【モバマス】池袋晶葉「何もできないぞ、助手!」 (16)


発明できなくなった池袋博士のSSです

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最近私はどうも調子がおかしい……。

アイドルの仕事自体は順調だが、明らかに調子が狂っている。

「プロデューサー、できれば明日秋葉原で
 電子部品を買いに行たいんだが……」

昨日、私はプロデューサーをこのように誘った。

彼は工学部の機械学科出身で、メカ制作においては

私の良き理解者であり、優秀な助手だ。

「いいよ。最近忙しかったし、たまにはリフレッシュしないとな」

プロデューサーはこうして快く承知してくれた。

彼とはしばしば休日に出掛けて電子部品やメカパーツを物色している。

専門的な知識をフルに使って語り合える友というものは貴重だ。

機械系は美世さんも詳しいが、彼女と話すと

大抵車の話にシフトするので少し困る時がある。

その点プロデューサーは安心できた。

「うーん、このパーツの造型は個性的だな。興味深いんだが……
 さて、これを生かすにはどうメカに組み込むべきか……」

「晶葉」

「ひゃあっ!?」

声と一緒に、私の冷えた頬へ温もりが訪れた。

「ほら、暖かい飲み物、持ってきたぞ」

「あっ、ありがとうっ!  気が利くなっ!」

私はプロデューサーからカフェオレを受け取り、一口飲んだ。

プロデューサーに近づかれた時、私は妙に心がソワソワするのを感じている。

何ともない彼の行為に焦ったり、必要以上に動揺したり……

そんな状態がずっと続いているのだ。

「ふむ、声が少し掠れているな。
 昨日はボイスレッスンの後、トークの仕事が重なってしまって悪かった」

プロデューサーは私の口元を見て言った。

私は喉の奥が引きつるのを感じながら目を逸らす。

「いや、わ、私はっ! ラジオでメカの事をしゃべり倒せて楽しかったぞ!」

……ああ、まただ。プロデューサーの気遣いが私を翻弄してくる。

以前はこんな事なんかなかったのに、どうしてしまったんだろう。

「……んっ、晶葉? どうかしたのか?」

「い、いや。何でもない……」

トークの時だってそうだ。

いつもは現在進行形で制作しているオリジナルメカの制作過程や

用途について語り尽くせないほどだったのに

ここ最近はメカ制作が遅々として進まず

トークのネタにも困るようになった。

以前は気晴らしにここに来て色々なアイディアが湧いていたのに

それもふつりと途絶えて久しい。

一ヶ月もメカを造らない生活なんか、今までなかったのに……。

「……やはりだめか……」

自宅に戻った私は、戦利品を机に並べて眺めながら独り言を呟いた。

以前は家に帰ったら真っ先にしていたメカ制作、しかし今は製図すら容易に進まない。

スランプ脱却を目指して電子部品ショッピングだけは続けてみても

以前のように楽しめなくなっていた。

この間から始まった、どうしようもないソワソワと落ち着かないこの気持ち。

最初は気持ちを落ち着かせるマシンを作る事くらいは出来ていた。

しかし発明したリクライニングチェアは、プロデューサーが近くにいると

脳波が乱れて適切なマッサージが出来なくなった。

プロデューサーに計器をいくつかつけて調べてみたが

プロデューサー自体には何の異常も見当たらなかった。

しかしプロデューサーが近くにいた時だけ

明らかに私は、幸福とも羞恥ともつかない妙な気持ちになってしまう。

とにかくこの曖昧な感情、動揺を解消しなければ

私は前のようにメカいじりも何も出来ないようになってしまう。

メカを扱えない私という存在など、考えた事もなかった。

このままでは私のアイデンティティーはどうなってしまう?

私は悩んだ。これは一体何の病気だろうかと悩み苦しんだ。

「……どうなっているんだ」

私は工具とがらくたの前に佇んだ。

宝の山に見えていたそれも、今はものも言わない冷たい無機物。

この前まで頭痛すらメカを弄くっていれば治ったのに

どんどんこの気持ちの占める割合が大きくなるにつれて

メカ弄りは手につかなくなっていく。

「教えてくれ。私は、どうしてしまったんだ……」

菜々さんのために作ったウサミンロボの試作品に、私は語りかけた。

「プロデューサー、大事な話があるんだ……」

私は結局この悩みをプロデューサーに相談してみる事にした。

プロデューサーはいつもと変わらない態度で接してくる。

やっぱり変なのは、私だけだ。

彼を前にして私は胸がきゅうとなっていくのを感じている。

胸を押さえながら私は悩みを打ち明けた。

「……その、最近私はメカを作る事が出来なくなってしまったんだ」

「む、それは珍しいな。何か、あったのか?」

私は首を横に振って続けた。

「分からない……こんな事は、今まで一度もなかった……。
 その代わり……プロデューサー、私は毎日君の事を考えるようになった」

プロデューサーは真剣な顔で私の言葉に耳を傾けている。

私は胸に手を重ねて続けた。

「不思議なんだ。頭が一杯になるまで、私はずっと君の事ばかりを考えている。
 食べる時も、寝る時も、君の事が頭から離れないんだ。
 君が傍にいないと不安で胸が苦しくなる。
 それなのに、君が傍にいると顔が赤くなって気が昂って
 ……今もそうだ。君を前にしてドキドキと高鳴って仕方がないんだ」

「……」

「おかしいだろう、だが私の体は健康そのものだった。
 清良さんが見て、そう言ったんだ。
 だが……病気でないのに、ずっとこんな状態が続いている。
 治し方も分からない……。
 こんな事を君に言っても困るだけかもしれない……
 だが、もう私には……どうする事も……!」

「……。晶葉、きっとその原因は俺にあると思う」

「プロデューサー……」

プロデューサーはその時、私の手に、手を重ねた。

私は急速に心臓の鼓動が早まるのを感じた。

「ま、まただ! 手を繋いでいるだけなのに、胸が苦しくなって……!」

「晶葉……大丈夫。それはおかしい事じゃない」

プロデューサーの優しい声が耳を撫でた。

彼は私をじっと見つめた後、私を抱き締めた。

「……!?」

「苦しいか、晶葉……?」

「ううっ……! 何だ!? し、心臓が、兎のように跳ね回っているようだ!
 苦しい! 苦しいはずなのに……暖かくて、君から離れられない!」 

プロデューサーの手が背中越しに肩に触れた。

「こ、声も上擦って……ああ、訳が分からない!
 プロデューサー、怖い! 私が私じゃなくなっていくみたいだ!
 このままだと、ますますおかしくなってしまう……! 助けてくれ!」

「おかしくはないよ。晶葉はきっと……恋をしているんだ」

「……!!? 恋!? こ、これがっ……!?」

「そうだ。人を好きになると、その人の事で
 頭が一杯になって、物事に手がつかなくなってしまうんだ」

「私が、プロデューサーに……?」

プロデューサーは静かにうなづいた。

眼鏡の向こう側にある彼の瞳は、どこまでも優しそうだった。

「もし嫌だったら、言ってくれ。お前から離れるから」

「……! 嫌だ、離さないでくれ!」

私はプロデューサーの胸に顔をうずめて懇願する。

「胸が苦しい……けど、離さないでほしい! 離されたら……怖いんだ!」

「そうか」

プロデューサーは抱き締め続けてくれた。

……体が熱い。まるで、私の体でないみたいだ。

これが恋なのか? ものの本で知っていたが……

実際自分が恋をすると、こんなにもどうにも出来ない気持ちになるのか?

それに……私が、プロデューサーを……好きって……。

……ああ、さっきの言葉を思い出すと顔が熱くなってくる!

恥ずかしい事は言わなかっただろうか。

プロデューサーが好きだという気持ちを知られるのが

こんなにも恥ずかしいものだなんて、今まで知らなかった。

「……プロデューサー……」

「んっ?」

「あ、わ、私……プロデューサーを……!」

「……」

「どうも……男として、好きに……なってしまったようなんだ……」

プロデューサーは一笑して私の火照った顔を見つめた。

「嬉しいよ、とても。晶葉みたいに素敵な娘に好きになってもらえるなんて」

ああ、その言葉を聞いただけで私の顔はだらしなくにやけてしまう。

プロデューサーに、変な顔とか見られたくないのに……!

「晶葉……俺も晶葉の事が好きだ」

「!!!」

私は驚きを隠せなかった。

プロデューサーの顔がどんどん近くなる。

彼の眼鏡と、私の眼鏡がコツンとぶつかる音を

聞いた時には、私の唇は彼と重なりあっていた。

「んっ……」

私は赤ちゃんのようにプロデューサーの唇を吸った。

口と口を押し付け合う、ただそれだけの行為が

こんなにも尊く、興奮させてくれるなんて……私は知らなかった。

メカ制作やアイドル活動以外に夢中になれるものがあるなんて事も、知らなかった。

「んく……んん……んっ……」

……もっと知りたい。

キスの味を、恋の味を、そして……プロデューサーの事を、もっと知りたい。

トリ付け忘れましたが、以上で事案SS終わります

おいおいコレからだろォ!

秋葉ちゃん可愛いのになかなかブレイクしない
SSの便利屋枠くらいで寂しい

おつおつ 可愛くて悶えた
最近博士のss増えてる気がして嬉しい

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