あほ (80)








あほ









SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1483516810


タイトルと本文にそれぞれあほと二文字。

それだけ入れてSS投稿サイトに投稿した。

やってしまってから思った。


なぜこんな事をしたのだろう。

ストレスが溜まっていたからか。

何か世の中が嫌になるような事があったからか。

原因はわからない。



感動した


>>1がアホ


アホって言うほうがもっとアホ


クソスレ立てるな


パラパラと煽りコメが4~5件ついてそれっきりスレが沈んでいく。

けど正直、普通に書いて投稿するやつよりついたコメが多かった。


ふと妙な自己嫌悪に陥った。

何やってんだろう。

荒らし通報されなくて、良かった。

こんな事やってるからここ数ヶ月まともにSSが書けないんだよ。


どうかしてた、忘れてしまおう。

当然それはどこのまとめブログにもまとめられる事なく、

そのスレはすぐに沈んでいった。


そして、そんな事もすっかり忘れた数週間後…。

何となくアンテナサイトを巡回中に、

雑多な記事に混じってあほの二文字が。

何だこれは?

しょうもないタイトルの記事だな。面白いと思ってるのか。

とりあえず見てみるけど、どうせしょうもない内容だろ…。

自分のやった事などすっかり忘れ、何の気なしにクリックする。

そして、本文が


1 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[saga]
投稿日:2017/01/04(水) 17:00:12.47 ID:t1JD7OEZo [1/7]







あほ









衝撃と共に思い出した。

これって、俺が前に投稿したクソスレじゃん!

別人の内容被りかとも思ったが、

投稿日時を見ると間違いなく俺のもの。

何でこんなのがまとめサイトに載ってるの…。



10
これ噂になってたヤツ?


35
ただの荒らしスレにしか見えない
よくわかんねー



スクロールして行くと何だか様子がおかしい。

本文はあほの二文字で終りだが、

コメントが100…200…


とんでもない数だ。

そして中には英語もチラホラ。

どうしてこうなったかレスを読んで行くうちに、

大体の事情が掴めて来た。


感動した

一周回って哲学にすら思えて来た

>>1がアホ

アホって言うほうがもっとアホ

クソスレ立てるな

ワロタwwwwwwwwwwwwwwww




40
これがジャスティスビリーバーのツイッターで紹介されてたやつ?


46
マジで今海外で人気すごいらしいよ



つまりこういう事だ。

ジャスティス・ビリーバーという

外国の超有名タレントのせいだったのだ。


たまたまどうした事か、

俺の書き捨てたSSが彼の目に止まり、それを彼が

「世の矛盾に対しての反逆の意思を
二文字で見事に表現している」

などとわけのわからない理由で褒め上げ、

自らのツイッターで紹介したのが原因だったのだ。


世界的タレントの影響はとんでもなかった。

大手まとめサイトがあほと書かれただけの内容のSSを

こぞって取り上げ、そしてそれは膨大なPV数をたたき出した。

サイトによっては数百万ほどにもPV数が膨れあがった所もあった。


しかし、そこでついたコメントは数は多いけれどほとんどが

つまらん、書いたやつがアホなどといった

辛らつなものばかりだった。

あたり前だ。

何の考えもなくあほと書いただけなんだから。

人の事をアホだなんて失礼な。


しかし、そんな事とは関係なしに

外国ではあほが大盛り上がりだった。

あほとプリントされたTシャツが大流行し、

あほTとして日本にも逆輸入される始末。

そしてついにテレビで取り上げられるにあたって、

俺の書き捨てたSSの評価は逆転した。




ジャスティスビリーバーが認めた
このSSの素晴らしさがわからないヤツこそアホ


お前ら無意味にあほってだけ入れて投稿できるか?
何か深い意味が込められてるんだって
普通の人ならこんな意味不明な事しないだろ?


ダダイズムとかじゃね?なんか聞いたことあるわこういうの
そういうのじゃねたぶん。よくわかんねーけど


ワロタww


数々の論争の結果、俺のクソスレは詩情に満ちあふれ

計算され尽くした素晴らしい作品という事になってしまった。

単にあほって書いただけだぞ!?


なんだか落ち着かない。

俺のクソスレをまとめサイトのどこかが常に取り上げるので

ネットをするたびにあほの二文字が目に入る。

しばらくはネットそのものが嫌になり、

接続自体しない日々が続いた。

今年の流行語大賞にあほが選ばれ、

それについて国内中から批判が巻き起こったりもした。


そして、これは誰が書いたのかという事が話題になり始めた。

どうしよう、周りに言いふらすべきか?

正直、俺が作者だとちょっと周りに自慢したい。


でも信じてもらえるか?

何も証拠がないし、どうせ信じてはもらえないだろう。

嘘つきの目立ちたがりと思われるだけだ。

黙っておこう…。


そんなある日テレビを点けると、何やら一人の男が記者会見を開いている。

何となく眺めているうちに驚いた。

今テレビに映っている男があほの作者だというのだ。

そんなバカな、あほの作者は僕なのに…。


テレビに映っている男は自慢げに、いかにあほを製作する際に

多くの苦心があったか、現代は無意味な事こそ意味をもつなどと

わかったようなわからんような事をのたまう。

構想に10年もかけた私の作品が評価されて嬉しいそうだ。

10年間こんなあほな事しか考えてなかったのかこの男は。


口惜しい。

抗議してやる。

テレビ局に電話し、俺が本物のあほの作者だと抗議する。

最初はただのクレームだと思われたのか、対応もそれなりだったが

俺がしつこく訴えるうちに徐々に対応が変わり始めた。


そして何日か後に、生放送で公開討論番組が開かれる運びとなった。

これは俺が熱心に訴えたのが通ったというのではなく、

視聴率を稼げるだろうとテレビ局が判断したのが大きいのだろう。


そして公開討論番組の当日。

向こうはふてぶてしい態度でこちらを見下している。

よろしい。

俺が本物のあほの作者だという事を証明してやる。

これは天才の発想

クソssかと思いきや神ssになりそうな悪寒
期待

荒らしかと思ったら期待を持たせる内容だった

ほう

これがジャスティスビリーバーのツイッターで紹介されてたやつ?

あほと天才は紙一重

ageてしまう俺自身があほだった…
正直すまんと思っている


「さあ、本日は今話題のあほの作者と主張する二人をお招きしております。
お二人で討論して頂き、どちらが本物か自らの手で証明して頂きましょう!」

スタジオ内がワーッと拍手で満たされる。

評論家、コメンテーター、それと大勢の観客の前で俺と男が相対する。

そして司会者が煽るような調子で言う。

「さあ、本物はどちらか?徹底討論バトル、スタート!」


「まあ、私があほの作者だという事はわざわざ証明するまでもないと思いますが」

始めに、向こうの男がもったいぶって語りだす。

「私がこの作品を世に送るにあたって、いかに苦労を重ねてきたか。
世の中の矛盾、不条理、そういったものに対する怒り」

男は芝居気たっぷりに辺りを見回して言う。

「それをいかに短く、しかし多くの人に伝わるように表現するべきか。
私は10年悩みつづけました」

スタジオ内はシーンと静まり帰っている。


「そして辿り着いたのが、今回の作品というわけです」

それを聞いた評論家が大きくうなづいている。

「正直、最初は受け入れられるか不安でした。事実…」

「初めの評判は良いものではありませんでした」

男は口惜しそうに下を向く。


スタジオが水を打ったように静まり返る。

やがて、たっぷりの沈黙の後に…。

「しかし、やはり才能ある方には理解して貰えたようです」

顔を上げた男の表情は晴れやかだった。

「世界的タレントの、ジャスティス・ビリーバーさんには
私の意図していた事が伝わりました」

男はゆっくりと周りを見回して言った。

「そして、私の作品を受け入れてくれた皆さん。
皆さんには心より感謝申し上げます」

スタジオが大きな拍手と歓声に包まれた。


「なお現在私は次回作、ばかの製作に着手しております」

「みなさん、どうかご期待ください」

男がそう言うと、ワァーッと拍手喝采は割れんばかりになった。

ip開示でもすんのか?


なるほど、男の演説は見事だった。

まず苦境を語り、同情を集める。

そこから感動話への展開。

さらに、ジャスティス・ビリーバーと聴衆に同時に感謝する事で

聴衆とジャスティス・ビリーバーが同等であるかのような気分にさせる。

さすが人の書いたSSをいけしゃあしゃあと自分のものと言い張るだけはある。


「いやぁ、素晴らしいお話でしたね。あほの製作にかけた苦労、情熱…」

「私、不覚にも涙があふれてきました」

司会が大げさに目もとをぬぐう。

「次回作が非常に楽しみですね」

「それでは、これ以上証明もしようがないとは思いますが」

「もう一方のお話を伺いましょう。それでは、お願いします」

ついに俺の番がやってきた。


さあ、やってやる。

俺が本物のあほの作者である事を証明する番だ。

これはBADENDの予感








「・・・おならプーゥ」







俺の発言に、スタジオがシーンと静まり返った。









「うんこちーんちん。うんこちーんちん」







スタジオがザワザワとざわめき出す。


「何だこれは、私をバカにしてるのか!」

男が激昂し立ち上がる。

「不愉快だ、帰らせてもらう!」

しかし、司会者、評論家、コメンテーターは…




「すごい…」



「これこそ、まさしく本物だ…」



「そう、これこそ、まさに…」







「「「本物のあほだ!!!!」」」







次の瞬間、スタジオ内の観客が全員立ち上がり、

大きな拍手が巻き起こった。





「アルミ缶の上にあるリンゴ」




「こんなあほな事、みんな見ている前で言うなんて!」

「これなら、あほとだけ書いて投稿するのも納得だ」

「こんなあほ、見たことがない!」


みんな俺のことを口々にあほだあほだと言う。

それを見て、作者を騙った男は呆然としている。


「いやぁ、これは紛れもなくあなたが本物!」

司会者が興奮した様子で俺に語りかけてくる。

「あなたが、本物のあほの作者です!」

勝負あった。

こうして、俺は自身があほの作者である事を完璧に証明したのだった。

これは凄いww

本物だ…!

これは予想外だww

まだ続くのか終わったのか判断がつかないドキドキ感


それから半年ほど月日は過ぎ。

あれだけ世間を騒がせたあほも、今ではほとんど誰も話題にしなくなった。

一時期はテレビ出演や講演の依頼やらが多数舞い込んだが、

それらは全部断った。


そして俺は、

あい変わらずコメントが1件か2件くらいしかつかないSSを

書いては懲りずに投稿している。


皮肉なもんだ。

思いっきり力を入れた作品はてんで評価されずに、

逆にサラサラッと手抜きに近い感じで書き上げたものは異様に評価されたりする。

今回の騒動も、

ある意味その法則みたいなものが最大限に発動された結果なのかも知れない。

何せ何も考えずあほと書いただけなんだから。


そして、ふと最近思う。

それでは、タイトルも本文も何も入れず空で投稿したら一体どういう事になるのか。


試してみる勇気は、とてもない。

あほと書いて投稿しただけで、あんなあほな騒ぎが巻き起こるのだから。

もし、何も書き込まず空で投稿したら…。


それこそ、空恐ろしい事態が巻き起こるかも知れない。



終り


あほな作者のあほな話にお付き合い頂きありがとうございました
依頼出して来ます








おつ










次はばかだな

いや、これは久しぶりにいい物を読んだわww

お疲れ様でした!

これ噂になってたヤツ?

マジで今海外で人気すごいらしいよ


あほじゃねえの


アルミ缶の上にあるリンゴが衝撃的すぎて頭から離れないわ

ジャスティスバービーから

初見でまぁた糞スレかと思った俺をどうか許してほしい

斬新だな~乙


これが今話題の…記念真紀子だわ

よかった

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