[モバマスSS] ウサミンライブレポ (27)
先日、17になる息子と初めて殴り合いの喧嘩をしてしまった。
いい大人が何をやっているのか、と思われるかもしれないが、勿論私から仕掛けたのではない。
奴は、私が家でメルヘンデビューを聞いて穏やかに過ごしていた時、こんなことを言い放ったのだ。
「安部菜々とかババアじゃん」
それが、小ばかにしたような、ふざけた様なものでも笑って言っていれば、何も知らない若造め、と私も聞き流せただろう。
しかし、その時奴は、真顔で、当たり前のように言い放ったのだ。
もはや宣戦布告どころか、無警告に発砲したようなものではないか。戦争は避けえぬものだった。大義は我にあり。
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しかし、そこでいきなり暴力に走っては野蛮に過ぎるというもの。ウサミンファンたるもの紳士たれ。
私は、寝静まった息子の部屋にこっそりと忍び込み、奴のコンポに設定された目覚ましBGMをメルヘンデビューにしておくことにした。
コンポに入りっぱなしになっていた一枚もメルヘンデビューと入れ替えておき、
サブで使っている目覚まし時計も、同じものを買ってきて、メルヘンデビューが流れるように改造したものと交換。
我ながらいい仕事をしたものである。その夜は就寝がずいぶん遅くなってしまったが、頗る快眠であった。
そして、紳士的なウサミンファンに考慮してバイオレンスな描写を省かせてもらうが、
結果として、翌朝は首より上にそれぞれ三枚は湿布を貼った親子が、通勤および通学する事態となったことを明記しておく。
何がいけなかったのだろうか、私は平和的報復に出ただけだというのに。最近の若者は手が早くて心配である。
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それはさておき、この文章を書いている時点では一昨日行われたウサミンライブの話をしよう。
夢のような一夜だった。いや、いまだに現実であったことが奇跡であったようにさえ思えてしまう。
我々、百万人のウサミンファンの望んだ一夜。チケットを手にした幸運な一万四千人の臨んだ4時間。
あの時、武道館は正しくウサミン星と化していた。私たちは確かにウサミン星を幻視した。
そう。
安部菜々20th Live -ウサミン星人20年目の大進撃!- のことである。
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ウサミン5年刻みのメモリアルライブも、今年で4回目。武道館では2回目となり、そしてウサミンデビュー20周年ということで、過去最大規模の今回。
20年目の17歳は、色あせることなく、それどころか今までよりも一層に輝いていた。
記念すべき始まりは、10thの時に記念リメイクされたヴァージョンのメルヘンデビュー。
シックかつ落ち着いた曲調に合わせ、ゆらりゆらりと照らされるステージ。
穏やかに中心へと向かい広がっていく光の、そしてその中心に現れる、微笑みとともに歌うウサミン。
会場が爆発した。そう思うほどの歓声だった。皆ウサミンを目にした瞬間に耐え切れなくなったのだ。
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観客の半分が叫び、もう半分は泣き叫んだ。私は後者だった。
とはいえ台無しである。せっかくのウサミンの歌は、その声に完全にかき消されてしまった。みんないったい何のためにここに来たのか。
それでも耐え切れなかったのはよく分かる。わかってしまう。
嬉しくて、切なくて、幸福で、堪えられなくて。もう駄目だった。
結局、歓声と嗚咽が収まるのにウサミンが歌い終わってから更に5分もかかってしまい、ウサミンはその間、困った風で、けれど嬉しそうに、微笑んで待っていてくれた。
正しく女神だった。
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それ以降、セットリストの各曲のことについては、語り難い。筆舌に尽くしがたいというべきか。
文章として世に出す以上、語り難きを語り、伝え難きを伝えるべきであるというのは当然であろう。
私だって、それぞれの曲でのウサミンの素晴らしさや、ギミックの巧みさを微に細を穿ち語りたい。書き記したい。
しかし、その時一曲一曲を聞くたびに、マイクを手にするウサミンを見つめるたびに、私の脳裏には、20年間がよぎって仕方がなかった。
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ウサミンが初めて主演・主題歌を手にしたアニメを見て泣いたこと。
全国ツアーを追いかけた時のこと。
ソロでのドーム公演に達したこと。
アニメが実写化したけど、主題歌はウサミンのままでそれはよかったこと。
もちろん、メモリアルライブのいろんな思い出。
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幸福の記憶が交錯し、私の記憶はもう何が当日のことだったか判然としなくなってきている。
正直私としてはすべて満足だから問題ないが、読者諸兄におかれては、詳細に知りたいと思われるだろう。当然だ。
そんな方には申し訳ないが、ほかの同胞のレポを読んでほしい。私がここでうろ覚えで書くよりはずっと良いはずだ。
ただ、確実に覚えていることもある。
ウサミンは、ずっと、会場の誰より楽しそうだった。
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うろ覚えでなく書けることもある。いつものゲストの登場と活躍はしっかり目に焼き付いた。
お馴染みアスタリスクの二人組だ。
ネコミミとギターがトレードマークの二人は、今回も当然やってきてくれた。
ウサミンデビュー初期から交流のある二人、今では実力も折り紙付きとなった二人、彼女らも最高だった。
今回も並ぶ純白のウサミミネコミミは眼福だった。今回もがんとして耳をつけない李衣菜はブレてなかった。
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メモリアルライブは当然、ほかのライブにも頻繁に来てくれる二人。
もちろんウサミンも二人のライブに何度も出演している。
だから、二人のデビュー曲、φωφver!!を三人で歌うものもお馴染みとなって随分だ。
これを聞いてこそメモリアルライブというものである。
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さて……。
アスタリスクの出番も過ぎ、さらに何曲か聞き惚れて。
最後の一曲になった。
すべての始まり、メルヘンデビューである。
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皆さんはご存知だろう。
ここ数年、ウサミンはオリジナルメルヘンデビューを封印してきた。
それを私たちは理解してきたし、納得してきた。
17歳は、17歳であるが、それでも限界が来ているのだと。
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あえて禁忌に触れよう。ここから書くことに関し、私を罵ってもらって構わない。
ウサミンには、皺が増えた。
ウサミンは、あまり長時間踊らなくなった。
私は、息子に対し、図星を突かれたから堪え切れなくなったのだ。
ウサミンは、衰えた。
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動きの激しいメルヘンデビューが、ウサミンに対して大きな負担になることはわかってしまっていたのだ。
勿論、リメイクメルヘンデビューも素晴らしい。が、それを聞いたとき、私たちは少なからずオリジナルとの別離を覚悟した。
そして、この数年それを噛みしめた。
今回、メルヘンデビュー復活に関し、早々に噂が実しやかに語られていた。
そんなことをする理由なんて、一つしかないと。
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そこにいたのは、全盛期の17歳だった。
所狭しと駆けて、飛び跳ねて、可愛く決めて、電波を猛発信。
ウサミンは、まるで全ての色を塗り替えるように武道館をウサミン星に変えていった。
しっかりとステージを蹴る足の何がフラフラミンか! 一時間しか持たない体力はもう四時間目だ!
ウサミン! ウサミン! ウサミン!
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一時間も二時間も聞いていたような、けれどあるいは一秒にも満たない出来事だったような。
不思議な不思議な、ウサミン時空だった。
気が付けば、開始と同じように、ウサミンは中央に一人、スポットライトを浴びて佇んでいた。
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「皆さん! ウサミンの四回目のメモリアルライブ、ありがとうございました! 今回もこうして皆さんの前で歌って踊れて、本当に楽しかった!」
ああ。
「また、こんなに人が来てくれて、ウサミンの歌が聞きたい、一緒に楽しみたいっていう人がこんなにいてくれて……、ナナは宇宙1幸せ者です!」
ああ、ああ! 終わってしまう。終わってしまう!
わかっているのだ。わかりたくないのだ。引き時なんて。潮時なんて!
この夢が崩れ去るなんて、残酷にもほどがある!
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「これで、17歳も20年目。長かった。今まで、本当に長かった」
永遠に17歳でいてほしいのに。でも、幸せであってほしいのに。
「みんなは、何年目の17歳からナナを知っているのかな? 初めからいてくれている人もいるのかな。勿論、20年目のナナだって人もありがとうですよ!」
触れられなくていい。会話できなくたっていい。無数の一人でいるだけでいい。
「久しぶりのメルヘンデビューはどうでしたか? 頑張って頑張って練習しなおしたんですよ? うまくできていたようにできていたら、嬉しいな」
ライブでなくたっていい! 踊れなくたっていい! 誰かと一緒だろうと祝福して見せるのに!
「これまで、いろいろなことがありました。ナナはずっと17歳でしたけれど、たくさん、たくさん、変わりました」
なのに。なのに。
「自分でも、思っていたんです。いつまで17歳でいいのかなって……。そしてまた、いろいろと考えて、決めました」
時計はどうして止まらない。
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「今日は、皆さんに大切なお知らせがあります」
いやだ。いやだ。いやだ。いやだ……! ああ! 言わないでくれ!
「ウサミン星人、17歳、安部菜々は……」
マイクが壊れればいい。停電が起こればいい。何でも、何でもいいから……。
「ウサミンは、ナナは、私は――」
ああああああああっ!
「まだ――まだ! 満足しきれていません!」
……………………え?
「往生際なんて! 時間なんて! 私は、私は! 17歳でいたい! 25年でも! 30年でも! 17歳で、居させてくださーいっ!」
頭が真っ白になった。
だが間違いない。今度こそ会場は爆発したのだ。
ウサミンビッグバンにより世界は時空は歪み!
ウサミンは17歳だ!
うわああああああああっ!!
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爆発した廃墟からの脱出経過は覚えていない。
ただ、物販の人混みの中で、見知った後姿を見かけた。
次のメモリアルライブでは、奴と酒を飲みながらウサミンの良さを語り合えるのかもしれない。
もう、5年後が待ちきれない。
けれども、やはり。できる限りゆっくりと時間が過ぎてほしいと思うのだ。
17歳の時間は、本当は……。
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おしまい。
アニメ見てこんな未来を妄想しました。
ウサミンレイプラボに空目した
あ、内容も良かったよ おっつし
ゆうこりんや釈さんではなく、デーモン閣下や井上喜久子お姉ちゃんのようにありますように
いい内容だった、あと>>22は正座
ええ話や……(感涙)
乙
良い話しだった感動した
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