【モバマスSS】揺れる想いを留めるもの (59)


ねぇ、Pちゃん。
アタシ、結構物持ちええ方なんやで?



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※順不同


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いっつも3人一緒やなぁ、って時々言われてたんやけど、しょーがないよね。
アタシ1人でアイドル始めるのはちょっと怖くて、一緒にやろーって2人を巻き込んだんやし。

そう言えば、
アタシら3人がアイドルになった『アイドルプロデュース』って、元々はそーゆー企画やったんよね?


あの番組あとから見直してて思ったんやけど、3人それぞれで場面が切り替わるからなんとか面白いんであって、
自分1人のだけずっと見てると、重たいしイライラするとゆーか。


それ考えたら、1人でばーんって飛び込んでコケてたら、って思うと今でもこわいわー。
一緒やったから、アイドル出来てたワケで。


……

ねぇ。
もしも、なんやけど。

あの時、出会ったのがアタシ1人だけやったとしたらさ、それでもアタシをアイドルにしてくれてた?


あー、なんか、あかんね。あんまりマイナスなこと考えるタチじゃないのになぁ、アタシ。
あの頃のこと思い出すとさ、楽しさ嬉しさより先にそんなのばっかし浮かんできて。

アレがあったから今のアタシがいる、ってわかってても、なかなか呑み込むのが難しいのよ、これが。


うん、今思い出したって自分に腹がたつわー。
今更やけど、ちょっと謝っとこ。


Pちゃん、出会ってすぐの頃はさんざん酷い態度取って弱音吐いてばっかしでごめん。

一挙手一投足に、アイドルって意識を乗っけはじめたての緊張みたいなのがついてきて、
何やるにもままならないなぁ、って大変やったんよ。


美優さんとかな子ちゃんが先輩として色々助けてくれたとはいえ、
軽い気持ちでアイドル始めて、すぐにライブの大舞台、って。

怖かったし、不安やった。


あー、
軽い気持ち、って言ったら怒られるんかな?

まあそんなん言われても、理由なんて「お金が欲しいから」ってぐらいしかなかったのが本音やし。
そーゆーとこ嘘つけるしたたかさもあったほうがええんかなぁ。


そもそも、とかなんで、とか思い返してみると、
いろんな事が不思議なんよねー、自分でも。

いっつもはそんなにフットワーク軽くないんやで?
そうは見えんかもしれんけど、花より団子、石橋は叩いて渡れ。
リスクとるよりはちまちま貯めて積み立てたいタイプやから。


うーん、Pちゃん風に言うなら、「ティンときた」ってやつなんかな。

アタシがPちゃんを引いたのか、Pちゃんがアタシを引いたのか。
どっちかはわからんけど、最初っから両想いとかやったら、めっちゃ嬉しいかな、なんて。


結果としては、まあそこそこ成功やったってことでいいんよね?
だからこそ今のアタシがいるんやし。

別にライブ自体が成功したから、ってわけじゃないよ。

多分やけど、失敗しとっても、良い経験やったーって言っとったと思う。
うん、言えとったはず。


あの頃からずっと、なんだかんだでPちゃんは頼もしくてさ。
何かあってもこの人ならなんとかしてくれるよねってこっそり思っとったし。

だから、これは自信持って言えるんよ。
あの時アイドル始めてよかった、って。


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婚期が遅れるーなんて言われたりするけど、やっぱり花嫁衣装って女の子の憧れなんよねぇ。


たしかアタシたち4人は参列用のドレスで撮影ってことになってて、最初は。
あくまで、加蓮さんと茜さんと桃華ちゃんがメインやった。

やけど、せっかくやからって、
皆でウェディングドレス着られるよーに頼んでくれたの、Pちゃんよね?
遅れて奏さんと伊吹さんが加わった時に、アタシたちにもお色直しです、ってウェディングドレスが渡されてさ。


アタシのはその……
ダイタン?ってゆーか、キワどいって感じのデザインやったけど。
それでも、嬉しかったわー。


みんな、綺麗やったなぁ。

1人だけ眼鏡やったから、ヴェールが上手く留められんかったりして。
……色々、覚えとるんよ。


結局、あの時やったんかな。アタシが初めて、ちゃんと…… この気持ち、自覚したの。
欲しい、って思ったのって。

華やかなドレスを着て、じゃらじゃら~って指輪も宝石もつけてさ。
そりゃー幸せやん?顔、ずっとにやけっぱなしやったし。


でも。同時に、わかったんだ。

どんなに豪華な宝石もどんなに素敵な指輪も、愛がなきゃ、タダの飾りだ、ってこと。


たった1つで良いから。
愛のこもった指輪、もらいたいな~ってね。


知ってた?

アタシ、ケチで倹約家だけど、我儘でずるい女なんよ。
だからいつかは…… なんて思ったり。


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アップグレード、って感じ。
衣装デザインを見せて貰ってすぐに、ピンときて勝手に盛り上がってた。


これ、アタシたちが初めて来たライブ衣装の、進化版やなーって。
原点と成長が組み合わさった意匠って、最強やん?

一歩先に進んだ感じがして、その日はろくに眠れんかったよ。
まあ、衣装に負けないアタシにならなきゃって気負いみたいなのも出てきたりして、大変やったけどね。


ヴァージョンアップ!って気持ちもあったし、
外からの変化だけじゃなくて、自分からも踏み出さなきゃって悩んだり。
衣装がアップグレードしてんのに、ヘアピンだけ一緒って変やなーって思って、ちょっと改造してみたりとかもしたっけ。

安物やけど、おっきな星でデコレーション。
アタシ今、キラキラしとるでー!もっとアタシを見たってー♪って。


実際に着て立ったステージはホント一瞬って感じで過ぎてったっけ。

ボルテージが上がっていつも以上に飛んで跳ねてたら、案の定ヘアピンがどっかにぶっ飛んでって。
ボサボサの髪の隙間から見える客席は、皆笑顔で盛り上がっとった。

なんでかな、眼鏡をしっかり固定しとっても、時々視界がぼやけて見えたんよね。
汗かな?汗ってことにしとこ。


くるくる回る舞台の上で、赤とピンク、青と緑、オレンジと黄色。
それぞれの光に照らされて…… ああ、やっぱり楽しい。

アタシたち、最高にキラキラしてる!!
って、高揚感でいっぱいのステージやったよ。


ステージが終わった時に、ちょっと不思議な気持ちになってさ。
やっとここまで来た、ってんじゃなくて、よくここまで無事で来れたなあ、って感じ。

正直言って、それまでずっと不安やったんよ。
憧れて目指して夢見てって気持ちで飛びこんだ世界じゃない、ってゆーのを引きずったままだったのかも。


そんなアタシでも怖い目痛い目に会うこと無く、ただただ楽しくアイドル続けてられたのって、
見えない所でPちゃんがバリアを貼ってくれてたんよね。
なかなか気づかんくて、なかなか掴めなくて、つくづくアタシは足りてないなぁって後で凹んだっけ。

でもそんときは頭の中が幸せでいっぱいやったし。
ぱーんって弾けて、そのままずーっとふわふわ~ってしてた。


拍手を惜しみながら袖に下がった時に、一番に目が合って。

ああ、やっぱりここにいた。
ここで見守ってくれてた。

この人はアタシを守ってくれる、大事にしてくれる人なんだ、ってホントに実感したんよ。


……ちょっとだけ思いが溢れ出して、勢いのまま抱きついちゃったこと、あのぬくもり、まだ忘れてないから。

後で散々冷やかされて、すごく恥ずかしかったのは内緒やけどね。


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Pちゃんの仕事、一から十まで知っとるわけやないけど、Pちゃんはアイドルとしてのアタシに一から十まで関わってくれてさ。
だからこそ、アタシも少しはPちゃんの仕事のこと、すこしでも詳しくなりたかった。


実際Pちゃんが普段どんな仕事やってるのかって元から結構興味あったんよね。
スカウト、とかは実際に受けた側やし、書類とか見せられたってちんぷんかんぷんやと思うけど。
そうじゃなくて。


アタシたちが踊ってる時、ステージに立ってキラキラしてる裏側で、どんなふうに舞台をつくってたんかなって。

だから、けっこータイムリー?ジャストフィット?やったんよねぇ、アレ。
アタシたちだけで作るライブ、って企画。
すっごく、たのしかったなー。


細かいこと思い出したらいくらでも反省はあるんやけど、その倍くらいは満足が勝ってるわー。

年下の紗南ちゃんが主役やから、っていうのもあったけど、
アタシ、ちゃんとお姉さんできとったなーって。


え?うん、いっこ違いでもお姉さんはお姉さんやろ?
いっこ違いは充分妹やで。珠美ちゃんもいっこ違いやから妹ってことで。

初めてのライブの時、かな子ちゃんや美優さんにいっぱいお世話になったんをまた思い出して、成長したな、って。
ま、自己満足やけど。


ほんまに色々考えたんよ?
3人で黒いリボンつけて、紗南ちゃんのミニハットには黒字に白リボンで目立たせて、とか。

衣装にばっかし予算も時間も回せんかったから、アタシ好みのキラキラドバドバーって感じにはできんかったけど。

担当だからって好きにすればいいってわけじゃないし、それぞれの主張を合わせる中で自分の意見を抑えることもいっぱいあったし、
散々話し合った中で、通したこと退いたこと、出来ること出来ないこと、色々考えて1つにまとめて。

一歩ぐらいは、Pちゃんの仕事ぶりに近づけたんちゃうかな。


実際どうやった?
アタシにも、そう言う才能あったやろ?

プロデューサー目指すのもアリ?なんて、冗談やけど。

ほんまに楽しい企画やったなー。
普段とは違うことにもいっぱい手を出して。

多分やけど、Pちゃんのプロデュースとはまた違った、アタシたちの作ったアタシたちのステージって奴が出来てたとおもうんよ。ね?


でも、何にも考えずアタシそのまま、って部分もあって。
どうしようもなく自分の根っこが見えてきてさ。

アタシは自分からやと、やっぱりここに立つんやなぁ、って、サイドステージを選んだ時に気づいたり。
あー、いつもの場所だ、って。


……

アタシな。
昔っから、誰かをたてるのって、得意やねん。


……


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ずっと昔から感じてたこと。

こんなんゆーたら傲慢に聞こえるかもしれんけど、
二番目三番目って、そんなに迷わずに手に入るんよね。

努力で、お金で、力で。
ちゃんと対価を払えば、きちんと手に入るようになってて。


でも、なんやろな…… 
一番欲しいものって、なかなか手にはいらんのよ。

どんなに望んでも、どんなに頑張っても、他の誰かが持ってってしまう。
アタシはそれを遠くから眺めて、いいなー、でもあの子の物やし、って指をくわえて見てるだけ。



もちろん、アタシ自身、一番じゃなくてもって、そこそこでいいやって、妥協する癖があったとゆーか。
あきらめ、かなぁ。

あんまし認めたくないけどな。


”亜子”。


一から了まで、誰かに準ずる。
そんな名前に生まれて、そんな立ち位置に慣れてたんやって思う。

本当に欲しいものは、きっと別の誰かのために用意されたもので。
アタシには手に入れられない、って思っとったのかも。


……だけど。

あの時。
ううん、もっと前、最初からなのかもしれんけど。
ちょっとしたきっかけで、あの時偶然かちりと鍵が合って、見つけられたんかもしれんけどさ。


一等賞のお肉。アタシ1人での大舞台。
ちっちゃなことも、おっきなことも、一緒なら上手く行って。


アタシ、Pちゃんとやったら、”一番”を手に入れられる!

って、思ったんよ。


うん。
あのな、

アタシが一番手に入れたかったのって……


ーーー

いつものヘアピンの代わりにつけて貰った花のヴェール留めを見て、

「亜子にピッタリの髪留めだなぁ」

って言ってくれたこと、今でも覚えとるよ。


ちょっとドキッとしてさ、

「ええやろ?お気に入りやねん」

ってつい言ったら、衣装さんに聞いて、後でおんなじのを買ってプレゼントしてくれたのも、めっちゃ嬉しかってん。


……気づいた?気づいてた?

今日のこの日につけるために、ずっと、大切にとっといたんよ。


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ねぇ、Pちゃん?
アタシ、結構物持ちええ方なんやで。



~fin~


昔こういう簡素なまとめを作ってたのですが、
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いつもピンクと緑のヘアピンをつけてた、3人の中では一番寂しがりやの亜子ちゃんが、 
黄金の幸運の時だけどうやらちがうぞ、となって。ウェディングの時にはヴェール留めとはいえ一本だけだなって気づいて。


全くの妄想ではありますが、
アクセサリに拘りのある子は他にもいっぱいいるので、そういうの増えて欲しいですもっと皆書いたり描いたりしてください
ください



・前作(酉忘れのやつ)
東郷あい「秋深き」

乙乙
いいよね こういうの

亜子はちゃんみおに負けないプロポーションしてるんだよなあ
乙!

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