【ゆるゆり】京子「私だけがいない街」 (18)

――――

編集者「あのねえ、「伝わってこない」んだよね」

編集者「キャラの心情とかストーリーの悲哀とか」

編集者「分かるんだけど「足りない」」

編集者「もっと踏み込んで書かないときっと読者には届かないよ」

編集者「二十八歳? ……う~ん」
           コノギョウカイ
編集者「あなた本当にマンガ業界で踏ん張れる?」


私はこれでも身を削る思いで書いているつもりだ  


編集者「あ……もうデビューなさってるんですか」

編集者「じゃあ〈先生〉だ」

編集者「失礼しました歳納京子先生」

編集者「どのような作品を描かれていたんですか?」

京子「アニメの同人誌を…」

編集者「同人誌ですか……ああ、なるほど×2」

京子(なるほど×2ってなんだ。「だから浅い」とでも言いたいのか!?)

編集者「今日はお持ちでは…」

京子「いえ」

編集者「そうですか、残念」ニヤニヤ

京子(ウソつけ。読みたくないからホッとしたって顔に書いてあるぞ)

編集者「まあまたいずれ…」

京子(「後日」じゃなく「いずれ」か…)

京子(「下のカテゴリーでは通用しても無理」って事だ)

京子「出直します」

――――――

メジャーな雑誌の編集部としては妥当な判断なのかもな

デビューもしている28歳の私に求められるのは「即戦力」であることだ
第一線で描く作家達と同等以上のクオリティ…届いてないのは自分でもわかる

『踏み込みが甘い』 『伝わってこない』
       アイツ
腹正しいけど編集者の言う通りだ
だが一番応えたのは……
            アナタ
『あのですね…作品から「作者の顔が見えてこない」んですよね……』

この言葉だ。




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ヤシロは西垣
カヨは結衣
アイリは綾乃
そしてあかりは空気
先読まなくても余裕で予想出来る

>>2
(全部コピーで書くわけ)ないです

>>3
でもキャストは大体いっしょだよね

>>4
じゃないとクロスの意味ないからね

これは自分とキャラクターを同化させるという事じゃない
キャラクターの心の奥まで掘り下げる事によって出てくる
「読み手の心に届く言葉」が足りないという意味だ

それは同時に自分の心を掘り下げる作業でもある
「踏み込んでない」部分があるとしたらそこだ


怖い



踏み込むのが怖い
自分が「何も無い」者
「つまらない」者である事…
それを確認してしまう事が怖い

私としては充分踏み込んで書いているつもりだった
でも他者の評価は「足りない」だ

本当にギリギリの所まで踏み込んで描いていない事を読み手は見抜いてしまうものだ


【作者の顔が見えて来ない】


日々 心によぎる

「あの時こうしていれば」

という言葉


後悔の言葉なんかじゃない

「こうしていれば出来たはず」という

自分の心が真に折れるのを防ぐ言い訳だ
その言い訳が成り立たない領域…
「自分の顔」をさらして他者から評価をされるという事…

僕だけがいない街は読んだことないからわからんけど、ゆるゆり要素入れるなら結京、ひまさくにしないと荒らしが湧くから注意な

>>7
それはカップリングって意味じゃなくて攻めか守りかってことかい? さくひまとか京結とか

カプの話だろうけど、そんなことないから耳を貸す必要はないよ
百合だとアンチが湧くのさ

京子「1980円になります」

京子「ありがとうございました~」

京子「ふう…」

花子「大丈夫だし? 歳納さん」

花子「あ、ラムレーズンは勝手に食べちゃダメだし!」

京子「商品なんだから食わないよ…」


顔が合う度に同じセリフを言う。
というかそれ以外の会話をしたことがない。
私の事を知ってるわけでもなさそうだし…変なヤツ。

誰も気づいていないけど
何事もない日常の中で
それぞれの人間の周りでは常に「何か」が起き続けている

その中で「何を拾うか」は重要な事だ
マンガ家ならなおさら。
アンテナの張り方にもセンスが問われる…

…ってまたマンガの事考えちまってたよ……
バイト中だぞ…

ドクン



客「会計お願いしま~す」

京子「1980円になります…」

京子「ありがとうございましたー」

京子「……」

京子(間違いない…また〈アレ〉が来た!)

京子(関わりたくないけど…探すしかない)


探せ…探すんだ…

「違和感」を…!

少年A「おお~~」

少年B「すげー…エロいな…」

京子「コラ! 子供はそんなの見ちゃダメだぞ~~」

少年A「え~。お姉さんはこういうの興味ないの?」

京子「ふふん、私はオトナだから別に興味…ないし」

少年A「ふーん」

京子「うんうん。って…そうじゃなかった……」

京子「……ん?」


キャー! ニゲロー! アソコノミセニツッコムゾー!


京子「な……トラックが突っ込んでくる!」

京子「君達…危ない! こっちに来て!」

少年「えっ…?」

京子「危なああああいっっ!」ガバッ


パリーン

―――――――

京子「……ん」

花子「おはようだし。歳納さん」

花子「二日経ったし、自分が誰とか、自分がなんで病院にいるかわかる?」

京子「歳納京子…28歳…コンビニにトラックが突っ込んできて事故った…」

花子「うん、OKだし。お医者さんが外傷はほとんどなくて、2、3日もすれば退院できるって言ってたし」

花子「誰かに連絡入れるし?」

京子「いや…いいよ、わざわざ知らせたい人は…いない」

花子「……」

花子「ざし! ざし!」

京子「な、なにそれ…なんかのジョーク?」

花子「なんか薄い膜で覆われてるみたいだし」

花子「歳納さんって他人に心開かなそうだし」

花子「笑わないし」

花子「でもちょっと見直したし」

京子(見直した…?)

京子「何が…?」

花子「子供…助けたし」

花子「トラックの運転手さん、運転中に心臓麻痺で亡くなってたらしいし」

花子「あと、幸い死傷者は運転手と歳納さんだけらしいし」

京子「そう…」

花子「それじゃ、早く良くなってバイト帰ってきてほしいし、一人抜けると忙しいし」

花子「あ、そうだ。「結衣さん」が明日来るそうだし!」

花子「じゃ、看護師さん呼んだら直帰するし。さよなら」


パタン
―――――――――

京子「……」テクテク

?「……」

京子「…?」

京子「なんだあいつ…変な女」

―――――――――


昔の夢ばかり見る…
なんでだ?
やっぱり走馬燈なんじゃないのか? 

えーと…あの時少し話した気がする…

そうだ 池田千鶴

確か…あの後間もなく…

『死んだんだった』


無関係に思えるバラバラの出来事も実際は全て連鎖の中の出来事なのだと知ることになる

「事故」はその始まりだった。

思い出すことができない
少女の「言葉」を
再び「彼女自身」の口から聞くことになるとは
この時はまだ知る由も無かった。

その「少女」は笑っていた

なんとなく
ただ何となくその道を通った

「池田千鶴」が行方不明になって十日ほどたった登校時の事だった
ゴミ袋の中に見覚えのある服が見えた

理解できなかった
「ゾっとする」という感覚を初めて体感した

気が付くと学校を通り越していて
知らない家の庭で吐いていた

走りすぎたせいか
あの「少女」の笑みのせいか…

多分 両方だろう

「池田千鶴」の顔を最後に見たのは
黒く縁どられた写真の中だった

いつものように
その目はこっちを見ていなかった

―――――――――

京子「ふぅ……」ガチャ

結衣「おう、京子久しぶり」

京子「おう、結衣。なんで家に来たんだ? 布団も一つしかないぞ」

結衣「大丈夫だよ。夜中いろいろする時とか気にしないからさ」

京子「なっ!? そんなことしねーよ!」

結衣「まあいいだろ、仕事もしてないお前を何年も家に置いてやったのは誰だと思ってるんだ?」

京子「も、申し訳ございません結衣さま…」

酉違うけど同じ人です

続きはよ

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