【モバマス】藤居朋「占いの力」 (22)
こんばんわ。オリPでございます。
今度21日にオリックス×楽天を現地行ってまいります。今なら勝てそうな気がする…!
予定していました、「バファローズポンタ?」はもうしばらくお待ちください。
色々書きたいことが多いのですがそれは最後にして、
今回のSSは地の文を入れております。
それではお付き合いのほどよろしくお願い致します。
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朝――
小鳥のさえずりと携帯のアラーム音で目が覚める。
俺はアラームを止めて、身体を起こす。
「ふあーーーあ」
大きなあくびをしてゆっくりと頭を覚醒させる。
「おーい。P起きてる?」
部屋のドアを誰かがノックする。声は女性。若い少女の声だ。
「ああ。起きてるよ。少し待って……」
俺はすぐに寝間着から学校の制服に着替える。グレーのブレザーにやや薄いグレーのシャツ。スラックスもグレーでネクタイはない。公立の学校でネクタイがない学校は俺の通っている高校だけだ。
着替えと学校へ持っていくバッグを持って、下へ降りてリビングへ向かう。
「おそーい。あたしが着たらもうここにいるようにしなさいよ」
リビングのソファーを我が物顔で座る少女。俺と同じ色のブレザーにシャツ、スカートを身に纏い、やや白みがかった黒色の髪を後ろで一つに縛ったポニーテールを持つ少女。
「ひとんちでくつろいでいる人間が言う言葉か?――おはよう。朋」
「毎朝あんたが寝坊しないように心配だから身に来てやってんの。――おはようP」
朋――藤居朋と呼ばれた少女が最初はムッとした表情だったが、すぐに笑顔に変わる。年相応の笑顔に俺は頬を緩ませる。
「朝ごはん食べたか?」
俺は冷蔵庫に向かって歩き、今日の朝食を物色する。
「ええ。今日のラッキーアイテムは白米だったから、食べてきたわ。P、あんたのラッキーアイテムは――」
朋は占い大好き少女。いつも占いを気にして、その通りに行動する。
「俺はいいよ。そういうの信じないから」
冷蔵庫から牛乳を、パントリーから未開封の食パンを取り出し、トースターに放り込む。コップに牛乳を注いで一気に飲み干す。
「あら、あんたの運勢占ってあげようか?」
そう言って朋は、俺の顔をじっと見つめる。
「忘れ物に注意の相が出てる!P、今日の英語の課題やってる?」
「はあ、英語の課題?…なにそれ?」
俺はキョトンとした表情を浮かべる。後ろからは食パンが焼きあがる音。
「昨日、先生から言われたでしょ。あんたが寝ていたから、一応授業終わって範囲教えたけど、まさかやってない?」
俺はバッグから英語のワークブックを開く、そこには乱雑な文字で今日の日付、範囲で2ページと書かれてあった。その部分はまったくの白紙。
「やってない……」
俺のこの言葉に朋は大きなため息をついた。
「はあー。で、どうするの?」
「…朋、課題写させてくれない?」
「駄目に決まってるでしょ。そんなことしたら課題の意味ないでしょ。早くご飯食べてやればいいじゃない」
「お願い!この通り!」
俺は恥も外聞もなく、両手を前に合わせて頭を下げる。
「そうねえ……。見せてもいいけど、今度から少しあたしの言うこと聞きなさいよ」
「ありがとう!」
「早く食べて学校行くわよ。課題写すのも時間かかるんだからね」
俺はすぐにトーストを食べて身支度を済ませて朋と一緒に学校へ行く。
「全く……。P、そんなんで学校の勉強大丈夫なの?」
「まあ、それなりには……」
俺の成績はお世辞にも良くない。赤点を回避するのにやっと程度の学力しか持ち合わせていない。
「部活やってるのなら分かるけど、帰宅部でその成績じゃみんなから笑われるわよ」
朋の正論に俺は何も言えなかった。
「おばさんも少し心配してるわよ。『寝てばかりいるけど、朋ちゃんあの子勉強は大丈夫なの?』って」
「返す言葉もこざいません……」
一方的な朋の言葉に俺はだんだん小さくなっていく。
「おはよーございまーす!」
後ろから大きな声がかけられる。
朋と同じ制服を着て、髪型は茶色のショートボブ。前髪を眉毛の少し上の位置で整えている。
「おはよう忍ちゃん。今日も元気だね」
朋が挨拶をする忍は工藤忍と言い、彼女は朋の部活の後輩だ。朋いわく、忍はすごく真面目で頑張り屋だそうだ。彼女とは朋を介して話す程度で二人きりで話すことはほとんどない。
「おはようございます!朋先輩!P先輩!」
「おはよう。忍ちゃん」
「忍ちゃん。今日も元気ね」
「はい!私は元気だけが取り柄ですから!」
ごめんなさい。いまさらですが、
・Pは高校生。
・藤居朋と同級生
という設定で行っています。ご了承くださいませ。
三人で学校までの道を一緒に歩く。
「今日、ずいぶん早いんですね」
忍は毎日この時間帯に登校するが、俺と朋はいつも遅刻少し前くらいになる。
「Pが課題全くやってないっていうから、無理やり連れてやらせるの。機能も英語の時間寝てるんだから……」
「すいませんでした……」
Pが頭を下げると、忍が微笑んでいた。
「いいなあ。こうして仲の良い人とずっと一緒って言うの羨ましいです」
「忍ちゃんは……。転校生だったもんね」
「はい。青森からこっちに来て、一人だったんですけど。クラスメイトも、先輩もいい人でよかったです」
そこで忍は何かを思い出したように、
「あ、朋先輩がいつも言っているんですよ。『どうしたらP先輩は』――」
「ああああ!ほら、P!課題写すんだからさっさといくわよ!」
忍の話を朋が大声を上げてさえぎって半ば強引に手を引っ張る。
「どうしたんだよ。まだ時間あるだろ?」
「Pはとろいんだから、さっさとやらないと間に合わないでしょ!あたしの占いでは今日当たるわよ!」
「やべえ。急がなくちゃ……」
俺と朋は少し足を速めて学校へ向かった。
教室に着くなり、俺はすぐに机に座って朋から課題を借りてそれを写し始める。
――こういうときに、優秀な幼馴染がいると助かる……。
俺は朋の方をチラッと見る。クラスメイトと仲良く談笑している。
課題の写しは十分ほどで終わり、俺は朋が席に戻ってくるのを待って課題を返す。
「その手際のよさをもう少し勉強に使いなさいよ……」
朋の小言に俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。
放課後――
部活がない俺はそのままバッグに筆記用具だけを入れて帰ろうとする。
「あ、P。ちょっといいかしら?」
朋の方から俺に話しかけてきた。
「占いによると、今日の夜はうちに来るといい事が起きるらしいわ」
「それ占い関係ないだろ……。お袋、帰りが遅いって?」
「そうみたい。だから7時になったらうちに来て夕飯食べていかない?」
朋のお誘いに俺は反射的に身を乗り出してしまった。
「いいのか!朋のお母さんの作るご飯美味しいんだよな。楽しみだ」
「…それじゃあ伝えたから、コンビニで余計なもの買い食いしないよーに!アンラッキープレイスだからね!」
「当然だ!――今日は何を作ってくれるんだろうな。ハンバーグ?オムライス?うーん。楽しみだ」
夢見心地になっている俺を朋は見捨てて去っていった。それから我に返ったのは数分後。俺を呼ぶ声からだった。
「P先輩!P先輩ったらー!」
俺を呼ぶ声がしたので、声のするほうを見ると俺を呼んでいたのは、なんと忍だった。
「あれ?忍ちゃん。朋はもう部活に行ったけど?」
「あの……。P先輩に用があってきたんです……」
忍が挙動不審でそわそわしている。
「俺に?」
「少しお時間ありますか?すぐ済みますので」
「ん。別にかまわないけど……」
「じゃあ、少し場所を変えさせてください」
そう言われて俺は忍の後を着いていった。
連れて行かれた場所は、特別教室棟の二階。ここは化学室や家庭科室などが入っているため人気が全くない。
「それで俺への用事って?」
「P先輩は、朋先輩と付き合っているんですか?」
予想外の質問に俺は一瞬呆気に取られてしまった。
「いや、俺と朋は幼馴染だから、そういう関係じゃない」
「そ、そうなんですか……」
忍は少しほっとしたような表情を浮かべている。
「それがここに連れてきたのと関係があるのか?」
俺の質問に篠は黙って、深呼吸をし始める。
「P先輩。あたしと付き合ってくれませんか?」
「いいよ。どこに行くんだ?」
「そういう意味じゃありません!」
忍はひとしきり怒ると、もう一度大きく息を吸って、
「P先輩!あたし、あなたのことが好きなんです!あたしと付き合ってください!」
忍の告白に俺は驚いて固まってしまった。頭が真っ白になってしまった。
「先輩?」
「あ、ああ……。参ったな、俺そんなこと言われるなんて思いもしなかった……」
「ダメ…ですか?」
忍は今にも泣きそうな表情をしている。彼女なりに精一杯の勇気を振り絞ったのだろう。それにきちんと俺も答えなければいけない。
「うん。忍ちゃん。俺と付き合おう」
それを聞いたときの忍の顔はぱあっと花開いたかのような笑顔だった。目には涙をためて今にもそれが零れ落ちそうになっている。
「嬉しい……。本当に私、P先輩の彼女になれたんですよね?」
「そうだよ。これからもよろしく。――そうだ。一緒に帰ろうよ」
「でも先輩は今から帰るんじゃ……」
「そうだけど、恋人同士だから一緒に帰りたいじゃん」
俺の言葉に忍は恥ずかしそうにはにかんだ。
「分かりました。じゃあ、待ってますね」
「うん。部活がんばれよ!」
「はい!」
忍は俺に向かって手を振って、駆け足で部活に向かっていった。
「さてと……。俺はどうしようかな?」
恋人ができて、一緒に帰る約束した以上、待つのが当たり前。だが、忍の部活が終わるまでの時間をどう過ごそうかとなってしまう。
今朝、課題の存在を忘れたことで朋に迷惑をかけてしまった。忍の彼になった俺は頼る存在から、頼られる存在になる以上、このままではいけないと思った。
「……図書室で、課題を終わらせようか」
図書室は入学直後の施設紹介以降、全く言ったことがない場所だった。中では先輩だろう、勉強をしている生徒がそれなりにいた。
俺は邪魔にならないよう少し離れた場所に座り、今日出された数学と現代文の課題に取り組んだ。
「まあ、こんなものかな……」
課題を片付けてその上、明日やる科目の予習もすべて終わらせた。
――意外にやるじゃん。俺……。
にやけた顔を見られないようにしつつ、時計に目をやるとちょうど忍たちの部活が終わる時間が近くなっていた。
忍と朋の部活は屋内で行うため、昇降口で待っていれば必ずやってくるためここで待つ。
程なくして、忍と朋が二人仲良くやってきた。
「あら?Pがまだいるなんて珍しいわね。あたしの占いを読んだのかしら?」
「先輩!帰りましょう!」
忍が嬉しさのあまり、俺の隣に一足先にやってくる。
「ん?」
朋が忍の様子が変わったことに顔をしかめていた。
「二人ってかなり仲良かったの?」
「え、ええっとな……」
「あたしたち付き合うことになったんです」
どう切り出したらいいか悩んでいた俺の隣で、忍がさらっと切り出した。
「え?二人は恋人なんだ……」
「はい!」
一瞬、朋は寂しそうな表情を二人に見せたがすぐに笑顔になって、
「全く忍ちゃんはどうしてこんな奴を好きになったのか不思議よ。P。忍ちゃんを悲しませたら、ただじゃおかないって占いに書いてあるからね!」
いつもと変わらない朋を見て俺はほっとする。
「分かってるよ。いつまでも、朋に頼られてばっかじゃいけないからな」
「先輩頼もしいです」
忍がそっと俺の右手を握った。それを感じた俺はつい頬が緩んだ。
「さーてと。お邪魔虫は退散しますね。P。忘れないでくるのよ」
「おう!また後でな」
朋が先に帰って見えなくなったのを確認して、
「夜、朋先輩と何かするんですか?」
「ああ、夕飯を食べる約束をしているんだ。お袋が帰りが遅いからって言われてたらしい」
「そうだったんですか……」
「さてと、暗くならないうちに帰ろうか。近くまで送るよ」
「はい!」
それから俺は忍のことを知るために色々聞いた。お互いに聞きたいことを聞いてあっという間に忍の家の近くまで来ていた。
「先輩、また明日……」
握っていた手を離して、忍は手を振って俺との別れを惜しんだ。
そして俺は自分の家に帰らず、朋の家に直接向かう。チャイムを鳴らすと、朋の声がインターフォン越しに伝わる。
「入っていいわよ」
「お邪魔します」
ドアを開けると、朋が出迎えてくれた。
「お帰り。直接きたのね」
「ああ。待たせるわけには行かないからな」
リビングに入ると、朋のお母さんも出迎えてくれる。
「いらっしゃい。ささ、温かいうちに食べましょ」
朋のお母さんに促されて椅子に座る。
「今日はP君の大好物のハンバーグだからいっぱい食べてね」
「やったー!いっただきまーす!」
俺は大好物で周りを見ず一気に食べていく。
「ごちそーさまでしたー!」
あっという間に食べ終えて、食後のまったりタイムを満喫していた。
「ふふふ。お粗末さま」
「ねえP」
朋が話しかけてくる。
「今日のハンバーグ美味しかった?」
てっきり忍の事を聞かれると身構えていたが、別の話題だったのでほっとする。
「あれね、あたしも手伝ったのよ」
「へえー。どのあたり手伝ったの?盛り付け?」
それを言った瞬間、朋の平手が俺の頭を直撃する。
「いて……」
「そんなわけないでしょ!きちんと一から手伝ったわ!」
その拍子でもう一発。痛い。
「やっぱり教えてもらう人が上手いと、美味しくなるよな。朋もいいお嫁さんになるなー」
「え?ほ、本当?」
「おー。ハンバーグだけじゃなく、ほかの料理も学ぶと吉かもな」
「あたしの言葉を取るなー!」
もう一発、帰り際にもらった。
誰もいない家に帰って、シャワーを浴びる。
静かな家のリビングに明かりをつけて、テレビを見る。十時を過ぎて見るものがないため、ニュース番組を出して着信が入っている携帯を見る。メールが二件入っていた。
一つは忍。そしてもう一つは朋だった。
先に忍のメールを開ける。P先輩へ。とタイトルがある。
『P先輩!あたしとても嬉しかったです!こうして先輩と恋人の関係になるなんて思ってみませんでした!明日から一緒に学校行きましょう!先輩の時間に合わせますので、何時ごろに今日のあの場所に向かえばいいですか?不束者ですが、これからよろしくお願いします』
――ついに、俺にも恋人ができたんだな!
俺は嬉しくなってすぐに返信する。大体の時間を教えて、今の率直な感想を書いて、返信する。
「さてと、朋はなんだろうな。やっぱりあのことなのかな……」
無題のメールを見るのが少し嫌だったが、覚悟を決めてメールを表示する。
『P。もう寝たかしら?明日も学校だから、しっかり起きてるように。あたしの占いによると、今日のうちに課題を終わらせておくと吉のようだから、やっておくように!おやすみ!』
いつもの調子のメールにまたしてもほっとする。『ありがとう。朋も早く寝ろよ。』と返信すると、すぐにメールが来る。変身は忍からだった。他愛のない
メールを繰り返すうちに俺のまぶたは重くなってしまった。
次の日――
「こらー!P!いつまで寝てるの!」
朋の絶叫で俺は目が覚める。
「おはよう」
満面の笑みを浮かべて友が立っていた。
「あたしのメール見てくれたかしら?」
俺はすぐに携帯を見る。時刻は七時半。いつもの時間より早い。メール画面を見ると、受信メールは忍のだけだ。
「ん?朋からはメール着てないけど」
「昨日のよ!早く寝なさい。課題やった。どうかしら?」
「え?やって――」
その言葉を待たずに朋は俺の手を引っ張る。
「ほら!さっさと行くわよ!」
「ええ!どこに?」
「学校に決まってるわよ!」
引っ張られるがままに俺は玄関に向かう。
「弁当と朝、まだ食べてないよ!」
「今日の占いでは、学校でお弁当食べると吉だから。私が作ったからそれでいいわよね!」
朋の気迫あふれる言葉に俺は何も言えなかった。
「あ!忍ちゃんに先に行くってメール――」
「それどころじゃないでしょ!」
忍にメールを送ることもできず、そのまま学校へ向かうことになってしまった。
学校に着くや否や、すぐに課題を持ってきて朋が対面に座って睨み付ける。
「私が教えるからやりましょう。今日の占いによれば、親しい幼馴染の助言はラッキーキーワードだから」
「その前にメール――」
「駄目。終わってからメールしなさい」
「と言うか、俺課題終わってるんだけど!」
それを聞いた朋は驚いた表情で俺を見ていた。
「え?ご、ごめんなさい。あたし、てっきりやってないと思って……」
「まあ、俺もあそこで寝ていたらそう思われても仕方ないよな。こっちも悪かったよ。それで、朝ごはん食べたいんだけど……」
「う、うん!少しまってて……。はい!」
朋が出してくれたのはアルミホイルに包まれたおにぎりと卵焼きだった。出来立てなのかほのかに温かい。
「美味しそう。これはお母さんが?」
「いいえ。あたし。今日のラッキーアイテムは手作りしたものだからね。ほら食べた食べた」
朋が見ている中、俺は彼女が握ってくれただろうおにぎりを頬張る。
「ど、どうかしら?」
「うん。美味しいよ。でも、ちょっとしょっぱいかな?」
「Pは少し薄めのほうがいいのね」
「まあね」
それから俺は朋と少し遅めの朝食をいただいて、すっかり大事なことを忘れてしまっていた。
「ほらP。行くわよ。早め早めの行動が幸運を招くのよ」
「お弁当あるんだから一緒に食べるわよ」
「今日こそ、しっかり課題を終わらせる!それがPの幸運を呼ぶ行動よ!」
気がつけばずっと朋と一緒に行動していた。忍の連絡に気がついたのは帰宅後、いつものように朋と夕飯を終えた頃だった。
「しまった……」
受信メールには忍の文字で埋まっている。未開封メール15通。今日一日中、彼女を放置していたことになってしまった。
「やばい……」
すぐに電話をしようと俺は携帯を持ってリビングを出ようとしたときだった。
「待って」
朋に手をつかまれてしまう。
「どこに行くのかしら?」
「忍ちゃんに電話する。今日、全然連絡取れてなかったし……」
「今日の占いによると、ラッキーパーソンは幼馴染よ。恋人よりも幼馴染を大事にすると――」
「もういい加減にしろ!何だよ占い占いって!俺がいつ頼んだ?お前のやってることは全部俺を縛っているだけじゃないか!俺は悪いけど、お前より忍のほうが大事なんだ!」
今日のたまりにたまった鬱憤をここで爆発させた。そのときの朋の表情はおびえていたが、俺はそんなことどうでも良かった。
「俺と忍ちゃんが付き合っているって知っているだろ!それなのに、どうして?おせっかいを焼いてくれるのは嬉しいけど、俺のことを放っておいてくれよ!」
朋のつかんでいる手を振りほどいて俺は自室に入る。乱暴にドアを閉めて、すぐに忍に電話をかける。
『もしもし?』
「ああ、忍ちゃん。今日はごめん……」
「P先輩……」
予想通り、忍の声は暗い。せっかく恋人になったと言うのに、彼氏から一切連絡がなければ落ち込むだろう。
「今朝の件も全部ひっくるめて、申し訳なかった。全部俺が悪いんだ」
『私もすいませんでした。先輩もお忙しいのに、色々メール入れて……』
「いや、全部俺が悪い。――そうだ。今週末、一緒にショッピングモール行かないか?」
「え?それってデートのお誘いですか?」
つい反射的に言ってしまったが、そうなる。男女が二人っきりで遊びに行くのは立派なデートだろう。
「もちろん、部活がなければだが、どうだ?」
『ちょっと待ってください……』
電話の奥で紙が刷れる音が聞こえる。手帳でスケジュールを確認しているのだろうか。
『お待たせしました!えっと土曜日は午前中に部活が終わるので、午後からならいいですよ!』
「分かった。じゃあ、土曜日の午後に」
『はい!それでは!』
最後の方はしのぶも明るい声になっていて俺はほっとした。それにしても、
「初デートだ……。楽しみだな」
そう言って俺は何気なく、背後にあるベッドの方に眼をやった。
「……」
後ろにあったのはベッドではなく、不気味な笑みを浮かべた朋だった。
土曜日午後――
「遅いなー。先輩……。もう集合時間十分過ぎてるよ……」
P先輩が設定した集合場所に集合時間よりも少し前に着いたけど、彼はまだ来ない。またすっぽかされてしまったのだろうか。
「せっかくオシャレして、可愛いって言ってもらいたくてがんばったのに……」
「あら?忍ちゃんじゃない」
あたしを見つけて声をかけて来る人がいる。参ったなあ。これからデートなのに。
顔を上げると、朋先輩だった。
「朋先輩!お疲れ様です!」
「お疲れさま。今日は午後から遊ぶ予定だったの?もしかしてあたしお邪魔かしら?」
「い、いえ。そんなことないですよ。奇遇ですね」
「そうね。これから何するのか分からないけど、あたしが占ってあげる!」
そういって朋先輩は勝手に占い始める。この人は本当に占い好きだな。と苦笑してしまう。
「――出たわ!忍ちゃんのラッキープレイスは彼氏の部屋ね!」
「え?」
「何か新しい発見があるかもしれない。それは良いことなのか悪いことなのか分からないけど……」
もしかしたら先輩は寝過ごしているのかもしれない。そう考えれば、連絡がつかないも頷ける。
「と、朋先輩!P先輩の家を教えてください!」
「どうしたの?」
あたしは朋先輩に事情を話す。朋先輩も多分P先輩の子と好きだったはずだけど、応援してくれるはず。
「分かったわ。付いてきなさい」
「ありがとうございます!」
先輩の家はショッピングモールから自転車で三十分ほどの距離で、朋先輩の家から目と鼻の先立った。
「ここがPの家よ」
そう言って朋先輩はチャイムを鳴らす。何度鳴らしても反応がない。
「おかしいわね。――あら?」
朋先輩がドアノブを回すと、ドアが開いた。鍵がかかっていないようだ。
「先輩!」
あたしはすぐに家の中に入り、先輩の部屋を探す。二階建てだから二階かな。すぐに階段を駆け上がって先輩の部屋を見つける。
「先輩!」
部屋を開けると、ベッドに縛り付けられ、猿轡をされている先輩の姿があった。あたしの姿を見て手足をばたばた動かしているが、しっかり縛り付けられて動かない状態だ。
「酷い……。誰がこんなことを、すぐに助けますから!」
先輩がさっきより何かを言いたそうにしている。猿轡のせいで何を言っているのか分からない。
「待ってください。今――」
次の瞬間、首元に何かの衝撃を受ける。あたしはすぐに気を失って――
忍の背後にいたのは朋だった。右手にはスタンガンを持って。
「P。おはよう。今日の占いのラッキーパーソンは幼馴染。たっぷり愛を育めば育むほど大吉だって……」
朋の手がPに触れる。それを彼は拒絶しようとするが身体が動かせないためそれができない。
「あたしの占いは外さないわ。良いことか悪いことか。そうでしょう。忍ちゃん……」
以上でございました。お付き合いありがとうございました。
以前から書きたかった忍ちゃんSS!(主役とは言ってない)です。
ぜひ、忍ちゃんにも1票入れて頂ければと思います。
ちなみに他の作品としまして、
ちひろ「頭に紙袋を被ったスーツ姿の男がテレビを見てる…」
モバP「うちの事務所でサラリーキャップが生まれたら?」
などがございます。特にこれらとは繋がりもない読みきりでございますので、お時間があったら読んでいただければと思います。
仙台では1年ぶりの観戦でございます。明日も、明後日も勝つぞバファローズ!
続けてもいいのよ?
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