千早「一方通行の心」 (49)
梅雨です。ジメジメで憂鬱になってしまいますね
王道的展開のある物語を書きたかったので
梅雨の間に起きた、千早とプロデューサーのお話です。(プロデューサー視点)
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6月。梅雨に入り、今日も雨が降り続いている
「うーん……」
俺は机に向かい頭を悩ませていた。
「どうして伸びないんだ……?」
業績がイマイチ伸びないのだ。
「どうしたんですか? プロデューサー」
「いやな……ちょっと伸び悩みと言った所だ」
千早が声をかけてくるも、俺は机に向かって考え続ける。
「伸び悩みですか……私、もっと努力します」
「ん? ああ、一緒に頑張ろう」
俺が思うに、千早が悪い訳ではないのだ。
俺のプロデュースが悪いのだろうか……?
「しかし……もう梅雨だな。 じめじめしていて余り好きではないんだけどなぁ」
「そうですね……ずっと雨が続いてますし」
梅雨はじめじめとしているから嫌いだ。
しかし、それ以上に何故か憂鬱としてくるから嫌いなんだ……
「はぁ。 どうしたものか……」
俺は溜息をつく。
「あまり……無理はしないでくださいね?」
「ごめんな、ありがとう。 千早」
千早に気を遣わせてしまったみたいだな……失敗失敗。
あまり表情に出さないように気をつけなくては……
千早「私にはァ……歌しかねえからなァ」
「そろそろ時間ですよ、プロデューサー」
「ああ、わかってる。 レッスンを始めようか」
千早は頑張っている。
俺だけが勝手に悩み込んでてどうするんだ。
しかし、レッスン中も俺はついつい考え込んでしまっていた。
「…………」
業績が伸びない……しかし千早は頑張ってくれている……
うーむ……やはり、悪い点があるとすれば俺のやり方だろうか?
「プロデューサー、どうでした?」
「……ん? あ、ああ……えっと……」
ダンスレッスン中だと言うのに、千早の事よりも業績の事が気になってしまって仕方がなかった。
「やっぱり、何か悩みでもあるんですか? ずっと考え込んでいるようにも見えましたが……」
「そんな事ないさ。 ごめんな、心配させて」
「それならいいんですけど……」
「それで、ダンスの方なんだがもう一度頼めるか? もう一度しっかり見たい」
「はい、わかりました」
俺が考え込む事により、千早にも負担をかけてしまっている。
……早めに打開しなくては。
レッスン後、千早を見送り俺は再び事務所の机に戻り考えだす。
「俺のやり方が悪い……か」
しかし、自分のやり方が悪いのだとしても何処が悪いか検討がつかない。
「プロデューサーさん、お疲れですね」
「あ、小鳥さん……」
「あまり一人で抱え込むのもダメですよ? たまにはあたしを頼ってくれてもいいですから」
「はい、でもこれは自分でなんとかしたいので……すいません」
これは小鳥さんには関係の無い事なんだ。
俺の問題なのだから、自分でなんとかしなくてはいけない。
「そうですか……でも、絶対に無理はダメです!プロデューサーさんの事を心配してる千早ちゃんの事も気にかけてあげてくださいね?」
「はは、わかってますよ。 俺は千早のプロデューサーなんですから誰よりもそれは理解してるつもりです」
そうだ……この問題を解決するのは千早の為でもある。
俺がこのまま余計な事を考え続ければ、確実に千早の成長にも支障を出してしまうだろう。
「とりあえず、今日はこれで。 お先に失礼します」
「はい、お疲れ様です。 小鳥さん」
小鳥さんを見送った後も俺は、一人で思考を巡らせる。
……何がいけないのか。
それが一切わからない。
業績が伸び悩むのには原因がある筈なのだが……
何が足りないんだろうか?やはり、俺のやり方が悪いだけなのか……?
……ダメだ、全然わからない。
今日は俺も家に帰って休む事にしよう……明日になればきっと何かが浮かぶ筈だ
そう信じて俺は家に帰る事にした。
——しかし、翌日になっても現状は変わらなかった。
相変わらず雨は降り続き、じめじめとしている。
「……プロデューサー、顔色が悪いですが本当に大丈夫ですか?」
「……え?」
「ち、千早……来てたのか。 おはよう」
「おはようございます」
全く気付かなかった。考え込みすぎだな……
「今日はボイストレーニングだ。 頑張ろう」
「え? ええ……」
一瞬、千早が戸惑っているような表情を見せた。
「どうかしたのか?」
「い、いえ。 今日も頑張りましょう」
やはり……俺の事を気にかけてくれているみたいだ。
千早を安心させる為にも集中しないと……全く、いきなりどうしたんだ俺は
梅雨のせい……な訳が無いな。
季節によって俺がどうかしてしまった なんて言う方がどうかしている。
そして、ボイストレーニング開始直前になって。
「プロデューサー」
「どうした? 千早」
「今日は……大丈夫ですよね?」
「え……」
予想外の質問に俺は言葉を失う。
千ィィ早ァァクゥゥゥン!
「昨日は、凄く……悩んでいるように見えたので」
「はは、心配してくれたのか?」
「心配にもなりますよ! 私のプロデューサーなんですし、色々と支障が出たら困りますから……」
「今日は大丈夫だ。 心配かけたな」
きっと、俺は千早に気を遣わせたくないのだろう。
気がつけば自然と嘘をついていたのだから……
それでも気を遣ってくれている千早の為に俺は無理やりボイストレーニングに集中した。
原因を探そうと焦る、自分の感情を押し殺して。
「ふぅ、お疲れ様。 千早」
「ありがとうございました。 ジメジメしてて少し気分が悪かったですが……」
何とかボイストレーニングを無事に終える事ができた。
「そうだな……ずっと雨が降り続いてるから仕方ないけど、ジメジメしてて嫌だなぁ」
「ええ。 その影響か少し憂鬱としますし」
全く、その通りだ。
……でも、梅雨のせいにしていたら原因にはたどり着けない。
「…………」
「プロデューサー?」
しまった……ボイストレーニングが終わったからと油断した。
「ん? どうした?」
わざとらしく見えてしまいそうだが、平然を装った表情をする。
「え? いえ……なんでもないです」
千早は首を傾げているが、こんなわざとらしい表情を見れば仕方のない事だ。
「そうだ、千早」
「どうしました?」
俺だけが考え込んでいても何も打開策が浮かばない以上、千早にも遠まわしに聞いてみるしか方法は無いだろう。
「最近のレッスンは、どうだ? 何か足りない点とかはあるか?」
「そうですね……私は特に足りないと思う点はありません。 現状で十分です」
「そうか? まぁ、何かが足りないと思ったらいつでも言ってくれ」
「はい。 お気遣いありがとうございます」
無い……か。
これで振り出しに戻ったな……
昨日と同じように俺は千早を見送り、事務所の机に戻る。
「プロデューサーさん」
「……?」
小鳥さんが傍に立っていた。
「ボイストレーニング中、かなり無理してたでしょう……?」
「え? いや、そんな事は……」
「無理はダメですよ、あたしにもわかるぐらいなんですから千早ちゃんだったら最初から気付いてた筈です」
「…………」
自分では上手く隠せたつもりだったのに……ダメだったか
「最近、ちょっと伸び悩んでいる業績の事ですか?」
「何故それを……知っているんですか?」
誰にも話していない筈なのに何故わかったんだ……?
「いえ、プロデューサーさんなら気にするかなって思いまして」
「はは……俺ってそんなにわかりやすいですかね?」
「そういう訳じゃないですよ。 きっと千早ちゃんの事を気にしているんだろうなって思ったら業績の事が浮かんだんです」
「ぎゃ、逆に良くそこに結びつきましたね……」
「女の勘って奴じゃないですかね?」
勘か……それでも当てられてしまうとは。
「まぁ、きっと原因を見つけます。 見つけないといけないんです」
「それでも無理はダメです。 千早ちゃん、すごい心配そうにしてましたよ?」
「千早が……?」
「きっとプロデューサーさんの前では言えないんでしょうね。 かなり心配しているのは確かです」
そうか……全然隠せてなかったんだな。
すまない、千早……
「千早ちゃんに全部話してみたらどうですか? それによって解決策が浮かぶかもしれないですし……」
「いや、それはできないんです。 したくないんです」
「どうしてですか?」
「これ以上無駄な気を遣わせたくない……きっと、全て話してしまえば千早にとって重荷になると思うんです」
「でも……」
「わかってください。 これだけは……これだけは言わないでおきたいんです」
そこだけは譲る気はない。
業績だけでなく、千早の成長まで妨げてしまっては……それこそ最悪だから。
「なら、もう無理はやめてください。 二人を見ているとあたしまで辛くなってきちゃいますから……」
「あ、ああ……すいません」
ダメだ……俺がこんなにも表情を隠すのが下手だったとは。
「では、今日もお先に失礼しますけど……プロデューサーさんもお早めに、ね?」
「はい。 お疲れ様でした」
小鳥さんとの挨拶を交わし、見送った。
……しかし、俺はもう少し考えておきたいので小鳥さんには申し訳ないが残る事に。
聞こえるのは雨の降る音だけ。
ジメジメとした室内で、俺は必死に何か解決策は無いか考える。
……だが、やはり一向に浮かばない。
それどころか更に複雑に考えるようになってきている。
これではダメだ……解決策を考えるどころか原因すらわからない。
「はぁ……」
そんな自分に呆れ、溜息をつく。
どうしてこんなに何もわからないんだろうか……
原因がある訳ではないのか……?
根本から間違っていると言う可能性も……
あるな。
……このまま俺は千早に負担を掛け続けたくはない。
このまま千早の成長を妨げる訳にはいかない。
俺が千早をプロデュースをしている事自体が最初から間違っているのかもしれないな
あの光り輝く才能を持った千早は……俺ではプロデュースしきれないのだろう
あれだけ素晴らしい歌があるんだ。俺なんかよりももっと素晴らしい人材の元で育つべきなんだと思う……
梅雨、雨が降り続く夜——
俺は765プロを離れる決心をした。
そして、翌日。
相変わらず雨は続いている。
この日が終わったら俺は……何処か遠くへ行く。
行き先は無い。
ただ、遠くへ行くんだ。
「おはようございます」
「おはよう、千早」
いつものように千早が挨拶をしにくる。
……しかし、俺が765プロを離れる事は教えない。
俺は今日の営業が終わった後、小鳥さんに言葉を残し、明日の早朝に発つ予定だ。
「今日は……そうだな、歌ってもらおうか」
「歌ですか? わかりました」
最後に、千早の歌を聴いてから行きたい
——そんなワガママも込められていた。
千早の歌を最後に聴いて、発った後に俺は遠い地で千早の成長を願いながら歌を思い出す、か。
そういうのも良いかもな……はは
「プロデューサー」
「どうした? 千早」
「……その」
「どうした。 話してみな?」
「貴方が何処か……遠い所へ行ってしまいそうな気がして」
「何……?」
何故わかるんだ……顔にでも書かれてたのか?
いやいや、そんな筈は——
「気のせいかもしれませんけど、そんな気がしたんです。 いきなりごめんなさい」
「え? あ、ああ……大丈夫だ。 気にしないでくれ」
内心は焦っているものの、いつものように俺は千早を励ます。
「それじゃ、時間だし行こうか」
「はい」
レッスンをする為に場所を移動する。
しかし今回は正直な話、レッスンにはならないだろう
最後に俺が千早の歌を聴く為なのだから……
「始めますね」
「ああ。 全力を出し切ってくれ」
「全力、ですか?」
「……たまには、全力で歌う千早の歌を聴きたいと思ってさ」
「……? まぁ、いいですけど」
俺は千早をずっと騙しているんだ。
……そう考えると、罪悪感に押しつぶされそうになる。
しかし、今日が終われば……今日が終われば千早は俺よりも良いプロデューサーの元で育成を受けられる筈だ。
逆に良い人材がついてくれなければ困る。
自分勝手ではあるかもしれない。
でも……千早の為なんだ……仕方がないんだ……!
そう自分に言い聞かせる。
そうでもしなければ今すぐにでも感情が溢れ出してしまいそうだから。
——千早の歌を聴きながら俺は想い出に浸る。
そして、時間はあっという間に過ぎて行き……
「どうでした?」
「ああ……良かったよ」
これで思い残すことはない。
これで……これで俺はもう765プロを発てる。
いや、発たなければならないんだ。
……本当なら千早と一緒に夢を、目標を目指して頑張りたい。
だが、俺がいては千早の夢すら叶えられないような気がしたから……
俺はいなくなるべき存在なんだ、そう自分に言い聞かせて……
結局、その後は大して千早と言葉を交わす事もできず
千早を見送った後、小鳥さんに伝言を残しに行く。
「小鳥さん」
「あ、プロデューサーさん! どうかしましたか?」
「伝言……というよりもある種の遺言のような物を千早に宛てて残したいのですが」
「え……!? 遺言!?」
遺言にも等しい。
——最後の言葉なのだから。
「俺は明日の朝、ここを発ちます」
「どういう事ですか……?」
「765プロのプロデューサーを辞め、遠くへ行くつもりです」
「プロデューサーを……辞める……?」
「……俺、ずっと考えてて思ったんです」
「俺が千早をプロデュースする事自体が間違っていたんだって」
「そんな……そんな訳無いじゃないですか!」
「それだから……俺がいなくなれば千早は、もっと良いプロデューサーの元でやっていけると思うんです」
「どうして……どうしてそんな事言うんですか……?」
「原因がわからず悩んでいる時に思ったんです。 根本から間違っているのでは?って」
「それで考えてみたら、その通りだと思いまして。 ……だから、去る事にしました」
「そんな……千早ちゃんは、今のままがいいって言うに決まってます!」
「どうしてそんな事がわかるんですか?」
「千早ちゃんは貴方を尊敬して、頼ってきたんですよ!? そんな寄り代となる貴方がいなくなったら……」
「……寄り代、か」
「そうです……!」
「その寄り代があるから伸び悩んでいる そう思いませんか?」
「え……」
「俺が甘やかすから千早もそれに漬け込んでしまう。 結果として、俺は千早の才能を伸ばすどころかその成長を妨害してしまっている」
「俺は……俺はそう思ったからここを発つ事にしたんです……」
「だからって……千早ちゃんを置いていくんですか?」
「俺だって……俺だってこんな事したくない!」
「!?」
俺は気がつくと怒鳴っていた。
「あ……ごめんなさい……」
「いえ……でも、プロデューサーさんがずっと悩んできたって言うのは良くわかりました」
「……俺は明日の早朝、ここを発ちます」
「……はい」
「千早に……頑張って夢を叶えてくれ って伝えていただけますか?」
「……わかりました」
俺は千早への「遺言」を遺し、逃げるようにして事務所を出た。
これで……いいんだよな
千早には新しい優秀なプロデューサーの元で才能を伸ばして欲しい……ただ、それだけが俺の願いだ。
そんな事を考えながら俺は家に帰り、最低限の荷物をまとめる事にした。
——そして、翌日の早朝
今日の朝には止むと予報されていた雨はまだ降り続いている。
……いや、いつもの事だ。気にしない事にしよう
俺は雨の中、黙々と歩き続けて駅前へ着く。
行き先は無い。
だが、できるだけ遠くへ行くんだ……
「ここに居たんですね」
「!?」
聞き慣れた声に驚き、振り返ると
「千早……!? なんで……何でここに居るんだ!?」
「小鳥さんから全て聞きました」
小鳥さんから……?何故——
「私……プロデューサーの事が心配で昨日の夜、小鳥さんに電話を掛けたんです」
「そしたら……遺言のような物を預かってるって」
「…………」
予想外だった。
まさかこんな事になるなんて……
しかし、ここまで来たんだ。
引き返す訳にもいかない……!
「いいか、千早。 よく聞くんだ」
俺は千早と向き合って
「俺の事は忘れるんだ。 そうすれば、もっと良いプロデューサーの元で確実に才能を伸ばしていける」
「もう悩んで、苦しむ事も無くなるんだ。 だから——」
「そんな事できる訳無い……」
「忘れるんだ! 俺は……俺は千早の事を考えて……!」
「そんな事……そんな事、できる訳無いでしょ!」
ここまで感情的になっている千早を見るのは初めてだった。
「そんな勝手に貴方の考えだけで決めつけないで……」
「私の意見も聞かずに私の為だからって勝手に押し付けないで!」
「千早……」
「私が貴方の事をどれだけ心配したと思っているんですか……?」
「どれだけ心配で、どれだけ辛くて……どれだけ泣いたかわかってるんですか!?」
「——!?」
俺は良かれと思ってやっていたのに……
千早を苦しめていたのか……?
千早は傘を手放し、震える手で俺の胸ぐらを掴んでくる。
「貴方の辛そうにしている顔を見て……どれだけ私が苦しい思いをしてきたのかわかってるんですか……?」
「…………」
「もうやめて……」
「もう……一方的に押し付けるのはやめて!」
そして……
崩れるようにして膝を着き、うずくまってしまった。
「ち、千早……苦しいからとりあえず手を離してくれないか……」
「嫌です……」
千早は声を震わせている。
恐らく……泣いているのだろう。
「俺だって……俺だって本当なら何処にも行かずに千早と一緒に夢を目指して頑張りたいよ」
「だったら……いいじゃないですか……」
「でも……俺は千早の成長を妨げてしまっている。 このままでは夢を実現させられないかもしれない」
「だから……だから、邪魔をしたくないから……千早に夢を叶えて欲しいからこの道を選んだんだ!」
「馬鹿っ!」
千早の泣き叫ぶような声に思わずはっとする。
「それなら貴方が……貴方が居てくれないとダメじゃないですか……」
「理由は今話した筈だぞ……?」
「私の夢は——貴方と一緒に夢を叶える事が、私の夢なんです!」
「……!」
「貴方がいなくなったら……私の夢も全部無くなってしまうんです……」
「千早……」
「私に夢を見させてくれたのは……貴方だから……!」
「私が一人だった時、傍に居てくれたのは貴方だから……」
「置いていかないで……私を置いていかないで……!」
「…………」
俺はそっとしゃがみこんで千早と目線を合わせる。
……雨と涙に濡れている千早の顔を上げさせて
「なら、教えてくれ……俺はどうすれば千早を悩ませずに済むんだ……?」
「……いつもみたいに」
「いつもみたいに笑顔で……楽しそうにしてください……」
「もう、無理して笑顔を作るような真似はしないで……」
「——わかった」
「私、プロデューサーの助けになりたい……もう一人で全部抱え込まないで……!」
「ああ……俺が悪かった……」
ようやくわかったんだ。
本当に欠けていたのは何か。
それは……「信頼」だ。
俺は勝手に一人で全てを背負い込み、結果として千早に心配をかけていた。
「ずっと気付けなくて……ごめんな。 千早」
「プロデューサー……」
千早が俺の胸ぐらから手を離す。
「やっとわかったよ。 足りなかったのは信頼する事なんだったって」
「ありが——」
そこまで言いかけた時だった。
「!?」
千早が泣きながら抱きついてきたのだ。
「……辛かったんだな。 ごめんな」
俺の胸の中で泣き続ける千早を慰めていると……
「ん……? 千早、雨が止んだぞ!」
気がつけば空には雲一つ無い、晴天になっていた。
「帰りましょう……私達の事務所に……」
「……ああ。 帰ろう」
千早を泣き止ませ、事務所へ帰る事に。
事務所に着き、ドアを開けて。
「ただい——」
「プロデューサーさん! 千早ちゃん!」
小鳥さんが勢い良く出迎えてくれた。
「こ、小鳥さん……いきなりどうしたんですか……?」
「どうしたも何も、心配したんですから!!」
そ、そういえば千早に伝言を伝えるように頼んだのも小鳥さんだったっけ……
「全く、もうこんな事はしないでくださいね?」
「も、もうしません……すいませんでした」
「千早ちゃん、大丈夫だった?」
「……はい。 やっと気付いてくれました」
小鳥さんと千早が二人で笑っている。
「……ふぅ」
俺は安心したのか、自然と溜息をついていた。
「ふぅ、じゃないですよー! 散々私達に心配掛けたんですからー!」
「ほ、本当にすいませんでした!」
……やっぱり、俺はこの事務所でプロデューサーをやっている時が一番好きだ。
もしもあのまま出発していたらどうなっていた事やら……
「プロデューサー」
「どうした? 千早」
「もう……居なくならないでくださいね?」
「ああ、ずっと一緒に居るさ」
俺がそう答えると、千早は笑顔を見せてくれた。
「一緒に、夢を叶えような。 千早」
「はい!」
俺は千早からずっと信頼されてきた。
今度は……俺が千早を信頼する番だな。
雲一つ無い青空のように、俺の頭の中はすっきりしていた。
梅雨は過ぎたんだ。
俺は……
俺は自分の夢と、千早の夢を叶えてみせる。
もう遠くへ行こうとなんかしない。
——ずっと一緒に歩み続けるんだ。
以上で完結となります。
「梅雨」をイメージして書かせていただきましたが、お楽しみいただけたのなら幸いです。
ありがとうございました。
乙
雨降って地固まる
千早のSSでシリアスって少ないけど、俺は好きだぜ
乙なー!
良かったぜェ
乙乙
っと、誤爆すいません >>45
このPただのアホじゃねぇか
被害妄想に自意識過剰、同僚にいきなり辞めるって言って次の日逃走ってなんだそりゃ?
色々言ってるけど、ただの職場放棄って言わないか普通?
悲劇の主人公ぶりたい中学生か、このP
社会人として、っていうか人として有り得ないレベルのダメっぷりじゃん
どこが良かった話なんだ、これ?
さァて、(精神的に)スクラップの時間だぜェ!
てっきりアクセラレータさんの話かと思った
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