悪魔になった男 (184)
「汝、なぜゆえに力を欲す。」
長い銀髪の髪を垂らした男が
椅子に座った
黒のスーツを身に纏った男に問う。
「全ては仲間の仇討ちのため。
そのためなら俺一人の命なぞくれてやる。」
黒スーツの男の目は復讐の火を灯していた。
「いいだろう、その心意気気に入った。
汝に不死の力を授けよう。」
銀髪の男は口角を上げ、右手に懐中時計を垂らして黒スーツの頬に蒼い炎で包まれた左手をやる。
黒スーツの視界はそこで黒く染まった。
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ジリリリリリ!
朝5時、目覚まし時計の音が部屋に木霊する。
「嗚呼……五月蝿え。」
短髪の男は眠たそうに
目覚まし時計の音を切る。
「5時、か。」
男は眠そうに体を起こすと朝早くから体を鍛え始めた。
1時間も身体を動かすと、
男の目には活気があった。
男はシャワーに入り、身支度をすませると
黒のスーツを身に纏って部屋から出て行った。
バロックシティーー、
中心部の寂れたアパート。
「おはよう、ジェット。」
黒髪でメガネをかけた男が短髪の男に声をかける。
メガネと短髪の男はエレベーターに乗って地下5階のボタンを押す。
「おはようクラウド。
”スーツ”の進捗はどうだ?」
黒髪でメガネをした男、
クラウドは特殊戦闘兵器を作り出す
専門のエンジニアだ。
クラウドは今、民間兵士用のパワードスーツを作っていた。
パワードスーツは衝撃を与えると硬くなる物質を生地の内側に仕込むことにより、
力積の法則からダメージを減らす効果がある。
また、電気信号を送ることによって物質を筋肉代わりに代用することもできるシロモノだ。
「大体40%といったところかな。
まだ電気信号がうまく伝わりにくいところが
ある。」
電気信号を送るためのバッテリーについて問題があるようだった。
「クルマは整備し終えたか?」
2人はエレベーターから降りて二つの部屋を抜けてガレージについた。
「ああ今見せようと思ってたんだ。」
クラウドはガレージの黒いクルマをジェットに見せる。
「加速は10秒でトップに乗る。
最高速度は350キロ、防弾製。
拳銃の弾は疎か、
小銃の弾も通さない仕様だ。」
クラウドは自分の仕事に覚えがあるように
誇りのある顔をしている。
「流石、いい仕事するな。」
クラウドの顔の意図を読んだジェットは
クラウドを褒め称える。
「お褒めにあずかり光栄だ。」
クラウドは機嫌がよさそうだ。
「本当ならこういうのが
使わない状況が望ましいのだがな。」
ジェットが神妙な顔つきになり、
拳を握りしめていう。
「吸血鬼との抗争に終止符が打てる日
が来て欲しいものだな。」
クラウドがメガネをクイっとあげる。
2158年、人間は吸血鬼と争っている。
吸血鬼は腕力やタフさに加え、
特別な能力ー通称”牙”と呼ばれる能力を得ていた。
人間側もかつては気功などと呼ばれていたようなオカルトな技術が科学的に立証され、それを身につけて吸血鬼に対抗していた。
クラウドは少年期に妹を吸血鬼に犯され殺されている。
それも目の前で。
クラウドはその後吸血鬼に対する復讐心を
持って人間でも吸血鬼に対抗できるよう
兵器を開発してきた。
しかし、吸血鬼と争うの中で温厚な吸血鬼や
望んで吸血鬼になったわけではない者もいることを知って今は共存の道に希望を持っている。
『メーデー、メーデー、
G社ビルの屋上で吸血鬼が暴れている模様、
至急S級隊員は向かってください!』
サイレンとともにスピーカーから流れる。
「ここから6キロの地点だ、
まだこいつの出番じゃないかな。」
ボンネットに手をやり、
クラウドは笑ってみせる。
「こちらジェット・ウォーカー、
今向かおう。」
腰のトランシーバーでオペレーターに伝える。
G社屋上、
タタタン!タタタン!
3人の武装兵が物陰からサブマシンガンを撃ち続ける。
屋上の中央に立つ吸血鬼は腰から荊のようなモノを生やして変幻自在に飛んで
弾を避けている。
吸血鬼は仮面をつけていて白いフードの付いたパーカーを着ている。
武装兵の一人の足首を荊で巻きつけ
吸血鬼は自分の方へ引っ張る。
すると吸血鬼は兵の一人を人質にとり、
武装兵にサブマシンガンを撃たせなくした。
吸血鬼と武装兵との間に数分の均衡が保たれていた。
武装兵は相手の要求が分からないので武器を下ろすことにも撃つこともできない。
ドン!ドン!
吸血鬼の足元に弾丸が着弾する。
吸血鬼は人質を撃ってきた方向に向ける。
「そいつ、放せよ。」
黒いコートを着たジェットが貯水槽の上に立っていた。
ジェットの手には大型の自動拳銃がある。
吸血鬼は武装兵の高速を解く。
意外にも吸血鬼は応じた。
ジェットは貯水槽から降りてジリジリと吸血鬼との間を詰めていく。
「お前らは先に帰ってろ。」
目線は吸血鬼に据えたままジェットは武装兵に命じる。
「し、しかし。」
武装兵はバツが悪そうにする。
「邪魔なんだよッ!」
ジェットが怒鳴る。
「は、はい。」
武装兵3人は屋上から退散した。
吸血鬼とジェットとの距離は
10メーター程だった。
どちらから仕掛けるということもなく
時が過ぎていく。
ある時、突然、
糸が切れるように2人が動き出す。
ジェットは吸血鬼に向かって大型自動拳銃を
撃っていく。
吸血鬼は後ろに飛びながら体をよじって弾丸を避け、荊を鞭のようにして
ジェットに攻撃する。
「ングッ!」
ジェットの大柄な体のあちこちに穴が開く。
ジェットが攻撃を受けて怯んだ隙にフェンスに
吸血鬼は荊を巻きつけ、
プロレスのロープのようにする。
そして吸血鬼はロープの反動による高速スピードの飛び蹴りをジェットに与える。
ジェットの巨体は貯水槽に吹っ飛んでいった。
バン!と音を立てジェットは貯水槽に叩きつけられる。
貯水槽は衝撃で穴が開き水がチョロチョロと流れ出ている。
吸血鬼は飛び蹴りから起き上がると
ビルから飛び降りて逃げようとした。
「待てよ、吸血鬼。
終わってなんかないぜ!」
吸血鬼は殺したと思った相手が生きていることに驚いて後ろを振り向く。
後ろには傷一つないジェットの姿があった。
ジェットは腰からトランシーバーを取り出して
通話を始めた。
『クラウド、聞いてるか?
面白い拾い物をしたんだ。
良いセンスしてるぜ!』
『⁉︎おい、ちょっと待てよ。
まさかスカウトするつもりか⁉︎』
吸血鬼は通話しているジェットの首目掛けて
高い蹴りを放つ。
『これも一つの共存の道なんじゃないかッ!』
その蹴りを難なく躱して通話を切るジェット。
ジェットは吸血鬼の至近距離の連撃を先程とは思えないほどの器用さで、
紙一重で避けていく。
ジェットは避けつつ左の拳に
淡く蒼い炎を灯す。
吸血鬼は危険なモノを感じ取ったのか距離をとって荊による鞭の攻撃をする。
(こいつは自分にとって一番ベストなポジション
が中距離なんだな。)
ジェットは攻撃を避けつつ思案した。
吸血鬼が攻撃の速さを上げて距離をとっていく。
すると”一瞬”の内にジェットは吸血鬼を自分の射程圏内に入れる。
吸血鬼は咄嗟に体の前に手をクロスして防御の構えをとる。
しかしジェットの鋭い一撃が突き刺さる。
吸血鬼は衝撃によって後ろに押される。
「ハァハァ……!、ウッ。」
耐えて気を緩めたのか吸血鬼は
ドサッと倒れた。
倒れた吸血鬼をジェットはアジトに連れ帰った。
そして吸血鬼を闇医者”トウドウ”に診せた。
「ジェット、
あの吸血鬼はかなりの重傷だったよ。
背中を大きく斬られていた。
斬撃だから君による傷じゃないだろう。」
「というと手負いで俺と戦ったというのか。」
「イエス、ショックだったか?」
「とんでもない、
期待を良い方向に裏切ってくれたぜ。」
「まぁとにかく彼女に会ってくるといい。」
「彼女?あの吸血鬼は女だったのか?」
「知らなかったのか、
まだ16ほどの少女だよ。」
「………謝礼はそこの封筒に入ってる。
持っていけ。」
「君の動揺は見てて面白いね。」
ジェットの体から滝のように汗が流れていた。
トウドウが帰った後、クラウドがドアを開けて
ジェットの部屋に入ってきた。
「ジェット!
君は正気かい!」
入るなりクラウドは怒鳴り込む。
「この機関は人手が少なすぎる。
俺を”一回”殺せるだけでかなりの手練れだ。
まずA級以上だろう。」
もっともな台詞をスラスラという。
用意してきたようだ。
「信頼は築けるのかい?」
「さあな。」
「ハァ、でその吸血鬼はどこに?」
「空きベッドに寝かしてある。
重傷だったからな。」
「!追われているのかい。」
ジェットが頷く。
「もう僕は関わらないぞ!
君だけで勝手にしてくれ!」
「頼んだつもりはない。」
クラウドは部屋から出て行った。
ここまで。明日来るかも
乙
期待
乙
よっしゃ投下してくぜ!
部屋は美味しそうな匂いで包まれていた。
「?」
少女がベッドから起き上がり、ドアを開けて個室から出る。
匂いのする方向へひたひたと足を動かしていく。
流石は吸血鬼、匂いを辿るのは早い。
匂いのする台所からは牛肉が焼かれている。
食べ頃の色になった牛肉の上にチーズを乗せて
さらにおいしそうに見える。
後ろ姿でしか見えない男は牛肉とチーズを
レタスとトマトが乗っているパンに落とす。
「ねえ。」
少女が男に声をかける。
「ん?ああ、起きたのか。」
ジェットは何一つ表情を変えることなく振り向いた。
「貴方、何故後ろに人が立ってても
平然と入られるの?。」
「俺はオンとオフを使い分けてるんだ。
今はオフ、たとえ俺を狙っている奴がいても
攻撃されるまではオフ。
ホギーはちゃんと君の分もあるぞ。」
「一度くらい殺されたって何てことはない。」
「!……どうして貴方は死なないの。」
ジェットの言ったことで昨晩の屋上での戦闘を思い出した。
少女はジェットを一度殺したはずなのに、
ジェットは生きていた。
「悪魔はわかるかね。」
少女は首を横に振る。
「そうか。一般的に悪魔というモノは
オカルトのように思えるが
実はそうじゃない。」
「人がその存在を信じれば信じるほど
存在が濃くなってゆくモノなんだ。
だから実体がない。概念そのものなんだ。」
「だから俺は死なない。
悪魔と契約したからな。
存在があってないようなものなんだ。」
「まぁとにかく今は冷めないうちにホギーを
食べよう。」
ジェットはトレイに乗せたホギーをテーブルの方へ向ける。
「ホギー?」
少女はホギーを知らないようだ。
「君は肉とか食べられる体質かね。」
吸血鬼は何も血液だけを糧するわけじゃない。
普通に食事することもできるし、普通の食事だけで生きることもできる。
吸血鬼は血液を飲むと性的快楽を得る。
多くの吸血鬼はそれ目的で人間
を襲ったりする。
なかには他の何か目的で吸血する鬼もいるが。
「食事は普通にできるわ。」
トレイの一つをジェットから少女は受け取る。
「そうか。作った甲斐があった。」
2人はテーブルでグレープフルーツジュースと
ホギーを食べている。
「今度は君の話を聞かせてもらおう。」
ジェットが話を切り出した。
「……ここまでよくしてくれたんだものね。
いいわ、話す。」
「私の名前はレイ・アンダー、17になるわ。」
「昨晩暴れたのは追手を
近づけせないようにするため。」
「俺が出てくるのは想定内だったか?」
「いいえ、完全に予想外だった。
本当は騒ぎを起こして追手の目を
くらませるつもりだった。
それなのに逆に返り討ちに
されちゃうんだもの。
参ったわ。」
ジェットがニヤリと笑う。
「君は俺に負けた。
けど君の腕は相当なものだ。
腕に覚えはあったんだろう。」
「前いたところでは私より強い
吸血鬼はいなかった。」
「それだけにショックだわ。」
「君にはまだ伸びしろがある。
銃火器を使ったことは?」
レイは首を横に振った。
「ないわ。必要なかったから。」
「結果的に追手の目はくらませたから
時間は稼げたな。
君の体にはサブマシンガンが
ちょうどいいだろう。」
「食べ終わったら外に出るぞ。」
「歓迎してくれるのね。」
「君には我々の機関に属してもらう。」
ジェットは手をピストルの形にしてレイの顔を指す。
レイは少し驚いた様子で言った。
「選択権はないってカンジね。
……いいわ、貴方の元で
働かせてもらいます。」
レイはにっこり笑った。
ジェットはレイの笑みに心を撃たれた。
その笑みが純粋そのもので。
2人は部屋を出てガレージに向かった。
ガレージにはクラウド調整、改造した黒い車があった。
ジェットは執事のように助手席のドアを開け、
手をシートに向けた。
「ふふっ、なんか面白い。」
「そうかぁ?」
「執事にしては体が大きすぎて、
ボディガードよ。それじゃあ。」
レイは車に乗り込み、ジェットも左の運転席に乗った。
黒塗りの車が灰色の道を走る。
「今日は晴れか。」
日差しが強く差して眩しいのか
ジェットはサングラスを取り出す。
「吸血鬼にとっては嫌な天気だわ。」
ジェットからサングラスを手渡せれレイもサングラスをかける。
吸血鬼は日光で死ぬことはない。
が、不死性は弱まる。
「君が、人間になりたいと思うのなら
いい天気なのかもな。」
「……そうね。」
「少し聞かせてくれ。
君の吸血鬼としての立場、
それと追手の立場に能力とか。」
「……吸血鬼にも国みたいなものはあるの。」
「ああ知ってるさ。
主要3カ国に小国10あるんだっけ。」
「私のいた国が乗っ取られたの。」
「察するに君は王女か?」
「小国のね。
それで、乗っ取りを成した連中が
私に何かされると困るから。」
「追手は顔見知りか?」
「ううん。
全く面識がなかった。
けど恐ろしく強くて、」
レイが自分の両腕をつかんで背中を丸める。
「背後を襲われたわ。」
「正面からやって勝算は?あるか。」
「わからない。
相手の力量が読めない。
底が深すぎて。」
「そういえば君の能力を聞いてなかったな。」
「言わなきゃだめ?」
「ああ。俺のことも教える。
君を裏切ったりする予定はない。」
「……ゴムみたいな荊を具象化する。
名は”Thorn”。
能力は荊を対象に刺して、
一瞬反応を遅らせたり、差のある相手だったら
勝手に操作することもできるわ。」
「具象系統の精神系か。
俺の天敵だな。」
「俺の能力は蒼い炎を左手から出す。
蒼炎は加速や物質同士の”繋がり”
を壊れやすくする。
左手の能力はそれ。
右手は時間をごく僅か操れる。
使用には限度があるが進ませたり遅らせたり
止めたりできる。」
「それで一瞬で間合いに入れたのね。」
「チートじゃない。」
「君みたいな精神干渉系にやられると
”マト”になっちまうから
弱点がないわけじゃないさ。」
「そろそろ着くぞ。」
2人はアパートの地下5階に降りて、
ジェットのオフィスにきた。
「そこに座ってくれ。」
レイが椅子に座る。
ジェットは何やらロッカーから何かを探しているようだ。
コト!
レイの目の前のテーブルにサブマシンガンが置かれた。
「一般的に銃はまず構造を理解した方が
撃ちやすくなる。
公式の証明ができれば難問が
解けるのと同じだ。」
「10分後に一度テストする。
解体して組み立ての練習をしといてくれ。」
「スパルタなのね。」
「君の命がかかってるからな。」
ジェットはオンになったのか真剣な眼差しでレイを見ていた。
そしてジェットは自分は気づいていないが心の奥底で
こいつだけは守り抜かなきゃいけなように思った。
ここまで。
イッテキューみたらチャンカワイのコーナー学校の知り合いしか居なかったでござる。
乙
今後も楽しみにしてる
ハードボイルドぅ
乙
ごめん今日眠くて更新できないかも
「はい、次。
もう一回。」
1度目のテストから2時間後、
レイはジェットのスパルタの元11回目のテストを受けている。
「んっ、ふっ。」
11回目にして部品の場所を把握してきたレイ。
組み立てるスピードは徐々に
上がってきている。
「3分57秒。
次は2分を目指そう。」
「ちょっと休憩しない?」
「だめだ。
感覚が研ぎ澄まされているうちに
完成させるんだ。
ほら、鉄は熱いうちに打てというだろう。
始めるぞ!」
「はぁーい。」
レイが要約1分を切った頃、あたりは夜に包まれていた。
「よし、終わり!」
「はぁー、疲れた。」
「どうする?飯でも食いに行くか?」
「うん!行く行く!」
2人は車に乗って街を走る。
この街、バロックシティは色々な国が集約されているような街だ。
したがって食文化も様々だ。
アメリカンな食べ物に
ヨーロッパを代表する料理、
中華やベトナム料理など東南アジアの食べ物、
日本料理にラーメンだってある。
「レイ、何が食べたい?」
「私中華が食べたい!」
「じゃあそれにしようか。」
食事を済ませて、部屋に帰ってきた2人。
「なぁレイ。」
「なぁにジェット。」
「機関の寮がある。
そっちに住むつもりはないか?」
「……ここに住んじゃだめなの?」
「別にだめってわけじゃないさ、
もしかしたらここで生活するのは
窮屈かもしれないと思ったからな。」
年頃の少女が生活するには
いくら一軒家だったとしても
30半ばの男がいたんじゃ狭い思いを
するだろうという鈍いジェットの
配慮であった。
「私、1年ぐらい連中から逃げてきてたから、
怖いのよ。すっごく。」
「そうか………。」
ジェットはそれ以上声をかけられなかった。
かける言葉が見つからなくて、
彼女を変に傷つけてしまいそうで。
それよりも自分は黙って彼女に帰る場所を提供してあげるべきだとジェットは思った。
翌日朝6時。
「んっ。んああ。」
レイは大きなあくびをして起きた。
「0730には出るぞ、支度しておけ。」
既にジェットは着替えをすませ、スーツ姿で
コーヒーを飲んでいた。
「ん?どうしたぼーっとして。」
「なんかさまになってて
ダンディーだなーって。」
「ブッ。」
ジェットはコーヒーを吹き出す。
そんなことは今まで言われたことがないからだった。
歩く魔人、知能を持った熊などと呼ばれてきた彼は少し気恥ずかしそうに照れていた。
「ジェット、クラウド入ってこい。」
その日、ジェットとクラウドは直属の上司に呼び出されていた。
「ジェット、
君の功績は数々の素晴らしいものだ。
だが、君は同時に数々の問題行動
を起こしている。
先月の無断欠席に加え、
マイアミのストリートレースに参加、
現地の警察に追われてまいたな。
そして、今月同じくマイアミの
ストリートレースで相手のレーサーを
半殺しにしたそうじゃないか!
おまけに今度は吸血鬼を匿っているだと!
それもS級クラスの!
どういう訳か説明してもらおう!」
ジェットの女上司は物凄い剣幕だった。
ジェットの女上司、フェイト・クルーズは
アメリカ空軍上がりで軍人気質のこの機関の創設者であり、現トップである。
「私は、今のこの当機関の人員不足を見かねて
少しでも有望な人材をスカウトすべきだと
思い、ことに及びました。」
「それが吸血鬼であってもか。」
「はい、これからの社会には吸血鬼と
人間の共存が不可欠だと考えております。」
ジェットが横目にクラウドを見る。
ジェットの視線をフェイトは見抜いていた。
「それを決めるのは君達ではない!
政治家の仕事だ!」
「誰が責任を取るんだ?」
「は?」
ジェットが質問を聞き返す。
「誰がその吸血鬼の面倒を見るというんだ!」
ジェットは昨晩レイと話したことを思い出した。
「私であります。」
「わかった。その吸血鬼を呼んでこい。
君達は下がれ。」
「失礼しました。」
2人は上官室を出た。
「レイ、君は今から教官から
何か質問されるかもしれない。
追手が来ているという話は上手くごまかせ。
いいな!」
「う、うん。わかったわ。」
レイが上官室へは行っていく。
レイが上官室に入って30分程した後彼女は戻ってきた。
「何を聞かれた?」
「給料が高いから税金対策しとけって。
詳しいことはジェットに聞けってさ。」
「……よくわからんな。
あの女は。」
「今日から分解と組み立ての
応用と実射にはいる。
テストは続けてやるから
ちゃんと訓練しとけ。」
「イエッサー。」
「いい返事だ。
まずハンドガンの分解から入ろう。
ハンドガンの構造は
サブマシンガンよりずっとシンプルだ。
ちょっと組み立てごらん。」
レイはうなづき組み立て始める。
カタカタ、ガチャ、カチャカチャ
3分程で組み立て終わった。
初めて分解された状態から組み立てたにしては相当早い。
「次にこのハンドガンが
とりあえず撃つことができる
という状態を教える。
このメリットは潜入捜査のとき役に立つ。」
ジェットの真面目な眼差しにレイは真剣に応える。
ここまで。
れいに大人らしさがなくなったのは警戒心を解いたからだと思ってください
なんか洋画っぽい雰囲気
ちょっと誤字が多いけど流すぜ
乙
今日はお休みするぜ!
明日投下する量増やすつもりだからおなしゃす!
あいよ
明日は必ず投下するから許してクレメンス。
学業に追われとるんや
うぜえ
時間のある時でええんやで
レイが期間に来てから三ヶ月が経った。
レイはサブマシンガンの扱いを習得し、
ハンドガンの分解と射撃も物にしつつあった。
ある日、上官室にジェットは呼ばれていた。
「ジェット、君の”ナワバリ”の街は
マイアミだったな。
……マイアミで能力者と思われる
クスリの売人がいる。
現地の警察に協力してこい。」
「クルーズ上官、能力者といえど現地の警察で
対処できないというわけではないと
おもいますが。」
「売人の上に”オクトパス”がいる
可能性があるんだ。」
ジェットの目つきが変わる。
「レイを引き連れていっても?」
「彼女の力が必要になることもあるだろう。
許可する。」
63番線道路、
そこは長い長い荒野が続く。
辺りは暑さを象徴するようなオレンジ色で染まっていて地面は熱で陽炎が揺らめいている。
ジェットの黒い車がまるで影のように
荒野を走っている。
「ジェット、マイアミってどういう街?」
レイが首を横にしてジェットに語りかける。
「俺の、生まれ故郷だ。」
幼年時代から少年時代までのことを頭に浮かべながらジェットは応える。
「両親は?」
「いない。施設で生まれて施設で育った。
お世辞にもいい環境と
は言えなかったがな。」
「だがおかげで社会に対する反抗心と
向上心はあった。
だから士官学校へも行ったし、
首席で卒業することができた。」
ジェットは少し笑みを浮かべながら話す。
「友達は?」
「いる。」
「ついたら君のことも紹介しよう。」
マイアミ、”シルバースプーン”
シャツ一枚のジェットとジャケットを着たレイがカウンターに座っている。
「マスター、”ヤモリ”2つ。」
慣れているようにジェットが頼む。
「ガスは?」
店主がレイを見て言う。
「ロックで。」
店主は紅色のしたドリンクを持ってきた。
「あなたの言う協力者ってどんな人?」
ジェット達はここに来る前に現地の警察の元を訪ねた。
しかし、警察らは応援を要請したにもかかわらずジェット達に丸投げの様子だった。
そこでジェットは親友の力を借りるために
店にきた。
「一言で言うなら、……この街の顔だ。」
「あいつがいるから、
あいつの周りの人間はまともで、
腐らずに入られた。俺も含めてな。」
「ふぅーん。」
レイがグラスを口に持っていく。
カラーんカラーんカラーん
ドアが開いて白髪のゴツいパーカーの男が
こちらへ向かってくる。
「ヨォ、ジェット!」
「イワン!久しぶりだな!」
ジェットとイワンが握手をする。
バヂィ!
そのとき、2人の掌の間で電撃が起こった。
「ッ!……忘れてたぜ”雷砲”のイワン!」
「腑抜けてないようだな。不死身のジェット。」
「先月、こっちに来たんだが
お前東南アジアに
わたってたんだってな。」
「野暮用でな。」
「…そうか。」
「紹介しよう。タッグのレイだ。」
「初めまして。」
ジェットとイワンの2人は静かに目で会話する。
「……ドラッカーを何故お前が始末しない?」
ジェットがイワンに疑問を抱いた。
「オクトパスを1人で相手はできない。」
「警察に俺を寄越させたのはお前か?」
「ああ。」
「わかった。」
イワンのアジトまでイワンの車に
レイとジェットは乗っていた。
助手席のジェットがイワンに話しかける。
「この辺も変わってないな。」
「ああ良くも悪くも楽しい町のままだ。」
「2人はどうやって知り合ったの?」
2人の空気についていこうとレイが2人に聞く。
「レイって言ったか?
こいつとは施設であったんだ。」
「最初はイワンはピリピリしててな。」
「すぐ喧嘩になったぁ。」
過去を懐かしむ2人。
ウーウーー!
後ろから2台のパトカーがサイレンを鳴らさずに近づいてくる。
「……停めるぞ。」
コンコン。
警察官が窓を叩く。
イワンは窓を開ける。
「免許証を見してくれ。」
「ほらよ。」
イワンがカードを差し出そうとした瞬間、
警察官は拳銃を抜いた。
ヒュッ!バスッ!
しかし、警察官の額にカードが突き刺さった。
イワンがアクセルを踏んで車は急発進する。
「オクトパスのお仲間たちみたいだな。」
「まくぜ。」
ハンドルのクラクションの下のボタンを押すと
ブースターが着火された。
パトカーとの距離は大きく離れていく。
「レイ、トランクに行ってくれ。」
ジェットが座席からトランクに入って、
レイを呼ぶ。
イワンがトランクを開ける。
トランクを開けると現れたジェットとレイは
マシンピストルとサブマシンガンを乱射する。
パスパス!
パトカーのタイヤに穴が開き、パトカーは電柱にぶつかって追ってこなくなった。
「ヒュー!」
ジェットが中指を立てる。
イワンのアジトには”オクトパス”と呼ばれる
犯罪者集団を叩くための情報や武器が
揃っていた。
「売人の目星はついてるんだ。」
イワンが壁に貼り付けた黒いロン毛の男の写真を指差す。
「場所もわかってる。
JMっていうクラブに出入りしてる。」
「わかった。」
「明日、仕掛けてみよう。」
「ああ。」
クラブJM。
「イワン、あれがターゲットか?」
「yes、奴が外に出たら抑えるぞ。」
「了解。」
『レイ、君は外で張っててくれ。』
『わかったわ。』
1時間程してターゲットが裏口から外に出る。
「奴が外に出た!」
「追うぞ、ジェット。」
2人が走る。
バン!
裏口のドアを開けるとターゲットはいなかった。
「シット!気づかれたか。」
ジェットが上を見る。
『見逃した。レイ、追ってくれ。』
『目標捉えた。』
レイが屋根を荊で伝ってターゲットを追う。
ヒュンヒュン!
ターゲットは立ち止まり、
青い光弾をレイめがけて撃ってきた。
ドンドン!ドン!
光弾の威力は凄まじく、屋根に穴が開くほどだった。
立ちこもる煙でレイは視界を遮られる。
『目標、見失った。
目標は光弾を撃つ能力を持っている。』
「単純な能力程威力はでかい。
厄介だな。」
イワンとジェットは二方向に分かれて
ターゲットを探している。
「イワン、アレだ。」
「目標捉えた。」
バヂィ!
イワンはそう言うと、片手を前に突き出して
電撃を放った。
ドン!ドン!
しかし、ターゲットに当たらない。
「コントロールも変わってねえじゃねえか!」
「こればかりは、な。」
苦手そうにイワンが苦笑いする。
ジェットが腕時計の針を止める。
カチーン!
イワンとターゲットの動きが止まる。
「手間ァかけさせやがってよぉ。」
ターゲットに近づいて呟く。
「オラァ!」
ターゲットのこめかみに拳が炸裂する。
グワァーン!
時が動き出した。
ターゲットは吹っ飛んでいき、
屋根にぶつかって下に落ちていく。
ジェットとイワンはターゲットの男に近づき、
ジェットとイワンの元へレイが追いつく。
「クックック、HAHAHAHA!」
3人が近寄ると唐突に男は頭から血を流して
笑い始める。
「何がおかしい!」
イワンが青筋を立てて怒鳴る。
「お前らは俺を追い詰めたと
思ってるんだろうな。」
「残念、お前らはタコの足に
つかまっちまったんだよ!」
「タコは獲物を逃さない。
8本の強力な触手はもうお前らの元を
攻撃している!」
「⁉︎⁉︎」
ジェットとレイの頭に嫌な予感がよぎる。
「バロックを攻撃するつもりか⁉︎」
「ブッブー、正解はすでに攻撃している、
でした。」
「おっともう時間がやってきたみたいだな。」
男がいきなり吐血する。
そして、瞼を閉じて動かなくなった。
同時刻、バロックシティ。
大通りのマンホールから手が伸びる。
辺りにはグールの群れで地面は覆われていた。
「あ……」
サラリーマン風の男はグールに噛まれて倒れる。
そしてわずか数分もすると再び起き上がり、
目は紅く染まり、口から体液を漏らすようになる。
バロックのビル群の窓ガラスは粉々になっていて昨日の活気は消え失せていた。
そして同時刻、”どこか”の地下。
「やがて彼らは気づくだろう。
私が再び目醒めたことを。」
黒い影で覆われた男が氷のように冷たい声で
はなす。
「思い出させてやろうジェット。
かつて惨劇を。」
「フーフーッハッハッ。」
布袋で顔を覆われた男の額に
ジェットの特殊部隊自体の写真が
貼り付けられている。
男は光で照らされたナイフを手で滑らかに扱い、ヒュンっとナイフをジェットの顔に投げつけた。
ここまで
ハード展開やな
チャプター2「2人目の悪魔」
煌めいたリングの上で2人の男が殴り合っている。
大勢の観客が彼らの闘いに応援を送っている。
彼ら観客は決して2人の殺し合いを見ているわけではない。
2人の間にある向上心とドラマ、
それに加えて2人の能力を見に来ているのだ。
まさしくそれはスポーツの醍醐味である。
「バット!もっと体を振って逃げ続けろ!
得意のアフターバーナーで翻弄してやれ!」
セコンドから白髪のはいった老人が選手に
喝を入れている。
「フッフッ!」
選手2人はお互いにジャブを繰り出し続け
警戒している。
ラウンドは6つ目、中盤にしては
冷静な試合の運びだ。
バットが突然鋭くターンを切る。
バットのいたスペースには炎の痕しか残らなず
バットが消える。
相手の目はついていけなくなる。
刹那、バットの拳が相手の顎に横から突き刺さる。
相手の体の芯はブレて足から崩れ落ちる。
バットが追い打ちをかけようとすると
レフェリーは止めに入った。
結果相手選手にはレフェリーストップが
かかった。
「勝者、赤コーナー バット・クラッシャー!」
ヒュー!パチパチパチパチ!
新しいチャンピオンとなったバットは
大きな拍手で迎えられた。
勝者にインタビューのマイクが向けられる。
「6ラウンド目、両者お互いに突然冷静
になりましたがどういうことでしょうか!」
「その前に、青コーナーの、
ブレイン・ビーン選手に、敬意を伝えたい。
彼は、とてもすばらしいボクサーだ。
僕の、”アフターバーナー”の警戒が冷静で
付け入る隙を与えていなかった。」
「僕が仕掛けるのを待っていた彼を、
振り切ることができたのは
必然でも偶然でもあった。」
そう言うとバットは控え室に消えていった。
トレーナーと少し話してその日は解散となった。
ドームからバットが出ると外は雨が降っていた。
バットが参った顔をすると携帯がなった。
『チャンピオンでも雨には弱いのね。』
「そんなことはない、きらいなだけだ。」
「傘持ってきたの。」
バットの後ろに少女が立っていた。
「ありがとう。」
2人は通りを歩いていく。
「ディナーは何が食べたい?」
「君の手料理、そうだな、シチューがいい。」
「ふふっ喜んで。」
翌日、バットは朝5時に起きた。
隣には彼女、クレイが寝ていた。
新チャンピオンであれど鍛練は怠らない。
バットはランニングのために
部屋を出て行った。
「ハッハッハッ」
やがて1時間と半程走った後、
バットは帰宅しようとした。
(そろそろクレイは起きて朝ごはんを作ってくれてるかな。)
再び走り出すと後ろから何やら
ゴソゴソと音がする。
バットが振り向くと、
何とマンホールから人の手が伸びていた。
「……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
マンホールから唸り声が聞こえる。
ただ事ではない。
バットが身構えるとマンホールから
身体のようなものが現れ始めた。
人ではない”何か”、
瞳は紅く染まっていて口からは牙のようなものが覗かせる。
ダッ!
すると”何か”がバットへ走り出した。
バットは思わず距離をとっていく。
”何か”は爪を使ってバットに襲いかかる。
”何か”は爪を使ってバットに襲いかかる。
シュゥゥゥゥゥ!
バットの片手を蒼い炎が包み込む。
バシュ!
バットの拳は目で捉えることのできない
スピードで”何か”の撃ち抜く。
それはまるで弾丸のように。
「ハァハァハァハァ」
グールだ!
グールとしか思えない!
お伽話のような展開にバットは驚き焦る。
急いで戻らないと、
クレイが無事ではないかもしれない。
先程までのスピードの比ではないような高速スピードで帰路へ向かう。
急いで部屋へ戻るバット。
バン!
「クレイ!」
「ん…なぁに?」
寝惚けた様子でクレイが返事をする。
「マズイ、マズイ、マズイ!」
「グールだ!グールが出たんだよ。」
「ハァ?」
「嘘でしょ…」
クレイはベランダから覗いた世界に驚いた。
街は腐ったような化け物が歩いて
人を襲っている。
「クレイ、準備できた。」
すっかり落ち着きを取り戻したバットは
既にリュックに
グローブ、バンテージに日用品、非常食を詰め込んでいた。
「う、うん。」
クレイは二丁オートマチックとリボルバーを
腰のホルスターに挿して部屋を出た。
ドルルルルルル!
バットのハーレーが雄叫びを挙げる。
2人はバロックシティ中心部を目指して姿を消していった。
乙
バロック中心部へ向かう2人。
「人一人いないぜ。」
「みんなグールになっちゃったのね。」
「いや、グールさえもいない。
どういうことだ?」
グールは音と人の匂いにつられる。
これは幾つかの戦闘で学んだことの
1つだった。
バット達のバイクは無音ではない、
むしろ爆音と形容していいほどの音だ。
どう考えてもおかしい。
本来ならグールが集まってくるはずなのに
1人もいないのだ。
「…!、
おいありゃ車か?」
バットが黒い車を見つける。
「人が2人、男と女。
私達と同じよ!」
車のボンネットに大柄で葉巻をくわえた男と
黒髪で黒のライダースーツを着た若い女が
座っていた。
「あんたら、グールがどうして
この辺にいないか知ってるか?」
バットが質問する。
「……俺が片付けた。」
葉巻をくわえた男が煙を吐きながら答える。
「少し違うな。
お前はチャンプの
バット・クラッシャーだろ。」
「俺を知ってるのか?」
「ボクシングのチャンピオン
ぐらい知ってるさ。」
「俺の名前はジェットだ。
この異常事態の原因を、知ってる。」
ジェットが手を差し出す。
「バットだ。よろしく。」
バットはジェットを警戒しなかった。
ジェットの冷静で落ち着いた姿からは
敵対心が感じられなかったからだ。
「……吸うか?」
ジェットが葉巻をバットに差し出す。
「悪いな。吸わないんだ。」
「あたしがもらってもいいかしら?」
「バットの連れのクレイ・シーマ、
大学で薬学を学んでたわ。よろしく。」
「よろしくな。」
「あっちににいるのがレイだ。
吸血鬼なんだが心配いらない。」
「……そうか。
あんた強いんだな。」
「どうして?」
「たくさん人を殺してきた目、
殴り慣れて大きくなった拳、
敵味方を判別し、
適切に情報を与えようとする脳、
そしてそれら全てをものにする精神、
ってとこかな。」
「あとはあんた俺と”同類”だろ」
バットの目はジェットの目を捉えている。
まるで獲物を捉え、狩りに行くような目で。
「……気づいていたか。
そうだ、俺とお前は”悪魔”。
不死身ってヤツだ。」
バットが視線を下に落とす。
「初めて見たね、”同類”のヤツは。」
「自分の正体を知って驚いたか?」
バットが首を左右に振る。
「いや、嬉しいさ。
自分の強さの根底を
知ることができたんだ。
こんなに喜ばしいことはないよ。」
再びバットの視線はジェットの目に行く。
シュゥゥゥゥゥ!
バットは拳に炎を纏う。
「この、蒼い炎もあんたは持ってるのか。」
「ああ、同じ炎だ。
だが、炎はそれぞれ別の特性を持つ。」
「俺の炎はさしづめ”時間”の象徴かな。」
「……時を止めるとかってことか?」
「そうだ。回数は限られてるけどな。」
「じゃあ俺はなんだろうな。」
「使っていけば気付くさ。」
「他にも同じ能力を持つ奴はいるのか?」
「確認できるだけでもう1人いる。
そいつは”製錬”だったかな。」
「バット、俺たちはこれからアジトに行く。
アジトが無事残ってるかは
わからないがな。」
「一緒に来るか?」
「お言葉に甘えて同行させてもらうよ。」
こうして悪魔2人と吸血鬼1人、人間1人の
チームができた。
地下5階、上官室。
「クルーズ上官、監視カメラが作動するものを
確認しましたが生き残っている人間は
確認できませんでした。」
クラウドがメガネを支えながら発言する。
「わかった。
クラウド、下がっていい。」
フェイトの顔は帽子でよく見えない。
「イエス、マム!」
クラウドが部屋から出ると葉巻を強く握り、
フェイトは苛立ちは隠そうとしなかった。
すまんな遅れて
純粋に発想が出てこなかったんや
無理せず行けや
乙
土曜に更新します
あいよ
「只今、ジェット及びレイS級隊員は
帰還いたしました。」
レイとジェット、それにクレイとバットが
上官室のデスクの前に立っている。
「随分と長い旅だったじゃないか。」
覚めた声でクルーズはジェットの目を
見据える。
「状況報告をしろ、ジェット。」
「我々2人と協力者一名で現地の薬物売人を
追っていました。
売人は”ghost”所属のテロリスト
でありました。
また、我々にバロックの惨劇を
示唆していたことから、
”ghost”は今回のパンデミックに
なんらかの関与は確定的で
首謀者としての疑いがあります。」
「……目覚めたと思うか?」
「……ヤツァ目覚めてますよ。
とうの昔に。」
ジェットは首筋に手をやる。
「首筋に感じるんです、奴の冷たい風が。」
クルーズは視線をバットとクレイにやる。
「そこの2人は?」
「バロックへ帰還中に遭遇しました。」
「どうして拾った?」
「片割れは私と”同じ”です。」
「3人目か!」
クルーズは驚いた目をする。
「ええ。」
「わかった。2人には部屋を用意する。」
「では、失礼します。」
「マイアミで何があった?」
後ろから声をかけてきたのはクラウドだ。
すっかりやつれてしまって
多忙なことが伺える。
「そろそろだ。奴が動き出す。」
ジェット
「!……世界が変わっちまうのか。」
「もう変わってきてるさ、十分にな。」
「”鍵”が表舞台に上がりすぎだ。
女帝の荊に、3人目の悪魔、
おまけにカタストロフィの序章だ。」
「今なら勝てるかい?」
「わからん。
たったの一度でさえ奴の根底を
見たことがない。」
「勝算のないまま舞台の幕は
上がりつつあるというのか。
フッ、せっかちな神様だな。」
「笑えん冗談だ。」
「冗談はそこまでにして、
ジェット、君は本来ならもっと早く
戻ってこなければならなかった。」
突然、クラウドが神妙な顔をする。
「?」
「これを見てくれ。」
ノートパソコンをジェットに見せる。
ディスプレイには幾つかのカメラの映像が
映っていた。
映像には黒のサングラスに黒のスーツを着た
サラリーマンらしき男らが多数いる。
なんとも異様だ。
「爆発的に増えたグールがここ2、3日で
明らかに減った。
いや、減ったというより消えた、という方が
適切かもしれないな。
残骸すら残っていないんだ。
代わりにこいつらが増えた。」
「十中八九”ghost”関連だろうな。」
「ああ、それと君に
プレゼントしたいものがある。」
「サプライズか?」
「喜べジェット。」
クラウドがアタッシュケースを
ジェットに渡す。
「中身は君専用、ハンドガン。
といったところだ。
もちろん君が以前使っていたアレと重量は
変わらない。」
「期待して良さそうだな。」
「それと例のパワードスーツも完成した。
君には勿体無いし、レイにも不必要だろう。
バット君にプレゼント
させてもらおうかな。」
「それがいい ドーン!
突如上階から爆発音がする。
「お出ましのようだな。」
「僕は司令室に、きみはバットと上階で合流、
それを渡してやってくれ。」
「わかった。」
一階、玄関口。
黒服の男らがゾロゾロと割れたガラスが散乱しているエントランスにいた。
ちょっと眠いからここまで
その代わりまた明日きます
黒服集団つうと、エージェント・スミスを連想するな
乙
>152俺もそうゆうイメージで書いてる。
そう「い」う、な。
地の文で文章書くんなら、もっと国語の勉強した方がいいよ
>154その通りだな、俺国語1なんだ
ずかずかと黒服らはエントランスを抜け、
一方はエレベーターの方へ
もう一方は非常階段へ向かう。
ピンポーン!
エレベーターが一階に着く音だ。
エレベーターが開くと木の椅子の上に
クマのぬいぐるみが置いてあった。
ぬいぐるみの下には
”l couldn't welcome you .”
pppppppppp!
ぬいぐるみから次第に早くなる電子音が
鳴り響く。
p!
bomb!
燃え上がる炎と轟音が
エレベーターからエントランスへ突き抜ける。
黒服らは強く吹き飛ばされ、
12名のうち3人が機能を停止していた。
「ハロー、汚いネズミども。
指向性爆薬は美味しかったかな。」
白のコートに身を包み、
二丁の銀色の銃を持った悪魔は
不気味な微笑みを湛えていた。
先にスーツを受け取ったバットは
屋上にいた。
「準備オーケー、どっこらでも来い。」
両手を互いに打ちつけ、
黒服を待っている。
ギィ、ギィ、ガッ、ガッ、
屋上のドアが軋んでいる。
バキッ、ドン!
ドアを破壊して7人の黒服らが現れる
黒服は顔を歪ませながら、バットへ向かう。
バキッ!
先手を仕掛けたのは黒服だった。
しかし、繰り出されたパンチを
バットは片手で受け止めている。
それは避けるまでもないという
バットの挑発のつもりだったが、
黒服には効かないようだ。
ブン!
もう2人の黒服が攻撃を仕掛けると
今度は受け止めることなく、
バットは姿を消す。
バットの姿は常見えない、
金属音のような残響と
揺らめく陽炎はまるで
高速戦闘機のようだった。
ビッ!ビッ!ビッ!ビッ!
やがてを姿が見えるようになると
黒服の攻撃はかすりもせずに
鋭いラッシュを始める。
何度か吹き飛ばされる黒服だが、
黒のスーツが破けるだけで
攻撃は効いていない。
少し黒服と距離を取って足で
リズムを取り始めた。
「ふーん、
銃弾が効かないように出来てるんだからな、
そりゃこれじゃ効かないか。」
「…じゃあこれはどうかな。」
グッと足に力を込め、
しっかりと地面に足を置く。
ダッ!
今度は目に見える速度で、
しかしそれでもとんでもない速さで
1人の黒服に接近すると、
バゴッ!
およそ人の拳では発することはないような
音を立てて重い一撃を撃ち込む。
すると、黒服の体は拳によって貫通し、
中から配線が飛び出る。
「…サイボーグ?
いやロボットか。」
バットは残りの黒服の方へ向く。
「へへへ、
俺はスピードスターのように
思われてるけどよォ、
人相手には効きすぎちゃうから
パワーを封印してるだけなんだよなァ。」
「まぁ、こんなことを言っても、
お前らロボットには
伝わんねえだろうなァ。」
「一匹も逃さねえ、見せてやるぜ。
地獄のリングをよォ!」
それから黒服はなす術もなく、
バットの手によって一体も残さず破壊された。
はい、ここまで。
真面目な話本読むけど国語の成績とかって上げ辛くないですか?
金曜ロードショー感
「国語の成績」なら例題のルールの把握と丸暗記
「国語力」なら、しっかりとした文章を大量に読む、だね
何も考えず勉強もしないで本読んでも国語の成績上がんないよ
日付超えたあたりで投下します
みんな親切に答えてくれてありがとう
やっぱり明日多めに投下します
あいあい
乙
おつ
おつ
ほ
ほ
ほ
ほ
0728
ほ
しゅ
ほ
syu
★
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