モバP(事務所の屋上にぽつんと置かれた一つのベンチ。そこに座って、自販機で買った暖かい飲み物を携えてぼーっと空を眺めている。始めは一人きりで何も考えず座ってるだけだけど、後からもう一人やってくる)
「やぁ、隣に座ってもいいかな?」
モバP「今まで断った事無いでしょ?真奈美さん」
木場真奈美「一応礼儀としてな」
モバP(そう、こんな風にね)
真奈美「最近めっきり冷え込んできたね」
モバP「そうですね。今夜あたりは雪になるかもしれないらしいですね」
真奈美「そう言えば天気予報でそんな事も言っていたか。で、そんな気温の中よくこんな所に来ようと思えるね」
モバP「あー……まぁ……『何も考えない事をする』には丁度いいですからね」
真奈美「仕事と暖房で暖まり過ぎた脳をリセットさせるんだったか?」
モバP「まぁそんなとこです。俺にとって短い時間でスッキリするにはこれが一番合ってるってだけですが」
真奈美「本人が合ってると感じるならばいいが、風邪だけは引かないでくれよ?君が倒れたらこの事務所はどうなってしまうか」
モバP「そこは気を付けてるんですけどね。あまり長い時間いる必要も無いですし」
真奈美「油断は禁物だぞ?それで、何か悩み事があるのかい?」
モバP「へ?」
真奈美「君がここに来る時は、だいたい仕事で行き詰まってる時だろう?私でよければ相談に乗るぞ?」
モバP「あぁ、そんな風に見えてましたか。いやいや、本当にそんな大層な事じゃないんですよ」
真奈美「それじゃ何故此処へ来てるんだい?」
モバP「さっきは何も考えないって言いましたけど、本当に何も考えないってのは難しいんですよ。雲の形が何かに見えたり、凄く下らない事とか急に思いついたり。でもそこからアイドル達の仕事に活かせる様な事もあるんですよね」
真奈美「下らない事ねぇ……」
モバP「例えば……酒飲み組が客じゃ無くて店員側ならどうだろう→礼子さんならスナックのママ似合いそう→他のアイドルと一対一でお酒を飲みながらトークをする『れいこの部屋』という番組が生み出されました」
真奈美「あぁ、たまに放送事故がよく起こるというあの番組か。私が出た時は問題無かったが」
モバP「問題起こすのは大抵ゲストですし、真奈美さんなら大丈夫だと思ってましたよ。後は空に浮かんだ雲がお茶碗に盛られたご飯に見えて、丁度その時漬け物が食べたくなったんで、糠漬けが趣味のつかさとお米の味に詳しい沙織とで『今日のごはん』っていう漬け物とお米を紹介するコーナーも出来ましたね」
真奈美「確かにその発想は突拍子も無いと思われそうだな。でも私もあのコーナーは好きだよ。料理をするのに役立つからね」
モバP「全国お米&漬け物ツアーまでこぎつけましたからね。本人の強い意向で茜もゲスト参戦する事が決まりましたし」
真奈美「ここで色々な発想が生まれていたわけなんだね」
モバP「あ、でも真奈美さんはどうしようか迷うんですよねぇ」
真奈美「ん?私に何か落ち度でも?」
モバP「いや、逆ですよ。真奈美さんって何でも出来るじゃないですか?歌は勿論、料理が趣味で『Kiba'sキッチン』って持ちコーナーもありますけど、他にも色々と出来るから、どの番組に出すか迷うんですよね」
真奈美「ほほぅ。君の中で私の評価が高い陽で何よりだよ」
モバP「しかも結構ノリも良いらしいですね。聞いてますよ?普段真面目なのに急にボケてきてツッコミに困るとか、笑美を変顔で笑わせたりだとか」
真奈美「ノリというのは円滑なコミュニケーションを図るのに大事な事だからね」ドヤッ
モバP「そうやってドヤ顔できるのもバラエティー向きなんですよね」ハハッ
真奈美「でも、私にだって出来ない事ぐらいはあるさ」
モバP「へぇ、気になりますね。何なんですか?」
真奈美「……君は大人になるとはどういう事だと思う?」
モバP「は?えーと、二十歳以上になる、とかそういう事じゃないですよね」
真奈美「以前事務所で子供達が話していてね。その時はブラックコーヒーが飲めたら大人だと言っていたな。まぁ君の事を例に出したらその意見は無くなったがね」
モバP「確かに、それだといっつも甘い物飲んでる俺は子供って事になりますからねww」
真奈美「……毎度思うがそれはコーヒーなのか?」
モバP「一応は。これでも地域限定だった頃よりはコーヒーの味は強いんですよ?」
真奈美「まぁそれはおいといて。その時の私は『様々な経験を積んだら大人になっていく』と説明したんだが、実際のところ『我が儘が言えなくなったら大人』だと思うんだよ」
モバP「あぁ、確かに大人になると色々なしがらみが増えますからねぇ。殆ど我が儘を言わない楓さんなんかは『25歳児』なんて言われてますもんね」
真奈美「流石にそのまま子供達に伝えると、皆必要以上に我が儘を言わなくなりそうだったから取り繕ったんだがな」
モバP「えっと、それが真奈美さんの出来ない事とどういう関係が?」
真奈美「……私も大人になってしまったと言うことだよ」
真奈美「大人らしい大人で、皆を纏める立場でもあると、どうしても最後の最後で言えない事や動けないこともあるという事さ」
モバP「皆の前では我慢する事が多いって事ですか?」
真奈美「そういう事だ。事務所の中では常に誰かが君の側にいるし、夜も誰かに飲みに誘われる事が多いだろう?」
モバP「まぁそう言われればそうですけど……」
真奈美「もし誰かがいれば、どうしてもそこに入り込めないんだ。だからこんな寒空の下でも、こうやって君と二人きりの時でないと」コテッ
モバP(真奈美さんの頭が俺の肩に……)
真奈美「君に甘えられないのさ」
真奈美「……こうやって君に甘えるのは、大人らしくないかな?」
モバP「……このくらいじゃ、我が儘の範疇には入らないでしょ?」
真奈美「じゃあこうやって腕を組んだり」ギュッ
モバP「まだまだ」
真奈美「あまつさえ思い切り抱きついても」
モバP「いいんじゃないですか?」
真奈美「……いや、今は止めとこう」
モバP「……我が儘ではないですよ?」
真奈美「そうではなくてな、その……」
真奈美「これ以上すると、色々と抑えが効かなくなりそうだ……///」
モバP「……なら仕方ないですね」
真奈美「あぁ、仕方ない」
モバP「ゴクッ……うん、飲み物も無くなっちゃったし、そろそろ戻りましょうか」
真奈美「あぁ、君との時間を手放すのは名残惜しいが、お互い風邪をひいたら元も子もないからな」
モバP「あ、真奈美さん」チュッ
真奈美「なんだ……んっ⁉」チュッ
モバP「ん……大人だって我が儘になっていいと思いますよ」
真奈美「全く……君のそれは卑怯だし、これじゃあ顔が熱くて皆のところに戻れないじゃないか///」
モバP「嫌でしたか?」
真奈美「…………今夜だ」
モバP「え?」
真奈美「今夜は私に付き合いたまえ。私の手料理を食べてくれたら許そう」
モバP「そんな事で良ければいくらでも付き合いますよ」
真奈美「絶対だぞ。我が儘な私も含めて味わってもらうからな?」
モバP(我がままなみさん……ありだな)
真奈美(全く、私も君も、甘すぎるなぁ///)
数日後
モバP「……はい、はい、ありがとうございます!詳しい事は後日改めて詰めるという事で。はい、では失礼します」ガチャ
千川ちひろ「誰かのお仕事が決まりそうですか?」
モバP「えぇ、真奈美さんがゲスト出演という形で……」
真奈美「お疲れ様です」ガチャ
モバP「あ、噂をすれば。真奈美さん、レッスンお疲れ様」
ちひろ「お疲れ様です」
真奈美「何か手伝える事はあるかい?」
モバP「いえ、大丈夫です。真奈美さんはゆっくりしていて下さい」
真奈美「ふむ、ならお茶でもいれてこよう」
ちひろ「あ、それなら私が……」
真奈美「なぁに、私がそうしたいからするだけさ。二人とも仕事を続けていてくれ」
ちひろ「最近真奈美さん、よく事務所にいますねぇ」
モバP「んー、まぁ何だかんだで暇なアイドル達も誰かしらいるわけだし、問題無いんじゃないですか?」
ちひろ「それはそうなんですけど」
ちひろ(そういう事じゃないんですけどね)
真奈美「さぁ二人とも、お茶が入ったよ。お茶っ葉が無かったから紅茶にしたけど良かったかな?」
モバP「えぇ、大丈夫です。ありがとうございます」
ちひろ「ありがとうございます。寒い日には暖かい飲み物がありがたいですよねぇ」
真奈美「全くだな。P君のは砂糖を少し多めで良かったかな?」
モバP「はい、丁度いい具合です」
真奈美「なら良かった。それじゃあ私もゆっくりさせてもらおうかな」トサッ
ちひろ(ゆっくりすると言っても、Pさんの近くの椅子に座ってなんですよねぇ。お二人の仲がちかくなってる気もしますし)
ちひろ「Pさんと真奈美さん、最近何かありましたか?」
モバP「え?嫌、特には無いですよ?」
真奈美「そうだな。強いて言えば私も不器用ながらも、ちょっとだけ『我が儘』を言う様になっただけさ」
終わり
おまけ
ちひろ「あ、そう言えば真奈美さんのお仕事が決まったって言ってましたよね?あれどんなお仕事何ですか?」
モバP「あぁ、絶対に笑ってはいけない24〇で、『我が儘女子高生(ギャル風)』役です」
ちひろ「⁉」
真奈美「ほぅ……やりがいがありそうだな」
ちひろ「マジか⁉」
これにて終了です
木場さんに我が儘言ってもらえるくらいになれば、漢(おとこ)と呼べるレベルになるのではないでしょうか。まぁそのハードルがくっそ高い訳ですが……。
炎の中からヒョウくんを助け出してるコラ画像、あれまんざらでもないですよね?
後、MAXコーヒーはちばらきでのみ販売してた時今より甘かったのはガチです。それだけは言いたかった。
Coのお姉さまSSとMAXコーヒーが流行る事を祈りつつ寝ます
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません