軍師のもとに伝令が駆けつける。
「申し上げます! 敵軍はここより西にある城に入り、籠城する模様です!」
「よし……ならば我々は城を囲み、四方から城を攻撃する!
これで我が軍の勝利間違いなしだ!」
「はっ!」
しかし、そううまくはいかなかった。
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敵の城は城壁は高く、堀は深く、いくら攻めてもビクともしない。
軍師はあれこれ策を練り、連日城攻めを試みるが、いたずらに犠牲者が増えるばかりであった。
「軍師殿、今日も攻めきれませんでした!」
「うむう、あの城を落とすのは容易ではないな。
どうにかして、敵軍が城の外に出てくるようにせねば……」
軍師はしばらく考えてから、こう命じた。
「よし、挑発だ! 挑発して、敵軍を城の外におびき出すのだ!」
さっそく兵士たちにより、城に立てこもる敵軍への挑発が行われた。
「やーいやーい、臆病者ども! そんなに俺たちが怖いのか!」
「いつまで城にひきこもってるんだ! 腰抜けどもが!」
「お前らの大将はとんだヘタレだな! 一戦交えようという勇気さえないのか!」
しかし、敵軍は一向に出てこようとはしなかった。
罠じゃ罠じゃ!孔明の罠に違いない!
挑発は毎日のように続けられたが、効果は無かった。
「ダメです! 出てきません!」
「まずいな……このままにらみ合いが続くと、兵力が多いこちらの兵糧が危うくなってしまう。
司令官から指揮権を委任されておきながら、あんな城も落とせぬとなると、申し訳が立たぬ……」
いくら頭をひねっても策は思いつかない。
その後も軍師は兵士たちに挑発を続けるよう命じた。
一方、城内では敵の将軍が高笑いしていた。
「ハッハッハッハッハ、あんな見え見えの挑発に乗るものか!
このまま籠城していれば、奴らの食糧が尽きるのは分かりきっている!
そうなれば撤退するしかあるまい! 皆の者、ここは我慢の時だ!」
「はっ!」
敵将は軍師の狙いを完璧に読み切っていた。
数日後、軍師は兵士たちの中に、敵将を知る者がいないかどうか呼びかけた。
すると、運よく敵将のことを知っている兵士がいた。
「敵将について、知っていることをなんでも聞かせてくれ」
「分かりました」
敵将になにかしらの“キズ”があれば、そこを突き、搦め手を仕掛けることができる。
たとえば「部下を大切にしない将」だった場合、
城内に恩賞を約束する手紙などを送り部下を寝返らせ、城門を開けさせるという具合にだ。
ところが、兵士からは敵将のキズらしいキズの情報は得られなかった。
敵将は勇猛果敢にして品行方正、君主に忠誠を誓い、部下を大事にしている。
分不相応な野心なども持ち合わせてはいない。
敵ながらあっぱれ、というべき将であった。
「――という具合ですね」
「う~ん……弱点らしい弱点はなさそうだ」
やはり、このままこの城は諦めるしかないのか……という思いがよぎる。
「そういえば、敵将ってどんな外見をしているんだ?」
「ああ、たしか――」
次の瞬間、軍師は妙案を閃いた。
「これだ!」
軍師は兵士に命令を下す。
「今すぐ黒くて細い糸をかき集めてくれ。なるべく沢山」
「はあ……分かりました」
とても戦争中とは思えない命令に困惑しながらも、兵士は命令を忠実にこなした。
軍師は集められた大量の糸を前にして微笑む。
「これで……我が軍の勝利だ!」
翌日、城の前に軍師が姿をさらす。
そして――
頭にくっつけた大量の黒い糸をこれ見よがしに、手でかき上げる。
「あー、つれーわー! 長髪だとすぐ髪が目や耳にかぶさってうっとうしいわー!」
これを見た敵将は顔を真っ赤にし、目を血走らせて激怒した。
「全軍出撃だっ!」
「し、しかし……」
「あのロン毛野郎を討ち取るのだぁっ! 絶対に!」
挑発に乗り城を飛び出した敵軍は、すでに軍師に動きを指示されていた兵士たちによって、
逆に叩き潰される結果となり、まもなく降伏した。
長髪による挑発が功を奏したのである。
なお、余談ではあるが、敵将は非常に頭髪が薄い男であったと伝えられている――
― 終 ―
くっだらねw
や禿糞
おつ
気(け)が短い敵将だったんだな
↑オチをつけてて草
乙
兵站もろくに管理できない軍師のクズ
>>15
うまい
三方だけ囲って出てきた一方を叩くとかそういう話かと思ったら全然違ったでござる
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