雪歩「今度ね、テレビ番組の企画でね」
春香「うん」
雪歩「激辛料理を出すことで有名な料理店を取材することになってね」
春香「うんうん」
雪歩「そのお店の激辛メニューの中でも特に辛いとされている特製激辛うどんをね」
春香「うんうんうん」
雪歩「私が食べないといけないんだって」
春香「へぇ~そうなんだ」
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雪歩「まあ私もね、辛いのは嫌いじゃないんだよ?」
春香「そうだね、前に雪歩 カラムーチョをパクパク食べてたしね」
雪歩「でもね、今度食べる特製激辛うどんってね」
春香「うん」
雪歩「53万スコヴィルなんだって」
春香「53万?」
雪歩「うん」
春香「………」
雪歩「………」
春香「……それって…スゴイの?」
雪歩「さあ?」
春香「というかスコヴィルって、なに?」
雪歩「辛さの単位らしいよ」
春香「そんな単位があったんだ?」
雪歩「あったみたいだね」
春香「53万の辛さかぁ~」
雪歩「どんな辛さかよくわからないけど、凄く辛そうな数字だよね」
春香「53万だしね~」
雪歩「なんにせよ、出されたものは食べきるだけだよ」
春香「え?全部食べるつもりなの?」
雪歩「もちろん食べるよ」
春香「テレビの取材だよね?」
雪歩「そうだよ」
春香「ああいうのは、普通一口二口食べて感想言って、後は残すモノでしょ?」
雪歩「折角作ってくれたのに、食べ残すなんて失礼なことはできないよ」
春香「雪歩は偉いなぁ」
雪歩「あ、もう12時だね」
春香「そうだね。お昼どこか食べに行く?」
雪歩「ううん、今日はこれを食べるから……」ガサガサ
春香「カップ麺?いっぱいあるね」
雪歩「多めに買ったからね」
春香「赤いきつねばっかりだね」
雪歩「特売で買いすぎちゃって、春香ちゃんも食べる?」
春香「いいの?」
雪歩「いいよ」
春香「それじゃあ、一個いただこうかな」
雪歩「………」
春香「………」
<ピピピピッ
雪歩「……5分たったね」
春香「それじゃあいただこうか」
雪歩「あ、ちょっと待って」
春香「どうしたの?」
雪歩「食べる前にこれをかけないと」
春香「なにそのビン?タバスコ?」
雪歩「デスソース」
春香「デスソースって、すっごく辛いやつだっけ?」
雪歩「うん」
春香「よく使うの?」
雪歩「ううん、使うのは初めてだよ」
春香「……もしかして、さっき言ってた企画の為に買ったの?」
雪歩「うん、少しでも辛さに慣れておこうと思って」
春香「雪歩は仕事熱心だね~」
雪歩「このデスソース、50万スコヴィルなんだって」トポトポ
春香「へぇ~」
雪歩「今度食べる激辛うどんは53万スコヴィルでしょ」トポトポ
春香「そうだね」
雪歩「50万じゃ少し辛さが足りないと思うけど……」トポトポ
春香「3万の差だね」
雪歩「まあ、練習と思えばそれで」トポトポ
春香「雪歩、かけすぎじゃない?」
雪歩「え?」トポトポトポ
春香「いや、赤いきつねにデスソースをかけすぎじゃないかな~って」
雪歩「そうかな?」
春香「うん」
雪歩「あ、春香ちゃんもかける?」
春香「いらない、普通が一番だからね」
雪歩「そっか~」
春香「雪歩のさ、デスソースを入れすぎて赤いきつねの中身が変色してるよ」
雪歩「本当だ……これじゃあ赤いきつねじゃなくて」
春香「………」
雪歩「真っ赤なきつね、だね」
春香「………」
雪歩「………」
春香「………ふふふ」
雪歩「えへへへ」
春香「ふふふ、でもさ……雪歩」
雪歩「うん」
春香「真っ赤っていうか、赤黒く変色してるよね」
雪歩「赤黒いきつねか~、ちょっと言いにくいね」
春香「あと、さっきから目がシパシパするんだけど」
雪歩「偶然だね、私もさっきから目がシパシパしてるよ」
春香「あ、やっぱり?」
雪歩「うん、不思議だね」
春香「いや、どう考えても赤黒いきつねのせいだけどね」
雪歩「やっぱり赤黒いきつねのせいなんだね」
春香「間違いないと思うよ、目にくるよコレ」
雪歩「流石に瓶に入ったデスソースを半分も入れたのは不味かったかな……」クンクン
春香「色んな意味で不味いよね」
雪歩「ゴホッ ゴホッ ケホッ」
春香「雪歩?」
雪歩「ケホッコホッご、ごめんケホッ匂いを嗅ごうと思ったらゴホッ咳が止まらなくクシュン」
春香「………」
雪歩「クシュン クシュン 」
春香「雪歩、大丈夫?」
雪歩「う、うん……くしゃみも咳も止まったみたい……」
春香「それなら良かったけど……」
雪歩「うん……」
春香「………」
雪歩「………」
赤黒いきつね
春香「………」
雪歩「………」
雪歩「ねえ、春香ちゃん」
春香「なに?」
雪歩「この赤黒いきつねだけどさ」
春香「うん」
雪歩「先に一口食べてみない?」
春香「………」
春香「ねえ、雪歩」
雪歩「なに?」
春香「他人に自分の食べ物を勧めるときはさ」
雪歩「うん」
春香「まず自分が食べて、それから他人に勧めるのがマナーだよね」
雪歩「………」
雪歩「春香ちゃんと私ってさ」
春香「うん」
雪歩「他人じゃないよね?」
春香「他人だよ」
雪歩「………」
春香「同期だし同僚だし仲間だし友達だけど」
雪歩「………」
春香「他人だよ」
男の人が大好きです!
雪歩「………」
春香「………」
雪歩「………」
春香「………」
雪歩「………」
春香「………」
雪歩「春香ちゃん」
春香「なに?」
雪歩「食べる勇気がでません。お願いです、先に食べてください」フカブカ
春香「頭を下げてきたね、断りづらいなぁ」
雪歩「ありがとう、先に食べることを こころよく了承してくれて」
春香「了承はしたけど こころよくはしてないよ」
雪歩「ふふふ、敢えて苦難に立ち向かうんだね春香ちゃん」
春香「まあどれだけの辛さなのか、興味はあるし……」
雪歩「そういうのってさ、芸人体質って言うんだっけ?」
春香「………」
雪歩「………」
春香「………」
雪歩「………」
春香「………」
雪歩「……ごめん」
春香「大丈夫、ちょっとイラっとしただけだから」
春香「ふー……それじゃあ……食べるよ」
雪歩「うん」
春香「これくらいを……いただきます」チュルチュル
雪歩「………」
春香「………」モグモグモグ
雪歩「………」
春香「………」ゴックン
雪歩「………」
春香「ふぅー……」
雪歩「ど、どう?春香ちゃん」
春香「んー」
雪歩「辛かった?」
春香「確かにちょっと辛いけど、思ってた程じゃないかな」
雪歩「そうなんだ~良かった~、春香ちゃんが無事で」
春香「ふふ、これならまだカラムーチョの方が……ん?」
雪歩「?」
春香「………」
雪歩「春香ちゃん?」
春香「………え……辛……え?」
雪歩「え?や、やっぱり辛いの」
春香「あっ……なにこ…れ…」
雪歩「辛いんだね、辛かったんだね」
春香「…はっ……ひ………」
雪歩「そりゃ辛いよね……辛くないわけないよね」
春香「ひ……ひひ…ゆひほ」
雪歩「どうしたの春香ちゃん?辛いの?辛すぎるの?」
春香「の、のひもの……」
雪歩「え?」
春香「のひもの……ひょう……らい」
雪歩「のひもの?飲み物だね」
春香「きゅ……ん」コクコク
雪歩「ちょっと待ってて、今すぐ持ってくるから」タッタッタ
春香「ん……ん……」
春香「……ヒー…ヒー」
春香「…フー……フー」
春香「…ホー……」
雪歩「お待たせ春香ちゃん」
春香「……んっ」
雪歩「はい、淹れたてのお茶。熱いから気をつけてね」
春香「あー死ぬかと思った~」
雪歩「春香ちゃんが無事で良かった~」
春香「心配してくれたんだ?」
雪歩「当然だよ」
春香「さっき雪歩が熱いお茶を持ってきたときさ」
雪歩「うん」
春香「私に止めを刺しに来たのかと思ったよ」
雪歩「本当に無事で良かったね~」
春香「本当にね」
雪歩「それで春香ちゃん」
春香「なに?」
雪歩「赤黒いきつねのさ」
春香「うん」
雪歩「味の感想を聞きたいんだけど」
春香「ん~」
雪歩「やっぱり辛かったよね?」
春香「当然、辛かったし」
雪歩「うん」
春香「痛かったし」
雪歩「うんうん」
春香「痺れがきて」
雪歩「うんうんうん」
春香「痒みがきて苦しみがきて呼吸がしづらくなって」
雪歩「へぇ~」
春香「最後に熱かったよ」
雪歩「なんだか、スゴイね」
春香「スゴイ体験だったよ」
雪歩「味の感想を聞いたのに」
春香「………」
雪歩「拷問を受けた人の感想を聞いた気分だよ」
春香「私もそんな気分だね」
雪歩「春香ちゃん」
春香「なに?」
雪歩「ありがとうね」
春香「なにが?」
雪歩「先に赤黒いきつねを食べてくれて」
春香「あ~」
雪歩「本当にありがとう」
春香「どういたしまして」
雪歩「私ね」
春香「うん」
雪歩「勇気がでたよ」
春香「なんの?」
雪歩「赤黒いきつねを食べる勇気が」
春香「………」
雪歩「春香ちゃんのおかけだね」エヘヘ
春香「悪いことは言わないからその勇気は引っ込めときなよ」
翌日のトイレがお楽しみ
雪歩「ふふ、それじゃあいただくね」
春香「え?本当に食べるの?」
雪歩「勇気100%だからね、残さず食べるよ」
春香「完食するの?冗談抜きで死ぬよ?」
雪歩「………」
雪歩「……………え?」
春香「………死ぬよ」
雪歩「………」
春香「………」
雪歩「た、食べるよ」
春香「一応止めたからね、あとは自己責任だからね」
雪歩「………」
春香「………」
雪歩「い、いただき……」ガシッ
春香「………ん?」
雪歩「……ます」ズルズルズル
春香「おお、一気にいった」
雪歩「………」ズルズルズル
春香「食べるペースが早い……そうか、辛味が来る前に全部食べる作戦だね」
雪歩「………」モグモグモグ
春香「麺を食べて」
雪歩「………」ハフハフハフ
春香「お揚げも食べて」
雪歩「………」ゴクゴクゴク
春香「汁も全部飲んで」
雪歩「………」ゴックン
春香「完食」
春香「雪歩」
雪歩「……春香……ちゃん……」
春香「うん」
雪歩「私……」
春香「うん」
雪歩「……食べ……たよ…」
春香「そうだね」
春香「食べたね、私の分の普通の赤いきつねを食べちゃったね」
雪歩「うん、ごちそうさまでしたぁ」
おわり
おまけ
後日談
春香「そういえば雪歩」
雪歩「ん?」
春香「この前 言ってた、取材で特製激辛うどんを食べるってやつだけどさ」
雪歩「うん」
春香「食べれたの?」
雪歩「食べたよ」
春香「食べたんだ?」
雪歩「完食したよ」
春香「53万スコヴィルだっけ?」
雪歩「うん」
春香「よく食べれたよね」
雪歩「まあね」
春香「辛くなかったの?」
雪歩「少し辛いってくらいかな?」
春香「少しで済むの?」
雪歩「見た目もさ、真っ赤っかな うどんなんだけど」
春香「辛そうだね」
雪歩「見た目ほど辛くないんだよね」
春香「へぇ~スゴイね」
雪歩「美味しくいただいて、汁まで全部飲んだよ」
春香「余裕だったんだね」
雪歩「うん。……あ、でも一つだけ大変なことがあってね」
春香「大変なこと?」
雪歩「私が食べてる時ね」
春香「うん」
雪歩「番組のスタッフさんが」
春香「うんうん」
雪歩「『もっと辛そうに食べてる演技をお願いします』って言ってきてね」
春香「うんうんうん」
雪歩「必死に演技してね、大変だったよ」
春香「へぇ~そうなんだ」
春香「それって、普通のうどんを食べただけだよね」
雪歩「うん、そうだね」
おまけ おわり
終わりです
ありがとうございました
おつおつ
面白かった
乙乙
面白かったです
こんなときどんな顔すればいいのかわからないよ
乙
25Mプールに一滴垂らすだけで味が変わると噂のデスソースを
半分以上入れたうどんを食べてあの反応とか春香は何者だ
芸人さ
雪歩は守護られている
辛さの単位はスコヴィルなのか
勉強になった
おつ
うどんスレなのにもがみんが現れなかった
乙
乙っす
乙
後日、尻が爆発して悶絶する二人のアイドルが居たという…
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