✱1✱
「ゴホンゴホン」
ザーザーー・・・・・・
俺は今風邪をひいて寝込んでいる。気分は最悪。
そして俺の気分に比例して外は豪雨だ。
今年34歳独身。
こんな俺だがもちろん若い時はあったし、母親の腹から生まれた。
そこんとこはみんなといっしょだ。
ただひとつだけ、確実にみんなと違う点がある─────
俺が生まれたその日はとても晴れやかな晴天だったという。
父親がいうには、生まれた瞬間の俺はまるで神の申し子のようだったという。
たいていの親はわが子に対して同じことを思ってるんじゃないだろうか。
しかし、俺は正にそのとおりだった。
いや、その時父親は俺が本当に神の申し子だとは知らなかったが。
それから俺は成長した。
小学生になるまでも色々あったが、まあ省こう。
「それ」がはっきりしだしたのは小学生の頃からだからだ。
年に一度の遠足。その日が近づくと俺も含めてみんなウキウキだった。
遠足当日はかならず晴れだった。6年間。
これはなんてことない。みんな運が良かったのだろうと思うだろう。
これも年に一度の運動会。俺は運動がもっぱら苦手なので、憂鬱な行事だ。
それを自覚した4年生の時から卒業まで、運動会が実行されることはなかった。
実施日は雨。延期日も雨。延期日の延期日も雨。
保護者の皆様にはさぞ迷惑をかけただろう。
他にもどこかに出かける時はすべて晴れた。
嫌な行事には雨が降った。
そう、お察しのとおり俺は晴れ男なのだ。
しかしただの晴れ男ではなかった。
この能力(?)は歳を重ねるごとに強烈になった。
そのうち、俺の気分次第でも天気を左右するようになった。
これはもう確定事項だった。俺が天気を左右している。
小中学生の時はよかった。
だが大人になってからは違う。雨が降ってほしいことや晴れてほしいことなんて滅多にない。
ただ鬱陶しいだけの能力だ。
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「信じないわ、そんな話」
「いや、俺が成長してく中で確信したんだって。」
「なによそれ。妙にかしこまって『そろそろ打ち明けたいことがある』なんて言ってたからどんな話だろうと思って聞いてたら。バカらしいから帰るわよ?」
「本当なんだって。こんなこといってからかってどうする?」
「・・・仮にそれが本当だとしてもね。
ただ運がいいだけじゃないの。なによ『俺が天気を左右してる』なんて偉そうに。
本当にそんな能力だったらね、天気予報を覆したり台風を消し去ったりするものよ。そんなことある?」
「台風を消したことはないけど、出したことは・・・」
「それが驕りだっていうのよ。
元から出る予定で偶然あなたが台風を出したい日に重なっただけかもしれないじゃない。
このあと用事あるから私行くね。」
「・・・・・・」
帰り道には朝から重く垂れていた雲からぽつりぽつりと雨が落ちてきてる。
思ってもみなかったことを言われた。
今まで天気予報に興味を示したことは基本なかった。
もしかしたら天気予報をことごとく覆して生活していたのかもしれない。
だがもしそうではなかったら?
俺がその時の気分で左右しているはずの天気が天気予報で出されていたら?
俺の気分と天気が比例しているのはもう間違いない。34年生きてきてそれが覆ることはなかった。
もし天気予報であらかじめ予知されてるとしたら…
もし天気があらかじめ決まっていたとしたら
俺の運命が天気に左右されてる……いや、俺の運命は始めから決まっているということか?
冷たい風が吹きぬけた。
マジかよ良純最低だな
その後数ヶ月流れた。
俺はあの日から毎日天気予報を確認している。
やはり俺の気分で天気予報が覆ることはなかった。
ただ俺が不機嫌になるタイミングでカミナリグモが出はじめ、俺に幸運が降りかかるタイミングで空は晴れた。
やはり僕の運命ははじめから決められていたようだ。怖くなった。哀しくもなった。
その日以来、朝からだいたい一日中思い曇天だ。
そんなある日。俺の35歳の誕生日。
嫌なことに気づかせてくれて彼女に呼び出されて喫茶店に向かった。
普通に考えれば祝ってくれるのであろう。
祝われれば俺も嬉しい。
だから祝われるわけでは無さそうだ。
天気予報のアナウンサーは言っていた。
「お昼ごろから激しい雨が降るので傘を持ってお出かけください。」
まあ別れ話が妥当か。
俺は天気に運命を決められるのは嫌だから約束をすっぽかして家でゲームでもやろうかとも考えたが
おそらく変わることはないだろう。
むしろ祝おうとしてたのに待ちぼうけを食らった彼女が俺に別れを告げる、なんて展開になるかもしれない。
そんなので豪雨になるのも嫌なので約束の店に行った。
待ってる
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