元は、戦争を逃れた者たちが身を寄せ合うようにして組織されたものだったらしい。

勢力を問わず、魔女の窯のごとく混ざったそれは戦争が長引くと共に絆を深めた。

そして戦争が終わった今でも、故郷に戻らないものがいる。

見る影もなく荒廃した故郷で暮らすのは、辛いのだという。

それに産みの親を失った者や仕える主人を失った者は、どこにも行くところがない。

彼らは、帝でも一晩で落とすのは苦労するような砦をたて、そこで暮らし始めた。

彼らの心にあるのは、戦争への恐れ。

やがて、彼らは一種の情報組織を編成する。名はない。しかし目的はある。

戦争の火種となりかねないものをもみ消すこと。

下手をすれば、帝に目を付けられかねないものだったが、勢力が混在していたことが功を奏した。大半の勢力にとって、仲間殺しは大罪である。ましてや、砦に暮らす彼らは戦争の被害者だった。

そしてなにより、彼らの存在を利用して互いを監視し合う方が得策だと考えたようだ。

「５大勢力の矛先に立ったようなものだが、悪くないのう。

儂らが滅ばねば、彼奴らが突き刺し合うことはなかろうて」

と組織の発足を提案した長が笑ったのはいまだに憶えている。

そして、今回俺はその組織から任務を与えられ、この砂漠へきた。

砂漠の名はない。

戦争の影響で至る所に砂漠ができてしまったから、名前が付けられていないのだ。

されど砂漠。夜は冷える。

俺は、手についた砂を払い落としテントの中へ入った。

中には体をちいさく丸めたきつね、組織の同僚であるフェネックがど真ん中にででんと横たわっていた。

フェネックは、そのままの姿勢で呟いた。

「なにしてたの」

「ただのトイレだ」

「大？」

「大」

フェネックは小さく唸ってから、足の間をするりと抜けると、テントの外へ姿を消した。

彼女は匂いに敏感で、特に大便をした後は決まって離れた。

悪いな、と心中で謝ってから俺はフェネックが先ほどまでいた場所に寝転んだ。

目の前の布に砂の粒子が繊維の間に入りこみ、怪奇な模様を描いている。

よく見ると、いかにも醜悪な面をしたばけもののようだ。

俺が捜してる帝具は、こんな奴が持っているのではないか。

組織に与えられた依頼を思い出す。

帝具、精神分離機を回収すること。

眠くなったのでここまでです！
DMみたいな５大文明を意識して書いてます！
厨二なフレーバーテキストを教えてくれたら採用します！

いつか、誰かが私を打ち負かすだろう。 だがそれは今日ではないし、お前にでもない。

君がいたあらゆる場所。

氷河期のあいだに繁栄を極めたこのワームは、キイェルドーのありとあらゆる人々にとって恐怖の的だった。
その巨体と狂暴な性格が呼び起こした悪夢は数知れない―――甲鱗のワームはまさに、氷河期の災厄の象徴だった。
― 「キイェルドー：氷の文明」

>>6
３つもありがとうございます！全部保存させてもらいました
この回では>>6を使わせてもらいます！昼になったら投下します！

悪くないがなろう向けだな

ここでネタ集めしつつ話しを書いて
その後なろうでも書いたらいいかも

帝具、それは強大な帝である五帝がその力の一部を削りとり、創りだした道具である。

さきの戦争においても、多くの帝具が使用された。

中でも悪名を轟かせたのは、天帝の『幸福の監獄』、獣帝の『覚醒』、機鋼帝の『隷属ノ冠』、獄帝の『精神分解命令』である。

そして、帝具『精神分離機』は獄帝が『精神分解命令』とあわせて使っていた。

おぞましい兵隊を造りだすために、一役買っていたのだろう。

その後、戦争の過程で他の勢力に奪われたらしく、行方知れずになっていたのだが

つい先日組織にこのような情報が届いた。

『住人の身体がすべて入れ替わってしまった町がある。

とある頑固な爺は自分の孫と入れ替わり、強大な鋏が自慢だったペットのサソリはその母となってしまった。』

組織はこの奇天烈な現象を帝具『精神分離機』の仕業だと考えた。

これを獄帝が手にすれば、再び戦争の為に用いる。

だから、俺とフェネックが回収するために出張ってきたのだった。

俺がヒューマノイドで、フェネックがサイコ・ビーストという種属である以上、意思疎通には問題はない。

だが、まあ、互いに我慢しなければならない部分もあるというわけだ。

すでに、ばばばっという砂を掘る音と、絹を裂くような金切り声が聞こえる。

毎夜、これが一時間ほど続く。まじでうるせぇ。

何を考えてそんなことをするのか尋ねると、フェネックは目をそらした。

「なんかたのしいから」

本能のままに生きているようでなによりと皮肉を言うと、後ろ脚で砂をかけられた。

彼女は単純だと言われると、とてもいやがるのだ。

それが人間に似通った感性であるのは。サイコ・ビーストだからだろうか。

さて、この音で悩まされるのも今日で最後だろう。

目的地であるキイェルドーまで、あと５ｋｍ。

明日の昼には到着するはずだ。

瞼が静かに垂れ下がってくるのを感じながら、俺は暗闇の世界へと落ちていった。

翌日、今までぼんやりとした輪郭だった目的地がはっきりしてきた。

砂漠のオアシスに建てられたそれは、緑灰色の木々に埋もれるようにして存在していた。黄土色の城壁にその倍の高さはある物見櫓。

しかし、周りが砂漠なのでどうしても小ぢんまりしているように見えてしまう。

砂漠の楼上と呼ぶに相応しい、吹けば飛ばされてしまうような町だ。

フェネックも同じことを思ったらしく、率直に言った。

「あれがキィエルドーなの？話にきいてたより、ちっちゃい」

「あれ自体がキィエルドーの全てなわけじゃない。

キィエルドーの外縁にある町、ミゲルだ。キィエルドーというのは、キィエルドー王国に属している町や都市を総称したものだ。

先の戦争で王国の庇護はここまで及ばなくなってしまったらしいが、上手くやっているほうだと聞く」

「でも、腐敗と死の臭いがするよ。入りたくないなぁ」

フェネックはその場で立ち止まった。

「それはどういう意味だ？」

「獄帝の手先がいるってことだよ。奴らがもう回収しちゃったかもしれない」

そうか、この情報を手に入れたのは俺たちの組織だけとは限らない。

もし獄帝勢が知ったら、帝具を回収しようと動くのは道理だ。

「それなら、それで仕方がない。帝具がないことを確認しにいく必要がある」

「なら獄帝勢はさけて行こうね。あいつらほんと臭いから」

フェネックは力なく歩きはじめた。

彼女に従っていけば、獄帝勢とぶつかる心配はないだろう。

それにしても、精神が入れ替わった町とはどういうものだなのだろう

俺はすでにそっちの方へ想いが移りつつあった。

>>5、>>6
フレーバーテキストという名の物語が欲しくて書いています
それだけならなろうに載せる意味はないと考えました（フレテキください）

>>8,>>9です。間違えました

>>8,>>9です。間違えました

http://www49.atwiki.jp/cardflavor/

城門の前には、いかにも強面の男と優しげな雰囲気の女が甲冑を着て立っていた。

「なぁんだ。意外とふつうだね。わたし、クサリヘビが門番していると思ってた」

「いや、きっとあれはクサリヘビが中に入っている。油断すれば、噛みつかれるぞ」

「中身がクサリヘビなら、寝転がっているんじゃない？」

「言われてみればそうだな」

「案外、大したことないと思うね。すこしは違うかもしれないけどさ。ヒューマイドなんてわたしから見たら、全員同じ顔をしてるし」

「……」

「それじゃあ、さっさと聞いて終わらせちゃお」

「待て、ひとりは危ない」

制止する声を振り切って、フェネックが足音軽く近づいていく。

強面の男の方が最初に気付いた。フェネックを見た男の表情が輝いたのを俺は見逃さなかった。

「わんわんっ！！！」

男は見た目から想像もつかないほど俊敏に駆け出し、ぽかんと立ち尽くしていたフェネックを丸太のような腕で捉えた。

「え、ちょっと、離してよ！」

「帰ってきたんだね～わんわんっ！」

フェネックは牙をむいて威嚇しても、男が離す気配はない。

まずい。

急いで、フェネックの元へ駆け寄ろうとしたとき、

いつ間にか阿修羅の顔をした女が、男の背後に立っていることに気が付いた。

「このバカもんっ！今は仕事中だろうがあっ！」

女は、男の頭頂部に拳骨をぶちかました。

同時に、フェネックが男の手から脱出し、俺の背後に回った。

フェネックはひどく興奮しているが、キレているというわけではない。

俺は大きく息を吐き出し、呼吸を整えた。

寝るので今日はここまで！
>>16って勝手に使っていいのかな……

この世の果てでまた会いましょう
だから今は笑って

まさかここで見れるとは
俺もマルルのフレーバーテキスト大好き

今を戦えない者に次とか来世とかを言う資格はない

昨日が明日の二日前である場合、明日の次の日は今日であるか昨日であるか？

>>19
最期の瞬間にマルルが笑ったのか、それが分かりません
ありがとうございます

一通り男を怒鳴りつけた女はくるりと俺の方へ振り向き、頭を深く下げた。

「すいません。突然、失礼しやした」

フェネックはなにも答えず、警戒心のこもった眼で二人を見ていた。

今すぐに、彼女が和解することはないだろう。

ならば俺は、それを利用して情報を引き出すことにしよう。

フェネックには悪いが、ここで心理的優位に立てたのは僥倖なのだ。

「確かに驚いた。まるで子供のようだな、彼は」

「えぇ、どうにも身体と釣り合っていない奴でして。普段からよく言ってきかせているんですがねぇ」女はこんがりと灼けた褐色の唇を歪ませて、答えた。

精神交換のことは話すつもりはないらしい。

だが、俺たちはそれを聞く必要がある。

狩りと同じく獲物を徐々に追い詰め、こらえきれず飛び出したところを襲うのだ。

「延々と門の前に立つというのは退屈だろう。俺たちが今日初めての来訪者ではないか？」

「普段よく見る顔を除けば、そうなりますねぇ」

「ふむ、ここは戦争のあと復興したキィエルドーでも有数の町だというのに、上手くはいかないものだ」

「戦争でここら一帯が砂漠になってしまいましたから、わざわざここまで来る旅人も減りました。ですが、もともと少なかったので、気にする者はいません」

「それは寂しい話だ。私たちは西の砂漠を渡ってきたのだが、追剥ぎにあうことも、他種属に狙われることも少なかった」

これは事実だ。そこにすこし刺激を与えてやる。

「なんとも平和でいいところじゃないか、ここは」

予想通り、女の眉がぴくりと上がった。

「旦那はたまたま幸運だったんだ。ここには甲鱗のワームって言うそこらの城よりもでかい化物が住んでたんだよ。

キィエルドーにいる奴ならその噂を聞いただけで、震えあがっちまう」

女は口調が崩れていることにはっと気づいて、口をおさえた。

俺は、それに気づかない能天気な旅人を装う。

「なるほど。そういえば、ここは獄帝勢と獣帝勢が大きくぶつかりあった場所だったな。

ワームとは獣帝の帝具『覚醒』によるものだったとか」

「え、ええ。そうです、はい。」

「結果的には獣帝勢が勝利し、ワームがそこに残った。住民は魂を抜かれずにすんだものの

ワームに苦しめられることになった。皮肉なことだ」

「あんた、いったい…？」

「しかし、どういうわけかこのところワームが町や都市を襲わなくなった。

そして、住民の様子がおかしいという噂が流れ始める。

一体なにが起きたのだろうな」

女は右手をそっと腰の剣にかけて、鋭い眼差しで俺を見た。

「何が起きたと思うんだい」

「獄帝の帝具『精神分離機』がここで使われてしまったんだろう？」



俺が言うと同時に、女は剣を抜刀しどこからともなく取り出した笛を力強く吹こうとした。

だが、笛から危険を知らせる音が発せられることはない。

「な、なんで……」

女は唇まであと数センチのところで震える笛と自身の左手を見ていた。

「あのさーこういうことをするなら、最初に言ってよね」

フェネックはすでにそれまでのキツネの姿をしていなかった。

若葉のように明るい緑の炎を凶悪な牙の間から漏れ出て、樹影にまぎれてしまうような灰色の毛と流れるような尾を持ち

黄金色の三日月の形をした獰猛な眼が、女を見ていた。。

サイコ・ビーストの中でも指折りの念動力と、純粋さをもつ生き物。

それは、狼の肉体をもち、竜の如き強靭な顎と爪をもっていた、

俺は、いつ見ても彼女の姿を美しいと思ってしまう。

「無視しないでよ！ねぇ！結構ぎりぎりだったんだから」

そう、中身の幼稚なアレを除けば、崇拝に値するというのに。

「悪かった。まさか、ここまで露骨に敵対されるとは思わなかったのだ」

「うそだー！君すんごい悪い顔してたもんっ。ぜったいいじめて楽しんでいたでしょ！」

「顔はもともとだ、放っておいてくれ。それより、どうしたものか。このまま誘拐して話をきかせてもらうか」

「また悪い顔してる……でもそうするしかないね」

「なぜだ？」

「もう片方の男が城門の中に逃げたから。きっとすぐに応援が来るよ」

「……どうして」

「わたしのせいじゃないよ！気づいたときにはもう逃げられたの！」

「ああ、うん」

眠くなったのでここまで！
引き続き厨二なフレーバーテキストを募集中です！

>>22

>>19のフレーバーテキストが記されている「雪渓妖精マルル」というカードは、「セイバー：ドラゴン」というドラゴンが破壊される時、身代わりになれる能力を持っており「笑顔で送り出して」的な感じなんじゃないかなぁと自己解釈しております。

>>29
解説ありがとうございます。あのテキストはマルルが言っていたのですね、恥ずかしい勘違いをしていました。
改めて、素晴らしいフレーバーテキストだと思います。

「よしフェネック、この女と俺をこのオアシスの外まで運べるか」

「あまり、わたしを舐めないでよ」

フェネックが腹にずしんと響くような低い音で一度吠えると

俺と女の身体が地面から浮き上がり始めた。

さすがの念動力だ。

俺は驚いた女が暴れないか心配だったのだが、彼女は目を強く閉じ身を縮めていた。

人生で初めての体験だったのかもしれない。若干、罪悪感が生まれた。

フェネックはそんなことはつゆ知らずと言った風に、つっけんどんに尋ねてきた。

「どこまで離れるの！この辺砂漠だから、ちょっと離れたくらいじゃ見つかるよ」

「大丈夫だ。数百ｍ離れたらいい。隠れ家はどこにでもある」

「それって……」

「今の姿なら、いくらでも砂を掘れるだろう」

「やっほい！」

フェネックはその場で軽く小躍りした。

俺はこの旅の出発の際、フェネックには普段キツネの姿でいるように頼んでいた。

彼女の姿はあまりにも目立ちすぎるし、切り札を隠しておいて損はない。

しかし、彼女は相当なフラストレーションを抱えてつつあったのだ。

本人はそうと言わなかったが、あの夜中の奇怪な行動もこれが遠因だと予想している。

今回で、少しでもフェネックの気が紛れるといいのだが。

「砂漠に、大至急、人が何人も入れるくらいの洞穴を掘ってくれ！」

フェネックは答えるよりも早く、風を切るように駆け始めた。

その間、俺はフェネックの後ろを漂いながら、女の処置について考えを固めつつあった。

「できたっ」

穴を掘り始めてから、数分でフェネネックは快哉を叫んだ。

見つからないように地に伏せていた俺は、匍匐前進を開始し、女を先に行かせてから穴の中へ入った。

「どう？どう？」

「想像以上に居心地が良い、さすがフェネックだ。見直した」

「でへへっ！もっと言って！もっと！」

フェネックはぶんぶんと尾を振り、俺をじっと見てくる。

俺は、念動力で固められた土壁を撫でながら、目を眇めた。

「こんなことならテント住まいなどするのではなかったな。

ここならば、フェネックの強力な念動力で造られているから夜風が吹き付ける音がうるさいということもない。

それに手足を伸ばせる広さもある。我が友フェネック、どうか愚かな俺に謝らせてくれ。

君の深遠なる力と知識を見誤っていたことを」

「うんうん！我が友よ、君の真摯な謝罪を受けいれましょう！ならこれからはこの姿のままでいいよね！」

「人通りがないところではな」

「うおうおうおーーーーー！」

「さて、これからは尋問の時間だ」

俺は部屋の隅で目をぎらつかせている女に向き直った。

「私からは、話すことはなにもない」

「今更『私』など、使わなくていいのだぞ。所詮、その肉体は仮初なのだろう？」

「……」

「なぜ、俺たちに敵意を向けた？確かに帝具を使ったことは予想した。

それはお前にいや仲間を呼ぼうとしたところを見ると、この町にとって『知られたくない事実』だったのか？」

「……」

女は口を真一文字に結んで、目を逸らした。

「やれやれ、自身の価値を捨てるのは愚かな行いだ。

特に、生殺与奪権が相手に握られているときはな」

俺はゆらりと立ち上がり、座り込んだ女を見下ろした。

今の女は、フェネックの念動力で動きを制限されている。

「あの、えぐいことするなら君の部屋でやってね」

フェネックは、すでに土壁で区切られた部屋を二つ作っていた。

「あぁ」

俺は女を引きずるようにして、その部屋へ連れ込んだ。

今更ですけど薄い本展開だとR行きなんでしたっけ
この状況を切り抜ける帝具なにかアイデアがあればお願いします
なければ適当に出します

屍術師は、これまでに生み出してきた最も強力なアンデッドでその力を測られる。 たとえただ一匹を生み出したに過ぎなくても、闇の術の頂点を極めたとして知られる者すらいる。

これって、壊れてる。

おお、良心なら持っていたとも。だが、残念。どこかに置き忘れてしまったらしい。

どうせお粗末な呪文だったんだろうさ。

残念ながら、そうはいかないね。

「お前を止めることができるのは神々だけ、とでも思ったのか？」

「お前の計画には穴がある。」

お前の意見なんぞたかが知れているよ。

「なるほどお前の狙いは読めたぞ。 気に食わんな。」

「お前が霊気から得ようとしているそれな、私なら風に乗せて飛ばせるんだが。」

「貴様の一つ目の過ちは、貴様が二つ目を犯せる程長く生きることを私が認めると思ったことだ。」

「愚かな。正しいやり方を見せてやる。」

あまり図に乗ると、憂き目を見ることになるぞ。

お前、本当にそうしたいんだな？

おまえの粘り強さは賞賛に値するな。無益だがね。

「貴様は軽蔑にも値しない。貴様の血筋は忘却される。」

それだけ？

まあ、少なくとも腕のひらひらとか呪文のぶつくさとかは印象的だったかな。

>>34
沢山のフレーバーテキストをありがとうございます！MTGwikiで意味を調べましたところ皮肉の利いたセリフに唸らせられました……保存決定です！
それに、どれをｓｓに採用するかを迷えるというのは幸せです
本当にありがとうございます

女を強引に目の前で引き倒し、彼女の両ひざを抱え込むように拘束した。

女は精一杯身をよじり、抵抗してくる。

「この変態っ！離せばか！」

「ならば真実を話せ。俺とてこんな危ない橋は渡りたくないのだ」

「この○○○野郎！」

とんだ言い草だ。俺はこの女に手を出すつもりは一切ない。

荷物の中から取り出しておいた投薬瓶から、きっかり三滴、自分の掌に垂らした。

そうしてから、女の膝の裏にも三滴垂らす。

これは激烈な効果を持つ笑い薬だ。

一滴でも肌に触れれば、一分間呼吸もできないくらいに笑い転げる。

周りから見れば、半狂乱といったところだ。

三滴ということは、三分間延々笑い続けることになるからして

異常に痙攣した横隔膜で痛むこと請け合いである。

だが、こんなものが危険と言うわけではない。

問題は、この女の心がどれほどの層を持っているかだ。

俺は首にかけていたペンダントをとりだし、女にかけた。

「な、なんだこりゃ？」女が素っ頓狂な声をあげた。

「これは、お前の魂へと到達するための帝具だ。

普段魂とはきつく閉ざされ、誰にも干渉することはできない。

だが、ある一定の条件を満たせば、帝具でこじ開けることができる。

例えば、『精神分離機』は持ち主のなによりも深い愛いや憎しみの感情に呼応して、発動すると聞く」

「……っ！」

「ふんっ、心当たりがあるようだな。

そして、これは『脳内旅行』という獄帝の帝具だ。

笑うという行為が、魂を無防備に曝け出した状態であることを利用したものだ。

対象が一体一であること、発動した際に精神崩壊を引き起こす可能性があるところから、戦争中でもめったに使われなかった。

獄帝にとっては、後身の『精神分離機』の方がよっぽど大切なのだろうな。おかげで俺のようなヒューマノイドが持っても、それほどは狙われん」

「ちょいと待ちな！『精神崩壊を引き起こす』ってのはどういうことでぃ！」

「誰かの思考の中で、迷うことはとても危険だ。相手の思想や価値観がダイレクトに伝わってくるわけだからな。

長くいれば俺が、俺でいられなくなる可能性は高い。そのせいでお前の思考の中に滞在できる時間は、三分間が限界とみている。

それを過ぎればお前と俺の魂は閉じられ、俺はお前の中から出られなくなる」

「んー？つまり、それはお前だけが危ないってことか」

女は底意地の悪い笑みを浮かべた。

「馬鹿が。一つの肉体に二つも魂が入っても見ろ。まず、精神は立ち代わり入れ替わって

まともな意識は保てん。そのうち、どちらかが滅びるまで精神世界で。血で血を洗う闘争が起きて、残った者はその弱り切った身体をさすりながら、フェネックに頭から喰われる」

「フェネックってあのバカでかい狼だよな。お前の仲間じゃないのか！？」

「フェネックの身を守る為でもあるが、一番の問題は

フェネックに何度も説明しても『よく分からないんだけどっ！』の一点張りだったことだ。諦めろ」

それを聞くと女はひくひくと口端を引き攣らせた。笑う前兆かもしれない。