男「愛のコリーダとは何だろうね」 (16)

女「は?それを今言う?」

男「いいだろう?時にはセックスしながら語り合うのも悪くはない」

女「語り合うなら、妙なことよりももっと燃え上がるような言葉がいいわね、例えば貴方が私に甘い言葉を囁くとか」

男「甘い言葉は昨日散々囁いてあげたろう?流石に毎日囁いていたんじゃあ、僕の口が砂糖まみれになる」

女「そんな甘い言葉でもなかった癖に」

男「それに感じていたのはどこの誰かな?」

女「……うるさいわね」

男「はは。君は耳が感度良すぎて面白いけど、僕の快感には繋がらないんだよね」

女「今から貴方が話そうとしている内容だって、貴方の快感には繋がらなさそうだけど?」

男「でも僕の知的好奇心は満たせる。君にとっては知らないが、僕にとっては有意義だ」

女「あっそ」

女「で、愛のコリーダってなに?」

男「おや、知らないのか。あれだよ、日本産のポルノ映画」

女「ポルノ映画なんて、観たことないわよ」

男「おや、変態趣味の君のことだから、沢山観ているものだと思っていたよ。先日も君の部屋から如何わしい玩具が出てきたことだし」

女「うるさいわね、玩具と映画は別物なの」

男「ふうん。視覚から如何わしい情報を得るのは苦手なのかな?」

女「どうでもいいじゃない、そんなこと。その映画が今から話そうとしている内容と関係あるの?」

男「うーん、あまり関係はないかも。どちらかというと、その映画のタイトルがついた楽曲と、映画の元ネタが話したい内容だしね」

女「映画に元ネタと音楽あるの?」

男「うん。音楽については整髪剤のCMで替え歌が出たほどメジャーな曲だし、流石の君でも知っていると思うよ。Ai no corrida~って、分かる?」

女「微妙」

男「あとで音楽かけてあげるよ。で、元ネタとの方は、昭和11年にあった阿部定事件って奴が元ネタなんだ」

女「へえ、事件」

男「女が男を絞殺して、ここを切り取って逃げたって事件だよ」

女「は?」

男「そういう反応だよね、分かる。僕も思った」

男「なんでも殺した女──定はね、男の事が好きで好きでたまらなかったんだ。男を独り占めしたくてたまらなかったから、彼女は男を殺してここを切り取って逃げた」

女「好きだから独り占めしたいっていうのは分からなくもないわね。好きな相手が別の女と一緒にいるのを見られたら、気が狂いそうになるもの」

男「それは僕にも適応されるかな?」

女「…………」

男「沈黙は肯定と取るよ?」

女「勝手に解釈すれば?」

男「じゃあ、僕の好きなように解釈するよ」

女「で、それが愛のコリーダとなんの関係があるの?」

男「コリーダっていうのは、スペイン語で闘技場っていう意味だそうだよ。君は、愛の闘技場と聞いた時、なにを想像する?」

女「……セックス?」

男「うん。確かに、セックスはある意味での男と女の戦いだから、そういう風に想像できる。事実、定と男はほぼ毎日のようにセックスしていたみたいだしね。さらに付け加えるなら──」

女「なら?」

男「定と殺された男っていうのは、所謂不倫関係にあった間柄なんだけど……禁じられた恋ほど燃え上がるものはないだろう?」

女「燃え上がる恋を闘技に見立てるってわけね。燃え上がる恋の中のセックスは情熱的だし、スペインのコリーダそのものだわ」

スペイン語の意味が闘技場じゃなくて闘牛でした
すみません
なんとなくで理解してください

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