絵里「お試し期間の」花陽「おともだち」 (25)

更新遅め。
4~5月にかけての話。

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絵里「はぁ」


希「お?ため息ついてどーしたん?」


絵里「…最近なんだか、上手くいかなくて。今日もこれから生徒会の仕事だーと思うとね…」


絵里「滅入るわ」


希「ふーん。そんなときはうちのスピリチュアルパワー!受け取って〜、ちゅうにゅっ!ぷしゅっ」


絵里「あーはいはい、いただきました。はぁ…」


希「なんやつれないの〜。あ、うち用事あるからここでね。ばいっ」


絵里「え?あ、うん」

絵里(なんでかしら…私、自分で言うのもあれだけど、結構何でもできる方なのに…)


絵里(昨日はハンコ押す場所間違えたし。最近寝てないからかしら?あーきっとそれね)


絵里(ついついね、社会科目やってると捗っちゃうのよね)


絵里「…はぁ」


どんっ


花陽「ぴゃあっ!?」


絵里「…あっ」


つるり。床がとても滑るわ、ハラショー。
そういえばここ、昨日念入りに掃除してたわね。何?なんなの?ローションでも撒いてあるのかしら?こう、ね。つるりと滑ってーー
何かを潰したの。私の、お尻でーー


ぐちゃ。


花陽「…あ」


花陽「わ、わ、わ!」


花陽「私のおにぎりーーーーっっ!!」


絢瀬絵里。高校三年生。
すきなものはチョコレート。
きらいなものは、梅干しと、海苔。
最近の悩みはーー


何も上手くいかないことと、後輩を泣かせたことです。

花陽「わ、わたしのおにぎ、ひぐっ、えっえっ」


絵里「…貴女一年生ね?ごめんなさい、私の不注意で貴女のおにぎりを…弁償するわ」


花陽「お、あかあさんがぁ、に、にぎってくれ、こうきゅう、まい、ひっく、だい、ぶえええ」


絵里「はぁ…貴女こっちに来なさい、視線が集まってきてる」


絵里「泣かないでほしいな?」


ぐい、と。一年生の子の腕を引っ張る。
潰れたおにぎりはすでにその子によって回収されていてーーよし、忘れ物なし。
引っ張った腕は思った以上に軽くて、うるうると私を見上げる瞳は…とても綺麗。
まあ、詩人みたいに語るのも悪くはないけれどーー


「あ、あれ?あれ生徒会長だよね」
「一年生の子泣いてる…もしかして」
「え、うそぉ。絢瀬生徒会長だよ?そんなことするわけーー」
「い、いじめぇ?」


まずは、広まるであろうこの噂を潰さなきゃいけないわね。

prrr


絵里「……もしもし希?絵里です」


希『あはは!エリチから掛かってきてるのにエリチ以外からだったらうちびっくりしちゃうよ〜、んで、どうしたん?』


絵里「どうして開口一番に人をからかうのが趣味なのかしら。希は黙ってれば可愛いのに……ふぅ」


絵里「ねぇ、今生徒会室って使える?」


希『はぇ?なんで?ついに後輩でも襲う気なーーごめん…』


希『開いてると思うけど…』


絵里「あぁ、誰もいないか聞きたかったのよ」


希『いないんじゃない?うち今クレープ食べてるしよう分からんし』


絵里「は?貴女授業は?まだ昼休みよ?」


希『のぞみん分かんない〜♪でも放課後までには帰るから大丈夫♪じゃ、そういうことで〜』


絵里「ちょ、ちょっと希ーーっ!?覚えておきなさいよ!?」


絵里「…なんで部屋が空いてるか聞いただけでこんな…!」

ほう

*生徒会室


花陽「あ、あの…生徒会長さん…?」


絵里「あ、あぁ。こんなところに連れてきて悪いわね。失態も見せてしまったし」


絵里「ごめんなさい、おにぎりのことはどう詫びて良いのやら…分からなくて」


花陽「いいえ!私も突然泣き出してすみませんでした。おにぎりは…家に帰ればまだあるので…それにっ、お弁当も教室にあるし…」


絵里「いえ、それじゃ私の気が収まらないの。ねぇ、放課後って空いてるかしら?」


花陽「えぇっと…あいてます」


絵里「じゃ、放課後に生徒会室に来てほしいの。続きは放課後、ね?」


花陽「は、はぃ…!」


消え入りそうな声で、その子は返事をすると、たたた、と駆けて行ってしまった。昼休みは残り15分。
なんだ、まだ余裕あるじゃないーーそうね、お弁当を食べながら…希への罰を考えようかしら。

絵里「……」

ひそひそ ひそひそ


絵里「………………!」


絵里(た、大変だわ)


絵里(3クラスもあるのにもう広まってる!田舎の情報網か!?まだ昼休み終わったばっかじゃない!)


絵里「……」


絵里(今真顔だから確実に怒ってると思われてるわ…あぁ…まぁでも、放課後になれば策は打てるし…いいかしら?)

放課後


希「のぞみんとうじょーう!あ、これ登場と東條をかけてるんやけど…どう?」


絵里「そうね、0点よ。残念ね」


希「ちぇー。ま、いっか。で、どうしたん?あんな電話、そして」


花陽「…」


希「その子…怯えてるやん…?ほんとに何したん〜?」


絵里「何もしてないわよ、失礼ね」


絵里「いや、今は何もしてない…ってところね。希の い な い せいではないけど…ちょっと厄介なことになって」


花陽「ひぃいっ!ごめんなさぁい!」


希「ちょ、ちょっとエリチ。そういうことしないの」


絵里「えっ?あぁ、違うのよ。貴女が泣いたことが問題じゃなくて…」


花陽「ち、違うんですか?」


希(泣かせたんか…)


絵里「えぇ、貴女が泣いた後にちょっと面倒な噂が広がってしまって…はぁ」


花陽「ぴゃああぁあ!ごめんなさあぁあい!」


ガタガタと震える目の前の子はーーちょっと涙目で。
あら、私そんなにひどいことを言ったかしら?首を傾げてみてもーー答えは出てこない。耳から答えが出てきてくれればいいのにーーなんて。冗談を考えてる場合じゃなかったわ。

希「え、エリチ…それじゃまるで私が今怒ってるのはあんたのせいだーーって、言ってるようなものよ?それじゃあちょっと怖いやん…」


絵里「う、うそっ…やだごめんなさい、そういうつもりは無くてーー貴女に怒ってるわけではないのよ…って、私怒ってないわよ!」


希「そーそー♪エリチはぶきっちょさんなのだ!許したってーな?って、おこやん!」


花陽「ぇ…あ、は、はいぃ」


真っ青な顔をしながらーーこくこくと首を振る。うぅ…ここまで怖がられると終いには泡吹いて失神してしまいそうね…真面目に接してるつもりなのに。


絵里「そ、そうそう!だからそんなに怖がらないでほしいなぁ?…と。本題に入るわよ。私がーーその子をいじめて泣かせた、って噂が広がってしまったの」


絵里「私事で申し訳ないのだけれどーー広まると、ちょっといただけないイメージダウンに繋がるわ。広まってるけど」


絵里「だから消さなきゃいけないの。何を?泣かせたことは事実よ。これはもうーー消せない。じゃあ、貴女をいじめていた。この噂を消すしかないわ」


人の噂は75日ーーなんて。嘘よね。噂自体が消えるのはそうかもしれないけれど…私の姿を見たら思い出しました。これじゃダメなのよね。

絵里「つまり」


希「あー!わかった!見た人全員消そうってこと?ええやん!」


絵里「冗談言わないで!そんな非現実的なことするわけないじゃない!」


希「ち、ちょっとした冗談なのに…」


絵里「だから!その、貴女。まだ名前を聞いてなかったわよね?聞いてもいいかしら」


花陽「は、はいっ!こ、小泉花陽ですっ」


絵里「そう。可愛い貴女にピッタリのーー素敵な名前ね。私は絢瀬絵里。こっちのうるさいのが搭乗希」


絵里「小泉さんーーいえ、花陽ちゃん。お友達になりましょう?」

絵里「ただ…貴女にも悪いから。そうね、噂が緩和される迄のね。言うなればお試し期間、よ」

花陽「お、おともだち…」

希(あ、漢字間違えられてるやん…一緒にクレープ食べよ、って言わんかったから?今度誘ってあげよ)


希(ウィーン、ガチャン。うち、搭乗希ーー!)

ガチャ


絵里「わ、もうすっかり暗いじゃない…ごめんなさい、こんな時間まで」


花陽「いえ、大丈夫です…」


絵里「そ、そう?あぁ、こんな時間に女の子1人は危険だから…送って行くわ」


花陽「え、そ、そんなぁ!え、え…」


花陽「絵里…ちゃんに、悪いです…」


絵里「…あ、やっと呼んでくれた♪さっきから絢瀬先輩、って。エリーチカ寂しかったのよね♪」


希(うち忘れられてる…部屋の鍵閉めて、と)


希(もう午後7時かぁ。今日のお夕飯なんやろなぁ)


絵里「家はーー近くも無く、遠くもなく、ってところかしら?なら送っていけるわね」


絵里「さ、花陽ちゃん?行きましょ!」


花陽「ううぅ…なんで絵里ちゃんはそんなに乗り気なんですかぁ!」


希(若いってええなぁ。なんでうち残らされたんやろ。やっぱ二人きりって気まずいからなん?)


希「うぅ、4月といってもまだ寒いやん…」


希「って、残らされたの…もしかして、お昼にクレープ食べに行った罰なん…?優しすぎやろ…」

それでは、今日はここまで

希で笑う

「あ、あれ?生徒会長と、昨日泣いてた子だ」
「なに、またなんかあるの?」
「いや?なんかーー」
「生徒会長がアタックしてる。恋かな?」
「まさかぁ。女子高だからって安直だよー。ましてやあの…」
「生徒会長なんだから」


絵里「あ、そこの子。小泉さんっているかしら?」


凛「あ、はい。居ますよ。かよちーん」


花陽「せ、生徒会ちょーー」


絵里「もう、絵里ちゃん、でしょう?花陽ちゃん」


凛「!?!?」


花陽「うぅ、み、みんなの前では恥ずかしいですぅ…」


凛「え、え?なに?かよちんと生徒会長はそういう…仲なんですか?」


花陽「ち、違うよぉ!そうだとしても凛ちゃんには真っ先に伝えてるよぉ」


絵里「……」


絵里(ふむ、花陽ちゃんはこうやってからかっても大丈夫な子なのね。ならーーエリチカ、もう少し押せ押せでいっても大丈夫かしら)


絵里(昨日は怖がらせちゃったしーーもう、あんな怯えさせたくないしね)

凛「うー、生徒会長とかよちんが何したいか知らないけど、昨日みたいに遅くなるんでしょ?凛、部活見学してから帰るねっ」


花陽「あ、うんーー凛ちゃん、ごめんね?」


凛「いいもん!かよちんの天使!ふわふわボディ!ばいばーいっ」


絵里「ふふっ、面白い子ね?すっごい仲良しみたいだしーー」


絵里「私たちも仲良くなれるかしら?」


花陽「わ、分からない、ですけど…絵里ちゃんがそうしたいなら、私、頑張りますっ」


絵里(もうーーそういう心持ちじゃもうだめだって。ううん…)


花陽「それで、放課後に突然どうしたんですか?」


絵里「ん?あぁ、昨日みたいに送っていこうかと思って。迷惑かしら?」


花陽「め、迷惑だなんてとんでもないっ…です」


絵里「そう?じゃあ今日はーー花陽ちゃんのこと、たくさん教えて欲しいな?」


花陽「は、はいっ」


絵里(よし、大丈夫!このまま自然にあの約束事を取り付ければーー!)


絵里(朝も希と話したもの。大丈夫!)

〜時は巻き戻って朝〜


希「今日はおうどんさんも美味しくできた!うち、やっぱ天才やん?」


希「ほないただきまーーす♪はふはふ…」


希「んー、かまぼこさんが汁吸っててーーこの安っぽい味が堪らんね♪つるつるのおうどんさんも、歯ごたえバッチリ!鰹節と麺つゆの匂いがうちを包んでーー」


希「うち、しあわせ〜♪」


prrr prrr


絵里『絢瀬でs』


希「誰やねん今うちおうどんさんとミラクルハーモニー奏でてるんやけど!?」


絵里『かけ直すわね』


希「あ、エリチかぁ。名乗ってくれないと分からんやん」


絵里『名乗ったわよ!!名乗ったわよ!!』


絵里『その場の気分で発言しないで!』


希「いつもより厳しいなぁ?どうしたん?」


絵里『そうねーーまず、今が何時か分かる?』


希「10:37?あ、ちょうど休み時間なんやねぇ」


絵里『そうね。休み時間よ。これから3時間めが始まるわ』


絵里『だと言うのにーー貴女、今どこにいるの?』


希「家やけど?」


絵里『おうどんさん食べて?』


希「おうどんさん美味しい」


絵里『ーー学校に早く来なさいッッ!!』


絵里『話したいことも、あるから!』


ピッ


希「ーーおぉ」


希「これが噂のキレデレ?怖いやん…」

つまんね

期待

乙です

絵里「…あのね、希」


絵里「もうお昼よ?」


希「いやぁ…うちも、頑張ったんやけど」


絵里「まぁいいわ。こんなことで怒ってたら、胃に穴が開きそうよ」


絵里「それでね、話っていうのは…」


希「花陽ちゃんともっと仲良くなりたいとかそういうんやろ?うち分かっちゃうもんね」


絵里「そ、そう。そうなのよ!ほら、後輩と仲良く接するなんて…機会が無かったから、わからなくて」


絵里「希なら、何か案があるかな…って」


希「ふむ…なるほど!うちに任しとき!じゃあ…」


希「二人でご飯を食べに行くのだ!休日に…!仲良くなるには食事の場で。交渉の基本やん?」

絵里(普段はふざけてるけれど…いざとなれば頼りになるのよね)


絵里(そう、ここでどうやって食事の約束を取り付けるか!…というか、どこに何を食べに行くの?)


絵里(…わ、私、寄り道とかしたことないし…たまーに両親に連れて行ってもらうところはお高いお店ばかり…)


絵里(休日じゃなくて放課後だとしても…パフェ?とか、カフェとか…食べたことも、行ったこともないし…)


絵里(もしここで花陽ちゃんの方が手慣れてたりしたら、私の上級生としての尊厳も、生徒会長としての尊厳もないじゃない…)


絵里(…それなら。勝負はいつだって得意分野でするものよ!)


絵里「ねえ花陽ちゃん」


花陽「は、はいっ!何でしょうか!?」


絵里「もう、そんなに驚かなくていいのに。あのね、今日は金曜日じゃない?」


絵里「明日のお昼って…なにか用事はあるかしら?」


花陽「い、いえっ…何もないです!」


絵里「それなら!私の家に来てくれる?花陽ちゃんともっと仲良くなりたいの。あのね、私…振る舞いたい料理があるの」


絵里「だから…家に来て。そして、貴女のこと、もっともっと知りたい」


花陽「…分かりました!でも、私、絵里ちゃんのおうち知りません…よ?」


絵里「…あ」


とりあえず、私の家までの地図を渡したわ。きっとたどり着けるはず…よね?
詳細はあとで送ればいいわよね…ふふっ。
きちんとお食事に誘えたわ!
さすが私よね!

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続きまだ~

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