春香「能力リボン」 (28)

貴音「人は皆、普段の自分と違う自分になりたいと思うことがあるのではないでしょうか?」


貴音「根暗な人は、明るい人に。運動神経の悪い人は、スポーツ万能に」


貴音「飽くなき願望。これを叶えるには、たゆまぬ努力が必要になる場合もございます」


貴音「……ですが、それは辛くて、苦しくて、時間の掛かることです」


貴音「ですが、もし、そんな努力や、苦痛なしに、自分の能力を変えられるとしたら」



貴音「あなたは、何を望みますか?」


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レコーディングスタジオ

D「ハイ、カット!春香ちゃん、もっと声は伸びやかに。この歌はそんなに辛そうに歌っちゃだめ!」

春香「す、すみません……」

P「んー、もう少し明るさも欲しいんだが」

D「春香ちゃん、歌も大分うまくなってきたけど、これじゃあまだまだだよ」

春香「すみません……」

D「基礎をやりなおした方が良いんじゃないかな?最近バラエティのお仕事とかも増えて、歌の発声とか忘れてるんじゃない?」

春香「はい……」

P「まあ、そういう時もあるさ。今日はここまでにしましょう」

D「はい、お疲れ様でした」

春香(今日もお仕事、上手く行かなかったなぁ……)


春香(千早ちゃんみたいに、歌が上手になったら……)


P「春香、どうかしたか」

春香「い、いえ……なんでもないです」

P「最近疲れてるんだろ。この後の予定空けといたから、気分散策にショッピングでもしていけよ」

春香「でも」

P「いいから。社長には俺から言っておくから」

春香「はい……ありがとうございます」

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春香(ショッピングかぁ……確かに最近、あんまりしてなかったもんなぁ)


春香(あれ?こんな所に雑貨屋さん?)


春香(前は無かった気がするんだけど……おしゃれな外観、ちょっと入ってみようかな)

カランコロン

老婆「いらっしゃい」

春香「あ、こ、こんにちは」

老婆「ゆっくり見ていってね」

春香「は、はい……」


春香(あのおばあちゃん、ずっと私の方を見てる)


春香(……アイドル詳しいのかな)


春香(あっ、この置物、可愛いなぁ……こっちのティーセットも。あずささん辺りが好きそう)


春香(うーん……?)

老婆「どうかしたかね?」

春香「このリボン……セット何ですか?」

老婆「ああ、それかい。それはね、色ごとにおまじないがかけてあるリボンなんだよ」

春香「おまじない……?」

……ストーリーランドのあの老婆かな?

老婆「あたしゃもう歳だから、細かいことを覚えていないんだけど」


老婆「そのリボンをつけると、今までの自分から、変わることが出来るって聞いてるね」


老婆「根暗な人は明るく、ドン臭い人はスポーツ万能に……って感じだったと思うよ」


春香「リボンをつけるだけで?」

老婆「そうだね」

春香「……おまじない、ですよね?」

老婆「そうだね」

春香「うーん……これ、ください」

老婆「はい、ありがとう……1300円だけど、1000円にまけちゃうよ」

春香「い、いいんですか?!」

老婆「そろそろ店を畳もうと思っててね、在庫処分だ」

春香「あ、あはは……ありがとうございます」

老婆「あいよ」

春香(リボンで出来る事が変わるなんて、ありえないよね)


春香(……まあ良いや、綺麗な柄だし、気分転換に丁度良いよね、うん)


春香(明日も歌の収録かぁ……なんだか憂鬱だなぁ……)





春香(……そうだ、明日は、この青いリボンをしていこう)


春香(青といえば、千早ちゃん)


春香(なんかご利益が、あるといいなぁ……)

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世にも奇妙な物語かとおもいきや週刊ストーリーランドだった

翌日


D「それじゃあ春香ちゃん、昨日と同じ曲だからね。肩の力を抜いて」

春香「はいっ……」


春香(うう……やっぱり緊張するなぁ……)


春香(リボンを変えた程度じゃ、ね……)

D「はいそれじゃあ3,2,1……」


春香「ーーーーーーーーーーーーーー♪」

D「!」

P「!」


春香(あれ、私……なんかすごく歌が歌えてる!)

D「はいオッケー!いやぁ、春香ちゃん急にどうしたの?バッチリじゃないの」

春香「あ、あはは」

P「やっぱり疲れてただけなんだな。昨日オフにしてよかったよ」

D「これならヒットまちがいなしだね。出来上がりを楽しみにしててね!」

春香「はいっ!ありがとうございます!」


春香(……リボンのおかげ?かな)

春香だったかで過去にも似たようなのあったな
真美でも他の人のゴムとかで同じ髪型にすればその人の能力使えたり

P「それじゃあお疲れ様、春香。ちなみに次の土曜日なんだか、今度はグラビアの仕事が入ってるんだが」

春香「グッ、グラビアですか!?」

P「いや、少年誌向けだから、そんなに露出も多くないから。その辺りはちゃんと言ってあるし」

春香「は、はあ……」


春香(グラビアかぁ……うーん……いっつも緊張して表情が硬いとか言われちゃうんだよなぁ……)
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1週間後

P「おはよう春香……珍しいな、紫のリボンなんて」

春香「ちょ、ちょっと気分転換に」

P「うん、よく似あってるぞ」

春香「ありがとうございます」

P「というわけで収録はこの水着」

春香「はい……大丈夫かなぁ」



春香(……紫。あずささんのオトナの色気、ちょっと分けて!って……別にあずささんに借りたわけじゃないんだけどなぁ)
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カメラマン「はい、それじゃあ行くよ―」

春香「よ、ヨロシクオネガイシマス」

カメラマン「あははっ、そんな硬くならないで、それじゃあそこにちょっと座ってみて」

春香(うう、なんだか恥ずかしいな……)


春香(……大丈夫、リボンつけてるし)


カメラマン「お、いいですねぇその表情」バシャッバシャッ

春香「え、えへへっ。こ、こうですか?」

カメラマン「おー!いい、いい、いいよー春香ちゃん!」バシャッバシャッバシャッ

春香「こ、こんなのも」

カメラマン「すっごいよー!!!これはいい!」


P「ノリノリだったな。上手く行ってよかったよ」

春香「はいっ!」


春香(あのリボン……もしかして本当に凄いのかな)

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事務所

P「ただいまー……真、どうした?!」

小鳥「さっき、事務所の階段から脚を滑らせて、くじいちゃったみたいなんです」

真「いてて……だ、大丈夫ですよ。明日の収録は」

P「その脚じゃ無理だろう。明日は確か、響と一緒にアイドル対抗スポーツ選手権だろう?おまけに生放送だし……」

真「でも、代役を立てられないじゃないですか。一晩経てば」


春香(……もしかすると)


春香「あ、あの!」

P「ん?」

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翌日
アイドル対抗スポーツ大会当日

司会「さー今夜もやってまいりましたアイドル対抗スポーツ選手権。今日の出演陣は、こちらです!765プロ天海春香、我那覇響!346プロ日野茜、若林智香!315プロの天ヶ瀬冬馬、御手洗翔太!」

茜「へー、菊地真ちゃんが来ると思ってたんですけど。意外ですね」

茜「でも手加減しないから、今日はスポーツマンシップに則っていきますよ!」

智香「今日の参加者の皆!私も応援してるけど、ファンの皆のためにも、私達負けないからね!」

翔太「ふーん。なんか珍しい取り合わせだね、765プロ」

冬馬「ま、オレたちの勝ちは決まったようなものだろう」

響「んー!なんか皆見くびってるけど、見てろよな!な、春香」

春香「うんっ!任せといて」

司会「それにしても、春香ちゃんのトレードマークのリボン。黒いのは珍しいね」

春香「黒帯締めて、えいっ!って感じで、頑張ります!」

司会「いいですねぇ、春香ちゃん。それじゃあ最初の種目は――――」

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司会「……す、凄いですね765プロさん。全戦全勝、この番組始まって以来です!」

智香「765プロの皆さんお疲れ様でした!次会った時も、また頑張りましょう!」

茜「こんなに圧倒的だったとは……智香ちゃん、今日は帰ったら特訓だね!」

智香「はいっ!」

響「凄いぞ春香、短距離もジャンプも跳び箱も、自分より得点高い」

春香「えへへっ、何でだろう」

冬馬「ま、まあ、今日は765に花を持たせてやっただけだからな、次は絶対負けねえ!」

翔太「いやー、まさか春香ちゃんにこんなに負けるとはねー。ちょっと油断してたかな」

春香「ふふんっ!参ったか!なんて」

司会「それじゃあアイドル対抗スポーツ大会、本日はこの辺で、また来週!」

D「はいオッケーです!」

響「な、なあ春香!いつの間にあんなに運動できるようになってたのか!?」

春香「ちょっと、ね」

響「真もびっくりするぞ!また春香と出るのも面白いかもね」

春香「そうだね」

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春香(私は、リボンがトレードマーク)


春香(このリボンがアレば何でも出来る)


春香(リボンの色を変えれば、私は何にだってなれる。歌の上手い春香にも、運動神経の良い春香にも)


春香「今日はダンスのレッスンだから緑のリボンかな」


春香(私ってなんでもできちゃう!凄い!)


春香「今日は黒」


春香(うふふっ、仕事も順調で、ホント凄い!学校の方も、遅れてる勉強がみるみる追いつく)


春香「綠」


春香(リボンがあれば)


春香「臙脂」


春香(なんだって)


春香「浅葱」


春香(どんなことだって)


春香「ピンク」


春香(いつでも、どこだも)


春香「黄色」


春香(皆がほめてくれる。私のことを凄いって言ってくれてる。トップアイドルに、一歩ずつ近づいてる)


春香「オレンジ」


春香(そう、私はいろいろな春香になれるから)

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美希「最近の春香。なんか雰囲気が変わったの……リボンの色がいっつも違うから?」

春香「そう?前から変えてたよ?」

美希「うん……そう、なんだけど。白いリボンなんだね、今日は」

春香「え、うん。お芝居の仕事があったから」

美希「それ、関係あるの?」

春香「え?あ、ああ、気にしないで」

P「春香、ちょっと良いか?」

春香「あ、はい……」


春香「私らしく……ない、ですか?」

P「うん。最近、なんかこう……春香らしくないんだよ」

春香「そ、それは、私がお仕事できていないってことですか!?何か失敗をしたっていうことですか?!」

P「いや、仕事はものすごく頑張ってもらってる。評判も良いんだが、なんだか俺が見ると、違和感があるんだ」

春香「違和感」

P「……何か、あったのか?」

春香「そんなこと、ないです」

P「なら、良いんだが……」


春香(そんなはずない。何で?私らしくないって何?)


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『最近春香の出演依頼が減ってる……』

『プロデューサー君、何か心当たりは?』

『いえ、そんな。本人も至って元気ですし』

『しかしねぇ、この前会った局のプロデューサーがね、言うんだよ』

『春香らしくない、ですか。やっぱり』

『ああ』

『でも、仕事自体は以前と同じ……いえ、それ以上にやってると思うんです』

真『なんだか最近、春香もスポーツ万能って感じだよねー。ボクの出番もすっかり減っちゃってたけどさ』

響『あんな短期間でよく鍛えたよなー』

雪歩『でも、なんだか……』

伊織『あの春香っぽくないのはなんとかならないのかしらね?』

やよい『伊織ちゃん、そんな』

真美『でも、たしかに最近、はるるんっぽくないよねー』

亜美『普段のはるるんはー、もっとこう』


千早『最近、春香の様子が……』

あずさ『気になる?』

千早『はい、なんだか春香のようで、春香でないというか』

あずさ『……そうねぇ、言われてみると』

千早『仕事はすごく出来るんですけれど、なんだか……』

春香(そうだ、リボンだ)



春香「……どのリボンをつければいいの……私って何色……?」


春香「そうだ、あのお店!」

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春香「……あれ?無い」

春香(あっ、そういえば)


『そろそろ店を畳もうと思っててね、在庫処分だ』

春香「あれからまだ1ヶ月……あの、すいませーん!!」ドンドンドン


春香「誰か居ませんかー?!」ドンドンドン


管理人「ちょっとお嬢ちゃん、なにしてるんだ?!」

春香「あっ!あの、このビルの方ですか!?」

管理人「え?ああ、まあ、ここは割りと長いけど」

春香「こ、ここにあった雑貨屋さんのおばあさん、知りませんか?!」

管理人「雑貨屋……?ここ、俺が入った時からこの空きテナントだけど」

春香「そんな……私、つい1ヶ月前にここに来たんです」

管理人「馬鹿言いなさんな。少なくとも、ワタシが来た5年は空き家のままだよ?」

春香「そんな……」

管理人「最近あんまりこの辺人気がないのかねぇ」

春香「そんな……違う!」

管理人「お、おいお嬢ちゃん?!」

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P「春香、どこ行ってたんだ。もうすぐ次の収録の……春香?」

春香「これ……違う」

P「春香?」

春香「これかな……ああ違う、これは」



春香「これじゃない」



春香「これじゃない」


春香「違う」


春香「違う」

春香「違う」




春香「違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!!!!!」






春香「これじゃない!!!!!!!!!私は違う!!!!!!!!!!!!!!」





小鳥「は、春香ちゃん?!」

真「どうしたんですか?!」

P「春香、どうした!?しっかりしろ!」




春香「違う!どの色も違う!私じゃない!」




春香「私は何?!」





春香「私は!!!!!!」

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貴音「自分には、自分にしか出来ないことがある。よく聞く言葉ですね」


貴音「それを見つけるというのは、とても難しいことです」


貴音「答えを急ぎ求めると、無理をしてしまうこともあるでしょう」


貴音「それこそが人生。そう言えるのではないでしょうか」


貴音「おや……リボンがこんな所に……ふむ」

貴音「……天海春香でございます……似ていませんね」



乙でした。

春香って言えば赤だよな
面白かった、世にも奇妙な物語って感じがしたよ

世にも奇妙な物語といえばががばばだろうか…
スマホPCではYahoo!で検索できるがガラケーは無理なんだよな

乙、面白かった

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