老人「必殺技を伝授しよう」(10)
勇者「あ、いりません」
老人「え」
勇者「貴方からは十分に技術を学ばせて頂きました。これだけの剣技があれば、魔王討伐は余裕でしょう」
老人「し、しかしだな。決め技、欲しくないかね?」
勇者「いりません。必要なのは確実に魔王を倒す為の剣の技術です。基本を極限まで高めた剣技こそ、最強の武器なのです」
老人「確かに、おぬしはワシの剣技を全て身につけた…いや、もはやワシ以上の剣技をもっておるじゃろう」
勇者「ありがとうございます」
老人「なればこそ、必殺技を身につければ、鬼に金棒じゃろう!」
勇者「いえ、必殺技に頼れば、心に隙ができるでしょう。自分の持てる技術を全て使う戦い方のほうが良いかと」
老人「ぬぅ…」
勇者「では、私はこれで。明日にでも魔王討伐に行かなければならないので」
老人「待って、考え直して」
勇者「くどいですよ」
老人「だって、魔王にとどめをさす時、技に名前欲しくないかね?」
勇者「いえ」
老人「ダークネスパニッシャー!とか、エターナルストラッシュ!とか、インフィニティブラスター!とか、言いたくないかね?」
勇者「だせぇ」
老人「他にも沢山あるんじゃよ…じゃから…じゃから!」
勇者「…はぁ、では、簡単に覚えられる必殺技なら…いいですよ」
老人「マジか!」
パァァ
勇者「貴方には恩がありますからね…一つだけなら」
老人「よっしゃぁぁぁ」
・ ・ ・ ・ ・
老人「で…これを…そうじゃ…うむ…ほぅ…よし…」
勇者「はい…ははぁ…なるほど…こうして…これは…なかなか…」
老人「よし、そうじゃ、それが必殺の剣技…」
『アルティメットスラッシャー』
老人「じゃ!」
勇者「隙は大きいですが、確かに必殺ですね」
老人「じゃろう、じゃろう」
ニコニコ
勇者「これなら、対象を真っ二つにできますね」
老人「そうじゃろ、そうじゃろ」
勇者「はい…こんなふうに…ね」
ブォォ
ザンッ
老人「そうじゃろ、そうじゃr…
勇者「はい、そうですね」
老人「…」
パカッ
マップタツー
老人「あえ…なんぇぇ…なんぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ブシュゥゥゥゥゥ
勇者「あっけないものですね。かつて剣聖と呼ばれた男が、こんな死に様とは」
クックック
老人「…」
ボトリ
勇者「アルティメットスラッシャー…ですか。ダサい名前ですが、有り難く使わせてもらいますよ、この私…」
勇者「魔王四天王が一人、『顔無しのレレティウス』がね…」
こうして、かつての英雄は殺されてしまった。
世界は魔王に支配されてしまうのか…
はたまた、勇者と名乗る命知らず共が魔王を倒すのか…
これは、幾多ある
剣と魔法のファンタジーの
お話のひとつに過ぎない…
【完】
始まったと思ったら終わりやがった…!
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