に入り、そそそと接近していた
角ツインテールの少女が口を挟む。
この集団のリーダー格、エミリィ・セブンシープだ。
「あなたもその用事でなくて?」
ーーーーーーーー
「チーフさん」
「おや、確かコノカだったかい?」
「はいな」
「知り合い、なんですか?」
するりとまどかの隣に立って
熊のぬいぐるみな外見の多分中年女性と言葉を交わす
近衛木乃香にまどかが尋ねた。
「うん、前に友達が世話なって」
「アコ達は元気かい?」
「はいな。チーフはこっちに?」
「ああ、仕事にね。あんた達もその用事じゃなかったのかい?」
ーーーーーーーー
「せっちゃんせっちゃんせっちゃん!」
「お風呂で走ると危ないですよ」
ぱたぱたと急接近して来た木乃香に刹那が優しく言うが、
きらきら輝く瞳で刹那に縋り付く木乃香を、
後を追ったまどかは大汗を浮かべて眺めていた。
ーーーーーーーー
「凄い………」
いただいたばかりの温泉をあっさり無効化しそうな熱気。
建物に入る前からの尋常ならざる盛り上がりの中、
きゅっと手を握られる感触を確かめる。
「私から離れないで下さい」
刹那の言葉にまどかが頷く。
「でも、なんか大変な事みたいなのに私までいいんですか?」
「大丈夫大丈夫」
まどかの隣で、木乃香がにっこり笑う。
「まあー、確かにコネそのものやけど、
向こうさんも二つ返事で入れてくれたさかい」
「確かに、濫用は控えるべきですが、
そのぐらいの事はしましたからね。こちらです」
そして、刹那を先頭に三人は長蛇の列とは別の入口へと移動する。
ーーーーーーーー
どういう状況か、まどかにも朧気に把握出来た。
スタジアムの中を、一般の混雑を他所に
スタッフが案内するVIP待遇で通路を進み、
そして観覧席へと到着した。
まどか達の前方には、如何にも高貴な椅子に掛けた、
やはり褐色で少々変わった耳の形の女性が腰かけている。
まどかの見た所では高校生ぐらいの年齢、民族衣装か何かなのだろう。
その側には矍鑠としたスーツ姿の年配の女性、
こちらは色白で豊かな白い髪の毛から生物学的な角が見える、
そんな女性が椅子の側に起立して控えている。
「おお」
前方の二人がこちらを見て、褐色の女性が立ち上がり声を掛ける。
刹那がざざっと片膝をついた。
「この度は、この様な席までお招きいただき感謝いたします。
姫様、グランドマスター(総長)」
「お招きいただき、おおきに」
「あ、有難うございます」
木乃香がぺこりと頭を下げ、
勢いで土下座一歩手前だったまどかもそれに倣う。
「おお、久しぶりじゃの。
その娘か? 旧世界の知り合いと言うのは?」
「はい、鹿目まどか、と申します。
行き掛りで私達と同行する事となりまして、
無理をお願いしました」
「あ、あの、鹿目まどかです。有難うございます」
刹那の言葉に続き、まどかがもう一度頭を下げる。
まどかの見た所、褐色の女性の方が偉い、それも尋常じゃなく。
側に控えるスーツのご婦人も気品があり、只者ではなさそうだ。
「うん。私はテオドラ、ヘラス帝国の第三皇女である。
この魔法世界において、南北二つの大きな国の一つ、
ヘラス帝国の三番目のお姫様、易しく言えばそういう事じゃな」
「アリアドネー騎士団総長のセラスです」
「は、はいっ」
「良い、頭を上げよ。いい娘の様だ。
名乗る以上説明はしたが、この者達には返し切れぬ恩義がある。
まして、この者の言う事であれば信ずるに値する」
「「有難うございます」」
刹那とまどかが同時に言った。
こちらに来てからはよく見かける褐色肌にちょっと別の生物っぽい、
それでも、素人のまどかが見ても分かる高貴な美人。
まどかが何の事情も分からなくても平伏してしまいそうなオーラと、
それでいて懐の深い優しさがそのまま感じられる相手だった。
「ほら、そろそろ始まるぞ」
テオドラの言葉に、三人はスタジアムの試合場に視線を向けた。
「あれが………」
「はい、私達の担任、ネギ・スプリングフィールド先生です」
「本当に、十歳の子どもなんだ………」
スタジアムに現れた男の子を見て、まどかは感心を口にする。
まどか達は明らかにVIP待遇の観覧席にいるが、
スタジアムの観客、熱気はとんでもない事になっている。
そんな中を、まどかよりも年下の少年が堂々と、
それも虚勢には見えない品のいい仕草でスタジアム中央へと進んでいる。
「ラカンさん」
木乃香の言葉に、ネギとは逆側に視線を向けたまどかは目を見張った。
一言で言えばマッチョマン、
確かテレビの映画で聞いた、筋肉モリモリマッチョのなんとか。
「あ、あの………」
「ん?」
掠れる声で尋ねるまどかに、木乃香がにこーっと応じる。
「えーっと、その、この、スタジアムって、
なんか、戦う、みたいなそういう事確か来る前に
そんな事と言いますか………」
「案ずるな」
答えたのは、くすっと笑ったテオドラだった。
「優しい、いい娘の様じゃの。
たまにはなかなか刺激的なものが見られるぞ」
ーーーーーーーー
鹿目まどかが呆然としている間にそれは始まり、終わった。
ここ最近、見るだけであれば、
まどかも非常識な戦いと言うものをそれなりに経験している。
先輩の巴マミの魔砲力等は兵器と言ってもいいだろう。
だが、今見ていたものは、桁が二つ三つ違った。
「あー、負けてもうたなぁ」
「残念でしたね」
首をつーっと動かして、会話をする木乃香と刹那に視線を動かしながら、
まどかはようやく口を閉じる。
取り敢えず、スタジアム中央で握手をしている
ネギが負けてラカンが勝ったらしい。
まどかに言わせればそれはまあ、
ちょっと服装をいじれば可愛い女の子にすら見えそうな
確かにここでは精悍な雰囲気でもまどかより年下の少年、小さな男の子と
見た目からして魔女の一つや二つ捻る事が出来そうな
筋肉モリモリマッチョのなんとかが正面対決すればそれはそうなるだろうと。
魔法を駆使していい勝負をしていた、
と言うのは一応まどかにも理解は出来たが、
とにかく壮絶、の一言だった。
「さあ、お待ちかねじゃぞ」
==============================
今回はここまでです>>411-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>416
ーーーーーーーー
「セブンシープ分隊、お召により参上しました」
「有難う」
試合の余韻も冷めやらぬスタジアム。
その貴賓室で、片膝をつくエミリィ・セブンシープ以下に
セラス総長が声を掛ける。
「事情は先に伝えた通りです。
イレギュラーな任務、いえ、お願いと言うべき事で申し訳ありませんが」
「大切なゲストの案内、光栄です」
セラスの言葉に、エミリィが改めて一礼する。
「鹿目まどかさん」
「はい」
セラスの言葉に、格好いい黒制服の一団を眺めていた
鹿目まどかが小さく飛び跳ねそうに返答する。
「今から少し、彼女達と行動を共にして下さい。
こちらの二人も一緒です」
「分かりました、有難うございます」
刹那と木乃香が小さく頷くのを見て、
まどかが頭を下げた。
「この人達は、私達とも存じよりです。
ご配慮感謝いたします」
刹那が言い、刹那と木乃香も頭を下げた。
ーーーーーーーー
「箒は初めて? 命綱は付けた?」
「はい」
スタジアムの外でコレットに問われるまままどかが答え、
詳しい説明がなくとも今ここがどういう場所で
コレットが跨っているものが何か、と言う所から
今更ながらむしろ簡単過ぎて信じたくない予想もつく。
「うわぁー」
「ま、魔法の力で転落はしないけど、手は離さないでね」
「はい」
絵本そのままのシチュエーションで、
箒に跨ったコレット・ファランドールにしがみつく形で
建物よりも高く浮遊し、まどかは歓声を上げた。
周囲では、刹那と木乃香も他の面々の箒で飛行を始めていた。
「確か、アリアドネー騎士団、でしたっけ?」
「はい」
まどかの声に、隣を飛ぶエミリィが応じた。
「あなたの事は、旧世界からの迷い人であり
こちらのコノエコノカ、サクラザキセツナの同行者と伺っています。
我々はオスティア総督府での夜会までの案内とガードを仰せつかりました」
「ヤカイ?」
「パーティーや」
「色々引っ張り回して申し訳ありませんが、
向こうの世界に戻るための根回しだと思って下さい。
無論、鹿目さんに何かをしてもらうと言うつもりはありません」
「美味しいお食事ぐらいに思っててええさかい」
「はい。皆さんも有難うございます」
「だーいじょうぶ大丈夫」
まどかの言葉にコレットが口を挟んだ。
「私達もユエの事とか色々聞きたかったしね。
それに、そのまま夜会で自由行動って聞いたら委員長が真っ先に」
コレットの言葉に、エミリィが大きく咳払いをした。
「ユエ?」
「綾瀬夕映、麻帆良学園における私達のクラスメイトです」
ーーーーーーーー
まどか達が到着した先は、飛行船だった。
確かに、ゲートのある廃都からこちらの新・オスティア市街地に行き着く迄にも
なんとか危険区域を脱出した後でヒッチハイクの飛行船のお世話になった訳だが、
今乗り込んでいる飛行艇は、まどかの素人目にも立派に思える代物だった。
「よう」
「どうも」
飛行船に到着した面々を待っていたのは、
まどかから見たら
古い映画でトレーラーでも運転してそうな精悍なおじさんだった。
「ジョニーさん、お久しぶりです」
「協力感謝致します」
「おう、あいつら、ユーナちゃんやマキエちゃんは?」
「はい、元気にしています」
「そりゃあ何より。あんたらの事だし貰うモン貰ってるからな。
出来る事ならなんでも持って来いだ」
「有難うございます」
ドンと胸を叩くジョニーおじさんに刹那以下三人組が頭を下げる。
「この娘は?」
「はい、少々事情がありまして」
「やっぱり、旧世界の?」
「ええ。こちらはジョニーさん、以前こちらの世界で一方ならぬ協力を」
「いやー、そんな大層な事じゃねーって」
「どうも、鹿目まどかです」
「ははっ、素直でお嬢ちゃんだな。あいつらの事思い出すよ。
ま、ここじゃあ大船にいるつもりでいてくんな」
「有難うございます」
ジョニーの言葉に、まどかがもう一度頭を下げる。
ーーーーーーーー
「まどかちゃん」
飛行船のリビングで、木乃香がまどかにスマホを差し出す。
「この娘、この娘がゆえや」
「へえー………ウェヒヒヒ………」
まどかがそれを目にした瞬間、一挙に高まった背後の密度に
まどかが乾いた笑いを漏らす。
「夕映さんは一時期彼女達、アリアドネー騎士団で
共に候補生として参加していた事があります」
「アリアドネー騎士団」
刹那の説明を聞き、先程も聞いた単語をまどかは聞き返す。
「アリアドネーはこの魔法世界の都市の名前です。
極めて高い独立性と学術水準を持つ独立学術都市だからこそ、
その中立かつ高度な技術のアリアドネーに属する魔法騎士団の意義があります」
「その通りですわ」
刹那の説明に、エミリィが腕組みしてうんうん頷く。
「夕映さんは私達の同級生ですが、
事情によりそのアリアドネー騎士団候補生としてに参加し、
今でもその身分を持っている筈です」
「ま、まあ、そういう事もありましたわね。
それで、そのお話に出て来た旧世界に戻った候補生は
その後如何です事?」
「はい、すこぶる元気に、
あなた方との再会を心待ちに勉学、修行に励んでいます」
「それは結構」
刹那の言葉にエミリィが頷くが、
既に周囲もくすくす笑いが我慢出来ないエミリィの顔の緩みが、
まどかにも何となく関係性を察知させる。
「でもさ、凄かったんだよユエ」
笑いを噛み殺しながら、コレットが話に加わった。
「最初は全然だったけどメキメキ上達して
あの時の選抜チームにも実力で選ばれて」
「ま、まあ、向上心と努力は立派なものでしたわね」
「凄かったんだ」
「ん」
呟くまどかに、木乃香が声を掛けた。
「ゆえはな、うちのクラスメイトで学校の図書館探検部でも一緒、
それで、おんなじぐらいに魔法に関わったけど、
頭が良くて一杯勉強してなぁ、ほんまに凄い娘や」
「それは、お嬢様も同じです。
溢れる程の才に驕らず、幾度となく地獄の特訓を繰り返して」
刹那の言葉に、木乃香ははにかんで小さく頷く。
綾瀬夕映、まどかも、女子寮に行った時も含め
ちょいちょい写真を見せてもらったが、
もっさりなぐらいたっぷりとした黒髪でまどかよりも更に小柄な女の子。
何時も一緒の娘とは対照的におでこが光り、
そして、ちょっと冷静に見えながら
みんなと一緒にいい笑顔で撮影されている少女。
「さあさ」
エミリィがぱんぱん手を叩く。
「そろそろ支度の時間でなくて?」
「そうだね、マドカ」
「はい?」
にっこり笑うコレットにまどかが聞き返す。
「こちらへ」
「よろしく頼みますわよ、ビー」
「かしこまりましたお嬢様。
ベアトリクス・モンローと申します」
案内の分隊メンバーの中から、この中では珍しく
生物学的に人間の少女にしか見えない黒髪の娘がまどかに一礼した。
ーーーーーーーー
「上がりました」
「それではこちらに」
VIP待遇とは言え大混雑のスタジアム帰のまどかが、
高級飛行船らしくシャワーでさっと汗を流してバスローブ姿で戻った所で、
ビーことベアトリクス・モンローが飛行船内を先導する。
ベアトリクスは、生物学的にやや人間離れした面々の多い中、
余り長くないかちっとした黒髪の、
元の世界でまどか達の側にいてもおかしくない少女だった。
そして、ビーに連れられた飛行船の奥で扉が開くのを見て、
まどかはわあっと声を上げた。
「パーティー会場になりますので、お好きなものをお選び下さい」
「え、ええーっと、ウェヒヒヒ………」
素人目にも分かるゴージャスな臨時クローゼットのラインナップに、
まどかは乾いた笑いを漏らす。
だが、それでも、中の上以上の家庭に育ち、
友達付き合いで上条恭介のコンサートにも出入りしていた。
そんな経験があって本当に良かったとまどかは有難く思う。
「こちらですね? 社交場の嗜みも騎士の任務の内、
万全に淑女を完成させていただきます」
「うらー、良いではないか良いではないかー」
「ウェ、ヒヒヒ、ヒヒヒヒ」
閉ざされた扉の向こうからの声を、
残された一同は大汗を浮かべて聞いていた。
==============================
今回はここまでです>>417-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>423
ーーーーーーーー
「ウェ、ヒヒヒヒ………」
陽もとっぷり落ちて、まず、坂の上に見える建物、
到底お役所等と言う規模ではないオスティア総督府の
宮殿そのものの威容にまどかの口から乾いた笑いが漏れる。
あんな所で開かれるパーティーと言ったら、
それこそガラスの靴を履いていく世界にしか見えない。
「あ、あの、刹那さん、このかさん」
「はい」
「変、じゃないかな?」
「よく、お似合いです」
「可愛えぇなぁ」
「ウェ、ヒヒヒヒ………」
刹那と木乃香は褒めてくれるが、
まどかはそれに対して乾いた笑みを返すばかり。
「我々は伝統と栄誉ある騎士団。
まして、ビーは幼少時より私の側にいた者。
公の場における嗜みも身に着けています」
「あ、すいません」
エミリィの言葉に、まどかが小さく頭を下げる。
「とても、よくお似合いです」
「うんうん」
コレットはとにかく、と言っては何だが、
如何にも真面目そうなベアトリクスの言葉は文言によらず
何となくまどかを安心させてくれる。
そうすると、コレットの誉め言葉も素直に聞こえる。
まどかとしても、多少の余所行きの経験はあるが、
本格的なパーティードレスは初めて。
それでも、微かな鴇色を流したふわふわの白いドレス、
両サイドをリボンでくくりながらも長めに垂らした後ろ髪。
飛行船の姿見で見た自分の姿がちょっとだけ誇らしくなる。
そして、改めて元々の同行者である二人を見る。
今回の木乃香の服装は白いドレス姿。
前の茶会の振袖も見事なものだったが、
白を基調としたパーティードレスも木乃香の違った魅力を引き出す。
素晴らしい黒髪の美少女の、日本人形の様に清楚な魅力と共に、
やや大人びたパーティードレスは、
一つ年上の先輩の綻ぶ様な色気すら匂わせてまどかを魅了する。
先に記した事情で、
まどか自身にクラシックコンサートに行く機会があった事も、
まどかに木乃香の魅力をより感じさせる。
そんな木乃香の隣に控える刹那は、格好良すぎる。
ボディーガードそのものの黒服パンツスーツ姿。
それは、凛々しいと言う言葉がぴったりであり、
それでいて、その凛々しさは同時に美しい女性、
と言う評価を邪魔しない。
「手間のかかる事で申し訳ない」
そこで、又、刹那が一つ頭を下げた。
「本来であれば勝手に巻き込んだ鹿目さんを
一刻も早くお返ししなければならない所。
只でさえ気苦労の事を異国で強いる事となってしまい。
今はこのルートから通した方が話が速いものでして」
「こちらこそ色々していただいて有難うございます」
刹那の真摯な態度に、まどかもぺこりと頭を下げた。
ーーーーーーーー
「それでは、私達はこれで」
「有難うございました」
宮殿の門番は騎士団が書面を示して交渉すると易々と道を開け、
途方もなく広い宮殿の一角のエントランスで、
まどか達から離れる騎士団の面々にまどか達は頭を下げた。
「えっ、と、綺麗なお料理もあるけど………」
「肉、やな」
「肉、ですねウェヒヒヒ」
「飛行船のサンドウィッチは美味しかったけど、
色々あってお腹ペコペコやな」
立食パーティーに潜入したまどかは、
目の前の木乃香の豪快な、それでいて汚さを感じさせない動きを
早々にトレースして実行を開始する。
「チキンも美味しいけど、
あれ、子豚の丸焼き、美味しい所切ってもらおな」
「はいっ」
まどかとしては、年頃の女の子として、
ここを出る迄にドレスのお腹周りは、等と思わないでもないが、
一方で、まだまだ色気より食い気の精神年齢。
正直知らない世界を動き回って、その上こんなに美味しければ尚の事。
普段から豪快美人が身近にいる可愛い女の子の鹿目まどかとしては、
既に鳴り始めたお腹、それが最優先だった。
「あ、これも美味しそう」
木乃香を追跡していたまどかが、途中で視界に入ったテーブルに進路を変える。
「こっちも美味しそうだけど、このお皿で一緒だと、
えーと、やっぱりこっちを………」
「おい」
やけにドスの利いた声にまどかが振り返ると、
やけにガタイのいい給仕の男性が
両腕に大量の皿を携えて眉をひくひく動かしていた。
「ご、ごめんなさいっ!」
「人の行く先行く先のたのたしやがって」
「す、すいませんでしたっ!!」
そう言えばテーブルの上もかなり隙間が開いている。
まどかが青い顔で頭を下げながらざざっと横に移動し、
給仕はざざざっと料理を並べ直す。
「ちょいと」
聞き覚えのある声を耳にしてまどかが顔を上げると、
ガタイのいい給仕がボロボロになる迄
でっかい熊のぬいぐるみにじゃれつかれている所だった。
「ウェ、ヒヒヒヒ………」
「すいませんねぇ、お客様に失礼な態度を」
そして、ぬいぐるみは、
大汗を浮かべて突っ立っているまどかに声を掛ける。
「い、いえ、私も不注意でしたから。
クママさんですよね」
「ああー、マドカちゃん。コノカ達と一緒かい?」
「はい。クママさんはここで?」
「ああ、私は仕事でね。あっちに活きのいい魚が届いてるよ、
ニホンの子って好きなんだろ?」
「はい、有難うございます」
「うん、そのドレスと髪型も、よく似合ってるよ」
「有難うございますっ」
まどかがぱたんと体を折り、
クママチーフはのしのしとその場を後にする。
「よう」
「あ、ごめんなさいっ」
「いや、俺が悪かった、いや、申し訳ありませんでした」
「アウウ………」
凄味駄々洩れな給仕の男に給仕に丁寧に頭を下げられ、
まどかは対応に困る。
「ったくっ」
「ひっ」
顔を上げた給仕の呟きに、まどかがたじっと足を引く。
「もしかして、例の旧世界の迷子ってお前か?
コノカって言ってたからな」
「は、はい、鹿目まどかです」
「そうかい、俺はトサカ。コノカ達とは知らねー仲じゃない」
「そう、なんですね。クママさんも」
「まあな。まあ、なんつーかあれだ、
いい加減おどおどしてないでもうちょっとしゃんとしとけ。
そっちじゃ馬子にも衣装って言うのか?
見栄えがしないでもないんだからよ」
「あ………有難うございます」
ふんっ、と、もう一度鼻を鳴らしたトサカが、
近くの柱の陰で顔を見合わせくすくす笑っていた給仕二名への
鉄拳的教育的指導を実行するのを
まどかは大汗を浮かべて眺めていた。
ーーーーーーーー
ちょっとはぐれたものの無事木乃香と合流し、
お腹いっぱい夕食をいただいたまどか、
そこに刹那も加わって宮殿の廊下を移動していた。
「刹那さんっ!」
その声を聞いた瞬間、まどかは、
刹那の顔がぱあっと明るくなるのを見た。
「刹那さん、こっち来てたんだ」
「お久しぶりですっ」
「もぉーっ、やめてよ。友達だって言ったでしょっ」
そうやって、頭を下げた刹那と言葉を交わしたのは、
恐らく刹那と同い年と直感出来る。
まどかから見るとすっきりとしながら出る所はそこそこ出ている、
盛装の夜会ドレスがスタイルの良さを引き立てている
中身は快活な少女だった。
「アースナっ」
「このか、しばらくっ。
そっちの娘ね、あっちの世界から来たって」
「あ、あの、鹿目まどかです」
「私は神楽坂明日菜、よろしく」
ぺこりと頭を下げるまどかに、明日菜がにかっと笑って答える。
長い髪の毛を鈴つきの髪飾りでツインテールに束ねた、
少なくとも美少女の部類には入る年上の少女。
確かに、先に見せてもらった写真の中にも彼女はいた。
だとすると、相当親しい間柄だと言う事も頷ける。
何しろ、木乃香が迷いなく明日菜の首っ玉にしがみつき、
明日菜がそれを軽く振り回しながら、それを見ている刹那共々
とってもいい笑顔なのだから。
「刹那さんっ」
「ネギ君」
「ネギ先生」
そして、近くの曲がり角の向こうに、
ひょんなきっかけで指先にキスを受けて真っ赤な顔でぐるぐる目を回した
褐色角つき騎士団候補生とそれを介抱する仲間達を残して
ぱたぱたとこちらに近づいて来たのは、
つい何時間か前にスタジアムでとんでもない激闘を見せてくれた、
刹那達の担任教師、弱冠十歳のネギ・スプリングフィールドだった。
「鹿目まどかさんですか?」
「はい、鹿目まどかです」
「騎士団から総長経由で刹那さんからの報告は届いています。
今回は大変な事に巻き込んでしまいました」
「い、いえ、あの、珍しい世界も見れましたし、
刹那さんもこのかさんの良くしてくれましたから」
「そう言っていただけると」
白人の少年だが日本語ぺらぺら、何よりも優しく礼儀正しい。
あれだけ勇壮な戦士が今は小さな紳士。
まどかにも、彼が慕われるのが分かり過ぎる程に分かる気がしていた。
「しかし、丁度本日がこちらでのイベントだったんですね」
「そぉーなの」
刹那の言葉に、明日菜が苦笑を見せた。
「外交日程って奴でさ、ネギ共々ね。
歓迎イベントで、その中でネギとラカンさんのエキシビジョンとか、
引き受けるネギもネギなんだからねっ!」
「ほへんははいっ」
あの勇壮で桁外れに途方もなく強い
ネギ・スプリングフィールドの口に明日菜の指が突っ込まれ、
唇が左右に広げられるのをまどかはくすくす笑って見ていた。
「な、お姉ちゃんみたいやろ」
「はい」
木乃香の言葉にまどかが快活に答える。
その辺、まどかの本音としては、きょうだいネタによくある
実物はこんなに可愛いもんでもないよな感情も無いではなかったが、
それは逆に実物も遠慮が無いぐらいに可愛いと言う事でもあり、
それでも微笑ましいと素直に思った。
「それでは」
刹那が、尽きない話を一旦引き取った。
「私と鹿目さんは明日一番にメガロメセンブリアに向かい、
政府と折衝の上であちらのゲートから鹿目さんを送り届けます」
「せっちゃんと二人で?」
木乃香が、ちょっと不思議そうに尋ねた。
「はい。今は鹿目さんの帰還が優先になりますから。
お嬢様はこの機会です、お二人と旧交を温めて下さい。
ネギ先生、ご多忙の所すいませんが、
お嬢様の帰還の手配を願えますか?」
「分かりました」
「まあ、そういう事情ならね」
刹那の言葉に、ネギと明日菜も名残惜しそうに承諾した。
「あ、あの、ごめんなさい。何か、凄くお邪魔と言うか………」
「いい娘ね」
まどかの言葉に、明日菜がくすっと笑って言った。
「でも、まどかちゃん? あなたが悪い所なんて一つもないでしょ、
事情はよく分からないけど
本当なら私達魔法使いが思い切り文句言われる所なんだから。
優しいのはいいけど、あんまり卑屈にならないの」
「有難うございます」
明日菜の優しさに、まどかはもう一度頭を下げた。
ーーーーーーーー
「はあーっ」
新・オスティア観光エリア、リゾートホテルの客室で、
浴衣姿のまどかが、ベッドの上にうつ伏せに体を投げ出した。
「気持ち良かったですね」
隣のベッドに座った刹那が、にっこり笑って声を掛ける。
「はい。なんか体の中から
悪いものがぜーんぶどばどば出て行ったみたいで、
すっごく疲れてたんですねー」
岩盤浴マッサージつきの入浴を終えて、
このツインルームに戻って来ていたまどかが長く息を吐く。
「流石に、一般人の立場では
ここまで肉体的な負担だけでも甚だしいものでしたし、
まして、普通の外国ですらない未知の世界でしたから
精神的な緊張も大変なものだったと」
「それでも、そんな所で私の負担が最小限になる様に
色々手を尽くしてくれて、本当に有難うございました」
「いえ、魔法の立場で巻き込んだ以上当然の事です」
「ここでも、普通に見ても人が一杯来てる時に、
こんないい部屋とってもらって、それに、浴衣ってウェヒヒヒ………」
「確かに、こちらから見たら異文化ですが、
なんと言いますかこちらでは我々は少々顔が利きます。
それに、こちらには立派な温泉もありますからね。
簡単に用意出来る良き風呂文化は導入も速いです」
「やっぱりドレスのパーティー緊張したから、凄く楽になりました」
「お似合いでしたよ」
「刹那さんもティヒヒヒヒ」
「有難うございます」
隣り合ったベッドで互いにうつ伏せになり、
まどかの言葉に刹那もにこっと笑って応じた。
その後で、刹那はよいしょとベッドの上に座り直す。
「鹿目まどかさん」
「はい」
改まった呼びかけに、少々砕けていたまどかも口調を切り替えた。
「あなたに一つ、お伺いしたい事があります」
「はい」
まどかの返答を聞き、刹那はベッドを降りてまどかの方に歩き出した。
「鹿目まどかさん」
ベッドの上に座り直したまどかは、
ベッドサイドから声を掛ける刹那を見ていた。
「あなたは、自分の人生が貴いと思いますか?
家族や友達を、大切にしていますか?」
まどかは、既視感を覚えながらも顔を上げた。
刹那は、まどかを静かに見下ろしていた。
「私、は」
まどかは、立ち上がっていた。
「大切に、思っています。
家族も、友達のみんなも、大好きで、
とっても大切な人たちです」
「そうですか」
言葉を選びながらも言い切ったまどかに、
刹那は静かに微笑みかけた。
「そうですね。わた………」
「?」
まどかが、異変に気付いた。
何かを言いかけた刹那がぱちぱちと瞬きをしている。
目を見開き、口をぱくぱくさせている。
「刹那、さん?」
まどかに問いかけられ、顔を上げた刹那は、
ごくりと息を飲んだがぱくぱく動く口から声は出ない。
その代わり、ぽろりと一筋、刹那の頬に涙が伝っていた。
「あ、鹿目、さん………」
「はい」
刹那がようやく声を絞り出し、まどかが応じる。
だが、その後に刹那の口から漏れるのは小さな呼吸音だった。
「刹那さん? あの、大丈夫ですかっ?」
まどかの問いかけに、刹那は小さくうんうん頷く。
丸で、強力な腹の差し込みでも耐えている様な顔で。
「刹那さん、刹那、さん」
自分でも気が付いた時には、まどかは刹那に抱き着いていた。
「あの、何処か痛いんですか? 刹那さん?」
刹那に抱き着き、背中を撫でながら問いかけるが、
まどかの頭の上から刹那が発するのは、言葉にならない嗚咽だった。
刹那が、きゅっとまどかに抱き着き、
刹那が静かに呼吸を整えるのをまどかも感じる。
刹那の手が離れる。
まどかから離れた刹那が、ゆっくりと息を吐く。
「醜態を失礼しました」
「う、ううん」
馬鹿丁寧に一礼する刹那に、まどかが小さく首を横に振る。
「あ、あの………」
「ええ、大丈夫です。やはり少々疲れた様です。
休みましょう、明日は早くから遠出になりますので」
「はい」
まどかが見たのは、完璧なスマイルだった。
そこには、首を縦に振る以外の選択を即座に失わせる力が込められていた。
==============================
今回はここまでです>>424-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>435
× ×
大切、だよ。
家族も、友達のみんなも、
大好きで、とっても大切な人たちだよ
ーーーーーーーー
鹿目まどかは、自分の声を聞いた様な気がした。
そんな気がしながら、温かなベッドの中で薄目を開く。
(雨?)
耳からの情報で、なんとなくそんな事を考える。
見知らぬ天井。まどかはそのまま記憶を整理する。
魔法の世界に来て、
色々あってホテルのツインルームに宿泊して朝を迎えたらしい。
その辺りの諸々の事情を、
何とか頭の中で論理化しながらベッドの上で身を起こす。
口に手を当てながらふぁーっと大口を開けた辺りで、
視線の先のドアがガチャリと開いた。
「ああ、お目覚めでしたか?」
「あ、はい」
そこから現れたのは、桜咲刹那だった。
先程までの水音も今はやみ、
浴衣姿の刹那はバスタオルで黒髪を挟みながら
ツインルームのベッドサイドに戻って来た。
「鹿目さんも先にシャワーを使いますか?」
「あ、はい、そうします」
んーっと伸びをして、
そこで気が付いてベッドに垂れた浴衣を右肩に掛け直してから、
まどかは帯を締め直して立ち上がる。
その間に、刹那は着替えを用意している。
下着はドレス合わせのついでの様に簡素なものを用意してもらえたが、
それ以外は旧世界で着ていたものをクリーニングしたものだ。
まどかがふいっと刹那を見ると、
まどかと目が合った刹那がふふっと微笑み、まどかはバスルームに向かう。
まどかはシャワーを浴びながら考える。
あれは、自分の知っている桜咲刹那。
頼もしくて、誠実で優しい先輩。
さ程長い付き合いでもないが、
まどかが知る限りの今迄の桜咲刹那像と合致すると。
シャワーが朝の眠気を払っている事を自覚しながら、
まどかはそんな感じで自分の記憶と感覚を整理する。
眠気と寝汗をシャワーに流し、まどかは浴衣姿でベッドに戻る。
そこで着替えを終えると、洗面台に立った。
「あの………」
「はい」
洗面台から戻ったまどかが、刹那に声を掛けた。
「あの、このリボンって似合ってますか?」
「え? あ、はい。とてもよく」
刹那は、優しく微笑んだ。
常識的に考えるなら、今の状況の常識人なら誰でもそう答えるだろう。
そんな思いもあったが、それでも、まどかは異郷で鏡の前に立って、
ふとこの先輩に尋ねてみたくなった。
「良かった。このリボン、マ………母が選んでくれたんです。
私の隠れファンもメロメロだとか」
「そうですね」
刹那が、又、にっこり笑った。
そして、つかつかとまどかに近づく。
「戦術的観点から申し上げますと、
性格も体格も大人し目で優しい、小動物的に可愛らしい。
同じ教室にいれば引かれる異性も一定数してもおかしくないでしょうね。
そんなあなたの派手過ぎない、強めの色のリボンはさり気なく目を引く
いいインパクトになります」
「ウェ、ヒヒヒ」
大真面目に語る刹那にまどかが大汗を浮かべ、
その様子に刹那はふっと破顔した。
「一応、女性として一年程先に生まれていますのでこのぐらいは。
私から見てその様にとても魅力的です。
もっとも、専らこちらの武骨者で通っているのが女子校ですから
当てにして頂いても困りますが」
夕凪を手に大真面目に説明する刹那を前に、
まどかはとうとうくくくくと腹を抱えてしまった。
「あ、有難うございます。
刹那さんみたいに格好いい人にそう言ってもらえて
とても嬉しいですウェヒヒヒ」
「こちらこそ、光栄です。
それではそろそろ。やはり文化交流でしょうか、
ここはイギリス風の朝食が美味しい様です」
「はい、なんか、お腹がすきました」
優しく微笑む刹那に、まどかも元気よく答えていた。
==============================
今回はここまでです>>436-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>439
ーーーーーーーー
「それでは、お嬢様をお願いします」
「分かりました」
「ほなな、まどかちゃん」
「はい」
新オスティアの飛行船港で、桜咲刹那がネギに後を託し、
にこにこ微笑む近衛木乃香がまどかと挨拶を交わしていた。
そんな様子を、神楽坂明日菜は人差し指の背で顎を撫でながら眺めている。
「刹那さん」
「はい」
「帰ったらゆっくりお茶しよう。
最近ちょっと忙しかったから、みんなで原宿とかお出かけして」
「そうですね」
明日菜の言葉に、刹那はにこっと笑って即答した。
そんな刹那の笑顔を見ながら
人差し指の背で顎を撫でていた明日菜は、破顔して小さく頷いた。
「それでは」
刹那に促したのは、一見して彼女よりも年下の執事風の少年だった。
かくして、刹那とまどかは用意された飛行船に搭乗する。
ーーーーーーーー
「うわぁー………」
飛行船の窓から景色を眺めていたまどかが、声を上げた。
前例をほとんど知らないまどかであっても、
これがかなり高級な飛行船である事は分かる。
何時間かの飛行の間、乗り心地も上々の船内で、
まどかは雲を眺めたり軽く昼寝をしたりお菓子を摘まんだりと
いい加減異常事態にも慣れつつある移動時間を満喫していた。
「メガロメセンブリアですね」
「あれが………」
刹那にそれが目的地である事を告げられ、まどかが呟く。
程なく、魔法世界内の大都市メガロメセンブリアに到着した刹那とまどかは、
執事風少年の案内で徒歩での移動を開始していた。
「刹那さん」
「はい」
「魔法世界でもちょっと、感じが違うって言うか」
「そうですね」
まどかの言葉に刹那が頷いた。
「あちら、と言うよりもこの世界の南側はいわゆる亜人、
獣とか魔族に繋がる人達が多く、オスティアはいわば中間点です。
対して、北側の政治的中心に当たるこのメガロメセンブリアは、
私達にとっての元の世界に近い世界で、
魔法こそポピュラーでも住人もそういう事になっています」
刹那が噛み砕いて説明を行う。
確かに、飛行船から見た景色も今の道行きも、
丸で未来都市を思わせる、それでいて魔法らしさも全開の摩天楼。
そこに、いかにも魔法らしい色々なものが空中を飛び交っている。
行き交う人々も刹那の説明通りに見えた。
そして、一同が行き着いた先は、
見た目からして壮大にして由緒正しきホテルだった
「こちらです」
少年が案内した先は、
そこに至る過程と扉だけでも特別さが理解出来る程の、ホテルの特別室だった。
ーーーーーーーー
「初めまして」
特別室に入ったまどか達を出迎えたのは、
眼鏡をかけた、背の高いスーツ姿の男性だった。
「鹿目まどかさんですね?」
「はい」
ちらっ、と、このだだっ広い部屋の
さり気なくも高級な調度品を気にかけていたまどかに、
男性は歩み寄り声を掛けた。
「メガロメセンブリア元老院議員、クルト・ゲーデルです」
「あ、鹿目まどかです」
求められるまま、まどかはゲーデルと握手を交わす。
「報せは受けています、この度は思わぬ事態となった様で。
帰国の事はこちらで準備させていただきます」
「有難うございます」
肩書も本人の雰囲気も間違いなく偉い人らしいゲーテル相手に、
手を離されたまどかがぱたんと頭を下げる。
「サクラザキセツナ君」
「はい」
「お嬢様共々元気そうで何よりだ」
「はい、有難うございます」
「………お知合い、ですか?」
「神鳴流門下として親類筋に当たります。
少々込み入った経緯があるのですが、
私等は到底及ばないお方です」
「そういう事ですから、妹弟子の大切なゲスト、無碍にはしませんよ」
「は、はい、ありがとうございますウェヒヒヒ」
まどかににっこり語り掛けるゲーデルにまどかは頭を下げるが、
まどかの本能は彼の微笑みに微かなアラームを鳴らしていた。
「それでは、こちらに」
かくして、ゲーデルの案内でゲーヂルと刹那、まどかがテーブルに就く。
執事少年の差配で、そのテーブルに色々と運ばれて来た。
「………お粥? それに………味噌汁?」
「粥は好みで梅干しか鰹節の餡を。
豆腐と菜の味噌汁に里芋の煮物、鯵の開き。一夜漬け。ほうじ茶
一部はこちらの食材でそれらしいものを代用しましたが、
特に鹿目さんはそろそろ胃もたれする頃かと思いましてね」
「はいっ、有難うございますっ!」
「では、いただきましょうか」
ゲーデルの言葉に、ここまでやや儀礼的になりつつあったまどかは
本心から声を上げてぱたんと頭を下げ、
ゲーデルの言葉と共に三人は合掌した。
==============================
今回はここまでです>>440-1000
続きは折を見て。
すいません>>443差し替えます。
==============================
「それでは、こちらに」
かくして、ゲーデルの案内でゲーデルと刹那、まどかがテーブルに就く。
執事少年の差配で、そのテーブルに色々と運ばれて来た。
「………お粥? それに………味噌汁?」
「粥は好みで梅干しか鰹節の餡を。
豆腐と菜の味噌汁に里芋の煮物、鯵の開き。一夜漬け。ほうじ茶
一部はこちらの食材でそれらしいものを代用しましたが、
特に鹿目さんはそろそろ胃もたれする頃かと思いましてね」
「はいっ、有難うございますっ!」
「では、いただきましょうか」
ゲーデルの言葉に、ここまでやや儀礼的になりつつあったまどかは
本心から声を上げてぱたんと頭を下げ、
ゲーデルの言葉と共に三人は合掌した。
==============================
今回はここまでです>>440-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>444
「お口に合いましたか?」
「はい、何日も経ってないのに和食がこんなに美味しくて、
有難うございました」
「そう言っていただけると」
一見素朴にして十分な仕事の為された昼食を前に、
ぱたんと頭を下げた鹿目まどかにクルト・ゲーデルが紳士のスマイルを返す。
お粥と汁、お菜の食事が終わった辺りで、緑茶が出される。
「これ、お味噌?」
「いかがですか?」
「美味しいです」
お茶請けに出されたのは、
味噌を付け焼きにした小麦粉や蕎麦粉の和風クレープだった。
「私はオスティア総督でもありまして」
「オスティア? じゃあ、あのパーティーに?」
「ええ、会場にはいました。
しかしああいう日だからこそ公務が立て込んでいまして。
ゲートのあるこちら側で一度に話を済ませた方がいいと言う事になりまして」
「そうだったんですか」
「ええ。色々と支度は整っていますので、
鹿目さんの旧世界への帰還とそれまでの安全は保障します。
そこに至る迄、留守にした事の辻褄合わせに就いても
あちらの魔法協会の方で根回しが行われている筈です。
特に旧世界における魔法と言う性質上、
何かあった時の隠蔽工作には習熟していますからね」
「ウェヒヒヒ………」
にこにこ微笑んで語るゲーデルのやや人聞きの悪い言葉に、
まどかは汗を浮かべて笑みを返す。
「しかし、それまで時間もあります。
手始めに、映画等如何ですか?」
まどかの目の前で、ゲーデル総督は両手を広げて微笑んだ。
× ×
明石裕奈は、振動するスマホを取り出し通話状態にする。
「もしもし?」
「もしもし、明石だな?」
「そうだけど、千雨ちゃんだよね?」
「ああ」
取り敢えず、互いにスマホの画面表示通りの相手である事を確認する。
「その後、例の件どうなった?」
「現在調査中。千雨ちゃんには悪いけど、私達も動いてるからね」
「今何処だ?」
「あすなろ駅」
「一人か?」
「メイちゃんも一緒」
「だったら、学園警備、少なくとも高音さんは知ってるって事だな?」
「ま、そういう事。今回の千雨ちゃんの仕切り、
高音さん相当キテたから、覚悟しといた方がいいよ」
「だろうな、分かってる。
二人であすなろに来てるってんなら、
ちょっとセッティングさせてもらっていいか?」
ーーーーーーーー
あすなろ市内のカラオケボックスの一室に集合したのは、
明石裕奈、佐倉愛衣、巴マミ、佐倉杏子の四名だった。
尚、彼女達の家族構成に就いて少々触れると、
明石裕奈は母を亡くして父一人娘一人、
巴マミは両親、佐倉杏子は両親と妹を亡くして他に家族はおらず、
佐倉愛衣はステップファミリーで実父と義母、義姉の家族構成だった。
「もしもし」
「はい、もしもし」
そして、現在裕奈のスマホにテレビ電話で繋がっているのが長谷川千雨だった。
「取り敢えず、その面子で協力する、って事でいいのか?」
「ええ、構わないわ」
千雨の問いに、答えたのはマミだった。
「私は、明石さんにも魔法使い一般にも、
正直悪い感情は持っていない。
もちろん魔法の関係で鹿目さんが行方不明になっているのはその通りだけど、
その事ではあすなろの魔法少女も疑わしい。協力出来るものなら協力したい。
こっちで繋いでくれてあなたには感謝する」
「まあ、エージェントって言うには単純そうだからな」
真面目に言うマミの横で、早速お摘みに手を伸ばしながら杏子が笑った。
「まあ、そうだね。正直私、騙しとか腹芸とか無理っぽい」
「私もそう思います」
「言ってくれるよ魔法使いの先輩」
自分で認めた裕奈に愛衣が続き、笑い合った。
「それじゃあ、本題に行くか」
千雨が話を切り替える。
「現時点で、あすなろ市での第一ターゲットは御崎海香。
データから言って、彼女の豪邸を拠点とする
魔法少女グループが関わっている可能性は小さくない」
「だから、これから探りに行こうって途中でそっちから連絡があったんだけど」
「そりゃ良かった」
杏子の言葉に千雨が応じた。
「情報を総合すると、御崎邸には現在中学生だけで生活している。
それだけにセキュリティーは万全だ、
下手打ったら一発で近所中に鳴り響いた上に
警備会社に直通でそのまま警察沙汰だ」
「機械的、電子的な防壁は魔法使いにとっても侮れない。
街中で、社会的な地位もある相手では特にそうです」
千雨の指摘に、愛衣が言った。
「しかも、グループの全員が魔法少女だとすると、
科学と魔法、両方を相手にする事になるわ」
マミが言葉を続けた。
「そこで、狙い目になるのが、御崎海香グループのイレギュラー………」
「和紗ミチルか」
「ああ」
答えた杏子に千雨が言う。
「彼女を中心に、防犯カメラや携帯電話の位置情報を洗い直した。
電話会社側の全データから合致するものを特定する感じの荒業だったがな。
ミチルの行動パターンは、
確かにグループの一員ではあっても独自の部分も目立つ」
そして、一同はマミのスマホを見た。
「鍵になるのはここ、ビストロ「レパ・マチュカ」だ。
確定は出来ないが、関連情報が集まっている地理的に言って
ポイントは多分ここだ。
ずっとは無理だが、後何時間か、私はこの近辺に電子情報の網を張る。
あんたらは周辺に配置して、引っかかったら動く。
こういう作戦でどうだ?」
マミのスマホに地図情報を送った千雨が裕奈のスマホ越しに言い、
個室にいる一同は小さく頷いていた。
==============================
今回はここまでです>>445-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>450
ーーーーーーーー
「よう」
ビストロ「レパ・マチュカ」店内で、
巴マミを伴った佐倉杏子がテーブル席の少女に声を掛けた。
「?」
「しばらくだったな」
「あの………どちら様ですか?」
「何?」
きょとんとして問い返す相手に、杏子が聞き返す。
「私の事、知ってるの?」
「何言ってんだ、お前?」
「お客さん」
厨房からマスターの声が聞こえる。
「ごめんなさい。少し、同席してお話いいかしら?」
マミの言葉に、着席している少女はこくんと頷いた。
ーーーーーーーー
「レモンティーを」
「チョコレートパフェ、もらおうかな?」
「あの………」
「ん?」
「ここ、バケツパフェが美味しいんだけど、
良かったら一緒に」
「へえー、変わったメニューだな。そうさせてもらうかな」
「この量なら、二つを三人で分けない?」
「それでちょうどいいと思う」
「それならそれでいいや」
「じゃあ、レモンティー一つとバケツパフェ二つ、
取り皿とスプーンをもう一つお願いします」
取り敢えず、マミがオーダーを出す。
「最初に聞くけど、あなた、私達の事を覚えてる?」
マミの問いに、少女は首を横に振った。
「そう。私は巴マミ」
「………佐倉杏子だ」
マミの肘が軽く当たり、杏子が名前を伝える。
「巴さんに佐倉さん………」
「名前でいいよ、ちょっとややこしい事もあるから」
「私はかずみ」
「かずみ?」
名乗った少女に、杏子が訝し気に聞き返す。
「それが、あなたのお名前?」
マミの問いに、かずみが頷いた。
「ちょっと待て、かずみ、って言われても、
大体お前………」
「お待たせしました」
マミが杏子を手で制し、注文の料理が運ばれて来る。
ーーーーーーーー
「うん、旨い」
杏子の反応に、かずみがとろける様な笑みを見せる。
それを見て、杏子も不敵な笑みを返した。
「話を戻すが、あんた、あたしを担いでるんじゃないだろうな?」
「違う」
杏子の問いに、かずみは真面目に答えた。
「多分、佐倉さんも気が付いてると思うけど………」
「ああ。けど、今の顔見ても、あんたはあたしが知ってる奴だ」
「私の事、知ってるの?」
「ああ、知ってる」
「私もあなたの事は覚えがあるわ」
「分からない」
杏子とマミの答えに、かずみは改めて答えた。
「双子の姉妹とか、いないのか?」
「いない、と思う」
「あなた、記憶が?」
マミの問いに、かずみが頷き杏子が天を仰いだ。
「和紗ミチル、鹿目まどか、この名前に心当たりは?」
マミの問いに、かずみは小さく首を横に振った。
「それじゃあ、御崎海香」
「知ってるの?」
「ちょっとな、あんたの仲間か?」
杏子の問いに、かずみは頷いた。
「ソウルジェム、って知ってるかしら?」
マミの問いに、かずみはそれを取り出した。
「変わってるわね」
マミが、自分のソウルジェムを差し出して言った。
「普通、底は台座になってるけど、
あなたのはトゲなのね。まるでゴルフのティー」
「ああ、確かに見た事ないな」
「あなた達も魔法少女なのね」
「ええ」
かずみの問いに、マミが答えた。
「あたしの知る限り、あんたの名前は和紗ミチル。
あたしと他の魔法少女が揉めてる時に、
あんたが仲裁に入った事があった」
「他の、魔法少女」
「覚えてない?」
マミの問いに、かずみは首を横に振った。
「私は、魔女に襲われていたあなたを助けた事がある。
まだあなたは契約していなかったと思う」
マミの言葉に、かずみは首を横に振る。
「御崎海香達の事、聞かせてもらえるか?」
「私の、友達、仲間」
「魔法少女?」
マミの問いにかずみが頷いた。
「私達のグループ、プレイアデス聖団」
「プレイアデス?」
「確か、ギリシャ神話ね」
「うん、ギリシャ神話から名前を取った、って聞いた事がある」
「じゃあ、麻帆良学園都市の事、なんか知ってるか?」
「知らない」
「あんたのお仲間が麻帆良学園都市に行ったってのは?」
「知らない」
「それ、マジで言ってんだろうな?」
ずいっと視線を向ける杏子に、かずみが小さく頷く。
「だけど………」
「ん?」
「珍しく他のみんなが、
全員用事があるって言ってほとんど一日会えなかった」
「それって………」
マミがかずみから日付を確かめ、「当たり」である事を確認した。
そして、マミがスマホを取り出す。
「少し、付き合ってくれるかしら?」
==============================
今回はここまでです>>451-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>455
ーーーーーーーー
「あなた、確か店に?」
マミと杏子に連れられ、トタン囲いの中のビル工事現場に入ったかずみが
目の前に現れた少女に言った。
「はい、私達もあの店にいました」
明石裕奈を伴った佐倉愛衣が返答する。
「改めまして、佐倉愛衣です」
「どうも、私は明石裕奈。
こんな所に来てくれて有難う」
「正直、助かりました。
すんなりついて来てくれて」
裕奈の言葉に、愛衣も続く。
「食べ物に配慮が出来るマミさんと美味しそうに綺麗に食べる杏子、
悪い人だと思えなかったから」
かずみの回答に、マミが苦笑し杏子が肩をすくめた。
「あの………あなた達も魔法少女?」
「いいえ、私達は魔法使いです」
かずみの問いに、愛衣が答えた。
「魔法使い?」
「ええ、魔法少女とは別に、
元々の才能と特別な訓練によって魔法を使うのが私達魔法使いです。
事情があって巴マミさん、佐倉杏子さんと協力して行動しています。
なお、私の知る限り、私と佐倉杏子さんは親戚的な意味では赤の他人です。
本来であれば魔法使いと魔法少女は不干渉が原則ですけど、
そうも言っていられない事情がありまして。
取り敢えず、一つ確かめたい事があります」
「確かめたい事?」
「ええ、あなたの記憶の事です。
あなたは過去の記憶を失っている、そうですね?」
「うん」
「それは、どの様に?」
「…………より前の事は全然分からない」
「最近ね」
かずみの説明に、マミが言った。
「日常生活は大体大丈夫なんだけど、
私が誰で、過去に何があったのかは全然覚えていない」
「いわゆるエピソード記憶、ですか」
かずみの回答に愛衣が言う。
「確認のためにいくつか質問をします、
Yes or Noで答えて下さい。
あなたの名前はかずみですね?」
「Yes」
「あなたは12歳よりも年下ですね?」
「No」
「あなた、本当は記憶喪失なんかじゃないですね?」
「Yes 私は本当に記憶喪失だよ。
本当に、昔の事は何も分からない」
「そうですか、失礼しました。
………問題はその記憶喪失の理由です。
何か魔術的な理由があるのかも知れない。
その事を確かめたいのですが」
「うーん」
愛衣の言葉に、かずみが腕組みして唸る。
「それなら、海香が気が付きそうだけど………」
「あなたのお仲間ですね?」
「うん、海香とかニコとか魔法分析が専門だから、
私の記憶喪失の原因が魔法なら分かるんじゃないかって」
「成程………一応、確認だけさせてもらってもいいですか?」
「………いいよ」
かずみは、愛衣を真っ直ぐ見て答えた。
「感謝します。
メイプル・ネイプル・アラモード………」
ぺこりと頭を下げた愛衣が、
呪文を唱えながら右の掌をゆっくりかずみに向ける。
そして、掌をかずみの額に当てた。
「………!?」
「メイ、ちゃん?」
その場にすとんと腰を抜かした愛衣に、裕奈が目を見開く。
「…ケ…ノ………」
「ちょっとメイちゃん」
「………な………なんなんですか、あなたは………」
裕奈の口調も変わる中、
その場にへたり込んだ愛衣は口の中でぶつぶつと呟いていた。
==============================
今回はここまでです>>456-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>459
「メイ?」
心配そうに言うかずみを前に、愛衣はごくりと喉を動かし、立ち上がった。
「メイちゃん」
懸念をにじませて声を掛けた裕奈に、呼吸を整えた愛衣は小さく頷く。
「かずみさん」
「はい」
「これから少し、付き合っていただけますか?」
「えっ?」
「麻帆良学園までご同行願います」
「メイちゃん?」
大真面目な眼差し、硬い口調で言う愛衣に、
裕奈も真面目に問いかける。
「おいおいどうなって………」
杏子が言いかけ、鋭く視線を走らせた。
その視界に入ったマミも同様だった。
「アデアット!!」
愛衣がざざっと後退し、裕奈が斜め上に向けて魔法拳銃を連射した。
こちらに飛来中に銃撃を受け、
複数のミサイルが白煙に包まれて空中爆発した。
「!?」
次の瞬間、強烈な衝撃を受けて愛衣の体が吹っ飛ぶ。
「野郎っ!!」
愛衣と敵との間に杏子が割って入り、
杏子が振るった横殴りの槍が跳び越された。
「!?」
地面に投げ出された愛衣がとっさに地面を転がり、
愛衣がいた地面に一撃が叩き付けられる。
愛衣の目が、乗馬服風の衣装で鞭を振るう眼鏡の魔法少女をとらえる。
(さっきの体当たり、魔法防壁が無ければ感電で卒倒してた。
武器は帯電、それに魔法で強化した鞭)
「このっ!」
杏子の剛槍が、でっかいぬいぐるみを思わせる熊を切り裂いていた。
その間にも、熊の群れが工事現場に殺到し、
大量のマスケットを空中に呼んだマミと
魔法拳銃の裕奈が弾幕でその進行を阻止する。
「デフレクシオッ!!」
愛衣の側でしなる鞭が、風の楯に弾き飛ばされる。
(無詠唱光の矢!)
愛衣が背後の空間から発した光の矢を鞭使い浅海サキが交わし、
サキは帯電と共に愛衣に急接近する。
「貴様はボクを怒らせた」
「伸縮自在、ですか」
サキの鞭が猛獣調教から乗馬用に変化し、
サキが呟きと共に放った一撃を愛衣は箒で受け止める。
「サキッ」
「かずみ、逃げろっ!」
「え、えっ?」
「いいから、ここから離れて、戻ってるんだっ!」
「浅海サキさん」
愛衣の声に、サキは愛衣の目を見た。
「彼女、かずみさんは、自分の事を知りたがっています」
「黙れ………行くんだ、かずみ」
得物が弾け、双方距離をとる。
「気が付きませんか?」
「何?」
「あなたの言動こそが、私を核心に近づけている」
「黙れえっ!!!」
サキの放った猛獣鞭が、愛衣の風楯に弾き飛ばされる。
「お返しです」
愛衣から近距離で無詠唱の一撃を食らい、
サキが体を折った。
(まだ、魔法少女相手にはサギタ・マギカ一発二発は威力が………)
畳みかけようとした愛衣が、ゾクリとした悪寒と共に振り返り、箒を振るった。
「黙れよ、お前」
たっぷりの髪をふわっと膨らませ、ピンク色のふわふわメルヘン系な衣装。
それにしては武器が凶悪にゴツ過ぎる。
愛衣の使うオソウジダイスキは魔法具の箒だが、
ふわふわピンクが振り下ろす
魔力を帯びたクレイモアの振り下ろしを捧げ持った箒で受け太刀するのは、
かなり手の痺れる事だった。
若葉みらいがそのクレイモアを振り上げ、愛衣が後ろに跳んだ。
「サキを惑わせやがって、潰してやるよ………!?」
「怨み事の前に手ぇ動かすんだなっ」
みらいの腰に背後から鞭が巻き付き、がくんと後ろに引っ張られる。
鞭は杏子の槍が化けたものだった。
「くそっ!」
振り返ったみらいが幅跳びで杏子に斬りかかり、
杏子は鞭を解いてそれを交わした。
「かずみ、今は逃げろっ!!」
「!?」
サキが呼んだ落雷が愛衣を足止めし、
サキの叫びにかずみが踵を返した。
「明石さん追ってっ!」
「オーライッ!!」
愛衣の叫びに、ようやく熊が片付いた裕奈が応じる。
裕奈の側では、手刀をマミに向けた神那ニコと
マスケットをニコに向けた巴マミが互いの手の内を晒した形で睨み合っていた。
「!?」
工事現場の中に、再びミサイルと熊のぬいぐるみが殺到する。
==============================
今回はここまでです>>460-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>463
ーーーーーーーー
「待って、かずみちゃん、っ!?」
工事現場の資材や骨組みから塀を飛び越え、
屋根から屋根へと跳躍するかずみを裕奈が追跡する。
追跡しながら、裕奈は空き地に飛び込んでいた。
(資材やクレーン車とか、さっきの工事のかな?)
着地と共に一瞬周囲を見回した裕奈が、ダッと横っ飛びする。
(光の矢? いや、もう少し大きい)
斜めに降って来た光球が猛スピードで地面を抉り、
裕奈が発砲した魔法拳銃の銃弾が次に飛来した光球を消滅させる。
そして、走り去るかずみと裕奈の間に、
近くの資材の山から二人の少女が着地した。
どちらもフードつきの白い装束、半ばフードに隠れているが、
一方はロングヘアで一方はショートボブ。
「………(確か、ロングが御崎海香、ショートが牧カオル)
どう見ても魔法少女、だよね」
「そっちも、魔法を使うみたいだな」
牧カオルが裕奈の言葉を返す。
「お互い素人じゃないって事で。
麻帆良学園学園警備魔法使い明石裕奈。
御崎海香さん、学園での事件に関して聞きたい事がある。
少し、付き合ってくれる?」
「断る、と言ったら?」
御崎海香が聞き返す。
「そもそも、私はかずみちゃんを追っていた」
「させないっ!」
(ボレーシュートッ!?)
海香が開いた本から光球が弾け出し、
とっさに身を交わした裕奈の側を通って光球が空中を突き抜ける。
「(行け行けにジグザグっ!)デフレクシオッ!」
駆け寄って来るカオルの複雑な動きとスピードに魔法拳銃での銃撃を諦め、
裕奈は防御魔法と共に弾き飛ばされていた。
(鋼鉄の腕のクロスガード突進、
防壁が一瞬遅れてたら血反吐吐いてるねこれ)
跳躍しながら、裕奈は小さな魔法練習杖を握ったまま、
痺れの走る左腕を振る。
その時には、カオルは海香からの光球を跳ね上げていた。
「くっ!」
裕奈がカオルに向けて発砲し、
カオルが蹴り出した光球が銃撃を受けて消滅する。
その時には、裕奈はずしゃあっと足を滑らせて
カオルのクロスガード突進を交わし、
裕奈の発砲をカオルが身を反らして交わす。
「デフレクシオッ!」
たたっと双方距離を開き、裕奈が練習杖を突き出して風楯を張るが、
とっさの未熟な楯を威力ピーク距離からの光球が一撃し
衝撃を察した裕奈がそれを受けながら背後に跳ぶ。
裕奈が、背後に跳躍して鉄材の山に乗る。
すると、カオルは更に跳躍して、裕奈が乗った山の背後にある
更に高い鉄材の山に飛び乗っていた。
「くっ!」
上からの光球シュートを交わし、山を飛び降りながら、
裕奈は上の山のカオルを銃撃する。
カオルも又、それを交わしながら山を飛び降りていた。
(上からオーバーヘッドキックッ)
海香が高々と放った光球が空中のカオルに追い付き、
カオルは空中でくるりと回転しながら下の裕奈へとシュートを放った。
とっさに張る事が出来た一杯いっぱいの魔法防壁が、
光球が帯びた強烈な衝撃波に押され、
裕奈の背は辛うじて魔法防壁に守られながら
バウンドする勢いで地面に叩き付けられていた。
カオルが着地する。裕奈は痛む体を引きずって即座に跳躍し、
クロスガードタックルを交わした。
そして、クレーン車のコクピットの上に飛び乗る。
その頃、カオルは海香からの光球をトラップしている所だった。
「ちょこまかと、結構いい動きじゃん」
資材や重機の上を飛び回る裕奈を、
リフティングしながら目で追ったカオルは不敵な笑みを浮かべていた。
(背中が痛いけど、雨は降ってない。
祈るから上手く当たってっ!!!)
「カオルっ!」
「!?」
裕奈の発砲した魔法銃弾は、
身を交わす迄もなくカオルの周辺を突き抜けた。
「チッ!」
幸い、ダンプからは若干の距離があったものの、
裕奈の動きの緩みを見て瞬時にシュート体勢に入っていたカオルの耳に、
すぐ側のトラックの荷台や資材の山からの荷崩れの轟音が突き刺さった。
カオルが、そのまま光球を裕奈に向けて力一杯シュートする。
「!?」
裕奈が、魔法使いの出力で大ジャンプをした。
そして、カオルと、カオルの側に駆け寄った海香の側に勢いよく着地する。
二人がとっさに身を交わし、
裕奈は着地しながら両手持ちした光球を勢いよく振り下ろしていた。
「とっ!」
そして、裕奈は鋭い足払いを交わす。
御崎海香は、目の前で展開される団子状の混戦を呆然と見ていた。
手出しが出来なかった、と言うのが正しい。
物理的に手出しが出来ず、
裕奈とカオルは不敵な笑みと共に走りながらもつれ合っている。
「つっ!」
「もらっ………」
「チェックメイトっ!」
「こちらがね」
カオルの鋭いスパイクの足裏が、裕奈の脛を一撃した。
と、次の瞬間には、裕奈は転倒がてらカオルの胸倉を掴み、
二人もつれての回転が終わった時には、
裕奈の魔法拳銃の銃口がカオルの額に押し付けられる。
そして、その裕奈の背中には海香の向けた槍先が向いていた。
海香は、槍を向けながら、目の前の二人がくくくっと笑い出すのを見た。
「やってくれたね、牧カオル」
カオルの上に乗っかって拳銃を向けていた裕奈が、
ごろんと地面に転がり大の字になった。
「明石裕奈? あんた、バスケやってるの?」
あははっと笑ったカオルが質問した。
「まーねー、うちの部は弱いけどね、つっ」
「大丈夫? 結構思い切り削った筈だけど」
「まあね、これぐらいなら私の初歩的治癒魔法でもなんとか」
立ち上がった裕奈が、とんとんと脚の具合を確かめ軽く顔を顰める。
「お互い、ホントんとこはボールは友達、でいたいもんだね」
「全く」
裕奈の言葉に、カオルが苦笑しながら立ち上がる。
「で、あんた達プレイアデス聖団?
実際ん所、麻帆良学園都市で一体何してた訳?」
「ちょっと観光に、って言ったら納得していただけるかしら?」
「正直、かなり難しいと思う」
海香の返答に裕奈が苦笑する。
裕奈が、そろそろと拳銃を差した腰に手を動かし、
海香が手にした本を槍に変化させる。
「カオル、かずみはあなた達を友達だと言った。
カオル達もそう思ってる? それでいい?」
裕奈の問いに、カオルが頷いた。
「あたし達の大事な友達だ」
「そう………!?」
裕奈が、とっさに腕をクロスして魔法防壁を張った。
殺到するカササギの群れが裕奈の側を通り過ぎた時には、
資材置き場には裕奈だけが取り残されていた。
ーーーーーーーー
さっとシャワーの湯を浴び、少しばかりの英気を取り戻す。
脱衣所からバスローブ姿でリビングに戻り、
二枚のバスタオルの内一枚を解いて
豊かな黒髪を解き放ってからどうとベッドに倒れ込む。
(十分、ぐらい目を閉じようか)
麻帆良芸術大学附属中学校女子寮の一室で、
夏目萌はスマホを手元に心の中で呟いていた。
(出来る所までやっておかないと。
本当はデータの持ち返り自体違反なんだけど、
本部の、上の方がきな臭いって………)
政治的事情に加えてそのために公的設備の使用も制限される。
IT系要員でもあるナツメグこと夏目萌にとってはダブルパンチで頭が痛い。
「ん………」
ナツメグがスマホの着信に気付いたのは、
意識が飛ぶ寸前の事だった。
「メイ? ………
もしもの時は、送られて来たものに
ナツメグさんの生年月日末尾二桁を足し算して下さい。
それがパスコードです。
現時点では他言無用、このメールは即座に削除して下さい、
って………何やってるのよあの娘………」
ーーーーーーーー
「もしもし、明石か?」
「佐倉愛衣です」
スマホの電話に出た長谷川千雨に、愛衣が電話越しに告げた。
「ご協力いただけるのでしたら、一つお願いしたい事があります………」
愛衣の生真面目な声を聞きながら、千雨はメモを用意した。
「………ああ、イミグレの………分かった、やってみる」
「有難うございます。それから、そちらに送ったメール、
出来ればすぐにでも読んで下さい」
「ああ、分かった」
千雨が電話を切り、メールを読む。
「まず、メモに書き写してこのメールは即座に削除して下さい。
定期連絡が途切れたら、
これをこのまま指定のアドレスに転送して下さい、か。
クラウドストレージのサービス名とID、パスだな。
どんな危ない橋渡ってやがる」
ーーーーーーーー
「有難うございます」
あすなろ市内、漫画喫茶の多目的ルームで、
愛衣が裕奈にスマホを返却した。
「PCとメイちゃんのスマホから何か色々送信してたよね?」
「はい」
「一体何を?」
「すいませんが、その答えは少しだけ待って下さい」
「お前、絶対何か隠してるよな?」
杏子が、愛衣に剣呑な視線を向ける。
「あんたは箒で追跡して、あたし達には屋敷を見張る様に指示を出した。
それから、ここを待ち合わせ場所に指定して来た。
あたしらから連絡内容を隠すために時間稼ぎをしたって事か」
「申し訳ありません」
愛衣が、ぱたんと体を折って頭を下げた。
「これだけは、確証無しに口に出せる事じゃないんです」
「かずみさんの事?」
マミの問いに対して、
愛衣の反応は沈黙は肯定と受け取るに十分なものだった。
「明石さん、確認します」
「うん」
「牧カオルは、かずみさんの事を友達だと言った、そうですね」
「うん」
「その言葉に嘘は無かったですか?」
「なかった、私はそう思う」
愛衣を真っ直ぐ見て返答する裕奈に、
愛衣は小さく頷いて、斜め下を見た。
==============================
今回はここまでです>>464-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>471
ーーーーーーーー
「もしもし?」
あすなろ市内の漫画喫茶多目的ルームで、
そろそろ次の事を考えようかと言う矢先に明石裕奈がスマホを取った。
「明石か?」
「うん」
相手は、長谷川千雨だった。
「今、何処にいる?」
「ああ、………って漫画喫茶の個室」
「そこ動くな、大丈夫だと思うけど防戦の準備だけしとけ」
「マジ?」
「ああ、流石にそこでドンパチはないと思うがな。
少しだけ待ってくれ」
「分かった」
裕奈が電話を切り、口調が変わった裕奈を同じ部屋にいた
佐倉愛衣、巴マミ、佐倉杏子も見ていた。
「千雨ちゃん、なんか、近くに敵がいるみたいだね」
へらっとした口調で言うが、伝わるものは伝わった。
「どうするんですか?」
「仮にプレイアデスだとすると、
ここでおっ始めるって事は無いんじゃないの?
次の連絡あるまでここで警戒しつつ待機、って事でいい?」
愛衣の問いに裕奈が答え、一同が頷いた。
ーーーーーーーー
「もしもし」
千雨からの次の連絡を、裕奈他の一同はスマホのスピーカーで聞いていた。
「もしもし、千雨ちゃん? みんな聞いてるけどいい?」
「上等だ。佐倉のがどうも嫌な予感がし過ぎる言い方だったからな。
念のためこっちで色々確認して見た。
結論を言う、そこ、御崎海香のグループに張られてるぞ」
「プレイアデス聖団に?」
「プレイアデス?」
「御崎海香達の魔法少女のグループの事です」
裕奈の言葉を愛衣が補足した。
「携帯電話会社と防犯ビデオのデータで把握した。
現在進行形でそっちの店を包囲してる」
「相手も魔法少女、今までのパターンから言っても
街中戦う事はないと思うけど」
「ああ」
マミの言葉に千雨も同意する。
「だがな、そのプレイアデスのメンバーの神那ニコってのが
ちょっと厄介な代物を使ってる」
「厄介?」
「お前ら四人の魔力の波長をスマホに記録させて探査してやがる」
「魔力の波長、スマホに、って、本当ですか?」
愛衣が食い気味に尋ねた。
「ああ、想像以上のハイテク魔法軍団だ、
放っておいたら地の果て迄でも追いかけて来るぞ」
「面倒だな」
千雨の答えに、杏子も苦り切った。
「私に考えがある」
ーーーーーーーー
「動きは?」
「ノン」
ドーナツショップのテーブル席で、
浅海サキはスマホ越しに神那ニコの返事を聞く。
「いいか、動きがあったらすぐに報せろよ」
「よござんす」
サキは、ふうっと息を吐いて通話を終えた。
「サキ………」
「押さえるぞ」
同席した若葉みらいに、サキが言う。
「多少危ない事をしても、あの魔法使いの身柄を全力で抑える。
言っておくが殺しちゃ駄目だ。
ネカフェって事を考えても、あの箒女の口は絶対に割らせるんだ。
後の三人も………絶対に、足止めする。
対策出来ないなら、絶対にこのあすなろ市から出さない」
「分かってるよ、サキ」
「………」
みらいとサキのやり取りを見ていた宇佐木里美が、
自分のスマホを見た。
「動き出したみたい」
里美が、何処ぞのビルの屋上から
ニコが送って来た通話アプリの言葉を示す。
ーーーーーーーー
御崎海香と牧カオルが、裕奈達から少し遅れて漫画喫茶の個室を出て
裕奈達とは一見逆方向に歩行する。
「駅方向」
「人通りの多い所を通ってこの街を脱出するつもり?」
それぞれスマホを見ながらカオルの言葉に海香が続き、迂回路へと急ぐ。
ーーーーーーーー
「………丁目方面」
「よし」
スマホの地図を見ながら進む里美に、同行するサキが呟く。
「この先のオフィス街だ」
サキが言った。目標の地点はこの時間は閑散とする、
何度か魔女狩りで出向いて土地勘もある。
「どうしてそのルートを?」
サキの差しているイヤホンに、海香からの声が聞こえる。
「駅からも反れて、無意味なオフィス街に向かっている意味は?」
「海香はどう見る?」
サキが、スマホに繋がるマイクに問いを吹き込む。
「釣り野伏せかしら?」
「あたしもそっちの線だね。
明石裕奈、グラウンドが無限大なら伏兵ぐらい仕込んでるかも」
海香の言葉にカオルが続く。
「今、先行して洗う様にニコに伝えた」
「じゃあ、私達はこのまま、タイミングを見て、狩る」
海香の言葉に、サキが告げた。
ーーーーーーーー
「路地裏に入った?」
スマホの地図に表示される魔力探査情報と
直接追跡しているサキ隊からの連絡に海香が呟いた。
「ニコ、どうだ?」
「伏兵らしき姿は見えない」
ーーーーーーーー
「こちらも同じね」
サキ隊の中で、宇佐木里美が通話状態のスマホに告げた。
「鳥と猫の伝言からも、待機している者はいない」
「へぇーっ」
既に営業終了状態のオフィス街で、
クレイモアを肩がけにした若葉みらいが暗い声を出す。
「つまり、身を隠すつもりか、
それとも、四人でカウンターでもかけるつもりなのかなこれ?」
「好都合だ」
サキの手にした乗馬笞が鋭く空を切る。
「海香、絶好のチャンスだ。
大至急追い付いて挟撃をかけてくれっ」
「サキ、もう行く? この場所なら」
「ああ。だけど、海香達も到着するから手堅く行くぞ」
「でも、倒しても構わないよね?」
「箒の魔法使いの口だけは割らせる、それが優先なの忘れるな」
「分かってるよ………」
オフィス街の歩道から路地裏の突入しようとした
サキ隊の三人が、動きを止めた。
「爆発っ!?」
ーーーーーーーー
「状況はっ!?」
「壊れた音は聞こえない、煙幕弾かな、これは?」
スマホでの海香の問いに、ニコの返答が聞こえて来る。
「?」
そして、カオルが自分のスマホを見た。
「かずみからのメール? こんな時に」
「私も」
ーーーーーーーー
「敵襲、って?」
「あいつら自体がデコイっ!?」
スマホに届いたメールを見たみらいの言葉に、
同じくメールを見ていたサキが叫んだ。
「敵の写真、ね」
「ぼやけててよく見えない、っ………」
その時、新たな着信に気付き、サキが電話に出る。
「かずみメール今すぐ破棄しろ、添付ファイルは絶対開けるなっ!!」
それはニコの怒声だった。
「添付ファイル………まさかっ!?」
ーーーーーーーー
「やられたわ」
思えば単純なやり口に、海香は笑いを禁じ得なかった。
だが、プレイアデス聖団、神那ニコを相手にやってのけたと言うのは
とてもじゃないが単純では済まない。
「被害状況、分かる範囲で」
「取り敢えず、魔力探査アプリを集中的にやられた。
特に、最近十何時間以内の更新データは回復不能じゃないかな。
私達の間なら、一人が添付ファイルを開いただけでも瞬時に食い荒らしにかかる、
それぐらいヤバイ奴だよこれは」
「ええ、こちらも、今の所探査アプリを使えない事だけは確かね」
ニコからの説明に海香も応じた。
ーーーーーーーー
「くっそおおおおっっっっっっっっっ!!!!!」
路地裏で、若葉みらいの振るったクレイモアが深々と地面に叩き付けられる。
「ニコ、どうなってるっ!?」
「ノン、分からない。そっちにいない?」
「いないから聞いているっ!
奴の、箒女の魔力波長を記憶させたソウルジェムにも反応は無い。
遠くに逃げたとしか思えないが、気づかなかったのかっ!?」
「サキ達、海香達のルートを考えて、抜け道を上から見張ってた筈だけど、
そこから逃げた奴はいない筈だ」
苛立ちも露わに尋ねるサキに、ニコも感情を秘めた声で応じた。
「里美っ!?」
みらいの問いに、里美は首を横に振る。
「探してもらってるけど、情報網に引っかからない」
ーーーーーーーー
「助かったわ」
見滝原市内のマンション玄関で、巴マミと佐倉愛衣が言葉を交わした。
「あのさ、マミ」
「安全のためよ」
マミの隣で何か言いたげな杏子に、マミはキリッとした顔で言う。
そして、二人は一緒に玄関から建物に入って行った。
ーーーーーーーー
麻帆良学園女子中等部寮廊下。
「助かりました」
「助かった、有難う」
礼を言う愛衣と裕奈に、長瀬楓と村上夏美が笑顔で応じた。
そして、そのチートな隠密能力の魔法で
あすなろ市からの脱出を手伝ってくれた楓、夏美と別れ、
裕奈と愛衣は女子寮大浴場「涼風」に向かう。
「ああー、しんどかったぁー」
浴槽に浸りながら裏声を出す裕奈に、愛衣は苦笑する。
この時間は、言わば魔法使いタイムだった。
既に通常の使用時間は終了しており、
通常時間から完全終了までなんとなくラグを作っておいて、
魔法使いのルートで裏で申請したら使用出来る
魔法使い作業用のちょっとした便宜だった。
シャワーを浴び、汗を流してサウナに移動する。
少し遅れて、二人から見たら立派な金髪美女がサウナに入って来た。
二人の学校の先輩であり、
既に「仕事」らしき事を始めている二人にとっては上司でもある
高音・D・グッドマンが裕奈、愛衣の隣に座る。
「何か、分かりましたか?」
愛衣からメールでの帰宅報告を受け、
待ち合わせを指定して来た高音が尋ねる。
「まず、御崎海香のグループは、プレイアデス聖団を通称とする
魔法少女のグループでした」
「魔法少女、ですか」
「………お姉様」
少しだけ目を閉じ、目を開いて呼びかける愛衣を、裕奈は見た。
「なんですか?」
「もう少しだけ、時間を下さい。
相手が魔法少女であっても、
今回は麻帆良学園、魔法使いに関わっている可能性は捨て切れません。
今、何とか接点が出来つつあります。
この段階で魔法少女と魔法使いの関係で公式に扱えば逃げられる恐れがあります。
ですから………」
「………明後日一番に詳しい報告をしなさい。
それまでは現場の判断での対応を許可します」
「分かりました」
「………メイ」
立ち上がった高音が、二人に背を向けたまま口を開いた。
「はい」
「あなたは、年齢的には優秀な魔法使いです、私はあなたを買っています」
「有難うございます」
「そして、魔法使いのなんたるかを、
少なくとも隣の見習いよりは弁えていると、
その様に理解しています。
魔法使いとして為すべき事、為さざるべき事、
その最低限弁えるべき事は弁えていると、
私はあなたの事を、そう理解しています。
自分の身を守り、驕る事なく、
魔法使いとしての為すべき事を為す事です。いいですね」
「はい」
高音が、ようやく振り返る。
「それを理解して、今夜は休みなさい」
「はい、お休みなさい」
「お休み、高音さん」
「あなたも余り無茶はしない様に………
メイの手助けをして下さい」
「うん、はい、了解しました」
高音が頷き、サウナを出て行く。
残された二人も、スリリングな一日の疲れがいよいよ
眠気になるのを自覚しながら腰を上げた。
==============================
今回はここまでです>>472-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>481
ーーーーーーーー
高音は水風呂とシャワーだけを使ってさっさと大浴場「涼風」を後にし、
明石裕奈と佐倉愛衣はひと風呂浴びて修羅場の垢を落として脱衣所に移動する。
「メイちゃん………佐倉先輩」
愛衣は、髪の毛をバスタオルに挟みながら、
声を掛けて来た裕奈を見た。
「最悪、私の独断専行って事でいいですから」
「?」
「先輩、メイちゃんが、
何かかなり危ない事をやってるって事ぐらいは分かる。
メイちゃんが任務中に、高音さん相手にもそれをやるって事は、
それは本当に考えた末の事で、決して只の馬鹿や我が儘じゃないって事も。
でも、佐倉先輩は魔法協会で上に行く、行かないといけない人だから」
「高音お姉様に任されたあなたに独断専行で無茶をされては、
私はひどく間抜けな先輩と言う事になりますけど」
何でもない事の様に着替えを始める裕奈に愛衣が答える。
「だよね」
裕奈がふうっと息を吐き、
愛衣は丁度裕奈が下着を身に着けた辺りを手の甲でぽんと叩く。
「僅かな勇気は使いどころが肝心。
今の所はその立派な胸にしまっておいて下さい」
「言うね、メイちゃん」
「魔法使いですから」
へへっと笑った裕奈に、愛衣はとびきり可愛らしく微笑んだ。
「魔法使いですから………
彼女達は、希望を願った魔法少女ですから………」
「ん?」
さっぱりとシャツ、パンツ姿になった裕奈が、
気が付いて自分のスマホを手にした。
「メイちゃん、これ、千雨ちゃんがメイちゃんにって」
「私に?」
裕奈に言われ、愛衣がスマホを見た。
「神那ニコのスマホから気になるものを見つけた?」
「これって、何? イングリッシュ?」
「英字新聞みたいですね。
分かりました、私のスマホに送って下さい。
私の方から長谷川さんに連絡します」
「りょーかい」
「………明石さん」
「何?」
「明日、私の背中をお願いします。
それが、当面の明石さんのお仕事です」
「了解、先輩」
ーーーーーーーー
「一体、何がどうなってるのっ!?」
御崎海香邸のリビングに、かずみの叫びが響き渡る。
「魔法使いって何なの!?
どうしてこんな事になってるのっ!?」
「かずみ、かずみが心配するのは分かる。
でも、大丈夫だ。ちゃんと、対処出来るから」
「そういう事を言ってるんじゃないっ!」
なだめる浅海サキに、かずみが叩き付ける様に叫んだ。
「魔女、魔法少女、それに魔法使いまで関わって、
わたしの事でわたしに隠れて何をやってるのって言ってるのっ!!」
「分かってる、かずみが怒るのはもっともだ」
牧カオルが割って入った。
「そうね………」
腕組みをして立っていた御崎海香が片目を開いて口を開いた。
「見ての通り、魔法使いまで関わって来て状況が混沌としてる。
きちんと説明したいのはやまやまだけど、
事情が凄く込み入ってて………」
「海香っ!」
「ええ、だから、明日………
いえ、早ければ明日、二、三日、少しだけ時間を欲しい。
ちゃんと説明はする。
当座の問題は魔法使いよ」
「そうだ!」
海香の言葉に、狼狽していたサキが勢い込んで言った。
「あいつを何とかしないと、
明日にでもこっちから………」
「サキが行くならっ」
「落ち着けっ!!」
前のめりなサキと若葉みらいをカオルが一喝した。
「そんな事、出来る訳ないだろっ!!
佐倉愛衣、明石裕奈、あいつら単体であれだけ強いんだ。
魔法使いの本拠に殴り込みなんてしてみろ、
拷問不要で全部吐き出すのはこっちの方だっ!!」
「何か、魔法使いと揉めてるの?
あの人達、悪い人には見えなかった」
「ええ、そうよ」
かずみの言葉に、海香も応じた。
「魔法使い、魔法使いは魔法使いのルールを守っているだけ。
それは決して悪い事じゃない。
だけど、今回はちょっと私達と利害が合わない、それだけの事だから、
今は防御を固めて、傷が浅ければ時間をかけて調整できる事だから」
「うぅー、だから、その理由をちゃんと教えてって言ってるのっ!!」
「ええ、分かってる。分かってるから、
だけど、色々込み入った事情があって、
分かる様に説明するのには材料が必要なの。
だから、少しだけ私達に時間を頂戴」
「そうだ、かずみ。頼むから今はあたし達を信じて待っててくれ」
サキの絶対零度の視線を浴びつつ両肩を掴んで迫るカオルに、
かずみはみらいの絶対零度の視線を浴びながら僅かに唸って頷いた。
「アプリの再インストールはどう?」
「取り敢えず、全員のスマホを預かって点検してるけど、
あれだけのサイバー攻撃だ。
こっちの安全確認と相手のタイプからのセキュリティー設定をやらないと
危なくて使い物にならない。もう少し時間をくれ」
海香の問いに神那ニコが答えた。
「只のサイバー攻撃じゃないんだよな」
「辛うじて痕跡を見つけた、
微かに「魔法があった」と言う事だけが分かる微量の痕跡がね。
間違いない、敵は魔法を使う。
十中八九魔法使い、それも科学的見地から見て極めて高度なハイテク魔法。
こんなハイテク魔法使いがいるって、
時代は変わるモンだね。くわばらくわばら」
ニコの答えに、カオルは天を仰いだ。
==============================
今回はここまでです>>482-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>486
× ×
「いやぁー、何度見ても、この件はいいですねぇ」
「ウェ、ヒ、ヒヒヒ………」
臆面もなく大泣きしているおっさんを隣に見て、
鹿目まどかは大汗と共に乾いた笑い声を漏らしていた。
だが、それも無理のない事である事も、まどかは理解していた。
魔法世界メガロメセンブリアの高級ホテルの高級会議室で、
美味しい和風ランチをいただいてから唐突に三部作の映画の鑑賞が始まり、
今、第二部が終わった所。
この魔法世界の歴史を描いたスペクタクル超大作映画は、
笑いあり涙あり手に汗握り感涙にむせぶ、
まどかが映画として観て素直に面白いものだった。
本当はとても三部作の、それもこの鑑賞時間では済まないものを
徹底厳選編集して、それでも結構な長さだったがここまで決して飽きさせない。
そして、まどかの隣で映画を鑑賞しているこの魔法世界の偉い人、
メガロメセンブリア元老院議員にしてオスティア総督であるクルト・ゲーデル。
物腰柔らかな紳士にして何処か油断ならない曲者。
これだけ偉いんだからそうなのだろうとまどかにも分かる人物であるが、
この涙に嘘はないのだろうと言う事も分かる。
取り敢えず、彼自身が映画の中の登場人物の一人として
描かれたあの体験をしているのだから。
「あ、あの、刹那さん」
第三部が始まる前の休憩時間、まどかは、
ここまで同行して来た桜咲刹那に声を掛けた。
「はい」
「あの、あの映画に出て来た
ナギ・スプリングフィールド、って、
もしかしてネギ先生の………」
「はい、お父君です」
刹那があっさり返答し、まどかは目をぱちくりさせた。
魔法少女に魔法使いと関わって来て
現在地が魔法世界であるまどかであるが、
その状況に頭が完全について来ている、とは言い難い。
只、名字と顔立ちが余りにもあからさまだったものを質問した結果がこうだ。
「えっ、と、これ、本当のこの世界の歴史、なんですか?」
「ええ、当時の事を忠実に再現しました」
鼻をかみ終えた議員先生の提督閣下がソフトに返答する。
だとすると、刹那達の担任教師だと言うネギ・スプリングフィールドは
とんでもない人物、掛け値なしの英雄の息子だと言う事になる。
「それじゃあ、ネギ先生のお母さん、って………」
「それは、今私達が答える事は出来ません」
刹那の穏やかな言葉に、まどかは自分の不躾を反省する。
そして、この映画と今迄の体験から、もう一つ、
何か引っかかるものが喉迄出かかっていた。
「では、そろそろ最終章の上映を」
ゲーデルが言い、まどかは椅子に座り直した。
「本邦初公開。何しろ、今年の夏の出来事なのですから」
ーーーーーーーー
「無事でしたか」
「お互いにな」
明石裕奈と共に見滝原市の通称マミルームを訪れた佐倉愛衣に、
部屋で待っていた佐倉杏子が応じた。
前日、あすなろ市の漫画喫茶からなんとか脱出して、
翌日、マミは普通に学校に、杏子はこの部屋で留守番をしていた。
一般的な魔法少女の性質上、後の面倒を考えても
登下校や学校に殴り込む事迄はしないだろう。
常識的な多人数の中にいた方がいいと言う判断の結果で、
マミは学校、実質的な所在不明女子の杏子は
マミが事前の合言葉で連絡する迄は絶対に部屋を開けない。
それは裕奈、愛衣も同様の判断で半日を過ごしていた。
「始めましょうか」
甘い香りに釣られ、裕奈がマミの出て来るキッチンを見た。
部屋の主、巴マミの用意したお茶とケーキは美味しかったが、
会議は大真面目に行われた。
「長谷川千雨さんが用意してくれたプレイアデスのデータ」
言いながら、マミが広げたのは地図だった。
「これを見てて、気になった事があるの」
ーーーーーーーー
日も暮れて、佐倉愛衣、明石裕奈、巴マミ、佐倉杏子の四人が
あすなろ市内工業団地跡地に集結していた。
「そこに目を付けたか」
電話の相手は、長谷川千雨だった。
「ええ。携帯電話の位置情報の地図データ、見せてもらった。
プレイアデス聖団が魔法少女のグループであれば、
魔女の出易い場所を移動するのは説明出来る」
スマホのマイクを手にしたマミが言った。
「だけど、ここだけはそのパターンを外れてる。
確かに、閑散としていて魔女が出て来ても不思議じゃない
だけど、パトロールにしても
何もない場所にみんなで来ている頻度が多すぎる。
それも、かずみさん抜きでね」
そして、千雨とイヤホンマイクを装着したのは、
魔法装束姿の明石裕奈だった。
「GPS作動してる?」
「OK、茶々丸衛星映像と一緒にリアルタイム把握した。
それを、プレイアデスの過去データを最高精度で照合して………
もう少し、もう少し右回り………そっから真っ直ぐ!」
明石裕奈が、閑散とした跡地に向けて魔法制限弾を発砲した。
ーーーーーーーー
「!!」
御崎海香邸の食後のダイニングで、
神那ニコが何やら言葉を吐き捨てた。
「どうしたっ!?」
「やられた………」
浅海サキの問いに、ニコが改めて答える。
「再インストールしたアプリ、汚染が………」
「そんなっ! あれは………」
「ああ」
声を上げたサキにニコが説明を続ける。
「再インストールしたのはラボにあったバックアップ。
それを、新品の機材を使って有線から有線にコピーして、
最終的に、新しく用意した全員のスマホにインストールした。
徹底的にチェックした筈だが、
バックアップそのものが、ラボにまでサイバー攻撃が及んでいたか、
厳重に調べて、どうしてもこれはと
前のスマホからコピーしたデータにウィルスが残っていたか」
「アプリは正常に動いている様に見えるけど」
ニコの言葉に若葉みらいが言う。
「それはダミーだ。
書き換えられたのは魔力探査アプリのあの四人の探査プログラム。
ある時点を最後に、そこから過去五時間以内の
行動の往復を表示するだけのループプログラムに切り替わって
魔力データそのものはデリートされてる」
「それじゃあ、奴らは………」
「!?」
サキが言いかけた時、ニコはスマホからの警告音にスマホの操作を再開する。
「結界が、破られた………」
ーーーーーーーー
通話を終えた長谷川千雨は、猛烈な速さでノーパソの操作を始めた。
そして、がたりと立ち上がり、詠唱を始める。
「広漠の無、それは零。大いなる霊、それは壱。
電子の霊よ、水面を漂え………」
ノーパソが短いステッキに変化して、千雨の手に戻った。
「我こそは、電子の王!」
ーーーーーーーー
「今回は又、一段と薄気味悪いな………」
長谷川千雨は、周囲を見回して呟いた。
そこは電脳世界がイメージ化された世界であり、
得体の知れない絵画の様に、今までにもまして得体が知れない。
そこを、アニメキャラクター
ルーランルージュを模した魔法装束姿で歩いている、
と、千雨は認識している訳だが、
本来の千雨の肉体は別の場所で意識を失っている筈だ。
つまり、魂だけ電脳世界に吸い込まれた、
これに近いイメージであり、それが千雨の能力でもあった。
「ちう・パケットフィルタリーングッ!!」
そして、半回転しながらステッキ状の魔法具「力の王笏」を振るう。
「アハッ」
千雨に迫っていた大量のケーブルが弾き飛ばされ、
微かに声が聞こえた。
「今の、分かるんだ」
半透明のケーブルがちらっ、ちらっ、と
微かに姿を見せながら四散する光景する中、
千雨はその声に目を向ける。
「ああ、魔法だけでもエレキだけでも駄目だっただろうな。
重ねがけの反則技でギリギリ分かった」
千雨が返答する。
「出やがったな」
「私の事を?」
「ああ、連続少女失踪事件。
公式にはバラバラの扱いだが、それでも捜査は進んでる。
失踪した少女の中には、メールで接触を受けていた者がいた。
だが、その発信元は不明だった。
海外串とかなんとかチャチな話じゃねぇ。
電話会社、接続業者の鯖から、都合の悪い情報を丸ごと消しちまう
電脳世界の化け物が一枚噛んでやがる」
「電脳世界の化け物、か。
君に言われたくはない所だが」
「ま、私も結構大概だけど、さぁ。
だから、今回の件であすなろ市中心に動き回ってりゃあ、
何れ出て来るだろうとは思ったけどね」
「成程、まんまと得意フィールドに呼び出されたって訳か」
「
あんたが相手じゃあ舐めプ、って訳にもいかねぇだろうがな。
なぁ、
ヒュアデス
」
==============================
今回はここまでです>>487-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>494
「チャオ♪」
「お前がヒュアデスか、聖カンナ」
簡単に言えば魂が電脳空間に飛び込んだ状態である千雨が、
その電脳空間内で、目の前に現れた少女の姿に呟く。
帽子を被った黒い魔法装束。
その顔立ちは、プレイアデス聖団のメンバーの一人に瓜二つ。
「ゴーストダイブ………いや、ケーブルつきのデコイか」
「ご名答。君の言う通り、
この状況では私の絶対のコネクトすら分が悪いらしい。
直接仕掛けようとしたら僅かにでもリスクがある。
だから、コミュニケーション用のダミーインターフェイスを仕立てた。
私の事は何処から知った?」
「御崎海香のグループを調べ始めてすぐだな。
顔認証の分析に使ってたAIが、一卵性双生児の可能性の確認を要求して来た。
機械的に分析にかけた結果、そのレベルで外見が酷似した二人の人間が
あすなろ市の近いエリア内で同時に動き回ってる。
しかも、接触した形跡がない。その時点できな臭いってレベルじゃない。
二人の内の一人は神那ニコ。
御崎海香のグループ、つまりプレイアデス聖団のメンバー。
もう一人があんた、聖カンナ。
二人共アメリカ帰りなのは共通していたが、
神那ニコは辛うじて実在が確認出来るってレベルで公式記録が薄い。
形式上一応存在している、って言うレベルだ。
対して、聖カンナは普通に家族、学校に繋がっていた。
ああ、コネクトだな。
神那ニコのコネクトは事実上プレイアデス聖団だけに近いが、
聖カンナは普通の中学生の社会、生活にコネクトしてる」
「流石、と言っておこうか電子の王。
見事な電脳ストーカーだ」
「リソースは使い放題だし必要に迫られたからな。
あんたと神那ニコ、
引いてはプレイアデスの行動パターンその他を分析する限り、
単に近いってだけじゃない。
プレイアデスに対して何等かの暗躍をしている、
あんたこそがストーカーって考えるのが自然だろうな。
さっきちょっと触ったが、あんたのコネクト、
電子と魔法の重ねがけが最強な私だからこそ、
この電脳空間では対処出来たが、それでもあそこまで迫られた。
魔法少女としてまともに仕掛けたらどれだけのモンなんだろうな」
「まあ、万能の透明ケーブル接続だとは言っておくよ」
「ヒュアデス、プレイアデスの異母姉妹だな。
あすなろ市で失踪した少女の一部が、
「ヒュアデス」からのメールを携帯に残していた。
メール本文に加えて電話会社、接続業者側のログが綺麗に消されていたから
警察はそこから先を追えなかった。
だが、私はあんた自身をマークしていた。
同時にあすなろ市を中心にした魔法少女関係の情報を収集していた。
その結果、あんたとヒュアデスの一致度が高過ぎる、と言う結論に達した。
ヒュアデス、プレイアデスの異母姉妹だな。
ヒュアデスを名乗る魔法少女がプレイアデスの周辺に現れた。
これは、偶然じゃあないよな」
「そうだね。だから、何?」
カンナに問われ、千雨は取り出したスマホの画面をカンナに示す。
カンナが見せた笑顔に、千雨の足は退きそうになっていた。
「カリフォルニアで発生した拳銃暴発事故。
これが全ての始まり、って事でいいんだよな?」
「Yes 曖昧なものの無い零と壱。
その世界の電子の王が確信しているのなら、
答えは二択の内の一つ」
笑顔で答えるカンナに、千雨は天を仰いだ。
「三人の子どもが、ちょっとした手違いで
放置されていた実弾入りの拳銃を手にした。
その結果が二人死亡一人重傷。
この、重傷を負って生き残った子どもが聖カンナだ」
「私の事か」
カンナの言葉に、千雨は僅かに口角を上げる。
「家で友達と遊んでいた幼児が、身近にあった拳銃に興味を抱いただけの事故。
親の方も、多分な不可抗力と遺族の厚意と元からの財力によって、
社会的に死なない程度の示談金で刑務所行きを免れた。
だが、この結果は子どもにとって余りにも重過ぎた。
その子は以後十年余り、神に許しを請い、笑顔を失って過ごして来た」
「今時のネット社会はそんな事迄?」
「確かに、かなりの所まで入手可能だったが、
種を明かせば私一人の調べじゃない」
「それにしても、よく調べたものだ。
聖カンナの物語を」
「お褒めに預かって光栄、と言っておこうか」
そう言って、千雨はちらりと横を見た。
「?」
千雨とカンナの視線の先から現れたのは、
麻帆良学園が誇る魔法ガイノイド、絡繰茶々丸が引く屋台だった。
「釜揚げもらおうか」
「ありがとうございます」
「いや、ちょっと待て」
屋台のカウンターに立ち、
茶々丸と注文を交わす千雨にカンナが口を挟んだ。
「ん?」
「おかしいだろ、明らかに」
「科学的な非科学的上等だからな。五感全部支配されるVRなんて、
推理漫画発のアニメ映画やらWeb小説発のラノベ経由のアニメやら
今時珍しくもない。電脳世界の何丁目かは分かってるから、
ちょっと味覚データの出前してもらったって事さ。食わんのか?」
「………パスタの屋台? おかしいだろ、明らかに。
ちょっと調べたけど、麻帆良の名物屋台はチャイニーズじゃないのか?」
「多角展開って奴だ。何作っても及第いける技量だしな。
それに、最近の屋台はこれが流行りらしい」
「じゃあ、鉄板ナポリタンもらう」
「ありがとうございます………出来ました」
「おう」
「………」
深めの皿の中に手際よく卵を割り入れ、鬼の様に七味をぶっ込んで
混ぜ込まれた卵の絡む熱々のパスタを猛然と食らい始める千雨の隣で、
カンナが突っ込む言葉を探している内に
カンナの前のカウンターにいい匂いの皿が置かれた。
「成程」
フォークに巻いたパスタを口にしながら、
カンナの語彙はそれだけだった。
そして、その響きは、間違いなく好意的なものだった。
「聖カンナの物語」
皿を拭ったパンを口にしながら、カンナが言った。
「君が調べたのは、聖カンナの物語なのか?」
「まあ、そういう事になるかな」
いっそ清々しくパスタを掴んでいた箸をおき、千雨が答える。
「つまり、私の物語か?」
「ああ、そういう事になるな」
「それにしても、よく調べたものだな」
千雨は、すっと隣のカンナを見る。
「あんたが生まれた物語だ」
カンナの顔から、笑みが消えた。
「聖カンナの物語は、私が生まれた物語。
今の言葉を繋げるとそういう事になるんだけど?」
「それで合ってる。そうだろ聖カンナ」
「どういう意味かな?」
静かに微笑んだカンナの手で、
皿の上のパンにすとっとフォークが突き立つ。
「だから、言っただろ。科学的な非科学上等だと」
「流石に、今のこの時代の科学だけなら、
電脳世界でこの美味はやり過ぎだろうね」
カンナの言葉に、茶々丸が一礼する。
「そうじゃないと繋がらないんだ」
そう言って、千雨は改めて英字記事が表示されたスマホを掲げる。
「それは、精神攻撃か何かのつもりか?」
「只の物証だ」
口だけ微笑むカンナに、千雨は淡々と答える。
「笑顔を失い贖罪意識に囚われた少女。
事件の事を知る、知らないに関わらず、
聖カンナを知る者は皆、聖カンナに就いてそう評価している。
事件後からつい最近までな」
「つまり、過去の話だと?」
「そういう事になる。最近の聖カンナは変わったと。
この一年足らずの事だ。家族にも友達にも恵まれた快活な少女。
それが、今の聖カンナの評価。
心境の変化なんてちゃちなもんじゃない。
分厚い黒雲が突風で綺麗さっぱり吹き飛ばされた、
そんな変わり様だ」
「それは、おかしな事なのかな?」
「本来歓迎すべき事だと思うが、客観的に見ておかしい。
おかしいかどうか、まずそれを判断して見た。
結論を言えば、明らかにおかしい。
聖カンナがそうなった経緯から言ってな」
「聖カンナがどうしてそうなったのか、
勿体付けずに口に出して言ってみたらどうだい?」
「二人が死亡し聖カンナ自身が重傷を負った拳銃暴発事故、
物理的に引き金を引いたのは聖カンナだ」
「零と壱、君が断言するなら、そうなんだろう」
「ああ、既に調べはついてる。
自らの大怪我、それ以上に二人の友人を死亡させた、
その引き金を引いた聖カンナの事件後の言動。
今の聖カンナは、過去から現在までの流れと噛み合わない。
だからと言って、全くの別人にすり替わった訳でもない。
関係者が多いだけに、流石にそれは無理がある。
余りに非論理的であり得ない事が起きた。
だったらいっそ、こう考えたらすっきりする。
これは、非科学的な現象なんだとな」
「魔法少女の契約、か」
「最初は、自分の事件の記憶だけを消したのかとも思った。
こっちの魔法にそんな都合のいいモンはちょっと見当たらない。
都合よく自分の記憶を操作するカードゲーム、
なんて都市伝説も無いではないが、
取り敢えず本人の素質があれば
無制限でピンポイントなオーダーが可能な魔法少女契約が一番適しているし、
結論としてあんたも、そして神那ニコも魔法少女だった。
遠いアメリカでの事件、法的な責任が問われた訳でもない、
日本で直接知っている者が限られているならうってつけだ」
「最初はそう思った。今はそう思わない」
「ああ、思わないね」
そう言って、千雨はスマホを見た。
「過去の惨劇、罪悪感、一人で苦しんで来た聖カンナが、
例えそのチャンスを得ても記憶を消して逃れようと考えるか?
もちろん、もう嫌になったと、苦しみを手放す事はあり得るだろう。
だが、聖カンナはそうしなかった。私はそう思う」
「何故?」
「こちらの事情でプレイアデスを調査した時にこいつを見つけた。
神那ニコ、聖カンナのそっくりさんのスマホからだ。
それも、常時と言っていい程この記事を見ている。
聖カンナは、過去の惨劇、大き過ぎる罪悪感を抱えて、
決してそれを手放そうとしなかった。
そして、非科学的上等、その中でも、
とびきりのご都合主義が可能な魔法少女の契約。
これで、理屈が繋がる」
「どういう風に?」
「もう一人の自分、理想の自分、
あの事件が無かった自分。
その一方で、現実の自分の罪悪感は、
償いを忘れる事を自分に許さなかった、
だけど、空想するぐらいは神も許すだろう。
その足を、あくまで現実に留めながら、
なりたかった理想の自分を作り出した。
それが聖カンナの魔法少女契約の概要、
私は、そう考えた」
ぱん、ぱん、ぱん、と、手を叩く乾いた音が響くのを、
千雨はつーっと汗を浮かべながら聞いていた。
「じゃあ何? 私は、聖カンナは、
聖カンナの空想上の産物って事なのかな?」
「私の推測ではそういう事になるな。
過去から契約時点までの聖カンナは、
魔法少女契約で生み出したニュー聖カンナを現実社会に結び付けて、
元の聖カンナは神那ニコと名前を変えて闇に消えた。
恐らく、一つの願い、契約に基づく包括的な効果で、
神那ニコとしての最低限の公式記録もセットだったんだろう」
「随分と、想像力が逞しい」
「だが、現実問題として、
非科学的だが一定の法則がある現実を受け入れた以上、
実際に存在する材料から私が見る限り、
それが不可能を除いた残りの真実、って事になっちまう」
「素晴らしい。流石は電子の王、君は全てをお見通し。
この時代においては、君は丸で神様だ」
「いながらにしてその目で見、その手で触れぬ事の出来ぬあらゆる事を知る。
何一つしない神様。少し前までそうだった。今も似た様なものか。
もっとも、全部が全部私が安楽椅子で検索したって訳でもないけどね」
「だったら、次に私がどうするつもりかも分析済みかい?
誰かの都合で作り出されて、
己の罪も知らずに幸せごっこを満喫して来たおめでたい私が、
そうやって、丸で神様の様に私を作り出し、高見から見下ろして来た者に対して
どうするつもりでこの魂を契約に差し出したのかを?」
「まあ、どう考えても不穏な事だろうな。
割り切れるぐらいならこんな話にはなっていないだろうし。
相手が神様なら、神がやらなきゃ」
「人がやる。そのために私はこの力を得た。
祈りの心は向こうに置いて来ても、
バイブルはその役割を教えてくれた。
そう、私が何処から来た何者なのか、それを知った時にね、
何処に行くべきか、そして、何をするべきか。
私が、何を齎すために生まれたのか、そこに赴くのか」
「ルカによる福音書、か」
「Correct」
「とっさにそれが出るって、
あんたのデータベースもちっと偏向してるな」
「お互い様だ」
テーブルの下での蹴り合い、と言う比喩が相応しい空気の中、
茶々丸は綺麗に平らげられた食器を黙々と片付ける。
「そういうあんたはどうするつもりだ? 電子の王?」
「さあな、元々、こっちの都合で必要があって当たってただけの事だ。
そんなクソ重いモンどうにか出来る柄じゃない。
只、デジタルな情報、
一部は足で稼いだモンを使わせてもらったのも含めてだが、
それだけでも分かる事もある。
旨いものを食って喜び、身近な人に愛され愛する人といる事を喜び、
そして、失う事、傷付く事を悲しむ。
少なくともあんたの心は本物の筈だ」
バン、と、両手でカウンターを叩いたカンナを、千雨は静かに見ていた。
「魔法少女の事は詳しく知らない。
だが、非科学的上等に馴染んだ私として、知ってる事はある。
一歩前に進むための、願いをかなえる魔法の契約は、
宿った心がその意思を決める、生きている魂と結ぶものだってな。
私が知ってるのは、その程度の事だ」
「………美味しかったよ、ご馳走様」
横を向いたカンナに、茶々丸が一礼した。
カンナが、数秒間茶々丸をじっと見る。
「私にとって害はなさそうだし、
ここで不利な喧嘩をするメリットは無い」
「それは、利害が一致して助かる」
「チャオ♪」
ーーーーーーーー
あすなろ市内のビルの屋上で、望遠鏡を覗いた聖カンナはくっくっ笑い出した。
「おいおい、派手に喧嘩売ってるじゃないの魔法使い………」
そして、左手でスマホを見る。
(魔法使いは何処迄把握して何処迄介入するつもりだ?
長谷川千雨、電子の王………最悪を考えるなら、
PCにスマホ、ラボも全てハッキングされたとしたら………)
………チリン………
「………教えて………」
「ん?」
「貴方の名前」
「我々は何者なのか!?」
振り返ったカンナの手にしたバールと天乃鈴音が振るった剣が激突した。
「アテンション!」
「!?」
バールと剣が弾けた刹那、
左手からの叫びと共にカンナの意識が強烈に左手に引っ張られる。
同性から見ても美人な、スタイルのいい同年代の魔法少女の姿が
嫌でもカンナの目に入る。
次の瞬間には、カンナは新手の敵による銃撃をまともに受けて、
それと共にカンナの魔法少女の変身自体が解除され、
カンナは丸腰状態で鈴音の剣と死神規格の鎌を向けられていた。
「なんなんだ、あんたら?」
「初めまして、私は奏遥香。
ホオズキ市で魔法少女グループのリーダーをしています」
「堂々とした縄張り荒らしだね」
スタイル美女の言葉にカンナが毒づく。
「それなんだけどさぁ」
口を挟んだのは、
カンナに鎌を向けているツインテールの魔法少女成見亜里紗だった。
「あんたがけしかけた双子もどきの変態牝郎がこっちで悪さしてくれてね。
スズネっちが追っ払ったからカナミは無事で済んだけど、
大元叩こうって事でこっち来た訳。
ま、それは口実で借りを返しにってのも大きいんだけどさ」
「何を………」
「なんか、あんた随分物騒な事計画してるんだって?
文字通りの世界平和ってなると、
結局こっちの縄張りにも引っかかるしね」
「世界の平和、ね」
刃を向けられながら、カンナはくっくっ笑い出す。
そんなカンナの前に、
フードを被った白いローブ姿の魔法少女が姿を現した。
「そんな訳で、あんたは全部喋ってもらってから地元に任せるから。
ま、周りに迷惑かけるのは程々にして、
精々当事者同士でドツキ合って解決するんだね」
「おーおー、あんたが言うと重みが違うわ」
亜里紗の茶々を聞き流しながら、
白い魔法少女日向華々莉がフードを脱いでカンナの頭を掴み、
カンナの目を見ながら告げた。
ーーーーーーーー
長谷川千雨は、椅子の背もたれを軋ませて一言呟いた。
「只の、時間稼ぎだよ」
ーーーーーーーー
「ヒュアデス、聖カンナは確保しました。
後はこちらの領分で処置します」
「分かった。有難う詩音さん」
住まいの女子寮の一室で、
ナツメグこと夏目萌は手にしたスマホで詩音千里からの電話を切る。
ゲートの暴走事件後、
独自に御崎海香グループの内偵を進めていたナツメグだったが、
明石裕奈等の情報を得た後、秘かに長谷川千雨にも連絡、
非公式に情報をすり合わせて調査を進めていた。
アメリカに関わる当事者が多いと言う事で、
佐倉愛衣の留学時の友人に依頼してそちら側からの情報も得ていた。
最終的に、行き掛り上知り合った奏遥香のチームに
駄目元で協力を依頼した事も含め、
いつの間にかキーステーションになって
綱渡りな事をしていた状況にどっと疲れを感じるが、
であるからこそ、取り敢えず今夜の状況が確定する迄一風呂浴びて休む、
と言う訳にはいかないらしい。
「後は、メイ達がどう決着つけるか………」
==============================
今回はここまでです>>495-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>506
ーーーーーーーー
「海香、カオルっ!」
正に出撃、出陣の様相を呈した
御崎海香邸リビングで、かずみは叫んだ。
「私も連れて行ってっ!」
「待て、かずみ………」
割って入ろうとした浅海サキを御崎海香の腕が制する。
「分かった、付いて来て」
「海香!」
海香の返答にサキが叫ぶ。
「相手があの四人ならなまなかな事じゃ収まらない。
留守番が安全だと言う保障も無い。
向こうで説明する事になると思う」
「腹、くくれ、ってか」
海香の言葉に、牧カオルが空笑いした。
ーーーーーーーー
「これが隠れてたってか?」
「魔法で異界、異次元空間に隠匿していた、そんな所ですか」
あすなろ市内工業団地跡地で、
明石裕奈の魔法制限弾を受けた空間から唐突に表れた建物を見て
佐倉杏子と佐倉愛衣が言葉を交わす。
「確かに」
続いたのは巴マミだった。
「魔女の結界も異次元空間だから、こんな魔法があっても不思議じゃないわね」
「鍵、かかってるね」
唐突に現れた大きな洋館の入口を調べていた裕奈が、
玄関ドアを確認していった。
「お願いします」
「了解」
ドアを確認してそこから下がった愛衣の言葉を受けて、
裕奈がドアに魔法拳銃を向けた。
ーーーーーーーー
「凄い………」
裕奈の銃撃による魔法のロックが解除され、
建物の中に入ったマミが中の光景に呟いた。
「これ、全部テディ・ベア?」
「可愛い、けどちょっと怖いわ」
膨大と言ってもいいぬいぐるみが
夜の博物館の棚に陳列されている光景にマミと裕奈が言葉を交わした。
「明日葉、ですか」
「?」
「Anjelica Bears
この建物の名前として表の壁に書かれていました。
ベアーズは熊達、熊々、アンジェリカは人の名前かとも思いましたが、
元の意味は明日葉と言う日本の植物です。
生命力が強く栄養価も高い、医学的な薬効もありますから、
魔法使いによる研究対象にもなっています」
「なんとなく、アンジェリカってだけでもありそうな名前だけどな」
杏子の言葉に、愛衣は小さく頷いて言葉を続けた。
「前の戦いで熊の使い魔を使っていたのは若葉みらい。
漢字の意味が似ている若葉と明日葉を
当て字にした名前と見るのが自然かと」
「だとしたら、恐らく魔法少女としての願いそのものね」
愛衣の推測にマミが続く。
「建物の規模と隠匿、魔法少女の普通の魔法にしては規模が大き過ぎる。
このテディベア博物館を願いにして契約した、
そう考えるのが自然よ」
マミの推測を聞きながら、
愛衣は静かに片膝をついて床に手を当てていた。
ーーーーーーーー
「どうしたっ!?」
屋根から屋根へと移動するプレイアデス聖団御一行様。
最終目的地に到着間近と言う時、
偵察ポイントに予定していたビルの屋上で、
先行して棒立ちになった御崎海香に浅海サキが声を掛けた。
「炎の、文字?」
サキの隣で、若葉みらいが呟く。
確かに、アンジェリカ・ベアーズの屋根より少し高い空中に、
炎が浮遊しているのをサキも見て取った。
「アルファベット? アール、イー………
イー、エム………」
宇佐木里美が呟く側で、海香の顔から血の気が引き、
カオルもぐっと前を睨み付けている。
「何語?」
かずみが首を傾げる屋上で、バチッ、と、不穏な響きが伝わる。
「あ、あああああ………
魔法使いいいいいぃぃぃぃぃっっっっっっっっっ!!!!!」
「サキっ!!!」
==============================
今回はここまでです>>507-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>510
ーーーーーーーー
若葉みらいの魔法少女契約で作られたテディベア博物館
「アンジェリカ・ベアーズ」。
その中で、雷の勢いで飛び込んで来た浅海サキが、
佐倉愛衣の魔法箒「オソウジダイスキ」ですぱーんと足を払われ
テディベアが陳列されている壁際の棚へと雷の勢いで体ごと頭突きするのを、
巴マミと佐倉杏子は首を左右に動かしながら大汗を浮かべて眺めていた。
「風花・風障壁」
その間に愛衣は呪文詠唱を終え、雷の勢いで突っ込んで来た浅海サキが、
ダンプカーのカチコミにも耐える魔法障壁に雷の勢いで体当たりし、
自分が崩壊させた棚の穴へと背中から戻っていくのを、
巴マミと佐倉杏子は首を左右に動かしながら大汗を浮かべて眺めていた。
「明石さん」
「お、おう」
ガラリ、と、崩壊した棚から立ち上がり、
両手で猛獣鞭を振り上げたサキに明石裕奈の発砲した魔法制限弾が直撃した。
「なっ!? 変身がっ?」
「紫炎の捕らえ手っ!」
そして、魔法少女への変身が解除されている事に戸惑うサキに、
既に呪文詠唱を終えた愛衣からの捕縛魔法が飛ぶ。
ーーーーーーーー
「な、に、やってんだてめえぇぇぇぇっっっっっっっっっ!!!」
決して弱くはない筈だが、完全に感情に飲まれてる。
そんな浅海サキの有様を大汗浮かべて眺めていたマミと杏子は、
絶叫が聞こえた時には戦闘態勢をとっていた。
だから、殺到する熊の使い魔の群れは、
マミの周囲を包囲回転する大量のマスケット銃と
杏子の豪快な槍使いを前に次々と消滅していく。
「サキいぃぃぃぃぃっっっっっっっっっ!!!
どけやああああああっっっっっっっっっっ!!!!!」
そして、その熊の大群の向こうから
小柄な体躯と正反対のクレイモアを振り上げて絶叫する
若葉みらいが突撃して来ると、
マミと杏子はさささっと彼女の言う通りにした。
「ああああ………あああああっっっっっ!?!?!?」
「あなたの熊さん達、いいカモフラージュになったわ」
邪魔者ことごとくを一刀両断し、愛するサキを救出する。
脳内リソースをそれ以外に欠片も利用するつもりのなかった若葉みらいは、
足元から噴出した大量のリボンに雁字搦めを通り越して
顔だけ出した繭包みにされてその道行きを強制中断し、
巴マミが胸の下辺りで腕を組んでその理由の一端を告げていた。
「デフレクシオ(風楯)ッ!!」
愛衣が魔法防壁を張り、裕奈も魔法拳銃を発砲して、
博物館に飛び込んで来た光球を回避する。
「サキっ!?」
「酸欠で意識を飛ばしました、一時的なものです。
但し、ソウルジェムはこちらで預かっています」
博物館に飛び込み、声を上げる牧カオルに愛衣はむしろ淡々と答えた。
「メイ、杏子、これはどういう事なのっ!?」
次に叫んだのは、かずみだった。
「改めまして、
関東魔法協会麻帆良学園学園警備魔法使い佐倉愛衣です。
浅海サキさんの身柄はこちらで預かります」
「なっ………」
かずみの後には残りのプレイアデスメンバーも揃っており、
平然と通告する愛衣に、カオルは絶句した。
「それは、随分横暴な話ね」
言ったのは、御崎海香だった。
「横暴かどうかは、彼女に確かめればすぐに分かります。
彼女が口に出さなくても確かめる方法は幾らでもあります。
我々は、魔法使いですから………
(サギタ・マギカ・ウナ・ルークスッ!)」
「きゃっ!」
愛衣がとっさに床に飛び込みながら無詠唱で光の矢を放ち、
その一撃を食らった宇佐木里美がのけぞる。
「里美っ!!」
カオルが叫んだ時には、
里美は横っ飛びした裕奈の魔法制限弾の連射を受け、
跳躍したマミと杏子に取り押さえられていた。
「危なかったぁ、メイちゃん撃ちそうになってた」
「タイプは違いそうですが、同士討ち系の魔法少女には
最近少々痛い目を見せられましたから。
巴さん、こちらは浅海サキ一人で十分です、
こちらが見えない様に拘束しておいて下さい」
「分かったわ」
「おいっ!」
愛衣とマミとのやり取りにカオルが声を荒げた。
「お前達、魔法少女だろ。
魔法使いにこんな事やらせておいていいのかっ!?」
「あなた達から確実な情報を引き出す、
と言う点では私達の利害は一致している」
「魔法少女同士でも随分ドンパチしてたからな。
興味があるのはこっちの身内がどう噛んでるか、それだけだ」
カオルの言葉に、マミが真面目に応じて杏子が鼻で笑う。
「えっと、メイ。サキも里美も、私の大事な友達で………」
「こちらも大切なお友達の安否がかかってる」
「我々としては、サキさんが知っている事を把握したいだけです。
手荒な事はしませんし、する必要もありません」
マミと愛衣が、怖々口を挟むかずみに告げる。
「明石さん、浅海さんを運んで下さい」
「了解、先輩」
愛衣の指示も、それに対する裕奈の返答も手堅いものだった。
「待てって言ってるだろっ!!」
「Shut up!!」
声を荒げて愛衣に迫ろうとしたカオルは、
愛衣の一喝を聞きながら箒の先を向けられていた。
「そもそも、気に食わないんです」
「は?」
ぐっ、と、一歩前に出た愛衣に、
箒を向けられたままのカオルがじりっと一歩下がった。
それを見て、愛衣はどん、と、箒の先で床を叩く。
「人道上、やむを得ないケースもあるのでしょう。
but いい加減な契約で強力な魔法をデタラメに使う。
私にとっては不愉快です」
「この………」
「今更何キレてんの?」
今度こそ愛衣に掴みかかろうとしたカオルの鼻先に槍の穂先が向けられ、
その出所を見たカオルの前で佐倉杏子が鼻で笑っていた。
「だから、私達魔法使いとも不干渉と言う事になったのでしょうね。
街の裏側で魔女を退治しているだけなら
こちらからどうこう言う筋合いでもありませんが、
それで済ませるには、目に余る」
「言ってくれるね、魔法使い」
応じたのは、神那ニコだった。
「しかし、よく無事にここまで入れたモンだね」
「ああ、ここのトラップの事?
なんか随分悪戯好きって感じで色々仕掛けてあったけど、
それはこっちも負けてないからね」
ニコの言葉に、魔法拳銃を振りながら裕奈が答える。
「それで、プレイアデスはどうするの?
交渉決裂なら答えは二つ。
この四人を力ずくで取り押さえてサキを奪還するか、
それともこのまま行かせるか」
ニコが指折りして仲間に迫る。
「一つ目の選択はお勧めしません。
私としても痛い目を見たいとは思いませんし、
既に報告を外部に預けてあります。
私からの連絡が途絶えた時点で、あなた達は麻帆良学園、
否、関東魔法協会の総力で潰されると思って下さい」
「月並み、だけど破るのは難しいカードね」
「それを理解したなら、無駄な抵抗はやめて下さい」
海香の言葉にそう応じて、愛衣は片手で掲げた箒をひゅんと回転させた。
炎を浴びた箒の先を、どん、と、床に叩き付ける。
「浅海サキさんの頭の中を一から十まで強制コピーされるのが嫌なら、
まず、この封印に就いて説明して下さい」
一瞬、博物館の床に広く火線が広がり、
床は複雑な紋様を刻んでぼうと輝き始めた。
==============================
今回はここまでです>>511-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>516
「私達の魔法なのは分かるけど、かなり複雑な術式ね」
見た目で言えば、趣味のために糸目をつけない現金を丸ごとぶち込んだ
異界の博物館「アンジェリカ・ベアーズ」。
全体に贅沢過ぎるスケール、面積の中に、
更に一つ、二つのテディベアを陳列した清潔なガラスケースが
規則正しく林立する西洋風の高級意匠ホールの中で、
十分な横幅のあるレッドカーペットの通路に現れた魔法陣を見て巴マミが言う。
「コンセプトは空間と転移、そこまではなんとか分かりますが、
だからこそ、これ程の高度な術式、
作った術師の教え抜きに動かすのは危険過ぎる。
その本ですね」
佐倉愛衣が、御崎海香の持つ分厚い本に視線を走らせて言う。
「似た様なものを知っています。
魔法具によって検索した外付けの知識、魔法技術を使って、
本来は非常に緻密で高度、強力な術式を設計し、発動させた。
案内していただきましょうか?」
「分かったわ」
「海香」
難色を示して名を呼ぶ牧カオルに、海香は小さく頷く。
「巴さん、浅海サキさんの拘束を、
案内はこのメンバーでお願いします」
「お前らあっ!!!!!」
「やかましい」
リボンの繭から顔だけ出して絶叫する若葉みらいの鼻先に、
佐倉杏子が槍先をむける。
「若葉みらいさん」
愛衣が、みらいの前にツカツカ近づきながら
生真面目な口調で声を掛ける。
「これは、最大限譲歩した結果です。
争いや危害は好みません、大人しく待っていて下さい」
指先を外側に向けた右掌にバスケットボール大の火球を乗せ、
愛衣は淡々と告げた。
ーーーーーーーー
海香が魔法陣の魔法を発動させ、魔法のエレベーターの様な移動を経て、
恐らく博物館の地下と思われる扉の向こうへと移動し、
佐倉愛衣チーム、巴マミチームは共に凍り付いた表情で立ち尽くした。
「な、んだよ?」
ようやく言葉を発したのは、佐倉杏子だった。
そこは、屋内の親水公園を思わせる、一本の太い通路があり、
その真ん中を水路が通りオブジェが設置された空間だった。
そして、その通路の両サイドには、大量のカプセルが林立している。
液体の入った大量のカプセルの中でどう見ても本物の人間、
十代の少女達が意識を失っていた。
「ソウルジェム、ここにいるのは魔法少女?」
水路の真ん中に設置された
湧き水のオブジェの中に大量のソウルジェムを見つけ、
巴マミが動揺を抑え込んだ口調で言う。
「ソウルジェムを沈めているオブジェの下に魔法陣。
封印の紋様みたいですけど、それだけでは………」
オブジェを調べていた愛衣が呟いた。
「佐倉愛衣さん、明石裕奈さん」
その様子を見ながら、先頭を行く御崎海香が口を開いた。
「何が起きても対処出来る様に、腹積もりをして頂戴」
振り返った海香、カオル、ニコが愛衣達と向き合った。
「覚悟して聞いて欲しい」
そう行った海香が見ていたのは、巴マミの目だった。
「魔法少女は、魔女になる」
「何?」
目が点になったマミの代わりに、杏子が聞き返した。
「ソウルジェムの濁りが限界に達すると、
ソウルジェムはグリーフシードを生み、
魔法少女は、魔女になる」
「何を、言っているの?」
マミが、ぽかんとした口調で尋ねた。
「ソウルジェムの濁りを取るために、
私達魔法少女は魔女を退治してグリーフシード、魔女の卵を回収する。
そこまでは理解出来るわね」
「ええ」
海香の言葉に、マミが応じる。
「じゃあ、その濁りを取らずに限界迄濁ったソウルジェムがどうなるか、
あなた、知っていたかしら?」
「確かに、見た事ないな。
少なくともあたしはそんな非効率的な事はしないし」
マミに代わり、杏子が返答した。
「ご、ごめんなさい、その話、本気で言ってるの?」
「ええ、大真面目よ。
私達は過去、実際に魔女になった魔法少女を見ている」
「その、魔女になった魔法少女、は?」
「退治した。ソウルジェムは魔法少女の本体、命であり魂そのもの。
そのソウルジェムがグリーフシードとなり、
魔女が生まれてしまった後では、もう取返しが付かない。
被害の拡大を防ぐためには、殺すしかない。これが現実よ」
「じゃあ、私達が退治している魔女は」
「使い魔が成長したものでなければ、
私たちすべての魔法少女の末路」
限界を迎えていたのは、海香と問答していたマミの表情だった。
「そん、な。じゃあ、私、美樹、さんに………」
次の瞬間、「レイトウコ」と
プレイアデス聖団が呼ぶこの空間に銃声が響いた。
「なっ!?」
箒を手放し両手を振る愛衣を後目に、裕奈がマミに向けた魔法拳銃が
マミのマスケット銃の銃弾に弾き飛ばされていた。
「!?」
次のマスケットを構えたマミが硬直する。
その射線には、裕奈が両腕を広げて立ちはだかっていた。
「なんだか知らないけど、
この娘達を傷つけるつもりっ!?」
「落ち着けマミっ!!」
裕奈と杏子の叫びを聞き、マミは荒い息を吐きながら銃口を下ろした。
「大丈夫、メイちゃんっ!?」
「ええ、魔法銃に弾かれただけですから。想像以上の威力です」
マミの背後にそっと接近し、マミに「眠りの霧」をキメる直前に
恐慌した表情でマミが振り返り、
マミが発砲した銃口にとっさに魔法の箒を向けていた愛衣が青い顔をして言った。
「マミ、ソウルジェムを出せっ!」
「えっ?」
「いいから早くっ!!」
杏子に気圧される形でマミが従い、
杏子が手持ちのグリーフシードでマミのソウルジェムを浄化する。
「一つ貸しだからな。ここで濁られたら本気でヤバそうだから」
「そ、そう、魔女、魔法少女が魔女になる、って、
改めて聞くけど、本当なの?」
「ええ、本当よ」
改めての質問に、海香が根気よく答える。
「そん、な………キュゥべえ、どうして………」
「奴の正体は宇宙生物、希望が絶望に相転移して魔法少女が魔女になる。
その時に発生するエネルギーを回収して宇宙の延命に役立てている。
取り敢えずキュゥべえ自身はそう説明している。
彼らの発想に善も悪も無い、地球の人間の事なんて
そのための家畜、燃料だとしか思っていない。
嘘だと思うなら、キュゥべえに直接確かめてみるいい」
「あ、の、野郎………」
海香の説明にマミがすとんと座り込み、杏子が呪詛の言葉を吐いた。
「あすなろ市を中心に発生していた少女失踪事件。
これがその真相ですか?」
「相当数はそうでしょうね」
愛衣の質問に海香が答えた。
「理由、教えていただけますか?」
「海香………」
背後から声をかけるかずみに、カオルが小さく頷いた。
==============================
今回はここまでです>>517-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>622
ーーーーーーーー
<御崎海香の絶望>
以下略
「そうやって、絶望にとらわれ魔女の餌食になりそうになった私達を、
かずみは救ってくれた、命も、心も。
だから、私達も魔法少女となって、
かずみと共に「プレイアデス聖団」を結成した」
「最初は只、みんなで集まって、人に害を為す魔女を退治する、
楽しいパーティーだったよ」
御崎海香の説明に牧カオルが付け加え、巴マミが視線を落とす。
「だけど、飛鳥ユウリの魔女化によって私達は魔法少女の真実を知り、
魔法少女と言うシステムとの戦い、そして破戒を決意した」
「じゃあ、ユウリは………」
杏子の言葉に、説明していた海香は目を閉じて頷いた。
「ちょっと待て、かずみの記憶の事は?
こいつは………」
「かずみはかずみよ」
杏子の言葉を遮る様に海香が言った。
「魔法少女の真実を知り、色々異常な状態で魔女との戦いが続いた。
そんな中で、かずみは一時行方不明になり、
医学的なものとも魔術的なものとも判然とせずに記憶を失って戻って来た。
佐倉杏子さん、あなたの言いたい事は分かる。
だけど、彼女の頭に記憶を完全に戻そうとすると、
現実問題として拒否反応が起きてかずみを苦しめる事になってる。
だから、彼女が受け入れている「かずみ」の名前と共に
今は無理のない生活を模索している段階。
その事を理解して欲しい」
海香がカオルと共に頭を下げ、杏子はそっぽを向いた。
「海香、カオル………」
「ええ、だから、今は無理をしなくていいの」
「そうだ、かずみには私達がついてる、
少しずつ思い出していけばいい」
不安を隠せないかずみに、海香とカオルが言った。
「彼女達は皆、魔法少女なんですか?」
改めて、周囲を見回した愛衣の問いに、海香が頷く。
その背景で、カオルが通路の奥にある巨大な円柱にすとんと着地していた。
「そうよ、だから私達は魔法少女狩り、とも呼ばれている」
「何、だよそれ………」
海香の言葉に、口角を上げた杏子の足がじりっと下がる。
「全部濁ってるのは偶然じゃないよね?」
水の中のソウルジェムをすくい、かずみが言った。
「この魔法陣は、ソウルジェムと肉体を分断し、
休止させるためのもの」
「これ以上ジェムが黒くならないように?」
「そう、そして魔女化しないために、
彼女たちが人間であり続けるために」
「それだけじゃない」
かずみと海香のやり取りを、円柱の上に座ったカオルが続ける。
「ジェムを完全に浄化し、彼女たちを人間に戻す方法を見つける。
その日まで自分たちで戦い続ける。そう決めたんだ。
それがあたし達の、『魔法少女システム』に対する『否定』ってヤツさ」
「それじゃあ、あたし達の事も?」
快活なスポーツ少女の印象を離れた、物憂げですらあるカオルの言葉に、
問いかける杏子の手は僅かに強く槍を握る。
「ええ、本当であればこの中に加えたい。
だけど、魔法少女の中でも有力者で知られるあなた方が
魔法少女の真実を知った今、
敢えてそれをやる優先順位は低くなった」
「そりゃどうも」
海香の返答に、杏子が笑みに殺気を込めて答える。
「その方法が見つかる迄、こうやって眠り続けてる、って。
そうしないと魔女になる、から………」
少女達が液体に沈むカプセルを見回しながら、
裕奈は自分の言葉を頭の中で反芻する。
「Sleeping Beauty」
「Yes その時迄、王子様のキスを待って眠り続ける」
愛衣の呟きに、神那ニコが答えた。
「だけど、王子様なんて待ってられない」
カオルが続けて言った。
「だから、私達はあらゆる手段でその方策を探し続けた。
この本でも足りなかった。
だから、魔法使いの知恵も借りようとした。
そちらの、麻帆良学園の図書館島にも侵入してね。
微かな情報から魔法使いの情報を少しずつ集めて、
図書館島なら役に立つ情報があるのではないかって」
海香がカオルの言葉に続いた。
「お役に立てましたか?」
「今の所は何とも言えない。
確かに、図書館島の奥地は私達にとっても危険過ぎる場所。
それでも少しずつ、
そちらの監視を掻い潜りながらの探索を続けていたけど、
何か強力な魔法の発動を察知して、
危険過ぎると言う事で撤退した、それっきりよ」
愛衣の問いに海香が答える。
「じゃあ、鹿目さん達、ゲートが起動した事は知らない、
そう言いたいの?」
「よく分からないけど、私達は図書館島で本を探していただけ。
それ以上の事は知らないわ。
魔法使いと関わる事も、思い当たるのはそれだけね。
そちらの秘密の文献に勝手に接触しようとしたのは
そちらにとっては不都合だったと、それは認める」
マミに対する海香の返答を聞き、
愛衣はすー、はー、と深呼吸した。
「分かりました」
「え?」
愛衣の返答に、カオルが思わず声を上げた。
「前から申し上げていますが、元々魔法使いと魔法少女は不干渉です。
魔法少女同士の事であれば、我々が敢えて介入する事はありません。
図書館島を勝手に使われては困りますから、
その点は上に報告してしかるべく対処する事になると思いますが、
率直に言って、管轄違いの面倒事に巻き込まれるのは御免です。
後はそちらで片を付けて下さい」
「佐倉さ、メイさん?」
「お、おう」
言いかけたマミにちらっと視線を走らせ、杏子が頷いた。
「あんたらのご大層な志は分かったよ。
けど、風見野と見滝原には手を出すな。
少なくともあたしは、魔女なんかにならない様な上手くやる。
見滝原の魔法少女に手を出したら、
百戦錬磨の大ヴェテラン巴マミ先輩に踏み潰されるぞ」
「え?」
「なあ」
「え、ええ、そうね。理屈は分からないでもない。
だから、あすなろ市での事は敢えて口出ししない。
だけど、見滝原に、特に私の後輩達に手を出すと言うのなら、
黙って見ている訳にはいかないわ」
杏子から唐突に名前を出され、
戸惑いを見せていたマミも通告しながらペースを取り戻した様だった。
「先程は言葉が過ぎました、ごめんなさい」
「いや、いいよ。こっちも色々まずい事はあったんだし」
円柱から大ジャンプして着地したカオルに愛衣が頭を下げ、
カオルは手を上下させてとりなす。
そのカオルの手が、バスケットボールを受け取った。
そこに書かれた、
「Yuna 2on2」の文字にカオルが顔を綻ばせる。
「時間があったら、赤外線でアドレスでもしたかったんだけどね」
「これ以上の深入りはお互いのためになりませんので」
「そうね、面倒をかけて悪かったわ」
裕奈と愛衣の言葉に、海香が応じた。
「大丈夫、かずみ?」
海香が、俯くかずみに声を掛ける。
「うん………魔法少女狩りはユウリのことがあったからなんだね?」
海香に肩を掴まれながらかずみが言い、
そんな二人に愛衣が一瞬鋭い視線を走らせる。
「………みんな疲れてる」
口を挟んだのは、オブジェの上のカオルだった。
「今日は、お開きに出来ないか?」
「見た所、そちらの御崎さん、神那さんがいれば
上のメンバーを縛っているリボンの拘束は解除出来そうですけど、
どうでしょうか?」
「Yes なんとかなると思うよ」
愛衣の言葉に、ニコが応じた。
「それでは、元の場所に戻って、そこで解散と言う事で」
ーーーーーーーー
「巴さん」
「アンジェリカ・ベアーズ」を出た後の夜のあすなろ市内の路上で、
愛衣がマミに声をかける。マミの顔色は未だ良くない。
「大丈夫、ではないと思いますが」
「ええ、今でも吐き気がする。
だけど、ずっと知らないよりはマシ。お礼を言わないと。
それに、銃を向けたお詫びも」
「いえ、部外者が立ち入った事を。
それに、勝手に魔法をかけようとしたのはこちらですから」
マミと愛衣が互いに頭を下げる。
「頼むぜ」
口を挟んだのは杏子だった。
「見滝原の方は、
取り敢えずマミ先輩があいつらへの重石、って事になってんだ」
「ええ、有難う。そう仕向けてくれて」
にこっと笑うマミに、杏子はそっぽを向く。
「もういいわ。どっちにしろ、私には選択の余地なんてなかったんだし」
「?」
んーっと腕を伸ばすマミを、愛衣達は見ていた。
「小さな頃に、両親と一緒の車で交通事故に遭って、
子どもでも自分は死ぬんだってそう思った」
「それが、魔法少女契約の理由ですか」
「そう。本当なら家族みんなが助かる事を願うべきだったんだけどね。
それも、今更言っても仕方がない事よ」
「………死にそうになって命が助かる事を願う。
単純すぎてその善悪を考える事すら馬鹿げています」
「うん、他に言い様がない」
辛い微笑みを作るマミに愛衣が告げ、裕奈も素直に従う。
「私達は部外者です。只、さっき相対してはっきり分かりました。
巴さんは常時魔女と戦う世界を、一生懸命生きて生き抜いて来た人だって」
「私なんて二回銃口向けられてるからね。当然分かるよ」
「そうじゃなきゃ、魔法少女なんて何年もやってらんねぇよ」
「じゃあ、そうして下さい」
杏子の言葉に、愛衣が言う。
「全てが上手くいかないなら、限りある生命で最もマシな選択を。
部外者としては他に言うべき事もありません」
「私は好きだけどね、マミさん達の事。
片が付いて気が向いたら又遊びに来てよ」
「そうさせてもらうわ」
「このかお嬢にもよろしくな」
「それでは、
私達はこれから少し報告のための打ち合わせがありますので」
「へーへー、こっからは魔法使いのお仕事ですか」
「すいませんがそういう事になります」
「鹿目さん達の事は結局振り出し」
杏子と愛衣のやり取りにマミが口を挟む。
「はい、この後の状況次第ですが、
私達も用事を済ませてなるべく早くこちらから連絡します」
「分かった。あくまで鹿目さんの安否が優先だから」
「それでは」
マミと愛衣の合意が成立し、魔法使いと魔法少女が左右の道に分かれた。
ーーーーーーーー
「!?」
魔法少女と別れて少し進んだ所で、裕奈は後ろから愛衣に飛び付く。
愛衣は、脱力で脚が一度に崩れていた。
「す、すいません」
「大丈夫じゃないって、それ、メイちゃんの事だよねっ?」
「は、はい」
荒い息を吐きながら立ち上がろうとした愛衣が、
向きを変えて裕奈に抱き着いた。
「(めっちゃ震えてるんだけど)
あの、大丈夫じゃないって、熱とかある?」
「いえ、それは大丈夫、だと思います。
只、今になって、凄く、怖く、すいません」
切れ切れに言いながら俯く愛衣を、裕奈がぎゅっと抱き締めた。
「いいよ、あの場にいたら怖くて当たり前だよね。
私だって怖かったし、それに、
メイちゃんが矢面に立って、頭いいから余計にね」
愛衣が小さく頷き、ゆっくり呼吸を整えた。
そして、二人は近くに屋根つきのバス停ベンチを見つけ、腰かける。
「あ、すいません」
「ああ、いいよそのままで。お疲れ様」
裕奈に言われ、裕奈の隣に座った愛衣は
裕奈の腕に自分の体重を預け続ける。
「ごめんなさい、あの、有難うございます。
私は言わば正統派の魔法使いの見習い、それだけです。
実戦慣れ、殺し合いをして来た未知の存在である魔法少女の集団相手に、
明石さんがいてくれたから辛うじて踏ん張れた」
「有難う。メイちゃん凄く格好良かった。
それで、凄く無理してた。
魔法少女相手に魔法協会、魔法使いを背負ってさ」
「明石さんが背中を守ってくれたから、
あの夏、あの世界を救う只中にいた3Aメンバーの明石さんが」
「それは、メイちゃんも同じでしょう。
あの時の事改めて確認したけど、高音さん達、
危険な現場に踏み止まって命懸けで戦い抜いた、メイちゃんも一緒に。
あの夏も、今回も、魔法協会、魔法使いとして
譲れないものがあるってみんなの背中に教えてもらってる」
「後輩に、余り格好悪い所は見せられないですから」
「そうだね。だから、メイちゃん、佐倉先輩が上に行く時には、
私は下から支えられる様に頑張るから」
「とても期待してます」
「あ、はは、参ったな」
苦笑いする裕奈の横で、愛衣は座り直し、んーっと伸びをする。
「大丈夫?」
「はい。私の背中、明石さんが守ってくれるんでしょう?」
「うん」
裕奈の返事と共に、愛衣は立ち上がった。
「それじゃあ、余り時間がありません」
「そうだね」
裕奈が立ち上がった。
「それでは、もう一仕事、済ませましょう」
「OK Boss」
==============================
今回はここまでです>>523-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>533
ーーーーーーーー
「楽しんでいただけましたか?」
魔法世界、メガロメセンブリアの高級ホテルのホールで、
照明が復帰する中でゲーデル総督が鹿目まどかに声をかけた。
「は、はい」
まどかは、ようやく気が付いたと言う状態でゲーデルの問いかけに応じる。
「それでは、ゲートの、旧世界への帰還の準備を行います。
準備中はこちらで部屋を用意しました。
何日もかかると言う事にはならないと思いますが、
刹那と共に寛いで待っていて下さい。
今なら個室風呂も使えますが、いかがですか?」
「えーと………」
「到着まで割と長かったですし、
折角ですからいただきましょう」
「はい」
ちらっとまどかが視線を送った桜咲刹那が素直に応じ、
まどかもそれに従った。
ーーーーーーーー
「ウェヒヒヒ………」
うつ伏せに岩盤浴をしながら変な笑いが漏れる辺り、
疲れているのだな、と、まどかは自覚する。
案内された個室風呂はちょっとした銭湯とでも言うべき規模で、
こうして岩盤浴もオプションについていた。
取り敢えず、色々あり過ぎたが大きな怪我も無く無事帰る事が出来そうだ、
と分かって少しほっとする。
そして、隣の刹那に視線を向ける。
(………ほむらちゃんに似てる?)
まどかの知る刹那は、優しい先輩だった。
一見凛々しい女侍だが、まどかにはしばしば優しく微笑みかけて、
何故か矢鱈と危ない事に巻き込まれるまどかを安心させてくれた。
そんな刹那が、静かにその身を休めている。
端正で、クールな横顔が、時間で言えば
ごく最近まどかのクラスに転入して来た転校生を連想させる。
「そろそろですね」
「はい」
砂時計を見て、二人は身を起こした。
ーーーーーーーー
「ウェヒッ!」
さっと掛け湯の後の水風呂に、
まどかは声を上げながら身を震わせる心地よい落差を堪能する。
刹那も、悪い汗を搾り取った後のその身を心地よく冷やして、
水風呂を上がる所だった。
(色、白い。京都の人だからかな?)
その刹那の後を追いながら、まどかは心の中で呟く。
最近温泉を共にした近衛木乃香もそうだったが、
こうして見ると刹那も如何にも肌理の細かそうな、
絹の様に色白な肌をしていた。
グラマーと言うタイプではない、
年齢的にはむしろ小柄で、普段着では華奢にも見える刹那であるが、
それを言うならまどかも同様である上に刹那の方が一つ年上である。
そんなまどかから見た刹那は、
全体に引き締まって均整の取れた如何にも凛々しい女剣士。
それでいて、客観的にも最近ぐっと女っぽくもなった、
そんな優しく魅力的な先輩だった。
「凄かったんですね」
ちょっとした銭湯程もある個室風呂の主浴槽で、
熱めの湯に浸かりながらまどかが言った。
「さっきの映画で刹那さん達、
あんな風に、ネギ先生達と一緒に
この夏休みにこの魔法世界を本当に救ってたって」
「実際、否定する程間違っていない内容だったとは言え、
ああして劇的に作られると少々照れますね」
「ウェヒヒヒ」
まどかの隣で刹那が言い、双方苦笑いを交わす。
「この魔法世界に来てから、なんか随分色々VIP待遇だと思ったら」
「まあ、大半はこれが理由ですね。
鹿目さんを巻き込んでしまった状況では本当にありがたい事です。
色々助かりました」
「本当に、こっちの世界に来て刹那さんが一緒じゃなかったらって、
今考えるとぞっとします」
「まあ、ある程度知識があれば本来はそれ程怖い場所でもないんですが、
本来、魔法に関わる人間しか来る事の出来ない場所ですので」
「そう、ですね。色々あったけど、
いい人達にも会えたって、そう思います」
「ええ、そういう事です。
それは我々が普段暮らしている世界と変わりません」
ーーーーーーーー
「サキ、サキっ」
「ん、んー………」
目を開いた浅海サキは、早速に若葉みらいに抱き着かれていた。
頭の回転を取り戻し、周囲を確認する。
身近にいるのは若葉みらい、宇佐木里美、神那ニコ、
馴染みのある面々だが、どうも足りない。
場所は、これ又馴染みのある「アンジェリカ・ベアーズ」の一角。
そう、あの魔法使いにやられた辺り
「魔法使いっ!!」
「ちちちちょっと待って、サキ、体の調子はっ?」
「大丈夫だっ!」
ぐわっと立ち上がろうとしたサキにみらいが叫び、
サキが怒鳴り返した。
「かずみはっ!?」
「海香とカオルが連れて帰った、色々あって疲れてたからね」
「じゃあ魔法使いはどうしたっ!?」
「帰ったみたいだよ、どうやら話が付いたからね」
「は?」
ニコの返答を、サキはぽかんと聞いていた。
「彼女達には「レイトウコ」を見せた、
基本的な事はバレてたからね。
それで、魔法少女が魔女になる事、魔女化を防ぐために、
完全な解決が出来る迄魔法少女狩りを行っている事を説明したら、
魔法使いは納得して帰って行ったよ。
これ以上危ない事には関わりたくない、
魔法少女だけの事なら魔法使いの管轄外だから勝手にしろってね。
図書館島の事だけ、これから厳しくなりそうだけど。
魔法少女の巴マミと佐倉杏子も、
縄張りの見滝原、風見野にさえ手を出さなければこれ以上口出しはしないって」
「なんだよ、人騒がせな………」
ほっと脱力しそうになったみらいが、ぎりっ、と不穏な音を聞いた。
「冗談、じゃない」
「えっ?」
サキの言葉に、みらいが聞き返した。
「あの、火文字の意味が分からないとでも言うのかっ!?
海香、カオルは何処にいるっ!?
かずみ、かずみを守らないとッ!!」
ニコは、狼狽そのものに言葉を吐き出し続けるサキと
ひんやり暗い眼光のみらいの姿を腕組みして見極めていた。
ーーーーーーーー
あすなろ市内のスーパー銭湯、
閉店時間が比較的遅いその施設のシャワーコーナーで、
佐倉愛衣と明石裕奈はシャワーを浴びていた。
二人がさっぱりとして振り返った所で、
タオル一本下げた御崎海香、牧カオルと遭遇する。
「来てくれたんだね」
「赤外線用のインクで書き込まれたアドレスと時刻。
それに付き合わざるを得ない理由もあったから」
裕奈の言葉に、頷くカオルの隣で海香が言った。
そこで、シャワーを離れた四人は、
まずは互いの持ち物を確認する。
タオルの他は、パクティオーカードまたはソウルジェムだけ。
取り敢えず、相手の戦闘開始には対応出来る事を双方確認する。
「それじゃあ、次の即売会向けの企画、聞かせてもらおっか」
浴室内の混雑は既にピークを大幅に過ぎていたが、
裕奈がチラと周囲に視線を走らせて言い、一同が小さく頷いた。
ーーーーーーーー
「取り敢えず、先程の博物館で私達とは決着した、
とは思っていないですよね?」
丁度無人だったサウナに愛衣、海香等四人が移動し、愛衣が口火を切った。
「佐倉さん、私の見る限り、
魔法少女の真実に対してあなたはかなり冷静だった。
知っていたの?」
「直接は知りません」
海香の問いに、愛衣が答える。
「見当は付きました」
「魔法少女が魔女になるって?」
「ですから、直接は知らなくても、
十分考えられる事態であると」
カオルの問いに、愛衣は答える。
「やっぱり、落ち着いてるな」
「それが、魔法の歴史ですから」
カオルの言葉に、愛衣は落ち着いた口調で続ける。
「魔法使いにはどう見えるのか、
忌憚のない所を聞かせてもらえるかしら?」
海香が尋ねた。
「私個人の意見で、魔法協会を代表するものではありませんが」
「聞かせて」
重ねて問うカオルに、愛衣は頷いた。
「メフィストフェレス」
愛衣の第一声に、海香は薄い笑みを浮かべる。
「キュゥべえが何者であれ、魔法少女の様な契約は悪魔の契約。
立場、経験上、私達はその事に現実感、リアリティを持っています」
「後からよく考えたらそうかも知れないけど、
事前に知らないで今迄の常識と言うか科学を
目の前で否定されたら引っかかるかもね」
「それで、見た目と声が反則ってのがね」
愛衣の言葉に裕奈が腕組みして言い、カオルが付け加えた。
「その様な都合のいい、絶対的な程の奇跡を売り歩く者がいたら、
間違いなく途方もない代償を支払う事になる。
まず、途方もない欲望を満たす術がある事はある、
但し、その契約は基本、身を滅ぼす。
稀代の術師であっても、捻じ曲げられ何倍もの力で戻って来る
条理の反動をまず避けられない、と言う事を前提にそう考えます。
情において忍びない事は多いと思います。
それでも、契約をして報酬を得ながらその代償を踏み倒そうとする事自体、
限界の中で少しずつでも進もうとする立場からは
随分と虫のいい話にも見えます」
「理屈、通りね」
「その様な契約が通常になった魔法少女の世界と
私達の世界がいつしか不干渉になったのも、
そのリスクと、それでも引き付けられる人の心に
直面し続けて来た結果なのかも知れない。
私は人の手で、少しでもよりよい事をしようと、
そのために、私は勉強を、修行を重ねて来ました」
「日本だけではないわね。
アメリカにもそうした所が?」
「あちらの魔法学校にも留学した事があります」
「あるんだ」
愛衣の返答に、カオルが愛衣を見直す。
「そ、この娘、メイちゃん、私よりも年下だけど魔法使いの先輩で、
魔法協会のエリート候補生だから
あんまり甘くみない方がいいよ」
「本当に頭の悪い相手よりは話が通じるのは助かる、
例え敵になったとしても」
裕奈の言葉に、海香は静かな微笑みと共に答えた。
「私達が学んで来たのは、先人達の失敗の歴史です。
欲望に溺れ力を欲し、一時の契約でその身を滅ぼした者、
耐えられない悲しみ、喪失感を諦める事が出来ず、諦めきれずに、
喪ったものを条理を超えて取り戻そうと足掻き続けた人達。
そこから、僅かな勇気を僅かにでも形にする事を学んで来た」
愛衣は、横に座る海香、斜め上に座るカオルを見据えた。
そして、愛衣は口を開く。
「
Rewrite emeth to meth
」
==============================
今回はここまでです>>534-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>543
ーーーーーーーー
「タツヤくんお久しぶりー」
「こんにちはー」
その日の日暮れ後、鹿目家の玄関で、
腰をかがめた早乙女和子が鹿目タツヤに笑顔を向けていた。
「大きくなったねー」
「いつぶりだっけ? あっと言う間だなー」
タツヤの母親、鹿目詢子が腰に手を当ててカラカラ笑う。
ーーーーーーーー
「ごちそうさまー」
「ご馳走様でした」
あすなろ市内のビストロ「レパ・マチュカ」で、
同席した鹿目タツヤと早乙女和子がほぼ同時に挨拶をする。
三人とも評判のいいハッシュドビーフにアイスクリームも付けての食事だったが、
子ども向けにも作ってくれた料理にタツヤもご満悦だった。
ーーーーーーーー
「私まで悪いわねー」
詢子の運転する車内で、
時折チャイルドシートのタツヤとお話しながら和子が言った。
「知久は昔の友達と珍しく呑みで、まどかは学校公認の受験合宿だからな」
「ええ、色々あって予備校との合同企画のサンプル抽選に当たったから」
「仕事でもらったあすなろの地域クーポン、そろそろ有効期限なもんで」
「で、最後に一杯ひっかけて運転は私と」
ーーーーーーーー
「おいおい、危ないぞ」
あすなろ市内のスーパー銭湯の脱衣所で、
脱衣も途中でたたたっと駆け出したタツヤに詢子が言う。
詢子が慌ててスカートをすっぽ抜いた時には、
タツヤはすてーんと床に伸びていた。
「うー」
「大丈夫?」
タツヤが顔を上げると、しゃがみこんだ千歳ゆまが覗き込んでいた。
「ほらほら、お姉ちゃんに笑われるぞ」
「うー」
「よしよし」
頭上に詢子の言葉を聞き流し、
唸りながら立ち上がったタツヤの頭をゆまが撫で撫でする。
「お友達かい?」
「うん」
そんなゆまに祖母が声をかけ、
ゆまはにぱっと笑って返事した。
ーーーーーーーー
「Rewite emeth to meth」
スーパー銭湯の浴室で、詢子達が一風呂浴びてサウナに入ると、
丁度、四人の先客が何やら話し込んでいる所だった。
四人組は、詢子がドアを開けると、ちらとそちらを見てめいめい立ち上がる。
取り敢えず、娘のまどかと同年代かと、鹿目詢子は最初にそれを思う。
4人の少女達は詢子達とすれ違う様にサウナを後にするが、
恐らく2on2のチーム。
何処かぴりっとした緊張感を詢子は嗅ぎ取るが、
取り敢えず見た目はカタギの少女達で、
今の詢子には関わりのない事でもあった。
「ん?」
そして、サウナに入った詢子が来た道に目を向けると、
千歳ゆまがベンチによじ登っている所だった。
「おい………」
次の瞬間、詢子は、火のついた様な泣き声を聞いた。
「おいっ!」
そして、大声と共に頭を抱えて床にしゃがみこんだゆまに
詢子と和子が駆け寄る。
「どうしたっ!?」
「熱い、熱いっ」
「熱いっ? 何処が?」
「お手手」
ゆまは、すすり泣きながら右手をぶらんと差し出す。
「んー、火傷はしてないな、
熱いの触ってびっくりしたか?」
「うん」
「よしよし、熱い所あるから気を付けろよー」
「よしよし」
タツヤがゆまを撫で撫でするのを見て、
詢子がくくっと笑いを噛み殺す。
それを見て、ゆまもにこっと笑みを見せた。
「おばあちゃんは………」
「ゆまちゃん」
ドアが開き、ゆまの祖母が入って来る。
「ああ、いたいた、ゆまちゃん」
「ああ、すいません。タツヤにくっついて来たみたいで」
ゆまの祖母と詢子がぺこりと頭を下げる。
「さ、一緒にお風呂入ろうね」
祖母が言うが、ゆまは首を横に振る。
「サウナ入りたいのかい?」
「うん」
「困ったねぇ、一緒に入りたいけどお婆ちゃん血圧がねぇ」
「ちょっとだけここで預かりましょうか?
この娘、意外と頑固でしょう。すぐに連れて行きますので」
「そうですか、すいません。
ゆまちゃん、こっちのお母さんの言う事聞くんだよ」
「うん」
「よーし、じゃあ、タオルの上にゆっくり座るの。
木の所は熱くないからなー。
ちょっとでも気持ち悪くなったらすぐ言うんだぞ」
「うん」
ーーーーーーーー
「っつぅー………」
サウナと掛け湯で芯迄火照った佐倉愛衣の全身に、
水風呂の冷たさが突き抜ける。
「………………!?!?!?」
「にゃははー、脳味噌筋肉の割には結構脂肪分詰まってるねー」
ぶるりと身を縮めてその落差の心地よさに浸る愛衣に、
背後からそーっと接近していた牧カオルに背後から抱き着き、
両掌を前に回した明石裕奈がカオルの耳元で笑っていた。
「誰がだよっ!? 大体、それを言うなら、
あたしの背中に当たってるその凶暴な弾力はなんだっ!?」
「バスケットボールかにゃー?」
「それで、どんだけ揺らしてダンクしてんだっての」
「そーなの、最近運動のジャマでー」
「呪殺するぞ即席ホルスタインっ!
うらうらハンドリングハンドリングハンドリングーッ!」
「ハンドリングのハンドだっ、反則だにゃー」
「こほん。お子様の躾と言うか、
お子様以下の事は少し控えては?」
「すいませんすいませんすいません」
一足先に水風呂を上がった御崎海香が腕組みして二人を見下ろし、
その側で愛衣がぺこぺこ頭を下げるのを、
詢子が苦笑いして手を上下させる。
「よいしょっと、君達きょうだいかなー?」
水風呂を上がった裕奈が、横並びに立つタツヤとゆまに声を掛け、
ゆまが首を横に振る。
「へえー、じゃあカップルかにゃー。
いい、ああ言う大人になったら駄目だからねー」
「一人でなーに言ってんだゴラアッ!!」
裕奈の背後から怒号が響き、
体を前に倒し、二人に視線を合わせていた裕奈を
指をくわえたタツヤがじーっと見ていた。
「いーい、こうやってやるだけやって
バックれる様な大人にだけはなっちゃ駄目だからなー。
で、君、サッカーやるの?」
「さっかーさっかー」
「おー、ボールは友達」
「ともだちー」
「よしよし」
しゃがみこんでタツヤの頭を撫でるカオルを、
ゆまがじーっと見ていた。
「ふふーん、年下の男の子を上手く手懐けるにゃー」
「人聞きが悪いっ、大体、アンタがふざけた事言うからだろうが」
「人のせいにするのー? やだねーこういうお姉ちゃん。
今度一緒にバスケしようか」
「何言ってんだあんたはっ!?!?!?
よーし、いい加減決着を………」
「望む所だにゃ………」
「………反省」
「して下さい………」
「「すいませんでした」」
燃え上がる炎とゴゴゴゴゴゴゴゴと言う効果音と
黒目の消えた両目をイメージ映像に、
腕組みしてV字の横並びに立つ海香と愛衣を前に、
裕奈とカオルは深々と頭を下げる。
「まあ、友達困らせるのも程々にしとけよ、
やんちゃとセクハラも、って言うか今はセクハラとか普通に駄目だから」
「ほんとーにすいませんでした」
腕組みする海香に睨まれ、タツヤとゆまにじーっと見られながら
裕奈とカオルは体を折って深々と頭を下げ続け、
手をパタパタ上下させて苦笑いする詢子に愛衣ももう一度頭を下げる。
「ほら、行くぞタツヤ」
「ゆまちゃんも、お婆ちゃんの所に行こうか」
「「はーい」」
(お姉さん、じゃないよね………)
和子と談笑しつつ子どもを連れて行く詢子を見送りながら、
愛衣は心の中で呟く。
どうも母親の友人らしい女性も年相応に落ち着いた美人の部類に入るが、
あの母親は、もしかしたら元はいわゆるヤンママ、なのかも知れない。
子連れにしては若々しくスタイルのいい、溌溂とした美人だと、
愛衣は理屈に直せばそんな事を考えて、若輩ながら感心する。
ーーーーーーーー
「言っておきますが」
浴場を歩きながら一度とんとん肩を叩き、
はあっと息を吐いた愛衣が口を開く。
「さっきも言った筈ですが、もしここで私に何かがあれば、
確定的に困った事になるのはあなた達の方ですので」
「う、うん、まあ、
ちょっとした気の迷いって言うか、すいませんでした」
愛衣の言葉に、カオルは後頭部を掻いて笑って謝る。
「ま、メイちゃんの背中は私が任されてるんで」
「だな」
「いい人ですね」
何故か裕奈と意気投合するカオルを見て、
愛衣が海香に声を掛ける。
「元気で友達思いで、そして本当は凄く賢い」
「そちらのパートナーも」
海香が言い、愛衣が頷く。
「カオルも、裕奈さんも。
小難しく考えてる横で、何が本当に大事なのかが
直感で分かるんでしょうね。
そして、それを貫く意思を持っている。
根性って言ってもいい」
「はい」
「じゃあ」
少し先を歩いていた裕奈が振り返って口を開いた。
「今度作るゲームの事、少し詰めようか」
==============================
今回はここまでです>>544-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>551
ーーーーーーーー
「………」
あすなろ市内のスーパー銭湯フードコートの小上がりで、
ソフトクリーム片手に祖母の下に向かっていた千歳ゆまが
ふと視線を感じて振り返る。
「駄目だぞタツヤー、
さっき食べただろ、お腹ゴロゴロになるからなー」
「はいタツヤ君、たこ焼きフーフーするよ」
母親と、母親の友人の和子お 姉さんに呼び戻され、
鹿目タツヤがトテトテ別のテーブルに向かう。
「おいしー」
「じゃああたしも一つ。
ほらタツヤ、こっち一つ食うか? 塩とタレどっち?」
「運転しないからってあんまり飲み過ぎないでよ詢子」
「いやー、ここ飯もツマミも結構イケるって評判だからなー」
選り分けた焼鳥を見様見真似に爪楊枝で一つ頬ばっていたタツヤが、
もう一つ、タレ焼鳥をぷすりと刺して歩き出す。
「食べるー?」
すっと目の前に差し出されて、ゆまは目をぱちくりさせる。
「………」
くっくっ苦笑いする詢子の横で、和子は、
そう言えば、三人和気藹々なこちらをやけに見ていたなあの娘、
と、ふと思い返す。
「ええと………」
きょろきょろ見回したゆまは、祖母と詢子が笑って頭を下げるのを見て、
ぱくりと口に入れた。
「美味しい、有難う」
「ありがとー」
「どういたしましてだろー、
うちののプレゼント貰ってくれてどうもー」
カラカラ笑う詢子に、ゆまもにっこり笑って応じていた。
ーーーーーーーー
「頼む」
女湯の浴場で薬湯に浸かりながら、牧カオルは頭を下げる。
「かずみを助けて。
いや、かずみには手を出さないでくれ。この通りだ」
そんなカオルの頭が向いている先で、
佐倉愛衣は伏し目がちに首を横に振る。
「あなた達は和紗ミチルさんに救われた」
愛衣の声を聞き、カオルは顔を上げる。
「あなた達は和紗ミチルさんの導きで魔法少女になった。
和紗ミチルさんは明るく、優しく逞しいリーダーだった」
「あ、ああ、そうだ。ミチルはそんな、
掛け替えのないリーダー、仲間だった」
愛衣に迫る様に言うカオルの背後で、
御崎海香が僅かに眉を顰める。
もう、九割方無駄だと分かっていても、それでも、
相手の術中に飛び込んでいるカオルに対して。
「魔法少女は魔女になり、そして、
魔法少女に討たれてグリーフシードと言う形で糧となる」
「あ、ああ………」
「それでは、かずみ、とは誰なんですか?」
「かずみは、かずみだ」
厳しいぐらいに硬い愛衣の問いに、カオルは答えた。
「かずみはかずみ、
あたし達の大切な友達、大切な仲間だ。だから………」
「只、習っただけじゃない、アメリカ英語を使い慣れた日本人。
私が見たかずみさんです。
和紗ミチルさんは、アメリカに長期留学していますね。
義理の祖母の死をきっかけに帰国している。
集められるだけのサンプルで比較しても、
最新の電子的鑑定の結果では、かずみさんと和紗ミチルさんは同一人物。
少なくともその事を否定出来ない程度には外見が酷似している。
そして、昨年以前の和紗ミチルさんの周辺に、
双子の姉妹がいたと言う形跡は欠片も無い。
かずみは和紗ミチルのかずみ。記憶を喪った同一人物。
そう考えるのが一番自然です」
「そ………」
「科学しか知らない、知識でしか魔法を知らない人なら、
そういう結論を出したでしょうね」
言いかけたカオルに、愛衣は被せる様に言った。
「私は、かずみさんに触れています。
そして、あのレイトウコで、
説明が終わったその瞬間に立ち会っていました、
かずみさんと一緒に、魔法使いとして」
改めて、ぐっと前を見るカオルを愛衣は見返す。
「かずみさんは言っていました。
御崎海香さん、神那ニコさんは魔法分析の天才だと。
あの博物館、レイトウコを見て私は確信した。
魔法少女の魔法、未知の部分もあるけど、私達にも通じる部分もある。
高等魔法の莫大な知識を外付けして使う事が出来るあなた、御崎海香さん。
そして、科学とも融合して変化させ作り出す事が出来る神那ニコさん。
この二人の高等魔法技術を組み合わせて、私達が連想するのは」
「錬金術」
静かに言った裕奈を、主として喋っていた愛衣が振り返る。
「まあ、私は歴史と、
魔法の基になっている理論を勉強し始めたばかりだけど」
「そういう事です。伝説にカテゴライズされているものは別にして、
私達は歴史を見て来ました。
今の所は時の魔法と共に、魔法であっても一線の向こうにあるもの。
現在ではそうカテゴライズされている領域に挑んで来て、
現在に至る迄その結論を変える事が出来なかった、
極めて高度な魔法使い達が積み重ねて来たその歴史を」
その愛衣の目力は、元来気の強いカオルもたじろぎそうになるものだった。
==============================
今回はここまでです>>552-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>555
ーーーーーーーー
「取り敢えず、刹那さんがごく最近、
このメガロメセンブリアにいた事は間違いないね」
魔法世界メガロメセンブリアのオープンカフェで、
美樹さやかが手帳片手に口にした。
「魔法のネカフェがあるとかって、
魔法世界がどんだけ普通の世界なんだって。
あの二人、このかさんと刹那さんが有名人だったから、
意外と早く絞り込めたけど」
「二人がまどかと行動を共にしていた情報も色々出て来てる。
情報の日時から言って、少なくとも桜咲刹那はこの街にいる筈………」
そう言って、ほむらはコーヒーカップに視線を落とす。
ほむらは明らかに焦っている。
さやかはその事を察していた。
「って言うか、ここまで色々調達するのに、
本格的に色々ヤバイ橋渡って来てたんだね転校生。
どう見ても普通の空港レベルな出入り口を時間停止でブッチするとか、
誰だよあんたなお下げ眼鏡の可愛い女の子について来たチンピラが
路地裏で謎のナイトにぼっこぼこにされて
情報と有り金巻き上げられる事件が続発して今に至るとか」
「可愛い女の子だと誰だとあんたは、になるのかしら?」
「少なくとも性格は。見た目は可愛いってより美人だし」
コーヒーカップを持ち上げてフリーズしているほむらを、
さやかはニシシと見ていた。
そんな二人いるテーブルに、とん、と手が置かれる。
「?」
ほむらとさやかが見た相手は若い女性。
後ろから見ると民族衣装風の被り物が長く垂れているが、
二人の目は、ずれたサングラスの向こうに見えるキツネ目と、
大胆に切れ込んだワンピースから
半ばはみ出したたわわな膨らみに吸い寄せられていた。
「尋ね人かなお嬢さん達?」
ーーーーーーーー
裕奈がついっと目で促し、魔法使い二人、魔法少女二人は
スーパー銭湯女湯の薬湯を上がって浴場の中を移動した。
一般的には大体美少女、と言ってもいい四人の少女が泡風呂に沈む。
四人は四角く深いタイプの、発泡音波刺激タイプの泡風呂に身を沈め、
所属ごとの2on2で向かい合う位置を取る。
「魔法協会は………」
海香が、伏せていた目を上げて口を開く。
「魔法協会は、一体どうするつもり?」
「私が知る限りの事が協会の耳に入れば、
私の推測では十中八九、関東どころか日本の魔法使いの総力を挙げてでも
あなた達は完全に無力化される」
「それじゃあ、かずみは………」
カオルは、湯に浸かりながらも青い顔で問う。
「率直に言って未知の領域、確実な予測は出来ません。
しかし、一つだけはっきりしているのは、
公共の福祉、そのための自然秩序を踏まえた対処をする事になると」
「待ってくれっ!」
湯を割って、カオルがざっと前に動く。
「待ってくれ、メイ、あんたも見ただろう、かずみに会ったんだろう?
かずみは、かずみは生きてるんだ、かずみはかずみなんだ。
大丈夫、大丈夫だ、かずみは大丈夫だ、
今回は上手く行ってるんだっ!」
「今回は?」
愛衣がぽつりと漏らした言葉に、
縋り付かんとしていたカオルが動きを止めた。
「今回は、ですか?」
いい加減のぼせを考えるぐらいに湯の中にあって、
明石裕奈は冷たい戦慄を覚えていた。
「どういう心算ですか?
一体、何様の心算なんですか?」
佐倉愛衣はサラマンダーを使役する火炎の魔法使いである。
だが今、前に出ようとする裕奈を腕で制して
体の芯から静かな声を発する愛衣がこの湯壺に齎しているのは、
絶対零度の戦慄だった。
ーーーーーーーー
「ちょっ!?」
メガロメセンブリアのオープンカフェで、
話を聞いて立ち上がるや走り出したほむらを、
支払いを済ませたさやかが追い駆ける。
「転校生、急ぎ過ぎっ………」
「………何故、気づかなかった………」
走りながら、ほむらは苦い声を発していた。
ーーーーーーーー
ざばっ、と、愛衣が立ち上がる。
そして、つかつかと移動し、掛け湯を浴びて水風呂にずぶんと身を沈める。
愛衣が戻って来るのに合わせる様に、他の三人も泡風呂を上がると、
丁度空いていたメイン浴槽で四人が合流した。
「ってる………分かっ、てる」
熱めの湯に浸かりながら、やや落ち着いたとは言え佐倉愛衣から
突き刺さる様な視線を向けられていた牧カオルが、伏せていた顔を上げた。
「分かってる。あたし達は何を言われようが文句の言えた筋合いじゃない、
そんな事は分かってる。
だけど、かずみは………かずみはかずみなんだ。
見ただろう、メイだって、優秀な魔法使いなら分かった筈だ。
かずみは生きている、だけど、まだあたし達がいないと、
だからきっと、きっとあたし達がかずみを………」
愛衣は、愛衣の両肩を掴もうとするカオルからざっと身を交わす。
最早、サスペンスであれば手近な鈍器が降って来る流れだった。
「メイ………」
つんのめった湯面から顔を上げ、
更に縋り付こうとするカオルの両肩を掴んだのは、裕奈だった。
その側で、愛衣は顔を伏せている。
「メイちゃんは優しい娘で、
佐倉愛衣先輩は真面目な魔法使いなんだ。
これ以上苦しめるって言うなら、
不肖の後輩が今すぐ黙らせる」
そして、裕奈が次に見たのは海香だった。
「私達の口を塞いで、ちょっとでも稼いだ時間の間に
かずみちゃんと姿を消す」
そう告げて睨み付ける裕奈を、海香は静かに見据える。
「そんな事を考えてるんだったら、
あんたらがどうにか出来るのは一人だけ。
例え、刺し違える事になったとしてもね」
裕奈の手が緩み、カオルがゆっくりと距離を取る。
「だから、教えてくれないかな。
あの日、図書館島で何があったのか」
「えっ?」
裕奈の言葉を、カオルが聞き返した。
「あの日、あのタイミングにあんた達が只、
本を探しに来たなんて信じられる訳がない。
元々、本題はそっちの方だからね。
これは本来私の仕事、メイちゃんは監督役だから。
元々、魔法使いは魔法少女には不干渉。
魔法少女しか関わっていない、って事なら深く詮索するのは面倒くさい。
そう考えてわざわざ報告書には書き込まない。
そんないい加減で半人前以下の魔法使いがいるかも知れない」
「ゆーな………」
近づこうとしたカオルを、裕奈は睨み付ける。
「半人前でも、流石に手ぶらで帰るって訳にはいかない。
手土産ぐらい持たせてくれないかな?」
そう言った裕奈が、からりとガラス戸が開く気配に目を向ける。
「あら」
「ありゃ」
声を出したのは、巴マミと明石裕奈だった。
「珍しい取り合わせだな」
マミの背後で杏子が言った。
その間に、メイン浴槽の面々は湯を上がってマミ達に接近する。
「そっちこそ、一緒に温泉とか来るんだ?」
「お仕事の帰り」
裕奈の言葉に、杏子がはあっと嘆息して言った。
「あれから魔女に出くわしてさ、
あたしは縄張り荒らしは御免だって言ったんだけど、
リアルタイムで死人出そうだったからこっちのマミ先輩がどうしてもってね。
どうする? 一戦交える?」
「遠慮しとく、今夜は疲れてるし面倒は御免って事にしておくわ」
「そりゃどーも」
海香の回答に、杏子が鼻で笑った。
「で、食いモンも旨いってから付いて来たんだけど、
密会って事でいいのかこれ?」
「そんな所ですね。図書館島がどれぐらい浸食されたのか、
少々短気な人達抜きで穏便にお話を」
「へーへー、それで不意打ち防止に
ソウルジェム一つの真っ裸で密談ね、用心深いこって」
真面目な顔でつらっと言う愛衣に杏子が言う。
「入りましょう、あちらにはあちらの都合があるんでしょう」
「そうさせてもらうか」
そう言って、マミは手近なジェットバスに入る。
手すりに腕を絡めてジェットを背中に当て、
マミは身を反らせてご満悦にんーっと唸る。
「おー、気持ちよさそう」
マミと杏子と裕奈が三連のジェットバスを堪能している間、
魔法使い一人とあすなろの魔法少女二人は
気泡超音波風呂で体を温める。
そうしながら、愛衣の視線は出入り口とは別のガラス戸をとらえていた。
ーーーーーーーー
「錬金術」
マミと杏子が裕奈と分かれ、メイン浴槽で本格的に体を温めていた頃。
涼しくなり始めた夜風に吹かれ、敷地内露天風呂に浸かりながら、
海香とカオルを見据えた愛衣が口を開いた。
「あなた達は錬金術を含む高度な儀式魔法を使いますね。
空間や封印の高度な儀式魔法を使う事が出来る。
ゲートを動かしたのは、あなた達ですね?」
「報酬は図書館島よ」
口を開いたのは、御崎海香だった。
「彼女は、前もって用意していたメモと
強力な魔除け札を装備して私達の前に現れた。
ええ、私達は一時期このあすなろ市を結界化して、
魔法少女契約を売り歩くキュゥべえを人の意識から排除して、
独自に開発したソウルジェムの浄化システムを使っていた」
「改めて、デタラメな魔法の規模。
あなた達は間違いなく儀式魔法を、
恐らくは外付けの膨大な魔法知識から欲した事を検索し、
表示されたやり方を成功させる程度には使いこなしている」
「ええ、それで合ってるわ。
もちろん色々研鑽はしたけど多くは私の固有魔法。
そんな箱庭に現れた彼女は、
既に私達ですら存在の認識を失っていた特殊システムを精査して、
その欠陥を教えてくれた。
その事が無かったら、私達は見せかけの浄化に騙されて、
とっくに全員魔女になって破綻していた」
「お陰で、かつての魔法少女を殺して
グリーフシードを得てソウルジェムを浄化する。
元の木阿弥で共食い生活に戻った訳ではあるけど、
こちらで作った画期的システムのつもりの欠陥に気付かずに、
解決したつもりがいつの間にか魔女になっていた、
なんて結果よりはマシだったかな」
「何を………」
海香に続くカオルの言葉に、
口を挟もうとした裕奈を愛衣が制する。
「彼女の提案、要求は、本来であれば私達のポリシーに反していた」
「ああ、ミチルが悔いた事を、更に付け加える。
その事に加担しようって話だったからな」
「だけど、図書館島へのアクセス権が魅力的だったのも確か。
犠牲によらないソウルジェムの浄化システムを確立する事、
そして、黄金よりも遥かに尊いものを生み出し、完成させるために」
ぐっと睨む愛衣に、海香とカオルは小さく頷いた。
「だけど、それ以上に、惹かれたのよ。
彼女は、そもそも私達が図書館島を欲したその気持ちを理解してくれた。
ゲートの分析、それ以前にあそこに到達する迄は
決して平坦な道のりではなかった。
それでも私達は、求められた通りにあの日、あの時に
求められた条件でゲートを発動させた。
それは、私達がそれをしたい、と思ったから」
「それは、理解してくれたから?」
裕奈の問いに、カオルが小さく頷く。
「私は彼女であり、彼女は私だった。
理不尽なシステムに奪われたなら奪い返し、
命を懸けて守り抜く。
決して退かず、諦める事無くそれをやり通したいと
心の底から願い、実行する。
決して引かない、引けない思いと行動。
苦しい、悔しい涙と熱い思い、戦い取り戻し守り抜く鉄の意志。
その全てに揺ぎ無く誠実であり、
名も良心も、そして元より自らの命も惜しまぬ者」
こちらを見据える海香の顔を見ながら、
ごくりを喉を鳴らした明石裕奈の顔からは
すーっと血の気が引いて行った。
ーーーーーーーー
「有難うございます」
桜咲刹那に緑茶の湯飲みを渡され、
ぺこりと頭を下げる鹿目まどかに刹那は優しく微笑んだ。
準備が整う迄と言う事で用意されたホテルのツインルームで、
まどかと刹那はツインのベッドに腰かけながらの一時を過ごしていた。
「あの話には、少々続きがあります」
刹那が口を開き、まどかは、
刹那に合わせる様にサイドテーブルに湯飲みを置いた。
「不老不死、と言うものをご存知ですか?」
「不老不死?」
聞いた事がある、と言うか恐らく知識はある筈だがピンと来ない。
それが鹿目まどかの実感だった。
そんなまどかに、刹那はすらすらと筆を走らせた和紙を渡す。
「老人………年を取らない、死なない、ですか?」
「その通りです。あなたが映画で観たあの戦いの最中、
激しい戦いの中で必要に迫られたネギ先生は、
闇の魔法と契約し、不老不死の身となりました」
「え? あの?」
二人はツインのベッドに座っていたが、
やはり認識が追い付かないまどかが目をぱちぱちさせて刹那を見て、
刹那は静かに微笑みを返した。
「だから、年を取らない、死なない、です。
実際には許容量を超えたダメージで死ぬ事もあるらしいですが、
大概の事では死にませんし、
多くの場合死の原因となる老いとも無縁の身となりました」
「えー、と、それってとっても、凄い、って言うか」
「ええ、古今東西の英雄、権力者の中には
その全てを懸けてでも欲した者もいます。
莫大な富と権力を得ながら、だからこそ、
それを永劫のものとしようとして、只一つままならぬ最期の時を恐れ、
見果てぬ夢を前に力尽きた者達が」
「でも………」
まどかが下を向いて呟いた。
「それを、不老不死になる、って、私は嫌だ」
「ええ、私もです」
まどかの言葉に応じて、刹那は優しく微笑みかけた。
「じゃあ、ネギ先生は?」
「ええ、それは、世界を救うためにやむを得ない事だった、と、
ネギ先生はそう覚悟を決めています。
ですから、ネギ先生はこれからもずっと、
私達教え子もその他の家族、知人も皆、
年老いて最期の時を迎えるのを子どもの身のままで見守る事となります」
刹那の言葉に、まどかは両手で口を塞ぐ。
そして、刹那に渡されたハンカチを目に当てた。
「そんなのって………」
「ええ、人の身として、それは本来とても辛い事です。
ネギ先生の様に、大勢の人達から慕われているなら尚の事、
その人達全てと別れても尚、生き続けなければいけない。
その事がずっと続くのですから。
しかし、ネギ先生はそれを受け容れて今、
二つの世界を救う為に奔走しています。
その計画の遠大さと障害の大きさを考えるならば、
魔法世界の英雄、王族の血筋であり、
自身天才的と言ってもいい才能を持つ
ネギ先生程の人物が不老不死でもなければ実現出来ない。
その事も又、辛い現実です」
「そう、ですか………」
淡々と言う刹那の言葉に、まどかはハンカチを握り、下を向く。
その静かな言葉に込められたものが、まどかにも伝わって来る。
恐らくこの人、このクールで優しい先輩も、泣いたのだろうと。
「この魔法世界、正確にはメガロメセンブリアのエリアを除いた大部分は、
火星を依代にした一種のエネルギー体、
その話は映画にも出て来ましたね」
「は、はい、確かそんな話が………」
「つまり、れっきとした生きている人間、或いは動物も草木も生きていて、
建物も何もかもが実在していながら、
それらは全て魔力から生じた言ってみればホログラム、
立体映像に魂が宿ってこの世界での物体としての存在を維持している。
そういう存在です」
「ホログラム、ですか? でも………
でも、みんな、そんな事分からないって言うか、
私も熊のぬいぐるみのおばさんとか、何人か会ったけど、
でも、みんな生きてて、心があって」
「その通りです」
一つ一つ言葉を組み立てるまどかに、刹那はふっと微笑んだ。
「その通りです。魔法世界に生きている者は誰も、
この世界で心を持ち生きて生活しています」
「ですよね」
「ですけど、その核となる魔力の枯渇により、
魔法世界の人々は、人々も動物も草木も建物も何もかも、
その世界そのものが消滅の危機を迎えた。
その解決策を巡る争いこそが、
夏休みに起きた私達、ネギ先生初め私達が戦った事件の本質です」
「消え、る、解決策………はい、確か、そんな映画だったと」
「ええ。まあ、元々通常の漫画の単行本に換算しても16巻程になる物語に
その背景事情等々を加えたものを総集編として
一本の映画に落とし込んだ力技でしたので、
一度に理解するのは難しいと言うのは理解できます」
「ウェヒヒヒ………」
「色々ありまして、この魔法世界の現実的滅亡を回避し、
魔法世界の土台となっている火星の現実世界のサイドを
緑溢れる惑星へと開発する事で、火星に宿る生命力、
そこから供給される魔力を育てて魔法世界を安定させる。
それが、ネギ先生が示した解決策です」
「火星、ですか? 確か火星って………」
「ええ、今の所、水や大気が辛うじて存在する程度の惑星ですが、
全世界の規模で対応すれば、
我々の世界の様な生きた世界を作り上げる事も理論上は不可能ではない。
ですから、そのとてつもなく遠大なプロジェクトの核となるためにも、
ネギ先生は不老不死となり完成を見届ける迄尽力する、
そういう事になりました」
「そう、ですか………」
「しかし、それだけでは間に合いません」
「間に合わない?」
「ええ、普通に考えても、火星が緑の惑星になるためには
とてつもない資金と労力、そして、時間がかかります。
あらゆる力を用いて縮めるにしても限度がある。
そして、計算上、どんなに早く計画が遂行されたとしても、
魔法世界の滅亡に追い付く事はあり得ない。
例え私達の全世界の総力を挙げたとしても、
計画が実現する前に魔法世界は滅亡します」
「それ、って、それじゃあこの世界は、ネギ先生が不老不死にっ」
「ええ、ですから、もう一人いるのです」
「もう一人?」
「神楽坂明日菜さん」
まどかの目を見て告げた刹那の言葉に、
まどかはちょっと記憶を辿る。
そう、自分も新・オスティアのパーティーで出会った快活な先輩。
あの時も、写真で見た時も、
それだけでも分かる木乃香の、そして刹那の親友に違いない人。
そして、さっき迄観ていた映画にも、確かにその人は登場していた。
それも、極めて重要なポジションだった筈。
「このかお嬢様と神楽坂明日菜さん、そしてネギ先生、
この三人がルームメイトだった事はお話ししましたね?」
「はい」
「幼稚園以来のエスカレーター組も多い麻帆良学園で、
アスナさんは小学校の途中からあの学園に転入しました。
最初はひどく不愛想で、本人はがさつな乱暴者だと言っていますが、
何時しか溌溂とした、体力自慢の元気な少女に成長したアスナさんは
クラスの中でも慕われる存在となりました。
特に、クラス委員長の雪広さんやこのかお嬢様とは、
出会った時からの親友として深い友情で結ばれています。
そして、昨年ネギ先生がこの学校を訪れた時、
最初に深く関わったアスナさん、このかお嬢様と
行き掛りで同居する事が決まり、お二人は丸で弟の様にネギ先生を愛しみ、
ネギ先生も二人の事をよきお姉さんとして慕っています」
まどかは、刹那の懐かし気な横顔を見る。
そう、まどかがパーティーで出会った時も、
あの可愛らしい、そして精悍な男の子、ネギ・スプリングフィールド。
そのネギと明日菜の関係は実に気楽な、
僅かな時間会っただけのまどかにも、仲の良い姉弟の様、
と言う刹那の言葉の真実がよく分かるものだった。
「本来は秘密である筈が、アスナさんにはネギ先生があの学校に来て即日に
ネギ先生が魔法使いだと言う事が発覚したと、
今思えば背筋が寒くなる笑い話です。
それからは、様々な魔法のトラブルに於いても、
アスナさんはネギ先生の最良のパートナーとなり、
アスナさんがネギ先生の背中を守り、
時に真面目過ぎるネギ先生を一喝しながらも
ネギ先生とアスナさんは深い信頼関係を結んで
様々なトラブルの解決にも尽力して来た。
アスナさんは、身寄りのない孤児でした。
知り合いの関係で麻帆良学園の学園長の保護下に入り、学園に入学した。
学園長からは構わないと言われながらも、
アスナさんは早くから新聞配達で少しでも学費を稼ぎ、
そうしながら出会った様々な人達と、幸せな学園生活を送っていました」
そう聞くだけでも、贅沢ではないが
苦労知らずでのんびり育って来たまどかは
あの快活な明日菜に畏敬を覚えてしまう。
「そんなアスナさんの過去は、先程の映画でも語られました」
「は、はい」
刹那の言葉に、まどかが記憶を辿る。
「アス、ナ………あれ? アスナ、って、お姫様………」
「はい。アスナさんは、黄昏の姫君、そう呼ばれていた魔法世界の姫君でした。
魔法世界の中でも極めて希少な能力を持つ血筋である故に、
その人格は実質封じられ、戦争に於ける兵器として利用されて来た。
ええ、利用されて来たんです。
子どもの姿のままの百年余りを経て、そんなアスナさんを救出したのが
ネギ先生の父、ナギ・スプリングフィールド、
加えて、このかお嬢様の父上、当時の青山詠春氏を含む一団「紅の翼」でした。
「紅の翼」に救出されたアスナさんは、魔法に関わる記憶を封印され、
一人の普通の女の子として麻帆良学園に入学しました。
しかし、再びの魔法世界でのトラブル、
それが一時的な戦争と言ってもいい規模に及び、
その中に巻き込まれて敵方の術式の核として利用される事となったアスナさんは
かつての記憶を取り戻し、そして、ネギ先生と共に
その素質を復活させて、魔法の世界を、救いました。
それが、あの映画で描かれていた事です」
「あ、あの、ウェヒヒヒ、ちょっとなんと言うか」
「ええ、付いて行けませんよね。
本人もそう言っていましたし私等も、はい」
「は、はい。なんと言うのか凄い人なんだなと」
「はい、凄い人であり、そして、本来であれば魔法の世界の中でも
とてもとても偉い、到底私等が近づく事等………
ああ、いけませんね。又怒られて、しまいます」
「刹那さん?」
はたと下を向いた刹那にまどかが声を掛け、
刹那は、その呼びかけに優しい微笑みで応じた。
「いえ、少々長いお話でしたので。
アスナさんは、ネギ先生と共に、この夏休みに発生した
魔法世界の滅亡危機を回避する事には成功しました。
しかし、魔法世界を支える魔力の枯渇により、
遠からぬ未来に魔法世界が滅亡する事に変わりはない。
それを回避するために、不老不死の身となったネギ先生は
魔法世界の依代である火星の開発に着手していますが、
時間が足りません、百年程」
「百年、ですか」
聞き返すまどかに、刹那が頷いた。
「正確には百年そのものではありませんが、
他に手を打たないとその間に滅亡は訪れる。
その足りない百年の時間、
魔法世界を維持するための礎となるのがアスナさんです」
「礎?」
「はい。魔法世界の姫君で特別な素質の血筋であるアスナさんが礎となり、
魔法世界の崩壊を遅らせる大規模な儀式魔法の中核となって
百年間の眠りに就く。
その事により百年の時間が稼げる。そういう計算なのだそうです。
実際に、あの映画でも描かれていた通り、
アスナさんはその血筋と修行によって、魔法世界の存在そのものを左右する
非常に特殊で強力な魔法を用いた事もあります」
「あの、百年の眠りって、それって………」
「おおよそ文字通りの意味です。
アスナさんは百年間俗世から切り離され、封印されます。
封印されて眠りに就き、その間に、
それまで培って来た人格、記憶も全て失って目覚める。
そう予測されています」
落ち着いた口調の刹那の説明を、
まどかはきょとんと聞いていた。
「詰まりは浦島太郎ですね。
ですけど、浦島太郎の場合は竜宮城に行く前の記憶があります。
しかし、目覚めるアスナさんはその記憶すら失っています。
果たしてどちらが幸せなのか」
「幸せ、って、そんな、そんなのってないよっ!」
最後に自嘲めいた笑みを聞き、まどかは叫んでいた。
「だって、だってあんな、アスナさんあんなに、
みんなと一緒に、あんな、笑って………」
多分、さやかであれば
もっとストレートに感情を発露して表現していたのだろう。
それが出来ない自分がもどかしくも、
まどかは、それでも、例え無駄でも、必死に伝えようとしていた。
「そうです」
まどかを見据える刹那の眼差しは、真摯だった。
「アスナさんは、幸せでした。
魔法世界の姫君として、只兵器として使われるばかりの百年を経て、
その記憶を封印して、麻帆良学園で一人の女の子としての人生を送っていた。
お嬢様や委員長さん、心の通じる親友や尊敬出来る高畑先生達と、
元気に、年相応の恋に悩み、そんな日々を送っていました。
そんなアスナさんがネギ先生と知り合い、魔法を知り、
ネギ先生の日本で最も身近なお姉さん、公私に渡るパートナーとして、
時に命懸けの戦いとなってもネギ先生や他の皆と共に先頭に立ち、
目の前で大事な人のために戦いを選んだ。
その中には、私も含まれていました。
アスナさんはお嬢様の、そして、私の、掛け替えのない友です」
「刹那さん」
既にして、先程辛うじてまどかの中で
ファイティングに沸騰していた気持ちは半ば以上萎えていた。
それは、刹那の言葉だから。
刹那がそう言うのであれば、本当の事であり、仕方がない事なのだろう。
刹那の言葉には、そう思わせるだけの誠実さがある。
「そんな、アスナさんだから、自らのルーツ、故郷、
そして、そこで出会った人々、自分を助けてくれた、
そのために命を懸けた人々、そうである人、
そうでない人達が生きる世界のために、自らの犠牲を選んだのです。
今迄出会い、共に歩んで来た人達との未来を失い、培って来た思い出を失い、
目覚めた時にはネギ先生以外の知り合いの誰もがその天寿を全うした後。
そうなったとしても、アスナさんはその道を、選ばれました」
「そんな………」
ふうっと息を吐き、説明を終えた刹那に、まどかが呟く。
「んな………そんなの、ってないよ………
あんまり、だよ………」
「ええ」
まどかの呟きに、刹那が反応した。
その刹那の呟きに、まどかは真実を見る。
決して、高潔な犠牲を是とする侍、
ではない一人の親友の、女の子の姿。
「どうにか………なんとか、出来ないんですか?」
まどかに問われた刹那は、小さく首を横に振る。
「アスナさんの性格上、魔法世界の滅亡を、
世界丸ごとに等しい人々の消滅を看過する、
と言う事はまずあり得ません。
問題は、魔法世界を支えるための莫大な魔力です。
一つの惑星の生命力に匹敵するだけの生命力が作り出す魔力。
火星に、魔法世界を維持できるだけの生命が定着する迄の百年の時間、
それを埋め合わせるだけの莫大の魔力、これが無ければどうにもなりません」
「惑星に匹敵する巨大な魔力、百年間、維持出来るだけの魔力」
真顔で、真摯に説明する刹那の言葉をまどかは繰り返す。
「ええ。しかし、そんな事は不可能です。
そんな魔力も生命力も存在しない、
そんなものを他で用意する事は不可能ですね」
そして、桜咲刹那は静かに微笑む。
「
神様でも
ない限り
」
==============================
今回はここまでです>>556-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>576
ーーーーーーーー
「あら」
スーパー銭湯のジェットバスで、
隣のコーナーに脚から入る明石裕奈を見て巴マミが声を上げる。
「又会ったね」
「ええ、話は付いたのかしら?」
泡の中にじゃぷんと体を沈める裕奈に、
マミはちょっと皮肉っぽく尋ねた。
「まあね。お陰さんで肩凝っちゃってさ」
そう言って苦笑いする裕奈にマミは目を細める。
マミから見て、自分の後輩にも似たタイプがいるが、
さっぱりと元気な女の子、に見えてその内心は多感で聡い。
「そうね、お仲間とか、ましてやそちらは組織。
もちろん本業の仕事もあって、
味方は有難いけど色々肩が凝る事も多いわよね」
裕奈に合わせる様にマミも手すりを握って、
噴射に当てた背を伸ばしながら一声唸り声を上げる。
そんなマミの横で、裕奈は舟を漕ぐ様に目を閉じて
かくんと下を向いていた。
そして、くくっ、と笑い声を漏らす。
「くくっ、くっ、あはは………」
そして、いきなり水面から胸を浮かべる勢いでそっくり返り、
天を仰いで大笑いを始めた裕奈にマミはぎょっとした。
「ああ、ごめんごめん、ちょっとくすぐったくて、
お騒がせしましたー」
「そ、そう」
目が点になったマミの横で、
まだくすくす笑っている裕奈がばしゃばしゃと顔を洗った。
「ふふふ………ホンモノは違うねぇ」
ーーーーーーーー
「………大丈夫?」
敷地内露天風呂に丁度三つあった石窯風呂の一つで、
熱めの湯に浸かりながら牧カオルが尋ねる。
「今の所健康面に問題なし、
事によっては引きずり出すから準備して」
「ラジャー」
カオルの右隣りの石窯風呂に浸かった御崎海香と
牧カオルが大真面目に会話を交わす。
海香の右隣の石窯風呂では、佐倉愛衣はぽけーっと天を仰いでいた。
愛衣は、ぱんっ、と、両手で顔を叩き、下を向く。
そして、ばしゃっ、と顔を洗った。
「魔法少女の横紙破りプレイアデス聖団、そして………
今回も、先んじたのはあなた達、ですか」
ーーーーーーーー
「あなたも、なかなか懲りませんね」
鹿目まどかが気づいた時には、
自分がいるホテルのツインルームの壁に小さな穴が一つ増え、
暁美ほむらの右手を右手で掴み反らした桜咲刹那の左の肘が
ほむらの腹に埋め込まれていた。
ほむらが痛覚を切る前に、刹那の指の一撃を受けたほむらの右手が
米軍制式M9拳銃を手放し、
ほむらの体はそのまま背中からベッドに叩き付けられた。
「ほむらちゃんっ!?」
「あなたの負けです、暁美ほむらさん」
魔法少女衣装の楯に伸びたほむらの右手に
刹那の長匕首の棟がぱあんと叩き付けられ、
匕首の切っ先がほむらの喉元、絶妙の距離に向けられた。
「無駄な抵抗はやめて下さい。
ここで限界を超えられると後が面倒ですから」
チラ、と、ほむらの左手を見た刹那の視線に気づき、
ほむらは全身を震わせて吊り上がった目を刹那に向けた。
「桜咲刹那、お前、知ってて、それで………」
「ほむらちゃん、っ………」
「桜咲刹那っ!!」
びっ、と、駆け寄ろうとするまどかに匕首が向けられ、
ほむらは今度こそ体勢を立て直した。
「………匕首・十六串呂」
刹那は、たっ、と飛び退いた。
と、思った時には、
ほむらのすぐ横を通り過ぎた何振りもの匕首が
ドドドドドッと壁に突き刺さっていた。
「話は最後まで聞け。
鹿目まどかではない暁美ほむら一人、
邪魔をするなら斬り捨てる」
「白き翼の剣」がほむらに向けられ、
刹那の声は低く嘲笑的ですらあった。
「聞け」
思わず両手をベッドの上に乗せたほむらに、
瞬時に剣の柄元の刃をほむらの首に向け、
ほむらの胸倉を掴んだ刹那は覆い被せる様に言う。
「暁美ほむら、お前の負けだ。
そして、お前は決して私には勝てない。
それでも未だ目的を果たすつもりがあるなら余計な事はするな、
悪い様にはしない」
「桜咲刹那、あなたは、何を何処まで知っている?」
俗に言うメガほむ、あの頃の、吐き気がする程の恐怖が戻って来そう。
魔女、魔法少女相手に相当な修羅場を潜って来た筈、
ほむらがそう思い直しても、刹那の声音はそれだけ「本物」だった。
「魔法少女は魔女になる、これは、今から説明する話でした」
「え?」
ほむらを突き放し、立ち上がった刹那の一言に
まどかはきょとんとし、ほむらも刹那をぐっと睨み付ける。
「やはり、知っていた」
「神鳴流をなんだと思っている?
王城の地を守って来た退魔の剣。
窮兵衛と契約する魔法少女の実態等、
その歴史の中には幾らでも出て来る」
「あ、あの、刹那さん?」
「なんでしょうか?」
刹那の口調は丁寧に戻ったが、やはり、何処か事務的になった。
まどかはそう思った。
「今、魔法少女が魔女になる、って」
「はい、魔法少女のソウルジェムが完全に濁り切ると、
ソウルジェムはグリーフシードを産み、
魔法少女は魔女になります。
こうなると元に戻す術はありませんから、
かつて希望を願った魔法少女は絶望を振りまき人を食らう祟りとして、
他の魔法少女に退治されて死ぬしかなくなる存在になります」
「ほむら、ちゃん?」
「桜咲刹那の言う事は本当よ。
嘘だと思うならキュゥべえに確かめてみればいい」
「そういう訳で、神鳴流では窮兵衛は人には過ぎた奇跡を売り歩き
人を魔性に変える禁忌の存在として、その関わりを禁じられてきました。
それは、現在では魔法の世界に於けるおおよそのコンセンサス、約束事です。
流儀によっては悪魔の契約と扱われている様ですね。
取り敢えず、まともな呪術、魔法の流儀では
窮兵衛、マギカ、魔法少女には関わらない。
長年の歴史、研究の中でそういう約束事が定着していたのですが、
先程も話した通り、今回は非常事態或いは異常事態です」
「それで、この魔法世界を救うために、桜咲刹那っ!」
「協会の内諾は得ています。
お金で済む事でしたら、非常識な程度の金額は用意します。
その上で、魔女になられては当然困りますから、
まどかさんの魔法少女としての活動は協会として全面支援します」
事務的な刹那の口調を聞き、まどかは、とさっ、と座り込む。
「騙されては駄目よまどかっ」
「騙して等いませんよ。
基本、デメリットは偽りはしなくても喋らない窮兵衛と違って、
私としては必要な情報は提供しました」
「ええ、そうね」
殺意の籠った目で刹那を見てから、ほむらはまどかに視線を向けた。
「聞いての通りよ、まどか。
魔法世界の事は気の毒だと思うけど、元々まどかには関係の無い事、
それは魔法使いでどうにかすればいい。
それより、まどかが魔法少女になると言う事は、
何れ魔女になるリスクがあると言う事。
まどかの才能は大きい、大きすぎる。
だから、魔女になった時はとんでもない被害が出る事になる。
そうでなくても魔法少女がどれだけ危険な事かはまどかだって見て来た筈っ」
「そうですね」
ほむらの言葉に、刹那は、ふっとまどかに微笑みを向けた。
「まどかさんには関係の無い事ですね」
「そんな事、ない」
まどかは首を横に振り、ほむらは目を見開いた。
「ほんの短い間だったけど、魔法世界の人達は色々良くしてくれた。
それに、この世界の人達は、私達みたいに普通に生活して、生きてる。
もしも魔法世界が消滅したら、どれぐらいの人達が?」
「まどかっ!」
「ざっと十二億人。おおよそその人数が消滅します。
魔法世界の中でも数千万人は我々同様の肉体を持っていますから、
その人達は魔法世界と言う世界の消滅によって
通常の生物が住めない丸裸の火星に放り出される事になる。
既に魔法世界の崩壊自体は予見されている事ですから、
今のスケジュールでそれが発生した場合、
数千万人の難民が地球に押し寄せる事になる。
しかも、現状では公開されていない魔法の使用がデフォの難民集団です。
今の世界情勢を鑑みるに、その様な事が起きれば
世界大戦レベルの軍事衝突すら十分起こり得ます」
「桜咲刹那っ!」
「私は、私が契約すれば、その人達は救えるの?
その人達のために、神楽坂明日菜さんは
ひとりぼっちにならなくても済むの? 刹那さんっ!?」
噛み付かんばかりのほむらに白き翼の剣を向けた刹那に、
まどかは強い口調で尋ねていた。
「どうですか窮兵衛?」
「十分だね」
「あ、う………」
その声を聞き、ベッドの上で動こうとしたほむらは、
剣の切っ先と、それと同じぐらいに鋭い刹那の視線に動きを止める。
「君の素質は桁違いだ、出来ない事なんてない、
万能の神にだってなれるかも知れない。
君の願いなら、魔法世界を百年維持し続ける事も十分に可能だね」
「ね、がい………」
ほむらの両手が、布団カバーをぎゅっと掴んだ。
「お願い、まどか。
お願いだから、魔法少女、魔法少女には、ならないで………」
「ほむらちゃん………」
「それが、あなたの願いですか」
刹那に静かに問われ、ほむらは顔を上げた。
「あなたは時間の魔法を使う。
そして、あなたの行動パターンには一つの目的が明確に存在している。
そこから考えるならば、あなたが今迄何をどうして来たか、
その結末がどうだったか、それを推測する事は難しくない」
「桜咲、刹那………」
歯噛みしながら刹那を殺せる程の視線を向けるほむらに、
刹那は微笑みを見せた。
「もう、十分です」
「な、っ………」
「魔法少女の行き詰ったシステムの中、
あなたが我武者羅に突っ張って目的の為に戦い、
傷ついて来た事も容易に推測できます。
少女の一度の人生には過ぎる苦しみを味わって来た事も。
しかし、あなたには無理だ」
「………」ギリッ
「やり直しますか?
しかし、そこに私がいたら、あなたに勝ち目はない。
スタート時点の経験が違い過ぎる。
守る者としては視野が狭すぎる。
だから、同じ標的を見ていた目にすら気づかない。
そうでなくとも、あなたの素質、あなたの今の人としての素質から言って、
何度やり直しても、むしろやり直しを繰り返す程に
脳に不確定要素が溜まり拭いきれなくなる。
私も仕事では機械を使わざるを得ませんが、
あなたの脳は過剰な経験が歯車に絡み付いて
既に最適化もクリーンアップも出来なくなっている。
魔法少女と言う困難の中で一人を守り抜く、
この目的を果たすためには、
どんなに繕ってごまかしてもあなたは………
………優し過ぎる。
もういいです、暁美ほむらさん」
「あなたに、何が………」
「後の事は、我々に任せて下さい」
「そんな、事が………」
「妨げるならその首もらい受ける迄。
私が大切なのは麻帆良で出会った仲間」
刹那は、静かな口調と共に、
改めて「白き翼の剣」の切っ先をほむらに向ける。
「私が大切なのは、
麻帆良で出会った掛け替えのない仲間、掛け替えのない友」
「や、めて………」
震えるまどかの声を聞き、刹那は静かに切っ先を下げる。
だが、ほむらは動かない。
刹那はほむらの手の内を完全に知っている、
少なくともほむらはそう確信している。
そして、ここでほむらが僅かでも反撃の素振りを見せたなら、
その瞬間にほむらの左掌は打ち抜かれる、
それを避ける事は不可能である事も。
「勘違いしないで下さい。
何も人質を取って強要するつもりはありません。
そもそも、この窮兵衛は腐っても窮兵衛ですから、
そんな事をしたら契約の前提となる自由意志を疑われる危険があります。
只、邪魔はするな、と言っているだけです。
いいですね、暁美ほむらさん」
「まどか………分かるわよね………」
折れそうな心を叱咤し、懸命に、
刹那を睨み付けながらほむらが続けた。
「この女………桜咲刹那は、最初から、
最初からまどかを利用するつもりで私達に近づいた。
桜咲刹那と近衛木乃香は、まどかの性格を知っていて、
私達を足止めしゲートを暴走させて
この魔法世界へのまどかを連れ込んだ。
まどかの優しさに付け込んで、この世界を見せるだけで事は足りる、
そう読んでまどかの優しさを利用してっ!!!」
「三十点、否、五点も差し上げられません」
吐き捨てる様に叫んだほむらに、刹那が告げた。
「このかお嬢様は、この件には一切関わってはいません。
皆さんを一度お誘いしたいと言うから、
こちらがそれに合わせて計画を組んだ迄です。
あの二人、美国織莉子と呉キリカが割り込まなければ
このかお嬢様をこちらに巻き込む事は無かった。
この点は、このかお嬢様を巻き込んでしまった事は
こちらにとっては完全に不都合でしかありません。
全ては協会の内諾の下で私一人が行った事です」
「あの二人とあなた達との関わりは?」
「分かっている事は、私達の邪魔をしていたと言う事だけですね。
どうやら予知能力者らしいのである程度の推測は出来ますが、
その様子だと、あなたも知っている相手の様ですね」
「多分、想像通りよ。
まどか、桜咲刹那にとっては95%以上大事な事でも、
私にとってはこの際どうでもいい事だわ。
大事なのは、まどかが利用されて、
それで大変なリスクを負わされる、
人間ですらないものにされようとしている。
それも、優しさに付け込み自由意志を名目にして
目の前に十二億人の人質を置いた卑怯な、悪辣なやり方でっ!
そんな話、乗る必要はない、断じて無いっ!!!
………どうしたのよ?」
「はい?」
「どうしたのよ? 私の言葉は、
邪魔にすら値しない、と言う事?」
「まあ、先程も申し上げました通り、ここであなたに下手に手を出せば
自由意志に反する脅迫になりかねませんし。
それに、あなたが言う通りです。
ええ、既にあなたは私に負けた、
ここにいる時点で完敗が確定しているんです。
最早、今のあなたの言葉に結果を変える力は無い。
あなたはその事を一番、恐らく私よりも遥かによく知っている」
「あああ………」
絶叫と共に両手でベッドを叩いたほむらの側で、
刹那がふうっと息を吐いて、とんとんと自分の肩を叩く。
「私にとって大事なのは、
最小限のリスクでこの魔法世界が維持される事。
魔法世界が維持されない事にはアスナさんを救えない訳ですから、
私の願いはそれだけです。
そして、協会とも利害が一致している以上、
契約が成立すれば最悪の結果を免れるために全力でサポートします。
元々がどん詰まりに近い運命を背負った魔法少女。
急ごしらえに魔法を使う未熟な集団。優し過ぎる対象者。
私にとっては、私が大切な人達を救うための大事な大事な掌中の玉。
未熟者達のカオスに傷つけられず、
たった一枚のカードを変な事で切ったりされない様に監視して。
只でさえ不慣れな調略をそんな過ぎた力を持った未熟者達を相手に、
他人をその心まで監視し、誘導して目的を果たす。
そんな仕事は肩が凝るものです」
==============================
今回はここまでです>>577-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>587
ーーーーーーーー
ぼーやは強くなるだろう
お嬢様もお前も
まとめて奴に守ってもらうがいいさ
選べ
ーーーーーーーー
「暁美ほむら」
ベッドの上のほむらに向けて、刹那が斜めに視線を向ける。
「魔法世界を救える程の魔法少女、
魔女になればどういう事になるか、その程度の事は分かっています。
魔法協会としても、当然そんな事は望んでいない」
「魔女になる事を望んでいない?」
ほむらが、顔を上げて刹那を見る。
「まどかに魔法少女の契約をさせて、魔法世界を救って、
まどかを魔女にしない方法。
それなら、一番手っ取り早く簡単な方法が一つある」
ぞろりと黒髪を垂らして口にしたほむらに、
刹那は微笑みを向けた。
そして、その脚を膝からほむらのいるベッドに乗せる。
「!?」
刹那の手から放たれた長匕首が、
ほむらの魔法衣装のスカートをベッドに縫い付けていた。
「そうですね」
あの頃、豊かな黒髪を二つに結んでいたあの頃の心が半ばぶり返した様な、
蛇に睨まれた蛙の様なほむらに対して、
刹那は真横近くまで近づいていた。
「こちらとしては、契約により魔法世界を救っていただけたなら用済み、
と言う事になりますね。
それどころかリスク要因が増えるだけ、
その規模は、安全装置の無い水素爆弾を大量製造したに等しい。
で、あるならば………」
「ほむらちゃんっ!!」
刹那がぼそぼそぼそ、と、口をきいた直後にまどかが悲鳴を上げる。
「諦めませんか?」
「あき、らめない。諦める、筈がない」
情けない、と、思った。
だが、屈辱なんてものは今までの長くも無い人生、
この胸の痛みと共に吐いて捨てる程味わった。
だから、頬にボロボロと落涙し、
軍用ナイフを持った手を刹那にねじ上げられ、
それでもほむらの返答は変わらない。
その返答を聞いた刹那は、微笑んでいた。
「安心して下さい」
ほむらを突き放し、
取り上げたナイフを左手に持った刹那が言った。
「取り敢えず気を確かにもって下さい。
ここでまどかさんに余計な心理的負担をかけないで頂きたい」
そう言って、刹那はグリーフシードを放り出す。
「魔法世界の中でもここ、メガロメセンブリアは
「人間の国」ですから」
そう言ってふっと微笑んだ刹那の言葉を聞いて、
まどかは、それならあんな国とかこんな国とか
色んな国でもあるのだろうか、等とふっと考えていた。
「魔法協会は、それなりに人道的な組織です。
まして、魔法世界を救い魔法世界の姫である神楽坂明日菜を救い、
今後の魔法世界救済計画ひいては魔法の世界のキーとなる
ネギ・パーティー、魔法協会に途方もない益を齎す救いの女神。
それに驕る相手ならとにかく、
鹿目まどかさんの性格はあなたが一番よく知っている。
だから、あなたは安心していい」
「まどかに危害を加えない、そう誓えるの?」
「絶対、とは言いません。
私も体験しましたが、魔法少女と魔女の事は、
やはり我々魔法協会にとっても決して楽観出来る存在ではない。
ですから、最悪の事態に於いては、
最終的には公共の福祉に基づく対処をする事になります。但し………」
そう言って、刹那はベッドから長匕首を抜く。
「その時は、私の命もない。
それが私の、この仕事に関わった上での
退魔師としての矜持です」
そう言いながら、右手に握った長匕首の棟を、
左手に握った軍用ナイフで軽く叩いた。
「だから、鹿目まどかさんの事は、我々に任せて欲しい。
少なくとも、あなたに委ねるよりはいい結果を出す。
それは客観的な事実だ、守護者殿」
改めて頭を下げる刹那に、ほむらは下を向いて応じていた。
ナイフを放り出してふうっと息を吐いた刹那は、
ベッドの縁に座り直して隣のベッドに座るまどかを見る。
「そういう事です。ひとまずここで私の仕事は終わりました。
もちろん、あなたが魔法少女として魔法世界の救済を願ってくれたならば
陰ながら身命を賭してそのアフターフォローの先頭に立つ事になりますが、
まずは、この段階での私の仕事は終了です。
暁美ほむらさんの言った通り、あなたは魔法少女になる前に、
この魔法世界と神楽坂明日菜さんの真実を知った。
後は、あなたの良心次第です」
刹那の言葉を聞き、まどかの両手がぎゅっ、と膝の上で握られた。
「聞いても、いいですか?」
「どうぞ」
刹那は、下を向いたまま尋ねるまどかに真顔で応じた。
「神楽坂明日菜さんは、刹那さんのお友達なんですか?」
「そうです」
「大切な、お友達なんですか?」
「ええ、そうです」
震える声で尋ねるまどかに、刹那は真摯に応じていた。
「アスナさんは私の剣の弟子。
しかし、人間的に、人生と言う意味に於いては、
あの人こそ師匠なのかも知れない」
「近衛木乃香さんと刹那さんとアスナさんは友達、
そうなんですか?」
「その通りです。このかお嬢様とアスナさんは、
初等部で出会って以来の掛け替えのない無二の親友同士。
このかお嬢様は、私にとって、アスナさんとは又違った意味で、
命に代えても守らなければならない大切な人であり、
私にとっての大切な友です」
「ネギ、先生は?」
「大切な人です」
ふっ、と、刹那の顔が綻んだ。
「そうですね、先生であり、
英雄と言うべき偉大な魔法使いとして我々の先頭に立って来たリーダーであり、
そして、可愛い弟の様な存在。
アスナさんとこのかお嬢様も、
丸で本当の姉弟の様にネギ先生の事を可愛がっていた、
ネギ先生もそんなお二人を慕っていた、それは微笑ましい光景でした。
私も、些かながらその様な信頼を得られた、そう自惚れている所です。
ネギ先生にとっても、あの学校で最初に出会い、
パートナーとして行動を共にして来たアスナさんは
掛け替えのない大切な人です」
「詰まり、一周回って本当ん所は、
刹那さんが大切な友達を助けるためにまどかを利用した、
そういう話な訳ね?」
「まあ、そういう事にもなりますね」
いつの間にやら玄関から立ち入って立ち聞きしていた美樹さやかに、
刹那はあっさりと返答した。
「お陰様で、協会とも利害が一致しましたので、
公共的な目的がこちらの望みと合致した結果です」
「そうやって言っても、まどかの性格から言って断らないだろう。
それを見越してやってるんだよね?」
「命懸けの仕事に関わる関係者の性格を把握するのも仕事の内ですので」
「んー、刹那さん流石に鋭いからねぇ」
腕組みして、頷いて発言したさやかが片目を開けた。
「まどかの性格から言って、そのまま事情を説明してお願いしても
魔法世界の為、神楽坂明日菜さんのため、
むしろ進んで契約してくれたと思うんだけど、
刹那さんから見たら違うのかな?」
「いえ、私もそう思いますよ。
只、契約は一度切りのチャンス。
少々、些か、多少厄介な守護者もついていましたので
確実に結果が出る様に回りくどい手を打ちましたが」
刹那の返答を聞き、さやかは親指で顎を押す。
「んー、分かっちゃうんだよね」
「何がですか?」
「まず、確認しておきたいんだけど、
魔法少女のソウルジェムが濁り切ったら魔女になる、
その事に間違いはないんだよねキュゥべえ」
「無いよ」
「どうして?」
あっさりと返答するキュゥべえにまどかが震える声で問いかける。
「どうして? どうして、私達を騙して、そんな事をするの?」
「騙してなんかいないよ。
人類がどう頑張っても叶える事が出来ない奇跡だって、
魂を差し出すだけの願いを叶えた、ちゃんとそう言った筈だ。
このまま行けば、この宇宙そのものを
維持するためのエネルギーが枯渇してしまう。
だから、僕らはそのエネルギーを補充するために魔法少女の契約を行っている」
「なんか、凄く話が飛んでないかな?」
さやかが、乾いた笑いと共にキュゥべえに剣の切っ先を向けながら言った。
「魔法少女が魔女になる、希望が絶望に相転移する、
その際のエネルギーを集める事で
宇宙を維持するためのエネルギーが補充できるんだ。
そのために、一番効率がいいのが思春期の少女だと言う訳さ」
「ひどいよ………」
「今すぐぶっ殺してやりたいんだけど、
今、僕らは、って言ったよね?」
「ええ」
さやかの言葉にほむらが応じる。
「こいつらは殺しても殺しても沸いて来る、
そしてその全てが全ての個体の
過去からの知識を引き継いでいるから時間の無駄よ。
それでも我慢出来なければ止めるつもりは全くないけど」
「あっそ………やってくれたね、キュゥべえ。
確かに、恭介の事、マミさんの事も、
あんたの言う通りあり得ない奇跡ではあるんだけどさ」
「理解してくれて助かるよ」
そう言ったキュゥべえをギロリと睨み付けたさやかが、
刹那にふっと笑顔を見せた。
「いやね、刹那さんにボッコボコにされた未熟者が
魔法少女になった結果、って奴。
お陰さんで、魔法少女が魔女になる、って言われても
なんとかかんとか立ってられるけど」
「そうですか、ここで一仕事済ませずに済むのであれば何よりです。
私としてもそれだけ痛い思いをした相手に止めを刺すのは
気分がいいものでもありませんし、
これから契約していただくキーパーソンの幼馴染の大親友とあれば尚の事です」
「まあ、理由はどうあれ大事にしてくれてるって事で有難う。
それでさ、ゾンビにされた挙句魔女になるって言われて、
それが、まあこの口先詐欺師に騙された結果だって言っても、
それは自分が決めた事だって、そう言われると厳しいんだよね精神的に」
「………」
「命懸けの魔女退治してて、いつだって、何時でも24時間、
正義のヒーローさやかちゃんで、いられる訳じゃないんだから。
恭介の事だって、頭の中色々ぐちゃぐちゃになりそうだしさ。
それもみんな、あたしが自分で決めた事だって、
いや、まあ、その通りではあるんだからそれは受け容れるしかないんだけど。
まどかだってそうだよ。魔法少女にはそれだけのリスクがあって、
魔法少女としてこれから色々と考えなきゃいけない事もあるかも知れない。
だからさ」
さやかが、真顔で刹那を見直した。
「だから、元々がこんなふざけた契約だもん、
たまには怨む相手でもいないとやってられない、
って事はあるよね」
ポーカーフェイスでさやかを見直す刹那に、
さやかはにこっと笑顔を向けた。
「どっちにしろ、こんな未熟者がこんな重い剣を持った、
そんなあたしに色々教えてくれた。
あたしの友達にも先輩にも良くしてくれた。
その事は心から感謝してるよ、有難う」
「行き掛り上、ですね。
キーパーソンが鹿目まどかさんで、
戦いに関わる集団でこの年頃の集団のメンタルは
色々と手がかかる、それが実利に直結するは経験上知っていましたから。
今回の任務のために障害となる事を整理しました」
「それで、この剣の重さ、知ってるんだよね。
あたしなんかよりもずっと」
さやかは、剣を鞘に納めながら刹那を見る。
「そんな刹那さんが、あたし達と一緒に戦って、
命懸けで色んな事を教えてくれた、危ない時に守ってくれた。
それって、あたしから見たら本物だから」
「………あなたでしたか」
静かに息を吐いた刹那が、つとさやかから視線を外し、言った。
「やっ」
「これは、あなたの仕業でしたか」
片手を上げて現れた、民族衣装風の被り物の女性。
まどか達とは学年一つ分しか違わない筈なのだが、
一見した印象は若い女性そのものだった。
「最初に、このかお嬢様をこちらに合流させた。
美国織莉子に対抗するために、小太郎や楓も動かした。
そうやって、こちらの動向を把握しながら、
私の動きが3Aから切れない様に協力と言う形で巧みに手を打っていた」
「麻帆良パパラッチを出し抜こうとか、百年早いよ桜咲」
朝倉和美は、ずらしたサングラスの向こうで狐目を笑わせた。
「確かに、魔法関係でも公表出来ない情報ばかりが集まっていたと言う
あなたの取材力、情報力は侮れない。
しかし、違う」
「何が?」
刹那の言葉に、和美は唇の端を笑みで歪める。
「美国織莉子がこのかお嬢様をさらった時、
小太郎、楓の動きは素晴らしく速く、的確だった。
何よりも地理的条件の絞り込みが余りにも迅速だった。
それは、魔法ですか?」
「予知能力?」
ほむらの呟きに、刹那は微笑んで首を横に振る。
「確かに、占いは我々のカテゴリーにも存在します。
だからと言って、そう簡単に
ピンポイントに把握する事が出来るなら苦労はしません。
ええ、非常に難しい事ですね。
あの短時間にあれだけの精度の作戦行動、
その地理的条件を魔法だけで決定すると言うのは。
そうですよね?」
==============================
今回はここまでです>>588-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>597
まどかは、もう一人増える気配に視線を向ける。
「長谷川千雨さん」
微笑みかける桜咲刹那に対して、
玄関側から現れた長谷川千雨は至って真面目な顔だった。
「状況から言って、相当早くから目を付けられていた様ですが、
何処で知ったんですか?」
「総督だよ」
勝手に椅子に座り込んだ千雨は、刹那の目を見据えて言った。
「メガロを中心に一定の普及が進んでいたとは言え、
「Blue Mars計画」の始動以来、
魔法世界でも科学的な演算、通信の必要性が飛躍的に高まった。
お陰さんで、今回私もこっちから使える通信ルート見つけて
旧世界側のバックアップもやってはみたが、
はっきり言って必要量に追い付くのは容易ではない状況だ、色々粗も出る。
私なんかは趣味でホワイトハッカーやって
セキュリティの穴やらなんやらを探してたんだけど、
その内、総督のルートの秘匿通信が妙に増えてる事に気付いた」
「あの人でしたか」
千雨の言葉に、刹那はにこにこと応じていた。
「元々「Blue Mars計画」自体が表面化していない訳だが、
裏のルートにしてもおかしい通信。
流出してるのか裏の裏なのか、相手はあの変態メガネだ。
又なんか悪巧みをしてるのか、
正直判断が付きかねたが、手遅れにする訳にもいかないからな。
それで探って行って出て来たのが正真正銘の悪巧みだったって事さ」
失礼、前レスのアンカ>>596で、
それでは続き
==============================
「やはり、魔法世界側の情報セキュリティーでしたか」
「ああ、あっちもこっちも世界規模の悪巧み。
こうなって来ると、科学的な通信、演算を大規模に使う事は避けられない。
私の見る限り、必要な所は旧世界側の超大国が
本気になっても破れない程度には強化されてるから
その辺は心配しなくてもいい。
只、私が知った内容が内容だ、当事者含めてナシ付ける必要は出て来たけどな」
「そのために、長谷川さんが裏で色々画策したと言う事ですか、
私を出し抜くために」
「その辺の事は、どこまでが私で何処迄が朝倉か
今となっちゃ自分でも分からん所もあるけどな」
穏やかな刹那と少々気だるげな千雨。
親しそうでいて、だからこそ、真剣。
そんなやり取りに、見滝原組は息を飲む。
「魔法使いは魔法少女に不干渉、私も最近知った事だが、
私なんかよりずっと昔から退魔師やってる桜咲が、
何がどうなってこんな事になった?」
「仕事で少々遠方に出向きましてね」
落ち着いた口調で尋ねる千雨に、
刹那も世間話を語る様に応じる。
「仕事自体は普通の物の怪退治でしたが、
そこでこの使い魔と行き会いまして」
「キュゥべえか?」
「ええ、なんでも素質があるから魔法少女になって欲しいと。
千雨さんの言う通り、神鳴流としても
窮兵衛とは関わり合いにならない事になっていますので
丁重にお断りしたのですが、
何故か麻帆良に戻る迄にちょこちょこ付き纏って来まして、
109匹目で暇潰しに話を聞いてみました」
「だからっ!」
怒号を発したほむらに刹那はにこっと微笑みかけ、
バン、とベッドを叩いたほむらは下を向いた。
「ええ、聞いてみましたよ。
何でも願いが叶う、と言うのなら、
アスナさんの運命を変える事が出来るか、
彼女の犠牲無しに魔法世界を救う事が出来るか、とね。
答えはノーでした。私の素質では無理だと」
「桜咲の素質では、か」
千雨の言葉に、刹那は笑って頷いた。
「但し、心当たりがあると。
流石の魔法少女でも余程の事が無い限り無理だけど、
たまたま偶然運良く最近神にも匹敵する莫大な素質を持つ
魔法少女候補の存在を察知したと。
只、彼女に接近すると、
窮兵衛の個体が謎の急死を引き起こすので
何者かに妨害されているらしいと」
刹那の言葉を聞きながら、ほむらは下を向いて歯噛みしていた。
「取り敢えず、裏の伝手を使って、
その対象者、鹿目まどかさんの人としての基礎情報を調査しました。
それと共に、ある程度の現実味がありそうだと考えた時点から
水面下で魔法協会内外でも協力者を得るための根回しも行いました。
それでも少々駒が不足しましたからね、
そちら側にいい人材がいないか、と言う事で、
窮兵衛からあすなろのプレイアデス聖団の情報も聞き出して」
「儀式魔法の発動と学園警備の目を引き付けるデコイ、一石二鳥か」
「お陰で、情報が漏れたとは言っても、
こうして最初に3Aの内内で話をする程度の時間は稼げました」
にっこり微笑む刹那を、千雨はぎゅっと睨み付けていた。
「もちろんリスクはあります。しかし、最善を尽くします。
既に魔法協会呪術協会の組織的協力を得る目途はついた。
鹿目まどかさんにも死ねと言っている訳じゃない。
リスク、負担はあります。
しかし、これが最善の手段だと確信しています」
「本気で言ってるのか?」
「本気です」
刹那を見据えて言う千雨に、刹那も笑みを抑えて真顔で応じた。
==============================
今回はここまでです>>597-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>600
千雨は、まどかに視線を向け、天を仰いだ。
「契約前に、知っておくべき事だろうな」
「何、ですか?」
まどかが尋ね、千雨は刹那を見るが刹那はポーカーフェイスを崩さない。
「鹿目まどかの魔法少女契約に伴い、
魔法協会内で裏のプロジェクトチームが動き出す。
今は魔法使いと魔法少女は不干渉、と言う事になってるが、
現実問題としてそうは言っていられない、ってな」
「ええ、そうよ」
千雨の言葉に、ほむらが口を挟んだ。
「もし、まどかが魔法少女となりの魔女になった時は、
それはこの世界そのものが滅亡する時。
魔法使いだろうが魔法少女だろうがどうにか出来る次元の話じゃなくなる」
「そういう事だ、これ以上の大義名分は無い。
ここを突破口に、魔法少女との関係自体を変えちまおうってな」
「魔法少女との、関係?」
さやかが言い、千雨と刹那を見るが、
苦り切った千雨に対して刹那は表情を変えない。
「魔法協会は、キュゥべえ、
インキュベーターと秘密協定を結ぶ、そういう事だ」
「インキュベーター?」
「キュゥべえの本名よ」
問い返すさやかに、ほむらが苦々しく言った。
「インキュベーター、孵卵器。
つまり、魔女の卵を孵すのがあの宇宙生物の本当の役割だって事。
最初っからあいつらはそれが目的で魔法少女の契約を勧誘してる」
「その、インキュベーターとの秘密協定、って?」
「要は、魔法少女を魔法協会の管理下に置こうって話さ。
まあ、いっぺんに全部は無理だがな。
魔法協会とインキュベーターが情報交換をして、
新規の魔法少女を中心に支援と言う形で把握、管理する。
GPS付きの魔法少女は何れGPS付きの魔女となり、
その魂は優先的に女神様に捧げられる」
千雨にじっと見据えられ、まどかはきょとんとしていた。
「今の話は本当かしら?」
「否定する程間違ってはいませんね。
只、現段階で魔法少女界隈に流出したら事ですので
口外は無用に願います」
「桜咲っ!!」
ほむらの問いにしれっと答えた刹那が、
立ち上がった千雨に優しく微笑みかけた。
「支援する魔法少女に
魔女化のリスクを教えるのか教えないのか、曖昧だな。
情報を把握するだけ把握して、支援の有無はこちらの都合次第」
「そもそも、今迄は不干渉でした。
魔法少女達はこちらとは関わりなく魔法少女となり、
魔女となって散って行った」
真顔で言う刹那を前に、千雨は座り直す。
「それを、出発だけ支援しよう、と言う方針が現時点では支配的ですね。
そして、最悪の時は他に被害が出ない様に迅速に」
「そこで得られた果実は女神様の生贄にか」
「長谷川千雨」
しん、と冷えたほむらの言葉に、
千雨はまどかに向けて軽く左手を上げる。
「だが、このまま行けば現実的にそういう事になる」
「そもそも、今迄は不干渉でした。
魔法少女達はこちらとは関わりなく魔法少女となり、
魔女となって散って行った。
世の中には、パン一切れで契約しかねない少女もまだまだ存在する。
もちろん、我々もそこまで阿漕な事をするつもりはありません。
しかし、現実的にこの暁美ほむらさんの様に、
一歩間違えれば世界征服すら視野に入る能力が
未熟な少女達に無造作に与えられ、
それが魔女となって更なる被害に繋がっている。
こちらとしては、全てを救えないのなら、
支援と不干渉を少々都合よく使い分けさせてもらう。
そういう事です」
「そうやって、孤立していた魔法少女を
魔法協会の裏側の管理下に置く。
魔法少女の情報を管理して、
少なくとも管理下の魔法少女に対しては迅速に対処出来る様に。
そして、最初の段階で、余り訳の分からない契約をされない様にも誘導する」
「私達から見たら、窮兵衛との契約によって得られる能力と言うものは
素質によってはデタラメにも程がありますから。
そんなものを組織にも関わらない未熟な少女達、
しかもその多くが孤立している、そんな少女達に無造作に与え続ける。
今迄この世界が無事で済んでいた事自体が奇跡とも思える話ですし、
実際神鳴流の歴史の中にもその瀬戸際と思われるものが存在しますからね。
その辺りの事はなんだかんだ言って窮兵衛が
地球と言うグリーフシードの養殖場を潰さない様にコントロールしていた、
とも考えられますが」
「今度はそっちでグリーフシード牧場を続けるって事か?
いや、その前の、養殖場の餌作りか。
こっち側、魔法世界じゃあ、
死刑囚による使い魔の養殖まで検討されてるって言うからな」
「長谷川千雨、今すぐその口を閉じなさい」
「今、知らなきゃ後悔じゃすまない」
青い顔で、下を向いて震え出したまどかの側で、
ほむらと千雨が睨み合いで応酬する。
「だ、大丈夫、です」
「大丈夫、まどか?」
返答したまどかにさやかが声を掛ける。
「うん、あの、魔法少女は、色々と命懸けだった、それは見て来た。
何て言うか、真面目に考えたらその、
そういう事も、あり得るのかなって」
「魔法少女は、非常に不完全で不安定なシステムです。
そこに突っ込む私達の手が綺麗なままとは言わない。
只、あなたがこの世界の為に、
私の大切な友のために魂を捧げてくれると言うのなら、
私達はその誠意に応え、魔法少女を含む公共の福祉のために
最善を尽くす、それだけです。
そうであっても、それは決してあなたの罪ではない」
「そこが本音か」
呟いた千雨に、刹那が涼しい視線を向ける。
「なあ、桜咲、忘れてる事はないか?」
「なんでしょうか?」
「その、魔法使いすら凌駕するとんでもない力をコントロールする、
そんな計画を立ててる魔法使いも、
私らと、魔法少女達と同じ心を持ってる人間だ。
だからこそ、魔法使いは今迄魔法少女には関わらないで来た、って事を」
「もちろん分かっています。
しかし、最善の為には他に方法が無いんです」
そう言って、一秒、二秒、刹那は千雨を静かに見据える。
「私はうまくやる」
==============================
今回はここまでです>>601-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>604
「で?」
宣言した刹那に、千雨は問い返す。
「それで、どうする?」
「どうする、とは?」
「あんたはどうするんだ? って聞いてるんだよ桜咲。
汚れた手も鹿目まどかの、利用される魔法少女の怨みも
全部てめぇで飲み込んで、それであんたはどうする?
神楽坂、近衛、ネギ先生、
大切な人達の幸せを優しく微笑んで遠巻きに見守るってか?」
「いけませんか?」
「いい悪い以前に無理だ」
「それか何故?」
「馬鹿かお前は?」
真顔で聞き返す刹那を前に、両眉を吊り上げた千雨が押し殺す様に言った。
「バカレッドは馬鹿は馬鹿でもあんたも知ってるレベルの大馬鹿だ。
そんな奴が今更見過ごすとでも思ってるのか?
お前があいつにとってそんなに軽い存在だと思える程お前は馬鹿なのか?」
そう言って、千雨は人差し指を立てながら立ち上がった。
「ここで問題だ、うちのクラスの中で、
一番長い間、一番深く、
あんたの事を見て来てあんたの事を大切に思って来た、
失いたくないと心から思ってる、それは一体誰だ?」
双方、不敵な笑みを交わす。
「だったら身を引いて姿を消すか。
大切な人達が幸せであればいい、それで自分も満足か。
私が知ってる桜咲刹那は誇り高き剣士であり、
心から友達を大事にする、とても誠実な、一人の女一人の人間だ。
だから、無理だ」
「あたしも、そう思う」
口を挟んだのはさやかだった。
「なんか、分かっちゃうんだけど、
刹那さんって剣は凄いけど、
その辺なんと言うか、実はかなりポンコツだと思う」
「正解だ」
「だから、隠し通す事なんて出来ないと思うし、
それに………」
「それに、なんです?」
強き剣士に真顔で問われ、さやかは言葉に詰まるが、
それでも、敬愛する師匠の、
大切な仲間の目を正面から見据える。
「それに………刹那さん」
さやかは一度下を向き、呼吸を整える。
「刹那さん。
刹那さんは、
本当の気持ちに向き合えますか?」
主観的時間、客観的時間も不明瞭な沈黙に圧倒され、
さやかはガバッと頭を下げた。
「ごめんなさいっ!
あ、あの、これ本当はあたしが言われた事で、
でも、刹那さんって、それだけの覚悟してる刹那さんが
友達を凄く大事にしてるのって凄く分かるし、
だったら、だったら、刹那さん本当に凄い人だと、
あたしなんかよりずっと強い人だとそう思うけど、
だけど、だから、刹那さん本当は優しくて情がある人だから、
だから、そんな一人で、そんな大切な友達を、大切な人を、
だからっ!!!」
さやかの叫びと共に、下を向いていた千雨が上を向いて笑い出した。
「当たり、正解だよく言った」
「だから、後悔なんて、して欲しくない。
それって、間違えたら、凄く辛いから………」
「弟子まで泣かせてんのかよ桜咲」
「弟子にした覚えはないんですけどね。
有難うございます、美樹さん」
ふうっと息を吐いて、刹那が応じる。
「確かに、そうしなければならない、
守るためには皆から離れなければならないかも知れない、
それはとても辛い事です。しかし、私は………」
「だから自己満してんじゃねぇ桜咲っ!!!」
怒号が言葉を遮った時、刹那は千雨に胸倉を掴まれていた。
「生憎だが、私はそれを認める訳にはいかないんだ。
ちょっとばかり関りが深過ぎてな。
自分達の為にあんたが傷つく、その事で自分が傷付く、
あのガキらにそんなモン背負わせる訳にはいかない。
そこん所、分かんねぇのかこの大馬鹿野郎は………
何がおかしい?」
「いえ、すいません。
恐らく、それは正解です」
静かに微笑み、認める刹那を前に、
千雨はゆっくり手を放す。
刹那は、静かに立ち上がった。
「ええ、あなたがネギ先生を本気で心配して発している言葉です。
そうであれば、それは間違いなく正しい事、
ネギ先生の真意に叶う事の筈です、あなたは正しい」
「って褒められた先から、
それでもやる、って意気込みはビンビン伝わって来る訳だけどな」
微笑む刹那に、千雨はギリッと歯噛みする。
「ですから、その時はネギ先生達をお願いします。
このままでは、アスナさんは私達と一緒の卒業式すら迎えられません。
アスナさんには、ネギ先生と、このかお嬢様と、その他の皆さんと、
魔法世界の闇の中から光へと生まれ変わった人生を、
そこで出会った人達と限りある人生を全うしてもらいたい。
皆さんにも、アスナさんと言う大切な人との思い出を、
これからも十年二十年、人としてその時が来る迄作り続けてもらいたい」
「だから、そこにはあんたがいないと駄目なんだっ!」
千雨は腕を振り、怒号した。
「あんたがいないと、だから………
なあ、桜咲よ、私には無理なんだよ。
あんたら四人の絆に入って行く、なんて事出来る立場じゃない。
だから、出来ればそっち側で解決して欲しかったがそれも無理だった」
「色々、仕組んでくれたみたいですね」
「小細工だよ。私にはそんな事しか出来ない。
そうだ、私にはそんな事しか出来ない。
だから、今更あんたに抜けてもらったら困るんだよ。
神楽坂だって、もちろん隠れて泣いてるかも知れない。
それでも、短くても残りの日々を目一杯お前らと過ごしてる。
桜咲、あんたを含めた仲間の事が大事だから、だから、そうしてるんだ。
それを桜咲、お前は又、
大切な人達を置き去りにして自己満足でひとりぼっちになる気か?
あんたが自分一人で抱え込んで、それで助けてやったって」
懸命に言葉を探す千雨に、刹那は深く頭を下げていた。
「長谷川さん、その時はネギ先生達の事をお願いします」
「だからっ! ………」
ぐわっと迫ろうとした千雨は、清々しい微笑みに息を飲んだ。
「駄目、なんですよ。
あなたは正しい、だってあなたが、長谷川千雨さんが、
ネギ先生達を、そして私の事を心から心配し、思ってくれている。
そうやって、ネギ先生から心からの信頼を寄せられた
あなたの言葉です。それは、正しい事です」
「ちょっと、私の事、買い被りが過ぎるんじゃないか?」
「いえ、これでもあなたよりは少々付き合いが長いもので。
それでも、駄目なんです。
私を、私に光を、幸せな世界に導いてくれたのはアスナさんです。
そのアスナさんが、ようやく手に入れた人としての幸せを根こそぎ奪われる。
それを看過するなんて、どうしても出来ない。
アスナさんに救われた私は、こんなやり方しか見つけられなかった。
ならば、それを貫くしかありません。
ですから長谷川さん、もし私の行いにより皆さんが傷付く様な事があれば、
その時はネギ先生達を、どうかよろしくお願いします。
それが出来るのは、あなたです」
「買い被るにも、程があるって………」
「鹿目まどかさん」
「はいっ!」
言葉も見つからず成り行きを見守っていたまどかは、
千雨に向けて深々と下げた頭を下げた刹那に名を呼ばれ、
まどかはぴょこんと飛び上がりそうになった。
「お願いします」
刹那は、深く頭を下げた。
「小細工をした事は謝ります。
どうか、どうか私の友の為に、
私の掛け替えの無い友の、せめて人並みの幸せのために、
あなたの魂を捧げていただきたい、お願いします。
あなたを魔女なんかにはしない、
私が身命を賭してあなたを守る、誓うと言うなら
神にも悪魔にも誓う、だから」
「そこまでだ」
一言一言、派手さはなくとも胸の中に沈む様な
重い嘆願を只、黙って聞いていたまどかの横から
千雨が口を挟んだ。
「鹿目まどかさん、契約は待て。
もう私らの立ち入る事じゃない、当事者に決めてもらう」
「当事者?」
千雨の言葉に、まどかが聞き返す。
「ああ、当の本人がこっちに来てるからな。
元々、そのつもりだった。
桜咲は一人で思い詰めて動いてたからな、
こいつらの絆は本当は私なんかが入り込めるもんじゃない。
だから、最初に近衛を合流させて、
そこからもなるべく3A単位に巻き込んで
それとなく穏便に収拾しようと画策はしたんだが、結果はこの様だ。
契約の前に、鹿目まどかってとんでもない女神様候補が
行き掛り上神楽坂明日菜の真実を知っちまったって事を
当の本人に伝えて判断を仰ぐ。
案外、泣いて縋られるかも知れないけどな。
だから、今日明日ぶっ壊れる世界じゃないし
神楽坂が礎になるのもまだ先だからそれまでちょっと待ってくれ」
千雨の言葉を聞き、刹那はどさっとベッドに座り込んだ。
そして、長谷川千雨は、つーっと顔を動かす。
その視線の先では、壁に小さな穴が空いていた。
「動くな」
「暁美、ほむらだったか?」
つーっと汗を浮かべてそちらを見る千雨の前で、
米軍制式M9拳銃を手にしたほむらはゆっくりベッドを降りていた。
「長谷川千雨、朝倉和美、桜咲刹那の邪魔は許さない」
「ちょっ、転校生っ?」
「ほむらちゃんっ!?」
「暁美さん? どういう事ですか?」
刹那が訝し気に尋ねる。
「………少し、疲れたのかしらね?」
ほむらは吐き捨てる様に言い、バッと黒髪を払う。
「桜咲刹那に尋ねる、
魔法協会は、まどかのために本当に協力するの?」
「はい、その内諾は得ています」
「桜咲刹那、あなたの身命を賭してまどかを守ると、
その事は本当に誓えるの?」
「誓います、その命に代えて!」
「ワルプルギスの夜が来る」
「魔法少女が対処する超巨大魔女ですね。
末法の京を破壊し尽くし神鳴流門下と妖刀ひなを用いた宗家の命、
その九割方を失ってようやく鎮圧したと言う記録も残っています」
「見滝原の、まどかの大切な人達が住む街を破壊しようとしている。
それがもうすぐ来る。その意味、分かるわね?」
「ええ、腕が鳴りますね」
「………やはり、少し、疲れてるのね。
こんな事を考えてしまうなんて」
「そ、そう、ほむらー、あなたつ………」
なんとかなだめようとした朝倉和美が、
チャキッと銃口を向けられ手を上げ直す。
「今更そんな甘い話に釣られるなんて、
今更、こないだ知り合ったばかりのエゴまみれの他人を、
信じようなんて」
「私のエゴを、信じて下さい。
あなたと利害が一致している、この一致が離れる理屈は最早存在しない。
信用出来ないのは私の力量ですか?」
「ふざけないで、人の事を散々散々散々いい様に
ぐっちゃぐちゃのぐちゃに弄び倒して凌辱しておもちゃにしておいて」
「あなたが相手では、先手必勝からのハメ技で心身共に音を上げる様に
徹底的に屈服させておかない事にはこちらが危なかったので、
実の所結構薄氷の上を渡る疲れる仕事でした」
「当然ね」
千雨と和美に銃口を向けながら、
ほむらの左手がファサァと黒髪をすくう。
「鹿目………まどか」
「うん」
ほむらの横目に、まどかはぐっと前を見て腹の底から答えていた。
「あなたは………
自分の人生が、貴いと思う?
家族や友達を、大切にしてる?」
「わ、私は………大切、だよ。
家族も、友達のみんなも、大切で、
とっても大切な人たちだよ」
過去に聞いた事がある、二度目の問いは、切羽詰まって聞こえた。
だが、まどかの答えは変わらなかった。
「やっぱり、少し、いや、結構疲れてるみたい。
まどかは優し過ぎるし
インキュベーターは余りに悪辣な上に物理的な対処が出来ないし。
ここまで来て、肝心な所で一歩妥協しよう、
それも、それもこの間出会った他人を信じて、
そんな事を考えるなんて。
それでも無理なものは無理、そう考えざるを得ないのかしら」
段々早口になりながら、
無造作に泣き笑いするほむらの左手が黒髪を払う。
「長谷川千雨、朝倉和美。
私の能力は暗殺に特化している。
もし、桜咲刹那のプランを妨害すると言うのであれば、
気が付いたら大変な報復を受けていた、と言う事を覚悟してもらう」
早口で告げるほむらを、千雨はぐっと睨み付ける。
何か、最後の最後で前提を誤った様な、
そんな息の詰まる様な焦りが千雨と和美の心を焦がす。
「そう。まどか、あなたの優しさは………
否定なんて出来ない。だって、まどかだから。
だから、私から伝えたい事がある」
「うん」
拳銃を構え、見るからにキリキリとしたほむらの言葉を、
まどかは真剣に聞いていた。
「この魔法世界、そして、ほんの少し出会っただけの神楽坂明日菜、
彼女に関わる人達の為にその魂を捧げ魔女と戦う価値があると思うなら、
命懸けの戦いのために、
この桜咲刹那の言葉、誠が信じるに値すると思うなら」
僅かに言葉を切ったほむらを、まどかは真剣に凝視する。
「
鹿目まどか。
あなたがそう信じる事が出来るのなら、
心から
そう思うのなら
魔法少女に
なりなさい
」
==============================
今回はここまでです>>605-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>616
「!?」
ほむらが気配に気づいた、と、思った時には、
ほむらの右手には強い打撃を受けて痺れが走っていた。
「が、っ………」
そして、拳銃を取り落とし、楯に伸ばそうとしていたほむらの右手が
激痛と共に動かなくなる。
「かはっ!?」
その時、桜咲刹那は愛刀「夕凪」を引き寄せていた。
居合には向かない野太刀であるが、
神鳴流補正で抜き打ちしようとした時には、
刹那が手を掛けた夕凪の柄は掌でぐいと押され、
刹那の腹には別の野太刀の柄が叩き込まれていた。
そして、気づいた時には、刹那の小柄な体は
たあんと床に投げ飛ばされていた。
床の上ですぐさま体勢を立て直し、
既にカードに戻っていた匕首・十六串呂を手にした瞬間、
刹那は己の前髪に触れる野太刀の刃を見ていた。
「確かとうこ先生、だっけ?」
「はい、麻帆良学園で会いましたね。
これ以上の危害を加えたくはありません、武器を置きなさい」
さやかの問いに葛葉刀子が答え、
刹那がカードを置き刀子が野太刀を鞘に納める。
「つ、つっ」
「あー、関節外れてる。あたしも肩とかやった事あるし。
痛覚遮断しても動かないでしょ、
今、治癒したら戻ると思うから無理しないで」
地団駄踏みそうに焦るほむらに、さやかが駆け寄っていた。
そして、刀子を睨み付けたほむらだったが、
刀子の涼やかな視線に顔を背ける。
「格が違う?」
「黙りなさい」
ぼそぼそと言葉を交わす。
さやかの言葉は、ほむらにとってその通りとしか言い様がないものだった。
一度二度の奇策は通じるかも知れないが、
恐らく幼少時より体系的に鍛え抜かれたプロフェッショナルの戦闘集団
神鳴流の実力はほむらの心身、骨身に染みて理解していた。
「なかなか荒っぽいですね使者殿」
玄関側から現れたクルト・ゲーデル総督は、
背後に警備兵を従えて形だけ丁重な言葉を使いながら、
手にした野太刀が何時両断してもおかしくないオーラに満ちていた。
「抜かりましたね」
刀子が口を開く。
「そもそも私は近衛の使者ではない。
極秘計画だからこそ、簡単に私を通してしまった」
「なんだと?」
そのゲーデルの声は、さやかが震え上がるものだった。
「役儀により言葉を改めます。
神鳴流青山宗家名代葛葉刀子より申し渡す。
桜咲刹那、クルト・ゲーデル、控ぁえよぉっ!」
刀子の一喝と共に、床では桜咲刹那が美しい土下座を完成し、
クルト・ゲーデルも一瞬の驚愕の後に片膝をついた。
「人払いを」
刀子の言葉にゲーデルが目で応じ、執事に率いられた警備兵が撤収する。
「桜咲刹那、その身柄を葛葉刀子預けとする。
以後、一切の任務を中止し神奈川宗家に直ちに出頭せよ。
これは、協会、近衛家に優先する青山宗家の命である。
逆らうならば直ちに流派追放、奉公構えの上で討伐を行うもの哉!」
「は、はっ………」
既に刀を収め、直立して宣告する刀子を前に、
刹那はぱくぱくする口から辛うじて返答していた。
「クルト・ゲーデル。
魔法少女利用計画を直ちに凍結し、
地球側協会よりの報せを待つ事を強く命ずる。
既にかの地で高き役目に就く貴公が青山家をどう思うかは知らず。
されど、この命に逆らうならば神鳴流門下に非ず。
その上、魔に与するものとして何者が立ち塞がろうと直ちに討伐するもの哉!」
ゲーデルが、バッ、と、流れ出した書状を受け取る。
「神鳴流青山宗家は、今後も引き続き窮兵衛に与する事を許さず。
もしこの上計画を続けると言う事であれば、
近衛家、協会、如何なる者であろうと、
窮兵衛と言う魔に与し人の世を危うくするものとして、
神鳴流が果たして来た退魔の任を遂行する事も辞さず。
この意志を強く付言するもの哉!!」
刀子による申し渡しに、ゲーデルが改めて頭を下げた。
「宗家は、本気ですね」
「そこまで、宗家は窮兵衛を認めないと言う事です」
書状を手にしたゲーデルの言葉に、刀子が告げた。
「内輪揉め、でいいのか?」
「長谷川千雨、朝倉和美さんですね?」
千雨が呟き、刀子の呼びかけに二人は頭を下げた。
「今回の事は、言わば近衛一族による上からのクーデターです。
但し、木乃香お嬢様は関知していない筈です。
関東魔法協会の近衛近右衛門、
その娘婿である関西呪術協会の近衛詠春両代表、
魔法世界側はクルト・ゲーデル総督を頂点に、桜咲刹那を接点として
トップと一部の人間の間で秘かに画策された企てです。
本来、魔法使いと魔法少女は不干渉。
しかし、地球の存亡に関わる素質を持つ鹿目まどかさんが契約を行い、
しかも、そのために魔法世界と魔法世界の姫君が救われる。
刹那が予備調査の名目で接触中にその様な事が実際に起きてしまえば、
それは今ここにある危機であり恩義としてその様な対応は許されない。
あくまで行き掛り上の事として既成事実を作り、
そのまま、魔法協会による
魔法少女の管理と言う所に迄済し崩しに話を進めてしまう。
裏で準備を進めておいて、既成事実が発生し次第、
刹那の報告と言う形で直ちに理事会の承認を得て準備を実行に移す。
これが、今回の近衛一族の計画です」
「やっちまったモンは、仕方がない、か」
「その通り、そこが狙いでした」
千雨の言葉を、刀子は肯定した。
「その進め方自体も、恐らくは神鳴流青山家から
事前同意を得る事は無理だと言う事も一因と推測出来ます。
その通りです、神鳴流は決して窮兵衛を認めない。
古よりの人の世で退魔の任に当たって来た青山家として、
只の物の怪よりも遥かに恐ろしい人の欲得、愛憎に関わる
人の欲に途方もない力を与える窮兵衛は決して肯定してはならない。
例えその時の人の道にすら関わる、
今その時には美しい結果を出す事が出来る力であっても、
人には過ぎた力であると。
その事を歴史の積み重ねによりよくよく知っているからです」
「人には過ぎた力、ね」
刀子の言葉に、千雨がふうっと息を吐いて言った。
「ええ、何とか3Aの中で収拾しようとしたあなた達には
必ずしも添えない事になりましたが」
「いえ、正直助かりました。
止めて止められる状況でもなかったので。
ええ、私らには無理、でした。
神楽坂を諦めろ、なんて」
千雨の言葉に、刀子は小さく頷いた。
==============================
今回はここまでです>>617-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>621
「さあ、刹那………」
促そうとした刀子は、詰まった様な声を聞いた。
「して、ですか………」
「刹那?」
「どうして、ここまで………
ここまで、進めた………アスナさんのため、ここまで進めた………
何故、アスナさん、なんですか………」
「刹那………」
「このままではアスナさんは、卒業式すら迎えられない。
今迄、麻帆良に来る迄の長い長い時間を兵器として使われて、
ようやく手に入れた幸せすら手放さなければならない。
どうして、駄目、なんですか………
誰かを不幸にする、少しは、負担になるかも知れない。
それでも、少なくとも今までの魔法少女よりも、
リスクをコントロールして、なのに、どうして、駄目なんですか?
どうしてアスナさんだけが、
どうしてアスナさんを助けては、いけないんですか………
私を助けてくれたアスナさんを、
私を、この光の中に導いてくれたアスナさん、どうして………」
「諦めるしか、なさそうね」
必死に抑えようとしても最早ままならない、
そんな刹那の溢れ出す感情を聞きながら、
ほむらがぽつりと言った。
「この様子では、政治的に完全に包囲されているのでしょう。
協会そのものを敵に回した以上、私達は終わりよ桜咲刹那」
「刹那、今ならまだ穏便に収拾出来ます。
今回の事は、まだ宗家一人の胸に留まっている事。
近衛家が窮兵衛との提携を画策していた等と言う事が知れたら、
近衛家、窮兵衛、双方の力が魔法の世界の中で
政治的に値踏みされて収拾のつかない事態になる。
こちらでの収拾が済み次第、宗家が長と直談判して諦めさせる。
もし交渉が決裂するならば
離脱も辞さぬ覚悟で理事各位に檄文を発し理事会の招集を求める。
それが青山宗家の意向です。
あなたの事を咎める心算はありません」
落ち着いた言葉で説く刀子が、片膝をついた。
「窮兵衛の奇跡は、例えその時どれだけ美しく見えても、
人が扱う、まして人の権力が統べるには過ぎたものなのです。
この機会に魔法少女を取り込み、利用しようと言う
政治的、権力強化のための野心もあったのでしょう。
しかし、この企ての中心となった顔ぶれを見れば、
神楽坂明日菜さんを心から思っての事だと、
あの少女の幸せを心から願ったと、私は確信している。
魔法先生として、魔法使いとして一人の大人として、
あなたのその言葉、へこたれず、ただひたむきに守り続けて来た
刹那のその言葉を私は決して忘れない」
「見苦しい様を、失礼致しました」
渡された懐紙を顔に押し付け、刹那がようやくの言葉を発する。
「月並みな事しか言えませんが、神楽坂明日菜さんが
既にその覚悟を決めた、と言うのであれば、
せめて刹那が、お嬢様が、残された時間を価値あるものに」
刀子の言葉に、刹那は長く頷く。
「鹿目まどかさん」
「はい」
「申し訳ありませんが、収拾する迄もう一度麻帆良にご同行下さい。
率直に申し上げて、少しの間軟禁させてもらいます。
調査と、万一の身の安全のためです。
なるべく短い間、学校や家族にはこちらで必要な手配を行います。
その後の事に就いては関係が切れる事になろうかと、
少なくともこちらからの魔法少女への支援は
期待出来ない状態になると心得て下さい」
「分かりました」
刀子の説明に、まどかが頭を下げた。
× ×
日本、関東地方パーキングエリア。
「すいません、皆さんにも時間を取らせてしまい」
「いや、正直助かりました」
駐車場のマイクロバスの座席で、刀子の言葉にさやかが言った。
「特別機でイミグレーションの便宜までしてもらって。
ぶっちゃけ二重三重の密入国だし、帰りどうしようかと」
「無茶をします。もっとも、原因を作ったのはこちら側ですが
強き力を持つのなら、今後は身を慎む様に」
「はい、刹那さんからも散々教わりました」
「そうですか。
これから少し、調査のために麻帆良に留まっていただきます。」
「分かりました」
さやかと言葉を交わしていた刀子が、スマホを取り出した。
失礼、中座した。
続き投下します
==============================
「いないとはどういう事ですかっ?」
「トイレの、中から鍵を閉めて、いつの間にかいなくなっていましたっ!」
通話の相手は、夏目萌だった。
魔法協会にも秘密裡に魔法少女の調査を継続していた夏目萌は、
今回声がかかり急遽の呼び出しで空港から刀子達に合流していた。
「あれ程気を付ける様に………探しなさいっ!」
「はいっ!!」
バスで刀子の声を聞きながら、
千雨はノーパソ型のアーティファクトを操作する。
「電話の位置情報………
もうここを出てる、道路沿い、車か?」
「まずい、ですね」
刀子が苦り切った声で呟く。
「まだ、こちらは組織で動ける段階じゃない、
協会の隠蔽用のラインを使って警察を動かしたりしたら」
「青山が動く前に近衛家が、か」
「口の堅い信頼出来る関係者を動かします。
彼女一人ですぐに何か出来るとも思えません」
千雨の言葉に、刀子は自分に言い聞かせる様に言った。
ーーーーーーーー
一人の美女が、勝手知ったる大浴場に足を踏み入れていた。
墨絵の様に整った目鼻立ちには凛々しい力強さ。
艶やかな黒髪をすっぱりと切り揃えたショートヘアがよく似合う。
スポーツウーマンらしく引き締まった健康美は伸びやかな長身で、
それが、前時代語で言う花の女子大生、これから満開の盛りに向かう年頃。
雪の様に白い肌理細やかさに包まれた柔らかな力強さと矛盾なく同居して、
成熟した一人の女性の魅力を完成させる。
掛け湯代わりにシャワーを浴び、
タオルを頭に乗せて大浴場の熱い湯に浸かる。
そして、入口に視線を向けた。
目に付いたのは、自分のかつてを思われる素晴らしい黒髪だった。
目に入った、たっぷりとしたストレートの黒髪は烏羽の艶やかさ。
(しのぶぐらいか?)
心の中で呟くが、それは、今ではない。
あの、騒がしき青春の日々の事。
見るからに、昨日今日女性になり始めたと言う佇まいの華奢な少女。
見事な黒髪がよく似合う、目鼻立ちの整った美少女だが、
抜ける様に色の白い、全体に小柄で手折れそうに華奢な姿は
儚さすら感じられる。
(新入り、ではないんだろうな)
現れた少女は、シャワーで汗を流すと作法通り黒髪をタオルにまとめ、
大浴場にその身を沈めた。
「お願いがあります」
「なんだ?」
「私の大切な友達、鹿目まどかを助けて下さい」
「随分、唐突だな」
「時間がありません。桜咲刹那の計画が実行に移されれば、
魔法協会としても放置は出来なくなる。
もし、まどかの契約だけ利用して、等と言う事をしたなら、
私はもちろん少なからぬ魔法少女が魔法協会と敵対する事になる。
魔法協会は総合力としては上だと、それはよく分かってる。
だけど、特化した魔法少女を、
特に役職に就く魔法使いは甘くみない方がいい」
「脅しかな?」
「その通りです。桜咲刹那の計画が実行されれば、
魔法協会の保護下に入ればまどかの魔女化のリスクは格段に下がる。
ゴキブリやウィルスに等しいキュゥべえのストーキングを
延々警戒し続ける必要も無くなる。
せめて人並みの幸せを、神楽坂明日菜さんと魔法世界を救った見返りとして、
魔法少女であっても、せめてその程度の見返りを得る事が、出来ます。
だから、どうかこの計画、黙認して欲しい………
お願いします」
「申し訳ないが、それは出来ない」
湯面に顔を付ける寸前の懇願に、静かな口調で返される。
「その思いは、貴いのだろう。
刹那の思いも、貴い。
だからこそ、その、人々の思いに絶対の力を与える
窮兵衛と言うものを我々が、
例え裏側であっても認める事は許されない。
それは「ひな」の様なもの。
その歪みを使いこなせる程、我々は正しくも賢くもない」
ゆっくりと首を横に振り、染み入る様に告げる。
「そして、それだけの熱い思いは、
この程度のお説教で留まるものではないのだろう」
ーーーーーーーー
この日、神奈川県内の女子寮で発生した一つの爆発は、
浴室を中心に建物の半ば過ぎを爆散させた。
==============================
今回はここまでです>>622-1000
続きは折を見て。
や、ら、か、し、た………
大変申し訳ないが、
色々粗と言うか間違いがあったのをそのまま投下した。
開き直って加筆修正版から投下します。
>>625以降は全削除扱いと言う事でお願いします(土下座)
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>624
「いないとはどういう事ですかっ?」
「トイレの、中から鍵を閉めて、いつの間にかいなくなっていましたっ!」
通話の相手は、夏目萌だった。
魔法協会にも秘密裡に魔法少女の調査を継続していた夏目萌は、
今回声がかかり急遽の呼び出しで空港から刀子達に合流していた。
「あれ程気を付ける様に………探しなさいっ!」
「はいっ!!」
バスで刀子の声を聞きながら、
千雨はノーパソ型のアーティファクトを操作する。
「電話の位置情報………
もうここを出てる、道路沿い、車か?」
「まずい、ですね」
刀子が苦り切った声で呟く。
「まだ、こちらは組織で動ける段階じゃない、
協会の隠蔽用のラインを使って警察を動かしたりしたら」
「青山が動く前に近衛家が、か」
「口の堅い信頼出来る関係者を動かします。
彼女一人ですぐに何か出来るとも思えません」
千雨の言葉に、刀子は自分に言い聞かせる様に言った。
「探すぞっ!」
千雨が叫ぶ。
「朝倉、アーティファクトの用意。
何か分からないか近場を見てみます。
葛葉先生は見張りもかねて待機お願い出来ますか?」
「ええ、そうですね。分かりました」
ほんのちょっとの間虚を突かれた刀子が千雨の言葉に応じた。
ーーーーーーーー
パキャッ、と、軽快な音を立ててお食事中の明石裕奈は、
肉汁ジューシーなソーセージを堪能しながらスマホを取り出した。
「もしもし? 千雨ちゃん?」
裕奈の言葉に、オープンカフェの相席で
卵スープのカップを両手持ちしていた佐倉愛衣がぴっとそちらを見る。
「え? 何? 神鳴流の神奈川?」
「貸して下さい」
愛衣に言われ、裕奈は半ばひったくられる様にスマホを渡す。
「動きがあったみたいね」
近くのテーブルからは、
その愛衣と背中合わせの位置に座りながらの呟きが漏れる。
ーーーーーーーー
一人の美女が、勝手知ったる露天風呂に足を踏み入れていた。
墨絵の様に整った目鼻立ちは穏やかな落ち着きを見せ、
セミロングの艶やかな黒髪を
素朴にまとめたポニーテールもよく似合う。
スポーツウーマンらしく引き締まった健康美は伸びやかな長身で、
それが、前時代語で言う花の女子大生、これから満開の盛りに向かう年頃。
雪の様に白い肌理細やかさに包まれた柔らかな力強さと矛盾なく同居して、
成熟した一人の女性の魅力を完成させる。
掛け湯を浴びて大きな岩風呂の温泉に身を沈め、
熱い湯に浸かりながら入口に視線を向けた。
目に付いたのは、自分のかつてを思われる素晴らしい黒髪だった。
目に入った、たっぷりとしたストレートの黒髪は烏羽の艶やかさ。
(しのぶぐらいか?)
心の中で呟くが、それは、今ではない。
あの、騒がしき青春の日々の事。
見るからに、昨日今日女性になり始めたと言う佇まいの華奢な少女。
見事な黒髪がよく似合う、目鼻立ちの整った美少女だが、
抜ける様に色の白い、全体に小柄で手折れそうに華奢な姿は
儚さすら感じられる。
(新入り、ではないんだろうな)
現れた少女は、掛け湯で汗を流すと作法通り黒髪をタオルでまとめ、
同じ岩風呂にその身を沈めた。
「お願いがあります」
「なんだ?」
「私の大切な友達、鹿目まどかを助けて下さい」
「随分、唐突だな」
「時間がありません。桜咲刹那の計画が実行に移されれば、
魔法協会としても放置は出来なくなる。
もし、まどかの契約だけ利用して、等と言う事をしたなら、
私はもちろん少なからぬ魔法少女が魔法協会と敵対する事になる。
魔法協会は総合力としては上だと、それはよく分かってる。
だけど、特化した魔法少女を、
特に役職に就く魔法使いは甘くみない方がいい」
「脅しかな?」
「その通りです。魔法協会がまどかを利用するなら、
使い捨てにする事は魔法少女が許さない。
そして、桜咲刹那の計画が実行されれば、
魔法協会の保護下に入ればまどかの魔女化のリスクは格段に下がる。
ゴキブリやウィルスに等しいキュゥべえのストーキングを
延々警戒し続ける必要も無くなる。
神楽坂明日菜さんと魔法世界を救った見返りとして、
魔法少女であっても、せめて人並みの幸せを。
その程度の見返りだけでも、得る事が出来る。
だから、どうかこの計画、黙認して欲しい………
お願いします」
「申し訳ないが、それは出来ない」
湯面に顔を付ける寸前の懇願に、静かな口調で返される。
「その思いは、貴いのだろう。
刹那の思いも、貴い。
だからこそ、その、人々の思いに絶対の力を与える
窮兵衛と言うものを我々が、
例え裏側であっても認める事は許されない。
それは「ひな」の様なもの。
その歪みを使いこなせる程、我々は未だ正しくも賢くもない」
ゆっくりと首を横に振り、染み入る様に告げる。
「そして、それだけの熱い思いは、
この程度のお説教で留まるものではないのだろう」
ーーーーーーーー
この日、神奈川県内の女子寮で起きた爆発は、
浴場を中心に建物の半ばを吹き飛ばしていた。
==============================
今回はここまでです>>629-1000
本当にすいませんでした。
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>633
ーーーーーーーー
時間停止を解除した暁美ほむらの背後で、
爆音と共に巨大な火柱が上がる。
次の瞬間には、ほむらは再び時間を停止していた。
(あれで終わり、とは思っていなかったけど)
そうして、女子寮「ひなた荘」の外に退避していたほむらが
大量の迫撃砲、対戦車携行ミサイルを並べ、次々と発射する。
停止した時間の中で、
ほむらとの繋がりを失った砲撃は空中でその動きを止める。
時間停止解除と共に、空中に留まっていた砲撃は、
尾を引いて上空を横切る火の玉に吸い込まれて行った。
ーーーーーーーー
(これで、少しは………)
起動を予測して近くの川に隠匿していたミサイルを落下させたり
燃料満載のタンクローリーを突っ込ませたり
やっぱり川の中に隠匿していた兵器を
キャスターから叩き込んだりした結果として、
裏山へと墜落するのを見届けたほむらが、
その辺りに設置した軍用プラスチック爆薬の起爆スイッチを押す。
地形が変わる程度の爆発を背景に、
一部外観の変わった「ひなた荘」玄関前で
ほむらはバッと黒髪を払っていた。
「神鳴流秘剣、百花繚乱」
「!?」
そして、振り返る途中で、
ほむらの体は桜舞い散る衝撃波に吹き飛ばされていた。
「刹那から聞いていなかったか?
神鳴流に飛び道具は通用しないと」
ほむらの手で×字に組んだジャングル・マチェットと軍用ナイフが、
デッキブラシの一撃を受け止めていた。
「随分、頑丈ね」
「あの程度でどうにかなっていては、
万万が一あり得る事が無いでもないかも知れない
でもないとも言い切れない事もないでもない
管理人は務まらないからな」
ーーーーーーーー
「流石に、奇策頼みに本家の相手は荷が重かったか」
この辺りは無事だった「ひなた荘」物干し台で、
フェイト・アーウェルンクスがすうっと右手を上げると、
周辺の空中に大量に浮遊していた石針が鋭く飛行した。
「!?」
次の瞬間、けたたましい大量の銃声と共に、
石針が空中で残らず粉砕される。
「確か、暁美ほむらの先輩だった、と記憶しているが?」
「ええ、そうね。
だから、後輩が道を誤ると言うのなら、
黙って見ている訳にはいかないわ。
悪い道へのお誘いは、やめていただけるかしら?」
「悪いが、こちらにはこちらの事情がある。
こちらの方が分がいい、と判断した」
「そう、じゃあ仕方がない」
屋根の上でフェイトに右側面を見せていた巴マミと
物干し台にいたフェイトが跳躍する。
それをだだっ広くなった露天風呂から
半笑いで見ていた佐倉杏子は、振り返り様に槍を振るっていた。
「おこぉーんばーんわー(はぁと)」
その甘い声を聞いた杏子は、
槍の石突で後ろを突きながら生理的にぞわっとするものを覚える。
「(あたしの鎖の巻き込みを「気」で払った?
うぜぇ、が………)出来るってかっ!?」
「少しは食べ応え、ありそうですなぁ」
はんなりと甘々な返しと共に、
振るわれた槍の柄が二振りの小太刀に受け止められた。
「あつつっ!」
その近くでは、さやかがびゅうっと二刀を振るい、
火の玉の様な娘が飛び退く。
「体に火を巻いてるってそーゆー魔法っ!?
なんかやったら速いしっ!」
ぶーたれながらも、さやかがとっさの判断で
回転斬撃を展開する。
間一髪、さやかは地中から伸びて来た大量の木の根を
巻き込まれる前に斬り払い、猶予を作った。
さやかが放った飛行剣の連打が、
地面を割って突き出した根にどがががっと防がれて
その向こうで立派な角の娘が次の動作に移る。
ーーーーーーーー
京都嵐山、桂川沿い
「渡月橋、やっぱ渡らないの?」
「ああ、絶対ヤバイだろうからな」
朝倉和美と長谷川千雨が言葉を交わした。
「近衛家が最後の抵抗を始めてやがる。
こっち側の世界のデジタル情報と偵察特化の情報戦で
辛うじて五分に持ち込んでるが、
そうじゃなけりゃとっくにあっちの手の者に抑えられてる」
「だったら、目立つ道はまずいってね」
「ああ、あっちこっち右往左往したが、目的を果たすぞ。
こっちに、神鳴流の先代とやらがいる。
囮役で釘付けになってる葛葉先生に代わって
直接ナシつけて即刻動いてもらう。これで決着だっ」
それぞれアーティファクトの情報を確認し、走り出そうとする。
「
どこに行くんですかー?
長谷川さーん、
朝倉さーん?
」
==============================
今回はここまでです>>634-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>637
「よう、何やってんだこんなトコで?」
修学旅行以来の京都府内での遭遇となった同級生相手に、
長谷川千雨はひくひくと引きつった笑顔で片手を上げる。
「ネギせんせーの幸せを取り戻しに来ました」
((あ、あかん奴だ))
とてもとても魅力的ににっこり微笑んだ宮崎のどかを前に、
長谷川千雨と朝倉和美は瞬時に悟っていた。
「そういう事です。
もちろんご協力いただけますよね長谷川さん、朝倉さん」
のどかの隣で、綾瀬夕映が断言する。
「悪いが、お前らの企みは魔法世界で潰えた」
「いいえ、まだです」
千雨の言葉に、夕映が反論した。
「今なら未だ間に合うです。
鹿目まどかさんの身柄を青山家からこちらで隠匿し、
改めて魔法世界の為の契約をお願いします。
今の所、青山家と近衛家が
互いに知らない振りでの暗闘をしているだけです。
鹿目まどかさんさえ契約してくれれば、
魔法協会も元のプランで追随せざるを得なくなるです」
「本気で言ってんのか、綾瀬、本屋?」
「もちろん、本気です」
「本気だよ、長谷川さん」
「本屋、マジで言ってんのか?
このプランに乗るって事がどういう事だか分かってて言ってんのか?」
「今までだって、一時的に魔法協会と敵対する事になっても、
最後には結果で押し切って来たです。
今回もそれが出来ます。
鹿目まどかさんが自主的に契約してくれれば、
魔法世界もアスナさんも助かり、
世界的リスクから魔法協会も手を貸さざるを得なくなる。
私達の一存でやった事にしてしまえば
青山家も敢えてリスクを増やすだけの対処は出来なくなるです。
最悪の場合、青山家があくまで妨害するのであれば、
公共の福祉の名目で協会が制圧する名目も立ちます。
それも、今迄の魔法少女の不安定さから言えば、
むしろリスクの総量は低くなる許容すべきリスク管理です」
「そういう事を言ってんじゃねえっ!!」
夕映の淀み無さすぎる言葉とそれと裏腹の目の隈に、
千雨が言葉を叩き付ける。
「本屋、それがネギ先生の、神楽坂の意に沿う事だと思ってるのか?
魔法少女は誰かを犠牲にしないと成り立たない共食いのシステムだ。
そんなモンにカタギの女一人沈めた上に、
例え直接手を下さなくても他のが化け物になってくたばるのを見過ごして、
その魂を再利用して、そうやって神楽坂の人生を取り戻す。
そんな事を、あいつが望むと本気で思ってるのか?
ネギ先生と神楽坂が、残りの人生それで笑って過ごせると思うか?
お前なら分かるだろ本屋っ!?」
「分かるよっ!」
のどかから叩き返された言葉に、千雨の足が一歩退いた。
「分かる、ネギせんせーもアスナさんも、そんな事は望まない。
ヒーローらしく精一杯戦って他のみんなを救おうとする、って。
だから………」
「だから、陰ながらお前らが手を汚して、
お前らが裏設定になって綺麗な物語を完成させる、ってか?」
「私は、その心算だよ長谷川さん」
澄んだ瞳で見据えられ、千雨は息を飲む。
「長谷川さん、お見事な差配でした。
のどかは、性格的に相当な心証が無ければクラスメイトの心は覗かない。
だから、あなたは疑う素振りを見せずに、
丸で魔法少女の肩を持つ様な強引な仕切りを行いながら、
図書館島の調査と言ううってつけの口実を使って
私達をメインの調査から外して行動に移った。
あなた達が動いた後に、麻帆良側で気付いた人間が
僅かにでもざわついた気配を見せなければ、
網を張っていた我々と言えども完全に出し抜かれていたです」
「いっぺん怪しいと思ったら容赦無し。
全情報丸見えの最短距離でここまで突っ切って来た。
敵に回すとおっそろしいね、本屋」
冗談めかした和美の言葉にも、
のどかは怯む様子を見せない。
「何が、大切な事か。
ルール違反、汚れた手段だったとしても、
絶対失いたくない事があるから。
そのためなら、今は迷っていられない迷わない」
「のどかは作戦面を、
参謀としての私を全面的に信頼してくれました。
何を覗くべきか、そのGoサインを出したのは私です」
「こんな時に覚悟完了しちゃってまぁ」
和美の言葉通り、のどかも夕映も退く気配を丸で見せない。
「長谷川さん、朝倉さん、お願いだからここは諦めて、
そして、私達に協力して」
「そうです、お二人の力は是非にも必要なんです。
あなた達だってネギ先生、アスナさんの幸せを願い事に代わりは無い筈。
アスナさんがずっと一緒にいてくれるならば、
プランの上でも、ネギ先生にとっても私達にとっても、
そのメリットは計り知れないです。
アスナさんの事、ネギ先生の事なのです。
メリット、等と言う無粋な言葉は本来は必要ない筈ですよ長谷川さん」
それは、「只の人」を自覚する長谷川千雨を簡単に揺らす、
徹頭徹尾清々しいエゴイズム。
「長谷川、分かってるよね………」
和美が千雨に声を掛けた時、ざざざざっと気配を感じた。
「長谷川さんっ!」
(ち、近い近い近い本屋っ!
だからその前髪の向こう側、
なんでそんなに澄んでうるうるしてんだよっ!?
おまけにほっぺはほんのり赤いとかって!?)
「長谷川さんっ。お願いだから私の………
私の初恋を、悔いの無い戦いをさせて!」
「はい?」
「私は、ネギせんせーが好き」
(知ってるよ!!! クラス全員と同じぐらいっ!!!)
「だから、何時か、私は何時か、
ネギせんせーの心を手に入れるために、誰かさんと、
多分、色んな人と戦わなければいけなくなる。
それだと絶対、アスナさんとは対等に戦わなければいけない。
アスナさんが欠けたら、アスナさんがいなくなったら、
私は心の中にしかいない人と戦わなければいけなくなる。
それは、一番厳しくて辛い恋愛小説だから………。
そうでなくても、今のネギせんせーからアスナさんを奪うなんて、
そんなお話、そんなネギせんせー、私は見たくないっ!!!」
「千雨さん?」
下を向き、笑いを噛み殺す千雨に、
夕映は低い声で尋ねる。
「ああ、流石は桜咲だってな」
千雨が、くっくっ笑いながら顔を上げる。
「守るために一歩引いて、だからこそよく見てやがる。
見事な人選だ。
お前らが選ばれて、私は選ばれなかった」
「私は、私が知識以外の分野で著しく偏った人間である事を自覚しています。
千雨さんは人として、一人の先輩として、
危うい道を進み続けるネギ先生を引き戻し、
後押ししてその道を照らし続けた。
千雨さんだからそれが出来たのです」
「私は、ネギせんせーから一人前の冒険者だと認めてもらっても、
それでも、ネギせんせーに守ってもらう側だった。
だから隣に立ちたいって一生懸命頑張ってる。
長谷川さんは、力に頼らないでそれが出来てる」
「だから、あなたにはあくまでネギ先生の一人の先輩として、
一人の、それも濃厚過ぎないアスナさんのクラスメイトの友人として、
刹那さんはそれを望んだ筈です」
「ああ、だからあいつには、ふざけるな、
てめぇが抜けた後の事迄押し付けんじゃねぇって
怒鳴りつけてやったけどな」
「それでも、やらなければならないんです」
夕映が言い、千雨と睨み合う。
「改めて魔法世界崩壊の危機、それを回避する為、
そしてアスナさんの、ネギ先生の幸せを両立させる唯一の手段。
魔法少女と言うアダムのリンゴの導入と言う異常事態を前にしては、
危険を冒してでも我々の様に尖った意志と能力を貫かなければならない」
「アダムのリンゴ、あすなろ市のあの娘達も求めていたものだっけ」
「だから、協力出来たです」
和美の言葉に、夕映が返す。
「ええ、そうです。
一人の人間を人柱にしてそれを安寧それを秩序だと、
それが神の言葉だと言うのなら、
一人の友達の為、愛する人の為、只の人である私は出し抜いて見せる。
だからこそ協力する事が出来たのです」
「今、しかるべき場所に真実がそのまま伝われば………」
「少しばかり大きな戦いになるでしょうね。
基本、鹿目まどか云々がどうあれ、
あちらは魔法協会として許容するには只々危険過ぎますから」
「相変わらず、記事にならない情報ばっか集まる」
和美が言い、天を仰ぐ。
「ネギ先生のため、神楽坂のため………」
「勘違いしないで下さい」
千雨の言葉に、夕映が言った。
「アスナさんがいない、アスナさんがいなくなったネギ先生。
その事に耐えられないのは私です。
ですから、鹿目まどかさん、
そして、今後数多の魔法少女の犠牲、負担を承知で、
私はアスナさんをこの世界に呼び戻す。
この世界でネギ先生と私達と一緒の人生を全うしてもらう。
そうあって欲しいから私はそうするのです」
「どうしてもかよ」
「その通りです、私達の手には、
その悲劇を、ネギ先生からアスナさんが奪われると言う悲劇を
回避する手段が握られています。
私はネギ先生が好きです。
だからこそ、ネギ先生にとってアスナさんがどれ程大切な人か、
その事も理解している心算です。
で、あるならば、
やらないで後悔するよりもやって後悔した方がいい」
宣言しながら、綾瀬夕映は、
スチャッ、と、
携帯用の魔法練習杖を取り出す。
千雨は息を飲む。
ネギ・パーティーでも上のグループが化け物揃いだと言うだけで、
特殊能力を抜きにしても、魔法使いとしてのこの二人は
初心者としては地獄の特訓を知るかなり高い水準。
少なくとも、同じく一応魔法使いに片足突っ込んでいるが
情報特殊能力特化である千雨が「喧嘩」をしていい相手ではない。
そして、ここまで動機が徹底していると、説得する理屈が存在しない。
「………買い被り過ぎなんだよ………」
下を向いた千雨が、ぽつりと吐き出した。
「私だって見て来たんだよ、神楽坂とネギ先生、
それに、近衛に桜咲。
あそこから神楽坂が抜けて、その後どうするんだよ?
又、上手く距離を取りながらネギ先生が一人で行き過ぎない様に、
只でさえ難しいガキだってのに、神楽坂までいなくなって。
何だよ、それ。随分、私の事を買い被ってくれた。
いや、頼まれもしないのに、今更他人の振りも出来ない、
そんな私の問題か。私に、何が出来るってんだよ。
なあ、神楽坂、あのガキを、私を置いてくんじゃねぇよ馬鹿がっ!!!」
千雨が顔を上げる。
「あなただけの罪にはしない。
私も、のどかも刹那さんもいるです。
あの夏を、ネギ先生と共に戦った皆がいるです。
自分の大切な人のために。
私は、私の愛する人のために魔法少女を利用する。
だから長谷川さん、私達と共に」
夕映は、すっと右手を差し出した。
「悪を行い世界に対し僅かばかりの正義を成そう」
千雨の足が、ふらっ、と、前に出た、
のか否か、千雨自身の記憶は定かではない。
その記憶が鮮明に戻るのは、夕映が左手の練習杖を振るった時からだった。
「風楯っ!!」
果たして、夕映は明後日の方向に魔法防壁を張り、
爆発音と共に周囲が白煙に包まれた。
「白き雷っ!!」
更に、夕映が攻撃魔法を展開するが、
千雨達に届く気配は全く無い。
「それが、君の愛かい?」
「風楯っ!!」
風が裂け、何かが衝突する音を聞きながら、
息を飲んだ千雨もステッキ状の「力の王笏」を振り出す。
「のどかっ!」
「かすった、だけだから」
「本屋っ?」
その声に、千雨は左腕を抑えるのどかに目を向ける。
「愛は無限に有限。だから私は無限に彼女に尽くす」
「あなた達は世界を救い、そして愛する者を救うと言う。
私はお父様の望んだ世界を、私は私の救世を成し遂げる」
==============================
今回はここまでです>>638-1000
続きは折を見て。
それでは今回の投下、入ります。
==============================
>>646
ーーーーーーーー
「おっとおっ!」
わざわざ京都まで出張し、低い姿勢から走り込んだ呉キリカが、
飛んで来た小さめの本を交わしながら標的へと突っ込む。
「!?」
「白き雷っ!!」
(二段構えねっ!)
まず、びゅうっと目を塞ぐ風が吹き抜け、
その後にキリカを襲う電撃をキリカ跳躍して交わした。
「速い、ですねっ」
「違うっ!」
綾瀬夕映の言葉を宮崎のどかが否定した。
「私達が遅くなってる」
「了解ですっ!」
のどかの言葉と共に夕映が液体の入った試験管を放り出し、
周囲が煙に包まれた。
「白き………」
そして、すすすっと移動して練習杖を振り上げた夕映の側で風が裂ける。
「!?」
夕映の近くの空中で、飛来した水晶球と空飛ぶ本が激突し、爆発が起こる。
「風楯っ!」
その時には、夕映はキリカの長爪の一撃を魔法防壁でやり過ごしていた。
「ウエンテッ(風よっ)!!」
夕映が杖を振り、周囲に風が巻く。
「白き雷!!」
次の瞬間、美国織莉子は自分を狙った電撃をすすすっと交わし、
それに合わせる様にのどかが動く。
「!?」
のどかの前でキリカが振るった爪が、
のどかが広げた分厚い本をざっくりと切り裂く。
「誰を狙おうと言うのかな?」
そう言いながら腕を振り上げたキリカの前で、
夕映がのどかの前に立つ。
キリカは距離を取った。
(まずいですね)
のどかを背後に守りながら、夕映は心の中で呟く。
(この二人相手では決定打に欠ける。
千日手をしていては青山家に対策をとられてしまうです)
「夕映っ!」
「遅い遅いよっ!!!」
キリカの振るった右手の爪が
のどかの手にした魔法の本「いどのえにっき」に食い込み、
「のどかっ!!」
余った爪の勢いで、のどかの左腕の流血が増加する。
「風楯っ!!」
そして、夕映の張った防壁がキリカの左の爪を弾き返す。
「このっ!」
キリカが本に食い込んだ長爪を無理やり引き抜き、
のどかが後ろに転倒しそうになる。
「のどか、今治癒するですっ!」
夕映が声を震わせている間、
のどかの目はキリカをしっかと捉えていた。
攻撃の速さと威力だけでは、魔法をそこそこ使えるが
武闘派と言う程ではない夕映ではキリカに勝てない。
のどかと言うレーダー抜きには。
「?」
そして、夕映は気付く。
織莉子の視線が明後日を向き、
そちらの木陰に向けて大量の水晶球を放っていた。
「………!?」
「援軍みたいね」
織莉子が言った時には、頭に横長の角を持つ少女「環」が木陰を飛び出し、
そのドラゴン的外見と体質を持った少女は、
急遽本当にドラゴンになろうとした
その時には早速に呉キリカの襲撃を受けていた。
そして、それを這う這うの体で交わした環が今正に美国織莉子に迫る、
と、思った時には、織莉子の用意した水晶球が
環に向けて吸い込まれる様に真っ直ぐ飛行していた。
「か、はっ………」
「のどかっ!!」
夕映は、二つの事に気付いた。
キリカも又、明後日の方向に地を蹴ったと言う事と、
それを受ける様にのどかが駆け出した事を。
ーーーーーーーー
青山素子がひょいと身を交わし、飛んで来たジャングル・マチェットが
地面に突き立った木材に突き刺さる。
「いい判断だ。どの道飛び道具は通用しない。
ならば、貴様には過ぎた重さだったと言う事か」
そう言いながら、青山素子は、
突っ込んで来た暁美ほむらの斬撃をすいとやり過ごす。
ほむらはざざっと振り返って素子を狙おうとしたが、
その時には、瞬時に間合いを詰めた素子が振り下ろすデッキブラシが、
ほむらが右手に握る中型のグルカナイフに受け止められていた。
「どうやら、マギカであってすら、余り腕力には恵まれていないらしいな」
そんな声を聞きながら、
ほむらは左手に握った軍用サバイバルナイフも加えて
ガチガチガチとデッキブラシの柄を受け止める。
きりきりきりと歯噛みしながら
辛うじてそれを成功させているほむらだったが、冗談ではない。
使っているのは素人でも武器は間違いなく玄人。
あの勢いで打ち下ろしたら
デッキブラシの方が真っ二つになっている位置関係の筈が、
ほむらが魔法少女の力で必死に堪えてようやくギシギシと均衡している。
「(それでも全然余裕、桜咲刹那も十分過ぎる強さだったけど、
これが青山宗家っ)
あああああっ!!!」
ほむらが、握った刃物を力任せに振るう。
その一瞬の隙に地面を転がり、楯に手を伸ばす。
「あああ………」
「未熟」
呼吸を整えながら止まった時の中を素子の真後ろに回り、
せめて鈍器な部分を振り下ろした、と思った時には、
ほむらはどてっ腹に叩き込まれたブラシの衝撃で
後方へと吹き飛ばされていた。
「か、はっ………」
魔力の急消耗を少しでも防ぐべく、
ほむらは吹き飛びながら時間停止を解く。
「貴様相手なら、髪に触れてからの刹那でお釣りが来る」
ーーーーーーーー
「ティロ・フィナーレッ!!!」
ひなた荘上空で、砲弾が分厚い砂壁を粉砕する。
巴マミが肩にかけていた単発の大砲が消滅する。
その時には、柏手と共にマミの周囲に展開されたマスケット銃の一群が
マミの周囲を回転しながら発砲し、
フェイト・アーウェルンクスの放つ石針を砕きながら消滅する。
空中ですれ違った二人が一度屋根に着地し、
双方の遠距離攻撃を交わしながら地面へと降下する。
「!?」
ばいんっ、と、マミが黄色いバネに弾き飛ばされた。
それは、とっさに張ったリボンの渦巻き防御が、
地面から突き出した石の槍をギリギリでガードした結果だった。
「くっ!」
更に、空中のマミの前方でリボンが渦を巻き、
そのバリアを帯びたリボンが
フェイトの放った光線を受けて石化して砕け散る。
「ふむ」
フェイトは、目の前で石の剣に貫かれた巴マミの姿が
一滴の流血も無くリボンのバネと化すのを目の当たりにする。
フェイトは振り返り様、
しゅるしゅると自分に絡み付いていたリボンに石剣を叩き付ける。
マミは弾力のあるリボンからさっと手を放し、
リボンが瞬時に石に変化して砕け散る。
ーーーーーーーー
「おいおい………っ!」
佐倉杏子の口からは、乾いた笑いも出なかった。
近くの空中で、フェイトが石針を、石剣を放ち、
マミがそれを交わし、使い捨て魔法で呼び出すマスケット銃で撃ち砕き、
フェイトが飛んで来るマスケットの銃弾を交わしながら
双方ひなた荘の館から館、茶屋、樹上、あちらこちらへ跳躍する。
そして、マスケットと石剣でガン、ギン、ガン、と撃ち合い砕き合いながら
双方ヒット無しで殴り合い、
又、バババッ、と、大量の銃弾と石針が空中で殺し合う。
「ティロ・フィナーレッ!!!」
降って来た巨大な石柱がマミの大砲の一撃に粉砕された時には、
マミとフェイトはそれぞれ、
空中で身をよじって銃弾と石剣を交わしている所だった。
それを下から眺めた佐倉杏子が大汗を浮かべ、槍を振るう。
「二刀連撃斬鉄閃っ!!」
「野郎っ!」
月詠が小太刀から繰り出す「気」の連続攻撃を、
杏子は大槍の一閃で弾き飛ばす。
「烈蹴斬、弐の太刀いっ!!!」
ずざざあっ、と、杏子の足が後ろへと滑る。
「やっぱ武器は選ばずかよっ」
杏子は、勢いに倒されそうになりながらも、
手槍サイズに縮めた槍の柄で月詠の蹴りを受け止めていた。
「その大槍でうちの動きに付いて来る事が出来る、
いいですなぁ、もっともっとうちの事楽しませておくれやすぅ」
「戦闘狂かようぜえっ!!」
元々自覚的な功利主義者の杏子にとって、
最も面倒臭いタイプに絡まれた面倒がひたすら鬱陶しい。
もっとも、只の功利主義者だけなら
そもそもここにいない事はこの際無視している。
「小太刀の二刀流、ってのがアレだが、
てめぇも神鳴流かよ。
やたら強いし動きも似てやがる」
「そうですなぁ、あの人がなかなかかもうてくれんから
あんたで我慢しとくわ。
なんか、初めておうた気しませんしなぁ」
「てめぇなんか知るかっ!!!」
「そうですかぁ?」
と、意味不明な供述とこの状況で意味不明な甘々ファッションに身を包み、
それでいて意味不明な強さの剣術で襲撃して来る
フェイトのこの際腐れ縁な「月詠」を、
佐倉杏子はひたすら槍を振るって対抗する。
「ざーんてーつせーんっ!!」
跳躍した月詠を、鞭に変化した槍が鎖に変化しながら巻き取ろうとするが、
月詠の小太刀二刀から放たれた「気」がそれを弾き飛ばす。
「ざーんがーんけぇーんっ!!」
「とおっ!」
そして、着地した月詠にびゅうっ、と振るった杏子の槍はひょいと交わされ、
「気」を帯びた爆弾の様な一撃を、
持ち直した槍でバリアを張りながら辛うじて飛び退いて回避する。
「ええですなぁ、まだまだ及ばんけど久しぶりになかなかの手応えや。
あの人かもてくれへんからうちもうたまらんさかい、
もっともっと楽しませておくれやすぅ」
「本気で、うぜぇ………」
杏子が次々繰り出す槍の高速刺突を、
何処ぞのダンスボーカルユニットを一人でやってる様な残像を残しながら、
色白の京女の頬をピンクに染め唇の端から液体を垂らして
ひょいひょい交わしている月詠を前に、
佐倉杏子は、右手の小太刀の柄頭を腹から下に押し付ける様な姿勢で
体をくなくな震わせている大量の月詠の残像から、
魔女とも違う背筋に来る何かを察していた。
「(まとめて)薙ぎ倒おぉすっ!!!」
「あはっ、大振りっ」
「!?」
杏子の横殴りの槍を月詠が跳躍して交わす。
そこまでは普通に予測出来る事だったが、
月詠はたんたーんっとばかりに
「宙を蹴って」杏子の視界から逃れにかかる。
確かに、杏子を含め人間の段階を超えた領域の世界では
あり得る事だと杏子も分かっているが、
訓練された月詠の移動は想像以上に鋭い。
「ちいっ!」
びゅうっ、と、
振り返り様に振るった槍の柄が斬り裂いたのは、残像だった。
杏子が槍を引き、突きの姿勢に入る。
月詠が、その一撃をするりと交わし、懐に入る姿勢に入る。
双方が必殺の一撃を意図した、刹那の時間が重なる。
「!?」
「おや?」
そんな二人に飛来する炎を帯びたブーメランの様な武器を、
杏子はざっと交わし、月詠は小太刀で弾き飛ばす。
「新手のマギカさんですかぁ?
えらい鼻息荒ろうおますけど」
ーーーーーーーー
「このっ!」
さやかが放った剣の一群が、
地面から突き出した木の根にドガガガッと突き刺さる。
その木の根を飛び越えてさやかに向かった炎の塊を、
さやかは剣を振るって牽制する。
「あっつっつっつっつっ!!!」
そして、自分の周囲で着火する空気を二刀流の剣で振り払いながら、
さやかはその大元である「焔」に向けて駆け出す。
「回復魔法を使いながらの突撃。
だが、斬る事に躊躇があるのか?」
「いちお、怪獣ぐらいはぶった斬れる真剣だしね」
さやかの振るう剣を交わしてバラバラと炎をまき散らす
ツインテール少女「焔」の言葉に、さやかは吐き捨てる様に言った。
「所詮、平和な世界の甘ちゃんか」
「否定はしないけど、でも、ま、色々あるんだわっ!」
焔が跳躍し、さやかが放った剣がその下を突き抜ける。
びゅうっ、と、炎の帯と剣が交錯し、
ざっと距離をとって睨み合うさやかと焔。
「大体、なんであたしが二対一なのよっ!?」
「貴様如き私達で十分と言う事だ」
「………まあ、理解は出張る、けどさあっ!!!」
宇を舞う黄色い先輩が
ドンドンドンドンドンと巨大なマスケットを上空へと発砲し、
空から降り注ぐでっかい石柱が砕け散り、
更に巨大なマスケットと言うかなんと言うか
大砲の一撃と共に大量の砂が爆散し
黄色い先輩のマスケットと学ラン白髪の石剣が
ガンギンガンと砕き合う天空の1シーンをさやかはチラッと伺い、
さやかの振るった二刀が放つバリアが焔の炎を弾き飛ばす。
「こんのっ!!」
そして、地面を突き破りさやかを締め上げにかかった木の根を、
さやかの剣が回転二刀流で破片に変える。
「あいつは?」
その瞬間の攻撃を覚悟していたさやかの目が、
「焔」を探して周囲を伺う。
「ふんっ!」
三節棍の何倍かも分からない多節棍が
じゃららーっと一つにまとまり、槍へと変化する。
「こっちの方は、少しは出来るのか?」
「ま、あのヒヨッコよりはな。
ついでに言っとけば、そこそこハングリーだし」
焔の言葉に、槍を担いだ杏子が言葉を反してニッと笑った。
「なんだ、へばってんのかよ?」
「だからー、にーたいいちだってーの。
大体あんた、あっちはどうしたの?」
「ああ、通りすがりの武者修行に任せて来た」
肩で息するさやかの問いに、杏子が親指を後ろに向ける。
「いいからいいから私に倒されっチャー!」
「あはははっ! その動きも猪さんですなぁ、
勢いあって意外とお利巧。
牡丹鍋ぐらいは楽しめそうやっ!!」
さやかと杏子は、背中合わせになる。
「じゃあ、あいつの事頼める?」
「あんたは?」
「あっち、片付けて来る」
何が気に入らないのか、
既に得体の知れない植物ゾーンと化した一角の向こうに
さやかが剣呑な視線を向け、
杏子は唇の端に笑みを浮かべて跳躍した。
==============================
今回はここまでです>>647-1000
続きは折を見て。
生存報告です
生存報告です
生存報告です
お詫びと訂正です
>>283
恭介が驚きの声を上げる隣で、
仁美が力強くこちらを見るのを刹那は見ていた。
↓
地面に戻った後、恭介が驚きの声を上げる隣で、
仁美が力強くこちらを見るのを刹那は見ていた。
>>509
膨大と言ってもいいぬいぐるみが
夜の博物館の棚に陳列されている光景にマミと裕奈が言葉を交わした。
↓
膨大と言ってもいいぬいぐるみが、夜の博物館の
棚やガラスケースに陳列されている光景にマミと裕奈が言葉を交わした。
訂正以上、すいませんでした。
それでは最終回投下、入ります。
==============================
>>658
ーーーーーーーー
(時間稼ぎ)
率直に言って、青山素子は哀れみを覚えていた。
暁美ほむらはスタン・グレネードを使って時間を稼ぎ、
素子から距離を取った。
客観的に言って、神鳴流剣士、
それも頂点にいる素子を倒すには白兵戦以外あり得ず、
現状のこの対戦での比較で言えば、
ほむらのそちらの素質、実力は絶望的だ。
先にも素子自身が言った通り、この実力差では、
例え一瞬、どんな隙があったとしても、
もちろん暁美ほむらのスタイル、能力を踏まえた上で、
ほむらが素子の髪の毛一筋触れた時点で
叩きのめされるのはほむらの方だ。
その僅かな時間稼ぎの間に、
ほむらは右手に持ったグリーフシードをしゅっと投げ捨てていた。
そして、ほむらが構えたのは木刀だった。
素子から見たそれは、見様見真似の正眼の構え、
それ以上でもそれ以下でもない。
とん、と、素子が跳んだ。
これで何度目か、周り一帯で爆発が起こる。
素子がすいと身を交わす。
大振りせず、脇構えからの突きを選んだ辺り、
流石に実戦経験だけはあると言う事か。
ではこちらも実戦で、と、素子はほむらの背中を無造作に蹴り飛ばす。
地面にダイビングしたほむらが木刀を杖に立ち上がるのを見て、
素子は構え直した。
「神鳴流奥義・ざんが………!?」
ーーーーーーーー
「ティロ・フィナーレッ!!」
空中で、巴マミが抱えた大砲としか言い様の無いマスケットが
マミに迫る石柱を撃ち砕き、
マミの体はその反動で地面へと向かう。
「ヴァーリ・ヴァンダナ………」
「!?」
そして、水柱を上げて露天風呂に落下したマミが周囲を見回すと、
大量の掌がマミに掴みかかっていた。
それは、固形化した温泉で、
触手状に固形化した大量の温泉の先端に掌がついて
生物の様に蠢きマミに迫る。
「!?」
そして、マミは察する。
今ここに迫る灰色の霧に込められた禍々しい魔力を。
ーーーーーーーー
露天風呂が見た目観光間欠泉と化した爆発を目にしながら、
ファイト・アーウェルンクスが浴場にとん、と着地する。
その時には、空中に渦巻いた大量の石剣が
露天風呂を埋め尽くす勢いでドドドドッと降り注いでいた。
(ふむ)
そして、フェイトはするりと体をよじる。
その上を、強力な二発の銃弾が突き抜けた
「紙一重だったわね、
もう少しで体ごと彫刻にされてたのかしら?」
マミが一挺ずつ両手に持ったマスケットが消滅し、
それと共に、マミの体にまとわりついていた灰色のリボンも砕け散る。
そしてフェイトは気付く。
露天浴場の中を、フェイトを包囲しながら
今尚増殖して埋め尽くす膨大な黄色いリボンを。
「まだだめよ、まだだめよ。
まだだめよ、まだだめよ。
まだだめよ………」
「契約により従え、奈落の王!!
地割れ来れ、千丈………」
ーーーーーーーー
「おい」
「ああ、うん、考えたら負けな奴だ」
ひなた荘前で、フェイトの従者「焔」と佐倉杏子が、
露天風呂の方向から察知した
天地を揺るがす何かに就いての見解をすり合わせる。
そして、相変わらずの不快音に顔を顰めた。
ーーーーーーーー
美樹さやかは、不快音と共にさやかを襲う衝撃波を
たんたんーっと交わしていた。
異様なジャングルと化しつつあるひなた荘周辺の一角で、
さやかの体がぶるるっと回転し、その両手に握られた刀が
地面から彼女を締め上げようと迫る木の根木の枝を斬り飛ばす。
「とおっ!」
そして、フェイトの従者「調」に身軽に迫るが、
さやかが調に飛び掛からんとしたそんな二人の間に、
ぼこっ、と樹木が突き上がる。
ぼん、ぼん、ぼんっと、地面から突き出す木々がさやかを襲い、
さやかはそれを交わし、斬り飛ばして調に迫る。
「このっ!」
さやかが右手から放った刀が、地面から突き上がった樹に突き刺さる。
それを楯にした調がささっと移動し、
不快音と共にさやかに向けて衝撃波を放った。
身をよじったさやかを衝撃波が吹き飛ばし、
さやかの背後に現れた樹にさやかの背中が激突する。
「つ、っ………このっ!!」
ずるずると頽れたさやかを、
地面から伸びた硬い蔦の群れが拘束しようとする。
さやかは、剣を両手持ちにして力任せにそこから逃れる。
そこに襲い掛かる調からの衝撃波を、さやかは大きな跳躍で交わした。
(デタラメな)
跳躍したさやかが遥か上空から放つ剣に、調は心の中で呟く。
果たして、ヒュンヒュンと降り注ぐ剣は
調が呼び出した植物や地面に悪戯に突き刺さるだけだ。
さやかの着地を狙った衝撃波を、さやかは横っ飛びに交わす。
「!?」
「見えて来たんだよねー」
そして、さやかは、さやかを縛るために伸びる太い木の根に
刀の刃を叩き込み、更にその勢いで飛び上がる。
さやかは、魔法少女の馬鹿力を利用して、
次々とさやかを襲う木の根に刀を叩き込み、食い込んだままの刀を梯子代わりに
ひらりひらりと巨大植物の上へ上へと舞い上がっていた。
「くっ!」
「あらよっ!!」
その事に気付いた調が放った衝撃波も、
さやかは手近な植物を足場にひらりと交わす。
「あんたのリズムっ!!」
そして、地面に突き刺さった刀の柄から柄へとたんたーんっと跳躍していた。
「く、っ!」
「そいっ!」
勢いをつけて跳躍をしたさやかを調が狙う、
その時には、さやかは調の背後に回って
調の脚を刀の棟ですぱーんと払っていた。
「つっ………」
「あんたはあたしを怒らせた」
そして、さやかは竜の角を誇るフェイトの従者、調から
得物を取り上げ仁王立ちして見せた。
ーーーーーーーー
「なん、ですか?」
京都桂川の川辺で、綾瀬夕映が呻いた。
そこでは、美国織莉子が両手を上げ、微笑んでいた。
それを見て、織莉子と対峙していた宮崎のどかもふっと力を抜く。
「流石に、厳しかったわね」
たった今までのどかの前に延々と無言で突っ立っていた織莉子が
使用したグリーフシードをひゅっと放り捨てる。
そして、織莉子の前に延々と無言で突っ立っていたのがのどかだった。
「で、これどうするの?」
腕組みした朝倉和美が言い、その隣で長谷川千雨が額に手を当て嘆息する。
二人の前では、フェイト従者の猫耳娘「暦」と呉キリカが、
「暦」が自分の得物を突き出し
キリカが飛び掛からんとしている状態で静止していた。
「大丈夫ですか、のどか?」
「う、うん、大丈夫」
夕映に支えられ、のどかがよろりと立ち上がる。
単純戦闘力だけで言えば、夕映が介入する隙は幾らでもあった、
と言うか、実際夕映が動いた事もあるのだが、
その度に水晶球による完璧なカウンターを返され
却ってのどかを危険に晒した、と言うのが実際だった。
そんなのどかに、織莉子がざっ、ざっ、と接近する。
「大丈夫だから」
のどかは、夕映を制して織莉子に静かに近づく。
だが、織莉子とのどかがすれ違った途端、
のどかはすとん、と、膝をついた。
「のどかっ!!」
駆け寄った夕映は、真っ青な顔で荒い息を吐くのどかを見た。
「のどか? どうしたですか? 何かされたのですかっ!?」
「け、ないと………」
「?」
「すけ、ないと………ネギせんせー、
ネギせんせー、これから、ずっと、ずっとずっとずっとずっと
ずっとずっとずっとずっとネギせんせーの事………」
「え、ええ、そうです、ネギ先生の事を、
私達がネギ先生の事を支えて、支え続けてっ」
「おいっ!」
長谷川千雨が、のどかから離れた織莉子にざっと駆け寄る。
「本屋をどうかしたのかっ!?」
「世界の真実に近づいたのでしょう」
織莉子が、つらっと言った。
「彼女は強い娘なのですね。
それが彼女の世界の全てなら、
彼女は彼女の救世を貫くのでしょう。
私は、私の救世を成し遂げる」
通り過ぎる美国織莉子を、千雨は見送る事しか出来ない。
「のどかー、ユエー」
「ハルナっ!?」
聞こえて来た声に、のどかと夕映が振り返る。
そちらからは、手を振る早乙女ハルナと
にこにこ微笑む近衛木乃香が姿を現していた。
「朝倉から聞いてね、あんたらがこっちに来てるって。
それで、一っ飛びでこっち来てぶらぶらしてたんだけど、
あんたら見つけたって報せがあってさ」
「そうでしたか」
ハルナの説明に、夕映とのどかがははっと乾いた笑いを見せる。
「で、用事は済んだ?」
「うん」
「そっか」
のどかの返事に、ハルナはニカッと笑った。
「じゃ、新京極で餡蜜でも食べてこっか」
「そうですね」
夕映がふっと笑ってハルナに答える。
そして、同じクラスの図書館探検部が四人、
合流してわちゃわちゃ楽しそうに歩き出す。
その様を眺め、千雨は呟いた。
「………これで、良かったのか?
ネギ先生? ………」
親し気な旧知のグループ、長谷川千雨の学園生活には、
少なくともつい最近迄は余り縁の無かったもの。
そんなものに背を向けた千雨が、つと天を仰いだ。
「神楽坂のいない世界。
死ぬ程世話が焼けそうだ」
ーーーーーーーー
「な、っ………」
素子が、瞬時にほむらとの間の距離を詰める。
ほむらの体は、素子の放った斬岩剣によって甚だしく吹き飛ばされていた。
(まともに食らった、いや、無策に突っ込んで来ただとっ!?)
「おいっ!? ………!?」
ほむらに覆い被さった素子は、次の瞬間、
ほむらの右手を掴んでいた。
素子は見ていた。カッ、と、見開かれた暁美ほむらの目を。
その時、近くの空が鋭く裂ける気を素子は察する。
「う、ぐ、っ………」
「まだ動くっ!?」
ほむらの腕の力が、むしろ強まったのを素子は感じていた。
それでも、素子はほむらの腕の動きを簡単に封じ込め、
ざんっ、と、空から降りて地を踏みしめた脚を素子が見た時には
どんどんどんっ、と響く銃撃と共にほむらは首を横に折っていた。
「ゆーなさんっ!? これって、まさかっ!?」
「大丈夫、麻酔みたいなもん。
なんかしぶといから象でも倒れるって感じでやったけど、
マギカなら大丈夫でしょ」
「元の傷の方が問題だ、
マギカだから生きてはいるが、中身は見た目以上にまずい事になってる。
外傷が限界と言う事は、ソウルジェムも限界を超えるぞ」
「分かったっ!! ちょっと待ってよ転校生っ!!」
駆け寄ったさやかが明石裕奈と素子からの説明を受け、
慌てて対処を始める。
「魔法協会か?」
「はい。明石裕奈です」
「青山素子だ、助かったよ」
「って!? ちょっと、その腕っ!?」
「大した事はないさ………彼女に比べれば尚の事だ」
素子がぶらんと下げた左手の指先から伝い落ちる赤いものに裕奈が気づき、
座ったまま後ろを見たさやかも目を見開く。
「これ、か」
「エンゲージしては物騒だね」
さやかがほむらの右手薬指に気付き、
駆け寄った裕奈が、そこから伸びる折り畳み鎌刃に顔を顰める。
その手は、十分過ぎる血に染まっていた。
「神鳴流には飛び道具は通用しない。
彼女は、私の斬岩剣に敢えて突進して来た」
「………自爆技?」
ほむらに向けて青い光を向けながらのさやかの呟きに
素子が頷いた。
「そっか………魔法少女は痛みを完全に消せる、
体が幾ら壊れても修復出来る………」
「優しいんだな」
「?」
「君が痛そうだ」
素子の言葉に、さやかは小さく頭を下げた。
「それじゃあ、素子さん腕出して」
「ああ、助かる。実際の所結構痛い」
「いや、色白美人ってレベル
通り越し始めてるから、早くしてあげて」
冗談ともなんともつかぬ言葉を交わしていた
三人が首を動かした視線の先で、低空飛行の火の玉と1BOXカーが
猛スピードの正面衝突ルートで突っ込んで来ていた。
間一髪、1BOXカーは奇妙な圧力で正面衝突を回避し、
明後日の方向へと消えて行く。
火の玉は一度お星様になる勢いで斜め上に上昇してから
車の後を追う様に戻って来た。
ーーーーーーーー
「おい、大丈夫かっ!?」
「ええ、何とかね」
辛うじて痕跡を留めている露天風呂の中で、
佐倉杏子の声を聞きながら巴マミは頭を振っていた。
「なぁにやってんだよっ、
魔女の結界じゃあるまいに加減ってもん考えろ」
「考えてたら、今頃私はブロンズ像か肉片ね」
マミがキッと視線を向けた先では、
半ば煤の塊と化したフェイト・アーウェルンクスが
余り実戦向きではない従者である栞から
恭しく差し出されたスマートフォンを受け取っていた。
「我々が戦う理由は無くなったらしい」
「あらそう」
「まー、正直関りたくねー」
「賢明だな」
嘆息した杏子の言葉にフェイトの従者「焔」が言い、
マミは、鼻を鳴らして差し出した杏子の手を遠慮なく掴む。
マミの背後で、露天風呂が落下物の水柱を上げた。
少し離れた場所で、何かを言う間も無く突入して来た1BOXカーが
フェイトの右手の前で強制停車する。
マミがくるーりと振り返ると、
眼鏡の男が湯の中から顔を出す所であった。
マミの左手がちゃきっ、と、マスケットを掲げ、
杏子が槍を小脇に抱えた。
「あ、どうも、お久しぶりです」
もう一度、露天風呂に水柱が上がった辺りで、
露天風呂に飛び込んで来た火の玉が、
リットル記号を描く様に上空に飛び上がり、
戻って来てようやく着地した。
「何やってんだ、お前?」
杏子が、しごく簡単な問いを発する。
「やぁーっと止まりました。大至急の到着の為に
無理くり魔力供給して来たもので。
あ、どうも、お久しぶりです」
今にも胃袋が引っ繰り返りそうな顔で
ふらふらと近づいて来た佐倉愛衣が
薄目を開けながらもぺこぺこ頭を下げていた。
ーーーーーーーー
「ひいいいっっ!!!」
さっき1BOXカーが突っ込んだ方向から戻って来た眼鏡男の姿に、
裕奈が悲鳴を上げて後ずさりする。
「余力があるならあっちも頼めるか?」
「りょーかい」
それに対して、素子は慣れた口調でさやかに頼む。
取り敢えず治癒魔法とグリーフシードでほむらの窮地を脱して
素子の治療も済ませたさやかもそれに応じて、
頭からダクダクダクと流血しながら接近して来る眼鏡男を迎えた。
「ああ、有難う」
「どうも」
成人過ぎの年上の男性のお礼にさやかもぺこりと頭を下げるが、
当たり前に治癒魔法を受けている辺り、
只者ではないともさやかは思う。
「素子ちゃん、頼まれてたもの。
伝承の中の天変地異の記録を
その解釈から調べ直したら色々出て来たよ」
「そうか、有難う。助かったよ」
「ん?」
露天風呂を出てさやか達に合流しようとした杏子は、
隣のマミが浮かべた生温かい微笑みに気付く。
視線の先にいるのは青山素子、
先程露天風呂に突っ込んで来た眼鏡男に資料を渡され、
ぶっきらぼうに形式的なお礼を述べている様にも見えるが。
「確かに」
杏子も、ニッと笑みを浮かべた。
杏子の心の目にも、
素子の柔らかな微笑みが透けて見えていた。
「ん、んっ」
素子の咳払いを聞き、
マミは臍下丹田に根性を込めて真面目な顔を作る。
「そこまでですっ!!!」
杏子とマミが、最近聞き慣れた声に振り返る。
果たしてそこにいたのは佐倉愛衣で、
杏子達を追って来て、丸で箒に縋り付く様にしながらも
精一杯の大声を張り上げていた。
「ああ、久しぶりだな」
「お久しぶりです」
素子の言葉に、愛衣が頭を下げた。
「戦闘を中止して下さい、もう無意味です」
「中止以前に終了してるみたいだけどな」
杏子の言葉を聞き、愛衣は右見て左見てこほんと咳払いをする。
「葛葉刀子先生を仲介に、桜咲刹那さんが正式に投降を申し出、
東西近衛家もそれを了承して計画は正式に中止しました。
「白き翼」から単独行動をとっていた
綾瀬夕映さん、宮崎のどかさんの離脱も確認。
これ以上の抵抗は無意味です」
「承る。御苦労だった」
「有難うございます」
素子の凛とした言葉に、愛衣が改めて頭を下げた。
「本当に、決着なのかしら?」
「そうだな」
マミの問いに素子が答えた。
「これから、近衛家と協議して改めて釘を刺す事になるだろうが、
組織として、近衛家として計画を進める事は最早不可能だ。
君達魔法少女には随分と迷惑を掛けて済まなかった」
「あなたは偉い、立派な方なのだと思います。
だから申し上げ難いのですが、この様な事は無い様にお願いします。
組織立って動いているあなた達を見て改めて思いましたけど、
魔法少女はそれぞれが自分達の為に願いを叶えて力を使っている本当の子ども。
私達だから未だ良かった事で、
今後、こんな事があれば今度こそどうなるか分かりません」
「耳が痛い。魔法、呪術に関わる者が申し訳なかった」
「いえ、こちらこそ生意気を言いました」
素直に応じて頭を下げる素子とそれに倣う愛衣を前に、
マミも頭を下げて応じる。
「それから………」
「ん?」
「難しいかも知れませんが、桜咲刹那さんの事。
私から見て、その大半は本心だったのだと思います。
魔法少女を利用した、と言いながら、
私達を一時期の仲間と思って共に命を懸けた事も」
「大事な友達を助けるため、只それだけのために。
そのためならまどかや魔法少女に恨まれても
ルール違反で組織から追及されても、
あの真面目で優しい刹那さんがそれでもやろうとした。
それだけ大事な友達だったんだって」
マミの言葉に、さやかも続く。
「彼女にとっても、そうだったのかな?」
「詳しくは聞いてないけど、多分………」
素子が意識を失い横たわったままのほむらに視線を向け、
さやかもそれに同意した。
「分かっている………
刹那には、生まれた時から幾度も重いものを背負わせて来た。
刹那はそれに応えてくれた、本当にいい娘だ。
そんな刹那が、命懸け、その気高い心を汚してでも我が儘を通そうとした。
穏便に収めてくれた事、改めて礼を言う」
頭を下げる素子の言葉に、マミとさやかも礼で応じる。
「だが………」
ふと天を仰いでの素子の言葉に、マミ達は身構えた。
「星が告げている」
「もしかして、陰陽術ですか?
星占いの?」
マミの言葉に、素子はふっと口元を綻ばせる。
「見滝原、なんだろうな」
「いい星?」
素子が呟き、マミの問いに素子は首を横に振る。
「大きく、禍々しいものが見滝原に迫っている。
神鳴流の歴史の中でも幾度か見られたものだ」
マミ達の表情が強張る中、
素子は、もう一度ほむらの顔を見た。
「………自分の願い。
未だ幼い身と心で、己の真実のために契約し、
命を懸けて魔法を使う少女達。
その道の先輩として、大人として人として、
不干渉、とばかりも言っていられないかも知れないな」
× ×
「あれっ?」
平和な放課後、麻帆良学園女子中等部エリアの一角で、
柿崎美砂は発見していた。
「ネギ君とアスナ?」
「あ、ホントだー」
隣にいた椎名桜子が美砂の視線の先を見ると、
確かに、ヨーロッパ風石畳の歩道を、
見知った可愛い男の子と長い付き合いのツインテール同級生が
仲良さそうに談笑して歩いていて、
そこにもう一人学ランの男の子も加わっている。
「ネギくーん、アスナー」
「あ、桜子さん」
桜子が快活に呼びかけて手を振ると、
ネギ・スプリングフィールドがそれに返答して神楽坂明日菜もそれに倣う。
「しばらく、アスナ、ネギ君」
「しばらく、柿崎」
「戻りました、留守にしてすいません」
ぱたぱたと合流し、美砂とネギ、明日菜が言葉を交わした。
「よっ、くぎみー姉ちゃん」
「くぎみー言うな」
「コタロー君も一緒に?」
「いや、さっきおうた所や」
桜子達と一緒にいた釘宮円と犬神小太郎の掛け合いを後目に
美砂がネギに尋ね、小太郎が説明した。
「ネギ先生、明日から学校?」
「はい、少ししたら又出張になりますが」
美砂の質問へのネギの返答に、
チア三人組はきゃーっとハイタッチする。
「んー、又いなくなっちゃうのネギ君?」
「担任なのに申し訳ないです」
「まあー、ネギ君の事だからあんまり無理しないでよ」
「はい、有難うございます」
桜子、円とネギの会話をにこにこ眺めていた明日菜が、
右肩をぽんと叩かれて振り返る。
「これ、こないだメールで言ってたの」
「ありがとー、聞きたかったんだ。
ちょっと長く借りる事になるけど」
「いーよいーよ、こっちのちゃんとあるし」
明日菜が美砂からMDを受け取り、少しの間続く会話に、
明日菜もネギも他愛も無いと言う事の価値を噛み締めていた。
ーーーーーーーー
「ん? 夏美姉ちゃん?
ああ、帰ってる………買い物? ああ、分かった」
小太郎が、途中で手にしたスマホの通話を終える。
「ああ、ちょっと約束入ったさかい」
「分かった」
「行ってらっしゃい」
かくして、明日菜は小太郎と分かれ、ネギと共に歩き出す。
そして、ダビデ広場に差し掛かった辺りで、
ネギがたたたっと駆け出した。
「?」
明日菜がネギの行先に視線を向け、くすっと笑みを浮かべる。
かくして、神楽坂明日菜は、メガロ饅頭が後頭部に炸裂し、
最強の魔法の英雄が絶好調のチサメパンチに宙を舞う夫婦漫才を
大汗を浮かべて眺めていた。
そして、明日菜はこちらを向いた長谷川千雨に笑って手を掲げ、
千雨は、ちょっと首を傾げる様にして、照れた様にはにかんだ。
そんな千雨を背伸びする様に眺めていたネギに千雨が向き直り、
千雨がぷいっとそっぽを向くのにネギがつつつと合わせて移動する。
「アースナッ!」
そんな様子をにこにこ眺めていた明日菜が、
幼馴染の朗らかな声を聞いて振り返った。
「只今、このかっ!」
「お帰りアスナ」
振り返り、元気良く手を振った明日菜に、
木乃香も元気良く、それでいて何処か品よく返事を返す。
「只今、刹那さん」
「お帰りなさい、アスナさん」
神楽坂明日菜は、温かな微笑みに迎えられた。
「見滝原に微笑む刹那」 -了-
==============================
―後書き―
冒頭でお断りした変更点は、季節の事です。
まどかマギカは初夏なのですが、
ネギま!側はストーリー的に夏休み明けが必須でしたので、
後者に合わせさせていただきました。
さて、何を思って本作に手を付けたのかと言えば
流石に是は、ちょっとばかし叛逆したくなりました
「ネギま!」と「まど☆マギ」の組み合わせは
何時かやってみたいな、とは思っていたのですが、
「UQ HOLDER!」12巻ラストに当たるものを連載で見た時に、
これは、行くしかないなぁアハハハハ、
と、こちらの勝手で完全に不退転スイッチが入った次第。
しがない二次書きとしても少々思い入れのある二つの作品で、
涙を呑んだ娘と、決して諦めなかったが為に悪を成し悪に成った娘、
そんな物語がぎくしゃくと連結して
いっぺんやってみたくなった、と言う事です。
若干の楽屋話をしますと、
「駒が不足しましたからね」と言うのは正にその通りで。
この流れだと動かせる人間は限られる。結果、やはり確実なのは
「全知全覚コンビ」と言う事で、おおよそ考えた人選でも直接的な部分で
駒が足りない。それで辿り着いたのが本作の布陣と言う事で。
それでよくよく考えて見ると、内容から言ってあのグループ以上の適任者は
実はいなかったと言う行き当たりばったりぶり。
思惑の絡むストーリーで、出来るのは帳尻合わせだけ、はい、マジすいません、
な感じでキャラを動かし話を進めて行く内に、
なんか折々読み返すと色んな人のage sage乱高下が想像以上の弾けっぷりで
我ながら大丈夫か? となったり、最終決戦では懐かし過ぎる原作の二次を
うろ覚えでやるとこうなる、と言うのを覿面にやらかしてしまったり。
本作を作ると決めた時には2017年夏迄には、と考えたりもしましたが、
この手の予定が当たった試しがない私が、色々と頭を抱えっぱなしの
凸凹進行と言う事になりまして。
そんなこんなでこちらがもたもたしている間に、
UQの原作の方が本命確定やらBADENDやらで
大変な事になってしまいましたが。
プロットは大方出来ていた筈なのですが、個人的事情もあって
本作最終回前に筆が止まり、UQ17巻分の原作に触れて
ようやく何かが腑に落ちての一挙投下作となりました。
何よりも、頭に浮かぶ微笑みの場面を文字にしようとする度に、
私の筆の力不足を痛感するばかり。
原作の偉大さを改めて仰ぎ見ながら、なんとかかんとかここまで漕ぎ着けた。
とにかく今回は、どう動く? 本当にそうするのか?
二次としても把握出来ているのか? と、しまいまで迷いっぱなしで、
後はもう読む方が感じる事、と言うのが実感です。
少々お喋りが過ぎました。ここまで読んで下さった読者様と
勝手にお借りした原作に敬意と感謝を込めて。
縁がありましたら又何処かでお会いしましょう。
本作はここまでです。HTML依頼は折を見て。
拡散希望
【SS掲載拒否推奨】あやめ速報、あやめ2ndは盗作をもみ消すクソサイト
SSを書かれる際は掲載を拒否することを推奨します
概略1
現トリップ◆Jzh9fG75HAは
混沌電波(ちゃおラジ)なるSSシリーズにより、長くの間多くの人々を不快にし
また、注意や助言問わず煽り返す等の荒らし行為を続けていたが
その過程でついに、ちゃおラジは盗作により作られたものと露呈した
概略2
盗作されたものであるためと、掲載されたシリーズの削除を推奨されたSSまとめサイト「あやめ2nd」はこれを拒否
独自の調査によりちゃおラジは盗作に当たらないと表明
疑問視するコメント、および盗作に当たらないとの表明すら削除し、
盗作のもみ消しを謀る
概略3
なおも続く追及に、ついにあやめ2ndは掲載されたちゃおラジシリーズをすべて削除
ただし、ちゃおラジは盗作ではないという表明は撤回しないまま
シリーズを削除した理由は「ブログ運営に支障が出ると判断したため」とのこと
SSまとめサイトは、SS作者が書いたSSを自身のサイトに掲載し、サイト内の広告により金を得ている
SSまとめサイトは、SSがあって、SS作者がいて、はじめて成り立つ
故に、SSまとめサイトによるSS作者に対する背信行為はあってはならず、
SSにとどまらず創作に携わる人全てを踏みにじる行為、盗作をもみ消し隠そうとし
ちゃおラジが盗作ではないことの証明を放棄し、
義理立てすべきSS作者より自身のサイトを優先させた
あやめ速報姉妹サイト、あやめ2ndを許してはならない
あやめ速報、あやめ2ndは盗作をもみ消すクソサイト
SSを書かれる際は掲載を拒否することを推奨します
やらかした………確認したら過去作でも同じミスってた………
執筆のラストランで糸が切れて勢いで入れ替わったなこれ………
訂正です。
>>680
==============================
かくして、明日菜は小太郎と分かれ、ネギと共に歩き出す。
そして、ダビデ広場に差し掛かった辺りで、
ネギがたたたっと駆け出した。
↓
かくして、明日菜は小太郎と分かれ、ネギと共に歩き出す。
そして、世界樹広場に差し掛かった辺りで、
ネギがたたたっと駆け出した。
==============================
すいませんでした。
それでは今度こそ失礼します
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません