大佐「第五遊撃隊は」飛鷹「北へ南へ」木曾「東奔西走」 (90)

・俺らTUEEEEE系
・地の文セリフ文混ぜまくり
・キャラの口調くっそ怪しい
・アニメの第五遊撃部隊とは何の関係もありません

それでもいいという方は、ジャンクフード片手に短いひと時をお過ごしください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439001147

木曾「ロ~ン! 12000!!」バタッ!

大佐「ああああああ! 中そこにトイツかよ! じゃあ安め小三元あがったわさっきの!!」手牌グチャア

飛鷹「あー、中待ちだったのね。發掴まされて降りちゃったわ」ジャラジャラ

木曾「俺も中引いて回ってたら2枚目引けて頭にできた」ジャラジャラ

深雪「え、二人とも大佐の大三元見えてたのか?」ジャラジャラ

飛鷹「ええ、大佐が黙り込むときって降りるのに困ってるか大物手が入ってる時だけよ」ヤマツミ

大佐「安めの小三元も深雪の5萬がストライクだったぞ、あ~悔しいいいいいいいい!」ヤマツミ

深雪「あっぶねー、なんも考えてなかった!」ヤマツミ

木曾「深雪が考えてないのはいつものことだろ?」サイコロポーイ

飛鷹「トップ取り麻雀だからそれが強い時もあるけれどね」ドラメクリ

大佐「あー大三元……大三元……」

深雪「まだ言ってるぞこの大佐……」

酒匂「大佐ー! どんな感じ?」ノシカカリ

大佐「木曾の4000通しで俺が飛ぶ」

山城(航空戦艦)「不幸そうね……フフフ、お茶が美味しいわ」セイザ緑茶ズズズ

木曾「リーチ! 大佐を飛ばして終わらせてやる!」

大佐「あー詰んだ。6巡目とかどーしょーもねーよ」

鈴谷「そんじゃー次の席決めとこ! 私は飛鷹の席で」ゴロゴロ雑誌ペラッ

酒匂「モチロン大佐の場所!」ピョンピョン

山城「残り物にはなんとやら……深雪の所でいいわ」ズズズ

大佐「おいおいおい、まだ終わっちゃいねぇぞ。麻雀っつーのはこっから面白く――」

木曾「っしゃあ一発ツモ! 裏ドラは負けといてやるよ」

大佐「6000オールじゃ見る意味ねぇもんな。あー派手に飛んだ」

山城「不幸そうね……フフフ」ズズズ

コンコン

大佐「ん? どうぞ」

ガチャ

長門「失礼するぞ大佐殿」

大佐「おろろ、横須賀艦隊旗艦殿自らこんな隅っこまで何をしに?」タバコ点火

彼らが麻雀をしていたのは、10人程度が快適に暮らせそうな船の中。

それは横須賀軍港の最果てにひっそりと停泊していた。

長門「第五遊撃隊宛の指令書だ。直ちに現地へ向かって欲しい」指令書サシダシ

大佐「また急だなー。で、どこ? ラバウル? リンガ?」指令書ウケトリ

長門「いいや、逆だ。最北端、幌筵に向かってくれ」

大佐「幌筵? 何でまたそんな……」指令書メトオシ

長門「行ってもらえるか?」

大佐「フーッ……了解した。お前ら! 出港準備だ!!」

六人「了解!」ビシッ!

第一話【キス島撤退支援作戦】

オホーツク海洋上


山城「それロン! 18000よ!!」

鈴谷「げぇっ! なんでその捨て牌でそれがぶっささるの!?」

飛鷹「相変わらず山城の迷彩はえげつないわね」

山城「ツモる運がないから、あがれる牌を出させる小手先の技術を磨いただけよ」

木曾「あっさりと難しいことを言うなこの航空戦艦は」

飛鷹「ホントね……!! 彩雲から入電! 進路上に艦影!!」

「「「「「「――!?」」」」」」

大佐「数は? 艦種は!?」フネ操縦中

山城「深雪! そこらに転がってる瑞雲を頂戴!」

深雪「わかった! あ山城さんそこの魚雷渡して!」

木曾「俺の分も頼む! 魚雷発射管は俺が引っ張り出してくる!」

鈴谷「主砲副砲はこっちだよ~! 弾薬は今ぶち込んでる!」

酒匂「じゃ、じゃあ酒匂はみんなの応援するよ!」

木曾「お前も準備しろ!」

飛鷹「木曾うるさい!! えー、数は一隻……あら、艦娘みたいね。幌筵の迎えかしら?」

大佐「艦娘? 迎えをよこすなんて聞いちゃいねぇぞ。取りあえず彩雲を接近させて船まで誘導しろ」

飛鷹「了解」

深雪「なんだお仲間かー、慌てて損した」

山城「まぁ敵がハッキリ見えるまで近いと不味いもの、仕方ないわ。――ああ雀牌が床に……不幸だわ」

阿武隈「大佐殿、お迎えに上がりました! 幌筵泊地所属、軽巡洋艦阿武隈です」ビシッ

大佐「ご苦労、と言いたいところだーがー、事前連絡もなく来た理由はなんだ?」

阿武隈「この作戦を深海棲艦に感づかれない様、無線による連絡を最低限にしているためです」

大佐「なーるほど。ま、せっかく来てもらったんだし、色々聞きたかったこともある」

飛鷹「そうね、指令書には『ナッツ島ヲ攻撃サレタシ』ぐらいしか書いてなかったわ」

山城「そもそも、北方の状況すら私たちには伝わっていないわ」

木曾「その辺も含めてキッチリ説明して貰いたいな」

深雪「阿武隈さん、お茶をどうぞ」コトッ

阿武隈「ありがとうございます、ではまず北方海域の状況について説明します」

北方海域は西の日本海軍、東のアメリカ海軍の挟撃によりほぼ掌握状態にあった。

しかしアメリカ海軍側で一度、深海棲艦の大艦隊を誤認、ほぼすべての弾薬を無駄打ちして補給に下がった

その隙に深海棲艦は北方東部を完全に奪取、余勢を駆って西部に攻勢をかけてきた。

大規模な陸上基地を置いていたナッツ島まで奪われた中、キス島だけ侵攻されず取り残されてしまった。

この島には陸軍の将兵およそ5千名が取り残されている。

その将兵を載せる輸送船を護衛するのは幌筵艦隊。

第五遊撃隊はそれに先駆け、ナッツ島へ攻撃を仕掛け敵の目を欺くのが任務。

阿武隈「――です。ご質問などはありますか?」

鈴谷「じゃあ一つ、何で陽動部隊が私たちである必要があるの?」

阿武隈「ナッツ島周辺には強力な水上打撃部隊が展開しています。並の艦隊にここへ行けとする命令は、死ねと同義です」

木曾「俺からも、そもそも陽動の必要性は? 俺たちを正面に展開させてぶっ潰せば解決じゃないのか?

阿武隈「この作戦はキス島から人員を救出すること、なので輸送艦が必須です。
何度小競り合いに勝っても、輸送船が無事でなければ戦略的敗北になるので、戦闘そのものを避ける様に決まりました」

山城「作戦日時――私たちはいつナッツ島に殴りこめばいいのかしら?」

阿武隈「この時期はキス島周辺に霧が出ます。その日を逆算し、私たちが出撃する一日前に第五遊撃隊には出て貰います。
途上で送られる暗号が、作戦決行の合図です。ナッツ島での交戦を確認次第、私たち本隊はキス島に入ります」

酒匂「どれくらいナッツ島で遊べばいいの?」

阿武隈「本隊が安全圏内に入った段階で無線封鎖を解除、第五遊撃隊に撤退命令が出されます。
最大で2日の戦闘を覚悟しておいてください」

飛鷹「……え? どうして皆で私を見るの?」

阿武隈「いえ、この流れなら残った飛鷹さんも何かあるのかなーと」

飛鷹「聞きたいことは全部みんなが聞いてくれたし、私からは特にないわよ」

大佐「じゃあ俺から一つ……」

大佐「作戦遂行による海軍の利益はなんだ?」

阿武隈「えっ……それはキス島の陸戦隊の損失を最小限に――」

大佐「そこじゃない。陸と海は犬猿の仲だ、それなのにこの救出作戦が立案、遂行される事になった裏に何がある?」

阿武隈「……私も詳しくは聞いていませんけど、陸軍から技術貸与が約束されているそうです」

大佐「そうか、分かった」

阿武隈「何故このような事をお聞きに?」

大佐「俺は部下を死地に送り込むんだ。その理由がたかが『善意』じゃ、その価値がねぇ」

大佐「技術貸与って言う確かな『利益』があるなら、やってやる価値が生まれる。それだけだ」

阿武隈「……ほかに質問は?」

「……」

阿武隈「無いようですね。幌筵までもうすぐです。それまで――」

山城「阿武隈は麻雀できる? 一緒にやりましょうよ」

阿武隈「ええっ!? いつ深海棲艦が襲ってくるか分かりませんよ!?」

飛鷹「大丈夫よ、私の彩雲が常に周辺を偵察しているわ」

鈴谷「そーゆーこと。ささ、こちらにどうぞ」

阿武隈「ええっ! 私下手ですよ?」

深雪「別にお金賭ける訳じゃないしだいじょーぶだいじょーぶ」

酒匂「でもトップの人以外は雑用ね!」

阿武隈「それ私も例外じゃなく?」

木曾「どうした? 負けるのが怖いのか?」

阿武隈 カッチーン「ルールは?」

大佐「半荘アリアリ赤3枚途中流局無し、トップ以外の奴を入れ替えで船の用事をやらせる」

鈴谷「細かいルールは私が気づかれない様に教えてあげるね」

阿武隈「分かりました、よろしくお願いします」北家

深雪「やる気満々だな! そうでなくっちゃ!」東家

山城「他の人を入れてやるのは久しぶりね。今日はいい日になりそうだわ」南家

木曾「本当の麻雀ってやつを教えてやるよ」西家

ちなみにこの後特別ルールとして、阿武隈を皆でタコ殴りにする祭りが開催された模様。

飛鷹と木曾とはいいな期待

数日後 北方海域洋上

飛鷹「……泊地より入電! 『幌筵沿岸ニ濃霧注意報発令、注意サレタシ』」

大佐「合図が来たな。今から俺らはナッツ島に向かう! 総員艤装を装着! いつでも出られるようにしろ!」

6人「了解!!」

大佐「飛鷹、彩雲の量を通常の3倍、偵察距離を2倍にしろ」

飛鷹「了解、行ってらっしゃい!」

船の窓から式神をばらまくと、それらは彩雲となり空に舞い上がって行った。

木曾「いつ見てもその出し方便利だよな」

酒匂「便利ってゆーか、手抜き?」

飛鷹「武装を積んだ艦載機はこの手抜き発進が出来ないのが面倒なのよね」

深雪「手抜きなのは認めるんだ……」

飛鷹「――敵艦隊発見!! ヲ級を基幹とする空母機動部隊よ!」

大佐「総員出撃! 連中共に恐怖の味を覚えさせてこい!」

船尾の部分が上下にパカッと開き、そこから艤装をつけた彼女たちが海上に滑り降り立つ。

大佐を含む7人は無線で密な連絡を取り合う。

大佐「一先ずは制空権をぶんどるぞ。飛鷹、全艦上戦闘機を上げろ」

飛鷹「了解!」

大佐「山城、瑞雲2小隊を上げておけ。その後爆撃させるか戻すかはお前に任せる」

山城「了解!」

大佐「焦るなよ、まずはお空の安全を確保してからだ。安心しろ、獲物は売るほどある
さ」
木曾「深海棲艦なんざその場で活〆したモノでも金にならないぜ」

鈴谷「でもヲ級の生け捕りなら、アブナイ場所に高値で売り捌けそう」

深雪・酒匂「……なんで?」

大佐「知らないままのキミたちでいてくれ」


同時刻 キス島撤退作戦本隊


阿武隈「『ワレ敵部隊ト交戦開始。ナッツ島奪還作戦ヲ開始スル』、第五遊撃隊からの暗号です!私たちも行きましょう!」

阿武隈を旗艦とする水雷戦隊は、輸送艦数隻を囲う輪形陣で島影から現れた。

濃霧のため、探照灯によるトン・ツーと掛け声の組み合わせで慎重に進軍する。

数時間後 ナッツ島沖


飛鷹「ヲ級2隻撃沈! 敵部隊撤退を開始!」

山城「いえ、次が来たわ! ヲ級1隻ヌ級2隻を含む空母機動部隊よ!」

深雪「また機動部隊!?」

鈴谷「ぼやかないぼやかない。酒匂に煙幕を焚かせて体勢を立て直す時間を稼ぎたいけどどう?」

大佐「許可する、酒匂! 派手に焚きつけろ」

酒匂「りょーかーい! もくもく作戦を開始します!」

木曾「それ違う作品!!」

山城「敵艦載機を確認! 瑞雲を後退させるわ。飛鷹、お願い」

飛鷹「言われなくても! 全艦上戦闘機発艦準備!」

酒匂「……ねぇ大佐、なんかおかしくない?」

大佐「んあ?」

深雪「あー確かに、おかしいよな」

木曾「何がおかしいのか具体的に言ってくれ」

酒匂「阿武隈の話だと、ナッツ島にいるのは水上打撃部隊だったよね」

深雪「でも、さっきから出てくるのは空母機動部隊。報告と噛み合わないよな」

鈴谷「つまり……どういうこと?」

酒匂「しっらなーい」

深雪「そこから何か考えるのは私らの仕事じゃないからな」

鈴谷「ダメだこりゃ」

木曾「……いるはずの敵がいない、そこから考えられる事は……」

大佐「1つ、報告内容が間違っていた。この場合幌筵の連中と小一時間お話する必要があるな」

飛鷹「そしてもう1つは……別の攻撃目標に向かった」

山城「現状で奴らの攻撃目標になりそうなのは幌筵泊地と――」

大佐「キス島、もしくはその救出部隊」

木曾「どうする大佐? その可能性は高いと思うが、思い過ごしだった場合ナッツ島の敵が好きに動けるようになる」

山城「私はここを放棄してキス島に向かうべきと進言するわ」

飛鷹「私もよ。酒匂と深雪、二人の勘が合致したのなら信用に足ると言える」

鈴谷「ま、退くも進むも、大佐の命令に全面的に従うよ」

大佐「……フゥー」煙草テンカ

大佐「正面の敵艦隊を撃退次第船に帰投しろ。全速力でキス島海域へ向かう」

6人「了解!!」

深夜 キス島沖


阿武隈「私たちで偵察するから、安全を確認してから輸送船と一緒に来てね」

若葉「了解」

阿武隈を先頭に6人が島影から広い海原に躍り出る。

真っ暗な海は風一つなく静かで、故に不気味であった。

6人は散会して広域を索敵する。目視では不可能なので電探頼りだ。

阿武隈「島風、先行して出来る限り索敵範囲を広げて」

島風「はーい! 島風、行っきまーす」

最新鋭の電探を装備している島風が隊列から離れる。

阿武隈「本当に暗くて見えない……ま、そもそも敵艦はいないから見えなくて当然――」

島風「電探に反応! やばいメッチャいる!!」

阿武隈「え! 数と方角は!?」

島風「数は把握できない! 全方向から来てる!! そっちに合流するよ!」

阿武隈「!! 作戦がばれてた!?」

響「どうするんだい阿武隈?」

阿武隈「暗いのを利用しての乱戦……ダメだ、敵に明かりをつけられた時点で作戦が崩れる」

島風「敵はまだこっちに気づいてないよ、行軍速度も上がってない」

阿武隈「……若葉たちの所まで下がって、島影に身を隠す」

響「先のない作戦だけど、生き残る可能性はそれが一番高いね」

島風「なんで? 全員で一点突破した方が可能性は高いよ」

阿武隈「それだと輸送船が的になる。私たちの生存のために5千人を犠牲にはできないわ」

響「だね。世間体的にもそれはまずい」

島風「でも、その身を隠すってのは援軍が見込める場合の作戦だよ? この場合援軍なんて――」

その時、遠い頭上からプロペラ音が響いてきたのと同時に、平文で全艦隊に通信が入った。

『此方第五遊撃隊、只今ヨリキス島海域ニ入ル』

阿武隈「第五遊撃隊!? なんでここに――」

響「よく分からないけど援軍が来たなら話は早い、島影に逃げ込むよ」

飛鷹「彩雲より入電! 大規模な水上打撃部隊を確認!!」

大佐「ビンゴだ! 木曾、酒匂、深雪が先行して魚雷をばら撒け! 投射次第山城、鈴谷と前衛を交代!」

5人「了解!」

船から飛び降りた5人は全速力で敵のいる方向へ舵を切った。

大佐「飛鷹! 夜だから敵に空母はいねぇ! 派手にかませ!!」

飛鷹「お安い御用よ」

一人残った飛鷹は、左手に持つ巻物をバサッと広げた。

開かれた巻物は、空中にあるのに水面に浮いているようにふわふわしている。

そして飛鷹は、右手で無造作に式神をばら撒く。

それらは不自然な挙動で、巻物甲板の上に2列縦隊で並んだ。

整列が終わると、式神は次々と真っ暗な大空へ飛び立つ。

全ての式神が舞い上がるのを確認した飛鷹は、空いた右手の指を鳴らした。

飛鷹「全機爆装!さあ、飛び立って!」

途端式神の周囲に稲妻が走ったかと思うと、無数のエンジン音が轟き始めた。

艦上爆撃機 彗星一二型甲、式神はすべてそれに変貌した。

大佐「敵の陣容は分かるか?」

飛鷹「暗すぎて流石に全部は……でも駆逐艦から戦艦まで、たーくさんいるわね」

大佐「よし、分かる限りの戦艦・重巡にありったけ叩き込め」

飛鷹「了解」


タ級「……? ――!!」

数十機の編隊が近づけば、流石に敵も音で気が付いた。

上空に探照灯を向け、ありったけの対空掃射。

しかし暗さと操縦技術の合わせ技で、攻撃は面白いくらいに当らない。

プロペラ音が聞こえないほどの砲火の中、戦艦に向けて彗星は急降下爆撃の体勢に入った。

タ級は余裕に回避運動を取ろうとした、その時、自分の真横を通り過ぎて行った物体に目が行く。

艦上攻撃機 流星

上空の彗星に気を取られ、うるさいほどの砲火もあり、海面すれすれを飛んでいた流星に全く気づかなかった。

時すでに遅く、水中を走る白い線がタ級目がけて無数に向かっていた。

爆撃を避ければ雷撃が刺さる、しかし雷撃を回避するには爆撃を受ける必要がある。

急な判断を求められたタ級はどっちつかずの動きをしてしまい、爆撃も雷撃も食らい轟沈した。

同じ連携で、次々と餌食になる深海棲艦。

飛鷹『戦艦4隻、重巡3隻撃沈! 大破残りが3隻、後はよろしくね』

酒匂「飛鷹ー、腕落ちた? いつもより少ないよ?」

飛鷹「暗いんだから仕方ないでしょ!」

木曾「まーそういう事にしておいてやろう。魚雷発射準備!」

深雪「りょーかい!」

響「阿武隈……! これは――」

キス島救援部隊の面々は、島影からこの光景を眺めていた。

阿武隈「夜戦で艦載機を繰り出すなんて……! しかもあの命中精度、通常の一航戦レベルよ」

闇夜を舞う航空機は燃え上がる深海棲艦たちに照らされ、地獄からの使者のように映る。

島風「あ、あれ! 数は減ったけどたった5隻で突入するの!?」

島風が指さす先には、魚雷を投射しながら突入する艦隊がいた。


木曾「魚雷投射終了! 前衛を譲るぜ!」

山城「了解! 行くわよ!!」

鈴谷「さてさて、突撃いたしましょう」

二人は主砲を、パニック状態の深海棲艦へと向ける。

山城「主砲、よく狙って、てぇーっ!」

鈴谷「うりゃー!」

爆音を響かせ放たれた砲弾は、それぞれ深海棲艦の急所に命中する。

山城「今回は私が一隻リードね」ドヤァ

鈴谷「戦艦だから一隻ハンデでイーブンでしょ!」プンプン

山城「そうだったかしら? フフフ」

飛鷹『はーい冗談も程々にね。敵もそっちの存在に気づいて全艦向かっているわよ』

深雪「しゃー! 待ちに待った夜戦で乱戦だぁ!」

木曾「どこかの夜戦馬鹿と悪夢が聞いたらよだれたらしそうだな」

大佐『よーしお前ら、レイトショーの開幕だ! 一匹もこの地獄から取り逃がすな!』

6人「了解!!」

木曾「弱すぎるっ!!」

右手に抜き身の剣、左手に主砲を持ち敵の中を切り進む。

深雪「深雪スペシャル! いっけー!!」

両手に連装砲を構え、照準もまともに見ずに百発百中の精度で舞う。

酒匂「さぁ! 片っ端からやっちゃうよ!!」

体を踊るように回転させながら、腰の主砲を敵に向けて撃ちまくる

鈴谷「うわっ、きっもー!」

至近距離の駆逐イ級を蹴り上げ、落下してくる前に主砲をブチかます。

山城「ハハハハハ! そこ、頂きよ!!」

小回りの聞かない艤装を身体能力と技術でカバーし、右へ左へ巨大な砲弾をお届けする。

飛鷹「第二次攻撃隊! 行きなさい!!」

乱戦中の5人をカバーする様に、爆撃機と攻撃機が深海棲艦と艦娘の隙間を通り抜けては爆弾を落としている。

若葉「……何なんだ、何者なんだあれはっ……!」

島風「強い、強すぎるよ……」

響「あれだけの数の深海棲艦を、たった6人の艦隊で……!」

阿武隈「これが、日本海軍最強と謳われる第五遊撃隊……」

その光景を見ている阿武隈たちは、もはや恐怖さえ覚えた。

深海棲艦は瞬く間に数を減らしていく。

逃げようとする相手には優先的に砲弾が飛び、決死の突撃をしてくる相手にも砲火を浴びせ、隙だらけの相手も見逃さず急所を捉える。

どれだけ時間がたったのか、空が薄明るくなり始めた頃、海上に立っているのは彼女たちだけになっていた。

そこに大佐の操縦する船がやってくると、第五遊撃隊の面々を素早く収容して始めた。

大佐『あー、あー。こちら第五遊撃隊。任務達成を確認。これより我らは幌筵艦隊の指揮下を離れる。諸君らの今後の健闘を祈っている』

その無線だけで別れを告げた船の後ろ姿を、阿武隈たちはただ茫然と見送った。

洋上を行く船から舵を握る大佐以外、水平線に浮かぶ暁を眺めていた。

木曾「なー、次はどこへ行く?」

酒匂「そろそろ南の方に行かない?」

深雪「賛成!」

飛鷹「いいわね。本土で英気は養えたし、ウォームアップも十分できた」

大佐「噂によると、近々南方で大規模な深海棲艦掃討作戦が実施されるとかなんとか」

鈴谷「それはそれは、行かない訳にはいかないでしょ!」

山城「南方……久しぶりね」

南方海域に行くと決まった彼らの表情には、明るいながらもどこか緊張感が伺える。

鈴谷「よーし! 麻雀しよ!」

大佐「ああ? 遊ぶ前にまず寝ろ!!」

山城「流石に気分が高揚していて、寝付ける気がしません」

木曾「それどこかの青い一航戦のセリフだろ……」

酒匂「ぴゃー! 負けないよー!」

深雪「風牌4枚と白2枚でいいよな、白引いた奴は観戦で」

大佐「待てもしかしなくても俺を頭数に入れてねぇよな?」

飛鷹「だって、大佐は今運転中じゃない」

大佐「白3枚にしろ、最後に残った牌が俺の扱いで!」

第五遊撃隊は北へ南へ、西へ東へどこへでも。

第一話 【キス島撤退支援作戦】艦

初回というわけで一気に書き切りました。
次回からは小出しになるかと思われます。

乙!
此れは期待

南方 とある港町

大佐「あっちー……」

飛鷹「この暑さは久しぶりだと堪えるわね」

山城「何でこの炎天下の中で買出しに行かなければ行けないのよ」

大佐「麻雀の負け組3人が出る罰ゲームとか考えたの誰だよこんちくしょう」

飛鷹「言いだしっぺが自分に苦情を申し立ててる……」

山城「フフフ……不幸だわ」ガクー

大佐「まー折角出てきたんだ、なんか美味いもん食うか。奢るぞ」

飛鷹「ホント? 涼しくなれるものがいいわねー」

山城「この町で涼しくて美味しいモノって何かあるかしら」

大佐「まぁ最悪涼めりゃ適当な店でもいいだろ」

飛鷹「辛いのは勘弁よ? 前に本当に何も考えずに中華料理屋入ったら四川料理屋だったし」

山城「全員で行ったアレね。深雪と酒匂が汗だくで半ギレになってたわね」

飛鷹「それそれ。木曾と鈴谷は何ともない顔してバクバク食べていたけれど」

大佐「あの二人は辛いモノ平気だからなー」

数十分後 喫茶店

大佐「あ゙~……買出しがとっとと終わって良かった~」

飛鷹「涼し~」

山城「この快適さだけでも幸せになれるわ……」

大佐「おまけに荷物は船に直接届けてくれるとか、かさばらなくてありがてぇ」

飛鷹「このかき氷とかよさそうね、乗せるアイスの味まで選べるわよ」

山城「私もそれにしようかしら、宇治金時にバニラアイス乗せて」

飛鷹「アイスはバニラで決まりだけど、シロップを何にしようかしら……大佐はどうするの?」

大佐「パフェも中々の品揃えで悩ましいぜ……」

飛鷹「ホントだわ、横須賀の間宮くらい豊富ね。あーこれ美味しそう……」

山城「飛鷹、先にかき氷かパフェか決めないといつまでも注文出来ないわよ?」

飛鷹「わ、分かってるわよ。だけどこんなの見せられて考えるなって方が難しいわよ」

飛鷹「あら、この各種アイス盛り合わせもよさそう――」

山城「これは時間がかかりそうだわ……」

大佐「……少し外が騒がしくねぇか?」パフェパクパク

山城「本当ね。港の方……?」かき氷シャリシャリ

飛鷹「何かあったなら木曾達から通信が入ると思うけれど……」冷やし中華チュルチュル

??『おい大佐! 応答しろ!!』

大佐「木曾か? どうした」

木曾『沖合に小規模な深海棲艦の艦隊を確認! この町に向かって来てる!』

大佐「マジかよ! 今すぐ帰る! お前らはすぐ出られるように準備しとけ!!」

木曾『了解!!』

大佐「っつーこった、すぐに帰るぞ! すいませーん、勘定ここに置いときます! 釣りはいらねぇ!」

山城「まだ半分残ってるのに……不幸だわ」

飛鷹「ふぁわいそうに(かわいそうに)……ズルズル……」

大佐「てめーは箸を置け!! つーか皿ごと持って帰ろうとするな!!」

大佐「戻ったぞ! 状況は!?」

木曾「いつでも出られる! 敵は依然進軍中!」

大佐「敵の編成は?」

鈴谷「えーっと……駆逐3、軽巡3の水雷戦隊!」

大佐「よし! 4人で先に出てろ!飛鷹と山城も急いで支度だ」

酒匂「先に出てろと言われたけど……」

深雪「別に4人でアレを倒してしまっても、構わんのだろ?」

大佐「まともにかち合えたら余裕だろーな」

木曾「それじゃあ行くぜ! 出撃する!!」

山城「行ってらっしゃーい」ダラー

飛鷹「あ! この戦艦、4人に任せる気満々だわ!!」

鈴谷「ま、まぁ資材的にはその方がいいかもしんないけどさー」

大佐「せめてこう……世間体的な何かを保とうとはしねぇのか?」

山城「そんなの、この隊に入ってから捨てましたー」ダラー


結局叩きだされる様に出撃させられるも、山城が戦闘域に入るのよりも敵艦隊殲滅が早かった

山城「不幸だわ……」

山城「やっぱり私、必要ないかったじゃない……」

鈴谷「買出しついでに美味しいもの食べてきたんでしょ? これぐらいしっかりやんなさーい」

山城「船に残りたくて必死でラス回避してたのはどこの誰よ……別に変わってくれても良かったのよ?」

鈴谷「さー帰りますか。海の上だから暑いのはマシだけどそれでもこの日光はお肌に悪いわー」

深雪「これが都合のいい女ってやつか?」

酒匂「オトナだー」

木曾「見ちゃダメだぞー。真似もしちゃダメだぞー」

飛鷹『あ、待って。艦娘の6人編成がそっちに向かってるわ』

木曾「ん? あー、あれか」右手おでこ上

酒匂「この辺の基地の娘かな?」

鈴谷「通報を受けて来たのかもねー」

山城「でも……全部駆逐艦?」

飛鷹『敵も水雷戦隊だったとはいえ、軽巡すらいないのは不自然ね』

木曾「あ、俺たちに気づいたかな、指さしてるぞ」

酒匂「……あ、よそ見してたあの子転んじゃったよ?」

深雪「そのこけた子に躓いて後ろの奴も転んだ……」

鈴谷「で、それを助けようと手を伸ばした子は滑って海面に叩きつけられたわね」

大佐『……どうなってんだ?』


第二話【新生艦隊教導作戦】

ここまで。
取りあえずどっか抜けてるキャラにすると少し書きやすい。

木曾入りで俺TUEEEとは俺得、期待して続き待ってる

電「そろそろ連絡のあった地点です、皆さん慎重にやりましょう」

涼風「よっしゃー! 涼風の本気見せたげるぅ!」

望月「あー、面倒だな……」

潮「が、頑張ります!」

初雪「……ん? あれは?」指さし

朝潮「艦娘……ですね。しかしどこの所属――キャアっ!?」ズッコケ

潮「あ、朝潮さんうわああああああ」ドンガラガッシャーン

涼風「もー、何やってんだい。ほら、手を貸しな」

潮「あ、ありがとうございます」

涼風「ちょ! 引っ張り過ぎ――ぬわー!!」バシャーン

電「はわわ!? 皆さん大丈夫ですか!?」オロオロ

望月「……だるー」

初雪「帰りたい……」

数刻後 とある泊地の廊下

電「助けてくださって、ありがとうございます。出現した深海棲艦の撃退まで――」ペコリ

飛鷹「お礼なんていいわよ、当然のことをしただけだから」

大佐「んで、この泊地にいるのは君ら6人と提督だけだって?」

飛鷹「それに……失礼だけど、実戦投入するには不安定な練度の子ばかりだわ」

電「申し訳ありません……」ズーン

飛鷹「ああごめんなさい! 別に電ちゃんを責めた訳じゃないのよ」

大佐「俺としちゃこんな子らを前線に投入した上層部に文句が言いてぇよ」

飛鷹「何か事情があるのかしら?」

電「その事も含めて、司令官さんがお話したいそうです」

大佐「っと、ここが司令官殿のお部屋か」

コンコン

??「どうぞ」

ガチャ

大佐「失礼します」ビシッ

飛鷹「失礼します」ペコリ

新米「始めまして、私がこの泊地の責任者、新米提督です」

大佐「お初にお目にかかります。第五遊撃隊指揮官、大佐です」

新米「こちらにお座りください。電ちゃん、お茶をお出ししてあげてください」

電「分かりました」トテトテ……

大佐「恐れ入りますが、わたくしは回りくどいお話が苦手なので、率直にお伺いしてよろしいでしょうか?」

新米「あのー……その堅苦しいお話のし方をやめて下さりませんか?」

大佐「いえ、階級で言えばそちらの方が――」

新米「階級だけですよ。経験、能力、――権限ですら私は大佐殿に敵いません」

大佐「そうですか。では……この泊地は一体どうなってんだ? 聞けば新米の実権すら大佐の俺に負けてる」

新米(第五遊撃隊指揮官なら、そこらの提督以上の権力を持ってておかしくないんですよねぇ……)

新米「実は、この泊地の前任者が『何か』をやらかしたそうで、更迭されました」

大佐「何かとは?」

新米「それすらも聞かされていない程度の身分ですよ、私は」

大佐「所属艦娘は? 前任者の部隊は?」

新米「元々この泊地にいた娘達は、練度が高かったので近々ある大規模作戦の人員として組み込まれました。提督のいない泊地で、埃を被せるような真似をさせる真似をする訳にもいかないので」

ドンガラガッシャーン!

ハワワ!?

ドシタ? ナシタ? テキシュウカ!?

大佐「……」

飛鷹「……」

新米「……お聞き苦しいモノを、失礼しました」

大佐「今この鎮守府にいる艦娘はどこから来た娘たちだ?」

新米「養成学校を出たばかりだそうです。ある意味、私と同期です」

大佐「養成学校出なのか。で、あの体たらくなのか」

新米「ははは、本当に歯に衣着せぬ方です」

大佐「……気を悪くしたのなら謝る」

新米「いえ、むしろそうやって事実を語ってくれる方は貴重です」

新米「彼女たちは合格ギリギリ、それも一芸に秀でている加点によってボーダーを突破した――いえ、させられたといった方が正しいです」

新米「こんな新人につける艦隊はこれで丁度良かったのか、この艦隊につける提督は新人で十分だったのか……不甲斐ないばかりです。彼女たちに何かしてあげるには、経験も、権限も、足りない」ギリッ

飛鷹「……」

新米「今日は本当にありがとうございました。もうそろそろご出発なされますか? でしたらお土産に――」

大佐「電話を貸してくれ」

新米「? いいですが、どちらにお掛けに?」

大佐「……赤レンガだ」

大佐「……ふぅ、話は纏まったぞ」

新米(本所のお偉いさんにロクでもない口の利き方をしてましたよこの方……)

新米「で、本当によろしいのでしょうか?」

大佐「おう、たった今上に許可も取った」

コンコン ガチャ

飛鷹「戻ったわよー」

大佐「あいつらは了承してくれたか?」

飛鷹「みんな二つ返事でOKだったわ」

大佐「よっしゃ! 第五遊撃隊が、この泊地の連中をミッチリ鍛えてやる!」

新米「ありがとうございます」ペコリ

大佐「いやいや頭を下げないでくれ、俺が好き好んでやることだ」

新米「一つお伺いしてもよろしいですか? どうしてこのような面倒な事を進んでやって下さるのですか?」

大佐「……誰にも味わって欲しくないからな。帰る場所、仲間が突然無くなるのを」

新米「え――?」

大佐「んじゃ、教導カリキュラムでもみんなで練るか。食堂で全員たむろしてもいいか?」

新米「はい! 食堂に限らず、泊地内の施設はご自由にお使いください」

翌日 泊地 訓練場


深雪「はーい、ちゅーもーく! 深雪様と」

酒匂「酒匂のー、水雷戦隊教室ー!」

電「わー」パチパチパチ

涼風「いぇーい!」パチパチパチ

潮・朝潮「わ、わー……」パチ…パチ…

望月・深雪「……」ポカーン

深雪「なんだか半分以上ノリが悪いけどまぁいいや!」

酒匂「それじゃあ、水雷戦隊の簡単な戦い方について説明するよー!」

深雪「じゃあ、あの的を敵艦と想定して……こうやってガーっと近づいてバーっと回り込んで、ガガガと撃ち込む! これで大体大丈夫だ!」

電・涼・望・深・潮・朝「…………はい?」目ガ点

酒匂「ちょっと違うよー! 近づく時がバーっで、回り込むのがガーっで、撃ち込むのはズガーンだよ!」

電・涼・望・深・潮・朝「………………え?」ハイライトオフ

大佐「待てやテメェら! それが人にモノを教えるやり方か!?」スピーカーキーン

深雪「えー、折角夜遅くまで考えたのに」唇トガラセ

酒匂「酒匂おこだよ? 人の気も知らない大佐におこだよ?」頬プックー

大佐「こっちが切れそうじゃアホ! いや、アホなのは、やりたいって言われて任せた俺か」頭カカエ

木曾「……水雷戦隊の戦い方は俺が教える。自信が無かったから譲ったけど、アレよりはマシな自信がある」

大佐「……頼む」

この後譲らない深雪・酒匂と木曾で小競り合いになり、駆逐艦ズはその光景だけでも割と勉強になったとか

取りあえずここまで。
けち臭くジワジワ書いていくスタイル。


イケメン木曾なら大丈夫だな

>>40で深雪と初雪が混同していたため訂正

翌日 泊地 訓練場


深雪「はーい、ちゅーもーく! 深雪様と」

酒匂「酒匂のー、水雷戦隊教室ー!」

電「わー」パチパチパチ

涼風「いぇーい!」パチパチパチ

潮・朝潮「わ、わー……」パチ…パチ…

望月・初雪「……」ポカーン

深雪「なんだか半分以上ノリが悪いけどまぁいいや!」

酒匂「それじゃあ、水雷戦隊の簡単な戦い方について説明するよー!」

深雪「じゃあ、あの的を敵艦と想定して……こうやってガーっと近づいてバーっと回り込んで、ガガガと撃ち込む! これで大体大丈夫だ!」

電・涼・望・初・潮・朝「…………はい?」目ガ点

酒匂「ちょっと違うよー! 近づく時がバーっで、回り込むのがガーっで、撃ち込むのはズガーンだよ!」

電・涼・望・初・潮・朝「………………え?」ハイライトオフ

大佐「待てやテメェら! それが人にモノを教えるやり方か!?」スピーカーキーン

深雪「えー、折角夜遅くまで考えたのに」唇トガラセ

酒匂「酒匂おこだよ? 人の気も知らない大佐におこだよ?」頬プックー

大佐「こっちが切れそうじゃアホ! いや、アホなのは、やりたいって言われて任せた俺か」頭カカエ

木曾「……水雷戦隊の戦い方は俺が教える。自信が無かったから譲ったけど、アレよりはマシな自信がある」

大佐「……頼む」

この後譲らない深雪・酒匂と木曾で小競り合いになり、駆逐艦ズはその光景だけでも割と勉強になったとか

山城「はーい、それじゃあ安定感のある航行の訓練をやるわよー」

電・涼・望・初・潮・朝「は~い」ゾロゾロ

大佐「……あーやって見るとアヒルの親子だぜ」

飛鷹「保育園の園児と保母さんってのも捨てがたいわよ」

山城「朝潮ー、内股の力を抜きなさい。あらぬ方向に滑っちゃうわよ」

朝潮「は、はいっ! 頑張りま――」

山城「そうやって張り切っちゃうと――」

朝潮「――キャアッ!!」ドンガラガッシャーン



空き部屋

飛鷹「座学の時間よー」ガラガラ

涼風「えー! 退屈だよー!」

飛鷹「甘いわよ。基礎があっての実戦、基礎があっての応用!」

深雪・望月「zzz……」

飛鷹「寝るなーっ!」チョーク乱舞

深・望「いでっ!!」おでこ直撃



鈴谷「休憩することも立派な教練だよー」ゴロゴロ雑誌ペラッ

電「な……なの、です?」ゴロゴロ

潮「いいんでしょうか……?」ゴロゴロ

大佐「よかねぇよ。休み方を教えろとは言うたけど、誰がだらけ方を教えろっつった?」

鈴谷「えー。じゃあ麻雀の打ち方教えた方が良かった?」

木曾「よりダメだろ!!」

深・望「zzz……」

涼風「うー……じっとしてんのは性にあわない」

朝潮「ですね……」

大佐「数日間教練して、いくつか彼女達について見えてきた事がある」

飛鷹「あの娘たちは『一芸に秀でている』から養成学校を通ったけれど、何に秀でているのか不明だったわ」

木曾「それが段々分かってきたって訳だな」

深雪「涼風からはアタシと同じ感じがしたぞ」

酒匂「だねー。教えたことはどんどん覚えていったし」←長嶋式教育術

木曾「朝潮は砲撃の腕がピカイチだ。真面目に練習してたんだろうな、自分の砲の当て方が染みついてる」

山城「初雪はああ見えて航行技術が頭一つ抜けていたわ。一緒に乱戦すれば楽しそうよ」

飛鷹「潮は戦術眼がかなり冴えているわね。絶対に知らない海戦事例の問題で、おしいも含めれば全部正解していたわ」

鈴谷「望月はものすごく要領がいい――って言うより、何をすべきか一瞬で理解して実行できる娘だったよ。多分あの性格がいい方に働いて、一番楽な――最適解をあっさり見抜く方法を編み出したんだと思う」

大佐「電の事務処理能力はかなりのモノだったぞ。ドジな所が災いして変な事する時もあるにはあるが、事務に関してのミスは無かった。やらかしは全部雑用とかだった」

飛鷹「あれだけの実力がある娘達なら、養成学校を卒業できるだけの加点をくれるって思ったわ」

大佐「優れている所は分かった。ちなみに、あの娘ら全員が最低限戦えるようになるのにどれくらいかかる?」

木曾「洋上での砲雷撃、航行に限って言えば……早けりゃ1週間だな」

山城「同じ意見よ。遅くても2週間で実戦投入可能に出来ると確約するわ」

飛鷹「戦術論は全員に教えるのは浅く広くで、深い部分を潮と旗艦の電に集中的に叩き込めば1週間で大丈夫よ」

鈴谷「意識改革はもうほとんど出来てるから、みんなの手伝いをするよ」

山城「じゃあ朝潮の航行練習にマンツーマンで付き合ってもらえるかしら?」

鈴谷「お安い御用! 鈴谷にお任せ!」

木曾「深雪と酒匂は時間が空いたときにサシの模擬戦をやってくれ。どうやら見てるだけで勉強になるらしい」

深雪「深雪様にお任せ!」

酒匂「酒匂に任せて!」

大佐「1週間後にお前らと演習をやって、実戦に出して問題ないかどうか全員で判断する。それでいいな?」

6人「異議なーし」

木曾「――っと、こんな時間じゃないか。飯を食べそびれる所だったぞ」

大佐「おぉう、ホントだ」

深雪「はーらーへったー!」

酒匂「おーなーかーすーいーたー!」

大佐「やかましい! 食堂に行くぞ」

鈴谷「先に行って大盛り頼んでくる!」ダッ!

深雪・酒匂「あー! ずるいー! 待てー!!」ダダッ

山城「……私たちの分まで分捕って盛らないわよ……ね?」

飛鷹「……不安ね」



深夜 南方海域某所

『ガガガ――こちら輸送船――、深海棲艦の攻撃を受けている! 敵は強力な――ドゴォン――ブツン』

雀の涙が如き更新。
お休みなさい。

乙!

新米「深海棲艦による輸送船団連続襲撃、ですか……」書類ペラッ

新米「ですが、この地域は管轄外ですし、万が一のことがあれば、大佐殿の隊に出ていただくことになりますよね、電」

電「そうですね。報告によると、とてつもなく強力な個体が率いているそうですから、私たちではとても」書類カキカキ

新米「ですが、昨日の訓練を拝見させて頂きましたよ。見違えるほどに成長していましたね」

電「はい! 強くなる実感があるなんて初めてなのです」

新米(フフフ、電が自信を持って答えるとは、本当に嬉しいんですね)

新米「……海軍学校では腕のある先輩方はみな繰り上がりで海軍入りしていましたから、大佐殿のような頼れる先輩を持つという経験は初めてでした」

新米「毎晩毎晩、提督とは何たるか、大佐殿なりの哲学を叩き込んで下さりました」

電「私たちは訓練の後、第五遊撃隊の方達から色々なお話を聞きました」

電「正直、知らない人から聞けば信じられないような事もたくさんありました」

新米「あの人たちの強さ、経験は別次元です。私たちでは到底及ぶことのできない程……」

電「司令官さん、この書類にサインをお願いします。それで今日のお仕事はおしまいなのです」

新米「ありがとうございます。いつも付き合って頂いて」

電「はわわ! お礼なんて……秘書官として、当然のことなのです」

新米「そう言えば、明日の演習は何時からでした?」

電「お昼ご飯を食べて、少し休んでからです」

新米「そうか……それじゃあウンと力の付くご飯を作りますか」

電「司令官さんのご飯ですか! 私もお手伝いさせてください! どうすればあんなに美味しいご飯が作れるのか気になるのです!」

新米「いいですよ。今から仕込みを少しやりますが、手伝って頂けますか?」

電「喜んでなのです!」


大佐「……強力な個体率いる、か」

受話器を肩と頬に挟み、右手には書類、左手には火の点いた煙草。

??『そうだ。詳細は一切不明だが、貴様の標的かもしれぬから教えておく』

大佐「ありがとうございます」

??『礼は要らぬ。そういう条件だったからな』

??『話は変わるが、新米の所の艦隊はどうだ?』

大佐「かなりモノになった。実戦に投入しても問題ないと、言いきれる」

大佐「まぁ明日の演習次第だが、太鼓判を押してやるつもりだ」

??『それを聞いて安心したよ。では、貴様の武運長久を祈っている』ガチャ、ツーツーツー

大佐「……」

大佐は無言で、暗くなった海に目をやる。

三日月を反射しているそこは、油断すれば引きずり込まれそうな美しさと不気味さを持っていた。

大佐「すーっ……ふーっ」

彼の口から吐き出された紫煙は、夜の中に吸い込まれていった。

翌朝

新米「また出ましたか……しかしこの海域から救援に行く訳には――」

コンコン ガチャ

大佐「おはよう」ピッ

新米「あ、おはようございます! いよいよ今日ですね」ビシッ

大佐「ああ、そのことなんだがな……ちょっと出て行かなきゃならない用事ができた」

新米「用、事?」

大佐「具体的に言うと、君がその手に持っている書類、その案件だ」

新米「輸送船団連続襲撃、ですか?」 

大佐「そうだ。簡潔に話すが、俺たち第五遊撃隊はある深海棲艦を追っている。その襲撃部隊にゃ強力な個体がいるっつー話らしく、それが標的の可能性が非常に高い」

新米「いつ発たれますか?」

大佐「今すぐ出る。その前に一言、詫びしにきただけだ。約束したのにすまん。あの娘達にも言っといてくれ」

じゃあ、と敬礼して踵を返しながら大佐は、背中越しに、

大佐「帰ってきたらすぐにでも演習だから、覚悟しとけとも伝えといてくれ」

新米「は、はいっ!」

振り向かない大佐に向かって、新米は精一杯の敬礼を送った。どうかご無事に、と。

新米「――と言う事で、本日の演習は延期となりました」

彼から説明を受けた6人の少女たちは、落胆と安堵をごちゃ混ぜにしたような顔をする。

涼風「あー……残念だけど、ちょっと助かったぜ。昨日緊張して寝られなかったんだよなぁ」

望月「あたしもー……ふわぁ~……」大アクビ

初雪「……寝たい」目ゴシゴシ

朝潮「二人が眠いのはいつものことでしょ? ……私も、少し寝不足だけど」フラァ

潮「私もです……ぁ……」控え目アクビ

電「……」ウツラウツラ

新米「これは、緊張の糸が切れてしまいましたね」ヤレヤレ

新米「コンディションの悪さを考えると、延期になったのはありがたいかもしれないですね」

新米「はーい! では今日一日は休養日とします。緊急招集命令が出ない限り、自由にして下さい」

6人「わーい……zzz」

新米「寝入るのは布団の中でお願いします!」

新米「……」カキカキ

新米「……おっと、もうお昼を過ぎてしまっていますね」

書類に集中していた彼は、キリのいいタイミングで時計に目をやった。

新米「こうも静かなのは久しぶりですね。特にここしばらく、大佐殿のおかげでとても賑やかでしたから」

新米「大佐殿は、この辺りの海域を出た頃でしょうか」

新米「うーんっ! 私もあまり仕事はありませんし、昨日仕込んだ分でお昼の支度をしますか」

席を立って背筋を伸ばしたその時、机上の電話がけたたましく鳴る。

新米「ん? もしもし、こちら――はい、私が新米提督です。……はい、……は、い?」

彼の顔色が徐々に険しくなっていく。

新米「――了解いたしました。直ちに対処いたします」

受話器を置いた彼は、矢継ぎ早に赤い『緊急』ボタンを押した。

瞬間、泊地内に焦燥感を煽るアラームが響き渡る。

そしてマイク越しに、どこか緊張した声で自分の娘達を呼んだ。

新米「泊地海域内に敵艦隊を発見! 市街地に向かって進行中!! 至急支度をして所定の場所に集合して下さい!」

――初めての実戦が始まる。

――演習をすっとばして、初めての実戦が、始まってしまう。

今日はここまで・唐突な展開。
E4乙夜戦ルートは罠でした。初手夜戦重巡が連撃仕様で甲以上に大破撤退率が高い……。


まじか4乙気を付けるかな

待機ドッグに整列する6人の少女達に、新米提督が情報を伝える。

新米「漁船からの報告によりますと、敵は駆逐4、軽巡2です」

電「け、軽巡洋艦……」

朝潮「艦種だけで言えば、私たちよりも上ですね」

緊張のせいか、彼女らのこめかみを冷や汗が伝う。

望月「まーじだるいんですけどぉ」

初雪「……寝てもいい?」

潮「だ、ダメに決まってますよ!」

出撃前に流石にだらける程の二人ではない。

ただ、普段以上にいつも通りやろうとしているだけだ。

涼風「ま、それでも第五の人らよりよっぽど弱いって! なんとかなる!」

新米「慢心してはいけませんが、その通りです」

彼はキッと目を尖らせる。

新米「抜錨! 深海棲艦にあなたたちの実力を見せつけて来て下さい!!」

6人「了解!」ビシッ

洋上を進む6人の駆逐艦娘。

隊列の安定感は、先日とは比較にならない程である。

新米『そろそろ会敵するはずです。電探に反応はありませんか?』

望月「――! 感あり!! 2時の方角!」

電「陣形は分かりますか?」

望月「もうちょっと近づけば……敵は単縦陣、6つの艦影も確認!」

涼風「意見具申! 射程に入ったタイミングで敵艦隊向けて魚雷投射、その後3、3に分けて左右から砲撃!」

新米『その案で行きましょう。電、初雪、朝潮。潮、望月、涼風で分けて下さい』

6人「了解!!」ジャキ

魚雷をばら撒くため、真横に展開する。

潮「わ、私と朝潮さんは敵へ真っ直ぐ投射します! 他で左右に散らして回避する隙間を減らして下さい!」

朝潮「了解しました!」

航行に不安のあった朝潮も、今では魚雷発射体勢のまま進めるようになっていた。

望月「……魚雷射程圏内、入ったよ!」

新米『魚雷、発射してください!』

6人「了解!」バシュバシュ

発射管から飛び出た複数の魚雷は、海面に直線を描いて突き進む。

電「潮さん! そっちの細かい動きはお任せするのです! では!」チャキ

主砲を構えた電、初雪、朝潮は左へ展開して行った。

潮「え!? ええええ!!」

望月「ん? どーした指揮官さん? 指示をちょーだい」ニヤニヤ

涼風「何も言わねぇなら勝手に行っちゃうぜ?」ウズウズ

潮「だ、だめですよ! えっと、行きます!」

残った3人は右へと進路を取る。

瞬間、目視できる距離に小さな黒い点が現れた。

電「砲雷撃戦、開始なのです!」ズドン

初雪「外さない……」ドン

朝潮「……そこです!」ドォン

潮「当って下さい!」バン

望月「あったれー」ガォン

涼風「いっけー!」ドドド

左右からアーチ状に飛んでゆく砲弾。

それは魚雷が敵に近づくのとほぼ同じタイミングであった。

6隻の深海棲艦は散開して魚雷を回避するが、それ故に砲撃の警戒がおざなりになる。

水柱が複数立ち、それによりバランスを崩し、そこに回避できたはずの魚雷が向かう。

一発だけ、朝潮の撃った弾は軽巡に直撃。それにもまた白い直線が伸びていた。

……ズドォン……ドドォン……

望月「敵軽巡1撃沈! 駆逐1中破、2小破!」

涼風「おー、いい感じじゃねぇか」

潮「――! 気を抜かないで下さい! 敵砲撃、来ます!」

涼風「敵さんの攻撃目標こっちになっちまったか!」

望月「統率が取れてるってことは、落とした軽巡は旗艦じゃなかったんだねぇ。残念」

潮「砲撃は二の次で、回避に専念しましょう! 攻撃は電さん達にお任せで!」

望月「それがいいだろうねぇ。っと、来るよ!」

涼風「合点だ! 全部避けてやらぁ!」


電「はわわ! 潮さん達が危ないのです!」ジャキ

初雪「援護しなきゃ……」チャキ

朝潮「絶対に、外しません!」スッ

ズドドドン……

電「もしもし、司令官さん。こちら電です」

新米『こちら本部です。状況を報告して下さい』

電「敵艦隊は旗艦を失って撤退しました。涼風さんが小破なので追撃は控えたのです」

新米『上出来です。……お疲れ様です』

6人「……や、やったー!!!」

終わったすぐは疲れと実戦の興奮から実感できなかったが、今彼女たちは気づいた。

自分たちが、艦隊戦で勝利した、と。

涼風「よっしゃー! 勝った! 勝った勝った!」

初雪「うるさい。でも、たまの本気も悪くない……」

朝潮「やりました! 私たち、勝ったんですよ!」

潮「私でも、お役に立てたのでしょうか?」

望月「うん、十分すぎる働きだったよ、指揮官殿」

電「……ぐすっ」

涼風「おいおい、感極まって泣いちまってるぞ?」

こうして、6人の事実上初出撃は勝利で終わった。




望月「――!!」

電「? どうしたのです?」
   ・・・・
望月「対空電探に感あり! 敵艦載機が接近中!」

「「「「「!?」」」」」

空気が一気に凍り付く。

新米『対空陣形を維持しつつ退却!!』

6人「了解!」

くるりと反転するも、

望月「――!? ダメだ、挟まれた! 向こうからも何か飛んできてる!」

前門、後門、共に空を突き進んでくる黒い点。

その時、目を凝らしていた初雪が声を上げる。

初雪「あっ。このまま正面に突っ込もう……」

朝潮「ええ! 大丈夫なんですか!?」

潮「いえ、このままじっとしているよりはとにかく進んだ方が安全です」

初雪「違う……そうじゃない」

彼女が指さす黒い点。

それらは急速に距離を縮め、その詳しい形を視認できるようになった。

電「あ、あれは!!」

飛鷹「敵航空隊を発見!」

大佐「よーし、全部叩き落とせ!!」


艦上戦闘機 烈風

プロペラ音を響かせながら、その編隊は少女達の上を通過した。

その半数が機首を持ち上げて急上昇。正面から来る敵艦載機の上を取る動きをする。

爆撃機、攻撃機だらけの敵は、反対に急降下することで烈風を回避しようとした。

そこに水平飛行していた残りの烈風が一斉に襲い掛かる。

Ⅴの字にかち合い、機動性で勝る戦闘機が20mm機銃を叩き込む。

クロスした後も敵編隊は降り続けたが、烈風隊は追撃せずにその場で上昇。

逆に先ほど高空を取っていた烈風隊が猛スピードで急降下、敵の後ろにつく。

敵機を落としながら速度で上回る烈風が緩やかに包囲の形を作る。

そこにもう一個の烈風隊が加わり、一方的な乱戦に持ち込んだ。

上空が烈風のみの舞踏会になるのに、そう時間はかからなかった。

涼風「す、すっげぇ」

電「ん、通信? はいなのです」

大佐『もしもし、こちら第五遊撃隊。危ないところだったな』

電「あ、あの! どうして戦闘機を私たちの所へ?」

大佐『こっちで見かけた敵空母に艦載機が乗ってなくてな、飛鷹の進言でそちらに向かわせた』

大佐『それより……君たちに謝らなくちゃならん。演習は取りやめになった。仕事が入ってな』

電「そう、ですか……」

少し残念そうな声色。

大佐『だけど、もう演習をする必要はねぇよ。君たちは敵部隊を撃退したんだ。十分合格だよ』

電「そ、それでも……遊撃隊のみなさんに、成果をお見せしたかったのです……」

大佐『……またいつか、暇になった時に君たちの泊地に寄らせてもらう。その時、良かったら演習をしよう』

電「! は、はいなのです!」

大佐『いい娘だ。新米提督にもよろしく言っといてくれ。じゃあな』

無線を終えた彼女は、既に小さくなった烈風隊に目をやった。

電「……次の機会までに、もっと、もっと……」

深夜 とある島の海岸

麻雀とダラダラで過ごしている、第五遊撃隊の面々。

鈴谷「ツモ―! 3000、6000!」バチィ!

酒匂「いやいやいやいや! 何それ!」

深雪「ラス5筒のカンチャン待ちとかありえないだろ! しかもリーチするとか!!」

山城「ただのバカだけど……不幸だわ」

鈴谷「あがった者勝ちだよー」

大佐「まーた鈴谷のアホみたいなリーチが炸裂かい」煙草プカー

木曾「ダマならまだしも、何でアレで曲げられるんだ?」刀磨き中

飛鷹「山読みが凄いって言えば聞こえはいいけれど……」式神調整中

山城「誰か……変わりましょ」助ケヲ求メル目

木曾「断る」

飛鷹「嫌よ」

大佐「このモードに入った鈴谷の相手とかしたくねぇ」

鈴谷「だけど、今回もハズレだったねー」

大佐「たかがタ級をビビって過大報告しやがって……」

酒匂「知らない人からしたら、アレでもきっと怖いんだよー」

飛鷹「私たちの方がよっぽど怖い気がするけどね」

木曾「はっはっは、そうだな。――っと、おでましか」

「「「「「「――!」」」」」」

誰かの気配を察知した7人は、先ほどとは違い緊張した面持ちで船の出入り口を見つめる。

??「あっちゃー、今回もばれちゃったのね」

深雪「深雪様にかかればお茶の子さいさいだぜ!」

川内(改二)「ははは、敵わないな~」

ドアを開けて入ってきた川内。その手には、黒い封筒。

川内「ごほん! 参謀本部より、第五遊撃隊へ極秘指令が下されました」

慣れない行儀で、大佐にその封筒を差し出す。

大佐「で、今度は何をすりゃいいんだい?」

わざとらしく眉を吊り上げて尋ねる大佐に、川内はわざとらしい笑顔で答えた。

川内「深淵なる水底に魅入られた、愚かな提督の抹殺だよ」


第二話【新生艦隊教導作戦】艦

今日はここまで。
イベント……ダメっぽい

乙!


ニンジャでもだめなのか
あと二週間あるぞ

とある有能な提督がいました。

彼の率いる艦隊は優秀で、所属の艦娘達は彼に全幅の信頼を寄せていました。

しかしある日、一人の艦娘が轟沈してしまいます。

しばらく落ち込んでいた彼ですが、やがて復帰しました。

だけど、彼はおかしくなっていました。

コンスタントに所属の艦娘を轟沈させるようになってしまったのです。

精神鑑定の結果、提督は更迭されることになり、彼の泊地は一時解体されることになりました。

その彼は本国へ送られる途上、船が深海棲艦の攻撃を受けて沈んでしまいました。

乗員乗客は、彼を除いて無事に救出されました。

唯一その提督だけが、海の底へと姿を消しました。

まるで沈められた艦娘の怨念がそうしたかのように。

悪い提督はこうしていなくなりました、めでたしめでたし。

川内「これが表向きに伝わっている話だよ。それでもある程度の権限がなかったら知れない事」

大佐「で、その一般には周知されていないお伽噺すら、まだ隠されている裏があると」

川内「そそ。詳しいことは資料を読んでくれたら分かるけど、その提督は深海棲艦に魅入られちゃったらしい」

7人「……はぁ?」

怪訝そうな顔をしながら、黒い封筒から資料を引っ張り出して皆で食い入るように見る。

飛鷹「あっ、ここ」

木曾「その提督が襲われた時の、乗員の証言か」

鈴谷「どれどれ~……これは――」

山城「『まるで人質を救出したかのような、丁重な扱いで提督を連れて行った』」

大佐「こっちも興味深いぜ……所属していた艦娘の証言だ」

飛鷹「えーっと、『無断不在が増えた』『真っ暗な海に話しかけていた』『深海棲艦への攻撃をほぼ取りやめていた』」

木曾「決定的まではいかないが、状況証拠としては十分だ」

山城「特に、出撃をほとんどしていない状況で的確に艦娘を沈めているのは真っ黒ね」

深雪・酒匂「……?」湯気プシュー

川内「後もう一つ、彼が深海棲艦を導いてると思われる理由があるんだ」

川内「大佐が今日倒した通商破壊戦艦艦隊。これ、この提督が泊地にいた頃得意としていた戦術なんだ」

鈴谷「へ? なんでそんなコストに合わなさそうな事を?」

大佐「……めんどくせーからだろうな」

山城「面倒くさい?」

大佐「水雷戦隊、潜水艦部隊による通商破壊なら対応は簡単だが、戦艦となるとまともな艦隊が必要になる」

大佐「こういうパッと見コスト度外視の行動は、とてーもめんどくさいんだよ」

木曾「――けど、多分この通商破壊、深海側からすると割に合ってんじゃないか?」

深雪「なんで?」

木曾「近々行われる大規模作戦。そのために本営は資源を集めているはずだ」

鈴谷「えっと、つまりこの通商破壊の目的は、大規模作戦の遅延、あわよくば中止させること?」

大佐「だろうな。で実際、大規模作戦の準備にこの通商破壊が小さくない影響を及ぼしてんだろ」

飛鷹「そうでもないなら、本営が黒封筒で作戦を送ってこないわよね」

川内「これも詳しくは資料に書いてあるけど、通商破壊の範囲から大まかな所在の目星はこっちでつけたよ」

大佐「どれどれ……あー、それでも広いぞこりゃ」

酒匂「……」ジーッ

山城「この×印の地点が、戦艦による襲撃のあった所?」

川内「そ。目星はその襲撃地点から割り出したって言ってた」

深雪「……」ジーッ

木曾「お? この島とかそれっぽくないか?」

鈴谷「範囲のど真ん中に一番大きい無人島……分かりやすく、くさーいね」

飛鷹「流石に露骨すぎないかしら? それよりはこっちの小さ目の島が良さそうよ?」

山城「大佐ならどこに根拠地を置くの?」

大佐「俺か? このちっこいちっこい島とかいいんじゃね? こっちの前線基地から近いのが――」

酒匂・深雪「――」ヒソヒソ「――」ヒソヒソ

大佐「ん? 何でそんな分かりやすいコソコソ話やってんだ?」

深雪「意見のすり合わせ。で、気が合った」

酒匂「ズバリ! この島じゃないかな!」ビシィ!

鈴谷「……あのー酒匂さん? 想定範囲からかなり離れた場所だよここ」

木曾「そもそもこの島だと思う理由は?」

深雪・酒匂「なんとなく!!」

鈴谷・木曾「ダメだこりゃ」

山城「……? ――!!」

飛鷹「どうしたの山城? コンパスと定規なんて持ち出して」

山城「……やっぱり。ここにいる可能性はかなり高いわ」

大佐「理由を聞かせろ」

山城「地図に書いてない二つの要素を考えたら、この島も範囲内になったのよ」

大佐「続けろ」

山城「まずこの新米提督の泊地――元は更迭された提督の泊地ね」

木曾「そこが何か関係あるのか?」

山城「今日この海域に出た水雷戦隊と空母、あれがその提督の仕業だったと仮定すれば」カキカキ

鈴谷「想定所在海域がひろーくなったねー。この島が範囲内になるくらい」

山城「次に、今度の大規模作戦の拠点となる場所。まだ決定していないけれど――」カキカキ

山城「想定される複数の泊地、基地。それらを現実的に襲撃できる距離はこうだから――」カキカキ

大佐「……この島からなら、どこに拠点を置いても攻撃可能範囲になるっつーことか」

飛鷹「と言うか、3つの要素全てを満たせる島は、ここ以外にないわね」

川内「あのー……少し突拍子も無いと言うか、妄想の域に入ってるんじゃない?」

山城「この提督は有能だったんでしょ? なら、想定できる全部のケースで動ける場所に根拠地を置くわよ」

大佐「――決まりだな。ここからこの島までの距離は……」

木曾「そうだ、折角本営お抱えの川内殿がいらっしゃったんだ。ここはひと肌脱いで頂かないか?」ニヤリ

鈴谷「おー、それはいいですなぁ」ニヤリ

川内「えっ? 私はこの後帰って――」

飛鷹「まぁまぁ、作戦終了の報告も兼ねたら丁度いいじゃない」ニヤリ

大佐「そうだな。久々に川内の夜戦をお目にかかりたいし」ニヤリ

川内「夜戦!?」キラーン

7人(ちょろい……)


第三話【離反提督抹殺指令】

ここまで。
E4突破したけど、今回のイベントはE6でカタパルト貰って終わるのが目的かなー

乙!

乙 続き舞ってる

翌日 南方海域洋上


川内「ふわぁ~……何やってんの?」

船に泊まっていた川内が、目をこすりながら起きてきた。

大佐「ああ、久しぶりで腕がなまってねぇか試してんだ」

甲板に出ている彼の腕には、スコープのついたボルトアクションライフルが抱えられていた。

深雪『もしもし大佐~、設置終わったよー』

大佐「おーけーおーけー」

報告を受けると、立射の姿勢で海の向こうに銃口を向ける。

川内が目を凝らすと、数百メートル先にドラム缶が浮いており、その上にテンプレートな的が設置されているのが見えた。

大佐「すぅーはー……」ズキューン!

スコープを覗きながら呼吸を整え、自然と引き金を引いた。

大佐「どうだ?」

ボルトを引いて排莢する彼に、酒匂が悲しい知らせを届ける。

酒匂『どこ撃ったの? 的にすら当たってないよ~』

大佐「あー、流石に立射じゃキツイなこりゃ」ヨッコラセ

頭をかきながら伏射の体勢に変えて一呼吸、再度乾いた音が響く。

深雪『おー。的には当たったけど、こりゃかすったって言った方が正しいな』

大佐「少しカンを思い出さなきゃならねぇな」

川内「いやいや、この距離で船の上からドラム缶の上への狙撃なんて、命中する方がおかしいよ!」




大佐「作戦会議と洒落込むぞー」

深雪「いえーい」

酒匂「どんどんぱふぱふ~」

鈴谷「作戦って言うけれど、おおよその案はあるわけ?」

大佐「大まかに分けて二つある。正面から完全制圧するか、奇襲の混乱をついて目標を狙撃するか、だ」

木曾「正面から叩いていいんじゃないか? 小細工するよりは楽だ」

山城「だけど、真っ向勝負の場合は目標に逃げられる可能性があるわね」

飛鷹「そうね。それに敵に戦力がわからない以上、正攻法で戦うのは関心しないわ」

鈴谷「だけど私らの実力的には、奇策を引っ張り出したときの方が失敗するんじゃない?」

木曾「策士策に、ってわけじゃないが、作戦は単純であるほどいい。策は弄しないに越したことはない」

大佐「……よし、折衷案っぽく行こうじゃねぇか」

飛鷹「折衷案?」

大佐「まずは正面から突撃するフリをして相手を誘い、お前ら本隊が奇襲をしかける。動揺してくれりゃあその隙に俺が目標を狙撃、それに失敗した場合はそのまま真っ向勝負だ。この程度の策なら、失敗した場合のリカバリーが十分効く」

鈴谷「戦うフリって言っても、難しいんじゃないの? 艦娘は6人しかいないんだよ?」

大佐「そこに関しちゃ俺に秘策があるから」チラッ

川内「……え、私!?」

大佐「夜戦大好き川内殿にちょーっと手伝ってもらうからそこは問題ない」

木曾「狙撃するって言っても、当てられるのか?」

大佐「多分な。一応今日練習中にしっかり当たるようにはなった」

飛鷹「狙撃なんて面倒なことしなくても、私が彗星を飛ばして目標に爆弾落とすじゃあダメなの?」

大佐「それは許さねぇ。てめぇらが倒すのはあくまで深海棲艦だ。艦娘になってまで、人殺しをする必要はない。例え相手がどれ程のド外道でも、だ」

飛鷹「……そうだったわね、あなたはいつもそう言っていたわ」

大佐「つーことで、大筋は今言った通りで異存なしか? あるなら今のうちに言え」

……

大佐「無いなら決まりだな。じゃあ細かい点を詰めるぞ。まず――」

同時刻 横須賀 日本海軍司令長官室


長官「今回の一件は第五遊撃隊に任せることになった。貴様らはしばらく待機だ」

長門『了解しました。では失礼し――』

長官「あー待て待て、一つ相談がある」

長門『何でしょうか?』

長官「……陸奥に、第五遊撃隊の資料を見せるべきと思うか?」

長門『陸奥に? ああ、現在私の代理で秘書艦を務めていましたか』

長官「今後長門が出張る時にも、陸奥に代理を頼むことになる。そうなると、知る必要のあることが出てくる」

長門『確かに、彼らについて知らなければ業務が滞ることがあり得ます』

長官「なら、陸奥には――」

長門『はい、教えるべきだと考えます』

長官「……ありがとう」

長門『? 感謝される意味が分かりません』

長官「第五遊撃隊について教えるということは、本来知る必要がない領域に踏み込むことになる。そこへ貴様の妹を引きずり込むと言うのは、いささか気が引
けていてね」

長門『――まったく、貴方はお人よしだ。それでよく権力闘争に勝ったものだ』

長官「貴様らのおかげだよ」

長門『おだてても何も出ないぞ。……陸奥はそれほど弱くはない。教えてやってくれ』

長官「分かった」

翌朝


コンコン ガチャ

陸奥「おはようございます長官」ビシッ

長官「おはよう。早速だが、見てもらいたい資料がある」ファイルバサバサ

陸奥「あらあら、一体何のファイルで――!!」

長官「ん? どうした? 何を固まっている?」

陸奥「長官……これ、閲覧制限の印があるのですが……」プルプル

長官「あ、それ? 一番制限の緩い資料だからそこから読んだ方がいい」

陸奥「え゙」カチーン

長官「時に陸奥、君は第五遊撃隊についてどれ程知っている?」

陸奥「第五遊撃隊、ですか? 軍で広まっている話を知っている程度です」

長官「だろうな。これらの資料はすべて、第五遊撃隊のモノだ」

陸奥「……これ全部? しかも超極秘資料扱い?」

長官「ああ。私の秘書官を務める以上、そろそろ知っておかなくてはならないことだ」

長官「――今ならまだやめることができる」

陸奥「えっ?」

長官「第五遊撃隊について触れるということは、海軍の暗部を知ることにもなる。そしてこの隊設立のきっかけとなれば、艦娘と深海棲艦の深い問題にまで切り込むこととなる。……聞けば、引き返せなくなる」

陸奥「……」

長官「知りたくないと言うのであれば、それでいい。今まで通り代役を務めてくれれば――」

陸奥「長官」

長官「ん?」

陸奥「本当にいいんですか? 私ごときがこのような極秘資料を――」

長官「陸奥、『私ごとき』と言ったな? 今すぐに撤回しろ。私はその程度の者に代理でも秘書艦は任せない。本当に『私ごとき』などと考えているなら、今すぐ出て行け」

陸奥「っ!」ゾワッ

長官「そう言いたくなる気持ちは分かる。あれほど偉大な姉がいては自分を卑下したくもなる。だが二度と言うな。それは長門を含めた、我が艦隊全てへの侮辱となる」

陸奥「も、申し訳ありませんでした!」

長官「私は貴様を信頼し、信用している。だから秘書艦にした。胸を張れ。――おっぱいデカいんだから」ムニ

陸奥「――っ!? なっ、なな!!」カアアア

長官「フハハハハハハ! 油断しおったな! いい顔だハハハハハハハ」机バンバン

陸奥「い、いきなりセクハラするなんて最低!! 変態! エロオヤジ!」

長官「ハハハハハ……で、この資料、どうする? 読まないなら今すぐ返さないとまずいから――」

陸奥「読む! 全部読むわよ!! 貸して!!」プンプン

長官「いい反応だ。長門にはない可愛げってモノが残っている」

陸奥「うるさい!!」ガルル

今日はここまで。
陸奥側の話は投げっぱなしジャーマン。
カタパルトは手に入りました。照月?知らない子ですね。
無性に加賀さんを出したくなったけど展開的に無茶だから自重(DDH的に


うん。むっちゃんかわいいなやっぱ

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