北条加蓮「大人になったら」 (14)
アイドルマスターシンデレラガールズの
北条加蓮とプロデューサーを題材にしたお話
地の文あります。
慣れてないから不手際あったらごめんね。
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「あー、寒かった寒かった……」
「寒かったな。あ、2人です。出来れば奥の席でお願いします。」
冬のある日、撮影の仕事帰りに時間があったので、加蓮と喫茶店に寄った。
「あー、あったか〜い……ねぇ、これ脱いでも良い?」
「愛梨かお前は。変装の意味も兼ねてるから、店員さんが運んできてからな」
加蓮は今、売れている。今をときめくトップアイドルだとか、テレビで見ない日は無いだとか、
そんな激しく売れている訳ではないが、仕事に困らず選べ、数ヶ月に一度話題になる程には売れている。
そんな加蓮が、変装もせずに居たらファンに見つかって騒ぎになってしまう。折角の一休みも無くなってしまうし、何よりお店に悪い。
ちぇーっとバツが悪そうな顔をする加蓮を宥めながら、手早く紅茶とケーキのセットを2つ注文した。
別に、俺はケーキを食べたい気分では無い。だが注文しないと加蓮が
「ほらほら、美味しいからプロデューサーも食べて食べて。 ほら、あ〜ん♪」
とかやってくるので、注文することにしている。勿論、種類が違うと食べ比べとか言ってあーんしようと
したりさせようとしてくるので、同じ種類を注文する。最初はつまらなーいとふてくされていたが、
今は特に文句をつけたりはせず、楽しそうに外を眺めている。
しばらくして、注文したセットが届けられた。今日は大きないちごが乗ったショートケーキのようだ。
ありすが知ったら喜びそうだなー等と笑っていたら、前に座っている加蓮から、不機嫌そうな視線が飛んでいる。
「プロデューサーって、すぐ他の子のこと考えるよね」
と、悪態をつきながらケーキを一口。すぐに幸せそうな顔に変わった。
「そんなに、俺ってわかりやすいか?」
こちらも一口。加蓮には好評のようだが、俺には少し甘すぎる。美味いのは美味いのだが、
ストレートの紅茶がなければ食べ切れ無さそうだ。
「まあねー。付き合いも長いし、すぐその辺の子に手を出すような女好きだしねー」
「……誤解を招きかねない言い方はやめてくれ」
甘いケーキを美味しそうに味わいながら、楽しそうにこちらの反応も味わっている。
加蓮は、悪戯っ子だ。事務所に居る麗奈とは違い、相手をからかい慌てたり困ったりする様を見て楽しむ悪戯っ子。
奈緒なんかが特にターゲットにされるが、俺もそのターゲットになりやすい。それだけ懐かれていると思えば喜ばしいのだが……
「確かにスカウトは良くしてるけど、それは魅力的な子が居るからだな」
「そっかー、アタシもう魅力無いかー、飽きられちゃったか〜」
「勘弁してくれ……」
昔は病弱っ子でこちらが過保護と言う程世話をしていたが、今では立場が逆転してしまっている。
それだけ成長して元気になったと考えれば喜ばしいことなのだが……
なんて思っていたら、加蓮は備え付けのシュガーを取り出し、紅茶に混ぜていた。
「砂糖、入れるんだな」
「んー? そうだよ。甘いのは好きだから♪」
俺にとっては甘いケーキを食べるための舌休めの紅茶だが、花の女子高生にはまだ甘くても良いらしい。
若さって凄いなぁ……なんて年寄り臭いことを思っていたら、とある光景を思い出し、口にした。
「ふふ……この苦味が楽しめないなんて、加蓮はまだまだ子供だなぁ」
弄られっぱなしは性に合わないので、少し仕返しを試みた。
「……」
……のだが、どうも反応が悪い。
「プロデューサーって、そういうとこ子供だよね」
「な、なにぃ!?」
事務所でコーヒーに大量の砂糖を入れていた飛鳥には効果覿面だったのだが、加蓮には効果が無いどころか、
むしろ逆にあしらわれてしまった。
「それで普段の反撃のつもり〜? ふふっ、アタシは子供だし女の子だから、全然平気だも〜ん♪」
「ぐぬぬ……」
他人をからかうことには一日の長があるのか、やはり加蓮の方が上手だった。
俺はわざと子供っぽくそっぽを向きながら、紅茶を飲む。
「ふん、どうせ子供だよ。子供だからこうやって大人びてるのさ」
「拗ねない拗ねない。 も〜」
クスクスと笑う加蓮。俺は紅茶を飲みながら、こんなやり取りも久し振りだなと、物思いにふけっていた。
加蓮は、みんなは今売れている。俺の営業が成功した結果だし、みんなの魅力が世間で認められている証だから、素直に嬉しい。
ただ、こうして他愛の無い会話をする機会は以前より格段に減ってしまっている。
嬉しいけれど、少し寂しい。アイドル同士の仲はどんどん仲良くなっていくが、俺自身はどうだろうか。
「……ねえ、プロデューサー」
「んー?」
最近では外回りや電話対応、事務仕事が増えてきて、アイドル達とのコミュニケーションはどんどん減って、
事務的な連絡くらいしか出来ていない。その内、アイドル達が成長してセルフプロデュース出来るようになったら、俺はーーー
「アタシね、まだまだ子供なんだ」
「……知ってるよ、そんなこと」
「まだ砂糖を入れなきゃ紅茶が飲めないくらいに、ね♪」
「だから勘弁してくれよ……」
「だから、さ」
加蓮はティーカップを両手で掴み、こちらをまっすぐ見て
「アタシがそんな紅茶も飲めるくらい大人になったら、また一緒にこうして飲もうね」
穏やかな笑顔でそう言った。
「…………暇だったらな」
「そうだねー、これからもっと忙しくなりそうだもんね♪」
紅茶を飲み、加蓮は満足してごちそうさまと笑った。俺も紅茶を飲み干し、一口残ったケーキを頬張る。
ああ、甘い。
おまけの数日後
「んー、少し休憩するか〜……」
「お疲れ様、プロデューサー。はい、コーヒー」
「おお、凛。ありがとう」
「どういたしまして。ま、アタシも飲みたかったからついでだよ」
「はいはいわかってますよ……ん? 凛、その手に持ってるのは」
「? スティックシュガーだけど?」
「……凛はブラック飲めないんだな」
「………………」
「あ、飲んだ」
「ッ! ……ほ、ほら。別に飲めるよ? 子供じゃないし、別に余裕だし?」
「あー……疲れた脳には糖分補給も必要だし、折角持ってきてくれたからその砂糖入れようかな。凛はどうだ? 今日は学校行って疲れただろ?」
「ふ、ふーん。 まあ、プロデューサーがそう言うなら入れようかな。本当は平気だけど」
「はいはい……」
終わりです。ありがとうございました。
依頼出しておきます。
おつー
おつおつ
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