サトシ「殿堂入り?」(14)

サトシ「…て、なんだよシトロン?」

シトロン「なんでも、各地方のリーグを制覇して、四天王とチャンピオンに勝利する事を言うらしいですよ」

サトシ「へぇ、それはすげぇな…オレ達も殿堂入りを目指さないとなぁ、ピカチュウ!」

ピカチュウ「ピッカァ!(おうよ)」

セレナ「サトシならきっと出来るよ!」

サトシ「サンキュー、セレナ!」

サトシ「でも、まずは次のジム戦に勝たなくちゃな」

シトロン「その為にも、まずは次の街に早く行かないと、ですね!」

ユリーカ「でも殿堂入りかぁ、一体どんな人がしてるんだろ?」

サトシ「チャンピオンに勝てる人なんだもんなぁ、きっとスゴイ奴なんだろうな!」

サトシ(…チャンピオンかぁ、シロナさんのガブリアス、強かったなぁ…)

シトロン「多分、どんなポケモンの事も知り尽くしてる様な人なんですよ」

ユリーカ「むしろ、その人がポケモンと戦っても勝てちゃう!…とか?」

ピカチュウ「ピカピー…(んな訳ねぇだろ)」

セレナ「あははっ、ユリーカ、それは言い過ぎよ!」

サトシ「会ってみたいなぁ、殿堂入り!」

シトロン「そういえば、サトシが今まで会ったポケモントレーナーの中で、一番強いと思ったのは誰なんですか?」

サトシ「うーん、強い人は沢山いたけど、やっぱりシロナさんかな」

セレナ「へー、一体どんな人だったの?」

サトシ「シンオウ地方のチャンピオンで、ガブリアスの使い手の女の人なんだ」

サトシ「何度か手合わせをして貰ったんだけど、歯が立たなかったなぁ」

セレナ(女の人…?)

ユリーカ「女の人がチャンピオンなんだ!」

シトロン「どんな人だったんですか?」

サトシ「大人の女の人、って感じだったぜ」

サトシ「あ、ほら、丁度あそこに立ってる人みたいな髪飾りをしてて……」

サトシ「…………え?」

シロナ「あら?」

シロナ「サトシ君じゃない、久し振りね!」

サトシ「シロナさん!お久しぶりです!」

シロナ「もしかして、カロス地方のリーグを目指してるの?」

サトシ「はい!今度こそ優勝出来るように頑張ってます!」

シロナ「そうなの、頑張ってね」

シロナ(…この子、カルネのタイプど真ん中なのよね…大丈夫かしら?)

シトロン「サトシ、この方がシロナさん?」

シロナ「初めまして、えーっと…」

シトロン「あぁ、僕はシトロンと言います」

シトロン「そして、僕の妹の…」

ユリーカ「ユリーカです!」

シロナ「私はシロナ、よろしくね?」

シトロン「こちらこそ、よろしくお願いします!」

シロナ「あと、そちらの女の子は…?」

セレナ「あ、私はセレナといいます、…よろしくお願いします」

セレナ(お、大人の女の人って感じ…美人な人だなぁ)

サトシ「シロナさんは、こっちに何か用事があるんですか?」

シロナ「実を言うと、人探しをしているのよ」

シロナ「あの子、いっつもどこかをフラフラしてて…今はどうやらカロス地方にいるらしいの」

シトロン「どんな方なんですか?」

シロナ「んー…、すごい面倒臭がりでーー」

ユリーカ「なんだかお家にいる時のお兄ちゃんみたいだね!」

シトロン「コラっ、ユリーカ!」


シロナ「ー私よりも強い人、かな?」


サトシ「えっ⁉︎」

シロナ「…まぁ、驚くのも無理も無いわよね、私もシンオウ地方のチャンピオンではある訳だし」

シトロン「殿堂入りをした方、という事ですか?」

シロナ「確かにあの子は殿堂入りしてるわね」

ユリーカ「すっごーい!本当にいたんだね!」

サトシ「負けてらんないな!」

セレナ「うん、負けていられない!」

セレナ(シロナさんみたいな人にも、負けていられない!)

ユリーカ「急に元気になったね、セレナ」

シロナ(…可愛いわねセレナちゃん、ここまで分かり易いと応援したくなるわ)

シロナ「それでね、情報によると、その子が今ここの近くの街にいるそうなのよ」

サトシ「って事は!オレ達もその人に会えるかもしれないって事ですか⁉︎」

シロナ「あら、サトシ君達もそこに行く予定なの?」

シトロン「はい、かなりの距離を移動してるので、そろそろ物資を調達したいんですよ」

シロナ「なるほどね、ならご一緒してもいいかしら?」

サトシ「こちらこそ、よろしくお願いします!」

セレナ「お願いします!」

ユリーカ「しまーす!」

サトシ「…殿堂入り、かぁ…」

シロナ「やっぱり気になる?」

サトシ「はい、出来ればバトルもしてみたいです!」

サトシ「今の自分がどこまで通用するか、試してみたいです!」

シロナ「そうね、気持ちは分かるわ…」

シロナ(…バトルになるかどうかは、分からないけれどもね)

シロナ「ただ、少なくともサトシ君がバトル出来るのは、私がバトルした後になるわね」

セレナ「チャンピオンと殿堂入りをした人のバトル、なんだかスゴそうね!」

シトロン「きっと、高度な次元でのバトルなんでしょう!」

シロナ「…そうね、貴方達の期待を裏切る様な事をしないように頑張るわ」

ーシンオウ殿堂入りのプラチナ氏、メガ進化への興味アリ。カロス地方での目撃証言アリ。

シロナ(今の私は、どこまであの子に通用するのかしら?)

ーやっぱり、トゲキッスが来ると思った。

シロナ(まるでこちらの手の内を、考えている事を口に出していたかのような気分にさせる立ち回り)

ーで、ここでガブリアスを後出しして、攻撃を耐える事が出来たら、まだイーブン。

シロナ(計算し尽くされたかのように攻撃を耐え、的確な有効打を撃ってくるあの子のポケモン達)

ーでも、耐える事は決して無い。

シロナ(…ついには一体も倒す事も出来ないまま、突きつけられた敗北の二文字)

ー僕のポケモンは、容易な後出しを許さない。

シロナ(あの日負けてから、私はー)

シトロン「あっ、見えてきましたよ!」

セレナ「やっと着いたねっ!サトシ!」

サトシ「ああ!会えるといいな、殿堂入り!」




ー私は、あの子に何を求めているのかしら?

シトロン「とりあえず、ポケモンセンターに荷物を預けませんか?」

サトシ「そうだなー、俺はポケモン達に少し自由な時間をあげたいな!」

セレナ「それなら、街から少し出た所に開けた所があったから、荷物を置いた後、そこに行くっていうのはどうかな?」

ユリーカ「…お兄ちゃんは私と一緒に街探検ね!」

シトロン「えぇっ、ちょっと、ユリーカ⁉︎」

サトシ「じゃあ、俺とセレナはポケモン達を遊ばせてくるよ!」

シトロン「…あっ、シロナさんはどうします?」

シロナ「私は早速だけど、人探しに行こうかしら」

シトロン「そうですか…シロナさんは今日はここに泊まるんですか?」

シロナ「えぇ、そのつもりよ?」

シトロン「では、後ほど機会があれば皆で食事しませんか?」

シロナ「えぇ、こちらこそご一緒してもよろしくて?」

シトロン「はい、勿論です!」

シロナ「えぇ、それじゃあ」

シトロン「はいっ、ではまた後ほど!」

シトロン「……。」

ユリーカ「なんだか、お兄ちゃんヤケにシロナさんに話しかけるね」

ユリーカ「もしかして、惚れちゃった?」

シトロン「そ、そんなんじゃないよ!」

シトロン「…ただ、なんだか辛そうだなって」

ユリーカ「シロナさんが?」

シトロン「うん、なんというか、不安定というか…」

ユリーカ「ふぅん、…行こっ、お兄ちゃん!」

シトロン「うわぁ、ユリーカ!引っ張らなくても行くから!」

シトロン(なんか、勝者の顔じゃなくって、むしろ敗者のするような顔に見えるのは、気のせいなのかな、シロナさん…)

シトロン「…皆さん、まずはポケモンセンターに荷物を置きに行きましょうよ!」

シトロン(…まぁ、僕があれこれ考えても仕方が無いのかな?)

サトシ「セレナ、早く行こうぜ!」

セレナ「きゃあっ!急ぎすぎよ、サトシ!」

セレナ(ふふっ、なんだかカップルみたいっ!)

シトロン「夕飯の時間までには帰って来てくださいねー!」

サトシ「分かってるって!」

セレナ「はぁっはぁっ、やっと追いついた~…」

セレナ「もう、サトシったらっ」

サトシ「ゴメンゴメン、いてもたっても居られなくってさ!」

セレナ「…ふふっ」

サトシ「なんだよ、突然笑ったりして」

セレナ「なんでもないっ、行こっサトシ!」

サトシ「?…おぅ!行くぞピカチュウ!」

~街中の公園~

シロナ「…すごいオブジェね」

シロナ(湖と、それから奥に見える山…なんだか心が洗われるようね)

シロナ「……」

シロナ(チャンピオンとは、なんなのかしら?)

シロナ(考古学に好きなだけ没頭して、リーグを勝ち上がったチャレンジャーが来たら叩きのめす…たったそれだけでお金を稼いで…)

シロナ(今の私には、たったそれだけ)

シロナ(ジムリーダーにはそれぞれ、差はあれどその街の象徴として、時に人々を導いたり、指標となったり、ポケモントレーナーとしてだけでなく、一人の人間として皆を引っ張っている…)

シロナ(例えバトルで負けたとしても、彼らの敗北はトレーナーにとっての進歩の証)

シロナ(では、私(チャンピオン)は…?)

シロナ(私は一体、トレーナー達に何をしてあげられているのだろう?)

シロナ(最強無敗のチャンピオンなら、それこそ全てのポケモントレーナーの目標、到達点となれる)

シロナ(でも、私は”2人”に敗北した)

シロナ(敗北の味を、完敗の味を知ってしまっている…)

シロナ(私は、何なのだろう…?)

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