[東方]たった一度の拒否(8)

紅魔館組の寿命ネタです。

「咲夜、調子はどうかしら。」

ベッドに横たわっている人物に声を掛けたのはこの館の主、レミリアだ。

「絶好調、とは言えませんが良いほうです。」

答えるのはレミリアの従者、咲夜だ。
咲夜は、紅霧異変から50年程経ち、つい先日体にガタが来てしまい寝たきりになってしまっていた。

「そう、それなら良かった。」
「ふふっ、心配してくださったんですか?」

咲夜は少し笑みを浮かべながら言った。

「心配、ね·····これは、心配なのかしらね···」

レミリアはそんな事を言いながら咲夜の事を見ていた。

「···じゃあね咲夜、また後で来るわ。」
「はい、お嬢様。」

レミリアが部屋を出るのと同時に、紅魔館の門番、紅美鈴が入ってきた。

「咲夜さん···」
「どうかしたの、美鈴。」
「何か···してほしい事はありませんか?」
「特に···無いわ」

咲夜は少し何かを考えたようだったが言葉にはしなかった。

「そうですか·····じゃあ、少し話をさせてもらいますね。」

美鈴は10分程最近の皆の様子について話すと部屋を後にした。

ーーー
ーー

翌日、咲夜は調子が悪く、半日程昏睡状態に陥った。
前々からそうなる事は少なくなかったのだが、今回は特に長い眠りだった。
咲夜が長い眠りから覚めると左右の手をレミリアと、その妹、フランが握っていた。

「咲夜···?」
「おはようございます、お嬢様、妹様。」
「うん·····おはよう。」

レミリアとフランは目が真っ赤になっており、咲夜が眠っている間泣いていたのが一目で分かった。

「どうかしましたか?」
「···あなたがずっと眠っていたから、様子を見ていただけよ。」
「そうでしたか、すいません。」
「いいわよ····別に。」

そう言うとレミリアは部屋を出ていったが、フランはじっと咲夜の事を見ていた。

「どうかいたしましたか?」
「咲夜は·····咲夜は、死んじゃうの?」

その問いに咲夜は少し戸惑った。
なぜなら、フランのその問いは単純な疑問からなのか、それとも咲夜が死ぬかもしれないという不安をまだまだ死なないという答えでその不安を少しでも解消してほしいからという思いから来た問いだったかが分からなかったからだった。

「···申し訳、ありません。」
「·····そっか。」

どうやらフランは、咲夜のその一言で理解したようで、泣きそうになっているのを、必死に堪えていた。

「咲夜は···このまま死んじゃっても良いの?嫌なら私かお姉さまが咲夜を噛めば·····!」

そう、咲夜の事を一噛みすればそれだけで彼女は眷属となり生き続ける事が出来るのだ。

「···正直、死にたくありません。死ぬのは怖いですし、お嬢様達ともっと一緒に居たいです。」
「なら·····!」
「それでは···ダメなんです」

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