少年「ねえ、ぼくと友達になってよ!」
竜「ボクのこと……怖くないの?」
少年「怖いもんか! 君はだれよりも優しいドラゴンだもの!」
竜「ありがとう……!」
少年とドラゴンは今、冒険の旅へと羽ばたく――
――
――――
――――――
中年「……あれから30年か」
中年竜「ああ」
中年「お互い老けたなぁ」
中年竜「そうだなぁ」
中年「火、くれないか」スッ
中年竜「あいよ」ボッ
中年「サンキュー」
中年「火加減うまくなったなぁ。昔はちょっと火を吐くたび大惨事だったのに」
中年竜「年の功ってやつだな」
中年「ハハハ、ちがいないな」
中年「ふぅ~……うまい」スパー…
中年竜「タバコ、久々に吸ったのか」
中年「ああ、女房も子供もタバコの煙が嫌いでさ」
中年「こういう機会でもなきゃ、吸うことすらできやしないのさ」
中年「しかも、また値上げしたし、子供もどんどん金かかるようになってきたし」
中年「いよいよ本格的に禁煙するはめになるだろうな」
中年竜「世知辛いねえ」
中年竜「ま、オレも似たようなもんだがな」
中年竜「自分の洞窟でゴロゴロしてると、嫁さんにゃ足蹴にされるし」
中年竜「子供と遊ぼうにも、あいつらゲームばっかやってやがる」
中年竜「竜なのにドラゴンなんたらとかいうテレビゲームに夢中なんだ」
中年竜「居場所なんかありゃしねえよ」
中年「俺たちが子供の頃には、毎日外を駆け回ってたもんだがねえ」
中年「俺もお前に乗せてもらって、ビュンビュン飛び回ってたしさ」
中年「ところで……今も飛べる?」
中年竜「いやぁ~、もうムリだな。ここ数年飛んでないし、なにより体が重い」
中年竜「こないだの健康診断でも、中性脂肪が多いって引っかかっちゃったもんよ」
中年竜「あと200kg痩せないと病気になる、なんて脅されちゃったよ」
中年「俺もさ。体にあちこちガタがきてやがる」
中年「血圧や血糖値が高いだの、コレステロールがどうの、ひどいもんだ」
中年「…………」
中年竜「…………」
中年「昔はよかったなぁ」
中年竜「ああ、昔はよかった」
中年「俺とお前、二人であちこち飛び回ってさ」
中年「悪い奴ら、いっぱい倒したもんな」
中年竜「そうそう」
中年竜「竜を違法に売買する組織と戦ったこともあったよな」
中年「あったあった、懐かしいなぁ。組織を壊滅させて、二人で表彰されたりしたよな」
中年竜「あの時の賞状、まだ持ってる?」
中年「いやぁ~、学生の時の引越しでなくしちまった。お前は?」
中年竜「オレも、うっかりしてて燃やしちまった」
中年「ハハハ」
中年竜「ハハハ」
中年「そんな俺も、今やちっぽけな会社で働くしがないサラリーマンよ」
中年「上に押さえつけられ、下に突き上げられ、胃がキリキリするよ」
中年竜「役職は?」
中年「課長」
中年竜「すごいじゃん」
中年「すごくないよ。残業代出さなくて済むための、名ばかり管理職だよ」
中年竜「ああ、そういうことか……」
中年竜「オレも今は集落のボスみたいな地位についてるけど、似たようなもんさ」
中年竜「近頃の若い竜は、ホント全然根性がなくてさ」
中年竜「図体も態度もでかいのに、ろくに手足を動かさず困ったもんだ」
中年「まったくだねえ。俺の部下も、俺が見てなきゃすぐサボろうとしやがる」
中年「こうやって昔話に花を咲かせ、若いもんに対して愚痴る……」
中年「俺らもおっさんになったことかなぁ」
中年竜「ああ、なったってことさ」
中年「今や、人と竜がつるむなんてのは珍しいことでもなくなったしな……」
中年「俺たちの常識がどんどん古びたものになってくが、これも時代の流れかなぁ」
中年竜「時代の流れってやつさ」
中年竜「オレたちにできることは、それにどうにかついていくことだけさ」
中年「ついていくために、たまには二人で暴れてみるか?」
中年竜「よせやい。筋肉痛で動けなくなる」
中年「しかも、二日後にな」
中年竜「ハハハ」
中年「ハハハ」
中年竜「ところでそれ、結構いいネクタイじゃないか」
中年「ああ、誕生日プレゼントに子供たちからもらったんだ」
中年竜「なんだよ、結構幸せもんじゃないか」
中年「お前こそ、尻尾につけてるアクセサリーは……」
中年竜「ああ……ウチの嫁さんと子供たちが協力して作ったんだと」
中年「へっ、ニヤニヤしちゃって」
中年「ま、なんだかんだいって、俺たち頑張ってきたよな」
中年竜「ああ、それだけはたしかだわな」
中年「次はいつ会えるか分からんけど、また会おうな」
中年竜「おう、次会う時はもうちょっと痩せておくことにしよう」
中年「期待しないでおくよ」
中年「俺たちってなんていうか……ホントいい腐れ縁だよな」
中年竜「まったくだ。いつまでもこういう仲でいたいもんだ」
中年「お前ほど気軽にしゃべれるドラゴンもいないよ」
中年竜「ありがとさん」
中年とドラゴンは今も、仕事をこなし家族を支えるために羽ばたいている――
おわり
乙!
縄暖簾の居酒屋で、熱燗とほっけの開き突っつきながらしてそうな会話w
おっさん達に乾杯ですな
こういう長く続く友情っていいな
乙
乙
いい雰囲気
なんだかんだ幸せなのはいいな
乙!
とてもよかった
乙です
いい歳の取り方したな
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