元ネタ
タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part2
タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420346744/)
>>266より
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445699595
――魔王城
バキィッ!
カウボーイ「がぁっ!」ドサッ…
魔王「弱いですね。実に、弱い」
カウボーイ「糞、畜生ォ……」ヨタ…
魔王「仲間も全て殺され、武器も無い。しかもこうして指を折られ、肉を潰されて……まだ立ち上がるのですね」
カウボーイ「へへ……くたばりやがれ」
カウボーイ(肋骨がイッちまってる。指も、か。奴ぁ俺の利き手を知らないだけ儲けもんだが)
魔王「とどめです。安らかには逝かせませんが。せめてあなたの祈る神の下へ行けるよう……殺してあげましょう」
魔王「では、さようなら――」
…
……ああ、うるせえな。そうだよ。魔王にこうやって嬲られてたんだ
何で俺がこんな目に会ってるかって?
そうか、そこから話さなきゃあいけないんだな。分かった。少し長くなるが付き合ってくれるな?
言っておくが俺はまだ死なねえ
これは……『逆転』までの物語だ
牛飼いのことをカウボーイと呼んだのも昔の話。今じゃもっぱら『無鉄砲なヤツ』って意味で使われる
俺のあだ名だ
自己紹介もしとくかい? 俺はカウボーイ。ここいらじゃちょいと有名な賞金稼ぎだ
世界を二度滅ぼす程のキノコ雲を作った戦争が終わって約半世紀。時代の復旧作業とやらがやっとこさ半分まで完了したこの世界で俺らは生きている
こんな荒れた世界さ。自分の食い扶持を稼ぐにゃ賞金稼ぎが一番手っ取り早いと俺は思ってる
乙!
敵か味方かカウボーイ~
敵かな? 味方かな?
――酒場
カランコロン…
酒場の主人「おう、らっしゃ……お前か」
カウボーイ「酒」
酒場の主人「何がいい」
カウボーイ「ウィスキー。塩も」
酒場の主人「……すぐ出す。座ってろ」
酒場の主人「……」
酒場の主人「また飲んだくれてんのかカウボーイ。賞金稼ぎは身体が資本だろ。その内死ぬぞ」
カウボーイ「……ほっとけやい」ヨロ…
この日も俺ぁ酒場で酒を浴びるように飲んでいた。飲んで飲んで飲んで、馬鹿んなるまで飲んで。お節介焼きな酒場の主人が言う通り、廃人寸前まで来てた。
何故ここまで潰れてたかって? そりゃあ……この1ヶ月前、俺の大事な相棒が殺されたからさ
相棒……あいつぁ街の保安官。『勇者』なんて呼ばれてたか
酒場の主人「ほら、ウィスキーだ」ドン
カウボーイ「おう」グイッ
酒場の主人「そんな一気に飲むなって」
カウボーイ「……んぐ、んぐ、んぐ」ゴクゴク
カウボーイ「ぷは」
カウボーイ「……もっと、もっと持って来い!」
酒場の主人「お、おい! いい加減にしろ!」
カウボーイ「持って来いってんだ!」
酒場の主人「ったく……」
魔王相手にカウボーイがリボルバー片手に立ち向かっていくの想像したら燃えた
カウボーイ「んへぇ」グデ
酒場の客「……ご主人。あれは?」
酒場の主人「すまねえなお客さん。あれでもアイツ、ちっと前までは結構な腕の賞金稼ぎだったんだ」
酒場の客「ほう。では主人。その賞金稼ぎが何故このような姿に?」
酒場の主人「……聞かないでやってください」
酒場の客「なぜ?」
酒場の主人「男の……最後の情けってやつでさ。今、世界一番辛い思いをしてるのはアイツなんです」
酒場の客「……」
酒場の主人「今はそっとしておいてやってください」
勇者と俺はある賞金首を追っていた
通称『光の側近』。各地の高名な学者先生を殺して回る殺人犯
なぜこいつがそんなことをするかって? んなこたぁ賞金稼ぎの俺達の知ったこっちゃねぇ。手配されてる奴を、ただ、いつも通りに倒す。簡単なお仕事だ……そう思っていた
その仕事の前日
――酒場
勇者『なあカウボーイよぉ。この事件、なーんかきな臭くねーか?』
カウボーイ『事件なんてみんなきな臭いもんだろ。オヤジ、飯、肉』
酒場の主人『あいよ』
勇者『マジメに聞けよ。俺はこの事件、裏に何かあると思うんだ』
カウボーイ『あー、俺その話パス。難しい話聞いてっと頭痛くなんだ』
勇者『おい!』
カウボーイ『……今さら賞金首の素性を知ってどうすんだよ。撃って、殺して金を貰う。それで十分じゃねーか』
勇者『……俺は勇者だ。国に危機が及ぶなら、どこまでも調べてその元凶を叩く。お前みたいに……こう……簡単じゃないんだ』
カウボーイ『へえ』カチン…
勇者『側近はただの連続殺人犯なんかじゃない。何か……何かあるんだ』
カウボーイ『オヤジ、肉ー』
酒場の主人『待ってな!』
勇者『……』
カウボーイ『真面目なお前とは違うんだよ、俺は。ならず者からの成り上がり。そんな奴だ。長い付き合いなんだから分かるだろ?』
勇者『……』
カウボーイ『事情なんか知らねえ。ただ、殺す。これは俺の方針だ。俺の好きなようにやらせてくれ』
勇者『……』
カウボーイ『側近が出たら教えてくれ。お前の調査じゃ、今夜この街に奴が来る……だろ?』
勇者『ああ』
カウボーイ『オヤジ! 飯は他に飲んでる奴らにやってくれ。俺、帰る。勘定!』
酒場の主人『あいよ』
これが勇者とした最後の会話だ。
異変に気づいたのは夜中の二時を過ぎた頃だ
「担架だ! 担架を持ってこい!」
「医者も呼べ! 隣町へ急げ!」
賞金首が現れた合図を勇者がするのを……ああ、つまり照明弾が撃たれるのをいつも通り待っていたんだが、来ない。その内外がいやに騒がしくなったもんで小屋から出たんだ
――小屋の外
村人『あ……カウボーイさん!』
カウボーイ『やけに騒がしいじゃねえか。何が――』
言いかけたところでやっと気づいたんだ。村の男に言われる前に。勇者が一人で『光の側近』と戦いに行っちまったってことをよ
カウボーイ『……勇者は、勇者はどこにいる?』
村人『あっちだ! カロニ博士の家の方! 今ならまだ間に合うかもしれない! 行ってやってくれ!』
カウボーイ『ああ!』
嘘つけ。俺と鉢合わせした時のお前さんの顔、最悪だったぜ?
カロニ博士ってのはこの村一番の賢人のことだ。俺には何がすごいんだかは分からないが、とにかく頭が良くて有名、らしい
勇者は『光の側近』が次に狙う高名な学者をこのカロニ博士だと踏んだんだ
博士の屋敷の近くに行くと、もう既に野次馬どもがごった返してやがった。デカい門には関係者以外の立ち入り禁止を告げる細めの縄がくくられてある。
知るか。俺は相棒に会いに行く。悪いかよ
――カロニ博士宅前
保安官『カウボーイさん!』
カウボーイ『アイツは?』
保安官『あっ、あの』
カウボーイ『通せ。俺を待ってるはずだ』
保安官『あ、あのしかし』
カウボーイ『通せ。今まで通りなら通してくれてただろうが』
保安官『しっ、しかしですねカウボーイさん。今回は今までとは、その、違いますし、あ、あの、その』
カウボーイ『通せってんだこのボンクラ!』
――カロニ博士書斎前
勇者妹『……』
カウボーイ『よお』
勇者妹『カウボーイ、さん。なんでここに』
カウボーイ『こっちのセリフだ。なぜお前がここにいる』
勇者妹『その……ね、身元、確認を頼まれて……一応だけど。形式だから、って』
カウボーイ『誰がいた』
勇者妹『あの、ね? お兄ちゃん、カロニ博士を庇ったんだって』
カウボーイ『……誰がいた』
勇者妹『カロニ博士はね。腕を切られただけで済んだんだって……今は警察の人が来て保護してくれてる』
カウボーイ『アイツぁ……勇者はいたのかって聞いてる』
勇者妹『カロニ博士、セントラルタウンに引っ越すことにしたんだよ。カウボーイさんにも、ありがとうって伝えてって言われた』
カウボーイ『勇者はいたのかよ!!』ダンッ
勇者妹『ひぁっ!』ビクッ
カウボーイ『わ、悪い……悪かった』
勇者妹『……お兄ちゃんね。さっきまで私と話してたよ。「ありがとう」とか「ごめんな」って言ってた。何だかお兄ちゃんらしくないよね』
勇者妹『カウボーイさんのことも話してたよ。「悪かった」とか……「今までありがとよ」とか……』
勇者妹『あの……あのね、カウボーイさん……』
勇者妹『お兄ちゃん……もう……た、助からない……って……!!』
カウボーイ『……っ』
――カロニ博士宅 書斎
カウボーイ『おい!』ダッ
医者『……』フルフル
医者が俺の方を見て首を振った。そのヤブの隣には勇者の野郎が寝転がっていた
カウボーイ『おい、勇者。遅れた。状況を教えろ』
カウボーイ『……おい』
カウボーイ『仕事、終わっちまったのか? 酷いぜ。アイツを殺るのは俺の役目だろ?』
カウボーイ『カロニ博士。うまいこと守ったんだってな。やるな、お前もよ』
カウボーイ『やっぱり俺らは最高のコンビだ』
カウボーイ『二人で殺った賞金首のこと覚えてるか? 無痛のハーケン、三つ目のダロブ、殺し屋ソキン、ディンとゴナ、アザーラ大尉、彗星マルク……お前がいなけりゃできねえ仕事だった』
カウボーイ『これからもやっていこうぜ、相棒』
カウボーイ『そうと決まりゃあ飯だ。昨日は悪かった、飲み直そうぜ。今日は俺が持つからよ』
カウボーイ『なあ』
カウボーイ『おい』
カウボーイ『……』
カウボーイ『いつまで寝てんだ』
胸を突かれたのが致命傷だったようだ。その他にも手や足にも執拗に斬りつけられた痕があった。必死に博士を守ったんだろう。ったく安らかに寝やがって。ムカつくぜ。こっちの気も知らないでよ
カウボーイ『……すまねえ、勇者』
カウボーイ『すまねえ……許してくれ……勇者……』
カウボーイ『すまねえ……』ボロ…
葬式は勇者の妹の願いで近親者だけで行われた。とは言っても勇者の近親者は妹しかいないんだが
葬式には呼ばれたが、会わす顔がないから行かなかった。我ながら恥ずかしい話だ
もし俺が勇者の話を聞いていれば結果は変わっただろう。じゃなくても、もしあの時俺が博士の家の近くで張っていれば――
変えようのない過去。そんな妄想に取り憑かれ、いつしか俺は壊れていった
そんなこんなで酒場で飲み潰れてたってワケだ
乙!
期待大
で、酒場に話は戻る
――酒場
カウボーイ「うぃ~、もっと飲むぞ俺は~!」ヒック
酒場の主人「おい。いい加減にしろよ」
カウボーイ「うるせえ! 勇者よぉ、俺があん時お前の話を聞いていればお前は助かったんだよな?」
カウボーイ「勝てなかったにしても俺がお前庇って死んでれば……」
カウボーイ「死んでれば……」
カウボーイ「俺が代わりに死んでれば……」グスグス
酒場の主人「ば、バカ野郎! そんなこと言うもんじゃねえや! 勇者の妹だってんなこと望んじゃいねえぞ!」
カウボーイ「う……うぅ……」
カウボーイ「うぷ」
酒場の主人「どうした」
カウボーイ「吐く」
酒場の主人「あっ、おい、それは便所で――」
…
カウボーイ「勇者ァ……」グスグス
酒場の主人(ったく、女々しい奴だ……とも言えないか)
酒場の主人(俺だって勇者が死んだのは悲しい。長年相棒だったカウボーイならそれも尚更だ……)
酒場の主人(こうなるのも仕方のないこと、か)
酒場の主人(……)
酒場の主人(カウボーイが戦わなくなってから、村は荒れ放題だ)
酒場の主人(この時期を良いことに今までナリを潜めていたギャング達も動き出している)
酒場の主人(大事になるには火種が小さ過ぎるが……色々とマズいかもしれんな)
酒場の客「あの、ご主人」
酒場の主人「あっ、お勘定かい?」
酒場の客「いえ、勘定ではなく――」
カウボーイ「うぐ、ひぐ……オヤジィ、酒ェ」
酒場の客「あの」
カウボーイ「……んだよ。俺に何か?」
酒場の客「隣、座っても良いでしょうか」
カウボーイ「……どーぞ」
酒場の客「ありがとうございます。あ、それと」コト…
カウボーイ「酒か!?」
酒場の客「これは私の奢りです。どうぞ、飲んでください」
カウボーイ「お、おう。ありがとよ」グイッ…
カウボーイ「……」
酒場の客「どうです、味の方は」
カウボーイ「……」
カウボーイ「オッサン、これ、水だぞ?」
酒場の主人「バカ、そりゃお前『頭を冷やせ』ってこったろ。ほら、それ飲んで酔い冷ませ」
カウボーイ「マジかよ……オッサン」
酒場の客「ふふ、まあそんなところですかね」
カウボーイ「……チッ」グイッ
カウボーイ「ぷは」
酒場の客「どうです?」
カウボーイ「……醒めたよ、色々とな。オヤジ、勘定。他で飲み直してくる」
酒場の主人「お、おい!」
カウボーイ「こんな場所で酒なんて飲んでられるかよ。じゃあな」
酒場の客「……」
酒場の客「ちょっと待ってください」
カウボーイ「あ?」
酒場の客「凄腕賞金稼ぎのカウボーイ、さん」
カウボーイ「んだよ、オッサン。何か文句でも――」
酒場の客「酒はおいしいですか?」
カウボーイ「あぁ?」
酒場の客「いえ、あなたがあまりに辛そうに飲んでいるように見えて……気になったのです」
カウボーイ「うまいに決まってんだろ。この酒場の中で一番高いやつだ」
酒場の客「値段で味が分かるのですか?」
カウボーイ「……ああ、その値段分手が加えられている」
酒場の客「味はどのようなものでしたか?」
カウボーイ「味……そりゃあ……よ」
酒場の客「香りは?」
酒場の客「舌触りは?」
カウボーイ「……」
酒場の客「カウボーイさん。お酒飲めませんね?」
カウボーイ「っ」
酒場の主人(確かに、カウボーイは元々下戸。勇者が死んでからよく飲むようになったが……)
酒場の客「痺れる舌、喉を通る痛み。目が回るような感覚。その苦痛を自身に与え続けることがあなたの償い方ですか?」
カウボーイ「……」
酒場の客「あなた、酔い過ぎです」
酒場の客「手が……震えていますよ」
昔の俺だったらここで奴の脳天に一発ぶち込んでいた。しかし、こん時の俺は震える手を隠すのが忙しくて何もできずにいたんだ。この推理は見事に全問正解。感心すべきか己の情けなさに泣くか。どっちもできない
ただの酒場の客に言い負かされる俺の気分、どん底だ
カウボーイ「あ、あぁ……あ……」
酒場の客「あなたは大事なものを失いましたね?」
酒場の客「現実を捉えきれず、前に進めないといったところでしょう。老婆心ながら」
昔の俺だったらここで奴の脳天に一発ぶち込んでいた。しかし、こん時の俺は震える手を隠すのが忙しくて何もできずにいたんだ。この推理は見事に全問正解。感心すべきか己の情けなさに泣くか。どっちもできない
ただの酒場の客に言い負かされる俺の気分、どん底だ
カウボーイ「あ、あぁ……あ……」
酒場の客「あなたは大事なものを失いましたね?」
酒場の客「現実を捉えきれず、前に進めないといったところでしょう。老婆心ながら一つあなたにお教えします」
酒場の客「前に進むには『想像力』が必要です。正しい方向にある想像力が……」
酒場の客「過去に囚われ『たら』『れば』と負の方向に想像を膨らまし、歯噛みし続ける生き方を故人が望むでしょうか」
酒場の客「前を向くことが……あなたの生きる道です」
酒場の客「まず、前を向き生きる自分を想像することが最初のステップですね」ニコリ
カウボーイ「……」
カウボーイ「……」フラ
酒場の主人「おい! 大丈夫かよ!」
カウボーイ「ああ……平気だ。酔いも……醒めた、ホントだぜ」
酒場の主人「お前の小屋んとこまで送ってやろうか?」
カウボーイ「いい。いらない」
酒場の客「もう行かれるのですね」
カウボーイ「ああ。あんたのせいだぜ。」
酒場の客「そう、ですか」
カウボーイ「ああ。あんたのせいで俺は少し……少しだけだがやる気が湧いてきた」
酒場の客「……」
カウボーイ「あんたの名前――」
酒場の客「いえ、名乗る程の者でもありません」
カウボーイ「そうかい。じゃあそろそろ出るとすっかな。またな、オヤジ。あばよ、オッサン」フラ…
カウボーイ「こんな場所で酒なんて飲んでられるかよ」
乙!
…
酒場の主人「行っちまった……大丈夫かよ、あいつ」
酒場の客「大丈夫でしょう」
酒場の客「最初にここに来た時の彼と、出る時の彼。違います」
酒場の主人「ああ……さっきのカウボーイ、勇者が生きてた頃と同じ目に戻っていた」
酒場の客「勇者?」
酒場の主人「いや、こっちの話だ」
酒場の客「……」
酒場の客「ご主人、お勘定をお願いします」
酒場の主人「ん、分かった。また来てくれよ」
酒場の客「ええ、また」
…
――勇者の家
勇者の妹「……はぁ」
勇者の妹(お兄ちゃんが亡くなってから……カウボーイさんが家に全く来なくなった)
勇者の妹(お兄ちゃんがいた頃は毎日ここに来てたのに)
勇者の妹(小屋の方に行っても出かけてるみたいだし、いつも飲み歩くようになったって酒場のおじさんも……)
勇者の妹(変わっちゃったのかな、カウボーイさん)
勇者の妹(カウボーイさん……私……あなたに伝えたいことが……)
勇者の妹「……会いたいな」
勇者の妹「あっ!」
勇者の妹「ちがうちがうちがうちがう」ブンブンブンブン
勇者の妹「……はぁ」
トントン!
勇者の妹「!」
勇者の妹「カウボーイさん!?」
勇者の妹「す、すいません! 今開けま――」ガチャ
勇者の妹「――」
勇者の妹「……誰、ですか?」
デブ「よォ」
デブ「邪魔するぜ」ズカズカ
勇者の妹「ちょっと! 勝手に人の家に入らないでください!」
デブ「へえ、案外綺麗に片付いてるじゃねえか」
勇者の妹「あなた一体誰なの!」
デブ「俺か? 俺の名前は『早撃ちのディック』。お前の兄貴とその相棒に世話んなった……ギャングだ」
勇者の妹「ぎゃ、ギャング」
デブ「勇者のことは残念だった。追う者と追われる者の関係だがよ。あいつぁ……いい奴だった」
デブ「まず俺のアニキ達を殺した。二人も。『サック』と『マイ』っていうんだ……」
デブ「ドタマぶち抜かれてな……酷い死に様だったよ。それに俺もただじゃあ済まなかった」
デブ「俺もよ、ドタマぶち抜かれちまったんだ」
勇者の妹「あ、頭は無傷に見えますけど」
デブ「いひ、いひひひ。そう言うと思ったぜ嬢ちゃん。違う違う。俺はド〝タマ〟を打ち抜かれたんだ」
勇者の妹「?」
デブ「いひひ、兄貴に大事に育てられたアンタにゃ分かんねえか。じゃ見せてやるよ」ヌギッ
勇者の妹「きゃぁッ! 何をして――」
デブ「いひゃひゃひゃ……」ブラン
デブ「見ろよ。一つしかないだろ?」ブランブラン
デブ「勇者のせいで今の俺は『片玉のディック』って呼ばれてるんだぜ。ひでぇ話だろ? ひでぇ話だろうがオイ!」
勇者の妹「その報復に来たのですか……ひっ、ち、近付けないで……」
デブ「そうだ。報復だ」ブラン
デブ「勇者が殺されてから相棒のカウボーイは酒に溺れて廃人になったそうじゃないか。これよりいいチャンスはねえや」
デブ「でな……勇者のかわいいかわいい忘れ形見をヤるなら今しかねぇ、と思ったんだよ!」
デブ「なあ」ガバッ
勇者の妹「い、いやっ……」ドサ…
…
…
デブ「顔、良し。そこらの売れてる娼婦よか良い」
デブ「髪、良し。よく手入れされてる。いい匂いもする」クンクン
勇者の妹「ひ……」
デブ「黙ってろ! 押し倒された方は黙って犯されんのが決まりだろうがよォ!」ドガッ
勇者の妹「うぐ……っ」
デブ「いけねぇ、顔に傷つけちまった。ま、いいか……」
デブ「胸……薄いな。肩もだ。痩せ過ぎ。年のせいもあるか? 剥いで見てやるか」ビリィッ!
勇者の妹「うぅ……っ!?」
デブ「……小せえ。次、腹」
…
乙!
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