橘ありす「宮本凹みデリカ?」 (68)
前作
橘ありす「帰ってきたタクシーフレデリカ?」
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―――――事務所・廊下―――――
橘ありす(今日のレッスンは悪くなかったですね……)トコトコ
ありす(さて……、今日のフレデリカさんは何を始めるんでしょうか……)
ありす(まあどうせ、今日もくだらないことを始めるんでしょうね……)
ありす(いや別に、嫌だというわけではないですが)
ありす「だっ、だからと言って決して楽しみなわけでは……っ!」
ありす(……)
ありす(……私は何を言ってるんでしょうか)トコトコ
―――――事務所・ルーム―――――
ガチャ
ありす「こんにちは」
宮本フレデリカ「……」ボーッ
ありす「……あれ?」
フレデリカ「……」ボーッ
ありす「フレデリカさん? ちょっと……」
フレデリカ「……」ボーッ
ありす「生きてますかー?」トントン
フレデリカ「わわわぁっ!?」ビクゥ
ありす「うわぁ!?」ビクゥ
フレデリカ「あ、ありすちゃん……」
ありす「? こんにちは」
フレデリカ「こ、こんにちは……!」
ありす「……何か変ですよ?」
フレデリカ「え!? そ、そんなことないよー? いつも通り、後方伸身宙返り4回ひねりだってできちゃうよ!」
ありす「シライ!?」
ありす「そんなの見たことないですよ!?」
フレデリカ「あれー? ありすちゃんが頭下げて泣いて頼むから覚えたのにー……」
ありす「頭下げてないし泣いてないし頼んでない!」
フレデリカ「次はトリプルアクセルだね!」
ありす「競技が違いますし! 選手に謝ってください!」
ありす「まったく……。今日は“スポーツウーマンフレデリカ”でも名乗るんですか?」
フレデリカ「……」
ありす「フレデリカさん?」
フレデリカ「え!? あ! うん! そうだね! プロテインだね!」
ありす「ホントに聞いてます!?」
ありす「フレデリカさん、今日はやっぱり変ですよ……?」
フレデリカ「逆に言えば普段は変ではないってこと!?」
ありす「いえ普段から変です」バッサリ
フレデリカ「」ショボーン
ありす「あっ! ご、ごめんなさい」
フレデリカ「生まれ変わったら石油王になりたい……」
ありす「高望み」
ありす「えっと……、き、今日は何をするんですか?」
フレデリカ「パス」
ありす「パス!? バスではなく!?」
フレデリカ「本当はねー、“運び屋フレデリカ”だったんだけどねー……」
ありす「割と気になりますけど!」
フレデリカ「今日は有給を取得いたしますのだー……!」
ありす「むしろタクシーフレデリカとかに給料が出てたんですか!?」
ありす(昨日は普通のフレデリカさんだったはず……。ということは……)
ありす「フレデリカさん」
フレデリカ「?」
ありす「今日のお仕事、どうでしたか?」
フレデリカ「……!」
フレデリカ「べ、別にフツ―だったよっ! アアタノシカッタナアー!」
ありす「ウソつくの下手すぎじゃないですか!?」
ありすちょっと期待してるじゃねーか
ありす「何かあったんですね?」
フレデリカ「……」
ありす「フレデリカさん……?」
フレデリカ「……あれは、私が母国フランスを出てから4回目の」
ありす「誤魔化さない」
フレデリカ「ウィッス」
フレデリカ「そ、そんなに大したことじゃないよー!」
ありす「……私に話しても無駄ってことですか」
フレデリカ「うぇ!? い、いや、本当にビックリしちゃうくらいくだらない話なんだよ!」
ありす「でもフレデリカさんが凹んでるのは事実じゃないですか……」
フレデリカ「凹んでナイナイ! むしろ凸んでる気もしてきたかも!?」
ありす「何て読むんですか!?」
ありす「って、誤魔化されませんよ!」
フレデリカ「それでこそ我の認めた“永遠の好敵手≪ディスティニー・ライバル≫”だね!」
ありす「急に中二病!?」
フレデリカ「ニノの真似だよー」
ありす「飛鳥さんをニノって呼んでる人初めて見ました」
フレデリカ「この前呼んだら無視されちゃった」
ありす「それ気づいてないだけだと思いますけど?」
ありす「話が一向に進まないじゃないですか!」
フレデリカ「人生、足踏みも必要なんだよー?」
ありす「フレデリカさんが言うと薄っぺらいですね」
フレデリカ「」ショボーン
ありす「今日メンタル弱くないですか!?」
ありす「フレデリカさん、午前はバラエティの収録だって言ってましたよね?」
フレデリカ「う、うん」
ありす「撮影は順調に終わりましたか?」
フレデリカ「うん! 撮影は楽しかったよー!」
ありす「撮影“は”……?」
フレデリカ「う……」
ありす「撮影前になにかあったなら、撮影まで引きずりそうですから“楽しかった”という感想は出てこないはず……「
フレデリカ「うう……」
ありす「……撮影後に何かあったと?」
フレデリカ「そ、そんなことよりお昼でも……」
ありす「こ、この期に及んでまだ話題の変更を!?」
ありす「……」
ありす「……フレデリカさん」
フレデリカ「?」
ありす「本当に話したくないなら、話さなくても大丈夫です……」
フレデリカ「ありすちゃん……」
ありす「もしかしたら、少し考える邪魔をしてしまったのかもしれませんね」
フレデリカ「そ、そんな、ジャマなんかじゃ」
ありす「私は少し席を外します。もしも話したくなったら、話してください」
フレデリカ「……」
ありす「それでは」トコトコ
フレデリカ「あ……」
フレデリカ「……」
フレデリカ「……ま、待って!!!」
ありす「え?」
フレデリカ「……今日の撮影の後にね? スタッフさんと話してたの」
ありす「……はい」
フレデリカ「その時に、ちょっと……」
ありす「ちょっと……?」
フレデリカ「口論になっちゃってー……」
ありす「す、スタッフさんとですか!?」
フレデリカ「もしかしたらあの番組にはもう呼んでもらえないかもなーって……」
ありす「それで凹んでたんですね……」
ありす「それで、口論の内容は?」
フレデリカ「え!? そ、それは……」
ありす「……」
フレデリカ「……」
フレデリカ「えっと……、そ、そう! フレちゃん、朝はパン派なんだけど、そのスタッフさんは“ご飯以外ありえない!”って! ひどいよね!」
ありす「……」
フレデリカ「……」
ありす「……は?」
ありす「そ、そんなくだらないことで……!?」
フレデリカ「く、くだらなくないよー! 就活問題だよー!」
ありす「それを言うなら死活問題です! 近年の就職活動については話してません!!!」
フレデリカ「ナイスツッコミ! 座布団7枚!」
ありす「司会変更前最終回の笑点か!!!」
ありす「もう……! 心配して損しましたよ!」プイッ
フレデリカ「怒らないでー! モンドセレクション金賞あげるからー!」
ありす「欲しがった記憶が全くない!!!」
フレデリカ「ノーベル賞もつけちゃうよ!」
ありす「そんなオマケにしていい賞じゃないですよ!?」
ありす「まったくもう! 私はちょっと出かけます! 失礼しました!」
ガチャ
フレデリカ「……」
フレデリカ「さすがにねー……」
フレデリカ「はぁ……」
―――――事務所・廊下―――――
ありす(まったく! 心配しただけ無駄でした!)
ありす(まあ、あまり深刻な事態じゃなくてよかったとは思いますが……)
ありす(……あれ)
速水奏「あら、ありすちゃん、こんにちは」
ありす「奏さん、こんにちは。き、聞いてくださいよ! さっきフレデリカさんが」
奏「ずいぶんいきなり捲し立てるのね……。って、え? フレデリカと会ったの?」
ありす「はい? 普通に部屋にいましたが……」
奏「そう……。あの娘もなかなか、間が悪いというか……」
ありす「え?」
奏「ごめんなさい、こっちの話」
奏「フレデリカ、凹んでたでしょう?」
ありす「な、なんで知ってるんですか……!?」
奏「だって私、午前中はフレデリカと同じバラエティの収録だったもの」
ありす「あ、そうだったんですか」
奏「ええ」
ありす「じゃあ、フレデリカさんのくだらない口論についても知ってるんですよね?」
奏「くだらない……?」
ありす「はい! ご飯がどうとかパンがどうとか! 心配して損しました!」
奏「え? ……ああ……なるほど……」
ありす「呆れて部屋を出てきたところですよ……!」
奏「……」
ありす「奏さん?」
奏「ありすちゃん」
ありす「は、はいっ」
奏「冷静に……冷静になってみて?」
ありす「え?」
奏「あなたの知ってるフレデリカは、そんなことで怒る人?」
ありす「私の……知ってる……?」
奏「フレデリカが“Aが好き”って言って、ありすちゃんが“Bが好き”って言ったとして、フレデリカはそこに食ってかかると思う?」
ありす「それは……」
奏「思わないでしょう?」
ありす「はい……」
奏「結論から言わせてもらうと、その話はウソよ」
ありす「え……!? じ、じゃあフレデリカさんが凹んでることも……!?」
奏「いいえ、そこは本当。スタッフさんと口論ってところもね」
ありす「ってことは、口論の内容がウソってことですか?」
奏「ええ、そうなるわ」
ありす「……」
奏「怒ってる?」
ありす「……少し」
奏「ウソをつかれたのだから当然ね。でも……」
ありす「……」
奏「まあ、口止めされてるわけではないし、フレデリカには悪いけど話させてもらおうかしら……」
ありす「……お願いします」
奏「ええ」
奏「なるべくかいつまんで話すけど……。収録してたバラエティ、聞いたことある?」
ありす「えっと、割と最近始まったやつですよね?」
奏「そう、でも、あの番組、いわゆる“レギュラー出演者”がいないの」
ありす「……?」
奏「それがコンセプト……と言ってしまえばそれで終わりそうなんだけど、実際に行ってみてわかったわ」
ありす「わかった?」
奏「オブラートには包ませてもらうと……、あの番組ね、ディレクターがあまり“良くない”の」
ありす「……」
奏「“牛耳る”とか“私物化”みたいな言葉を思い浮かべてもらえればいいわ。だから、気に入らない出演者はもう出さないの。時には事務所ごと切り捨てたりしてね」
ありす「だから毎回、様々な出演者がとっかえひっかえだったんですね……」
奏「ええ。ま、それ以前に性格があまり……ね」
奏「でも、自画自賛にはなるけど、私とフレデリカは完璧に収録をこなしたのよ?」
ありす「ではどうして……」
奏「収録後に、別のスタッフさんと3人で話をしていたの。そこに、そのディレクターが来ちゃって」
ありす「……」
奏「『ハーフなんて今どき何のウリにもならない』とか『テレビならまだしも実際に話すとイライラするキャラ設定だな』とか、好き勝手言ってきたの。……私もいくつか言われたわ」
ありす「ひどい……」ギリッ…
奏「勘違いしないで。私もフレデリカも、そんなことでは怒らないわ。特にフレデリカはなんにも気にせずに会話を続けててね……」
ありす「……」
奏「そこで、『まあ次も呼んでやるからありがたく思え』って言われたの。内心はもちろんお断りだけど、“お仕事だもの、しょうがない”……って思ってたら、“ウチの事務所から他にも誰か出せないか”って」
ありす「……」
奏「それで、向こうの要望が、『今の年齢層が高いからガキがいい。なるべく収録で好き勝手言わなそうな』だったのよ」
ありす「それって……」
奏「私もフレデリカも、ありすちゃんが浮かんだけど、“こんな奴に会わせられない”って思って、何も言わなかったわ。でも、もう1人のスタッフが“橘ありすちゃんとかどうですか”なんて言い出してね」
ありす「……っ!」
奏「ありすちゃん、ここからは、ちょっとありすちゃんが耳を塞ぎたくなるような言葉が出てくるかもしれないけど……」
ありす「……大丈夫です。聞かせてください」
奏「……わかったわ」
奏「それを聞いたディレクターは……、今度はありすちゃんについて、いろいろ言い始めてね」
ありす「……」
奏「やれ『ガキのくせに理屈っぽくて』とか、やれ『あの名前が云々』とか……」
ありす「……」
奏「私は気分が悪くなって、フレデリカを連れて戻ろうと思ったの。……結果的には、あと少し、早く決断するべきだったんだけど」
奏「……フレデリカの顔を見たら、……今までに見たことのないような表情で。すぐに手を引こうと思ったその時だった」
『ありすちゃんを馬鹿にしないで!!!!!』
奏「って」
ありす「……!」
奏「まあ、この先を詳しく伝える必要はなさそうね」
ありす「それが……フレデリカさんの言ってた“口論”……」
奏「ええ。……結果的に、あの番組にウチの事務所からアイドルが行くことはもうないでしょうね」
ありす「それであんなに……」
奏「もちろん、自分を馬鹿にされた悔しさがあって、他のアイドルの仕事を減らしたかもしれないという罪悪感があって……。でも、一番はやっぱり、ありすちゃんを馬鹿にされたことでしょう」
ありす「……」
奏「あの娘はね、自分のためには怒らないと思うの。でも、誰かのために怒ることができる娘なのよ」
ありす「……」
奏「……バカよね」
ありす「……本当に……バカなんですから……」
ありす「……お話、ありがとうございました」
奏「構わないわ。むしろ、辛い言葉を聞かせちゃってごめんなさいね」
ありす「それこそ構いません。ありがとうございました」
奏「これから、どうするの?」
ありす「……部屋に戻ります」
奏「あら、忘れ物?」クスッ
ありす「……そういうことにしておいてください」トコトコ
奏「……フレデリカは、あなたのそういうところが大好きなのよ」
ありす「よく聞こえませんね」トコトコ
―――――事務所・ルーム―――――
フレデリカ「……」ボーッ
ガチャ
ありす「……こんにちは」
フレデリカ「わわっ!? あ、ありすちゃん!? わ、忘れ物かな!?」
ありす「奏さんから全て聞きました」
フレデリカ「!!!」
フレデリカ「そ、そう……なんだ……」
ありす「あなたは大馬鹿者です!!!」
フレデリカ「!」ビクゥ
ありす「……目を閉じてください」
フレデリカ「え……?」
ありす「早く」
フレデリカ「は、はい」ギュッ
フレデリカ(ありすちゃん、怒ってる……)
フレデリカ(ウソついちゃったからかな……?)
フレデリカ(怖い……)
チュッ
フレデリカ「……え???」パチッ
ありす「……目を閉じてと言ったはずですが」
フレデリカ「い、今……、ほっぺに……」
ありす「……」
フレデリカ「か、顔、赤いよー……?」
ありす「……だから閉じてと言ったんです」
フレデリカ「……」
ありす「……」
フレデリカ(ほっぺへのキスは……確か……)
ありす「“感謝・親愛”」
フレデリカ「……!」
ありす「まあ、調べた知識ですが」
ありす「私のせいで凹んでるようで癪だっただけです」
フレデリカ「あ……」
ありす「?」
フレデリカ「ありすちゃぁぁぁぁぁーん!!!!!」ダキッ
ありす「うわ! ちょっと! こ、こうなる予感はしてましたけど!!!」
フレデリカ「これからもよろしくねぇぇぇぇ!!!」
ありす「はあ……、まぁ、飽きない限りは、ですよ」
フレデリカ「うわああああああん!!!」
ありす「うるさい!!!!!」
―――――ドアの外―――――
奏(まあ、ハッピーエンド……かしら)
緒方智絵里「あれ? 奏さん! 入らないんですか?」
奏「貴方はダメ。本当に今はダメ」
智絵里「?」
おわり
乙! たまにはこういうしんみりも悪くない
たまにはこういうのも
2回読むと、コメディパートのフレちゃんへの印象も変わるかも?
過去作
智絵里「ほたるちゃんが」朋「風邪を引いた!?」
池袋晶葉「世のため人のため雪美のためフレデリカのため」
野々村そら「みっしょん!」難波笑美「裕美はんを笑わせろ!」
などもよろしくお願いします
おつー
ちえりんなんで……?って思ったけどこのちえりんは畜生ちえりんかw
存在自体がフラグ、それがゲスちえりん
冒頭のシライでワロタww
今回はありすがカッコいいね
このまましんみりと余韻を残して終わっても良かったのに緒方ww
これはフレちゃんにメロメロになりますわ
乙
緒方ァ!
奏でも知ってるのか…
そういや緒方とふじともとほたるのファン絵をこないだ見た、ほたるは効果音のみ出演だったけど
効果音……あっ
ちひろさんなら…
前作読んでこよ
読もうと思ったけど前作の前作の前作の前作(ry
多すぎて挫折したわ…
おすすめおしえてくれ
>>52
全部
>>52
もちろん全部おすすめですが、
橘ありす「タクシーフレデリカ?」
橘ありす「家電アイドルフレデリカ?」
橘ありす「名探偵フレデリカ?」
橘ありす「勇者フレデリカ?」
橘ありす「宮本ノノデリカ?」
橘ありす「ツッコミアイドルフレデリカ?」
橘ありす「帰ってきたタクシーフレデリカ?」
橘ありす「宮本凹みデリカ?」
のうちの
タクシー→家電→帰ってきたタクシー
の3つは是非読んでいただければ
さすがのフレデリカもあのムカつくディレクター(>>28)には怒るナ
いい話だなぁ…
と思いつつもちえりん突入させて台無しにするのもアリだと思った
トリで検索して1から漁ってるだけで休日が終わる
>>54
サンクス!
挙げられてるの全部読んできた
フレちゃんマジシルブプレ
可愛すぎワロタ
番組に智絵里つっこませてディレクターにトラウマを植え付けたくなるな
島村さんに伝えておいたら人知れずディレクターを葬ってくれそう。
万が一智絵里が入って行っちゃったら「智絵里ちゃん!」じゃなくて「緒方ァ!」の方のやつだわ
おつ
乙
ありすとフレデリカの仲の良さがわかる素晴らしい話でした。
ありすが可愛い(可愛い)
ほたるを凸させてほたるの近くに茄子さん配備させればあのディレクターにだけ何か起きるかな
つまり次の番組のゲストは卯月と智絵里にすればいいと
>>64
その手があった!
他人のスレでつまらん妄想ストーリーをいつまでも語るな。荒らしと変わらんぞ
うーんこの
>>66
お前は何を言ってるんだ?
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