【話伽】古の力と四人の戦士/02 (81)


闇の主は倒れ

世界には再び光が戻った。

その後……



四戦士は各国を復興させたのちに王となる。

世界の誰もが永遠の平和が始まるものと信じていた。

しかし四戦士は永遠を望まなかった。

時代は変わる。



その時代に生きる人々が世界を動かしてゆくのだ。

我々もそれに逆らってはならない。

それが彼等四戦士の意向であり、決意だった。



彼等は精霊の力を次代へ継承させ、世界を去った。




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一人は己の息子に

一人は信頼する友人に

一人は聡い旅人に

一人は緑敬う部族へ

各々が悩み選び抜いた末、力は次世代へと受け継がれた。





だが世界は知らない。

闇は滅びてなどいないことを……

日が昇り、やがて夜がやってくるように、闇もまた其処にある。


人には美しく尊い命の輝きがある。

同時に、底知れぬ深い闇を抱えている。

それを併せ持つのが人。

善悪の混在、光と闇の狭間で葛藤する生物。



確かに暗闇の妖精は去った。

しかし、世界は光で溢れているわけではない。

ただ、それを塗り潰す程の闇が訪れていないだけなのだ。

だが安心して欲しい。

闇にも意志はある。



かつて一人の精霊に恋したように、闇にも感情はあるのだ。




人よ恐れるな。

闇は眠りに似ている。

身を任せ、眼を閉じよ。

其処には光はない。

見よ、闇は傍らにいる。



求めれば、闇はすぐにでも現れる。

彼もしくは彼女が、必ず現れる。





求めるは人、避けるも人……

全ては、人の意志が生み出す。




原因と結果

思惑と偶然、様々な事柄が混ざり合う。

それが運命と呼ばれるものなのかもしれない。



お前は闇を求めるか

お前は闇を恐れるか

お前は闇と戦うか

お前は闇を拒絶するか

お前の意志は何を求めるか



私は、それが光であれ闇であれ構わないと考えている。



何故なら

『闇・妖精』と『光・精霊』は同義であるからだ。



精霊は闇の主の親にして敵対者。

故に闇を悪とするのは短絡的である。

精霊を善とするもまた然り。



人は知らねばならない。

人は歩まねばならない。



精霊と闇を超え、新たな領域へと踏み出さねばならないのだ。

我等人間は、未だ己が足で地に立ってはいない。

いつかその時が訪れることを、私は強く強く願う。


人よ、気高く強くあれ。

人よ、人であることを誇れ。

我等は精霊を頼ってはならない。

我等は闇に呑まれてはならない。




精霊が如何に人を想っていたかを考えよ。

人が精霊を忘れた事実、闇の現れを忘れてはならない。




遠い遠い未来の者よ

世界は美しく輝いているか……

願わくば、人が己が足で歩んでいることを願う。


【英雄】

水王都・水国軍第一大隊本部

ジェイク「火の国・炎陽付近で爆発、火国は沈黙……」シュボッ

コンコンッ…

???「大佐、宜しいでしょうか」

ジェイク「……フランツか、入れ」

ガチャ…バタン

フランツ「大佐、非常事態です」

ジェイク「簡潔に話せ」フゥ



フランツ「咲水の市街で所属不明の女性二名が戦闘を開始」

フランツ「彼女達は土や炎を使るとのこと……」

フランツ「咲水市街は甚大な被害を受けているようです」



ジェイク「事実か?」

フランツ「無線の声を聴く限り、事実かと思われます」

ジェイク「……至急車を用意しろ、儂が出る」


ジェイク「それと……」

ジェイク「民間人の避難を最優先、兵は後退させよと伝えろ」

フランツ「了解しました」ザッ

ジェイク「フランツ」

フランツ「はっ、何でしょう?」



ジェイク「上、いや軍司令部はどうだ?」

フランツ「まだ何も……いつも通りです」



ジェイク「了解した。この件は儂が『処理』する」

フランツ「報告は『その後』になさるのですね」

ジェイク「ああ、下手に増員されでもすれば死体が増えるだけだ」

ジェイク「ではフランツ・ビットナー大尉、出発後の対応は任せる」


フランツ「ハッ、了解しました」

フランツ「では、失礼します」ザッ

ガチャ…パタン…

ジェイク「………」フゥ

彼の表情に緩みはない。

日常から戦場への切り替えなど必要ない。

彼は如何なる場面であっても兵士であり戦士である。



ーージェイク・ロンベルク



兵士の模範であり憧れの存在。

彼の名を知らぬ者はいない。



ジェイク「……」

煙草を消し自室を後にする。

特別な感情が湧いたようでもなく、特別な装備を用意するわけでもない。

腰には拳銃とナイフが携帯されているのみ。

後ろに撫でつけられた白髪

眉間に深く刻み込まれた皺、射抜くような眼。

五十代でありながら肉体は衰えを知らず、今尚も逞しい。

廊下ですれ違う兵士は皆、畏れと敬いを込めて彼を見つめる。

彼が発つ。




事情を知らぬ筈の兵士にさえ、緊張と動揺が走る。

きっと只ならぬ事が起きたのだろうと……


ーーー
ーー


フランツ「大佐、準備完了致しました」

ジェイク「ご苦労」

???「……大佐」

ジェイク「グレイスか、何だ?」シュボッ

グレイス「……大佐、どうか御無事で」

ジェイク「安心しろ」フゥ

ジェイク「すぐに終わらせる」

グレイス「!!」



グレイス「ハッ、お待ちしております!!」ザッ



ブロロロ…

グレイス「……護衛も付けず、単身で行ってしまわれた」

フランツ「しかし今回の『敵』は特殊だ」

グレイス「火と土を使役する『人間』ですか?」

フランツ「ああ、ただの人ではないようだな」

グレイス「フランツ大尉、大佐はお一人で大丈夫でしょうか……」

フランツ「あの方はいつもそうだ。それに皆も知っているだろう」

水兵達『はい』

フランツ「我らが大佐、ジェイク・ロンベルクに……」



『『『不可能はない』』』


ーーー
ーー


水の国・咲水の街

ジェイク「確認出来る死者・負傷者は何名だ?」

咲水少尉「死者は百名近く、負傷者は五百名ほどです」

ジェイク「思いの外、少ないな」

咲水少尉「はい、それが…」

ジェイク「どうした?」



咲水少尉「『土を操る少女が民間人を守っている』との報告がありました 」



ジェイク「……もう一人の少女の目的は分かるか?」

咲水少尉「どうも、土を操る少女を狙っているようです……」

咲水少尉「どうやらその攻防の余波により街も破壊されたようです」

ジェイク「了解した。逃げ遅れた民間人は?」


咲水少尉「現在捜索中であります」

ジェイク「よし、死者・負傷者は直ちに都へ搬送」

ジェイク「逃げ遅れた民間人は引き続き捜索救出せよ」

咲水兵『ハッ!!』ザッ

咲水少尉「大佐はどうなさるのです?」



咲水少尉「指示の通り兵士は後退させ、救助に回しておりますが……」

ジェイク「問題ない、儂が出る」シュボッ



咲水少尉「そんな、今回は状況が違います!!」

ジェイク「構わん、場所は?」フゥ

咲水少尉「……現在は中央、噴水広場周辺かと思われます」


ジェイク「少尉、今後誰一人広場周辺には近付くなと言っておけ」

咲水少尉「ですが大佐、お一人では!!」

ジェイク「これ以上の犠牲を出すことは許さん。これは命令だ」



咲水少尉「……っ、貴方が犠牲になっても、ですか?」

ジェイク「そうだ、何があってもだ」シュボ



ジェイク「それに、今回は国ではなく儂の戦いだからな」フゥ

咲水少尉「大佐、それはどういう?」

ジェイク「そのままの意味だ。では、行ってくる」

ザッザッザッ……



咲水少尉「行ってしまった……」


咲水少尉「他を生かす為に命を晒す」

咲水少尉「戦時となったとして、並みの兵士に出来ることじゃあない」

咲水少尉「大佐、貴方は何故そこまで……」



巻き上がる粉塵に消えた彼の背中。

そこには一体どれほどの命が背負われているのかと少尉は思う。



彼は嘗ての内乱を止めた英雄。

単騎での出撃など今に始まったことではない。

それは己の実力を過信しての行動ではなく

己の実力を客観的に見た上での行動。


自惚れ傲慢自信過剰……



『戦場の彼』を見たことのない者は、様々な言葉で彼を罵る。

一方、彼が投入されるだけで戦況が変わるとも……

故に単独。



隊を率いず単独で行動するからこそ、敵は恐れる。

攪乱、遊撃、強襲、それが敵には脅威なのだ。

更に言えば、それでも生きていられたことが異常。

たった一人で戦場を駆け、援護がなくとも戦場に立ち続けた男。

死を超越した男、死神、殺人快楽、人狩り、魂喰らい……

様々な二つ名、呼び名がある。

その中で、良し悪し抜きに共通している呼び名がある。



咲水少尉「戦場に生きる男……」


ーーー
ーー


ソニャ「白月!!しっかりしろ!!」

白月「…ブルル…」ボッ

ゴオォォォッ……

ソニャ「……白…月…カル……ごめん…」

???「あーあ、馬が燃えちゃった。『彼』の馬なのにねー?」

ソニャ「……オマエ、なんだ!?」

そんな「なんで、なんでこんなことをする!?」

???「なんでアンタみたいなガキが、あの人と一緒にいたのかなぁ?」

ソニャ「答えろっ!!」ゴッ

ドゴンッ…

???「まあまあ、落ち着きなよ」フワッ

ソニャ「……(浮いている、風も使える?)」



???「私はネア・ユリエフ。暗闇の妖精だよ?」ニコッ



ソニャ「そんなのは知ってた!!目的はなんだ!!」

ネア「あははっ、何怒ってるのさ?」

ネア「まあいいや、教えてあげる……」

ネア「目的は、土のアンタに『いじわる』することだよ」

ソニャ「!!」



ソニャ「ソニャにいじわるしたいから白月を殺したか!!」

ソニャ「ソニャにいじわるしたいから、街を壊したか!?」



ネア「そだよ?アンタには沢山いじわるされたからねー」ニコッ

ネア「それにさぁ……」ズズッ

ソニャ「!!」

ネア「アンタが彼を独り占めするから悪いんだよ?」ダッ


ソニャ「っ!!(なんだあれ?黒の、どれすか?)」ゴッ

ドゴンッドゴンッ…

ソニャ「……いない、どこ行った?」

ネア「後ろだよー」

ソニャ「ぬんっ!!」ブンッ

ガキィン…


ネア「正直さあ、邪魔なんだよね。お前みたいな奴はさあ!!」ズオッ

ソニャ「うっ…」ゾクッ


ドゴッ…

ソニャ「うあっ!!…っ…」ガクン

ネア「大丈夫大丈夫。殺さないから」

ソニャ「(どれすが消えた?あれは暗闇のヨロイみたいなやつか?)」

ソニャ「(コイツ、本当に暗闇をあやつっている)」


ネア「ねーねー、お話ししようよ?お互い女の子だし」ニコッ


ソニャ「……オマエ、頭おかしいな」

ネア「おかしいのはどっちだろうね?」クルンッ

ネア「手を繋いで、一緒に寝て、守って貰ってさぁ…」

ソニャ「オマエ……なんで、知っている?」

ネア「まあまあ、それは置いといて……」



ネア「そこまでしてくれたのにアンタは見殺しにしたよね?」



ソニャ「っ、ちがうっ!!」

ネア「違わないっ!!アンタは彼を見捨てて一人で逃げた!!」

ソニャ「ちがう……カルは、ソニャに仲間を

ネア「仲間を捜せって!?」

ネア「そんなの、アンタを逃がす為の嘘に決まってん でしょ!!」



ネア「私が『お前』を教えてあげるよ、ソニャ・ガウリ…」


ソニャ「…ぅあ…」ビクッ

ネア「アンタは彼を裏切った」

ネア「優しさ甘えた挙げ句、想いを踏みにじったんだ」

ネア「アンタは彼に守られてたクセに……」

ソニャ「うっ…やめ…ろぉ」グスッ



ネア「やめないよー、って言うか聞けよ」ニコッ

グイッ…

ソニャ「うぅっ」ポロポロ

ネア「カル・アドゥルを殺し、彼の炎を奪った女」

ネア「それが『お前』なんだよ!!ソニャ・ガウリ!!」



ソニャ「うわあああああああっ!!」



ネア「よわっ、ずっとそうしてれば?」

ネア「どうせ何も出来ないでしょ?」

ネア「守られてきた今までと何にも変わらない、バカな奴だねー」

ソニャ「…ぁうぅ…」ドサッ

ネア「そうそう、早く壊れろ」



ネア「喪ったのは、私の方なんだから」



ソニャ「…?」

ネア「貴男は優しいから、こんなのを守ろうとしたんだよね?」

ネア「私にだけ優しくしてくれればいいのに……」



ネア「もう消えちゃダメだよ。一人ぼっちは、もう嫌……」グスッ


いったん切りまた後で

ーーー
ーー


少女が二人……

民族衣装の少女が倒れ、黒服の少女がそれを見下ろしている。

黒服の少女が『敵』で間違いない。

内に流れている力が禍々しい。



なる程、暗闇の妖精か。



おそらく、あの少女は妖精そのものではない。

妖精の力の一つ、分体か……

二人共にまだ幼い。

とは言え、黒服の少女は精霊の力を上回る力を持っている。



現に、土の継承者と思しき少女はあれに敗れたのだ。


ジェイク「しかし……」

中央噴水広場。

此処は噴水を中心として円を描くように建物が建築。

建物の間を走る大小様々な道、建ち並ぶ店が街を賑やかにしていた。



その全てが瓦礫の山。

嘗ての街並みは見る影もなく破壊されている。

記憶の中の街並みは破壊され、土煙と熱風が吹き荒れる。

此処から見える景色、気に入っていたんだが……



随分派手にやってくれたな。



ジェイク「行くか」

恐らく此処に民間人はいない。

居たとしても生きてはいないだろう。



倒壊した建物の下敷きか、炎で焼かれたか……

どちらにせよ悲惨な死だ。



戦場に於いて悲惨でない死などないだろうが……

儂に出来るのは死を増やさぬことだけだ。

屋根だったであろう瓦礫の上から銃弾を放つ。



当てるのが目的ではない、此方に気付けば良い。


ジェイク「……貴様が闇の主、暗闇の妖精か」

ネア「如何にも、アナタは水を司る者だよね?」

ジェイク「ああ、そうだ」


銃声が鳴ったと同時に目の前に……

あの場から一瞬にして移動したというのか。

分体とは言え、やはり暗闇の妖精。

年齢や外見から得られる情報など、この類には役に立たんな。



ジェイク「何も訊きはしない」

ネア「目を見れば分かるよ」

ネア「第一、何を訊かれても話す気は無いからね」

ジェイク「だろうな、貴様の態度を見れば分かる」ジャキ


ダンッダンッ…

ネア「……そんなオモチャが通用すると思う?」

ジェイク「どうだろうな」

ピキッ…パキッ…ジャギンッ

ネア「えっ?(弾いた弾丸から氷!?いつの間に……)」タンッ



ジェイク「あまり人間を舐めるな」ダッ



ネア「なっ、はやっ…!!

ドッゴォ…

ジェイク「人の時は進んだ。停滞していた貴様等とは違ってな」シュボ

ネア「けほっ…容赦ないなあ」

ジェイク「腹が凍っているが、いいのか?」フゥ

ネア「なっ!?(いつ出した!?この男は、やばい!!)」ズズッ



ジェイク「そのドレスが正装か?随分着飾るな、妖精の分際で……」ズオッ


ネア「!!」

ネア「(今こいつを相手にしちゃ駄目だ!!殺されるっ…)」フワッ

ジェイク「失せろ」

ネア「くっ!!」ゾクッ



ネア「(に、人間の目じゃない。こんな奴に勝てるわけない!!)」



……フッ…

ジェイク「……消えたか」

ソニャ「…………」

ジェイク「立てるか?」



ソニャ「……ぅ…あ…?」



重度のショック状態。

外傷は殆どないが、奴に何かされたな。

精神、心にまで傷を負わせる力がある?

それとも、精神を酷く揺さぶられたのか……

何にせよ、これでは話しは出来そうにない。



ジェイク「聞こえているか分からんが、今からお前を運ぶ」

ソニャ「…か…ぅ…」



目が今を見ていない、放心状態か。

早急に都へ運んだ方が良い、おぶって行くか。

随分軽いな……

まだ幼いとはいえ、これは軽すぎる。


しかも、この娘が着ている服はガウリ族の物。

森を離れ、たった一人で来たというのか?

何故、森に住まうガウリ族が水の国へ……

ともかく、少尉の言っていた土を操る少女はこの娘で間違いない。



上に伝えたくはないが、この娘の保護の為にも伝えねばならん。



世話はグレイスに任せ、護衛も複数付けさせた方がいいだろう。

政治屋連中が精霊の力を欲しがらない訳がない。

しかも娘の意識はないようなもの、何をされるか想像したくもない。

奴等の手に渡るような事だけは、決して避けなければならん。



……妖精の復活と出現。

世界に異変が起きているのは確かなようだな。


【思惑】


水王「ガウリ族、あの蛮族が何故?」

ジェイク「分からん」

ジェイク「娘の意識が回復するまで確認する術がない」

水王「警護は貴官の部下が担当すると?」



ジェイク「ああ、『敵』に狙われた時の為だ」

ジェイク「向こうとしても、叩くなら今だろうからな」



水王「分かった。警護は貴官に任せる」

水王「しかし、妖精の復活と襲撃か……」

水王「あの時、貴官の力を見ていなければ信じられなかっただろうな」

ジェイク「……火の国から音はあったか?」


水王「いや、炎陽での爆発後、未だ沈黙を続けている」

ーーー
ーー


水王「ガウリ族、あの蛮族が何故?」

ジェイク「分からん」

ジェイク「娘の意識が回復するまでは確認する術がない」

水王「警護は貴官の部下が担当すると?」



ジェイク「ああ、『敵』に狙われた時の為だ」

ジェイク「向こうとしても、叩くなら今だろうからな」



水王「分かった。警護は貴官に任せる」

水王「しかし、妖精の復活と襲撃か……」

水王「あの時、貴官の力を見ていなければ信じられなかっただろうな」

ジェイク「……火の国から音はあったか?」



水王「炎陽での爆発後、未だ沈黙を続けている」


水王「だが、土・風では幾つか不可解な事件が起きたようだ」

水王「此度の件を含め、近い内に三国会議を開くことになるだろう」

ジェイク「掟に従い、か?」



水王「……そうだ」

水王「一国が悪しき道に走れば三国で叩く」



ジェイク「そうでなくなった場合は?」

水王「変わらん。悪が二国になろうと三国になろうとな」

水王「悪を正すのが、残された国の役目だ」

ジェイク「(そう言うしかないだろうな、お前は……)」

水王「……貴官の予想が正しければ、これから慌ただしくなるだろう」



水王「敵が再び現れた場合は頼む。国の為、民の為にな」



ジェイク「了解した。では、失礼する」ザッ

水王「ジェイク」

ジェイク「……何だ」



水王「立場違えど我々は友だ。何でも言ってくれ」

ジェイク「ああ、『何かあれば』な」



ガチャッ……バタン…

水王「相変わらずだな……」

水王「(しかし『敵』か、言ってくれる)」

水王「(水王として、国を救った英雄を敵に回すわけにはいかない)」

水王「(……それに、此度の件で英雄を望む声は更に高まるだろう)」



水王「(厄介な男だが、新たな精霊の力が手に入ったのは大きい)」



水王「(火の国は兎も角、他二国には良い牽制、主導権を得られる)」

水王「(妖精出現は私にとって好都合、精々暴れるがいい)」

大臣『失礼します』



水王「……入れ(大臣か、煩いのが来たな)」



大臣「水王様、ジェイクは何と?」

水王「ふっ……英雄なら、娘に手を出すなと言っておられたよ」

大臣「奴め、知己とは言え王に何と言うことを……」

大臣「しかし水王様、ガウリ族を受け入れるとは驚きました」

水王「……土の国に恩を売るのも悪くないと思ってな」



大臣「なる程、あそこは精霊崇拝が根強い国ですからな」


大臣「ガウリ族を保護したとなれば……」

水王「大臣、あまり期待はするな。あくまで可能性の話しだ」

大臣「し、失礼しました」

水王「(出世欲の塊、煩わしい奴だが……)」

大臣「……軍人風情がデカい顔を…」ブツブツ



水王「(いつでも切れる安い首は、幾つあっても良い)」



大臣「如何なされました?」

水王「いや、少しな……」

大臣「……?」



水王「(今は、これで良しとするか)」


切り。>>34はミス。また後で

乙。続き待ってた


【思惑と自責】

水王都・水国軍第一大隊本部


ジェイク「ガウリの娘はどうだ?」

グレイス「それが、大佐が本部へ運んだ後も放心状態が続いていました……」

グレイス「その為、眠らせた後に栄養剤を投与しました」

ジェイク「そうか、ご苦労だった」シュボッ



グレイス「……大佐、少し休まれては如何ですか?」

グレイス「咲水より帰還してから一時も休まれていません……」



ジェイク「休むのは後でいい」フゥ

ジェイク「グレイス、お前に少し話しがある」

グレイス「……水王と、話されたのですね?」



ジェイク「ああ、奴はガウリ族の保護を我々に任せた」



グレイス「司令部、水王側はいつも通りですか」

ジェイク「頭と体、上が楽を出来るように作られたようなものだからな」

グレイス「現在の状況を見れば、最早堕落と言ってもいい」フゥ

グレイス「(大佐……)」



ジェイク「グレイス、いつの時も血を流すのは民だ」



グレイス「……はい」

グレイス「ですが、そうならない為に戦い、民を守るのが我々兵士です」

ジェイク「ああ、その通りだ」

グレイス「これは、大佐が私に初めに教えてくださったことです」



ジェイク「……そうだったな」フゥ



グレイス「大佐?」

ジェイク「………」フゥ

グレイス「??」

ジェイク「だが今回は規模も、戦そのものも違う、敵は人だけではない」



グレイス「……大戦、ですか」



ジェイク「そうなる可能性は高い」

グレイス「大佐、咲水での被害は単騎によるものだと聞きました」

グレイス「一個体にそれ程の力があれば……」

ジェイク「それも確かに脅威だが、問題は人間の方だ」

グレイス「大佐は、水王がガウリの娘を狙うとお考えですか?」


ジェイク「大臣が独断で動く可能性はあるだろうが、奴は動かん」

グレイス「……水王には何か策があると?」

ジェイク「いや、近々三国会議が開かれる」

ジェイク「三国会議には儂も行くことになるだろう」フゥ

グレイス「なる程、その場で精霊の存在」



グレイス「いえ、大佐とガウリの娘、実在する継承者を明かす」



グレイス「となれば……」

ジェイク「狙いは三国間での主導権を握ることだろう」

グレイス「土の継承者を無事保護出来たといえ、やはり簡単には行きませんね」

ジェイク「奴の狙いが分かっていても、儂には何も出来ん」


グレイス「……水王は、あくまで国の為と?」

ジェイク「『今は』だがな」フゥ

グレイス「あの娘はどうなさるのです?」



ジェイク「出来れば国……」

ジェイク「いや、森に帰してやりたいが、そうもいかん」



グレイス「現在も監視は続いていますし、あの娘も暫く眠ったまま……」

グレイス「しかし、ガウリですか……」

ジェイク「森に生きる『蛮族・ガウリ』」

ジェイク「時代に逆らい生きる彼等に対する世界の反応は冷たい」

グレイス「そんな中での我が国の保護」



グレイス「加えて妖精の復活、後に訪れる世界の混乱……」


グレイス「水王にとっては好機です」

ジェイク「それは妖精にとっても同じことだ」フゥ

ジェイク「そういった思惑や思念は妖精を『呼ぶ』と言うからな」



グレイス「(暗闇、人心の暗部を増長させる力……)」



ジェイク「グレイス、近い内に世界は大きく動き混迷してゆくだろう」

カロッサ「はい」

ジェイク「だが、今はガウリの娘の目覚めを待つ他ない」

ジェイク「護衛と警戒を怠るな、異常があればフランツに報告しろ」

グレイス「了解しました」

ジェイク「話しは以上だ。グレイス、頼むぞ」



グレイス「ハッ!!」ザッ



その後、三国会議が行われた。


其処にはジェイクの姿もあったが、彼が発言することはなかった。

各国にも水国の内乱を止めた彼の名は通っており、その活躍は語るまでもない。

重要なのは彼のような存在。



云わば力である。



人と人との戦ではなく、人と暗闇の戦。

加えて精霊と協力し、暗闇の妖精と戦うことになる。

その中で最も有力な手段が精霊の力。

例え訓練された兵士であっても、黒水晶の前には人に過ぎない。



それは議論を挟む余地もない事実であった。



土・風共に黒水晶による被害が報告されており

一個に対して負傷した兵士は百名近い。

これにより、更に精霊の力が重要視された。



話題は移り

ジェイクの妖精撃退、ガウリ族の保護が水王により語られた……

以前からガウリ族に対する差別的発言が目立っていた風王は口を噤む。

土王は何かを思案しているのか、時折発言するのみとなった。

両陣営にとって、精霊を宿す者が居ないことが一番の問題である。

そんな中、唯一力を持つ水王の発言権が強くなるのは誰の目から見ても明らかだった。

会議の中心は水王となり、実質上他二国はそれに従う形となる。



その後、水王は

早急に三国同盟を結び、暗闇の妖精を打ち倒すべきだと唱えた。


火の国の沈黙、妖精の復活と黒水晶の被害。

それを受け、他二国は半ば押し切られる形で会議は終了した。



両国王の顔は渋く

水王の指揮に服すつもりがないことは見て取れた。

何とか有利な状況を作り上げる為

両国は必死の精霊捜索に乗り出すことだろう。

結果を知っている水王は、心中で彼等を笑った。



火・風の継承者の行方は不明。

だが水・土は水国、水王の手中にある。



火の精霊は

火の王の弟である【カシュバル・クルサーク】が継承。

しかし、その弟は数十年前にいずこか消えている。



王位を巡り

現王である兄・ラドヴァン・クルサークと争ったと言われているが……

前王は最期まで沈黙を貫いた。



それ故、真偽は定かではなく現王も弟を語ることはなかった。

生きていたとして七十前後、使い物になるかどうかも怪しい。

更に水王は、保護したガウリ族が土の継承者であることを明かさなかった。


土の継承者であるガウリ族の少女

水王からすれば、彼女が目を覚まさなければそれでも構わないのだ。

四精霊の内二つが手中にあることが何より大きい。

他二国が躍起になって捜索したところで、継承者が国に協力する保証はどこにもない。

そこで必要になるのがジェイク、無理矢理にでも従わせるには彼が協力が不可欠。



更に言えば

ジェイクのように、軍人として国に尽くす者が精霊を宿している可能性など万に一つ。



しかも二人引き入れるとなれば確率は更に低くなる。

どちらかが運良く一人を引き入れたとしても、信用という面ではジェイクが遥か上を行く。

そこらから引っ張って来た者が、国に尽くしてきた者に勝てる筈がない。

どの道、最後は水王に頼らざるを得なくなる。



三国会議はジェイクの予想通り、水王が主導権を握り幕を閉じた。


いったん切る。

今日はここで終了、また明日。
タイトルミス等の手違いがありましたが、ありがとうございました。

ーーー
ーー


三国会議から数日後…

水王都第一大隊本部・治療室

「大佐の言っていた通り、ショック状態だ」

「一体、何をされたのか」

「今も何処を見ているのか分からん……」


ソニャは道を間違ってしまったようだ。

あいつの言った通り、見殺しにしたと同じ……

あの時、最後まで一緒にいればよかったんだ。

本当の戦士なら、きっとそうする。

カルの優しさに、ソニャは甘えていたか?

守られて、いつの間にかそれに安心していたか?



だったらソニャはおろかものだ……



守られることに喜びを感じていたな。

あってはならないことだ。

ソニャの馬鹿者、族長にあわせる顔がないぞ。



族長なら守られて喜ばない。

たぶん怒ったはずに違いない。


ガウリは決して諦めないと、たくさん怒っただろう。

それに、命を散らすようなことをゆるさないだろう。

ともに戦う人が愛する男なら、なおさらだと言うかもな。



逃げることは恥だ。

仲間を置いて逃げるのは罪だ。



ソニャはもう、ガウリじゃないのかもしれない……


カルは怒ってるか?

ソニャを嫌いになったか?



……なんてなさけない、ソニャは弱いな。

カルが死ぬ気なの分かってたのに……

優しさに甘えて、守られて逃げ出して、白月まで……

そうか……



ソニャには、あやまる人もいなくなったか。

怪我してでも一緒にいれば、あやまれたのにな。



『彼の炎を奪ったオンナ、それがオマエだ』



かえす言葉もない。

くやしいが、その通りだ。

死んだら、その人はもう戻らない。



星になったタマシイがかえることはないんだ。

だからこそ、大事にするんだった……

ソニャはカルを好きだが、カル好きの資格もない。

好きな男をむざむざ死なせた女だ。

そんなやつが、好きって言うのは一番ダメなことだ。



ソニャならソニャをゆるさない。



ソニャは、そんな女は大嫌いだ。

おそらく口もきいてやらないだろう。

そうか、ソニャはソニャの大嫌いな女になってしまったか……

悲しむのもダメな女なのに、やっぱし悲しい……

カルに、ごめんなさいしたい。

カルに会いたい……


「なっ!?何だこれは?」

「この子が、やったのか?」

「しかし彼女は眠ったままだぞ?」

「着物を着た青年の像、これが土の精霊の力」

「フランツ大尉に報告しなければ」

ーーー
ーー


フランツ「大佐、グレイス少尉より『ガウリ族の少女が力を使った』との報告がありました」

ジェイク「護衛の兵に怪我は?」

フランツ「グレイス少尉含め、護衛の兵士に怪我はありません」

フランツ「少女の精神、意識は未だ眠ったままのようですが……」

ジェイク「何だ」



フランツ「無意識の内に力を使い、『青年の像』を作り出したと……」



ジェイク「青年の像?」シュボッ

フランツ「はい、親しい人物のようですがガウリ族ではないでしょう」

フランツ「着物を着用していたことから、火の国の者かと思われます」

ジェイク「着物、随分古い……」フゥ



ジェイク「今尚も作っているとなれば火の国でも少数と聞く」

ジェイク「その中で最も有名なのは灯火の里だが……」

ジェイク「着物を着用しているという理由で、青年が火の国の者だと?」

フランツ「いえ、それだけではありません」



フランツ「……これは私の憶測なのですが、宜しいでしょうか」



ジェイク「構わん、話してみろ」

フランツ「その青年が腰に差している剣は、火の王家に伝わる剣に酷似しています」

フランツ「歴史文献で見た挿し絵と、ですが」

ジェイク「現王の弟君・カシュバルと共に紛失したと言われる剣か?」



フランツ「はい、もし紛失した剣と青年の剣が同一だとしたら……」



フランツ「像の青年と出奔した弟君には何らかの関係があるのではないかと」

ジェイク「なる程、ではその青年が火の継承者だと?」フゥ

フランツ「もしそうであれば、あのガウリ族が心を許したのも頷けます」

フランツ「全て憶測、仮説ではありますが……」



ジェイク「グレイスは『見た』のか?」



フランツ「いえ、どうやら躊躇っているようです」

フランツ「力を使う、それ自体に迷いが生じているかと思われます」

ジェイク「人の心を見ることに躊躇いが生まれるのは『人として』当然だが……」

ジェイク「それでは兵士は務まらん。グレイスを呼んでくれ」



フランツ「了解しました」



ジェイク「頼む」

フランツ「ハッ!!」ザッ

ザッザッ…ピタッ……

ジェイク「……どうした、フランツ」

フランツ「大佐、やはりグレイス少尉を後継者になさるのですか?」

ジェイク「計画に変更はない」

フランツ「私は大佐以上の兵士を知りません」



フランツ「だからこそ、私は大佐が選んだ者を信じます」



フランツ「そこに疑問疑念があるわけではありません」

ジェイク「………」シュボ

フランツ「ただ、暗闇の妖精が復活したことで時が急激に早まりました」

フランツ「現在は我が国。いや、水王が主導権を握っているようですが……」



フランツ「このタイミングでの計画実行は、三国間の均衡をも崩しかねません」



ジェイク「何が起きようと、我々のやるべきことに変わりはない」

ジェイク「計画はこの国に必要なことであり、人の未来の為でもある」

フランツ「しかしながら、妖精が復活した今では損失が大き過ぎます」

ジェイク「時代は変わる……」



ジェイク「いや、変えねばならない。我々、人の手でな」



フランツ「……はい、承知しております」

ジェイク「フランツ、未来は人の手で切り開かねばならん」

ジェイク「どんな犠牲を払っても、だ」

フランツ「!!」

フランツ「……っ、了解しました。では、失礼します」ザッ

ガチャ…パタン



ジェイク「……」フゥ

ーーー
ーー


ジェイク「グレイス、状況の把握は出来ているな」シュボ

グレイス「はい、フランツ大尉におおよその話しは、しかし……」

ジェイク「現状、真実を知る方法はそれしかない」

ジェイク「この件は、お前に任せる」フゥ

グレイス「!!(大佐が、私に任せると……)」

ジェイク「どうした?」

グレイス「い、いえっ、了解しました」

ジェイク「……グレイス」

グレイス「ハッ」ザッ



ジェイク「我々は、時に良心すら捨てなければならない」

ジェイク「非情だ冷徹だと言われようと、やらねばならん時がある」




ジェイク「我々は『兵士』だ。そうあらねばならん」フゥ

グレイス「ハッ!!」ザッ

ジェイク「ただ……」

グレイス「…??」

ジェイク「必ず帰って来い、これは命令だ」

グレイス「!!」

グレイス「了解しました!!では、失礼します!!」ザッ

ガチャ…バタン

グレイス「これは私にしか出来ない。ならば、私がやらねば……」



『必ず帰って来い、これは命令だ』



グレイス「……(大佐、ありがとうございます)」ギュッ


ザッザッザッ…



ーーー
ーー


治療室


ソニャ「…スゥ…スゥ…」

グレイス「……(確かに、このままでは衰弱する一方だ。何とかしなければ)」

護衛兵と医者は退室させ、治療室には私とガウリ族の少女だけだ。



万が一、力が暴走した場合は私が対処するしかない。

眠っているとはいえ、内側がどうなっているかは分からない。

波が荒れていれば、暴走する可能性は大いにあり得る。

傷に触れぬよう、流れに呑まれぬように心を捉えなければ……

しかし、精霊の継承者に対して『これ』をやるのは初めてだ。

初めてだが、必ず成功させてみせる。



水の継承者、ジェイク・ロンベルク……




私に大佐ほどの力はない。

しかし私には心の流れ、記憶の流れを捉える力がある。

これは、私にしか出来ない。

だからこそ、大佐は私に任せると言って下さったのだ。



カロッサ「……済まないが、見させてもらう」


流れを捉え、水の鏡に映し出す。

目標の捕捉、映像の維持、気は抜けない。

幼いとは言え、女性の心を覗くのは気が引けるな。

だが私は、大佐の言ったように兵士、軍人だ。



私情を挟まず、成すべき成す。




私に大佐ほどの力はない。

しかし私には心の流れ、記憶の流れを捉える力がある。

これは、私にしか出来ない。

だからこそ、大佐は私に任せると言って下さったのだ。



グレイス「……済まないが、見させてもらう」


流れを捉え、水の鏡に映し出す。

目標の捕捉、映像の維持、気は抜けない。

幼いとは言え、女性の心を覗くのは気が引けるな。

だが私は、大佐の言ったように兵士、軍人だ。



私情を挟まず、成すべき成す。




グレイス「……見えてきたな」

ヂヂッ…カッ…ザザッ…ザザッ…

ガウリ族の少女の名はソニャ・ガウリ。

着物の青年の名はカル・アドゥル。



短期間ではあるが、二人で旅をしていたようだ。

始まりは篝火の町か、町並みが随分荒れている。

周囲の民間人の話しからするに、他国同様に黒水晶の被害にあったようだ。

それを救ったのが彼というわけか、確かに力はあるようだ。

火の継承者は彼で間違いない。

しかし、二人共にまだ幼さが残っているな。


『これでいいか?』



なる程……

土の力で町に仮設の家を建てたか。

しかし不思議なものだな。

青年は勿論のこと、彼の周りも皆笑顔だ。



本来、人は強大な力を持つ者を怖れ遠ざける。



だがどうだ?

彼を慕う者はいるが、怖れる者は誰一人としていない。

傷付きながらも、皆前向きだ。

彼の笑顔に勇気付けられ、前へ引っ張られている。



生まれ持った資質か、意図せず人を惹き付ける男のようだな。



大佐とは違った求心力がある……

もし今此処に彼がいれば継承者同士、上手くまとまっただろうか?

『またなー』



むっ、もう出発か。

力を使っての長旅、疲れているだろうに……

だが流石はガウリ族、幼いながらも疲れを見せない。



『灯火の里って所』

出身は灯火の里か、これは助かる。

継承者というだけでなく、武道に心得があるのは心強い。



『カル、温かい……』

いや、やはり子供か、眠ってしまったようだ。



ヂヂッ…ザザザザ……


場面が変わった。

……此処は……炎陽の街か?

短時間で随分遠くまで来たな、あの馬は相当速いようだ。

ホテルか、この先はあまり見ない方が良さそうだ。

先に送る……ん?



『そんな貴方達の心が俺には醜く見える』



正論だが、その手の人間には通じない。

確かに腹立たしいが、彼等にそれを説くのは無意味だ。



しかし、このカルという青年

彼には武道に心得があり、精神もしっかりしているようだ。

益々惜しい、きっと大佐の助けになってくれただろう。

綺麗事を言うのは少々気に入らないが……



『星はタマシイだ』

『元気、出たか?』



どうやら彼を育てたという祖父は亡くなったようだ。

星は魂の輝き、か……



『君達、少し宜しいかな?』



この男……

ホテル王・リカード・アルシェか?

人を惹き付ける男だとは思ったが、まさかこんな大物まで引き寄せるとは……

誰からも好かれるなど有り得ないが、彼は私が思うよりも異質の存在のようだ。

流石にここまで来ると不気味さすら覚える。



『カルは優しくて温かくて、やっぱし温かい』



彼女・ソニャからすれば優しく温かい男なのかもしれないが……

何というか、人間として綺麗過ぎる。

まるで、物語りの中の英雄が絵本から飛び出したような……

そうであるように作られたような……

彼は、何かが違う。

そして、彼の想い描く人間が、皆『こう』だとしたら、正直狂っているとしか言えん。





彼が、私と同じ人間なのかを疑いたくなる。



『国と国の大きな戦になるかもしれない』

『急ごう』



ヂヂッ…ザラザラ…



映像が荒れてきたか……

そろそろ繋がりを切らないと拙いな。

だが、この先にもっと重大な事実がある筈だ。

断片的でいい、この先を見させてくれ。



『これじゃあキリがないな』

『黒ヨロイは泥の入れ物……』

『カルのおかげで助かったな』

『むっ、さすがに少々疲れる相手か?』




ヂヂッ…ザラザラ……



拙い、かなり荒れてきた……

映像から大体の事は分かった。

この件を早く大佐に伝えなれければ……





カロッサ「…!?何だ、急に流れが…強く…っ!!」ヂリッ





ヂヂッ…ザラザラ……




拙い、かなり荒れてきた……

映像から大体の事は分かった。

この件を早く大佐に伝えなれければ……




グレイス「…!?急に流れが強く…ぐっ!!」ヂリッ




『ガウリは逃げない!!』

『白月、戻ろう?な?』

『大丈夫、すぐに追い付く』



『約束な?やぶらないか?』

『勿論』

『ばくはつ……カル…?』

『カル、約束したな?』

『…っ…大丈夫、カルは生きてる』



『お前を教えてやるよ』

『白月、戻ろうな?カルが、カルが死んじゃう』



『奪ったのはお前だ、ソニャ・ガウリ!!』





『「ぐっ、うああぁぁぁぁッ!!!」』



>>68>>77、名前ミス、変更し忘れ。
今日はここで切り。ミスのないように見直してみます。

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