誓子「イサムくん」 (28)

このSSは次の要素を含みます。
・百合

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爽「これがリカちゃん?」

誓子「うん、でこれがカレシのイサムくん」

爽「カレシいるんだ」

誓子「うん。いまのカレシはイサムくん。
   昔は他の人がカレシだったんだって」

爽「そうなんだ」

誓子「うん、じゃあ始めよ。私からね」

爽「どーぞ」

誓子「ねえねえイサムくん」

爽「なんだいリカちゃん」

誓子「わたしね、イサムくんのおよめさんになりたいの」

爽「ぼくとケッコンがしたいの?」

誓子「うん!
   そして子どもを3人つくって、毎日おいしいお料理つくってあげる!」

爽「それはステキだね」

誓子「ステキでしょ」

爽「でも、どうしてぼくがそんなに好きなんだい?」

誓子「だってイサムくんはカッコイイし、頭もいいし、お金持ちだし、オトナだし」

爽「そうかなあ」

誓子「そうなの!
   とにかくわたしは、イサムくんとケッコンしたい!」

爽「そうだね、ぼくもリカちゃんのことが好きだから、ケッコンしようか」

誓子「うん!」


爽「ロン」パタン

揺杏「げっろ、マジか」

爽「フッフッフ油断は禁物だぞー?
  タンヤオイーペーコードラドラで8000な」

成香「まったく警戒していませんでした……ヤミテン怖いです……」

誓子「8巡目でそれって……随分手が良かったのね」

爽「さーてこれで終わりか!
  私がトップで揺杏がラス。
  じゃあ揺杏約束通り、アイスおごりな!」

揺杏「はいはいお安い御用ですよーだ」

誓子「それにしてもいつからだっけ、こうやって罰ゲーム付けるようになったの」

成香「確か1ヶ月くらい前からですね」

由暉子「爽先輩がより士気を高めるためにと言って
    最後の半荘だけ罰ゲームをつけだしたのが始まりですね」

成香「最初の罰ゲームは私でした……爽さんの荷物重かったです……」

誓子「私も4,5回やったっけ……全部飲み物とかアイスのおごりだけど」

由暉子「私は部室の片付けでした」

揺杏「にしても罰ゲーム入れ始めてから爽一回も負けナシじゃね?
   強すぎるんですけどー」

成香「すごいです」

誓子「もしかして罰ゲームしたくなさに能力とか使ってるんじゃない?」

爽「使ってないって!
  子どもじゃねえしそんなヒキョーなマネしないよ。実力だ実力」

誓子「どうかしら? 爽昔から負けず嫌いだし」

爽「お? 今チカから強烈なブーメランが飛んできたぞ?」

誓子「どういう意味よ」

爽「その言葉そっくりそのまま返すって意味さ」

誓子「な! 私だって昔よりその辺はマシに……
   なってないかも」

爽「はっはっは、素直に認めたか。かわいいヤツめ」

誓子「何言ってるの」


揺杏「爽ー、アイスは『爽』でいい?」

爽「またそれかよ! そのネタ何回目だ」

揺杏「だって名前ぴったり一致してるしさー。
   『爽』食べる運命の下に生まれてきてるよ」

爽「まあ美味しいし好きだけどさ……
  今氷っぽいのより普通にミルク感あるのがいいな」

揺杏「はいはい、じゃー何かテキトーに探して買ってくるよ」

爽「頼んだぞ」

誓子「さてじゃあ、今日は帰りましょうか」

揺杏「あ、私ちょっと残ってくわ。帰る前にプリント終わらせときたい」

由暉子「私も少し残ります」

爽「え、ちょ、揺杏アイスは?」

揺杏「すぐ終わるプリントだし後でちゃんと買いに行くって。心配すんなー」

爽「ならいいけど。ちゃんと買うんだぞ」

誓子「そんなにせびるほど食べたいの? 子どもみたい」

爽「うるさいな、今脳がアイスになってんだよ。わかるだろそーゆーの」

誓子「はいはい」

成香「では、私達は帰りますね。さようなら」

揺杏「おっつー、じゃあねー」


バタン


揺杏「ふー、じゃあやるかー」

由暉子「……」

揺杏「ところでユキはなんで残ってんの?」

由暉子「あ、少し麻雀の勉強をして帰ろうと……
    戦術書を」パラッ

揺杏「おー、いい心がけだ。でもその本難しーよね、私全然読めてないわ。
   せっかくユキが持ってきてくれたのになんか悪いね」

由暉子「いえ、難しめの本なので……」

揺杏「そっか。よーしとりあえずこれ仕上げて、爽にアイス買ってやんねーと」カキカキ

由暉子「……」

揺杏「……」

由暉子「先輩達って」

揺杏「ん?」

由暉子「仲良いですよね。先輩達って」

揺杏「ん? まあ昔からの幼なじみ多いしね。羨ましい?」

由暉子「いえそういうわけでは……
    なんとなく、喧嘩とかはしたことないのかなあと」

揺杏「アハハ、喧嘩ね。昔はしょっちゅうだったよ」

由暉子「そうですか」

揺杏「特に爽はヒドかったねー幼稚園の頃だけど。
   人の気持ちがわかんねータイプっていうか、何かの度に怒らせること言ってさ。
   殴り合いなんてしょっちゅう」

由暉子「え、殴り合いですか」

揺杏「ゲームで負けた時とかもヤバかったね。
   爽もチカセンも負けず嫌いすぎてさ、どっちかが負けた時は
   『お前ズルしただろ!』『してねーよ!』の言い合い、からの取っ組み合い」

由暉子「ああ……」

揺杏「まあ子どもだしちょっと殴ったらお互い大泣きしてたけどね。
   大抵遊ぶのは誰かの家でだから、喧嘩の度に親が来て両成敗ってパターン」


由暉子「……昔は激しかったんですね」

揺杏「アハハ、まーね。
   それに比べちゃ今は二人ともだいぶ落ち着いたよ」

由暉子「……なるほど。揺杏先輩は大人しかったんですか?」

揺杏「あ、うーん……正直二人よりは大人しくしてた自負あるけど、
   客観的に見たらどーだろね。私もけっこーキレてたかも」

由暉子「まあ、子どもは感情を露わにするものですから。
    怒るのも悪いことではないかと」

揺杏「アハハ、そっか。
   まーでも根は悪いヤツらじゃないし、楽しい思い出のほうが多いよ。
   どっか遊び行く時は大抵三人そろって親に連れてってもらったし、
   オリジナルの遊びなんかもたくさんやったし」

由暉子「そうなんですか」

揺杏「色々あったけど、今も付き合い続いてるし、一生の友達って感じだね。
   一緒にいると楽しいし」

由暉子「……」

揺杏「……やっぱちょっと羨ましーっしょ」

由暉子「……少しだけ」

揺杏「アハハ! まーユキはこれからだよこれから。
   成香と私だって出会って一年ちょいだけどもうだいぶ仲いいし、
   ユキも一年後はもっと馴染んでるって」

由暉子「だといいですが」

揺杏「まー既に馴染んではいるけどね。
   さーて、早くこれ仕上げないと爽に怒られるなー。
   ごめんね、ちょっと集中するわ」

由暉子「はい」

揺杏「えーと二酸化炭素の結合のしかた? 何だっけなー」

由暉子「……」パラッ


爽「はー空気が気持ちいい! これが外かー」

誓子「何その今まで引きこもってた人みたいなセリフ」

爽「座りっぱなしで疲れたまってたからな。
  はー解放的ー」ノビー

誓子「その伸びる動作やめなよ。おじさんみたい」

爽「いいだろー別に。凝りがほぐれるし気持ちいぞ」

誓子「女子高生としてのプライドみたいなのはないの?」

爽「私は肩書きに縛られない存在なんだよ」

誓子「はあ、もう……
   それにしても、こうやって二人で帰るのも久しぶりよね」

爽「あー、そうだな。
  いつぶり? ひょっとして私らが一年生の頃以来?」

誓子「二年の時も何回かあったわよ」

爽「そうかあ。揺杏が入ってから揺杏と三人のパターンが多いもんな」

誓子「そうね。あと私と揺杏だったり爽と揺杏だったり……
   なるかは家が反対方向だしなあ」

爽「その点私と揺杏はすごいよな、最後まで道ぴったりだもん」

誓子「二人とも寮だからね」

爽「おいおいそこは『やっぱこれだねー』って続けるとこだろ?」

誓子「わかっててスルーしたの」


爽「なんだよノッてくれないとかつまんねー」

誓子「もう耐性ついちゃったのよ。
   何回そういうの振られたと思ってるの」

爽「ブランク除いたらまだ二年じゃん」

誓子「ブランクあっても慣れてるもん」

爽「それは私のネタセンスが幼稚園時代と変わらないと言いたいのか?」

誓子「別にそういうわけでもないけど……
   まあ昔からそういう性格なのは変わらないね」

爽「ナツいね幼稚園時代。
  私とチカがたまたま同じクラスになって、なぜか仲良くなって」

誓子「それで爽経由で揺杏と知り合ったのよね。
   きっかけとかもう全然覚えてないけど」

爽「よく三人の誰かの家に遊びに行ってたなー。
  謎のトランプ遊びとか開発して」

誓子「どんなのやったっけ」

爽「同じ数字4枚そろうまでひたすら1枚ずつ交換するゲームとか、
  裏にしたカードのマークと数字を当てるまでやるゲームとか……」

誓子「何それ、すごくつまんなさそう」

爽「うん、つまんなくてすぐ飽きてたけどな。
  やっぱ7並べとか大富豪とか考えた人は偉いわ」

誓子「そうね。他には何やったっけ」

爽「まあ普通にオセロとか将棋とかもやったよな。
  後はなんだ、ゲームキューブ?」

誓子「ああ、ゲームかあ……」

爽「そうそう、負けた時のチカがさ。
  『爽がズルしたから負けた! もう一回!』っつって何度も挑んでくるから大変だったな」

誓子「な! 爽こそ負けたらすぐ手出したりしてきたじゃない」

爽「すぐじゃないだろ。
  3回目の負けぐらいからだよ」

誓子「基準あったの?」

爽「自分の中の怒りゲージってのがあってさ。それが限界突破するのが大体3回目だったんだよ。
  1回目から出すのはあまりにも紳士的じゃないからね」

誓子「幼稚園児の女の子が紳士って……
   ていうか手を出す時点で紳士じゃないわよ」

爽「まー負けず嫌いなのは今も変わってないねチカは」

誓子「爽こそ」


爽「あーそうそう負けず嫌いで思い出した。
  チカ一回人形ごっこをしつこく推してきたことあっただろ?」

誓子「う……あったわねそんなの」

爽「私がいくら嫌だって言っても譲らねーし、断り続けてたらそのうちチカが大泣きしてさ。
  チカの母さんがすっ飛んできてすげー怒られたからな」

誓子「だって私それまでけっこう何回もお人形さんごっこやりたいって言ってたのに、
   爽全然ノッてくれなかったんだもん。一回くらいノッてくれたっていいのに」

爽「その後ノッてやったろ」

誓子「まあ……そうだけど。
   その次うちに来たときね」

爽「リカちゃん人形だっけ?
  私がやったのはその彼氏役だったけど。名前忘れた」

誓子「イサム君」

爽「そんな名前だったか。
  チカが言うんだよな、『イサムくんしゅき~結婚して~』って」

誓子「そんな言い方してないでしょ! そんな声でもない!
   内容は大体そんな感じだけど」

爽「なんだっけ、『カッコよくて、頭もよくて、お金持ちで、オトナ』なヤツが好きなんだっけ?」

誓子「なんでそれは覚えてるのよ……」

爽「チカもよく覚えてるな」

誓子「いや私も大概あやふやだけど。
   まあ今考えたら、子どもの発想よね」

爽「まあな。ステータスしか見てない感じがいかにも子どもだ」

誓子「ホント単純だわ当時の私」

爽「ちなみに今だったらどんなヤツが好き?」

誓子「え!
   ……一緒にいて楽しい人?」

爽「おお、なんかビジョンが現実的だ」


誓子「そりゃ私だって成長してるんだから」

爽「負けず嫌い以外はな。あとバストも」

誓子「バストは関係ないでしょ!」

爽「はははごーめんごめん」

誓子「もう」

爽「ま、こんな会話で喧嘩にならない分大人になったよなー。
  昔ならとっくに取っ組み合いしてたね」

誓子「かもね」

爽「まーでも昔は昔で楽しかったけどな。
  これからもいい友だちでいようぜ、チカ」

誓子「……そうね」

爽「何その微妙な反応。もしかして私のこと嫌い?」

誓子「いや、そういうわけじゃないけど……
   うん、まあ、遊びましょう。これからも」

爽「よーし! じゃあ明日土曜だし、早速何か遊ぶか?」

誓子「ん、いいわよ。でも何で遊ぶの?」

爽「たまには童心に帰ってみるとか」

誓子「どういうこと?」

爽「なんか昔の話してたら、昔みたいに遊びたくなってさ。
  チカん家にでも集まらねー?」

誓子「お、いいわね。
   じゃあ揺杏も誘う?」

爽「そうだな、そんで懐かしのゲームでもやろうよ。
  すっげー盛り上がりそう」

誓子「あー懐かしみながら楽しめそうね。
   いいわね、じゃあそうしましょう」


爽「すっげー久しぶりだなチカん家来るの」

誓子「爽上げるのだいぶ久しぶり。
   一年の頃以来?」

爽「かな。
  揺杏が寮入ってからはお互いの部屋に行ったり来たり多かったし。
  それ以外の場所で休日過ごすの久しぶりだ」

誓子「ふーん」

爽「しかし揺杏もつれないなー。
  クラスの友達と先約があるとか聞いてねー」

誓子「まあ揺杏は交友関係広いし」

爽「むー、せっかくだから三人で遊びたかったんだけどなー。しょうがないか」

誓子「私じゃ不満?」

爽「そんなわけないだろ。かわいい誓子さんと遊べて私は幸せです。アーメン」

誓子「急に何言ってるの」

爽「あ!
  ナッツいこれ、ひよこの時計まだ置いてあったんだ!」

誓子「ああそれ……
   爽なぜか知らないけどそれえらく気に入ってたよね」

爽「懐かしいなー、後ろのギアつまんでひたすら針グルグル回して遊んでたわ」

誓子「何が面白いのかさっぱり」


爽「だってコイツ12時になったら『ピヨピヨ』って言って鳴くんだぞ?
  そりゃ子供心くすぐられるよ」

誓子「まあ私も子ども時代はちょっと面白いと思ってたけど……
   でも爽のハマり方は異常なレベルだったわよ」

爽「まあ昔はよくヘンなものが好きだとは言われたけどなー」

誓子「今もちょっとヘンだけどね」

爽「えーそう?
  最近は割と常人に近づいてきたと思うんだけどな」

誓子「カムイ呼べる人が常人なの?」

爽「それはまあアレだけど……
  まあとにかくだ! せっかく来たんだし、何か遊ぼうよ。
  何か懐かしいアイテムとかないの?」

誓子「色々あるわよ。昨日押入れとかから発掘してきた」ガラガラ

爽「おお、ゲームキューブじゃん! スマブラ!
  久々に腕が鳴るなー」

誓子「まだあるよ。ほら」

爽「お、これはもしや双六か?
  私らが幼稚園の時に作った」

誓子「引き出しの奥に入ってたわ。
   今見たらひっどい出来」

爽「うわーなんだこれ、即死ゾーンとかある。6出さないと渡れないぞこれ」

誓子「『さわやは10進める』『ゆあんは10進める』『ちかこは10進める』って……
   プレイヤー限定の効果とか」

爽「確かそれ、私が書いたら皆マネし始めたんだよな」

誓子「そりゃだって爽だけいい効果とかズルいもん」

爽「そりゃそーか。
  お、これはUNOに触発されて作った謎のカードゲーム!」

誓子「無駄に色をたくさんにしようとしたからかなり面倒なことになってるわね」

爽「『100』とかあるぞ。全部の色で1から100まで作るつもりだったのか?
  パッと見枚数全然足りてねーけど」

誓子「『ドロー200』とかあるし、多分そうだったんでしょうね……」


爽「んー? これは…… 迷路?」

誓子「それは主に爽ね」

爽「すげーな、こんな細かい迷路を大量に……
  相当ヒマだったんだな私」

誓子「私と揺杏がオセロとかやってるとき黙々と書いてたわよ」

爽「あーそういうことか。にしても細かすぎてやる気起きないなこれ」

誓子「……確か私、爽に解けって言われたことあるわ。
   次遊ぶ時までにクリアしてこい! って」

爽「おー解いたのか! エラいな」

誓子「いや…… 実は全然やる気なかったからやらなかったんだけどね。
   爽が『クリアしたー?』って聞いてきたら『クリアした』って答えてた」

爽「えー何だよそれ! ひっでえ」

誓子「こんな無理難題押し付けてくるほうが酷よ」

爽「ハハハそれもそっか。
  えーと、あとはトランプとかオセロとか将棋とか……
  ん? これは」

誓子「リカちゃん人形ね。一応出しといた」

爽「あっれ、リカちゃん人形ってこんなだっけ?
  もっと違う髪型じゃなかった?」

誓子「髪型は好きに変えられるし、多分爽と遊んだ後に変えたんだと思う」

爽「ふーん。この三つ編みとかメンドくないの?」

誓子「まあ、慣れれば割と楽よ。手間はかかるけど」

爽「そっか。私三つ編みとかしたことないからわかんねー」

誓子「爽って基本無造作というか、髪型とか気にしたことないよね」

爽「いや、一応形は気にしてるぞ!?
  ホラ見ろよ、このサイドテールの曲線美」

誓子「美しさは特に感じないけど」

爽「むー……」


誓子「まあ言っても私もずっとストレートだけどね」

爽「まーチカはそれが似合ってるよ。髪キレイだし、美人度二割増し」

誓子「それは素材が悪いって意味?」

爽「そんなわけないだろ!
  チカは美人だろどう考えても」

誓子「……本気で言ってる?」

爽「本気だとも」

誓子「……そう」

爽「あれー? もしかしてチカセン照れちゃってるー?」

誓子「もう! 照れてないわよ!
   あとなんで揺杏風なの」

爽「揺杏ならそう言うと思ってな」

誓子「思わなくていいのに……」

爽「ハハハ。
  さーてどれにしようか。選択肢豊富だな」

誓子「一部微妙な選択肢があるけど」

爽「チカはどれがいい?」

誓子「私? うーん、今更ゲームって感じでもないし……
   チェスや将棋なら部室でもできるし……」

爽「確かにな」

誓子「せっかく懐かしい気分に浸ってるし、なんか思い出のある物からやりたいわね」

爽「思い出かー。そうなると必然的に人形になっちゃうんだよなー」

誓子「まあ、この中だとね……」


爽「でもいいじゃん人形ごっこ!
  昔の私は下手だったけど、今の私なら上手くできる気がする!」

誓子「そんなに下手でもなかった気がするけど」

爽「そうか?
  私昔は人の気持ちみたいなのがよくわかんなくて、人形にも全然感情移入できなかったんだよなー」

誓子「まあ、確かに昔の爽はそうだったわね」

爽「やってみようよ人形ごっこ。
  大人の本気でやればまた面白いかもよ」

誓子「本気って……
   まあいいわ、やってみる?」

爽「やろうやろう!
  役割は昔と同じでいい?」

誓子「いいわよ」

爽「じゃあ私はコイツを持って、と」コトン

誓子「私はリカちゃんね」コトン

爽「どっちからにする?
  昔のときはチカからだっけ」

誓子「まあ、今度は爽からやる?」

爽「よし、じゃあそうするか」

誓子「はい、どうぞ」

爽「今日から高校生かー。
  お、なんかかわいい子がいるぞ? ちょっと声かけてみるか。
  あのー、すみません」

誓子「はい」

爽「君、どこの……あれ?
  まさか……リカちゃん?」

誓子「え? あ……イサム君!」


爽「リカちゃん! 久しぶりだね」

誓子「久しぶり。幼稚園のとき以来だね」

爽「ははは、そうだね。僕もまさか高校になって一緒になれるとは思わなかったよ」

誓子「うん。嬉しい!」

爽「僕も嬉しいよ」

誓子「……ねえ、幼稚園の時、私が言ったこと、覚えてる?」

爽「……何のことかな?」

誓子「えっひどい! 忘れちゃったの!?」

爽「ごめんごめん、冗談だよ。覚えてるよ。
  僕と結婚したい、だったっけ?」

誓子「うん。あのね、あの時から私の気持ち、変わってないの」

爽「本当かい? それは嬉しいな」

誓子「でも結婚って、簡単じゃないのよね。
   ご両親の許可ももらわないといけないし、住む家がいるし、お金もかかるし。
   何より一生一緒だもの、よほど好きな相手じゃないと、ストレスでおかしくなっちゃいそう」

爽「そうだね。簡単なことじゃない。
  それでも、僕と結婚したいって言ってくれるの?」

誓子「うん。イサム君なら、多分そういう困難を乗りきれると思う。
   だから、結婚してください」

爽「ありがとう。僕も君と結婚できれば、幸せになれそうだ」

誓子「……そしたら、子どもを3人作って、毎日ご飯も作ってあげるね」

爽「ははは、昔のことをよく覚えてるね。
  ありがとう、僕も君を幸せにするよ」

誓子「……」

爽「……」


誓子「あはははは!」

爽「やっべー、何だこれ。ある意味おもしれえ」

誓子「妙に恥ずかしい! 何、なんなのこれ」

爽「基本言ってること幼稚園の時と変わってないよな。ちょっと大人になってるだけで」

誓子「大人っていうより背伸びした子どもって感じね。ひどい」

爽「話の筋もだいたい一緒だしな」

誓子「そうね、じゃあ今度はちょっと話を変えてみる?」

爽「そうするか」

誓子「じゃあ今度は私から」

爽「はいはい、どーぞ」

誓子「ハア……」

爽「あれ、どうしたんだいリカちゃん。溜息なんかついて」

誓子「あ、イサム君。
   ううん、何でもないの。ちょっと気分がユーウツなだけ」

爽「……君の顔にはそう書いてないな。
  何か悩んでるんじゃないの?」

誓子「ふーん、鋭いのね」

爽「言ってごらんよ。悩みは何だい?」

誓子「……ううん、やっぱり言えない。
   内緒じゃダメ?」

爽「どうして? もしかして僕のことが悩み?」

誓子「……まあ、ある意味、そう」

爽「……
  
  そうか。なんとなくわかったよ。
  僕のことが嫌いになったのか」

誓子「いや、違うの。
   イサム君が嫌いになったんじゃなくて……」

爽「そうなの? それは良かった。
  でも、じゃあどんな悩みなんだい?」

誓子「……

   他の人のこと、好きになっちゃった」


爽「……」

誓子「……」

爽「僕より?」

誓子「イサム君より」

爽「……そっか。
  僕はリカちゃんのことまだ好きなんだけどな。
  どうしたらまた振り向いてくれる?」

誓子「……まだ私のこと好き?」

爽「そりゃそうさ!
  今まで何年間君のことを考えてきたと思ってるんだ。好きだよ」

誓子「……
   
   良かった」

爽「え?」

誓子「実はね、ちょっと試しちゃった。ゴメンね」

爽「……

  あはは! なーんだ、そういうことだったのか!
  もー、人が悪いなあリカちゃんも」

誓子「好きよ、貴方のこと」

爽「ありがとう」

誓子「大好き」

爽「うん、僕も君のこと好きだよ」

誓子「貴方のことが好き」

爽「うん」

誓子「好き」

爽「ん?」

誓子「貴方のことが好き」

爽「……え」

誓子「好き」コト

爽「……」

誓子「……」

爽「どうしたんだよチカ、人形置いて」

誓子「……」

爽「……」


誓子「……」スッ

爽(また人形を持った)

誓子「……」

誓子「……長かった」

爽「……」

誓子「幼稚園の頃はね、別にそんな感情持ってなかった。
   貴方はただのうるさいお友達だった」

爽「……」

誓子「だから小学校に上がって疎遠になったときは、
   ちょっと寂しかったけど、別にそれでもいいかなって思った」

爽「……」

誓子「その時ちょうどかわいい後輩もできて、私はその子と一緒にいるだけで十分楽しくて。
   ゴメンね、貴方の存在はしばらく私の中で薄れてたの」

爽「……」

誓子「私はこのままキリスト系の学校に進んで、こういう集団の中で生きていくんだろうなって。
   貴方のことも忘れて。
   ところが高校に入って、また貴方と会った」

爽「……」

誓子「気さくに話しかけてこられた時は、ちょっとびっくりしたけど、全然変わらないって思った。
   相変わらずヘラヘラしてるし、調子はいいし、突拍子もないこと言い出すし。
   でも……」

爽「……」

誓子「貴方は昔より少しだけ大人になってた。
   人の話を聞く余裕ができて、変に怒らせることも言わなくなって。
   私の意見も尊重してくれるようになった。
   負けたらムキになるのは相変わらずだけどね」

爽「……」

誓子「二人で廃部同然の麻雀部に入って、先輩達もいなくてほとんど二人だけで遊んでたよね。
   あの時期は本当に楽しかった」

爽「……」


誓子「本当に楽しくて……
   本当に、放課後部室に行くのが毎日楽しみだったもん。
   それが本当はどういう気持ちだったのか、二年生に上がって二人の後輩が入ってきたときに初めてわかった」

爽「……」

誓子「部室に四人でいるようになって、それはそれで楽しいんだけど、なぜかモヤモヤしてるの。
   ずっと。
   なんでかなあ、楽しいはずなのになあ、って」

爽「……」

誓子「そして気づいた。
   私いつの間にか貴方に恋心を抱いてたんだって」

爽「……」

誓子「でも、私はその気持ちをずっと封印してた。
   知ってる? 学校では習わないけど、聖書では同性愛って罪なの」

爽「……」

誓子「だから、その気持ちに気づいてないフリをして、ずっと過ごしてきた。
   その間じゅう、隠してる本音にずっと悩まされた」

爽「……」

誓子「いよいよもって、我慢できなくなってきて。
   でも事が事だから、誰にも相談できなかった。
   どうしよう、隠してようか、言っちゃおうか、ってズルズル悩みを引きずって。
   解決する瞬間をずっと待ってて」

爽「……」

誓子「本当につらかった。
   いつも近くにいるのに言い出せないし、今までと変わらないフリをして、友達のままの演技をして……」

爽「……」

誓子「それ……どころか……
   貴方のことバカにしてたよね、ホント……そんな気ないです、って言いたいがために……
   最低だよ……バカみたい……」

爽「……」

誓子「うっ……ううっ……」

爽「……」


爽「……また私はチカを泣かせてしまったのか」

誓子「……」

爽「……」

爽「」スッ

爽「……そうか。
  君はそんなに僕のことを好きでいてくれたんだ」

誓子「……」

爽「僕も、君と別の学校に進んでからはちょっとだけ君のこと忘れちゃってたな。
  もう一人の幼なじみとはいつも一緒にいたし、それで楽しかったし。
  だから、高校に上がって再び君と会った時、本当にびっくりしたよ」

誓子「……」

爽「君はさっき僕を大人になったと言ってくれたけど、君だってよっぽど大人になったよ。
  ちびっ子だった君がさ、僕より背が高くなってて、美人な顔つきになってて。
  気品みたいなのがあって」

誓子「……」

爽「二年生に上がって、さらに気づいたことがあった。
  君が後輩の子を連れてきて、その子と話してるのを見て。
  その子と話してる時、君はお姉さんだった。頼れる年上のお姉さん。
  それは僕が今まで見たことがない君の顔だった」

誓子「……」

爽「僕も、君と二人だけで遊んでいた時は楽しかったよ。
  ちょっと小競り合いをしたこともあったけど、いい思い出だ。
  でも、二年生になって後輩たちが入ってきて、僕は賑やかになったとしか思わなかった」

誓子「……」

爽「ゴメンね。君の演技が上手すぎるものだから、君の気持ちに全然気づけなかったよ。
  君は僕を友達として見ていたと思っていたけど、そうじゃなかったんだね」

誓子「……」

爽「……僕は、君のことは好きだよ。友達としてね。
  でも残念ながら、君をそういう関係の人として見ることはできない」

誓子「……」

爽「でも、君とは一生遊んでいたいと思うよ。限りなく、永遠にね。
  それがもし、君と一生を共にしたい、っていう気持ちに変わったら」

誓子「……」

爽「その時はよろしくね、リカちゃん」

誓子「……」

爽「……」


誓子「……何それ、クサい」

爽「えー、何だよ、いいじゃん。カッコ良かっただろ?」

誓子「全然。爽はやっぱり演技ダメね。
   これじゃ婚約者じゃなくて大根役者」

爽「えー! ひでえ!
  それ言うならチカだってテンプレ的演技だったじゃん!」

誓子「そんなことないわよ。自然体だったでしょ?
   爽はヘンなキャラ気取り過ぎ」

爽「むー、じゃあどんな感じならいいんだよ」

誓子「……『オッケー』って言ってくれたら」

爽「そりゃ無理だ」

誓子「ならせめて!
   ……チューくらい」

爽「……そのくらいなら、まあ」

誓子「いいの?」

爽「いいよ。幼なじみのよしみで。ただし3秒以内」

誓子「えー」

爽「あんま長くやるとその気になっちゃうかもしれないだろ」

誓子「なっていいじゃない。むしろなってよ」

爽「いや、まあ、うーん……
  じゃあまあ、チカの好きなだけやれよ」

誓子「やった!
   主よ、どうか罪深き私を御許しください」

爽「祈りゃ許してくれるさ」

誓子「またいい加減な」

爽「じゃあ、いくぞ」

誓子「ん」



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誓子「わあ、ステキな会場」

爽「たくさん人がいるね」

誓子「みんな私のともだちなの」

爽「リカちゃんは、にんきものなんだね」

誓子「イサムくんのともだちもいっぱいいるよ」

爽「ホントだ」

誓子「みんな私たちのケッコンをお祝いしてくれてるのね」

爽「そうなのかなあ」

誓子「そうなの!
   皆私たちのケッコンシキに来てくれてるの」

爽「そっか、ごめん」

誓子「ねえねえイサムくん」

爽「なんだいリカちゃん」

誓子「私のこと、一生好きでいてくれる?」

爽「一生好きだよ」

誓子「本当に? かみさまに誓って?」

爽「うん、かみさまに誓って」


カン!


以上です。
2週間ぐらい前に書き上げたものを今更投下しました。

爽のチャラけた感じの振る舞いにシンパシーを感じます。
子供時代はかなりワガママだったのではないかと。


その気になってもいいんだぜ

不思議とこういう誓子や爽のスレって京豚に荒らされないね、ラッキーだわ


まさに有珠山的空気でおもしろかった
やっぱ爽くんいいキャラしてるわ

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
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