「童貞よ、お前に魔法を授ける」 (34)
「俺の『超火力魔法』は、30歳を過ぎた童貞にしか扱う事は出来ん」
ただし、と爺さんは言った。
「魔法使いとなった童貞は、女子の肌に直接触れると即死する!!」
「マジかっっっ」
爺さんは薄汚く、家も財産も持たない人だった。
数少ない童貞の友人と共に、鉄橋の下の河原で暮らす人生。
女に触れないままこの歳になった彼の孤独はいかばかりであったか、うら若き童貞には分かるはずもない。
ていうか飲み屋で意気投合しただけなんだけどな。
主に女なんかみんなクソだ的な方向で。
二軒目の飲み屋でリア充死ねを連呼していた辺りから記憶がぷっつりと途切れ、気が付いたら爺さんの家で寝ていた。
起き抜けで今に至る。
ちなみに家は段ボールに発泡スチロールの、丈夫かはともかく雨風はしのげそうな構造だった。
正直なところ完全二日酔いで半ば事態が飲み込めていない。
この変な茶番もなるたけ早く終わらせてほしいと思っていた矢先、爺さんは言った。
「本当にこの魔法を受け継ぐか?」
「……あい」
頭痛ってぇ。
「辛いぞ?」
「大丈夫ス」
「じゃあ手ぇ出せ」
「うぇい」
爺さんは自分も手を出し、がっちりと握手してきた。
何かが伝わったような気がしないでもなかった。
「はい終わり。これでお前も魔法使いだ童貞」
「ん……」
爺さんの声を尻目に、俺は気持ちの悪い二度寝に落ちていった。
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期待
「魔法名『ヴォ-アイビス』」
まどろみの中に爺さんの声が入ってくる。
「言った通りの単純明快、『超火力魔法』じゃ。お主の童貞力を爆発させて身体能力を引き上げ、天下無双の力を得る」
「ただし体への負担と反動は想像を絶するものがあるぞい。俗に『賢者タイム』と呼ばれる魔法使用後の一定時間、魔法の使用に伴う疲労と痛み、そして絶望感がお主を襲うじゃろう。オナニーなんぞとは比較にならん」
「こんな魔法、日常じゃチンカス程も役には立たん。じゃが戦いにおいては超戦力として皆の中心的な存在になれるじゃろう」
戦い……
何かと……戦わなきゃいけないのか……?
「そうじゃ。我々が相手取るのは『童貞』と対をなす存在」
まさか、非童貞か!?
「そんな雑魚は好きに殺せ。お前の相手は」
「魔法を得た『処女』達じゃ」
期待
「処女ォオオオオオッ?!」
がばっ、と起き上がると俺は自分の部屋に戻っていた。
まだ実感が湧かないが、どうやら『魔法』というものを授かったのは確かなようだ。
拳を開いたり閉じたりしてみる……普段通りの動きに安心する。
少なくとも発動しない限りはいつもの身体と変わりない。
いや、少し手の感じが違う。
いつもの場所にくたびれた皸(あかぎれ)はなく、張りが戻っている。
「……まさか」
布団をけっ飛ばして洗面所に走る。
いくつかものを倒したように思うが気にしてはいられなかった。
息も絶え絶えに鏡を覗きこむと、予想は当たっていた。
『30歳童貞』だった俺はそこにはなく、……あろうことか、若くなっている。
恐らく18歳かそこらだ。
まだ世の女たちへの憧れを持っていたあの頃の俺が居る。
顔を触ってみた。
皺はどこにもなかった。
こうなると『魔法』というフレーズがいよいよ現実味を帯びてくる。
何だこの力は。
「こ、あ、お、俺は、……こ、これから『処女』……と、戦うのか……」
足取りに力はなく、俺はフラフラと外に出た。
そして想像を超える光景を目にすることとなる。
「あ、あ、あ……」
頭の上に、街行く人の頭の上に数字が見える。
12、1、2、2、4、7、3……
そして、夥しい数の『0』。
0000000000000000……
数字は歳を取っていれば大きくなるわけではなかったが、老人で0は一人も見かけなかった。
赤ん坊や子供は等しく0、稀に中学生に1や2が乗っていて、高校生になると半分くらいが『数字持ち』だった。
男女に差はない。
しかしチャラ男やギャルはそれ相応の大きな数字を掲げていた。
「ま、間違いない……これは……」
『経験人数』。
童貞にとって『0』と『1』の差がどれほどのものかは言うに及ばないが、彼らの頭の数字は、惜しげもなく彼ら自身のトップシークレットを曝しているのだ。
気が付けば口があんぐりと開いていた。
人はあまりの衝撃に相対すると、等しくだらしない顔になるのかもしれない。
そして『魔法』という『処女』を打ち倒す力を得た今、この数字の意味するものは。
「あら、案外近くにいたわね。『数字無し』」
「!!」
数字のない奴……イコール『言うまでもない奴』が『魔法使い』もしくは『魔女』であることの証明なのだ。
「ヴァージン・ミーツ・チェリーってとこかしら。童貞さん、ハロ♪」
振り返った先には赤髪の女が居た。
頭に数字はない。
すなわち『処女』ッ!!
「早速現れやがったか……魔女め」
「とんだ言い草ね。童貞は皆好きでしょ、処女」
その心理に九割五分間違いはないが、今この時において、話は全く別。
童貞である俺は、この処女を名乗る女に殺される運命にあるのだ。
さっきから一つも冗談を言っている顔をしやがらん。
背中を嫌な汗が一筋伝った。
二日酔いの勢いに任せて、どうやら俺はとんでもないことに巻き込まれてしまったらしい。
「っていうかあなた、もしかして魔法使えるようになったばっかり?」
「は、はははぁ?!どどど童貞ちゃうぞ!!」
「クス、やっぱりね。魔女って言い方をしないもの、私たちは」
「何?」
「魔法を使えるようになった童貞や処女は『妖精』っていうの。男女等しくね。そんな初歩的な知識も知らないなんて、よっぽど戦わずに逃げ回ってるか、魔法に覚醒したばっかりか……いずれにせよ、私の敵じゃないって事よね♪」
女は妖しく唇をぺろりと舐めた。
不覚にも興奮した。
期待
続きはよ
俺もあと3年で仲間入りか
高校の時に選り好みせずに素直に付き合っておけば
このままじゃ俺も処女と戦う運命を背負ってしまう
「『ウィンパース』」
赤髪の両目がランプのように赤く光った。
もう魔法は発動しているらしい。
この女の言う通り魔法は初心者もいいとこ。
まだ自分の魔法すら発動したことがない俺には、どんな種類があるのかも、今使われている魔法が何なのかも……
「どう?」
「何だこりゃ……」
予想に反して魔法の効果はすぐに分かった。
景色が今まで見ていたものとは全然違う。
「あ、あっあっここここれぇえええ?!」
「『若い女性の服が透けて見えるでしょう』?」
「いいんですかぁあああああああああああっっっ?!」
童貞には刺激が強すぎるこの光景に、下半身は手放しで打ち震えた。
今なら三コスリ半の向こう側へ行けそうだ。
「こっ、これっ何の力っ、えぇえ?!マジえぇえ?!」
「ふふ、知りたい?」
「教えてぐださい!」
図らずも敬語。
「『ウィンパース』。対象者の『視界』に『好きな設定』を加える魔法よ。お気に召したかしら?」
「召すどころか!」
天国だねこりゃ。
口元に何かが伝ってきた。舐めたら鼻血だった。
「ふふ、そう、嬉しいわ。じゃあ」
「『今視界に映っている人全員が、私の姿だったら』?」
「え」
初動は向こうが早かった。
ブスだったら最悪
sage忘れごめん
もっと問答無用に戦闘に巻き込まれたならともかく
わりと余裕ありそうなのに戦う理由は気にならないんだろうか
三コスリ半の向こう側ワロタ
シュタゲっぽくかっこつけても許されない文だ
面白い
「はっウッソ何、でぇっ!?」
「何がよ?!」
「何で全員全裸なのォオオオッッ?!」
叫んだ。
と同時に、さっきまで俺に関心を示していなかった『私』たちまで一斉に俺の方を向いた。
ああそうかこいつ等通行人だったな、と思う間もなく全員全裸だ。
服の上からの情報って案外当てにならないんだな、なんてどうでもいい感情が8割がた脳内を占めていた。
「えええっとぉお女の人の裸って初めて見たんですけど!俺のも見せた方がいいんですかね?!」
「何訳わかんない事言ってんのよ!!ぶっ殺すわよ!!」
ぶっ殺す……?
一瞬冷静になれたのは本当に良かった。
視界が安定した時にはギリギリで、一番活発に俺に肉薄していた『私』の手にあるナイフを捉えることが出来た。
瞬間!
「ちょっぶねぇええぇでええええッ!!」
振り切りを半ば尻餅で躱す。
何すんだコラ!危ねぇだろうが!
などと文句の言えるうちはまだまだ危機感が足りないのだ、と悟った。
今の一瞬だけで天国から地獄へ一転、周りにいる全裸の『私』たちなど全く目に入らなくなった。当然息子はしぼんだ。
口の中が乾ききり、喉はヒューヒューと掠れていた。
「まっ……がっ!」
喉がカラカラでうまく話せない。
「待って待って待って待ってマジで!!」
「クソ、かわされた……!」
かわされたじゃねえよ馬鹿野郎。
人にナイフを向けておいて何で冷静でいられる。
俺は恐怖だけで心臓を握りつぶされそうになったというのに。
刺さったら死ぬんだよゲームなんかとは全然何もかも全く違うんだよ!!
人間は殺したら死ぬんだぞ!!
「な、なん、で、ぃぉお俺を、殺そうとと、ひたんでしかぁ……?」
「決まってるでしょ。アンタが童貞だからよ」
瞳に一切の迷いがない。
初対面の俺を殺そうとして、躊躇なくそう言いきりやがった。
肌がピリピリ震え、全身の毛が逆立った。
チッ、これ以上は人目につく。
吐き捨てるようにそう呟いてから、女は赤髪を翻して逃げるように去っていった。
街の人はすっかり元に戻って、何事もなかったように通り過ぎていった。
俺は尻餅をついたまま、しばらくその場から動けなかった。
「命拾いしたのうお前さん」
「ふっざけんなよジジイてめえ!!」
翌日。
俺は仕事も放りだしてお礼参りにやってきていた。
今の若い姿ではそもそも職場にすら出向けないのだが。
そして、よくもまあ『命拾いした』などと抜かしてくれた老害に、俺は精一杯の声量で罵声を浴びせた。
爺さんは涼しい顔をして紙コップの茶を啜っていた。
場所は勿論鉄橋の下のたのしいおうちだ。
「軽い気持ちで魔法なんぞくれやがって……ただの殺し合いじゃねーかよ……危うくお陀仏だ……ッ!!」
「ワシ軽い気持ちであげてないもん」
ぬけぬけとこのジジイは……
こめかみに青筋が浮かぶ。
弁解があるなら一応聞いてやると、フローリングに見立てたブルーシートの上に腰を下ろした。
先日の雨のせいか若干湿っているのがとても気持ち悪い。
「まあ、戦いとしか言ってなかったのはワシの言葉が足りんじゃったかのう。それでも、凄まじい魔法を持った妖精同士の戦争じゃ……当然死人も出よう」
「現代じゃ死人が出るのを当然って言わねーんだよ」
駄目だ、おなか痛くなってきた……
シコって寝たらこれ全部夢になってねーかな。
「大体、童貞と処女が争う理由がない。昨日の奴は本気で殺そうとしてきたし、俺も本気で殺されかけたけど、そもそも俺達には戦う理由がないだろ。昨日の処女は何で襲いかかってきた?俺何にもしてねえぞ?」
末尾違うけど
>>21
すみません末尾って何の事ですか?
はよ
「そうか、今の童貞は知らんのじゃな。自分たちがどれほど危険な状況に曝されているか」
「危険?」
「まあ処女の妖精にはもう出会っておる事じゃし、奴らの童貞に対する執念が尋常ならざるものだというのは頭に入っておろう」
ふとジジイの顔に影がかかった。
ん?と首を傾げ、二人で上を見上げる。
上にはブルーシートを木の棒で渡しただけの簡素な屋根があるばかりだ。
雲か鳥でも、と思う間もなく、すぐに答えは降ってきた。
「っあああああああああああああ!!」
「うぉぉおおおおぉぉおおおおッ?!」
ブルーシートの屋根、めでたく壊滅。
親方、空から女の子が!
「それも三人かよ……気象予報士仕事しろマジで……」
「コー……コホー……」
「昨日はお世話になったわね」
「もー何このボロい家ー。服破けたし」
右からボールギャグを口にあてがったほぼ裸の女、昨日の赤髪の女、これでもかとフリルの付いたゴスロリにツインテールの女。
全員が全員人並み以上に可愛い(もしくは美人)が、妖精になるには容姿の審査も必要なのだろうか。
大抵がデブかブスかを想像していただけに面喰う。
こいつ等全員処女かよ。てか妖精かよ。
四の男どもは何をやっているんだという感想は、真っ直ぐ自分に向かってきそうなブーメランだ。
「あーあー人んちをべこべこにしやがってこの処女共は」
ジジイは落ち着き払って茶を飲みほした後、その辺に散らばった木の棒や段ボールを片付け始めた。
続きはよ!
「ねぇー、ハーちゃん的にはぁー、早く帰ってぇー、キスフレの続き見たい感じなんですけどぉー」
「コー……コォー……」
「いいからさっさと終わらせて。童貞なんて見るのも嫌なんだから」
一瞬で廃墟と化したジジイの家から、煙をかき分けて出てきた三人。
選択肢はもはや逃げるか倒すか、二つに一つだ。
逃げられる人数ではないし、かといって倒せる気もしない。
万事休す、という言葉が頭の中に居座ってきた。
「……! そーだジジイ!アンタなら」
会心の策を思いついて辺りを見渡せど、人っ子一人見当たらない。
ジジイはいつの間にか片付けもほっぽり出して、あとかたもなく消えていたのだ。
簡易コンロの火が燃え移ったか、奴らの足元で茶の入っていた紙コップが燃えていた。
あの状況でも動じずに片づけを始める辺り相当な実力者だと考えたのは安易すぎた。
「……ジジイ」
逃げられた。
トカゲの尻尾か俺は。
「てめぇジジイコラぁああああああああああ!!!」
「んじゃ、ハーちゃん一気にやっちゃうよー?」
怒りの発散に忙しくて初動を見逃す。
『ハーちゃん』と自らを呼称するゴスロリ女が、胸の前で両手を構えていた。
「『水の花束』」
「すっげ……」
思わず声が出る。
趣味の悪い服装からは考えられないような綺麗な魔法だった。
自分に対する攻撃である事さえも、ひと時の間頭を離れた。
手の上に広がったのは、小さな華をかたどった文字通り『水の花束』。
最初はガラス細工程度の大きさだったそれは、みるみるうちに噴水のように広がっていった。
「さぁ近くに川もあるしぃー、こーれーはぁーけっこうドッパーいっちゃいます的なー?」
加速度的に増す水の花はとうとう、鉄橋に触れるほどに高さにまで成長した。
「ひぃひぃ言いながら逃げるの希望ー」
「まずいまずいまずいまずいまずい来る来る来る!!」
そっとゴスロリが手を放すと、どどどぉっと天高く伸びた水の花は崩れ、濁流となった。
鉄橋下の右半分ほどが、大雨の時のように土手まで氾濫する。
彼女ら三人との間にわずかにあった距離もすぐに消された。
もう何も見えない。
考える暇もなく、目の前にはホームレスの家を巻き込んだ、水。
「ヤバ……」
こんなのに巻き込まれたら絶対に全身の骨が折れて死ぬ。
リアルな死に足が震える。
童貞のままおっぱいに触れることもないまま童貞のまま死ぬのは嫌だいやだいやだいやだ嫌だ嫌だ!!
「おっ!!」
切り抜ける手段はただ一つ!
欲望と本能をありったけかき集めて『童貞力』を一気に解放する!
「ぱぁああああいッッッ!!!」
『ヴォーアイビス』を発動させると同時に、津波のようになっていた水が消し飛んだ。
飛沫が呆然としている俺の顔にかかる。
能力貰った後に風俗でも何でも童貞捨てたらどうなるのっと
「ちょっとぉ……ハーちゃんの最大火力が……消し飛んだんですけど……」
「はぁっはぁっ……はぁっ、はぁっ……ははっすげー何だこれ……」
水は確かに相殺できた。腕の振り一つであの津波を無効化できるとは大した魔法だ。
魔法発動の影響からか、腕が若干光っている。
これが『童貞力』……エネルギーの源なのだろうか。
「うっ?!」
ドクン、と心臓が高鳴る。
ジジイの言っていた言葉を思い出した。
『賢者タイム』。
魔法使用の反動で起こる、絶望感と疲労。
「はっ……ぎッ……あぁあ……」
今の一撃だけでこんなにもキツイ。
腕は握りこぶしを作るだけでプルプルと震え、先ほどまではわずかに残っていた『戦う意志』すら完全に消え去っている。
もうどうにでもしてくれ、俺の負けでいいから。
そんな感情を少しも情けないと思わなかった。
しかし、相手がそんな俺を気遣ってくれるはずもなく。
「コー……」
ボールギャグ女のお出ましだ。
「……『トレルパーキ』」
喋れるのかよ。
男賢者タイムあるとか不利過ぎるだろ
戦闘終わった後にドッとくる系かと思ったけど、魔法使うごとにかよ
一撃で相手倒さないと絶対負けるじゃん
大丈夫か、これ?
「……コォー…」
「一気に童貞力を解放するとリバウンドが辛いでしょ。とどめよ童貞」
赤髪の女も魔法を使用する。
目が赤く輝くと途端に視界は暗くなり、灯りらしい明かりはぽつぽつと河原沿いに並ぶ街灯のみとなった。
「『ウィンパース』……『もし真夜中だったら』」
やはりそういう設定か。
これじゃボールギャグ女の魔法がほとんど見えない。
「コ、コホー」
何か黒く大きなものが、ボールギャグ女の傍で盛り上がっていっているのが分かる。
分かるがしかし、俺は対処する術を一つも持っていなかった。
ひゅっと喉から空気が漏れた。
「コホォオッ!」
「あぁあ……っ!!」
視界が黒で埋め尽くされた。
思わず目をつぶる。
ゴウゴウと唸るそれはゆっくりと頭をもたげてきて、小さな俺は一たまりもなく踏み潰されそうだ。
恐怖に足がすくむ。
息をするのさえままならない。
必死……!
「大丈夫、目を開けて」
耳元で声がした。
「ハッハぁ、ぬるいぬるいぬるいぬるい!!こんなぬるい魔法で童貞が殺せるかァ!!」
少し前に居る人の元気な声と、傍にいる人の静かな声。
震える瞼を開くと、視界は元通りすっかり明るくなっていた。
「……炎の、腕……?」
「ガハハハ、遅れてすまん!安心せい、ワシ等はお前の味方だ!!」
「私たちも君と同じ運命を背負った妖精だ。助けに来たよ」
髪がパチパチと燃えている背の高い大男。
彼が突き出した腕と同じ形の炎が、ボールギャグ女の魔法を受け止めていた。
「『トレルパーキ』……処女力を媒介にして植物を成長させる魔法ですね。ここまで大きい木となると、恐らく彼女の最大火力でしょう」
「ガハハハ、結構結構。相性が悪かったな、そこのエロいの」
「コォオー……!!」
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