ごめん詰んだ

開始４行で！？

魔法使い「勇者さまには息子さんがいたんですか？」

勇者「ああ。しかし息子は魔物に襲われて死んだはずなんだ…」

魔法使い「死体は？」

勇者「は？」

魔法使い「彼の死体は見つかったのですか？」

勇者「息子は…食い散らかされた。残ったのは肉片だけで…」

魔法使い「となると……」

戦士「おいおい。嫌な予感がするぜ」

魔王「……側近」

側近「はい」

魔王「たとえあの勇者がお父さんだとしたら、なんであんなに若いの？」

側近「勇者という宿命を負わされたものは、魔王を倒すまで不老の呪いにかけられます」

魔王「不死じゃないんだね？」

側近「はい。魔王さまは少しずつ歳をとりますが、似たようなものでしょう」

魔王「そう……」

思わず書いたけどどうしよう

がんばってってくれるとうれしい

魔王「でも――」ｽｸｯ

勇者「！」

魔法使い「……」

戦士「来るか…」

魔王「お父さんでもなんでも、ぼくの友達を殺したことには変わりない」

魔王「許さない。側近」

側近「はい。ご武運を、魔王さま」ﾊﾟﾁﾝ

ﾌﾞｩﾝｯ…

魔法使い「！ 空間転移ですか！」

戦士「なんだそりゃ！」

魔法使い「字面を考えれば分かるでしょうこの脳筋！」

戦士「今言うことかそれ！？」

勇者「マズい、俺たちをバラすつもりだ―――」


ｼｭﾝｯ

――

魔法使い「……」

魔法使い（やはり皆とわかれましたか）

側近「っと」ｼｭﾝ

魔法使い「…すごく嫌な相手とぶつかったものです」

側近「まあそういわずに。わたしからの直々の指名ですよ」

魔法使い「うれしくありません」

側近「そうですか」

――

戦士「あいたぁっ！！」ﾄﾞｽﾝ

戦士「ちくしょー魔法使いめ、失礼なこと言いやがって！」

戦士「はー…ま、文句は後でいうか」

戦士「まずはお前らからだな」

魔物『……』ｼﾞﾘ…

戦士「いったい何百匹いるんだろーなぁ、こいつら」

――

魔王「……」

勇者「……」

魔王「人間は目障りだ」

魔王「勝手に土地を改築し、汚い煙を出し、馴れ合い、殺しあっていく」

魔王「この世界の害虫だ」

勇者「そうかよ。俺は魔物がすっげーじゃまだ」

勇者「せっかく人が作り上げたもんぶち壊すし、森は燃やすし、まるで下っぱの教育ができてねぇ」

勇者「お前ら、存在しないほうがいいんじゃねえの？」

魔王「…昔、お前みたいにくどくど説教していたヤツがいた気がする」

勇者「奇遇だな。俺も昔、お前みたいにうじうじしたヤツがいた気がする」

魔王「来い、思い上がりの勇者が。塵にして国に帰してやる」

勇者「言われずとも行く。乳臭さが抜けきらない魔王さんよ」

――

側近「賭けをしましょう」

魔法使い「私が死ぬか貴方が死ぬかの？」

側近「違いますよ。魔王さまと勇者、どちらが勝つかを」

魔法使い「勇者さまでしょう」

側近「おや。先ほどの会話を聞いていたのに？」

魔法使い「魔王が勇者さまの息子という話ですか？ええ、しっかりと」

側近「息子だからトドめをさせない――という意見が出るかと思いましたが」

魔法使い「残念ながら、勇者さまの中で息子さんは既に『死亡』しているのでしょう」

魔法使い「だからあれは幻覚を見せられているとしか考えていないはずです」

側近「なかなか興味深いお話ですね」

魔法使い「もっと細かく言えば…魔王を殺したあと、事実を知って勇者さまが発狂するとか」

側近「……」

魔法使い「使用者の死によって魔法というものは解けますからね」

魔法使い「全てが終わった後、勇者さまは悟るのでしょう」

側近「……魔王が息子だった、そして息子を殺したという事実を？」

魔法使い「そう。仮の話ですがね――あれは勇者さまの息子さん確定で良いのでしょうか？」

側近「……」

魔法使い「沈黙は肯定とさせてもらいますね」

側近「それを、そこまで暴いたらどうするつもりなのです？」

魔法使い「貴方を倒すことには変わりありません」

側近「良いのですか？それを勇者に伝えなくて」

魔法使い「ええ。逆に彼の足枷となったら困りますからね」

側近「分かりません。勇者のことが大事ではないのですか？」

魔法使い「特別恋愛感情を抱いているわけではありませんし」

側近「あなた人間ですか？」

魔法使い「失礼ですね。れっきとした人間ですよ」

側近「嘘だ」

魔法使い「勇者さまには個人的に深い恨み辛みがありまして」

魔法使い「魔王倒して世界救ってくれればそれでいいんですよ」

側近「あなた人間ですか？」

魔法使い「人間ですよ」

――

戦士「うりゃーーー！！」ﾋﾞｭﾝﾋﾞｭﾝ

戦士「おらーーーー！！！」ｻﾞｼｭｻﾞｼｭ

戦士「とぉおーーーー！！」ﾊﾞｼﾊﾞｼ

おかしいな、どうしてこうなった

死んだ筈の息子が何故、魔王になってるか考えられれば成立するんじゃないんすか。

ベタだけど、たとえば黒幕がいて魔王は傀儡であるとか。

面白くなりそうだから頑張れ。

――

勇者「ふっ」

魔王「その程度か！」ﾊﾞｼｭｯ

勇者「…っ」

勇者（おかしい。見覚えがありすぎる）

勇者（こいつは――）

息子『お父さん！ぼくちょっとだけ強くなったんだよ！』

勇者（まるで――）

息子『ぼくも勇者になるから！そしたら一緒に旅に行こうよ！』

魔王「ああぁぁぁぁぁ！！」

勇者「息子、じゃないか……！！」

ﾄﾞｩﾑｯ

ﾊﾟﾗﾊﾟﾗ

勇者「あれ？生きてる？」

魔王「あれ、おかしいな…なんで外したんだろう」

勇者（床に穴が開いてるし…。当たったら即死だった）

魔王「どうしちゃったんだろう、ぼく…手が震えて…」

勇者（今だ）

勇者（魔王が混乱しているうちに、やるんだ）

勇者「はっ、まだまだ魔王サマは未熟ってことなんじゃないか」ﾁｬｷｯ

魔王「そんなことない！だってぼくは……ぼくは……」

勇者「？」

魔王「ぼくは…何処で力の使い方を学んだんだ？」

勇者「覚えてないのか？」

魔王「黙れ。だってぼくは、教わっ、誰に？いつ？」

勇者「何が…」

魔王「ぼくは、誰だ？」

勇者「知らないのか、お前は。自分の事を」

魔王「分からない分からない分からない分からない」

魔王「ぼくは誰だ！？どうしてここにいる！？」ﾊﾞｷｯﾍﾞｷｯ

勇者「！？力が暴走しやがってんのか！」

魔王「お前は誰なんだ！ぼくは誰なんだ！！」

勇者（やばい、巻き込まれる！）

魔王「うわぁぁああああああああああ！！」

ﾋﾞｷ ﾎﾞｷ ﾋﾞｼｼｯ

――

魔法使い「む。ずいぶん派手にやってますね」

側近「」

魔法使い「困りました。勇者さまのところへどういけばたどり着くのでしょう」

側近「」

魔法使い「教えてくれますか」ｸﾞｲ

側近「……気絶しているというのに扱いが雑ですね」

魔法使い「起きたではありませんか」

側近「暴君ですかあなたは」

魔法使い「眠気覚ましに足の一本でも吹き飛ばしますか？」

側近「やめて下さい死んでしまいます――ただでさえ片腕を吹き飛ばされたのですから」ﾖｲｼｮ

側近「というよりなんですかあの魔力。歴代以上に暴力的ですが」

魔法使い「魔術書が友達でしたからね。やることなく来る日も来る日も練習ですよ」

側近「ぼっち」ﾎﾞｿ

魔法使い「……」ｶﾞｽｯ

側近「痛っ」

魔法使い「案内して下さい。魔王のいるところまで」

――

戦士「まだまだぁ！！」ｶﾞｽｶﾞｽ

戦士「骨のあるやつはいないのかぁ！！」ｹﾞｼｹﾞｼ

戦士「オラオラオラオラ！！」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ

魔物「剣使えよあべしっ！」

魔法使い「ああ、こんなところに。イオナズン」

ﾄﾞﾊﾞｰﾝ

戦士「ギャーー！！？」

側近「うわぁ…」

戦士「殺すつもりか！」

魔法使い「ちゃんと回復させたじゃありませんか」

戦士「そういう問題じゃない！何か一言掛けろ！」

魔法使い「爆発させますから注意して下さい」

戦士「遅いわ！」

魔法使い「爆発させますから注意して下さい」

戦士「誰も早口で言えなど言ってない！！」

側近（こんなパーティーじゃさぞかし勇者も頭が痛かったでしょうね）

戦士「…で？こいつは先ほどの側近みたいだが」

側近「はい」

魔法使い「そうですね」

戦士「仲間になったとかそういう？」

魔法使い「いえ、人質と道案内と盾役です。人質に使えるとは思えませんが」

戦士「おい」ｸｲｸｲ

側近「はい」

戦士「よく自害しなかったな。精神力強くね？」

側近「良く言われます」

魔法使い「聞こえてますよ」

支援はします