中年「お互い老けたなぁ」中年竜「そうだなぁ」(20)

少年「ねえ、ぼくと友達になってよ!」

竜「ボクのこと……怖くないの?」

少年「怖いもんか! 君はだれよりも優しいドラゴンだもの!」

竜「ありがとう……!」





少年とドラゴンは今、冒険の旅へと羽ばたく――

――

――――

――――――



中年「……あれから30年か」

中年竜「ああ」

中年「お互い老けたなぁ」

中年竜「そうだなぁ」

中年「火、くれないか」スッ

中年竜「あいよ」ボッ

中年「サンキュー」

中年「火加減うまくなったなぁ。昔はちょっと火を吐くたび大惨事だったのに」

中年竜「年の功ってやつだな」

中年「ハハハ、ちがいないな」

中年「ふぅ~……うまい」スパー…

中年竜「タバコ、久々に吸ったのか」

中年「ああ、女房も子供もタバコの煙が嫌いでさ」

中年「こういう機会でもなきゃ、吸うことすらできやしないのさ」

中年「しかも、また値上げしたし、子供もどんどん金かかるようになってきたし」

中年「いよいよ本格的に禁煙するはめになるだろうな」

中年竜「世知辛いねえ」

中年竜「ま、オレも似たようなもんだがな」

中年竜「自分の洞窟でゴロゴロしてると、嫁さんにゃ足蹴にされるし」

中年竜「子供と遊ぼうにも、あいつらゲームばっかやってやがる」

中年竜「竜なのにドラゴンなんたらとかいうテレビゲームに夢中なんだ」

中年竜「居場所なんかありゃしねえよ」

中年「俺たちが子供の頃には、毎日外を駆け回ってたもんだがねえ」

中年「俺もお前に乗せてもらって、ビュンビュン飛び回ってたしさ」

中年「ところで……今も飛べる?」

中年竜「いやぁ~、もうムリだな。ここ数年飛んでないし、なにより体が重い」

中年竜「こないだの健康診断でも、中性脂肪が多いって引っかかっちゃったもんよ」

中年竜「あと200kg痩せないと病気になる、なんて脅されちゃったよ」

中年「俺もさ。体にあちこちガタがきてやがる」

中年「血圧や血糖値が高いだの、コレステロールがどうの、ひどいもんだ」

中年「…………」

中年竜「…………」

中年「昔はよかったなぁ」

中年竜「ああ、昔はよかった」

中年「俺とお前、二人であちこち飛び回ってさ」

中年「悪い奴ら、いっぱい倒したもんな」

中年竜「そうそう」

中年竜「竜を違法に売買する組織と戦ったこともあったよな」

中年「あったあった、懐かしいなぁ。組織を壊滅させて、二人で表彰されたりしたよな」

中年竜「あの時の賞状、まだ持ってる?」

中年「いやぁ~、学生の時の引越しでなくしちまった。お前は?」

中年竜「オレも、うっかりしてて燃やしちまった」

中年「ハハハ」

中年竜「ハハハ」

中年「そんな俺も、今やちっぽけな会社で働くしがないサラリーマンよ」

中年「上に押さえつけられ、下に突き上げられ、胃がキリキリするよ」

中年竜「役職は?」

中年「課長」

中年竜「すごいじゃん」

中年「すごくないよ。残業代出さなくて済むための、名ばかり管理職だよ」

中年竜「ああ、そういうことか……」

中年竜「オレも今は集落のボスみたいな地位についてるけど、似たようなもんさ」

中年竜「近頃の若い竜は、ホント全然根性がなくてさ」

中年竜「図体も態度もでかいのに、ろくに手足を動かさず困ったもんだ」

中年「まったくだねえ。俺の部下も、俺が見てなきゃすぐサボろうとしやがる」

中年「こうやって昔話に花を咲かせ、若いもんに対して愚痴る……」

中年「俺らもおっさんになったことかなぁ」

中年竜「ああ、なったってことさ」

中年「今や、人と竜がつるむなんてのは珍しいことでもなくなったしな……」

中年「俺たちの常識がどんどん古びたものになってくが、これも時代の流れかなぁ」

中年竜「時代の流れってやつさ」

中年竜「オレたちにできることは、それにどうにかついていくことだけさ」

中年「ついていくために、たまには二人で暴れてみるか?」

中年竜「よせやい。筋肉痛で動けなくなる」

中年「しかも、二日後にな」

中年竜「ハハハ」

中年「ハハハ」

中年竜「ところでそれ、結構いいネクタイじゃないか」

中年「ああ、誕生日プレゼントに子供たちからもらったんだ」

中年竜「なんだよ、結構幸せもんじゃないか」

中年「お前こそ、尻尾につけてるアクセサリーは……」

中年竜「ああ……ウチの嫁さんと子供たちが協力して作ったんだと」

中年「へっ、ニヤニヤしちゃって」

中年「ま、なんだかんだいって、俺たち頑張ってきたよな」

中年竜「ああ、それだけはたしかだわな」

中年「次はいつ会えるか分からんけど、また会おうな」

中年竜「おう、次会う時はもうちょっと痩せておくことにしよう」

中年「期待しないでおくよ」

中年「俺たちってなんていうか……ホントいい腐れ縁だよな」

中年竜「まったくだ。いつまでもこういう仲でいたいもんだ」

中年「お前ほど気軽にしゃべれるドラゴンもいないよ」

中年竜「ありがとさん」





中年とドラゴンは今も、仕事をこなし家族を支えるために羽ばたいている――







                                     おわり

乙!

縄暖簾の居酒屋で、熱燗とほっけの開き突っつきながらしてそうな会話w
おっさん達に乾杯ですな

こういう長く続く友情っていいな

いい雰囲気
なんだかんだ幸せなのはいいな
乙!

とてもよかった
乙です

いい歳の取り方したな

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom