ヴィーネ「今日は春分の日よ!」ガヴリール「ふーん」 (26)

~朝~

チュンチュン チュンチュン


ガヴリール「……スー……スー」

「ガヴ、起きて」

ガヴリール「……う~ん」モゾモゾ

「ガーヴ! 起きてってば!」

ガヴリール「……ん」

ガヴリール「……んん~?」


ヴィーネ「ほら、いつまで寝てるのよガヴ! もう朝よ?」

ガヴリール「なんだ、ヴィーネか……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1489962457

ヴィーネ「何だとは何よ、せっかく起こしに来てあげたのに」

ガヴリール「んああ……いま何時?」

ヴィーネ「もう7時30分よ、ほら起きなさい」

ガヴリール「うぇー……」

ヴィーネ「うぇーじゃない、早く顔洗って着替える」

ガヴリール「あーねむ……」

ヴェーネ「朝ご飯はトーストとハムエッグでいい?」

ガヴリール「ん」

ヴィーネ「たまごたまご……っと」

ヴィーネ「あらやだバター切らしちゃってる!」

ガヴリール(オカンかよ……)

ヴィーネ「はい、朝ご飯できたわよ」

ガヴリール「ん」モグモグ

ヴィーネ「ちょ……いただきます、は?」

ガヴリール「んまああふ」モグモグ

ヴィーネ「もう、食べながら喋らないの!」

ガヴリール「ん」モグモグ


ガヴリール「ところでヴィーネ」

ヴィーネ「うん?」

ガヴリール「大事なことに気づいたんだけどさ」

ヴィーネ「何よ」

ガヴリール「今日って月曜だけど学校休みじゃね?」

ガヴリール「祝日だし」

ヴィーネ「そうよ、まさか私が知らないとでも?」

ガヴリール「いや、だって……」

ヴィーネ「っていうか学校あるなら制服で来てるわよ」

ガヴリール「あ、確かに私服だ」

ヴィーネ「もう、ガヴったら」フフフ

ガヴリール「ははは……」


ガヴリール「いやちげーだろ」

ガヴリール「なんで休みの日にこんな朝早く起こされなきゃなんないんだよ」

ガヴリール「嫌がらせか何か?」

ヴィーネ「えっ」

ヴィーネ「まさか、ガヴ知らないの?」

ガヴリール「何を」

ヴィーネ「何って……今日は何の日かってことよ」

ガヴリール「祝日だろ」

ヴィーネ「だから、何の祝日かってことよ」

ガヴリール「そこまでは知らん」

ヴィーネ「もう、それくらい覚えときなさいよ……下界の文化じゃないの」

ガヴリール「休みなら何の祝日でもいいし」

ヴィーネ「はぁ……しょうがないんだから」

ヴィーネ「いい? 今日はね、『春分の日』なのよ」

ガヴリール「ふーん」

ヴィーネ「ちょっと、何よその反応は」

ガヴリール「ああ、そんなのあったね(笑)って感じ」

ヴィーネ「少しはゲーム以外のことにも興味を持ちなさいよ……」

ガヴリール「ってか何かあったっけ? 春分の日って」

ヴィーネ「ええ、それを今からやるのよ」

ヴィーネ「昨日LINE送ったでしょ? 見てないの?」

ガヴリール「あー、昨日はずっとネトゲしててスマホとか見てないわ」

ヴィーネ「はぁ……朝8時にガヴの家集合ってみんなに連絡したのに」

ガヴリール「休日に朝8時集合とか狂気の沙汰かよ……」


ピーンポーン


ヴィーネ「あ、来たみたいね」


ガチャ


ラフィエル「おはようございまーす」

サターニャ「おいーす」

ガヴリール「うわ……」

サターニャ「『うわ……』とは何よ失礼ね!」

ガヴリール「休日の朝にお前らに会うのはアレだな……ちょっと重い」

サターニャ「重いって何よ」

ガヴリール「朝から揚げ物食わされる感じ」

サターニャ「え……」

サターニャ「ふ、ふんっ! 何を言い出すかと思えば!///」

ラフィエル「あらあら」ニコニコ

ガヴリール「いや褒め言葉じゃ……あーもーこういうのが重い。朝一にやりたくない」


ヴィーネ「まあまあ、みんな揃ったことだし準備を始めるわよ」

ガヴリール「あー、ちょいまち」

ガヴリール「結局今日って何すんの?」

サターニャ「あ、私も知りたい」

ガヴリール「お前も知らないんかい」

サターニャ「だってLINEには『明日は春分の日なのでガヴの家に朝8時集合』としか書かれてなかったし」

ガヴリール「それでノコノコ朝8時にくるお前もどうかしてるわ」

サターニャ「私いつも6時半には起きてるし……」

ガヴリール「健康優良児かよ」

ヴィーネ「いい? 春分の日っていうのはね」

ヴィーネ「『ぼたもちを作って食べる日』なのよ!」

ガヴリール「……初耳なんだけど」

ヴィーネ「私も最近ラフィに教えてもらったのよ」

ガヴリール「ラフィエルに……」チラ

ラフィエル「そうなんですよ」ニコニコ

ガヴリール「……」


ガヴリール「まあそれはいいとして、何でこんな朝早いわけ?」

ヴィーネ「私もよくわからないんだけど、できれば朝一でやるのがいいらしいのよ」

ガヴリール「理由もわからずよくこんな早起きできるなお前ら……」

ヴィーネ「こういうイベントってのは型が大事なのよ」

ガヴリール(出たよイベント狂……)

ガヴリール「ってか本当なの?」

ラフィエル「ええ、本当ですよ」ニコニコ

ガブリール「……」

ガヴリール(あの笑顔は何か怪しい……)タップタップ

ラフィエル「ふふ、わざわざネットで調べなくても嘘はついてませんよ」

ヴィーネ「そうよ、疑うのは失礼でしょ」

ガヴリール「いや、一応な……詳しい作法とかもあるかもしれないし」


ガヴリール「……えーなになに」

ガヴリール「春分の日には『お彼岸のお墓参り』を行うのが一般的……?」

ガヴリール「お墓にぼたもちを備えた後にみんなでいただく……」

ガヴリール「墓参りは午前、できれば朝一で行うのがよいと言われることもあるが決まりではない、と……」


ヴィーネ「お墓参り……?」

ガヴリール「おいおい、確かに嘘はついてないけど何か話が違うぞ」

ラフィエル「あらぁ? 思い違いだったみたいですね……申し訳ないですー」ニコニコ

ガヴリール(わざとらしい……)

サターニャ「え、何? ぼたもちってのを作ってお墓参りに行くの?」

サターニャ「ってかぼたもちって何よ?」

ラフィエル「ぼたもちっていうのは、もち米を丸めたものにあんことかきなこをまぶした食べ物ですよ」

サターニャ「何それおいしそう! 早く作りましょう!」

ラフィエル「材料はヴィーネさんが用意してくださってるはずですが……」

ガヴリール「あー、なんか荷物もってきてると思ったらそれか」

ヴィーネ「……」

ガヴリール「ヴィーネ?」

ヴィーネ「お墓参り……お墓参り……」ブツブツ

ガヴリール「お、おいどうした?」


ヴィーネ「お墓参りをするのが正式なやり方なら、プラン変更しなくちゃいけないじゃない!」

ガヴリール「……別にいいんじゃね、ぼたもち作って食うだけで」

バンッ(テーブルをたたく音)

ガヴリール「」ビクッ

ヴィーネ「いい? こういうイベントっていうのは型が大事なのよ……」

ヴィーネ「クリスマスケーキの二の舞には絶対にさせないんだから!」メラメラ

ガヴリール「お墓参りはイベントじゃなくね……?」

バンッ(テーブルをたたく音)

ガヴリール「や、なんでもない」


ヴィーネ「というわけで」

ヴィーネ「この中で、誰か近くに知り合いのお墓があるって天使(or 悪魔)はいない?」

ガヴリール「いるわけないじゃん……全員ここにきてまだ1年も経ってないし」

サターニャ「じゃあ天界に帰る? 時間的にはすぐ着くし」

ヴィーネ「それだと4人一緒にできないじゃない!」

サターニャ「あー……」


ラフィエル「では、いっそ『今からお墓を建てる』というのはどうでしょうか?」

ヴィーネ「お墓を……? 一体誰の……」

ガヴ ヴィーネ ラフィ「……」チラ

サターニャ「!?」

サターニャ「なななんでこっち見るのよ!」

ガヴリール「あー、いや……別に『そういう』つもりはないんだけど、無意識のうちにな」

サターニャ「『そういう』って何よ!」

ヴィーネ「ご、ごめんなさいサターニャ! つい……」

サターニャ「ついって何よついって!」

ラフィエル「うふふ」ニコニコ

サターニャ「笑うな!」

ラフィエル「でもサターニャさん、この春分の日の主役と言えば、間違いなくお墓の中に入っている人なのであって……その役にふさわしいのはもちろん」

サターニャ「さすがに騙されないわよ!?」

ヴィーネ「あんまりこういう冗談はよくないわよラフィ」

ヴィーネ「でももしサターニャがいいって言ってくれるのなら……」

サターニャ「ヴィネットが言うと冗談にならないから怖い」

ヴィーネ「あーもー! お墓お墓お墓……」イライラ

ガヴリール「ヤバい、ヴィーネのイベント強迫症が」

ラフィエル「とりあえず、ヴィーネさんはぼたもちの方をお願いしてもよろしいですか?」

ラフィエル「その間にお墓はこっちで何とかしておきますので」ニコ

ヴィーネ「……分かったわ」

ヴィーネ「くれぐれもお願いね? クリスマスのときみたいにはならないように!」

ラフィエル「はい、素敵なお彼岸にしましょうね!」


ラフィエル「と、言うわけで私たち3人でお墓参りの件をどうにかすることになりました♪」

ガヴリール「めんどくせー……」

サターニャ「ちゃっちゃと終わらせて早くぼたもち? っての食べましょう!」

ラフィエル「私としてはさっき言った通り、新しくお墓を建てるという方向性で行きたいのですが……」

ガヴリール「誰の墓だよ」

ラフィエル「それはもちろん……」チラ

サターニャ「こっちみるな」

ラフィエル「大丈夫ですよ、天使である私たちは悪魔を封印する術を習っているのです」

ラフィエル「それでサターニャさんを一時的に仮死状態にするので、それからお墓に入っていただければ……」

サターニャ「超えちゃいけないライン考えて!」

ガヴリール「おいおい、さすがにそれはヴィーネが怒るからダメだ」

ラフィエル「そうですか……」

サターニャ「ほっ……」

ガヴリール「だからまた別の機会にやろう、な?」

サターニャ「知り合いを仮死状態にする機会ってそう何度も作ったらダメだと思うの」


ガヴリール「まあ冗談はさておき、墓参りの件を何とかしないと私たちが墓にぶち込まれかねん……」

ガヴリール「何かいいアイディアはないのか」

ラフィエル「私が思うに、そのカギはサターニャさんが握っていると思います」

サターニャ「な、何よしつこいわね……私はお墓に入らないわよ」

ラフィエル「うふふ、そうではなくてですね……」

ラフィエル「結局のところ、お彼岸の流れとしては『お墓or仏壇におはぎをお供えする→いただく』というプロセスを踏まえていればよいわけです」

ラフィエル「ここで、お墓や仏壇にお供えをするというのを突き詰めると、『霊にお供えをする』という解釈もできます」

ラフィエル「つまり……」

ラフィエル「サターニャさんに降霊術を使ってもらい、直接霊にお供えをすれば万事OKなのです!」

ガヴリール「……」

サターニャ「え、でも私降霊術なんて使えな」

ラフィエル「大悪魔なら、誰しも降霊術の一つや二つ使えるものだと聞いていますが?」

サターニャ「そ、そうなの?」

ラフィエル「仮に試したことがなくても、サターニャさんほどのポテンシャルをもったお方なら、すぐに降霊することができますよ!」

サターニャ「そうかしら……そうよね! そんな気がしてきたわ!」

ラフィエル「ではまず……去年亡くなった私のペット、ペガサスのイヴちゃんを降霊してください!」

サターニャ「よし……」

サターニャ「胡桃沢=サタニキア=マクドウェルの名の元に命ず……イヴよ、我が元に降霊せよ!」コオオオオオオ

サターニャ「はああああっ!」

サターニャ「……」

ガヴリール「……」

ラフィエル「……」

サターニャ「……」

ラフィエル「ダメです、気合が足りません! もっと力を込めて!」

サターニャ「はあああああああっ!」プルプル

ラフィエル「もっと!」

サターニャ「ほおおおおおおおおっ!」プルプルプル

ラフィエル「もう一息!」

サターニャ「ごああああああああああっ!」プルプルプルプル

ラフィエル「どうですか、なんだか頭にもやがかかった感じがしてきませんか!?」

サターニャ「な、何かふわふわしてきた!」

ラフィエル「その調子です! あとはイヴちゃんの霊が自分の頭に入ってくるのをイメージしてください!」

サターニャ「おおおおおおおおおっ!」

ラフィエル「強く、深く、鮮明にイメージしてください! そうすればサターニャさんにイヴちゃんの霊が乗り移るはずです!」

サターニャ「ぎょおおおおおおおっ!」

ラフィエル「あっ! 今入りました! イヴちゃんの霊入りましたよー!」

サターニャ「…………」

ラフィエル「……イヴちゃん? イヴちゃんですか!?」

サターニャ「………ヒヒーン」

ラフィエル「ッ」プルプル

ラフィエル「ああ、イヴちゃん……会いたかったですよ!」ナデナデ

サターニャ「ヒヒーン……」

ラフィエル「久しぶりに背中に乗せてもらってもいいですか、イヴちゃん?」

サターニャ「ヒヒーン……」

ラフィエル「ありがとうございます、それでは四つん這いになってもらって……よいしょっと」

サターニャ「ヒヒーン!」

ラフィエル「では部屋の中を散歩しながら思い出話でもしましょうか……」

サターニャ「ヒヒーン……!」カッポカッポ


ガヴリール「…………」





サターニャ「ひ、ヒヒーン……」プルプル

ラフィエル(サターニャさんの手足がぷるぷるしてきましたね……潮時ですか)

ラフィエル「ではいっぱい遊ん……お話できたので、名残惜しいですがお別れとしましょう」

ラフィエル「1、2の3で元のサターニャさんに戻ります……」

ラフィエル「1、2の……3!」パンッ

サターニャ「……はっ!?」

サターニャ「私は何を……」

ラフィエル「やりましたねサターニャさん! 降霊大成功ですよ!」

サターニャ「ほ、本当に!?」

ラフィエル「さすがは大悪魔様です! 一回で降霊をマスターされるとは!」

サターニャ「まあこのサターニャ様なら当然だけどね?」フフン


ガヴリール(お前ペガサスとか飼ってたっけ?)ヒソヒソ

ラフィエル(飼ってませんよ?)

ガヴリール(……)

ラフィエル(飼ったこともないですよ?)

ガヴリール(……だよな)

ヴィーネ「もうすぐぼたもちできるけど、お墓参りの方は大丈夫ー?」


ガヴリール「げ、ヴィーネのやつもう作っちまったみたいだぞ……どうすんだよ」

サターニャ「何言ってるのよ、私の降霊術があれば何も問題ないじゃない」

ガヴリール「冗談が通じればいいが……いやーダメだなきっと、イベントが絡んだときのヴィーネはガチだ」

ガヴリール「はぁー、せっかくの休みだってのにとんだ祝日だよ」

ガヴリール「誰だよ春分の日に墓参りするとか考えた奴は……普通に休みの日でいいじゃんか」


サターニャ「そういえば、そもそもどうして春分の日にお墓参りをするのかしらね?」

ガヴリール「さあ、冬だと寒いし夏だと暑いからじゃね?」

ラフィエル「それもあるかもしれませんが……」

ラフィエル「この国の宗教では、天界は西の方角にあると考えられてるんです」

ラフィエル「なので春分の日のように太陽が真西に沈む日は、下界と天界が最も通じやすくなると信じられていたそうです」

ラフィエル「つまり、この時期にお墓参りをすれば、亡くなった方と最も通じやすくなる……ということなのですよ」

サターニャ「……zzz」スピー

ラフィエル「あらあら」

ガヴリール「こいつには難しすぎたな」

ガヴリール「でも、それじゃいつでも天界に帰れる私たちには無意味な行事じゃん……アホくさ」

ラフィエル「まあ、郷に入っては郷に従えとも言いますし」

ラフィエル「それに、楽しめるものなら何でも楽しんでいけばいいじゃありませんか」

ガヴリール「……お墓参りって楽しむものなのか?」

ラフィエル「少なくとも私は今日、楽しいです」

ガヴリール「私が言うのもなんだけど、天使らしくないよな本当」

ラフィエル「ふふふ♪」

ガヴリール「私にとっては楽しみを得る手段なんて、ネトゲさえあれば十分なんだけどなー……」ゴロン

ラフィエル「まあ、たまにはこういうアナログなのもいいじゃないですか」

ガヴリール「うーん……」


ヴィーネ「ぼたもち出来たわよー」

ガヴリール「げっ」

ヴィーネ「『げっ』とは何よ失礼ね」

ガヴリール「いや、実はお墓参りの問題がまだ……」

ヴィーネ「ああ、そのこと……別に無理しなくてもいいわよ、もう」

ガヴリール「えっ」

ヴィーネ「サターニャが何かものすごく頑張ってる声が聞こえてきたし、その気持ちがあればまあ……今回はいいかなって」

ガヴリール「マジかー、首の皮つながったわ」

ヴィーネ「もう、大げさなんだから……」

ガヴリール「ん、んまい」モグモグ

ヴィーネ「ガヴー、いただきますは?」

ガヴリール「んはああふ」モグモグ

ヴィーネ「まったく……」

ラフィエル「ヴィーネさん、ガヴちゃんのお母さんみたいですね」ニコニコ

ヴィーネ「困った娘だわ本当……」

ガヴリール「まあでも、手のかかる子ほどかわいいっていうし」

ヴィーネ「自分で言わないの!」


アハハハ……


サターニャ「……zzzz」ムニャムニャ


end

読んでくれた人ありがとう
色々雑でごめんね

おつ
サクッと読めて良かった

なんだかほっこりしました

ほのぼのしてて良いと思う

あったけぇ・

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom