富良太志「守りたいものは自分で守る」 (10)
東京喰種の通りすがりのおっさんの富良さんSS
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最初それは無謀なことだと思っていた。有馬と喰種の戦いを見ていただけの時には全く分からなかった。だけど、同年代の有馬が戦ってるのを見て、愚かにも俺も戦えるんじゃないかなどと思い違いをしてしまった。
有馬の戦いを間近で見ているだけだったのに俺はそれを自分たちで倒したものだと勘違いし、俺たち三人は良いパートナーだという風に浮かれていた。
だけど一人で喰種と対峙してみた時に今までのそれら全ては俺の勝手な思い違いということを理解した。彼らにとって俺のような人間はただの餌。
俺は今まで有馬の背中を守っていると思っていたが、実際はただ足を引っ張っていただけだったことに気付いた。
最初、俺は有馬に「親友の仇を討つ為にランタンを探す」と告げた。多分あのまま一人で親友の仇を討つためにランタンを探していたら間違いなく今頃もう喰種に殺されていたはずだ。有馬はそのことを知っていたから俺に協力することにしたのだろう。
結局、一人で喰種と対峙した時も殺されかけたところを有馬に助けてもらった。
今までだってそうだ。俺は守りたいものを何一つ守れずに全て他人任せにしてた。アキのこともリョウのことも自分自身のことさえもーーー
だから俺は決心した。自分の命を守るために三波を殺した。その時に大切なものを守るために必要なことは、奪われる前に奪うことだと悟った。
俺はもう守られるだけなのは嫌だ。自分の大切なものは自分で守りたい。だから無謀なのは承知の上で俺はーーー
「ーーー喰種捜査官になる」
俺の突飛もない宣言に有馬は一言だけ「…そうか」と呟いた
相変わらず何を考えてるのかは読めないけど、反対はしていないのだろう。有馬は何か意があると直接その場で言うような奴だ。その有馬が何も言わないということは、そういうことだ。
…単に俺の事を気にも止めてないだけかもしれないがそこは考えないようにしておこう。虚しくなる。
ただ、最後に俺は出立前の有馬に言葉を贈る
「いつかまたお前と組める日を楽しみにしてるぜ、有馬」
死ぬなよという意味を込めて
「…ああ、俺も楽しみにしてるよ、太志」
それを最後に有馬は去った。
それからしばらく後に俺は喰種捜査官を養成するアカデミーに入学を決めた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
朗報があった。どうやら近々アキが退院するらしい。右目はダメになったもののそれ以外は特に問題ないので医師から退院の許可が出たようだ。
「よう! アキ、来たぞ」
俺は出来るだけ明るく病室に入ったもののそんな俺には一切目もくれずアキは窓の外を眺め続けていた。
「…アキ?」
様子がおかしい。なにかあったのだろうか。
「ねえ、あのさ」
「?」
「学校辞めたって…ほんと?」
少し声が震えている。別に学校を辞めたことを隠してた訳ではないけど、今言うべきことではないと思ってたから言わなかっただけだ。
「…まぁな」
するとアキはゆっくりと首を回し、こちらの方に視線を向け、そのまま静かに呟いた。
「何もかも中途半端…」
それは自覚していた。野球も族のグループも想い人のことさえも今までは中途半端だった。だけどーーー
「今はやりたいことがあるんだよ」
喰種に関しては別だ。俺はまだ喰種捜査官ではない。だけど俺には喰種捜査官になる以外の道はない。俺は親友とはいえーーー友達を殺した。
確かにアキやリョウに比べたら一緒に過ごした時間は短かったけどそれでも俺にとっては三波も友達だった。そんな三波を俺は殺した。
もう元の何も知らなかった頃の生活には戻れない。戻れるわけがない。退路はないのだーーー
「やりたいことって…?」
「それは…」
ただ、それをアキに言うことは出来ない。今のアキにとって喰種とは死の体現者みたいなものだ。関われば確実に死ぬ。そんな喰種に幼なじみが関わろうとしているのを知れば何と思うか。今の彼女には余計な心配をかけたくはない。
「言えないことなの……?」
それに対して、俺は無言で肯定の意を示した。
とりあえず今日はここまでです
時間軸としてはジャック~reまでです
おつ
乙
そういや本編で言及されてないけどどういう経緯でランタン手に入れたんだろ
>>6
脱字
親友とはいえ ×
親友の仇とはいえ ○
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