少女「今日もハミパンしちゃった……」 (148)
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あなたは、ハミパンという言葉をご存じだろうか。
文字通り「パンツ」が「ハミでる」という意味である。
かつて、日本の学校の体育では、ブルマが着用されていた。
それは、足を付け根から露出させる、まるでパンツのような形状な女子の体操着である。
そんなブルマの裾からパンツをはみ出すこと、それをハミパンと呼んで、
女子はこれを避けようと躍起になっていた。
21世紀に入ると、教育現場におけるブルマはほぼ絶滅した。
その理由としては、女子からの評判がとにかく悪かったこと、男女平等の機運の高まり、
さらに決定的だったのが「ブルセラ」ブームであった。
いまではその陸上競技、保育園や幼稚園、ほんの一部の学校に残るのみである。
そしてハミパンという言葉も、ブルマとともにアダルトな業界へ遠ざかってしまった。
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・オリジナルです。書き溜めてます
・そこそこ長いので(約5万字)、前後編に分ける予定
・都合上、登場人物は実名を出してやります
----1995年 ○○市立××小学校
----体育館
先生「今日は、マット運動をします」
(エー、ツマンナーイ
(オレサッカーヤリタイ
(アタシポートボールガイイ
先生「また今度。じゃあ2人とも、準備体操お願いね」
少女「はい」
少年「はぁい」
少女「体操の隊形に、ひらけ!」
少年「くっしーん」
(イチ ニ サン シ
少女「足を伸ばして」
(ゴー ロク シチ ハチ
少年「身体を前後に曲げて」
グイー ノビー
少女「身体を大きく回して」
グリングリン
少年「……」
少女「最後に深呼吸。すぅーっ」
(ハー スー ハーゲホッ
少女「先生」
先生「はいありがとうね。じゃあ、男女で並んで前転から始めて~」
ゴロン クルン ドスン
友「なあトシ。今日の女子何人ハミパンすると思う?」
少年「3。いつもよりは少ないんじゃね」
友「俺9人。マットだから、かなり発生しやすいはずだ」
少年「女子はそんなの分かってるだろ。テッテーテキに防ごうとするさ」
友「じゃあ数の遠いほうが帰りにオゴりな。キャベツ太郎」
少年「ぴったり当てたらスーパーカップだかんな」
友「う、高級品を……」
友「……ま、すでに一人はやらかしてるから、あと八人だし」
少年「たしかに。あいつがいるから、ゼロはありえねーな」ハハハ
ツインテ「あいつら、丸聞こえなんだけど」
少女「あはは……そうだね」
ツインテ「気にしちゃダメよ。ジュンちゃん」
少女「ありがとね、ミカちゃん」
ツインテ「はーアホらし。絶対にパンツなんか見せてやるもんかっ」オシリクイクイ
少女「……うん」クイクイ
コロン(前転)
少女「」ハミー
少女「……」クイクイ
ツインテ「ジュンちゃん……どんまい」
キーンコーン
先生「はーい。チャイムが鳴ったのでこれでおしまい!」
友「結局6人か……引き分けだな」
少年「戦いは次にクリコシか」
友「『持ち越し』だよな、それ」
先生「体育係のふたりと、手伝ってくれる子は後片付けお願いね」
(ハヤクキガエヨーゼ
(ドリルヤンナキャ
ドタバタ スタコラサッサ
ガラーン
少年「だれも手伝わねえ」
少女「みんな、遊びたいもんね」
少年「世の中ハクジョーモノばっかりだ」
少女「ね、私たちも早く片付けて、遊ぼうよ」
少年「太巻きー」ゴロゴロリン
少女「もー、トシくん!」
----渡り廊下
少年「マットってどうしてあんな重いんだ」
少女「そのくせ上でコケると痛いよね」
少年「ジュンはさ、いいじゃん。運動神経いいんだしコケないだろ」
少女「トシくんはふざけてるからコケちゃうんじゃない?」
少年「でたー上から目線」
少女「へへ、私はホントの事言っただけだよー」
少年「まぁいいや」
少年「それでさ、ジュンさお前」
少女「……どうしたの?」
少年「いつもハミパンしてるよな」
少女「……」ピタ
少年「まさか気づいてなかったとか」
少女「……」
少年「やー、お前ノーテンキだから、ありそうだけどなぁ」
少年「めっちゃ豪快にパンツ見せてんだなって、実はちょっと関心した」
少女「…………」
少年「お前いつも白パンしかはいてこないよな。あれめっちゃ目立ってるぞ」
少年「肌色のパンツでもはけば? なんかオトナっぽいし、目立たないし……あれ?」
少女「……」
少年「……俺なんかまずいこと言っ
バ コ ー ン ッ ! ! !
少女「……」タッタッタ
少年「」
----教室
少年「おー、痛ぇ」ヒリヒリ
友「お前バカだろ」
少年「バカにバカって言われた」
少年「あ、でも、人にバカっていうやつはバカだけど、お前はもとからバカだから」
少年「打ち消し合ってお前は天才になるのか? んー?」
少年「ずるいぞ! お前だけ!」
友「お前バカだろ」
友「あんなぁ、いくら見た目が男っぽいだからって、ジュンちゃんは女の子だぞ」
少年「髪短いし、足速いし、いつも男と遊んでるのに」
友「……女の子にさフツー、する? パンツの話とか」
少年「することもあるんじゃないの? オレ見たぞ父ちゃんが知らないねーちゃんに
友「分かった、この話はやめよう」
少年「でもあいつ、うんとも嫌とも言わないでいきなり殴ってきたんだぞ?」
友「デリカシーってものがまったくないんだなキミ」
少年「ズイブン難しい言葉知ってんな。テリヤキ?」
友「……とにかく、女子はそういうの嫌がるんだよ」
友「体育の時、あいつ何回もケツに手を当てて気にしてるのをお前も見てたろ?」
少年「んーそうなの? 俺、ミカちゃんの尻をずっと見てたの」
友「俺も殴ったろか」
少年「でも、そんなにパンツ見られんのが恥ずかしいのか?」
友「恥ずかしいだろ。お前だってそうだろ?」
少年「ちっとも。こんな布見られて何が恥ずかしいんだ」
友「……お前はともかく、女子には恥ずかしいんだよ」
少年「そうかぁ。でもあいつ、スカートはいて鉄棒とか木登りとかバンバンしてるけど」
少年「その時は全然恥ずかしそうでもないんだよな」
友「あ、そういえばそうだな……」
少年「普通にパンツ丸見えだぞ、あいつ」
友「んー……多分、俺の考えだけどさ」
友「見えちゃいけないところから、チラっとはみ出てるってのが恥ずかしいんじゃないか」
友「なんか『チラリズム』とかいう言葉があるし」
少年「ずいぶんオトナな意見を言ってくれるねぇセンセイ」
友「まあ、兄貴がね。いろいろ俺に見せてくるんだよ。いろいろ」
少年「でも、スカートの中のほうが見えちゃダメなとこじゃね?」
友「……」
少年「放課後さ、お前ん家に遊びに行きたい」
友「お前も兄貴の本興味あるのか。俺ちょっとうんざりしてたんだけど……」
少年「ストⅡやりたいんだよ」
友「ああ、そっちね。いいよ」
少年「ていうかトモキさ、お前はハミパン好きなの?」
少年「なんか詳しいし、今日の賭けだって数多めに言ってたし」
友「ハミパン自体はそんなに。子どものパンツなんて大して変わらないし、つまんないじゃないか」
友「でも、女の子が自分の恥ずかしい恰好に気づいたときの仕草や表情には、グッとくる」
少年「お前本当に小学生かよ……」
----下校路
少女「……」テクテク
ツインテ「……ちょっと! どうしたの?」
少女「たいしたことないよ。ごめんね」
ツインテ「あのアホどもの言ったこと気にしてるの?」
少女「あんなの気にしてたらもたないよ」クス
ツインテ「……」
少女「でも……ちょっと、ほんの少し……ショックだったかも」
ツインテ「そりゃそうよ。あんなのイジメみたいなもんじゃん」
少女「でも、トシくんはそんなつもりじゃ……」
ツインテ「アイツがジュンちゃんを傷つけたのは事実なんだから、謝ってもらわないと!」
少女「ミカちゃん……ありがとう」
少女「でもそれなら私も、ぶっちゃったこと謝らないと」
ツインテ「ジュンちゃんってホント優しいね」
少女「そうかなぁ……」
ツインテ「それにしても、肌色のパンツってのはなんだっつの!」
少女「え?」
ツインテ「オトナっぽい? それただのオバチャンパンツじゃん!」
ツインテ「もっとレディーな下着とかセクシーなパンティーとか言えるでしょうに!」
少女「あ、あはは」
ツインテ「元気でた?」
少女「うん。ミカちゃんのおかげで」
ツインテ「じゃあ、児童館行かない?」
少女「うん! 行こっ」
----翌朝/教室
少年「うー、今行くの?」
友「今行かないとこじれるぞ。それに、女の団結力は恐ろしい」
友「卒業まで、ヘタしたら中学まで、肩身の狭い思いをすることになるぞ」
少年「……わかったよ」ガタ
少女「……」カリカリ
少年「な、なあジュン」
少女「!」
少年「あー、あのなー、昨日のことなんだけど、な……」
少女「……あの
少年「すいませんでしたぁ!!!」ドゲザァ
少女「……」
少年「……」プルプル
ヒソヒソ ヒソヒソ
(アイツナニシタノ
(ジュンチャンコマッテナイ?
少女「と、とりあえず廊下行こっか? ね?」
ガラガラ ピシャ
友(あいつやっぱりバカだ)
ツインテ(聞き耳たてたいけど……やめとこ)
----廊下
少女「あの、あのねトシくん」
少女「ごめんなさい」ペコリ
少年「へ?」
少女「ああ、まだ少しあざが残ってる……」
少年「お前、本気でビンタしてきたから」
少女「ちょっとカアッとなっちゃって……本当にごめんね」
少年「……あれは強烈な一撃だった。ヘビー級だった。男より強えよ」
少女「……クスッ」
少年(かわいい)
ツインテ(そこ、傷つくところなのよジュン!!)キキミミ
友(ジュンちゃんちょっと変わってる?)キキミミ
少年「ごめん。今までジュンの事、わりと本気で男友達として見てた」
少女「……」
少年「フツーに男の中に入ってサッカーしてるし」
少女「……スカートなのにね」
少年「だから……その、ずかずかと変なことを言っちまった」
少年「ごめん……」
少女「私、あのビンタくらいは怒ったんだからね」
少年「は、はい」
少女「……いいよ。もう気にしてないよ。これで仲直り!」
ギュ
少年(握手……)
少年(こいつの手、小さくて柔らかい……)
ツインテ(あら積極的)
友(少年の心に生まれた淡い感情、これは恋なのか?)
少女「トシくん……」
少年「あ、あのさ」
少女「爪伸びすぎ。ちゃんと切ってる?」
友(次号を待て!)
----後日/校庭
少年「うわっ、あいつにボールが行ったぞ」
友「Aチームの内野ー、トシから離れろ」
少年「おい、何言って……っ」
ビュン
少年「ひえっ」スカッ
ツインテ「当て損ねたね、ジュンちゃん」キャッチ
ツインテ「ほら、もういっかーい!」ポーイ
少女「ふふ」キャッチ
ビュン
少年「ちょっ、やめ」カスリ
ツインテ「おしい! いい球投げるけどね!」キャッチ
ツインテ「ジュンちゃん! トドメさしてあげて!」ポーイ
少女「覚悟!」
ブオンッ
少年「狙い撃ちやめて」ベシーン
----後日/体育倉庫
少年「跳び箱って運びにくいよな」
少女「台車でもあればいいのにね」
少年「ま、こうして二人で運ぶならまだいいけど」
少年「お前力持ちだし、俺も楽だわ」
少女「もっとほめてー」
少年「ちなみに俺は7段跳んだんだぞ、今日」
少女「わたし、タテで8段跳んじゃった」
少女「見てなかった?」
少年「クラスのやつのハミパン数えてた」
少年「今日は俺が勝ったんだ」フッ
少女「…………」
----後日/教室
先生「この前の漢字テスト返しまーす」
ツインテ「トモキくん、何点よ」
友「90点。書き順とか難しくない?」
ツインテ「ふふ、あたし95点~♪」
友「ま、まあ算数はこっちが上だったし」
ツインテ「ジュンちゃん何点~?」
少女「えへへ」ハナマル
ツインテ「あやや、敵わないや」
少女「……」チラッ
少年「ふん」ネリケシコネコネ
少女(私の半分……)
ツインテ「運動もできて、勉強もできるなんてズルい」
友「顔も可愛いし、世の中って不平等にできてると思う」
少女「私、可愛くないよ。みんなみたいにおしゃれじゃないし、髪もぼさぼさだし……」
ツインテ「そんな事ないでしょ。髪の毛サラサラで綺麗じゃない」
ツインテ「雑誌で読んだんだけど、ショートヘアって顔が可愛くないと似合わないんだって」
友「ジュンちゃん、あんまりへりくだると敵を作っちゃうよ」
少女「そ……そうかな」
少女「でも、着てる服だっていつも同じようなのだし」
ツインテ「黄色のブラウスに青いジャンパースカート、白い靴下」
ツインテ「普通に子どもらしくて可愛いんじゃないの? あたしも子どもだけど」
友「白の靴下ってのも、なんかジュンちゃんらしいよね」
ツインテ「あーわかるかも。無邪気って感じで」
少女「私らしい……」
友「……あれ、でも、靴下ちょっと汚れてる?」
少女「!」
ツインテ「あ、ホントだ。ハイソックスだから目立っちゃうのね」
ツインテ「でも……あんだけ校庭駆けまわってたら、そりゃ汚れるわよ」
友「たしかに。汚れてるのも、ジュンちゃんらしいかも」
ツインテ「なんかその言い方引っかかるから訂正しなさい」
友「白って汚れが目立つよな。それ早く洗濯したほうがいいんじゃね?」
ツインテ「余計なお世話よ。そんなの当たり前じゃないの」
少女「トモキくん、ありがとうね」
友「指摘しただけだよ」
ツインテ「ね、今度ジュンちゃんの家に遊びに行きたいな」
ツインテ「行った事一度もないし」
少女「あ、あー、えっと……」
友「キツいの?」
ツインテ「なにアンタも行こうとしてるの」
友「え、流れ的に」
少女「……えっと、ちょっと、ごめん」
ツインテ「あ、事情があるなら大丈夫よ」
少女「ごめんね」
友「じゃ、今度みんなで遊びに行かない?」
友「夏休み近いじゃん。海とかどう?」
ツインテ「子どもだけでそんな遠くに行けないでしょ」
ツインテ「市民プール行って、その後駅前で遊ぶとかは?」
友「いいな。ジュンちゃんはどう?」
少女「あんまり遅くならないなら……」
ツインテ「当然よ。あとはいつの間にかいなくなってるアイツだけど」
友「ジュンちゃんが来るなら、トシも間違いなく来るだろ」
----終業式前日 休み時間
友「あいつ真っ先に校庭で遊んでら」
ツインテ「そういうアンタは、女の子っぽく教室であたし達とおしゃべり?」
友「いちいち言い方がキツいよな。俺はそんなにアウトドア派じゃないんだ」
ツインテ「じゃあなに、家にこもってゲームずっとしてるアレ、そう『ヒキコモリ』ってやつ?」
友「そんなんじゃねえよ。ゲームなんてミカちゃんだってするだろ?」
ツインテ「……まあ、やらないっていったら嘘かも」
友「どんなの持ってんの。サターン? プレステ? まさか3DO?」
ツインテ「スーパーファミコン。ときどき弟と遊ぶの」
友「へー。じゃあソフトも誰かと遊べる感じの?」
ツインテ「そうね。ぷよぷよとか、マリオカートとか……」
友「マリオカートの裏技、教えてやろうか」
ツインテ「え、なにそれ教えて」
ワイワイ…
少女「……」カリカリ
ツインテ「へーそんな技が。トモキくんってゲームよく知ってるね」
友「ミカちゃんだって結構ゲームやってんじゃん」
ツインテ「今度家に遊びに行かせてよ。トモキくん家のゲームやりたい」
友「もちろん。よっしゃ、対戦相手が一人増えたぞ」
友「……あれ、ジュンちゃんがいなくなった」
ツインテ「図書室でしょ。あの子運動も好きだけど、本読むのも好きだって言ってたし」
ツインテ「夏休みって本たくさん借りられるから、行ってるんじゃない?」
友「へー、さっきはなんか書いてたみたいだけど」
ツインテ「覗くんじゃないわよ」
友「トシじゃねえんだから」
ツインテ「でも、ジュンちゃんの持ち物ってあんまり見ないかも」
友「席は一番後ろだし、机もいつも綺麗に片付けてるしな」
ツインテ「そういえばジュンちゃんの筆記用具、ちょっと気になるな」
友「あの子はいま教室にいない」
ツインテ「そして、あの子の机の上にはいろいろ出てる……」
友「やっちゃうか?」
ツインテ「……あたしたちって、似たもの同士? ヤだなあ」
コソコソ
友「……」
ツインテ「……」
友(机の上にあったのは)
友(擦り切れて、まるで豆粒のような汚れた消しゴム)
友(両方から削りに削って、作品が分からないほどに短いキャラ物の鉛筆)
友(あちこちが痛々しくはがれた赤い筆箱)
友(新品のように綺麗な教科書と、綴じ糸がほつれてページが外れそうなノート)
友(机の脇に掛かっているのは、何度も何度も繕われた巾着袋)
友(そして、引き出しの中から少し見えたプリントには……)
友(『○○市 児童相談所』の文字があった)
ツインテ「……戻りましょう」
友「ミカちゃん、このこと」
ツインテ「ううん、あの子から話すまでは……」
ガラッ テクテク
少女「あっ……!」キョロキョロ
少女「……」カクシカクシ
友(見ないふり見ないふり)
ツインテ(あたし……気付けなかった。友だち失格ね……)
少女「ミカちゃん、トモキくん」
友「あ、ああジュンちゃん!」
少女「ふたりでいるなんて珍しいね」
ツインテ「今度みんなで遊びに行くときの計画を立ててたの」
友「アイツはどうでもいいとして、ジュンちゃんも一緒に計画立てようぜ!」
少女「えっ? いいの、私も?」
ツインテ「もちろんよ。友だちじゃない」
友(バレてないか……よかった)
友「こことかどう?」
友とツインテールはその内にくっつきそう
----夏休み/市民プール入口
少年「わりいわりい、遅れた」
少女「あ、トシくんおはよう」
ツインテ「アンタ遅刻よ。罰としてみんなのプール代払いなさいよね」
友「いいなそれ。その分俺たちはジュース飲めるし」
少年「ちょ、ちょいまて。おかしくないか」
ツインテ「おかしくないでしょ。3人の時間を30分もムダにさせたのよ。お金に換えたら安いものよ」
友「こんな暑いのに、入口で待ってくれてる友だちがいる幸せを考えてみろ」
少年「お前ら口ばっかり大人で……。ジュンは俺の味方だよな?」
少女「そうだよ。トシくんだけに払わせるなんて、できないよ」
少年「だよなだよな」
少年「ほら! ジュンもおかしいって言ってんぞ!」
ツインテ「ジュンちゃんは良い子だからねえ」
友「ところが俺たちはそうでもないんだな。やったことの責任はちゃんと負わないとなあ」
少年「お、お前ら……」
ツインテ「……ふふ、冗談よっ」プッ
友「マヌケな顔しちゃってな」クスクス
ツインテ「ごめんねトシくん。あたしとトモキくんは、最初から券持ってたの」
友「ジュンちゃん来る前に買っちゃってたからね」
少年「おい」
友「だからトシは、ジュンちゃんの分だけ買ってこいよ」
少女「えっ?」
少年「!」
少年「お、おう! 買ってくるわ!」タッタッタ
ツインテ「……わかりやす」
少女「そんな……私だけ払ってもらうなんて……」
ツインテ「いーのいーの。そのかわり後で手でも握ってあげればいいんじゃない?」
友「あいつはそれだけで幸せになれるから」
ツインテ「ほら見なさい、券売機の前。トシくんだらしない顔してるでしょ?」
少女「……」
----女子更衣室
ツインテ「ジュンちゃんジュンちゃん」ヌギヌギ
ツインテ「じゃーんっ」
少女「わ、すごい。オトナの下着だ!」
ツインテ「ね? セクシーでしょ?」
少女「うん!」
ツインテ「ママにおねだりしたら、買ってもらっちゃった」
ツインテ「これでもう、ブルマからパンツもはみ出ない!」フンス
少女「いいなあ。私こういうのしか持ってないから……」ヌギヌギ
少女「ほら、いつもの子供用まっしろパンツ。名前まで書いちゃって、ダサいよね」
ツインテ「そんなことないよ。ジュンちゃんらしくて可愛いじゃん」
少女「……そっか。私らしいんだ」
少女「ちょっと前、私トシくんぶっちゃったこと覚えてる?」
ツインテ「忘れるワケないじゃない」
少女「あのときトシくんが言ってたことは、なにも間違ってないの」
少女「体操服になると、私はいつもパンツをはみ出している」
少女「白いパンツだからよく目立っちゃう」
少女「そんなの分かってるよ。いつもすっごく恥ずかしい」
少女「目立たない色のパンツをはくか、ミカちゃんみたいなオトナの小さいパンツをはけばいい」
少女「正しいんだよ。全部正しいの」
少女「……だからかな、私、あんなに怒っちゃったんだ」
ツインテ「……」
少女「あ……ごめんね。なんか、フンイキ悪くしちゃったね」
少女「ミカちゃん、水着もすっごく可愛い!」
ツインテ「……ありがと。デパートで買ったの」
ツインテ「ジュンちゃんだって、そのスクール水着……」
少女「私っぽくて、可愛いんでしょ? ふふ、ありがと!」
ツインテ(ジュンちゃん、ちょっと痩せすぎなんじゃ……)
ツインテ(あばら骨がはっきり見えてるよ……)
少女「早く行こうよ。たぶんトシくんたち待ってるよ?」
----流れるプール
友「いいのか、女の子たち待たないで」スイー
少年「だっていくら待っても出てこないじゃん」スイー
友「待ってやるもんじゃね、普通は」
少年「そんならフツーなお前だけ待ってろよ。俺はこのまま流れてっから」
友「うぐぐ……」
友「そうだよ、俺も耐えられなかったんだ!」
少年「素直でよろしい。お前もヘンクツだよな」
友「一言多いんだぜ……」
少年「めっちゃ気持ちいいな。やっぱプールはサイコーだぜ」
友「仰向けで流されるのやってみ」スイー
少年「あ~、頭ん中でポカリのCMが流れる~」スイー
少年「なあ」スイー
友「なんだよ」スイー
少年「ジュンってさ、いつもハミパンしてるじゃん?」
友「まあ、そうだな」
少年「パンツ出てんのが恥ずかしいなら、最初からはかなきゃ良いんじゃね?」
友「……お前は天才」
少年「だろ? 裸にそのままブルマはいとけばいいよな。あれパンツみたいな形だし」
友「――なんて、言うかアホ」ポカ
少年「いてっ」
友「ブルマってかなりピッチリしてんだぞ。じゃあな、例えばの話だ」
友「男がパンツはかずにブルマはいてたら、どうだ?」
少年「キモい」
友「ああキモいさ。だから例えばの話って言ってんだろ」
少年「あ、めっちゃモッコリすんじゃね?」
友「その通り。パンツがないと、浮かび上がっちまうよな?」
少年「でも女には、ポコチンついてねえじゃん」
友「そ、それはだな、女の身体はな、ポコチンの代わりにだな……分かるだろ」
少年「わっかんねぇなあ」
友「と、とにかく、カタチが浮かび上がってヤバいんだよ!」
ツインテ「何が浮かび上がるって?」ヌッ
友「お、おまえら、いつから! ハメやがったなトシ!」
ツインテ「ハメるとかサイッテー」
少女「トモキくんも、相当だったんだね……」
友「誤解だ! 話を振ったのはあっちだ!」
友「おい、トシどこだ! いない!」
友「クソ、消えやがってー!!」
ツインテ「ね。こんなヘンタイ放っといて、スライダーやりましょ?」スイー
少女「う、うん……ごめんねトモキくん」スイー
----駅前
少女「ここって、子どもだけで来ちゃいけない所じゃ……」
友「まあ、先生とかに見つからなければ、なんてことはない」
ツインテ「この町って大して栄えてないもんねー」
少年「で、どこ行くん? 俺なんも分からないんだけど」
友「みんな、お小遣いは持ってきた?」
少年「まだまだ残ってるぜ」
ツインテ「ちょっと気合い入れてきちゃった」
少女「ま、まあまあかも?」
友「……よし! じゃあゲームセンターに行こう!」
少年「マジかよ」
少女「ゲームセンターって……あの、怖い人たちがたくさんいる、ゲームセンター?」
ツインテ「少なくとも、まず子どもだけで行くなって場所よね」
友「しかし! 今回はなんと特別に入れてしまうのだ!」
少年「どういうことだ?」
友「すぐに分かるさ。入るぞ」
ウィーン
ガチャガチャガチャピロリロピロリロ
少年「暗! うるさ! タバコくさ!」
少女(こ、これ苦手かも……)
友「あ、店長さーん!」
ゲーセン店長「おう、トモくんか」
店長「友だちも一緒か。なんだ女の子もいんのか」
店長「良いとこ見せてやんな」ハハハ
ツインテ「トモキくん、ここの店長さんと仲良しだったみたいなの」
友「店長が見ててくれるから、子どもだけでも大丈夫ってこと」
友「あ! チーマーの兄ちゃん!」
チーマー「あん? お、トモ坊じゃん」
チーマー「相手いなくて暇だから、お前相手しろ」クイ
友「わかった。ルールはいつものでいいな!」
チーマー「お前勝ったらジュースオゴってやるよ」
少年「な、なんだあれ」
ツインテ「普通に怖い人と格闘ゲームで遊んでる……」
少女(怖い……いや……)ギュッ
少年「!!」
少年(抱き着かれた!)
少年(でもタバコ臭くてジュンの匂いがわかんねぇ!!)
少女(……)フルフル
少年(……あれ、ジュン、震えてんのか?)
友「っしゃ、コンボ決まった!」YOU WIN!
チーマー「……ッチ」YOU LOSE…
チーマー「……」ピッ ガコン
チーマー「おらよ。そこのガキどものも」ポイポイ
友「サンキュー兄ちゃん!」キャッチ
チーマー「……」スタスタ
少女(いなくなった……)パッ
少年(あ、離れた)ガク
友「さて、待たせてごめんな。好きなの取ってって」
少年「じゃあ、おれサイダー」
ツインテ「さんきゅ。あたしは紅茶にしよ」
友「ジュンちゃんも、ほら」
少女「ありがと。オレンジジュースいただくね」
ツインテ「アンタ上手いのね。格闘ゲーム……」
友「兄貴の付き合いしてただけだよ」
少女(オレンジジュースおいしいな……)コクコク
少女「!」
少女「トシくん。あれ、なんだろう?」クイクイ
少年「んー? 『プリント倶楽部』?」
友「あれ、あんなの前無かったのに。なんか机まで置いてあるし」
店長「ああ、あれはなぁ、最近出たばっかりなんだ」
店長「機械の前で写真を撮って、その場でシールにプリントすることができる」
ツインテ「いくらですか?」
店長「1回300円。小さいシールが16枚出てくるぞ」
ツインテ「ね、みんな。記念にやらない?」
友「せっかく4人集まれたんだしね」
少年「へー、これあれば写真屋いらねえじゃんな」
少女「1回、300円……」
(プリントクラブ♪
ツインテ「これ、百円玉しか入らないのね」チャリン
友「千円から百円は両替できるけど、十円から百円にはできないんだよな」チャリン
少女「トシくん。さっきは払ってもらったし、ここは私が……」
ツインテ「そういえばさトシくんさ、さっきジュンちゃんに抱き着かれてたよねぇ」
友「めっちゃ鼻の下伸ばしてたよな」
ツインテ「そんなに好かれてるんだから、ここは甲斐性みせてやりなさいよ」
友「今が格好つけられるチャンスだぞ、トシ!」
少年「ふ、ふふふ。ジュン、ここは俺が出す」
少女「ダメだよ! それじゃトシくんが……」
少年「おっと手が滑って百円玉がー」チャリン
(ピコンッ♪
少女「ぁ……」
友「集まって! 撮影が始まっちゃう!」
ツインテ「これ、四人入るの?」
友「結構詰めないとキツイかも……」トリマース
ツインテ「ジュンちゃん小柄だから真ん中ね」サン
少女「え、私が?」
少年「じゃ、オレ左隣」ニー
ツインテ「ちょっと! 男子くっつきすぎ!」イチ
友「仕方ないだろ……あっ!」パシャ
ツインテ「……ダメだこりゃ。ひどい顔。撮り直しね」
少女「あはは、ホントにひどい」クスクス
友「よし、切り分けたな!」
ツインテ「4人で良かったね。綺麗に4等分できたわ」
少年「ちょーっと俺の顔変じゃね?」
ツインテ「はじめから変な顔してんだから何もおかしくないでしょ」
少年「言わせておけばー!」
ワイワイ ギャーギャー
少女「……」ニコ
少女(わたしと、みんなの、写真だ……!)
少女(絶対に、絶対に大切にしないと)
----小学校 校庭
少年「結局ここに戻ってきてやんの」
少女「でも夏休みの学校って、いつもと違う場所に感じるよね」
ツインテ「ジュンちゃん、結構良いこと言うじゃない」
友「もう昼過ぎだけど、そこの木陰で昼ごはん食べようぜ」
少年「お前さっきコンビニ行ったの、昼飯買ってたんだな」
ツインテ「あたしはお弁当作ってもらったの」
少女「私も家から持ってきたよ」
少年「俺はな! 駄菓子のフルコース!」ジャーン
3人「「「……」」」
少年「昼飯がおやつだなんて! 家じゃゼッテーにできないからな!」
友「あらかじめ言っとく。俺の弁当はやらんからな」
ツインテ「あたしも」
少女「身体悪くなりそうなお昼ごはんだね……」
ツインテ「お弁当どんなの買ったの?」
友「鳥そぼろ弁当350円。コンビニ弁当だけど、これは美味いんだ」
ツインテ「アンタコンビニ弁当ばっかり食べてるの?」
友「ウチ共働きだからさ。帰りがどっちも遅いとこうなるんだよ」
少女「ミカちゃんのお弁当すごい!」
ツインテ「ありがとね。ウチのママ、料理が上手なのよ」
友「へぇ。サンドイッチにサラダにチキンに……パイ?」
ツインテ「キッシュよ。あたしの大好物なの」
少女「き、きっちゅ?」
ツインテ「キッシュ。フランスの卵焼きみたいなものよ」
少女「へぇ……すっごいなぁミカちゃんのおうち」
少年「うまい棒うめえ、いかフライうめえ」バクバク
少女「私のお弁当は……」パカ
ツインテ「あ、塩のおむすび。おいしそう」
友「塩むすびって、おにぎりの究極系じゃない?」
ツインテ「トモキくん、アンタは良いこと言おうとしてスベってる」
少女「よかった。変だっていわれないで」
友「なんで変なんだよ。そんなにきれいな形のおむすび、なかなか見ないのに」
少女「へへ、そう? これ私が握ったやつなんだよ。具もなにもないけど」ニコニコ
ツインテ「へえ、すごい。将来良いお嫁さんになれそう」
少年「え、お前その塩むすびだけなの? おかずは?」バリバリ
少女「……」ニコニコ
少年「ないの? え、なんで?」ボリボリ
少女「……」
ツインテ「……ねえ! ジュンちゃん、おかず交換しない?」
少女「え、でも……私おかずなんて」
ツインテ「そのおむすびよ。おいしそうだからひと欠け分けてほしいなーって」
友「俺も、この鶏の煮物と、そのおむすび交換したい」
ツインテ「なによチンケね。あたし、このキッシュあげるからさ」
少女「そんな……釣り合わないよ」
ツインテ「釣り合うよ。ジュンちゃんのおむすび、本当においしそうなんだから」
少女「……わかった。はいどうぞ」ポロッ
ツインテ「ありがと。じゃあキッシュどうぞ。このフォークも使っていいよ」
少女「トモキくんも、はい」ポロッ
友「こんなにくれるの。じゃあ、煮物全部あげちゃう」
少女「すごい、おかずがいっぱいだ……。二人ともありがとう」
少年「ムシかよ、もう……」モシャモシャ
少年(やっべ、飽きてきた)
少女「はい」スッ
少年「え、でも俺、お菓子しかあげられねえぞ」
少女「じゃあ私、そのベビースターが欲しいかな」
少年「これ? ああ、もう食べないからやるよ」
少年「おむすびいただきます」パク
少年「……」
少年(塩加減、握り具合、ごはんの硬さ……こいつは)
少年「うめぇ」
少女「……やった!」パァァ
友「ホントに美味いね、このおむすび」パクパク
ツインテ「これだけでお店開けそうなくらい」モムモム
少女「キッシュ、すっごくおいしい!」ニコニコ
友「あのぉ、ボクの煮物はどうでしょうか」
ツインテ「アンタはそれ買っただけじゃないの」
少女「うん! これも味がしっかりしみてておいしいよ!」ニコニコ
友「ああ……ジュンちゃん本当にいい子だなぁ」
ツインテ「すごくおいしそうに食べてくれるから、こっちまで幸せになりそう」ニコ
ワイワイ キャッキャッ
少年(ジュンが握ったおむすび……また喰いてえなあ)
少年「こうして校庭で飯食うのなんか、運動会のときぐらいだよな」
友「今はだれもいないけど、運動会の時はこの辺もシートだらけになるよな」
少女「日陰だし、風が通って気持ちがいいもんね」
ツインテ「っていうか、二学期はじまったら1か月で運動会よね」
友「早いよなぁ。ついこないだ5年になったばっかりなのに」
ツインテ「なんかオジサン臭い。その言葉」
少年「高学年ってさ、クラス対抗リレーがあるんだっけ?」
少女「それ、私楽しみにしてるんだ」
ツインテ「ジュンちゃんはアンカーで決まりでしょ。クラスでいちばん足速いんだもの」
友「ヘタしたら学年でも一番かもな……女の子なのに」
ツインテ「ジュンちゃんがいれば、ウチのクラスは優勝間違いなしね」
少年「あと、組体操もあるんだよな……」
ツインテ「あーやめてよ言わないでいたのに。今から考えるのもイヤだ……」
少女「去年の見てると、みんな泥だらけになってたよね」
ツインテ「ピラミッドとか、絶対下になりなくない。ゼッタイ痛いでしょ」
友「二学期になったら毎日練習させられるぞー」
ツインテ「あんなもん、ただの先生たちの自己満足じゃない。なんで児童が付き合わされんのよ」
少年「知るかよ」
少女「でも、せっかくやるならちゃんと本気でやりたいな」
友「あ、ジュンちゃんピラミッドの上行けるからって、そんなこと言ってる」
ツインテ「いいねぇ体重の軽い子は」
少女「ねえトシくん。この人たち、さっきから私のこと持ち上げたり馬鹿にしたりするんだけど」
少年「俺に聞くなよ」
プップー
友「ん? 校門に車が」
少年「母ちゃんだ」
少年母「トシオ、こんなとこにいたの」
少年「なんだよ、今日は遊んでるって言ったろ」
少年母「聞いてる。でも今さっき、イトコのフミ兄さんが家に来たわよ」
少年「マジかよ。来るって言ってなかったじゃん」
少年母「出張でこっちに来て、たまたま時間空いたから来たそうよ。どうする?」
少年「フミ兄がねえ。うーんどうしよ」
少年母「滅多に会えないんだから、会っておけば?」
少年「なんか貰えるなら行くわ」
少年母「多分ね。でもそれ、フミ兄さんの前では言わないように」
少年母「トモキくんと、ええとクラスの、国母美佳さんと十島潤さんね」
少年母「トシオが世話になってます」ペコ
友「どうも」ペコ
ツインテ「こんにちは」ペコ
少女「初めまして。いつもトシくんと仲良くさせていただいてる、十島です」ペコ
少年母「あらあらご丁寧にどうも」
ツインテ「あの、なんで私たちの名前を?」
少年母「そりゃクラスメイトだし、トシオの話にもいつも出てくるから」
少年母「いい子たちじゃないトシオ、大事にしなさい」
少年「うっせえよ」プイ
少年「じゃあなお前ら。また連絡するから」バタン
少年母「みんな、ごめんなさいね。今度遊びに来てね」ブロロロ
友「行っちゃったよ」
ツインテ「友だちよりお金につられるなんて、正直な子どもね」クスクス
少女「……どうしよっか?」
友「俺は今日行きたいところは行ったからなあ」
ツインテ「適当に児童館でも行って解散する?」
友「二人ともウチ来る? ミカちゃん来たがってたじゃん」
ツインテ「んー、まだ帰っても誰もいないだろうし、そうしよっかな」
少女「私はここで帰るよ。妹が待ってるし」
ツインテ「あれ、妹がいたの?」
少女「うん。実はちょっと病気がちでね、私がついてないと」
友「そっか。また遊ぼうぜ」
ツインテ「今度はあたしのウチにもおいでよ。犬がいるよ」
少女「ありがとうね。今日はとっても楽しかった」フリフリ
友「じゃーな」フリフリ
ツインテ「ばいばい」フリフリ
少女「……」テクテク
少女(……)ピタ
少女「……」クルリ
ツインテ「あれ、どしたのジュンちゃん」
少女「……あのね、二人とも」
少女「ちょっと聞きたいことがあるの」
友「なに相談? じゃあ涼しいところ行く?」
少女「ううん、ここでいいの」
ツインテ「……どうしたの」
少女「私さ、今日、一円もお金出してないんだよね」
友「それが?」
少女「私の、今日のカッコ、どう?」
ツインテ「なによ突然」
少女「どう?」
ツインテ「……水色の帽子。Tシャツに黄色のスカート。ピンクのスニーカー」
友「ちょっとサイズ合ってない気もするけど、そこまで気にはならないな」
少女「靴下と、下着も言ってみてよ」
ツインテ「いいの? 男子いるけど」
少女「……」
ツインテ「靴下はいつもの白いハイソックス。白いタンクトップに、白いパンツ……」
友「白い下着にこだわりでもあるの?」
ツインテ「前から言ってるじゃない。それがジュンちゃんらしくて、可愛いって」
ツインテ「あ……」
少女「はっきり言ってくれてもいいんだよ」
少女「こんなカッコだから、私に気を遣ってくれたんだよね」
少女「帽子もスカートもシャツも、ぜんぶ貰いものなの」
少女「靴下も下着も白いのは、それがいちばん安いから」
少女「私らしいって、それ、貧乏っぽいって……ことだよね」
少女「わかるよ。私だって、こんな服ダサいと思うもん」
少女「髪が短いのもね。おしゃれじゃない。洗う手間とシャンプーがもったいないから」
少女「……ホントはね、もっと長くしていろんな髪型してみたい。ゴムでまとめてみたい」
少女「ミカちゃんみたいな可愛い服が着たい。おしゃれな靴下をはきたい。大人パンツもはきたい」
少女「でもね。私はそれができないんだ」
友「……」
ツインテ「……」
ツインテ「……あたし達、そんなことは全然」
少女「ごまかさないで!」
ツインテ「っ……」
少女「私、家のことは誰にも言ってないし、これから言うこともないと思ってた」
少女「でもやっぱり、ばれちゃうんだよね……」
少女「服も靴もできるだけいつも洗って、フケツに見えないようにしてたのに」
少女「爪だって髪の毛だって毎日お手入れして、普通の子に見えるようにしてたのに」
少女「やっぱり、だめなんだよね」
ツインテ「……」
少女「ねえ、いつごろから気付いてた?」
友「……俺は、終業式の前の日に」
少女「ああ、あの時ね。私が机の上を片付けなかったとき……」
少女「あーあ、気を抜いちゃってたんだ。ダメダメだな」
ツインテ「……ダメだなんて言わないでよ」
少女「昔の友だちはみんな、私が貧乏だってバレた途端離れていっちゃった」
少女「私みたいなのと普通の子は、どうしたって住む世界が違うんだ」
少女「普通の子のふりして友だちの一人もだませないなんて、ホントダメダメな人間」アハハ
ツインテ「私の友達をブジョクしないで!!」バシン
少女「……」ヒリヒリ
ツインテ「ねぇ……おかしいよ。こんなのジュンちゃんじゃないよ」ウルウル
少女「……ミカちゃん」
少女「こんなのジュンちゃんじゃない? 私は私だよ。これがジュンちゃんなんだよ」
少女「何も知らないくせに、勝手なこと言わないでほしいな」
少女「今日はありがとうね。お金払ってくれたのはとっても助かった」
少女「でもね、次があるなら、私にもお金をちゃんと払わせて」
少女「そうじゃないと、もっと辛くなっちゃうから……」
友「……払ってあげたのは俺たちじゃない。ここにいないトシだ」
少女「私からトシくんには、ちゃんと言うよ」
友「トシは多分まだなにも知らない。いつか家のことも言うのか?」
少女「……言わなくたって、いつかばれちゃうよ」
少女「じゃあね」
スタスタスタ…
ツインテ「……」
友「……」
ツインテ「…………」
友「今日はもう、帰ろうか」
ツインテ「……」ギュ
友「……ごめんな、ミカちゃん」ギュ
ツインテ「……うぅ」グス
ツインテ「ひぐ、うぐ……ひっぐ」ボロボロ
友「……」
ミーンミーンミーン
凄く凄く悲しい気持ちになった
良い友達を持ってるな
おつ
次はいつなのかしら
おつ
お待たせしました。ちょっとだけ続けます
少女(ジュンちゃん)のイメージイラストです
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org816453.jpg
----9月1日/教室
少年「は? なんだそりゃ」
ツインテ「あたし達カップルだから」ダキッ
友「ミカちゃん格ゲーのセンスあったから」ダキッ
ツインテ「はじめて男の子の家にお泊りしちゃった」
友「お前も頑張れよ」
少年「……お似合いだなお前ら」
少年(こいつらとは、夏休みの間何度も遊んだ)
少年(でも、あいつとは、あれ以来会ってない)
少年(電話するにも番号が分からない。住所も分からない)
少女「おはよー」ガラッ
(オハヨー ジュンチャンオハヨ
(ヤケタ?
少年(来た!)
貧乏に以前に虐待されていないか心配
児童相談所のプリントがある分やばい
少年「よっす」
少女「あ、トシくん久しぶりー」
少年「どうしたんだよ、連絡取ろうとしたのに」
少女「ごめんね。ずっと田舎の親戚の家行ってたの」
少年「それならそれ言ってくれよ~」
少女「あはは、ごめんごめん」
ツインテ「……」
友「……」
少女「あ、二人とも! おはよっ」
友・ツインテ(!)
ツインテ「おはよう。久しぶりね」
友「おはよう。田舎の親戚って、羨ましいね」
少女「運動会の練習、頑張ろうね」
ツインテ「そうね。小学5年の運動会は、これっきりなんだからね」
----後日/校庭
先生「今日は組体操の、サボテン部分からやるわよ~」
ツインテ「はぁーっ……」
ツインテ「毎日毎日練習練習。もうヒザすりむきそう」
友「こういうのは楽しんだもの勝ちさ。それに俺はミカちゃんとペアだし」
ツインテ「そうね、トモキとペアだから……あたし耐えられる」
友「肩車っていいよな。俺、ミカちゃんの汗まみれの太ももに挟まれてるんだ」
ツインテ「こんな時になに言ってんの変態」
少女「ふふ、あっちはなんかアツアツだね」
少年「俺達もペアじゃん。負けてられっかよ」
ピッ
少女「いくよっ」グッ
少年「よっしゃ」ガシッ
サボテン!
少年「ふっ……」プルプル
少女「もうちょっとだよ」ヒソヒソ
少年(目の前にジュンのケツが)
少年(今日もえらくハミパンしてんな……)
少年(砂でブルマどころかパンツまで汚れてんじゃん。きったねー)
少年(ん? ブルマに縫い目がある)
少年(こんなケツど真ん中に縫い目なんてあるのか?)
少女「トシくん、トシくん!」ヒソヒソ
少年(あ、やべ。みんな終わってた)グイッ
少女「きゃあっ!!」グラッ
ドシーンッ
(ゲラゲラ ナニヤッテンダアイツラー
少女「うぅ……」
小学生とは思えないアツアツぷり
遅くても中学校に入る前にくっつきそう(最近の小学生を見ながら)
----後日/体育館
先生「今日は組体操のクライマックス、ピラミッドの練習よ!」
先生「危ないのでまずは、下にマットを敷いてやります」
先生「では女子から練習しましょう」
先生「男子はそこで見ていること!」
少年「これは男女に分かれてやるんだな」
友「おかげでじっくりミカちゃんを眺められる」
少年「久しぶりにハミパン女子賭けるか。3クラス合同だし、おれ10で」
友「組んでるときは直そうにも直せないからな、17人でいく」
少年「じゃあピタリ当てたらハーゲンダッツな」
友「マジかよ。めっちゃインフレしてんじゃん……」
少女「わ、私が頂上なんかでいいのかな」
ツインテ「ジュンちゃん軽いし運動神経いいし、ピッタリでしょ」
少女「そういうミカちゃんだって、上から2段目じゃない」
ツインテ「良かったわホントに。ヒザ地面に着かなくていいってだけで助かった」
ツインテ「あたしの肩を踏み台にして、みんなに見せつけてやりなさい」フン
少女「ミカちゃん、変なことしないでね」
先生「はい上から2段目の人準備」
ツインテ「よっと」ヒョイ
先生「ジュンちゃん、大丈夫?」
少女「はい、行けます」
先生「せーので立ち上がるわよ」
先生「せーのっ!」
友「おー、さすがに高いな」
少年「ジュン、怖くねえのかなあれ」
友「頂上でハミパンしてると、すっげえ目立つんだな」
少年(あれ、あのパンツのシミ……)
少年(昨日も同じところになかったか?)
友「あ、ミカちゃんもハミパンしてる」
少年「マジかよ。珍しい」ジロジロ
少年「なんだ、ミカも白パンじゃねーか」
ツインテ「うそっ」グラッ
少女「えっ」ガクッ
先生「あっ」
少年「おー崩れた」
友「聞こえてたんだな」
少年「ちっ、結局11人か」
友「あっぶねぇ~。みんなやっぱり警戒しまくってるな」
少年「2組のデブが最後ハミらなきゃ俺の勝ちだったのに」
友「しかもピンクのレースとかな。嫌なもん見ちまった」
ツインテ「ちょっとトモキ~~」ビキビキ
友「ごめんって。だって珍しかったからさ、びっくりしたんだよ」
ツインテ「たまたまはいてきたのがこれだったから……はぁ」ガックリ
ツインテ「で、でもあたしのはかわいいリボンがついてるのよ?」
友「聞いてないし分かりっこないし」
少女「トシくんには、もう何も言わないよ」プイッ
少年「お、おう」
少年(……あんだけ汗かいてパンツを洗わないって、そんなことあるのか?)
----運動会前日/少年の家
少年(明日が運動会なので、今日は予行演習だけで下校になった)
少年(でも、帰ってしばらくすると、強い雨が降り出した)
少年(天気予報を見てみると、明日の朝までに雨は止んで、その後晴れるみたいだ)
少年(俺は夕食の豆腐ステーキを食べながら、ジュンのパンツのことを思った)
少年(いくらテキトーな俺だって、あれだけ汗をかいて汚れたら、シャワーくらいは浴びる)
少年(あの日のジュンから、ヘンな臭いはしなかった。だからお風呂はちゃんと入ってるはずだ)
少年(だとすると、お風呂に入っているのに、パンツはそのままということになる)
少年(そんなフケツなことは考えたくないけど……)
少年(でも、あの裾についた泥汚れ。あんなのなかなかできるものじゃない)
少年(俺はそこで、アイツのブルマに縫い目があったことを思い出した)
少年(縫い糸はブルマよりすこし薄めの紺色で、どうみても後付けのものだった)
少年(さすがに、バカと言われる俺でも何となく分かってきた)
少女(まさか……あいつの家はそこまで……)
少年(運動会が終わったら、アイツにそれとなく聞いてみよう……)
当日とは(ry
そろそろ佳境だろうか
こんなつもりでスレを開いた訳じゃないんだ…ただハミパンが見たかっただけなんだ!
続き待ってる
じゅんちゃんかわいい
としちゃん急に冴えた
ごめんなさい…1日遅れてしまいました
前編のラストまで一気に投下します
前後編に分ける必要もなかった気がしますが、内容がスレタイとかみ合わなくなってくるので…
>>1、生きていたのか!
----運動会当日
放送『これより、お昼休憩に入ります。午後のプログラムは、13時からの予定です』
少年「午後からが俺たちの本番だな」
友「組体操と、対抗リレーか……」
ツインテ「グラウンドまだぐちゃぐちゃよ。はぁ~っ」
少女「でも、汚れるのも今日までだから……」
ツインテ「あーもう、こうなったら泥団子みたいになってやる」
友「せっかくの大人パンツも汚れちゃうかもな」ククク
ツインテ「あんまり汚れたら捨てるしかないよね。あーあ、気に入ってたのになぁ」
少年「オレ飯食ってくるわ。あとでな」タッタッタ
友「俺とミカちゃん、もう家族ぐるみで仲が良くなったんだ」
ツインテ「だからレジャーシートも隣りあってるの。トモキ、行こっ」
少女「本当に、お似合いさんなんだね」クス
少女「……私も行かなきゃ」タッタッタ
少年母「ほらトシオ、このおかずも食べなさい」
少年「たらこのおむすびうめぇ」モシャモシャ
少年(でも、アイツの塩むすびのほうが美味かった……)
少年(…・・ん、あれは?)
少年(校庭の隅の隅、柵と茂みに挟まれた目立たないところに)
少年(小さなシートを敷いて、ジュンがちょこんと座ってる)
少年(……いっしょにいるのは、妹、だよな?)
少年(親は……どこか行ってるのか?)
少年(あ、塩むすび半分こしてる。妹が喜んでる)
少年(ジュンも嬉しそうだなあ……)
少年(いいなあ、塩むすび)
少年「な、なあ母ちゃん」
少年母「なに?」
少年「……あれなんだけど」ユビサシ
少年母「あれは……ジュンちゃん?」
少年「だよな。なんか、変じゃね?」
少年母「…………」
少年母「トシオ、これ持って行ってきなさい」
少年「これ、父ちゃん用の弁当じゃん」
少年母「お父さん遅れてくるっていうから、いいのよ」
少年母「それより早くこれ、ジュンちゃんと妹さんに」
少女母(……あとで、先生に訊いてみましょう)
少女「キヨ、おいしい?」
少女妹「うん」
少女「よかった」
少女妹「おねえちゃん、これから出るの?」
少女「そうだよ。お姉ちゃんね、組体操のピラミッドの、てっぺんになるんだよ」
少女妹「すごーい!」
少女「あとね、リレーのね、最後に走る人にもなったんだよ!」
少女妹「おねえちゃんかっこいい!」
ザッ
少女妹「!」ビクッ
少女「だ、誰?」サッ
少年「俺だよ」
少女「あぁ、トシくんか……」
少年「とっさに妹かばえるなんて、良いお姉ちゃんなんだな」
少女「どうしたの?」
少年「……これ」スッ
少女「お弁当箱……? なんで?」
少年「母ちゃんから。食えってよ」
少女「そんな……頂けないよ。気持ちは嬉しいけど……」
少年「お前だけじゃなくて、妹にもだよ。何言ってんだ」
少女「……!」
少年「ね、妹ちゃん。名前なんて言うの?」
少女妹「キヨ……」
少年「キヨちゃん、コレ食べたくない?」
少女妹「……あたし、おねえちゃんのおむすびでいい」
少女(『で』、なんだ……)
少年「そう? から揚げとか、だし巻きとか、おいしいぞぉ」
少女妹「……」ウズウズ
少年「という訳だ。残さず食べていけ。そんで後で俺に弁当箱返せ」
少年「ウチの家族は残すのに厳しいんだ。お前らが残すとなぜか俺が怒られる」
少年「少女、お前ガリガリなんだろ。リレーの時ばてたらクラスのみんなが迷惑するんだ」
少女「……」
少年「いいから全部食え。分かったな。そんじゃな」ドサッ
少年「あ、そうだ」クル
少年「おむすび、まだ残ってないか?」
少女「まだ一個あるけど……」
少年「それくれよ。ほら、おかず交換」
少女「……はい、どうぞ」
少年「やっとおかず交換できたな。さすがにベビースターがおかずは無理あるもんな」
少女「……トシくん」クス
少女「本当にありがとう。大事に食べるからね」
少年「大事に食べてて遅刻するとか、やめてくれよー」タッタッタ
少女妹「ねえ、おねえちゃん、あけていい?」
少女「いいよ。どんなのだろうね」パカ
姉妹「「わあ……!」」
----組体操
友(ま、予想はついてたけど)
少年(やっぱり地面はグッチャグチャのままだった)
ツインテ(もう、髪の毛も、顔も手も足も、あたしの大人パンツまでドロドロ……)
ツインテ(ブルマの裾から泥が入ってくるって、どういうことなの……)
少女「トシくん、いくよ」ヒソヒソ
少年「俺の足の上で滑るなよ」ヒソヒソ
ピッ
サボテン!
(ワーワー パチパチ
少年(あーあー、ホントにドロドロだな)
少年(泥団子……)
少年(……って、ケツの縫い目、ほつれてきてんじゃん)
先生「2段目、準備ー」
ツインテ(やっと、苦行が終わる……)ヒョイ
先生「ジュンちゃん……!」
少女「はい!」
ツインテ「頑張ったよね、あたしたち」ヒソヒソ
少女「そうだよ。全力でやったよ」ヒソヒソ
ツインテ「見せつけてあげな。ジュンって女の子の姿を」ヒソヒソ
少女「こんな時にカッコつけちゃって」ヒソヒソ
ピッ
少女「……」スック
ピラミッド!
(ウオー スゲー ワーワーワー
(パチパチパチパチパチパチ
(カシャ カシャカシャ
----校舎裏 水道
ツインテ「あー、泥がアソコまで入り込んでキモチ悪い~」クチクチ
友「俺たちしかいないからって、お前仮にも女の子だろ。ちょっとそれは……」
ツインテ「か・り・に・も? へぇ、トモキも言うようになったじゃない」
ツインテ「ふん、男はいいですね。こんなとこまで泥まみれにならないからねっ」クチクチ
友「だから、知らない人からだとそれ……エッチなことしてるようにしか見えないって」
ツインテ「わかったようっさいな」キュッキュッ ジャー
少女「……」バシャバシャ
ツインテ「お疲れ様、ジュンちゃん」バシャバシャ
友「なんというか、すっげえ、格好良かった」
ツインテ「ありゃあ敵わないね。あたしの完敗」
少女「……上に立ったときのこと、なんかあんまり思い出せないんだ」バシャバシャ
友「気分がハイになってたんだな」
少女「憶えてるのはね、大勢の人がわたしを見てたこと」
少女「それと、たくさんのカメラの音……」
ツインテ「はあーっ……呆れた」ガクリ
友「あんなの、写真で撮っても、ただの泥まみれの少女がポーズとってるってだけなのに……」
友「あの時のジュンちゃんの凄さっていうのは、あの場所にいないと理解できないと思う」
ツインテ「そうじゃないの。あたしは、ウチの小学校にもそういう写真を撮る奴らがいたんだって、ガッカリしてるの」
少女「え……なに、それ?」
ツインテ「小学校とか中学校に忍び込んで、あたし達みたいな子どもの写真を勝手に撮ってどっかに売る奴がいるのよ」
ツインテ「……泥まみれの少女がパンツはみ出しながらポーズとってた。ただそれだけなんだけど」
ツインテ「そんなのに興奮する大人が、結構いるみたいなの」
小学生より中学生でイメージされる
まあ、今どきの小学生って大人びているか。精神年齢は
少女「こ……興奮って、その……」
ツインテ「ああ、ごめんね。怖がらせちゃって」
ツインテ「戻ったら先生に言いましょ。ケーサツとか呼んでくれるはずよ」
友「ミカちゃん、なんでそんな事知ってんだよ……」
ツインテ「まあ……パパのお仕事関係、ってとこ?」
ツインテ「正直、もしそういうカメラが来ていたとしたら……」
ツインテ「あたしも撮られるだろうなってわかってたからさ」
ツインテ「今日だけは絶対ハミパンするもんかってね、大人パンツにしたの」
友「ずいぶんと自分に自信があるようで」
ツインテ「うっさい」
少女「あ、トシくん来た」
少年「おら、タオルだ使え」
友「サンキュ。気が利くなぁ」
少女「次が最後の種目かぁ」
ツインテ「そ。体操着はもうダメだけど、せめて身体は綺麗にしてやりたいじゃん」
少年「ジュン、ごめんな。俺自分のピラミッドが精一杯で、お前見れなかった……」
少女「よかった、見られなくて。なんか私、すっごく恥ずかしい恰好だったみたい」
友「残念だったな。あれは見とくべきものだった」
ツインテ「真下にいたけど、そのとおりね。ま、トシくんざーんねん」
少女「そ、そんなにすごかったの私?」
ツインテ「すごいもなにも……ねぇ?」
友「……まあね」
少女「うぅ……」
ツインテ「でも、もう一回すごいとこ見せられるじゃない。リレーで」
友「学年一のスピード、見せてやれ!」
少女「学年一じゃないって。私より速い男の子、絶対いるから……」
----クラス対抗リレー
放送『プログラムナンバー18。只今より、5年生および6年生による、クラス対抗リレーを始めます』
友「ま、俺は参加しないんだけどね」
ツインテ「クラスで足の速いのを、男女関係なしに十人集めただけって……なんかザツよね」
少年「俺がジュンにバトンを渡すのか……」ガクガク
友「お前って緊張するんだ」
ツインテ「なんかあたしまで走ることになっちゃったし」
友「お前変にすばしっこいもの。鬼ごっことか絶対捕まらないじゃん」
ツインテ「まーあたしは2番目だからお気楽な方よ」
少年「あ、始まる……」
放送『位置について……よーい……』
パーン!!
ワーワー キャーキャー
クラスメイト「ねえジュンちゃん、50メートル走何秒だっけ?」
少女「え、えーと、ごめんね、よく覚えてないけど」
少女「たしか、8秒はふつうに切ってたと思う」
(ヤバーイ フツートカイッテルヨ
(ヤッパアイツオトコダロ オトコンナダ
(バカ、ポコチンネーダロ
少女「……」
クラスメイト「あんなの、気にしちゃだめだよ。無視無視!」
クラスメイト「でも、やっぱりジュンちゃんがいれば、ウチのクラスは絶対優勝できるよ!」
少女「……ごめん。あんまり話しかけないでほしいかな」
クラスメイト「あ、うん。でも走る前に、これは言っておいた方がいいかなって……」
少女「え?」
クラスメイト「すごく言いにくいんだけど……ジュンちゃんのブルマ、おしりがちょっと破れてるよ」ヒソヒソ
少女「え、うそ……」サワサワ
少女「!!」
少女(縫い直したところが……)
少女(ほつれて……破れ始めてる……)
クラスメイト「あのね、それで、そこから下のパンツが、結構見えちゃってるの」ヒソヒソ
クラスメイト「そのカッコで走るのは、ちょっと可哀想かなって。でさ、私はリレー出ないからさ」
クラスメイト「少しの間だけ、ブルマ交換しない?」
少女(……)
クラスメイト「私のやつさ、大きめだからハミパンもしないよ。ジュンちゃんのやつサイズ合ってないよね」
クラスメイト「ほら、早くしようよ。もうミカちゃん走ってる」
少女「……わざわざありがとね」
少女「でも、ごめん。私、このブルマで走りたい、かな……」
善意というのはある意味悪意でもある
つまり余計な事
クラスメイト(誰のブルマで走っても、同じだと思うけど……)
クラスメイト「わかった。ジュンちゃんって度胸あるんだね」
少女「私、頑張るよ」
クラスメイト「私たちも、精一杯応援するからね。ファイト!」
少女「……」
少女(神様、お願いです。私のはいてるブルマを……)
少女(あと1日だけ、いや、せめてあと1時間、破かないで……!)
ツインテ「はいっ!」スタッ
第3走者「おし」パシッ
ツインテ「はーっ、はーっ、はーっ……」ゼエゼエ
友「お疲れ」
ツインテ「なんとか、トップ、保てた……」ゼエゼエ
(ワーワーワー
放送『5年1組、いまだにトップで第9走者へ! 速い!』
放送『しかし、すぐ後ろから6年3組が迫る。こちらも速い!』
係「5年1組と6年3組の第9走者、前にお願いしまーす」
少年「ふーっ」
少年「あートップとか勘弁してくれよ……」バクバク
少年「来た……」タッタッタ
第8走者「トシー!」スタッ
少年「うっしゃ」パシッ
少年「……」タッタッタッタッタ
少年「!?」タッタッタッタッタ
少年(やべえ、抜かされた)
放送『おーっと! 6年3組の最終兵器、ここで登場だァ!』
友「あー、ありゃ太刀打ちできないわ」
ツインテ「なにあれ、メチャクチャ速い……!」
友「あいつたしか、名門の陸上クラブ入ってて、地方大会出てるとかいう……」
ツインテ「そんなのがウチの学校にいたの……?」
友「トシはよくやってるよ。もっと引き離されると思った」
ツインテ「でも、ここで切り札出したってことは……」
友「ジュンちゃんの走り次第では、まだいける……はず!」
少年(うおおおおおおお)タタタタタタ
係「6年3組と5年1組のアンカー、お願いしまーす」
少女「はい」
少女(……)
少女(あれ、なんか急に)
少女(すごく、恥ずかしくなってきた……!)
少女(パンツ……ちゃんとしまってないと)グイグイ
少女(だめ……ゴムが伸びてるから出てきちゃう……)ハミー
少女(なんで……どうして……!)グイグイ
少女(これなら、パンツはかなきゃよかった……)ハミー
カシャッ カシャッ
少女(あ……カメラのおじさん達に……撮られてる……)
少女(おしりの破れたブルマをはいて、パンツ見せてる……貧乏な私を……)ジワッ
少女(……)イジイジ
少年(見えた! ジュン!)タタタタタ
少年(おいジュン! 何やってんだこっち見ろ!)タタタタタ
少年(俺近づいてるぞ! なにブルマの裾いじってんだ!)タタタタタ
少年(なに顔赤くしてんだ! なに涙目なんだよ! こっち向けー!)タタタタタ
少女(……)イジイジ
放送『おっとお! ここで5年1組にミスか!?』
少年「うおーーーいっ!!」
少女「……!!」 ダッシュ
少年「頼むぞ!」スタッ
少女「ごめんっ」パシッ
少年「あいつ……どうしたんだ?」ゼェゼェ
少女(よけいなこと考えるな……)タタタタ
少女(考えるな考えるな……)タタタタ
少女(考えるな考えるな考えるなっ……)タタタタ
放送『やっぱり速いぞ5年1組のヒロイン! もう横に並んだ!』
少女(……)
放送『残り半周! あっという間に抜いていった!』
(ワーワー イケーイケー カッコイー
少女(……ああ、みんな私を見てる)
カシャッ カシャカシャッ
少女(みんな私を撮ってる)
放送『最後の直線! このまま爆走少女がゴールかぁ!』
コッ
少女(あ)
ズシャーッ…
少女「…………」
放送『ぁ……』
友「……くそっ」ボソ
シーン…
少女「……」
少年「……ジュン」
ツインテ「ジュンちゃん!!」
クラスメイト「……立ってー!!」
少女「……」
(タテー! ガンバレー! ゴールハソコダ!!
(ワーワーワーワー!!
先生「ジュンちゃん大丈夫!?」タッタッ
少女「……ぅ」ヨロッ
放送『た、立った! 立ち上がったぁ!』
(ウオォォォォ!
ツインテ「いけぇーっ!!」
友「ゴールは目の前だぞー!」
少年「ジュン!!」
少女(痛い……)ズル…ズル…
放送『全身傷だらけです!』
放送『足を引きずりながら、ゆっくりと進んでいく!』
放送『あ、今、6年3組がその脇を駆け抜けて……』
放送『そのままトップでゴール!』
放送『次々とゴールしていきます!!』
ツインテ「ジュンちゃーんっ!」ポロポロ
クラスメート「あぁ、ああっ……」ポロポロ
少女「ぅぐ……」ガクン
友「ああ、だめか……」
少年「……」
少年「ジュン、立てーっ!!」
少女(トシくん……)
ツインテ「お願い! お願いだから立って!」ポロポロ
少女(ミカちゃん……)
友「ゆっくりでいいから、立て!」
少女(トモキくん……)
放送『おい! あとたった5メートルだぞ!!』
放送『順位なんてどうでもいいから、進め!』
(ジュンチャンッ ジュンチャンッ
放送『ジュンちゃん、ジュンちゃん!』
少女(みんな……)
少女妹「おねーちゃーんっ!!」
少女(……キヨ!!)ハッ
少女妹「がんばれーっ!!」
少女(キヨ……見ててね)グッ
ヨロ…ヨロ…
(ウオォォォォォォォ!!!
保健の先生「いくつかの外傷と、少なくとも捻挫はしているかと……」
教頭「先生、中止したほうが」
先生「……お願いです、続けさせてください」
先生「ここで止めたら、あの子はきっともっと傷ついてしまいます」
先生「ほら、あと2メートルなんですよ?」
教頭「……分かりました」
先生「ジュンちゃーん! ここよ! ここまで来て!!」
少女(先生……)
少女(……)ズル…ズル…
放送『クラスいち足の速い少女は、クラスいち強い心の持ち主だったッ!!』
放送『トップから3分遅れて、いま、いま、5年2組、ゴール!!』
パァン!!
放送『ああ、こんなに美しいものが見られるなんて、涙が出ます!』グスッ
教頭「君、落ち着きなさい」
放送『ずいまぜん』グスッ
(パチパチパチパチ ワーワーワー
先生「ジュンちゃん! よくやったわ!」グスッ
少女「先生、ごめんなさい……」
先生「いいの。ウチのクラスは一番なのよ」
少女「う、痛い……」
先生「ええ。すぐに保健室に行きましょうね」
少年「ジュンっ!!」タタタ
少女「あ、トシくん……」
ツインテ「なにやってんのよ……うちのクラス、ビリになっちゃったじゃん」
少女「えへへ、ミカちゃんごめんね……」
友「大丈夫……じゃなさそうだね。ゴールするなんてさすがジュンちゃん」
少女「みんなが応援してくれたから……」
ツインテ「もう、おでこの所、ひどい傷じゃない。痛かったよね……」ポロポロ
少女「泣かないでよ。こっちまで泣きたくなっちゃうから」
友「あれだけ転んで泣かないほうがすごいけど……」
クラスメート「ジュンちゃん! ごめんなさい!」
少女「え?」
クラスメート「走る前に、私が変なこと言っちゃったから……」
少女「……うん。そうかもしれないね」
クラスメート「う、うぅ……」ジワッ
少女「でも、私の事考えて言ってくれたんでしょ? それなら、もういいよ」
クラスメート「……ごめんね」
(オマエカッコイーナ ホレタ
(ワルグチイッテゴメンネ
(オトコンナッテイッテゴメン
少女「みんな、もういいよ。私こそごめん、ビリにさせちゃって」
(ソンナノキニスンナヨ
(ビリモオモシロイカライーヤ
保健の先生「ジュンちゃん、保健室に行こうか。歩ける?」
少女「大丈夫です……うっ」ガク
ツインテ「あたしが肩を貸します!」
友「俺も付き合いたいです」
保健の先生「でも、すぐに閉会式始まるのよ。付き添いは一人でいいの」
少女「トシくん」
少年「お、俺?」
少女「だめかな……」
少年「まあいいけど」
友「……しっかりやれよ」
ツインテ「あーあフラれちゃった」
少年「じゃあほら、肩掴まれ」
少女「うん」
ツインテ「ジュンちゃんのブルマ、ひどいことになってたね」
友「ケツのとこ、ビリビリに裂けてパンツ丸見えだったな」
ツインテ「あの子、あのブルマすごく大切にしてたみたいだけど、あれじゃもう捨てちゃうしかないよね」
友「そうだな……ん?」
友「あれ、あのおっちゃん。隠れてなにやってんだ」
ロリカメラマン「ふふ……」
パシャ パシャ
友「撮ってるの、まさかジュンちゃん……?」
ツインテ「…………」
ツインテ「許せない!!」タタタタ
友「あ、おい!」
ツインテ「教頭先生、あいつ!!」グイグイ
教頭「そこの君、無許可でウチの児童を撮影しているね」
ロリカメ「な、なにを根拠に」
教頭「この子がな、見てたんだよ。全てを」
教頭「フィルムをすべて渡しなさい。そうすれば今回だけは不問にしよう」
教頭(警察沙汰は、こっちも面倒だからな……)
ロリカメ「……くっ」
ロリカメ「くそぅ!!」ガシャッ ポイッ ポイッ ポイッ
教頭「こんなに撮っていたのか……」
ツインテ「あなたに撮られてた女の子ね、ひどくショックを受けていたわ」
ツインテ「されて嫌なことを、人にするな。子どもにそれを言われるなんて、恥ずかしいと思わない?」
ロリカメ「ぐぐ……」
教頭「早く出ていけ!!」
教頭「国母さん、ありがとう」
ツインテ「教頭先生、なんであんなヤツ許したんですか?」
教頭「んー、あー、その、彼も反省しているようだったからね」
ツインテ「……どうにかしてくださいよ。あたし達、困ってるんです」
教頭「次の会議で、議題にあげてみるよ」
教頭「先生たちがちゃんと対策するから、安心しなさい」
ツインテ「お願いします」ペコ
ツインテ「なによ変な顔して」
友「よかった。そのままおっちゃんに突っ込むのかと思った」
ツインテ「あたしはそんな馬鹿じゃないのよ」
友「閉会式始まるぜ。早く行こう」
----保健室
保健の先生「ちょっとしみるよ。我慢してね」チョンチョン
少女「ひぅ!」ジワ
保健の先生「よくこんなボロボロでゴールできたね。先生びっくり」
少年「骨は折れてないの?」
保健の先生「軽めのねんざと、数か所の擦り傷。おそらく骨の異常は無いでしょう」
保健の先生「でも、しばらく運動は我慢してね」
保健の先生「それと2~3日は、家で足を固定して、安静にしてること。いい?」
少女「はい」
保健の先生「親御さんは今日いらっしゃる? 車かなんかで送ってもらうのがいいけど……」
少女「……」
少年「あ、ジュンの親は忙しいみたいで来てないんだって」
保健の先生「……そう、じゃあ誰かに頼むか、タクシーを呼びましょうか」
保健の先生「あ、ちょっと呼ばれたわ。このままここにいてね」ガラガラ
少女「……」
少年「……」
少女「私の親、忙しいって……」
少年「あ、ごめん、とっさに……」
少女「……」
少女「キヨが待ってるの。早く戻らないと……」
少年「ここにいろって言われたろ」
少年「大丈夫だ。俺の母ちゃんあたりが何とかするさ」
少女「……」
少年「……なあ」
少年「言いにくいんだけどさ……」
少年「そのブルマ、脱げよ」
少女「……え」
少年「もうそれ、ブルマじゃなくてただのボロきれじゃん。脱いだほうがいいって」
少女「……」スルスル
少年「……それ広げてみろよ」
少年「ほら、ボロボロだろ。すっ転んだときから、お前それだったんだよ」
少女「……」
少女「…………」ジワ
少女「……うぁ」ポロポロ
少年「あれ、そんな恥ずかしかったか? ごめん」オロオロ
少女「あ、あぁ、あっ」ポロポロ
少年「それハンカチじゃなくてブルマだぞ、顔に当てるなよ……きたねぇぞ」
少女「うあぁーーーーん!!」ボロボロ
少女「あぁーーーん、うっ、うぁーーーーん!!」ボロボロ
少年「……」
少年(なんだこれ……大泣きじゃん)
少年(……い、居づれぇ)
少年(保健室出よう)ガラガラ
少女「……お母さんっ」ボロボロ
少女「うわーーーーーん!!」ボロボロ
----廊下
保健の先生「……どうしたの一体?」
保健の先生「外まで普通に聞こえてくるんだけど……」
少年「それが、急に泣き出して……」
友「よう。終わったぜ」
少年「お、お前ら来たのか」
ツインテ「ちょっと、これ泣いてるのジュンちゃんなの?」
少年「まあな」
友「ジュンちゃんが泣くの初めて聞いた……」
ツインテ「あんな激しく泣くなんて、トシくん一体何したのよ」
少年「ブルマ破けてるって言っただけだぞ」
友「……」
ツインテ「……ちょっと場所変えましょ」
少年「保健の先生、もうちょっとだけ入らないであげて」
保健の先生「分かったわ」
----空き教室
友「……どこから話そうか」
ツインテ「トシくんさ、ジュンちゃんについて、なにか変わってるなって思ったことない?」
少年「?」
友「ほら服とか行動とか」
少年「ああ、あいついつも同じような服着てるよな」
少年「で、今日の運動会に親は来てなくて、妹とふたりで塩むすびを食べていた」
ツインテ「あの塩むすびはおいしかった……じゃなくて」
ツインテ「何で親が来てないのって事と、なんで塩むすびしか食べてないのって事ね」
友「塩むすびだけって、夏休み遊んだ時もそうだったな」
少年「……そうだ。あいつのハミパンも変だよな」
少年「あんなハミパンっていつもするもんなのか?」
ツインテ「よっぽどサイズ小さいのはいてなきゃ、あそこまでならないよ」
ツインテ「で、ここからの事でトシくんはどう思った?」
少年「あいつの家は貧乏なんだろうなってこと」
友「それもかなりの……ね」
ツインテ「さすがのトシくんでもそう思うよね」
少年「あ、まだ変なところあった。あいつのパンツなんだけど……」
---
友「ひどいな」
ツインテ「下着が2日に1回しか換えられないってこと……?」ゾワ
ツインテ「女の子として、地獄だわそんなの……」
友「靴下が汚れてるのも、そういう事だったのか」
友「服も靴もきれいにしてるけれど、毎日はく靴下の汚れは隠せなかった」
少年「わざわざはかなくてもいいじゃんとは思うけど」
ツインテ「スカートに素足だと、なんか余計ヒンソーに見えるのよ」
友「靴擦れするしな」
友「そして、あのブルマだ」
友「ジュンちゃんは、たぶんあのサイズ違いのひとつしか持ってない」
ツインテ「そうね。言い方悪いけど、不格好だった」
少年「最近は、日に日に汚れていくのが分かったもんな」
ツインテ「でもさすがに、縫ってまで使うってのはどうなの?」
友「良く分かんないんだけど、ブルマって高いの?」
ツインテ「体操着は親が買ってるから、よく分からないけど……」
ツインテ「たまにバザーとかで、お古が安く買えたりするはず」
友「貧乏でも、せめてお古の一つくらいは買えるだろうし……」
ツインテ「たまに服を洗濯できるくらいの余裕はあるからね」
友「話を戻して、ジュンちゃんは貧乏で、家族も複雑そう」
少年「運動会なのに親はいなくて、妹と2人きり」
ツインテ「親が来れなくても、親戚の誰かは来そうなものだけど……」
少年「妹を、ジュンはめちゃくちゃ可愛がってた」
ツインテ「まさか、妹しか家族がいない……?」
友「……そんな」
少年「本当に親が忙しくて来れなかったってのは?」
友「親が忙しく働いてたら、塩にぎりしか食えないわけないだろ」
ツインテ「もしくは、ギャクタイ、されてるとか……?」
3人「「「…………」」」
友「戻ろう。もうそろそろいいと思う」
ツインテ「でもこのことは、いつかちゃんと話し合わないとね……」
----廊下
少年「あれ、母ちゃん」
少年母「あの子の妹さん、校庭でぽつんとしてたから、連れてきたのよ」
少年母「そこのドア開けたらあの子ひどく取り乱してたから、お母さんびっくりしちゃった」
少年母「でも可愛い子ね。あたしが近寄ると、ぎゅっと抱きしめてきたのよ」
少年母「しばらく泣いてたけど、そのうちいろいろ話してくれたわ」
少年母「お弁当がおいしかったって、何度もお礼を言われたの。本当にいい子ね」
少年「……いろいろって、どんな話したの」
少年母「……まあ、ふたりの女の話よ」
少年「ごまかすなよ……」
少年母「タクシー裏口に呼んでるから、肩持って送ってあげなさい」
少年母「トシオ、走ってるとこ恰好よかったわよ。抜かされてたけど」プププ
少年「か、母ちゃん……」
少年母「じゃあ先に帰ってるわね~。今夜はチキンカレーよ」フリフリ
友「やっぱりいい人だな、お前の母さん」
ツインテ「ね。でもあのお母さんからこの息子なんてね……失礼」
少年「俺は父親に似たんだよ」ガラガラ
少女「……あ」
少年「あー、そのー俺は何も見てないぞ」ヨソミ
少女「……ぷっ」クスクス
ツインテ「足大丈夫なの? 包帯ぐるぐるじゃない」
少女「ねんざしちゃってね。運動はしばらく無理だって」
友「ジュンちゃんもう着替えたんだ」
少女「うん。トシくんのお母様が持ってきてくださったの」
少年「お、お母様って……」
少女「先生、ありがとうございました」
保健の先生「お大事にね」
少年「ほら、いくぞ」グイッ
少女妹「おねえちゃん、手……」スッ
少女「うん。さ、帰ろうね、キヨ」ギュ
ツインテ「あたし、ジュンちゃんの荷物持つよ」
友「しょうがない。俺はトシの持ってやる」
ツインテ「キヨちゃんっていうの? 可愛いね。あたしはミカ、よろしくね」ニコ
少女妹「ミカおねえちゃん、よろしくね」ニコ
友「俺はトモキっていうんだ。キヨちゃん、何歳なの?」」
少女妹「6さい……」
友「じゃあ保育え……来年は小学生なんだね」
少女妹「そうだよ。ランドセル買ってもらうの!」
ツインテ「小学校はね、楽しいところだよ。友だちもできるし、ね?」チラ
少女「うん!」
少年「ぅ……まあな」
友「あれ、俺友だちに逆戻り?」
ツインテ「アンタ今日あんまりカッコよくなかったから」
友「きっついなあ……」
少年「お、裏口だ」
少女「裏口って、なかなか来ないよね」
友「でもここからなら、校舎出てすぐに道路だしな」
ツインテ「はいジュンちゃん、靴。履ける?」
少年「履くの無理だろ、ほら手伝ってやる……」
少女「あ、ありがとう……」
----裏口
少女「よい、しょっ」トスン
少女妹「うわー、タクシーだー」キョロキョロ
少女「お待たせしてすいませんでした」
運転手「いえいえ、それでどちらまで?」
少女「ここに書いてある住所までお願いします」スッ
運転手「承知しました」
少女「それじゃ、今日はみんな、迷惑かけて本当にごめんね」
ツインテ「ごめんねより、ありがとうが聞きたいよ」
少女「……うん。みんな、ありがとうね! じゃあね!」フリフリ
少女妹「またねー」フリフリ
3人「「「またねー」」」
ブロロロロ…
少年「行ったか」
友「ジュンちゃんどこに住んでんのか、分からなかったな」
ツインテ「タクシーのお金、どこから出たのかしら」
少年「母ちゃんだろうな。どうせ万札くらい渡してんだろう」
少年「『ごめんね今一万円札しかないの~』とか言いながらな」
ツインテ「意外と似ててムカつく」
友「親子だしな」
少年「ものまね上手いだろー」フンス
友「ああ、とってもキモかった」
ツインテ「ジュンちゃん……大丈夫かなあ」
少年「ケガのことか?」
ツインテ「それもそうなんだけど……ほら」
友「そうだな……」
ツインテ「うん。あたし達の前じゃなんでもないようだったけど」
少年「そうだ、さっきの話の続きなんだけど……」
ツインテ「今日はやめにしましょ。あたしも疲れた」
友「また今度しっかり話そう」
友「それはそうと、ミカちゃんそのパンツ捨てんの?」
ツインテ「……洗ってみて、汚れがとれなきゃね」
ツインテ「っていうか、なんでそんな事聞くのよ。このヘンタイ」
友「気になるだろ、彼女のパンツがどうなるかぐらい」
ツインテ(やっぱりコイツのカノジョやめようかな……)
少年「俺らも帰るか」
友「おうよ。じゃあな」
ツインテ「またね」
少年「またなー」
少年「……」テクテク
少年(ん、この匂いは)
少年(……どこかの家でカレー作ってるな)クンクン
少年(そういえば……俺も腹が減ってきた)
少年(ウチもチキンカレーだった! はやく帰ろう!)タッタッタ
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パッとしないですが、これで前編は終わりです
ありがとうございました
後編は、ハミパンはほとんど関係ありません
少女「私らしいってなんだろう」
というスレタイで近いうちやる…と思います
よろしくお願いします
……書けば書くほど、小学生という設定に無理があることが身に染みてわかりました
ちょっと小学生としても精神が成熟しているぽいからだろう
俺は別に気にならない
乙
昔の小5位だろ
中2位でやっとこれ位になる子もいるし個人差だよ
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