姫川友紀「ちょっとガーナに遠征してくる!!」 (72)

P「…ってさ」

二宮飛鳥「…ガーナ」

P「おう」

相葉夕美「ガーナって、アフリカだっけ?」

P「うん」

飛鳥「…チョコレートの商標名、ではなく?」

P「旨いよな、ロッテのチョコ」

夕美「私、バッカスとかラミー好きだよっ」

飛鳥「ああ、ボクはクランキーが…って、そうじゃなくって」


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飛鳥「何故、ガーナに?」

P「最高のチョコには最高のカカオが~とかなんとか言ってたな」

飛鳥「…よく、理解らないな」

夕美「私も、ちょっと…」

飛鳥「キミが唆したワケではないんだね」

P「んな訳ねーだろ。…まぁこれもよく分からん話なんだけど」

夕美「?」

P「みんなでチョコ作る練習してた時スタジオで、た…たけ?たか、なんとか?っていう奴に、究極のカカオだかがガーナでどうたら言われたらしい」

飛鳥「…それを真に受けてガーナまで行った、と」

P「みたいだなぁ。俺も詳しく聞いてないんだよ」

夕美「え?プロデューサーさんも知らない内に行っちゃったの?」

飛鳥「訊く前に往ってしまったということかい」

P「うん。…さっき突然な」

夕美「さっき!?」

――

prrrrr…

P「…ユッキから電話だ。珍しい」ピッ


P「もしもーし」

姫川友紀『あっ、プロデューサー?』

P「おう。何?どうかした?」

友紀『うん!あたし、明日から特にお仕事入ってなかったよね!?』ガヤガヤ

P「へ?えーっと…あぁ、うん。別に。お渡し会までにチョコ作る練習と…いつも通りレッスンぐらいだけど」

友紀『だよね!レッスンはお休みするって連絡入れといたから大丈夫!』ザワザワ

P「は?…てか、なんか後ろがうっさいんだけど。今どこだよ」

友紀『空港!』

P「…あ?」

友紀『昨日、武田さんに言われて気付いたんだ。スタンドに最高のチョコでホームランを届けるには…最高の材料!最高のカカオが必要なんだって!!』

P「ちょ、待って。ちょっと待って。カカオって何?たけ…誰だって?」

友紀『そういう訳だから。あたし達、今からカカオの国ガーナにちょっと遠征してくるね!』

『友紀さーん!時間がー!』

友紀『ああっ、待ってよ涼ちゃん!じゃあねプロデューサー!ビジターゲームだけど、あたし負けないから!』

P「おいちょっ」ブツッ

ツー ツー

P「…」


P「えぇ…」


――
P「って」

夕美「うーん…」

飛鳥「…なんとも、唐突な話だね」

P「ホントに。何が『そういう訳だから』だよ。どーいう訳だっつーの」カタカタ

夕美「…」

P「んだよガーナって。どこをどうすればチョコ作りに国境越えることになるんだ」カチャカチャ

夕美「(…ねえ)」ヒソ

飛鳥「(…なんだい)」ヒソ

夕美「(なんだかプロデューサーさん…珍しくイライラしてない?)」ヒソヒソ

飛鳥「(同感だ。キーを叩くのが、気持ち強めだね)」ヒソヒソ


P「バレンタインのお渡し会ですんなり終わるはずだったってのにさー…なんでこんなことになってんだ一体」


夕美「(ブツブツ言ってるの、ちょっと怖いよぉ…)」ヒッソリ

飛鳥「(様々に、想うところがあるのだろう。きっと)」ヒソヒソ

夕美「(様々…なるほどっ)」ヒソ

飛鳥「(フフッ。そう考えると、なかなかどうして微笑ましいじゃないか)」ヒソソ


P「…2人して何ニヤニヤしてんの」

夕美「何でもないよっ。ね?飛鳥ちゃん」

飛鳥「ああ、人聞きの悪いことを言わないでくれ。そんな表情していない」

P「…まあ良いや。それにしてもなぁ…何も昨日の今日で出発することないのに」

飛鳥「それは言えてるな。先の計画は果たしてどうなっているのやら…」

夕美「で、でも、それって友紀ちゃんの行動力の表れだよね!思い付きで海外なんて、すごいよ!」

P「良く言えばそういうことなんだけど」

飛鳥「同行者はいるのかい?…まさか、彼女達だけで?」

P「さっき確認取ってみた。浅利さんとこのPさんが付いてってくれたらしい」

夕美「そっか。なら、とりあえず安心だね」

P「ご迷惑お掛けしちゃってもう…頭が上がらんよ、ホントに。『突発で海行ったりするので慣れてるから』なんて言ってくれてたみたいだけどさ…」ハァ

夕美「あ、あはは…」

飛鳥「戻りは?」

P「それもさっぱり。イベントまでには流石に帰ってくるだろうけど」

飛鳥「…パスポート、持っていたんだね。友紀」

P「…。確かに」

夕美「…ちょっと意外、かも」

――――――
――――
夕美「…それでね、ありすちゃんが練習って言ってたら、いつの間にか花びらいっぱいできちゃって!」

飛鳥「フフッ。さぞ、たくさんの薔薇ができたのだろうね」

夕美「そうなのっ!もう、味見の量じゃなくなっちゃって…って、あれ?仁奈ちゃん?」

市原仁奈「……」

龍崎薫「……」

飛鳥「薫もいるね。…扉の前に」

夕美「何してるのかな?おーい、仁奈ちゃん、薫ちゃーん」

仁奈「あっ、飛鳥おねーさんに、夕美おねーさん」

薫「おかえりー!レッスンは終わったの?」

夕美「うん。戻って来たところなんだけど…どうしたの?」

仁奈「…」

薫「あのね…さっき、せんせぇにチョコあげたんだぁ」

飛鳥「…バレンタイン・デイだね、今日は」

仁奈「昨日みんなで作ったお花も、あげたのでやがりますよ」

夕美「そうなんだ!良かったね!」

薫「でも…」

仁奈「うん…」

飛鳥「…?浮かない顔をしているね」

夕美「…喜んで、くれなかった?」

薫「ううん!そんなことないよ!」

仁奈「きれいだなーってほめてくれやがったでごぜーます!」

夕美「じゃあどうして?」

仁奈「…薫ちゃんと、おトイレから戻って来たらプロデューサーが…」

薫「うん…」

夕美「?」

飛鳥「どれ…」


P「………」カタカタカタ

ズモモモ


夕美「うわぁ…」

飛鳥「…邪悪だな。今まで以上に」

薫「せんせぇ、おなか痛くなっちゃったのかなぁ…」

仁奈「…もしかして、仁奈のチョコ、不味かったでやがりますか…?」

夕美「そ、そんなことないよ!昨日みんなで味見もしてみたでしょ?」

薫「でも…」

飛鳥「…原因は、大体理解っているさ。キミたちは悪くない」

仁奈「?仁奈たちのせいじゃねーでごぜーますか?」

飛鳥「ああ。…やれやれ、人騒がせなヤツめ」

夕美「ふふっ。どっちが?」

飛鳥「…どちらもだよ」

薫「どっちも?だれのこと?」

夕美「プロデューサーさんと、友紀ちゃんかなっ」

仁奈「?友紀おねーさんは、今バナナに行ってるでやがりますよ?」

飛鳥「ガーナ、だよ。仁奈。それだとフィリピンだ」

夕美「プロデューサーさん、友紀ちゃん大好きだから…きっと居なくて寂しいんだよ」

薫「それでせんせぇ元気ないの?」

夕美「きっとね。…よし。私、ちょっと声かけてくる」

飛鳥「…そうだね。ここは任せるよ、夕美さん」

夕美「うん!」


飛鳥「さて。ボクらはここで、しばし様子を見ていようか」

仁奈「うん!」

――

夕美「ただいま、プロデューサーさん!」

P「…ん、夕美か。お疲れ…飛鳥は?」

夕美「飛鳥ちゃんは、ちょっと休憩してから来るよ」

P「ふーん…あ、仁奈と薫、すれ違わなかった?帰ってこないんだよな」

夕美「えーっと…さっき、あっちに走って行った、かなっ」

P「…そっか。どこ行ったんだろ」

夕美「…」

夕美「プロデューサーさんっ!」

P「うん?」

夕美「えっと、お茶にしませんか?」

P「へ?何だ急に」

夕美「ほら、チョコとかお菓子いっぱいもらってるみたいだったから!休憩ってことで…」

P「…」

夕美「私からも…ね?」

P「…そう、じゃあ一息入れようか」

夕美「うん!私、お茶淹れてきますっ♪」

――

薫「かおる、知ってるよ!ああいうの、"ごりおし"って言うんだよね?」

仁奈「ごり…?ごりら?うっほっほーでごぜーますか」

飛鳥「…プロセスはともかく、空気を換えることには成功しそうだね」

飛鳥「(さりげなくチョコも渡そうとしているのは…計算だろうか、あるいは素のものか)」

――

夕美「はい、ミントティー。リラックスできるよ?」

P「サンキュ」

夕美「それと…これ。私からチョコクッキーと…薔薇の飴細工!」

P「おっこれ、さっき仁奈と薫からも貰ったやつだ」

夕美「ふふっ、昨日みんなで作ったんだ!楽しかったよ?」

P「なるほどそれで…よくできてるよなあ」

夕美「こんなバレンタインもありかな?って思って」

P「良いんじゃないか?ありがとう」

P「今日のレッスン、どうだった?」

夕美「うん!私も飛鳥ちゃんも、絶好調だよっ」

P「そっか。そりゃ良かった」

夕美「せっかく2人で歌える機会だもん!頑張らなくっちゃ!」

P「バレンタインのちょっとしたミニライブイベントだけどな」

夕美「ミニでも、ライブはライブなの!目一杯楽しんじゃうよ?」

P「…頼もしいね。飛鳥のことも、よろしく頼む」

夕美「うんっ!いつも支えてもらってばっかりだから、その分お返ししなきゃね!」

――

飛鳥「…」

仁奈「あー!飛鳥おねーさんが、照れてるでやがります!」

飛鳥「ボクのことは良いんだよ。全く…」

薫「せんせぇと夕美ちゃん、なんだかパパとママみたい!」

飛鳥「…それは今度、夕美さんに直接伝えてあげると良いよ…っと。シッ…静かに」

――

夕美「…」じっ

P「?な、なに?」

夕美「…うん。プロデューサーさん、やっぱり元気ないね」

P「…そんなこと、」

夕美「友紀ちゃんのことでしょ?」

P「…」

夕美「心配だよね。もう5日も帰らないんだもん」

P「…海外行くんだったら、それくらい普通だろ」

夕美「それに。黙って行っちゃったこと、まだちょっと怒ってる」

P「そりゃ文句の1つや2つ出るって」

夕美「着いてってあげたかった、とか?」

P「…まぁ。ちょっとは、そういうのも」

夕美「ふふっ。素直じゃないんだね」

P「ほっとけ」

夕美「…連絡、取らないの?」

P「良いんだよ。勝手に行ったんだから、好きにやらせとけば」

夕美「もう…そうやって意地張って」

P「…ほっとけ」

夕美「それで…一番のモヤモヤはやっぱり、友紀ちゃんからチョコ貰えなかったことでしょ」

P「…」

夕美「友紀ちゃんにバレンタインのお仕事だー!って。すっごく張り切ってたよね、プロデューサーさん」

P「…」

夕美「どうかな?」

P「はぁ…。オッケー、まいった。降参だ」

夕美「やたっ♪」

P「鋭いんだもんなぁ。何、エスパー?テレパシーかなにか?」

夕美「違いますー!…見てれば、分かるよ?」

P「…そんなに分かりやすかったのか」

夕美「仁奈ちゃんと薫ちゃんも心配してるぐらいには…」

P「えぇ…うっそ、バレバレじゃん…。なんかちょっと恥ずかしくなってきたんだけど…」

夕美「2人とも、ドアの前で入り辛そうにしてたんだよ?」

P「あぁ、やっぱ2人と会ってたのか。良かった」

夕美「えっ?」

P「何か隠してるなーとは思ってたけど」

夕美「…ばれてた?」

P「おう。そりゃもう、バレバレだ」

夕美「もう…みんなー、入っても良いよー」

 ガチャ

薫「せんせぇ…具合、悪くないんだよね?」

P「ん、大丈夫大丈夫」

仁奈「仁奈たちのチョコ、美味しくなかったんじゃねーんですか?」

P「…何言ってんだ。不味い訳ないだろ」

仁奈「本当でやがりますか!?」

P「ああ。美味しかったよ、ありがとな」

薫「えへへ…良かったぁ!」

P「ごめんな、そんなつもりじゃなかったんだけど…」

飛鳥「やれやれ。一段落、といったところかな」

P「飛鳥もいたの」

夕美「飛鳥ちゃんなんか、初日に気付いてたんだよ?真っ先に!」

P「…そうだったのか」

飛鳥「ここ数日の中でも、流石に目に余るレベルだったよ。今日のキミは」

夕美「1人きりだとすっごく不機嫌そうだったよね?」

P「…マジかぁ」

飛鳥「ココロの動揺はカラダにも、纏う雰囲気にも表れるものさ。それが良かれ悪しかれ、ね」

P「…」

飛鳥「珍しく仮面が剥がれて、雑念に塗れた…少しコドモなキミが見られたんだ。ボクとしては概ね満足だったさ」

夕美「あ、飛鳥ちゃん、そんな言い方…」

P「いや、良いんだよ。ありがとう、夕美」

夕美「でも…」

P「分かってるんだ、俺も。ちょっとガキっぽかったなって」

薫「え?せんせぇは子供じゃないよ?」

飛鳥「薫。ここでいうコドモは…そうだな。寂しがりだとか、我儘という意味だよ」

P「…容赦ないね、お前」

飛鳥「おや、心にもない甘い言葉の方がお好みだったかな?…チョコのように甘く、絡み付く言葉が」

P「それは遠慮しとく。これ以上甘いの食うと、ちょっと胸焼けしそう」

飛鳥「フッ…だろうね。胸を焦がすのは、待ち人だけで充分さ」

P「…焦れったいって意味では、大正解だな。それ」


仁奈「??この2人、なにしゃべってるでやがりますか?」

夕美「ふふっ♪仲良しの証拠なんだよ」

薫「んんー?」

P「…駄目だなぁ俺、みんなにも心配かけて。ユッキのこと言えないな」

夕美「そんなことないよ、プロデューサーさん」

飛鳥「…程度の違いこそあれど、心配していたのは皆同じことさ」

薫「かおるも、友紀ちゃんいなくてさみしいよ?」

飛鳥「ああ。…カタチにするべき想いというものも、少なからず存在する。ボクはそう思う」

P「…」

飛鳥「ココロの内に留めておくのが間違いだなんて、ボクは思わない。…が、一方で。想いはカタチにしなければ伝わらないというのも、また事実さ」

夕美「そうだよね。言わぬが花…なんて言うけど。私は、伝えたい気持ちの方がいっぱいあるかな」

飛鳥「不安や懸念。皆、ココロの何処かで抱いていたことなんだ、言葉にしてこなかっただけで。それを、キミは…キミだけは露わにした。…態度や表情なんていう間接的なカタチではあったけれど」

飛鳥「だからこそ、ボクらにも伝わった。より明確にね。其処に何の問題があるんだい?心苦しく思うことなんて、何一つ見当たらないよ」

P「…そうかな」

仁奈「んー…仁奈、むずかしくってよく分かんねーですけど…。さみしい時は、さみしいって言わなきゃだめでごぜーますよ」

P「…そうだよな。うん」

飛鳥「気に病むことなんてないさ。…相応しい時、然るべき相手に。思いの丈をぶつけると良い」

P「おう。あいつが帰った時、ちゃんと言うよ」

夕美「…電話すれば良いのに」

P「いや、違うんだ。こればっかりは意地とかじゃなくてだな…」

薫「?」

P「その…友紀もさ、自分なりにやるべきこと見つけて、やってるんだろうなって思う。きっと」

P「わざわざガーナまで行ったのも、行くべきだって判断してのことだろ。…向こうから連絡がないのも、多分一生懸命やってる証拠だよ」

飛鳥「…便りがないのが良い便り、とも言うね」

P「そうそう。だからこそ、それが終わるまでは自由にやらせてみようとも思ったんだ。あいつなら、何かあっても大丈夫だとも思ってるし」

夕美「…なるほどっ」

P「そんな訳で。向こうから来ない以上、こっちからも連絡はしないって決めた。…というか、してやらん」

薫「でも、友紀ちゃんこまってるかもしれないよ?」

P「本当に切羽詰まったら何かしら寄越すだろ。それでも、最終的には自分らで何とかしてもらうしかないけど」

夕美「良かったぁ。好きにやらせるって、そういう意味だったんだ」

飛鳥「…フッ。存外、気持ちの整理は付いていたようだね」

P「あと俺がやれることっていったら、何事もなく帰って来るのを待つだけなんだよな。…イベントまでに」

夕美「…友紀ちゃんの出番、確か3日後だったよね」

P「ああ。間に合うのかなぁ、あいつ。明後日はリハだから…せめて明日、できれば今日の夜にでも…」

薫「あっ!じゃあ友紀ちゃんが居なかったら、かおるがチョコくばりまー!」

仁奈「仁奈もやりてーですよ。友紀おねーさんの気持ちになるでごぜーます!」

P「…頼もしいちびっこ達だな」

飛鳥「全くだ」

――――――
――――
友紀「…到着!いやー、長旅だったね!」

関裕美「流石に、移動が多くて疲れたね…」

友紀「午後からはリハーサルだよ?ダブルヘッダーだけど、頑張っていこう!」

浅利七海「本番の前日に帰国…長居しすぎたれすかね~」

友紀「大丈夫だって!連戦でもなんとかなるなる…」


P「…」

友紀「…ってうわあ!プ、プロデューサー!?」

「あ、お疲れ様です」

P「!どうも、ご無沙汰してます。この度はホンット、ご迷惑をおかけして…」

「いえいえー、僕も楽しかったですし…」


友紀「…」

裕美「…友紀さんの、Pさん?」

友紀「うん…」

秋月涼「わざわざ空港まで迎えに来てくれたんだ。…すごいなあ」

「…ではそういう訳で。関さんと秋月さんは僕の方でお送りしますので」

P「よろしくお願いします。みんなにも、ほんと迷惑かけてすみません」

「まあまあ。行くよーみんな」


七海「は~い。それじゃあ友紀さん、また後でなのれす」

友紀「…あ、うん。またね」

裕美「また、スタジオで」

涼「お疲れ様でした!」

友紀「…」

P「…」

友紀「えっと、ただいま!…いや、久し振り、かなぁ。あはは」

P「…」ツカツカ

友紀「えーっと…その、両手ちょっと塞がっててさ!持ってくれると…なーんて」


P「この!」ビシッ

友紀「あいたっ!な…えぁ?チョップ?」

P「気持ちはグーだったけど流石に抑えておいたんだ。ありがたく思え」

友紀「ひどいよ!両手塞がってるって言ったのに!」

P「うるせえ!どれだけ心配したと思ってんだ!このバカ!」ビスッ

友紀「いたーい!…って、帽子被ってるからそんなでもないんだけどね」

P「ったく、突然ガーナだなんて訳分かんねえことしやがって…」

友紀「…確かに。あたしも途中から、海外遠征はちょっとやりすぎたかなーって思ってたんだけど…」

P「絶対やりすぎだ。余所様のアイドルも巻き込んで…全く」

友紀「はい…すいませんでした…」

友紀「…どうして、空港にいたの?」

P「あ?なんだお前、来てやったってのに文句言うのか」

友紀「いやいや、違くてさ!飛行機の時間、教えてなかったでしょ?なのに…」

P「浅利さんとこの事務所からさっき電話あってな。到着時間教えてもらえたから、ぶっ飛ばして来たんだ」

友紀「…なるほど」

P「ほんっと迷惑かけっぱなしで…。今度菓子折りの1つでも持っていかにゃならん。お前も付き合えよ」

友紀「うん…」

P「それにしても…随分遅く帰って来たのな。お渡し会、もう明日なんだけど」

友紀「うん。ベルギーにも寄って来たからねっ」

P「ほーん…ベルg、ベルギー!!?」

友紀「うわ!ビックリした!」

P「こっちの台詞だ!!ベルギーって、はぁ?ベルギー!?ヨーロッパの!?」

友紀「そうだよ?」

P「…」

友紀「やっぱり、本場でチョコの作り方も練習しておかなくちゃって思って!」

P「…」

友紀「…ハッ。ま、またチョップするの…?」

P「…いや。呆れてもう、怒る気失せたわ…」

友紀「ホッ…」

P「…時間かけた分の成果は、あったんだよな?」

友紀「もっちろん!特大ホームラン、期待しててよね!」

P「そうか」

友紀「うん!」

友紀「ふっふっふ…あたしがいない間、寂しかったでしょー?」

P「…ああ」

友紀「…へ?」

P「寂しかったよ」

友紀「ちょちょ、え?」

P「めちゃくちゃ寂しかったし、すげえ心配もしてたんだ」

友紀「待って待って…」

P「…俺だけじゃなく、みんなも」

友紀「…ぅ」

P「目の前のことも良いけど。もっとお前のこと思ってる奴のことも考えろ、バカ」

友紀「…ごめん。浮かれてたかな、あたし」

P「…でも」

友紀「…?」

P「でもさ。無事に帰って来てくれたから、良かった」

友紀「…うん、ごめんなさい」


友紀「…ただいま」

P「おかえり。お疲れさん」

P「…さ、行くか。荷物半分寄越せよ」

友紀「うん!」

P「午後のスタジオリハまで、どうする?事務所戻ってちょっと休むか?」

友紀「…ううん、このままブルペン入りするよ!今なら、すっごい美味しいチョコ、作れる気がする!」

P「…それ、明日までに取っておけよ?」

友紀「任せて!絶好調だもん、何イニングだっていけるよ!」

P「本当かよ…」



――
――――

――――――
――――
――

友紀「…」ポー

P「…よっ、お疲れ」

友紀「…あ、プロデューサー。…うん、お疲れ様」

P「ほら、スポドリ。…隣、座るぞ」

友紀「うん…ありがと」

P「流石にくたびれただろ」

友紀「うん…ハードだったぁ」

P「そりゃそうだ。帰国してすぐリハ、一夜明けたらイベントで1日立ちっぱなし、と」

友紀「んー…」

P「堪えるよなぁ。本番中は元気でも」

友紀「…どうだったかなぁ?今日のイベント」

P「…評判なら、もう最高だったよ。頑張ったな」

友紀「そっか、良かったぁ」

P「ガーナに行く前と比べても、みんな心なしか表情良かったよな。何て言うか、逞しくなったっていうか」

友紀「じゃあ、行った甲斐あったってことだよね」

P「…まぁ、そうかな」

友紀「えへへっ」

P「だからって、こんなんはもうこれっきりにしてくれよ?頼むから」

友紀「はーい」

P「身が持たないんだからな、ほんと…」

P「しっかし、前はまともに料理できなかったってのに…よくもまあ」

友紀「いっぱい特訓してきたんだもん。当然だね」

P「これで料理の方も少しは上達してると良いけど」

友紀「少しはって何さ!あたしだって、おにぎりくらい握れるよ!」

P「それ料理か?」

友紀「料理だよ!」

友紀「…んっ!よーし!」

P「帰るか?」

友紀「ううん。最後にもう一仕事、延長戦やらなきゃって!」

P「?土下座でもすんの」

友紀「しないよ!…へへ、夕美ちゃんから聞いたんだよ?プロデューサー、あたしからチョコもらえなくて不貞腐れてたって」

P「…それ多分、諸々端折りすぎだと思うんだけど」

友紀「細かいことは良いの!…ねえ。あたしが最後、なのかな」

P「…そうなるかな。ついさっき、飛鳥から貰ったので最後になるかと思ってたんだけど」

友紀「飛鳥ちゃん?まだ貰ってなかったんだ」

P「ああ。…必ずしも14日に渡さなければならないなんて決まりはない、とか言ってな。お預け食らってたんだ」

友紀「何それー」

――

飛鳥『…なに、用意はできているさ。相応しい贈り物も、告げる言葉も』

『だが、気が変わった。今此処では、渡さないこととする』

『今渡してしまって、果たしてボクの気に収まりは付くのだろうか。…答えは、ノーだね』

『この手の内に在る物をキミに差し出すその行為が。セカイの望む選択であるだろうことは、理解しているつもりだよ』

『…しかし。風習にただ踊らされるだけのボクではない。それはキミも承知のハズさ』

『話の流れで。ついでに。…あるいは、誰かの替わりに。そんな薄っぺらい事情を思い当てながらコイツを受け取ってはほしくない。それだけのこと』

『フフッ、言ったろう?物事には相応しい時と、然るべき相手とがある。想いのカタチを伝えるべき時は、きっと今ではない』


――
P「…って」

友紀「ふーん…難しいね。ふふっ」

P「ま、それもさっき貰えた訳だし。これで最後になるかな」

友紀「んー。飛鳥ちゃんから貰ってたんなら、やっぱりあげるのやめよっかな」

P「…」

友紀「って、わわっ!冗談だよ、冗談!」

P「…いいよ別に、無理してくれなくても。もう諦めてたようなモンだし」

友紀「無理なんかしてないよ。…だって、一番食べてほしかった人なんだもん」

よきかな

P「…」

友紀「プロデューサーに…いっちばん美味しいチョコを食べてもらうために、頑張ったんだ。あたし」

P「…そうか」

友紀「遅くなっちゃったけど…受け取って、くれる?」

P「…ああ。よろこんで」

友紀「!…へへっ。はいこれ!」

P「ありがとう。…開けても?」

友紀「うん!」

P「…」カサ…

友紀「えっとね。最高のカカオとか、本場の作り方とか。もちろん色々学んできたんだけどさ」

P「…」パク

友紀「でもそれ以上に。いつもありがとうって感謝の気持ちとか、美味しく食べてほしいなって気持ちとか。あと…と、とにかく!いっぱい、いーっぱい詰め込んだんだ」

P「…」モグ

友紀「…どうかな?」

P「…美味いよ」

友紀「~~っ!良かったぁ…」

P「うん、美味いよ。本当に。…ありがとな」

友紀「えへへ。伝わったかな、あたしの気持ち!」

P「ああ。そりゃもう、山ほど」

友紀「…渡せて良かった。プロデューサーのド真ん中ストレートにも、応えられたよ!」

P「…そっか」

友紀「最後にサヨナラホームラン、残せたね!」

P「確かに受け取ったよ。お前のホームランボール」

友紀「♪」

友紀「はぁ~…安心したら、なんだか力抜けちゃった…」

P「無理すんな、疲れてるんだから」

友紀「うん。…ね、プロデューサー」

P「?」

友紀「肩、借りても良い?」

P「…おう」

友紀「…えへへっ」コテン

友紀「…あたし、頑張ったよね」

P「ああ」

友紀「バレンタイン、ちゃんとできてたかな」

P「ちゃんと届いた。俺にも、ファンにも」

友紀「…また、みんなとチョコ作りに行けるかなぁ」

P「それは…。次は、前もって言ってくれ」

友紀「…あたしさ、」

P「?」

友紀「本気で野球をしたくても、男じゃないからって。ちょっと拗ねてた時もあったけど」

P「…」

友紀「でも…今日はね。プロデューサーに、チョコ渡せて。…女の子で良かったーって、嬉しいなって思えたよ」

P「…そうか」

友紀「…急に変な話してごめんね」

P「大丈夫だよ。…俺も男の子で良かったって、たった今思った。…なんて」

友紀「あ、まねっこだぁ…へへ」

P「…そろそろ帰らないとな」

友紀「…んー……」

P「…ほらユッキ」

友紀「うん…」

P「おいおい、寝るならせめて車で…」

友紀「……はこんでぇ」

P「え、ちょっと」

友紀「…くぅ……」

P「…寝やがった」

友紀「…すー……」

P「しょうがない奴」

友紀「………むにゃ」

P「…もうちょい、ここにいるか」

友紀「……へへぇ…ぷろでゅーさぁ…」

P「おつかれ、友紀」


P「…ホワイトデー、頑張るか」

おわりです。ユッキとガーナベルギー旅行でチョコを貰いたいだけの人生だった

ルナショの紫ユッキでポジポジしてたのも束の間、デレステ1月末限定飛鳥→2月モバマスイベ上位友紀登場。
2人の担当としてこの上ないほど嬉しいバレンタイン期間でした。お前ら最高かよ


一緒に引けた夕美ちゃんにも友情出演してもらいました。スペシャルサンクス相葉夕美ちゃん。

夕美ユッキときたら仁奈ちゃん

乙乙
本編ではお姉さん、P相手だと別の面なのがたまらぬ
性別と夢ってネタで絡んだのは正直意外だったけど良かったなぁ

きっとユッキがパスポート持ってたのはWBCのせい。

ユッキスレかと思ったら実は飛鳥スレでもあった

95%チョコ食べたらミルクチョコみたいに甘かったんだけど!!!

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