寒い日が続いているとは思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
お体は...もういいや、めんどくさい。
提督、元気ですか?
いきなり手紙出しちゃってごめんなさい。
元艦娘と連絡を取り合うのは上層部から禁止されているのは知ってます。
でも寂しいので私から手紙を出しました。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453303263
私は大学生になりました。
今は海の勉強をしています。
秘書艦を長くやっていたので書き物はわりと得意です。
部活は剣道部に入りましたがみんな弱くて相手になりません。
私のつけていた艤装の重みに比べれば防具なんて付けていないのと変わりません。
周囲とも打ち解け、同じ大学には元長門と、元陸奥もいます。
たまに長門ーって呼んで怒られたりしますが反応する長門も悪いと思います。
毎日が青春って感じで楽しいですが、たまに鎮守府と提督のことを思い出します。
危ない日常だったけど提督の声を聞く度に勇気づけられ、提督の姿を見るだけで安心できました。
休日にはよく遊びに行きましたね。
2人でデートした事もあったし、3人でお酒を飲んだこともありましたね。
あの子が酔い潰れた時は2人で引きずりながら鎮守府まで帰ったよね。
ねえ、提督。
あ、そっか...もう提督じゃないんだっけ?
あれ、まだ提督してるんだっけ?
まあいいや。
私はずっと待ってるよ。
カタパルトは取られちゃったけど...。
ケッコン指輪は解体の時守り抜いたんだよ。
だからなるべく早く会いに来てね。
元伊勢型一番艦、伊勢より。
「はー...思い切って提督に手紙出したのはいいけど本名も知らなかったんだよね...」
我ながら軽率だった。
今思えば私は彼の事を何も知らなかった。
だが、何も知らずともそこに愛はあった。
それは終戦後も変わらない。
茜色に染まる街を背に、かつての姉妹艦である日向と肩を並べだらだらと帰路についていた。
「仕方ないさ、大本営が作った義務と言うやつなのだからな」
「あんたも言うようになったじゃん、元日向」
「お前程ではないさ、元伊勢」
からかうような口調は、彼に影響されたものだろうか。
提督としての彼は私達航空戦艦や航空巡洋艦と言った一癖ある艦の扱いに長け、また彼自身も一癖ある人間だった。
航空戦艦伊勢の艤装を背負っていた私達姉妹は自然に彼と過ごす時間が増え、お互いに心を許しあえる存在となった。
「ねえ、その口調はやっぱ提督の真似してんの?」
「さて、何のことかな」
「はぐらかしちゃってさーもう」
妹をからかってみると照れたような反応をする所からやはり彼の真似をしているという事が分かった。
私が愛した彼を、妹もまた好意的に想ってくれているのだと思うと頬が緩くなる。
「何人かの元艦娘が提督に手紙を書いたらしいが未だ返事は寄越さぬそうだ」
「でしょうね...てことはまだどっかで提督やってんのかなー」
「その可能性が高いだろう」
想定していた事だが、やはり少しもの悲しい。
私達と過ごした司令室で、別の誰かと時を共にしていると思うと胸が張り裂けそうになる。
ましてや、仮とはいえ私達は結婚の誓いまで結んだのだ。
私の心に嫉妬の感情が湧くより先に、日向が告げる
「すまない姉さん、私は用があるからここで」
「ん、暗くなる前に帰ってくるんだよ」
「ふふ、分かっているさ」
そう言うと日向は私に背を向け、夕日の中へと消えていった。
その背中を見送った後、誰に言うでもなく呟く。
「はー...会いたいなぁ...」
気付けば我が家は目の前にあった。
この家は艤装を解体されごく一般的な女性に戻った際、その時貰った莫大な退職金で買ったもの。
日向と2人で暮らすには十分な広さはあるが、寂しさは埋められなかった。
「あれ、ポストになんか突っ込まれてる」
無造作に押し込まれた紙のような物。
それの正体は可愛らしい封ですぐに手紙だと分かった。
「なんだろう...」
親愛なる元伊勢へ
今すぐ後ろを向くのだ。
......より
「なにこれ...後ろ?」
大本営の電文より意味の分からない内容の手紙だが、後ろを向けと書かれてあるのでそれに従った。
そして、ほんの一瞬。
私の心臓は鼓動する事を忘れた。
見慣れた勲章を輝かせ、夕日を背に受け燃えるような色になっている白い制服と軍帽。
聞き違えることのない声で、彼は私にこう言った。
「待たせたな、伊勢」
Fin.
乙
いいねぇ
おう
ミス
おつ
スゲー短かったけど良かった
乙
乙
提督「加賀よ、話がある」
提督「加賀よ、話がある」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453098465/)
これのifストーリーと言うか寄り道みたいな物なので短くなってしまった、申しわけない...。
乙
これは良かった!
これは良いものだ…
乙でした!
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