女「人だって、空を飛べる」 (4)
季節は夏だ。ツバメが飛んだ。
そして私も飛んだ。
一瞬、ツバメが私と並んだ。
その一瞬だけ私は時速200キロ以上のツバメと同じ速度で飛んでる気がした。
だけどツバメは私を追い抜き、私よりも早く、私よりも高い大空へ飛んでゆく。
私はその姿を見つめながら、手作りの飛行機、海遊丸と共に海へと落下した。
女「ぷは~!」
すぐに海遊丸の浮翌力で海上に浮かんだ。
女「わっわと!ツバメさーん!また一緒に飛びましょ~う!」
私は立つと揺れる海遊丸の上でバランスを取りながら手を振った。
女「……」
あんなにも簡単に空を飛べる彼らが羨ましいと思う。
私の手作り飛行機、海遊丸はあまり飛ばなかった。
飛ぶというよりもただ落下していただけだった。
元がボートだからなのか、すぐに海に落ちてしまう。
海遊丸はよほど海が好きなのだろう。
女「今何時かなぁ」
腕時計を見る、針は午前7時を指している。
そろそろおじいちゃんが海遊丸を取り戻しに来る頃だ。
海遊丸をおじいちゃんに返した後でも十分、学校には間に合うだろ
う。
だから私は少しだけ海遊丸の上で眠ることにした。
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>>1も眠ったようだ 支援
太陽の焦げてしまいそうな暑さとおじいちゃんの怒鳴り声で目が覚めた。
おじいちゃん「コラ!女!いい加減にしろ、わしのボートを勝手に改造するんじゃない!」
女「いいじゃん…もう使ってないし!それに今日はそんなに改造してないから!」
木製の羽根がついたボートを指差しながら私は言う。
カッコいい羽根を付けてあげたのだ、喜ぶべきだと言いたい。
だけど、言ってしまうと説教が長くなるから止めておこう。
おじいちゃん「あ~海遊丸……かっちょ悪い羽根を付けられて…可哀想に…」
女「……かっちょ悪くないよ!おじいちゃんセンスない!」
ムッと怒りが沸いたからやっぱり言うことした。
説教が始まるまえに逃げれば良いのだ。
おじいちゃん「なにぃ!女、反省してないだろ!」
女「待て!待って!待て!もう直ぐ学校始まるから、そのもう行くね」
おじいちゃん「まだ!話はまだ終わってない!大体お前は……」
どうやら今日は簡単に逃げることはできないみたいだ。
女「あ!おじいちゃん!」
ちょっと卑怯だけど、学校に遅れるよりかはマシだと思うから使うことにする。
おじいちゃん「……なんじゃ!」
女「行きつけのキャバクラの女の子がなんでおじいちゃんを避けてるかしってる?」
おじいちゃん「……なんでじゃ?」
女「……お爺ちゃん魚臭いからだよ」
おじいちゃん「!?え、ああ」
おじいちゃん「……わしそんなに魚、臭かったのか?」
私は強引におじいちゃんの説教を終わらせる。
ショックで項垂れるおじいちゃんにちょっとだけ罪悪感を感じたが今は学校に急いで向かおう。
シューズの紐を締め直し、私は学校まで走った。
私は海に飛び込んだあと学校まで走るのが好きだ。
海水で濡れた体に風が当たるのがすごくすごく気持ちが良いから好きだ。
だから今日は最高の気分だ。
女「ふんふーん、やっぱり気持ち良いな!!!」
思わず声に出てしまうほど心地よかった。
女「おはよう!」
同じ学校の生徒を見つけたので挨拶をした。
嫌だけど校則で決まっているから仕方がない。
女学生1「??…ごきげんよう、女さん」
女学生2「??…ごきげんよう」
女学生達は、いきなり声をかけられビックリしたのか?少しだけ挨拶が遅れていた。
だけどさすがお嬢様学校の生徒だ。
直ぐに礼儀正しく挨拶を返してくれた。
女「ありがと!私は急ぐから!バーイバーイ」
私はお礼を言ったあと全力で走る。
女学生1「やっぱり…あの人…変だわ…いつも濡れてるし、言葉遣いもおかしいわ」
女学生2「それに磯臭いわ。なんであんな子がこの学園に入学出来たのかしら?お金でも積んだのかしら?」
全力で走る理由は彼女達の悪口を聞かないためだ。
女「もう聞こえちゃったけど……」
私はこの学校では浮いてる存在だ。
同級生達にヘンテコなボートを作って高い所から海へと飛び込む頭の痛い子だと思われてるらしい。
女「ほっといてほしいよ。はみ出し者だと思うなら干渉しないでほしいよ…」
思わず呟いてしまった。
やはり陰口を言われるのは辛いのだ。
挨拶をした後は私をいない者だと思えば良いのになんでみんなは干渉してくるんだろう。
やっぱり今日は最悪な気分だ。
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