小町「お兄ちゃん、今年の小町のバレンタインデーは中止となります。」 (171)

※やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
タイトルに偽りあり?ww


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「お兄ちゃん、今年の小町のバレンタインデーは中止となります。」
「俺のバレンタインが開催された事は一度も無いぞ。」
「お兄ちゃんお兄ちゃん、目をそらしちゃダメだよ。クリスマスもバレンタインもみんなに平等に来るんだよ。」
「平等に来るのは12月24日と2月14日だな。クリスマスでもバレンタインでもない」
「でたー。屁理屈でたー。あー、じゃあ今年から小町のチョコレートもいらないね。」
「いやそれは欲しい。」
「勝手だなー。まあいいや。あのねゴミいちゃん、中止になったのは”小町の”ね。」
「どおゆうこと?」
「お兄ちゃん、小町は受験生だよ。しばらく入試試験が続くから今年は心の余裕が無いのですよ。」
「え、ホントにくれないの?お兄ちゃんスゲーショックなんだけど。何ならお兄ちゃんお金渡すからちょろっとコンビニで買ってきてくんない?」
「お兄ちゃん、それ意味ないよね。というかそんなのでいいの?」


「あ、でも今年は雪乃さんと結依さんからはもらえるから小町からもらえなくても記録更新だよ。一気に2個、なんと2倍!」
「もらえるとはかぎらんだろ。だいたい雪ノ下なんか製菓業界の陰謀ねとか、世界的に見てみて一般的な行事ではないわねとかいいそうだぞ。いや、絶対言うね。」
「あー雪乃さんならいいそうかもなー。」
「でもねゴミいちゃん、本当にどうでもいいと思ってるの?」
「い、いや、貰えたら嬉しいかなとは思うけど。」
「お兄ちゃん、普通の女子高生は深い意味なくても男の子の友達に義理チョコ普通に配るよ。年賀状とか挨拶みたいなもんだよ。いままで一個ももらったこと無いお兄ちゃんが特殊なだけだからね。」
「そ、そうなの?」」
「そうなの。結依さんはそういうイベント外さないだろうし、雪乃さんもー、バレンタインはどうだかわかんないけど、例えば友達への普通の挨拶ってことなら嫌がりはしないとおもうよ?奥さんになってもー、年賀状とかーお歳暮とかー、そういう来たものにはきちんとお返しはするタイプだと思うし。」
「あー、年賀状とかの例えはすごく想像できるわ。てか、おまえ年賀状なんて出してんの?今はメールとかじゃないの?知らんけど?」
「はー。スルーしたかー。まあいいや。お兄ちゃん。社交辞令でもチョコはチョコ、一個は一個だよ。今年は貰える。絶対、雪乃さんや結衣さんがくれるって。」
「あー、社交辞令ね。」
「ゴミいちゃんわかってないなー。社交辞令っていう建前があるから渡しやすいんじゃないの。まわりもいっぱいやってるんだよ。これは普通、特別じゃないことじゃないっていいわけができるの。お兄ちゃん自分を目立たないようにするの得意だからわかるでしょ。」
「うっせ。」

「でもね、お兄ちゃん。目に見えるモノが真実とは限らないのですよ。」
学校で本命チョコ渡すのは恥ずかしい。あからさまに義理っぽいチョコなら私にもわたせるかもー。いや、でも

やっぱり気づいて欲しいこの乙女心ー。」
「あー、ハイハイ。」
「そこでもらった男の子はチョコをみて判断しなければならないのですよー。手作りとかー、メッセージ添えて

あるとかー、あ、他の人へ配るのとラッピング違うとかは要チェックだよお兄ちゃん。」
「それ全部目で見えてるよな。だいたい女のやる事ってわかりづらすぎるだろ。」
「お兄ちゃんうるさいよー。とにかくそういう思いがこもっているかもしれないって考えて見なけりゃいけない

んだよ。何にでも疑って入るのも得意でしょ。」
「お前色々詳しいけど、学校で配ったりしてるの?お兄ちゃん聞いたこと無いんだけど」
「お兄ちゃん、さすがにそういうこと詮索するのはキモい。とにかく小町のことはどうでもいいの。」
「いや、お兄ちゃんにとっては何より気になるところなんだが。あ、今の八幡的にポイントーー」
「いや、低いから」

一行ずつあけたほうが読みやすいよ

「まあ、そういうわけで、小町はお兄ちゃんの14日の戦利品の開示を要求しまーす。」
「開示って、別に今まで隠したこと無いんだが。」
「ウン、隠す物自体なかったもんねー。」
「今年も無いかもしれんだろ。」
「お兄ちゃんほんとにそう思ってる?」
「・・」
「とにかくっ、14日は帰ってきたらお兄ちゃんの持ち物検査をしますのでそのつもりで。それじゃあ小町もう

出るね。行ってきます。」
「ああ、俺もスグ出る。いってらっしゃい。」
「あ、そだ、お兄ちゃん。小町を気遣ってくれてるのは嬉しいんだけど、やっぱりソレ付けなくてもいいよ。小

町もちゃんと予防してるし。うがいとか。」
聞き用によってはいやらしいセリフだったな。いや小町相手にイカンイカン。
「いや、万が一ってこともあるからな。」
「んー分かった。でも不審者に間違われないようにしてね。今のお兄ちゃん暗いところで会ったら小町でも怖い

。」
「うっせ。」

今年のバレンタイン終わってるけどな

>>5
サンクス
やってみる

そう、数日前から俺はマスクをしている。

2月に入り小町は第一志望のウチの高校を含め、3つの高校を受験する。

併願の滑り止めの入試は明後日、間違っても家に風邪を持って帰る訳にはいかない。

2月に入った時点で両親は外出時は基本マスク装備だ。

で、本命のうちの高校の受験はバレンタインデーの翌日から。

小町が心の余裕が無いというのも仕方がないだろう。

小町からもらえないというのはちょっとさみしいが、第一の志望校に受かって欲しい。

何より俺が一緒に学校行きたい。

今年は仕方がないか。親父もスゲー落ち込むと思うが。

>>7
時系列は10.5のフリペ以降ということで

通学途中、通り過ぎる人に2度見された。

小町の心配していたことがコレである。

当たり前だがマスクというものは顔の下半分を隠してしまう。

それマスクは刑事ドラマでも犯人役のマストアイテムと言っていい。

おまけに俺のしているマスクは立体的に整形された結構ガチなマスクだ。

ウイルス99.7%カットとか嘘か本当かわからんが高性能を謳って結構なお値段のするやつ。

そして極めつけは俺は目付きが悪い。

ウン、まあ不審者だな。

自分で鏡を見てもそう思うのだ。他人がそういう印象を受けても仕方がない。

まあ小町の為だし。赤の他人の目なんか気にしてられるか。

でも職質とかされたらさすがに立ち直れないかもしれない。

「あ、ヒッキー、やっはろー。」

「うす。今日は驚かないのか?」

「あはは、やだなヒッキー、まだ根に持ってんの。」

下駄箱で朝会った時には毎回元気よくこの意味の分からない挨拶をくれる由比ヶ浜だが数日前はじめてマスクをつけて行った日には普段より1文字多かった。

「わ!、あ、ヒッキー、やっはろー。」

こんな感じ。ちょっと傷ついた。

それでも由比ヶ浜は風邪でも引いたのかと体調を気遣ってくれたが、放課後部室で俺の顔を見た雪ノ下は不思議なことに驚きはしなかった。が、久しぶりに毒舌を炸裂させた。

「あら、今日学校に不審者が出たなどと言う噂は耳にしなかったのだけれど・・。」

こんな感じである。

ついでに最後まで風邪かとも聞かなかった。心配しろよ。

まあ雪ノ下のことだ。小町の受験の事を察したのかもしれないが。

でも雪ノ下とのああ言うやりとりは久しぶりだったような気がする。

「じゃ、先行くわ。」

「いっしょにいこうよ。」

人目が多いところではなるべく距離をとったほうが良いと思っている俺だが、最近コイツはどうもその距離を詰めてきているように感じる。

仕方なく二人で、少し距離をおいて教室へ向かった。

朝、こいつと挨拶を挨拶を交わせるのは嬉しい。

あの元気な声を聞くと、一日を少し前向きに過ごせる気がする。

だからできれば校門や下駄箱で会いたい。

教室では人目がありすぎる。俺に好印象を持っていない人間の目が。

昼休み昼食を終えて教室に戻ると一色が来ていた。

2月に入ってからは、俺は毎日教室を出て昼食を取るようにしている。

別に教室に居づらい訳じゃない。

風邪をもらわないようになるべく人混みにはいないように心がけてるのだ。

そう、小町のため、小町のため。教室に居づらい訳じゃないから。

一色が教室まで来るのは珍しい。

葉山らと談笑しているからサッカー部関係の用事があったのだろうかと思ったが、チョコレートがどうのと聞こえてきた。

面白くなさそうな三浦を由比ヶ浜がなだめていた。あいつももう部室から帰ってたのか。

進路選択の一見以来三浦はずいぶん丸くなったようにみえる。

あのやりとりも友達同士がネタでじゃれあっているよなものなのかもしれない。

午後の授業までもう少し時間があるのでいつもどおり机に突っ伏す。

普段のように寝たふりをするわけでは無い。考えたいことがあるのだ。

小町の受験に集中しなければならないのだが、どうしても頭のなかから消せない心配事がある。

その件のタイムリミットは小町の第一志望、この総武高の入試日より速かったりする。

つい先程耳に飛び込んできたチョコレートという単語

そう、2月14日バレンタインデーのことだ。

今朝の小町とのやりとりが思い出される。

当たり前だ。クリスマスもバレンタインも必ずやってくる。

そしてそれらは一大消費イベントなのだ。

新聞のチラシも、テレビののCMにも、電車の吊り広告も、コンビニのガラス窓も、これらのイベントの文字が踊る。

俺が本当のひきこもりであっても、気付かなかったなんてことは絶対に有り得ないだろう。

俺にとっても全くの無関心ではいられなかった。

男子であれば期待せずにはいられないイベントなのだ。

気になる女の子がいるなら。

中学の時、の苦い経験によって、勝手に期待して、勝手に裏切られて、かってに失望してた俺は人と関わることをやめ、すべてを諦め、期待することをやめた。

高校に入学しても一人だった俺の前に二人の少女が現れた。

雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣だ。

変わることを否定していた俺はこの二人と交流することによって少しづつ変わっていった。

勢いも合ったのかもしれないがこの二人には自分をさらけ出してしまったことまであった。

二人と知り合ってまだ一年にもならない。

それでも最初に合った頃からこの関係は少しづつ変わっていった。

不思議な関係だと思う。今の関係はどう表現すればいいんだろうか?

一人は友達以上の何か、一人は友達以外の何か。

この思い自体がすでに俺の”期待”であり”妄想”だ。

彼女ら二人にかってに押し付けているものにすぎない。

彼女ら自身が実際のところどう思っているのかはわからないのだから。

それでも二人に対して”期待”することがやめられない。

以前は傷つくことを恐れて、下らない事だと切り捨て、いや、切り捨てたふりをしてきた事を。

決して俺がポジティブに変わった訳ではない。絶望を恐れ無いほど強くなったわけでもない。

至極簡単な理由だ。

俺が被るリスクに比べて、比較にならないほどリターンが大きく魅力的だということ。

ああ、またひねくれた考え方をしている。

ただ純粋に欲しいのだ。大事にしたいのだ。おそらく生涯、こんなにも思うことは現れないだろうというほど。

本当にまた俺が勝手に押し付けているだけだとしたら、もう二度と立ち直れないほどの絶望を味わうことになるのかもしれない。

だからその時は倒れる。倒れたままでいいと思う。

そして今度は絶望することではなく、このまま二度と立ち上がれないかも知れない事を恐れよう。

とりあえず”恐れ”を棚上げし、先送りするのだ。

それは会長選挙の時に間違い、二度としないと誓ったことだが、だけどいいだろ。

これは俺のまわりで起きていることじゃない。俺の心の中で起こっていることなんだから。

さて、その俺の”期待”、”妄想”だ。

二人の少女の一人、由比ヶ浜結衣は俺に好意を寄せてくれていると思う。おそらく。

俺も好意を抱いている。魅力的な女の子だ。彼女と過ごす時間が本当に心地よいと感じる。

そしてこんな俺に対し、彼女はゆっくりと距離を縮めてきてくれていると感じてる。

もちろん本当の彼女の気持ちはわからない。俺がかってに抱いた”期待”かもしれない。

俺は行動力はある、あったのだ。もしなければ傷ついて無かっただろう。

彼女との関係は自分が一歩踏み出せば変わるかもしれない。

こんなにも欲しいものなのだ。だから傷つくことを恐れずに告白するだろう。

俺の前に現れたのが彼女一人であれば・・。

もう少し時間がほしい。

ただこの関係は、俺が望まなくとも簡単に壊すことだって出来る。

彼女がそう望めば。

例えば一色が葉山に飛び込んだように。

もう一人、雪ノ下雪乃。彼女との関係性は表現しづらい。

友達になってほしいという申し出は断られた。しかも2回。共に即答だった。

友達以外の何か、赤の他人ではないと思う。

似ているところがあるといえば有り、無いといえば無い。

由比ヶ浜と比べると一定の距離があるとは感じる。

だがその距離が近くなったり遠くなったり、判断が出来ない。

彼女に強く憧れる。ああありたいと思ったこともある。そして強く惹かれている。

彼女について知らないことが多すぎる。だから彼女のことを知りたい。

”もっと酷いなにか”とは何だ?俺は何に気づいてないんだろう。

彼女は俺に何から””助けて”欲しいのだろう。問題を抱えているならばそれを解き明かさなければ。

最近になってはじめて本当に小さな一歩を踏み出した。

進路の選択、文系か理系か?二者択一。

普通の友人なら、いや友人ではなくても簡単に話せる内容でしかないように思える。

それでも答えてくれたことがとても嬉しかった。

今の彼女はどこまで許容してくれるのだろうか?

知らないことが酷く怖い。

そして、全てを知らないと、結論は出せない。出す訳にはいかない。

俺の欲しい”本物”とは、彼女たちの中にある何かかも知れない。

こう思っている事自体が、俺の勝手な”期待”、”妄想”でしか無いかもしれないのに、

それでも二人との関係を考えずにいられない。

だから今俺は、恋愛至上主義のこの国で定期的に行われる、男女の関係を変えるきっかけとなるイベントが酷く怖い。

以前とは別の理由で目を背けてしまいたい。

いっそなくなればいいと思う時もある。

時間がかかったとしても、3人で過ごすあの部室の中で、

彼女らとの距離を近づけていくことは出来るのではないか?

今は目前のバレンタインデーのことを考えなければならない。

あと一週間。時間は多くない。

今は小町の入試を控えただでさえやらなければいけないことが多い。

せめて一人の時間は二人のことを考えよう。

そんなことを考えている。

「せんぱーい」

うわぁ。

微睡んでいたというわけではなかったが一気に頭の中が現実に引き戻された。

一色の声だ。

なんでこっち呼ぶんだよ。いや俺のことじゃない、俺のことじゃない、俺のことじゃない・・

と言うか俺今ビクンってなったかもしれない。

「なーに寝たふりしてるんですか先輩。」

軽く耳を掴まれた。

やっぱり俺のことだよね。っていうか耳弱いからやめて。

仕方なく顔を起こして一色の方を向くと

「うわっ、何ですかそれ。怖いです。まんま不審者じゃないですか。」

あーハイハイ。マスクの事ですねー。

あとお前も、体調悪いのかとかそういう心配はしないのな。

「バカ、なんで教室で普通に話しかけてんだよ。」

思わず小声で話しかける。一色とは目を合わさない。昼休みの教室だ。周りに人が多い。

「はあ、なんですかソレ?」

俺の言い方がマズかったのかちょっと怒ったような声だ。

確かにあの言い方じゃ「話しかけんな」ってとるよな。

「いやそういう意味じゃなくてだな」

言い淀んで、由比ヶ浜の方をちらりと見、また自分の机に視線を戻す。

一色とは視線を合さないように。

「俺は評判悪いからな。お前も妙な噂立ったりすんの嫌だろ。」小声で続ける。

選挙の推薦人の時の件といい、こいつのキャラ同姓からは受けが悪そうだしな。

小町も女子の場合半、分の女子は敵とか言ってたし、花火大会の後の相模のような奴だっている場合もあるだろう。

一応可愛い・・・・、いやいや、初めて出来た後輩だ。

俺のせいでこいつに嫌な思いをさせるのは申し訳ない。

チラリと由比ヶ浜を見た一色はこっちを振り返って言った。

「先輩ってそういう気の使い方するんですねー。自意識過剰なんじゃないですか?だいたい別にそんなの気にする必要ないのに。」

その時教室に携帯の着信音が響いた。思わず音の方を向くと川崎と目が合った。

どうやら鳴ったのは川崎の携帯らしい。川崎はワタワタと慌てて携帯を取り出し耳に当てる。

しまった。携帯の音は不意打ちだった。

正面に顔を戻した時一色と目を合わせてしまった。

一色は呆れたような顔をしていた。

「ところで今日の放課後なんですけどー。」

「断る。」

「まだ何も言ってないじゃないですか。そんな事言わずに聞いてくださいよー。そうだ、先輩にもチョコレートあげますから。」

向こうでの話なんとなく聞こえてたけどさ。俺さっきお前とチョコレートの話してないよね。

いきなりその話題、脈絡ないだろ。まあ分かるけど。2月だし。

「いらん。お前に何かもらったらすげー高いもんに付きそうだ。」

「えー。でも先輩もらったことないじゃないですかー。手伝ってくれてるお礼と言うか報酬の前払いというかー。」

無いけど知ってるように言うのやめてくれない?

あと、こいつ最近本音と建前が逆になってないか?後から報酬って言ったぞ今。言い直すんなら順番考えようね。

というか最近キャラ隠す気がないように思えるんだが。

確かに葉山もそっちのほうが好きだろうとか適当なこと言ったかもしれんが。

だいたい前払いってやっぱり働かすつもりなんじゃねーか。

「なんで分かるんだよ。ま、いいんだよ。俺は毎年世界一かわいい娘からもらってるからな。」

「妹とかってオチでしょ。」

「うっ」

なんでコイツ小町のこと知ってんだ?

「何にせよしばらくは絶対手伝いとか無理。今回ばかりは譲れん。」

「えー、なんでですか?」

「その可愛い妹がもうすぐ入試なんだよ。明日と明後日もな。

飯とか俺がやってるから部活も早めに上がらせてもらってんだ。だから無理。」

「あ、それでマスクなんですね。まあ今日のはそんなに大変じゃないからいいか。」

じゃあ声かけんなよ。

「そういえば先輩の妹さんってウチに来るんじゃなかったんですか?」

「本命はそう、明日のは滑り止めだ。というかお前なんで小町の進路知ってんの?」

「前に言ってたじゃないですかー。しかもなんかえらくカッコつけてー。」

「そうだったか?つーかカッコつけたことなんて無い。俺がやっても痛いだけだ。」

「いやー、結構やってると思いますよ。」

「なあ、あんたちょっといい?」

会話が切れた時、川崎が割り込んできた。こいつがこういうふうに話しかけるのは珍しい。

「ん、なんか用か?」

「悪い、聞く気はなかったんだけど聞こえちゃって。明日の試験って総北高?」

「ああ、ってお前んトコもか?」

「あ、ああ。」

「何、小町追いかけてんの?、ストーカーなのお前の弟?」

ぱっと見怖い印象のコイツだが、根っこはいいやつなのはわかっている。

こんなのは下の子を持つお兄ちゃんお姉ちゃんの掛け合いだ。小町は渡す気無いけど。

などと考えていたが、いつもの鋭い視線と低い声は返ってこなかった。明らかにおかしい。

「なあ、川崎、何かあったのか?」

「大志が熱出したって連絡があって、朝はそんなでもなかったんだけど。

明日試験なのに・・。そういう場合って、ほら、追試とか何かできるんだっけ?インフルエンザとかじゃなくても・・。」

入試で追試してどうする。もう目に見えてオロオロしてる。

体調管理失敗したのか。

「落ち着け川崎。他には受けてないのか?」

「大志が受験料がもったいないとか、通学にお金がかかるところ遠慮したりして、ウチと総北だけなんだ・・。

総北は判定余裕だったし・・。」

俺は妹を愛する心は負けてないつもりだが、お兄ちゃんスキルの方は川崎のほうが高いと評価している。

あ、おねーちゃんスキルかこいつの場合。おにーちゃんでも通りそうだけど。

こいつはは姉弟多いし、料理とか裁縫はすごそうだもんな。

そいつらの面倒見ながら自分の学費の心配までしてた。

相当良いお姉ちゃんなんだよな。

負けてるばかりじゃ癪だ。俺の偏ったお兄ちゃんスキルの一つを見せてやろう。何より気持ちはわかる。

財布の中からとあるメモを取り出す。これなら絶対肌身離さず持っていられる。

ウンお兄ちゃんスキル高い。

ベネ
モールトベネ

「総北はそういう場合予備日じゃなくて2次試験に回されたはずだ。基準までは問い合わせてないけど、

平塚先生によればウチのの場合だと診断書あれば内容によって大丈夫みたいだ。確認してみろ。」

「それが無理でもまだ2次試験で願書出せるとこはあるぞ。海浜とか弁展高も大丈夫だ。

海浜はちょっと偏差値高めだけど、どっちもガラの悪い学校じゃない。」

小町は海浜になんて絶対行かせたくないけどな。

ノートの端を破って、メモからいくつかの情報を書き出して川崎に渡す。

高校受験は小町の人生の大事だ。あらゆることを想定してリスクを潰してある。

最後の入試日までの救急病院の電話番号まで把握している。

通学圏内で2次試験を受けれる学校、その連絡先、有力なのは願書まで取り寄せた。

そして小町を信じてないみたいに思われるから秘密にしている。

八幡的に非常にポイント高いと思うんだが、実際どう取られるかわからないので今のところは言う気はない。

俺はここぞとばかりに俺のお兄ちゃんスキルの成果をまくしたてた。

一色はちょっと引いてるみたい。

「やっぱあんたってすごいな。」

だが川崎には普通感心されたようだ。恥ずかしいじゃねーか。ちょっと照れる。

「ハイハイ。シスコンってんだろ。そのとおりだよ。」

「い、いや、普段からって言うか・・」

「は?、いいから早く迎えに行ってやれ。平塚先生には伝えといてやるよ。家に誰もいないならお前多分明日も休むだろ。」

「あ、ああ。多分そうすると思う。」

川崎が携帯を取り出しながら言った。

「な、なあ、さっきの病院とか学校のことか、メ、メールしてもらっていいか?」

「あーー、電話でいいか?書くことかなり多くなるからな。長文スマホで打つの苦手なんだ。」

「で、電話っ。」

「うわー、先輩さらっと番号聞き出しますねー。」

「あ、そうじゃなくてだな。すまん川崎、電話はマズかったか?」

「い、いやいいけど。」

じゃあとスマホのアドレス帳を開いて自分の番号を見せる。

「コレ、1回鳴らしてくれ。落ち着いたら電話くれりゃいい。その時教える。」

「あ、ああ。」

「海浜とかの2次の願書のは予備持ってきてやるよ。まだ期限までは余裕があるから焦らなくても大丈夫だ。いいから早く行ってやれ。」

「あ、ああ、ありがと」

これは惚れますわ

川崎が席に戻ろうと背を向けた時、ふと思い出した。

「そうだ川崎。」

「何?」

鞄の中からマスクの箱を取り出す。もう開封はしてあるがまだ3枚残ってある。

結構高いんだけどなコレ。だが姉弟心配する気持ちは痛いほどわかる。まあいいか。

「やる。そのまま病院行くだろ。」

受け取った川崎はポカンとした顔をしていた。なんだよ、俺がこういうことすると変なのかよ。

「この時期受験生の弟がいるのにマスクしないなんてブラコン失格だろ。」

「だ、だからブラコン言うな。・・でも、あ、ありがと。」

さっきからありがとばっかりだな。

川崎が帰る支度をし始めたので自分の席に戻ると一色がジトッとした目で見ていた。

面白い


「いやー、でもいきなり女の子の電話番号聞くとかありえなく無いですか?」

「電話もメールも似たようなもんだろ。滅多に送らないから打つの苦手なんだよ。」

平塚先生みたいな長い文章スマホで打つとか無理。

というかあの人慣れすぎだろ。恋人いないってのに普段誰とメールやりとりしてんの?

「えー、電話って意外とハードル高いですよ。用事が無いのにかけたら変じゃないですか。」

片付けを済ませ教室から出ていこうとしていた川崎が入り口でピタリと止まった。

「メールなら特に用事が無くても送りやすいしー。」

なんか一色悪い顔してない?

「そんなもんか。まあ確かにメールのほうがいいかもな。」

「ねー、そうでしょ。」

「メールのほうが気づかなかったって言い訳しやすいからな」

「対応しないことが前提なんですね。」

いろはすー


   ̄ヽ、   _ノ
     `'ー '´
      ○

       O      と思うハゲであった

                   ___

              o,.,   ̄      `丶、
            .〃;.; ;  O          `、
            /;i;i;.; ;  °            ヽ
           j!;i;i;i;.;                `、
          .j!;i;i; ;                  V
.        , -v{功テえ三≧k j  i            i}
          .i;i;i;i∧;{i ___  ヽ〉-- 〃ヌニ≠ェァ;,、_ /〉
         {i;i;i;i;i;i;ム ‘、 ̄≧ j.r-v{!   __   `v身≧"
        i;i;j!;i;i;i;.;丶 _  .ノノ  `ム、´⌒`ー /;アー7´〉
.          v;i;i;i; ;´       ,ァ    丶`_ ノ/ / y゜
.         j;i;i;i;.;     ィ(  {!    ヽ,       i}¦
.        {;i;i;.;    /‘≠ー弋__. ヘ        iノ
         :;i;i;.; ; }/ ____   ̄    \     |
          .人;i;i;i;.; ト 卞、カv ̄T++=a、 〉    j}
   .__/  ∧;i;i;i;,ミ 、    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ j〕     /^
      \   ∧;弋ミ              /
        \  へ`,,ヾ;.;,           ィ爪
            ヽ  へ、           . ´/  ト、__
             }     >; ,,__ーァ ´  .イ    i \ ̄\
                       〃/⌒ヽ.j   \  \

川崎がこっちを見ている。もうお礼なんていいってのに、あいつこっちの会話が切れるの待ってたのか?

「どうした?早く行ってやれよ。」

「あ、ああ、また・・、電話する。」

「おう、大志、大丈夫だといいな。」

「ありがと」

川崎の足音が遠ざかって行った。

「先輩ってタチ悪いですよね。・・・・・・・葉山先輩より(ボソッ)」

なんで?

「ということで先輩、私ともアドレス交換しましょうよ。」

「断る。」

「即答ですか。信じられないですね。こんな可愛い後輩がアドレス教えて上げるって言ってるんですよ。」

こいつも知られたらいけない人の一人だ。

あとは平塚先生とか陽乃さんとか。着拒したいけど小町経由で連絡取りやがる。それ反則だろ。

「でも実は知ってるんですけどねー。」

「は?」

「フリペの時、先輩の携帯お預かりしたじゃないですかー。」

え?、あの時?、いや、あれお前が取り上げたんだろ。まさかあの時盗んだの?

慌ててスマホのアドレス帳を確認する。一色の名前は見当たらないが・・。

「やだなー。私のを登録してるわけ無いじゃないですかー。

さっき交換は嫌だって言いましたよねー。私のは教えませんよ。」

えー、一方的に連絡先把握するとかお前どこの悪徳業者だよ。

いや、まだ大丈夫だ。コイツには小町経由の裏ルートはバレてない。

1回目は仕方ないとして、後は着拒とブロックでどうとでもなる。

「そういえばさっき言ってた小町ちゃんって、クリスマスイベントの時来てた娘ですよねー。」

お前に紹介はしてないよね?。まさかお前ソレまで抜いたの?。

一色はフフンと自分の携帯を口元に当ててウインクをした。

いや仕草は可愛いけどさ。それ犯罪だぞ。

個人情報保護法はもっと厳しく取り締まってもいいよね・・・。

そんな話をしていると予鈴がなった。

「それじゃ。入試が終わってからまた手伝ってくださいね。卒業式の準備とかあるんで。」

「いや、だから手伝うとは一言も言ってないんだけど。」

「葉山せんぱーい、しつれいしまーす。」

こっちの言うことは聞く気はないらしい。鼻歌を歌いながら教室を出て行こうとする一色がドアの前で立ち止まった。

「あ、先輩、逃げたら電話しますからね。」

俺はため息とともにうなだれた。


放課後いつもどおり部室へ顔を出す。

今月に入ってからは雪ノ下たちより少し早く帰らせてもらっている。

本当は休んで帰るべきなのだろうが、小町はいつもどおりの時間に夕食をるほうがいいと遠慮した。

普段は小町がやっている買い物と料理の時間を見計らって帰らせてもらっている。

俺としても少しの時間でいいから二人と話して帰りたい。

「そういえばヒッキー、小町ちゃんの入試って明日なの?」

「ああ、知ってたのか?」

「あはは、聞いてたわけじゃないんだけどいろはちゃんと話してるの聞こえちゃって。」

「昼休みに一色さんに合ってたの?」

「葉山に用があったんだろ。なんか教室に来てた。」

「そう。それで小町さんはどうなのかしら。頑張っていたみたいだけど。」

「まあ明日のは多分大丈夫だろう。ウチのは15日からだからもう少し先だな。」

「15日からなんだ。あ、ひょっとして昼休みいろはちゃんの用事って入試の手伝いとかじゃなかったのかな? 」

「それも聞いてたのかよ。」

「いやヒッキー達普通に目立ってたし。」

まじかよ

「一色さん、また何か雑用を押し付けようとしてるのかしら?」

「さすがに断った。小町の受験が目下俺の最優先事項だ。」

「あはは」

「それは小町さんの用事がなければ手伝う事はやぶさかではないということかしら。」

痛いところを。でも会長に押した弱みはあるしなー。

「あ、そういえばヒッキー、卒業式も手伝って欲しいとか言われてたよね。」

「はぁ、そろそろ自立を促してもいいと思うのだけれど。」

「いや基本的には手伝う気はないから。」

「基本的には、ね。」

「あ、いろはちゃんチョコレートあげるから手伝ってっていってたよね。」

しまった。今その話題はマズイ。まだ何も考えがまとまっていない。

まだ一週間あると思って俺は完全に油断していた。

「チョコレート?バレンタインデーのことかしら?」

「う、うん。隼人君と戸部くんにあげるとか話してたかな。それと・・、ヒッキーにも。」

「そ、そう。」

「ね、ねえ、ヒ、ヒッキーはもらったことあるの、チョコレート。」

話が広がってしまう。由比ヶ浜はこういう話題には必ず食いつく。できれば話を変えたい。

「俺は毎年世界一かわいい娘からもらっている。」

「あー、ごめん。それも聞いてた。」

結局全部聞いてたんじゃねーか。

「その、どうなの?」

「毎年小町からの1個だけだ。聞かなくてもわかるだろ。」

「そ、そうなんだ。」

「一つ?男の子の母親は大抵子供に与えるものだと思ったけど。」

与えるってお前、他に言い方ないのか。

「小町がくれるようになってからはもらってないな。親父には渡してるみたいだが。」

「そう。じゃあ小町さんにとっても母親から引き継いだ業務でしか無いということかもしれないわね。」

「それやめろよ。ほんとにショックだから。」

「あはは、ヒッキーと小町ちゃん仲いいもんねー。じゃあ毎年楽しみでしょ。どんなのくれるの。?」

「いや、今年は受験で忙しいからあげないって・・、今朝言われた。」

「なるほど。その上優先度が高い業務では無いということね。」

「オイ。」

「あはは。」

「ねえねえ、じゃあ、ゆきのんのバレンタインデーはどうなの?」

「どう、とは?」

「いやー、毎年どうしてるのかなーとか。」

「別に何もしてないわ。それにあれは日本独自の習慣みたいなものよ。

実際始めて広めたのは製菓会社だったはずね。私も海外にいた時は聞いたこともなかったわ。」

ほら小町、こいつやっぱり言っただろ。

「えー、じゃあ誰にもあげたりしないの。」

「昔は父さんに渡していたことはあったけど、今は渡してないわね。」

「えー、ゆきのんつまんないよ。それに普通はお父さんには毎年上げるもんだよ。」

「そうか?小町もかなり適当だぞ。一応渡しちゃいるけみたいだけどな。」

「それじゃあやっぱり小町さんにとっては適当にすませる業務なんじゃないかしら。」

「フフン。小町はオレと親父には別のチョコを用意する。オレの方が明らかにグレードが高い。」

「はあ、そこしか自慢するところがないのね。でも小町さんがそういう差をつけたりするのは意外ね。」

「あいつは意外と計算高いぞ。親父には幾らのもの渡してもリターンは同じだからな。

なら投資額は少ない方がいい。」

「り、リターン?」

「この場合はホワイトデーのお返しのことでしょうね。で、そのリターンとは何なのかしら?」

「5千円だな。」

「お金なんだ・・。」

「本当にリターンなのね。」

「ま、まあでもやっぱり、ほらこの時期のチョコって、どんなものでもなんか特別ーって気がしない?」

「まあ、今年は特別だな。毎日のように買ってる。」

正しくは買わされるだけど。

「そ、そうなの?」

「ああ、合格菓子。」

「あはは、そっちか。ヒッキー小町ちゃんに甘いからなー。」

「合格菓子?」

「そ。お菓子の名前に”合格ー”とか”受かるー”とか縁起のいい言葉をくっつけてたり、

あ、この時期しか買えな い赤とかピンク色のがいっぱいあるんだよー。」

「受かるって縁起用語なのかよ。それに説明下手すぎるだろ。雪ノ下、一個でも理解できたか?」

案の定、首を傾げて考えている。今の俺には、こういう話になる方が都合が良い。続けざまに補足する。

「中身は大抵同じだけど商品名の一部に1,2文字足したり入れ替えたりして、

合格に関連する言葉にするんだよ。そうだな、たとえば・・」

そういやこいつジャンクな菓子の知識なんてどの位あるんだろうか。

サイゼのドリンクバー使いかた知らなかったしな。

そうだ。俺は彼女についてこんなことすら知らないのだ。

なるべくメジャーな菓子の名前を頭のなかで検索する。これなら知ってるのかどうか・・。

「”うカルピス”なんてのがあったな。ちょっと捻ったもので願いを叶えるから”カナエルコーン”なんていうのもある。」

よりジャンクな”うカール”は知らないかもなとのチョイスだったが、雪ノ下の方を見ると、窓の方に顔を背け 肩を揺らしていた。

いや、そんなんでウケられても。

数秒で居住まいを正して、

「なるほど。それじゃあ赤とかピンクとか言うのはどういうことなのかしら。」

と質問をつなぐ。笑ってるのバッチリ見たからな。

「えーと、なんかかわいいっとか、おめでたいとかそんな感じ。」

「あーほ。まあめでたいってのは間違っちゃいない。赤というより紅白だな。

ピンクは桜の色だ。合格のこと サクラサクとか言うだろ。

そういう名前だけ変えたんじゃないやつは中身も変えてるのが多いな。

味は大体いち ごとかなんだが、物によっては桜の香りつけてるようなものもある。」

「ああ、なるるほどそういうことね。ずいぶん詳しいのね。」

「小町への差し入れでほとんど制覇したからな。その季節しか買えないもんってあいつ喜ぶし。」

「ふふ、いいお兄さんね。」

「別にどこの家でもやってるだろ。しょーもないゲン担ぎだよ。家も今日の夕飯はトンカツにするつもりだしな 。」

「あー定番だよね。ゆきのんトンカツの意味はわかるよね。」

「当然だわ。なにかバカにされているように聞こえるのだけど。ところであなた揚げ物なんてできるの?」

「さすがに無理だから買って帰るよ。やれないことはないかもしれんがかえって小町が心配しそうだ。」

「ふーん、あ、ヒッキーの時は小町ちゃんが作ってくれたの?」

「ああ、チキンカツだったけどな。」

今度は2人共声を殺して笑っていた。

あ、やっぱりそういう意味だったんだね小町。

「そうだゆきのん。私ゆきのんと友チョコしたい」

「友チョコ?」

「うん。女の子の友達同士でチョコを贈り合うの。」

「何の意味があるのかわからないのだけれど?それこそ製菓業界の販促の類ではないかしら。」

また言った。

「ま、まあまあゆきのん。こういうのは楽しまないと。

この時期じゃないと買えないようなカワイーのとか綺麗 なのとか見てるだけで楽しいのがいっぱいあるんだよ。一緒に見にいこーよー。」

「か、考えておくけれど、その、由比ヶ浜さんの交友範囲を考えたら、あまり大勢と交換するのは大変なんじゃ ないかしら。

ある程度親しければ男子の友人にも配るものなのでしょう。ほら予算とか。」

「あはは、実は今年は自分で作ってみようかなーなんて・・。

あ、ほら、ゆきのんにクッキーの作り方とか教え てもらったし、私だって少しは、その・・、そ、そう、それなら安くつくし。」

「まあチョコレートなら由比ヶ浜でもなんとかなるかもな。あんまり難しいところ無いし。」

「酷い言いかただし。ていうかチョコレートってどうやって作るの?」

やっぱそこからかよ

「チョコレートの場合、ゼロから作るのは現実的ではないから”作る”と言っていいものかわからないのだけど 、

市販のチョコレートを湯煎して溶かして好きな型に入れて固めるということならできるかしらね。

どちらかと いうと形を変えるという感じだけど。」

「ゆ、せん?」

期待通りの反応だな、オイ

「コホン、でもね由比ヶ浜さん、日本のお菓子というのは世界的にも非常に高い水準なの。

チョコレートにおい てもそれは例外ではないわ。

一度溶かすような手間を加えても風味が落ちるだけであまり意味がないと思うわ。 」

雪ノ下のやつ、説明すんのが面倒くさくなったな

(アカン)

「うーん、でもただ買うだけってのもちょっと味気ないというか・・。やっぱり意味ないかな?」

「そうね・・、あえて手を加えるとすれば、今の時期ならスーパーにも様々なトッピングが売っているから

そう いうものを使えば簡単に見栄えを良くすることはできるわね。

それだけだと味自体はほとんど変わらないからチ ョコレートにナッツやドライフルーツを混ぜたりするのも良いかしら。

好き嫌いはあると思うのだけれどリキュ ールに漬けた物を使えば大きく風味を変えることができるみたいね。

あとは、そうねホワイトチョコでメッセ・ ・文字を書くとかかしら。」

「・・・・・・。ゆきのん詳しいね。」

「い、いえ別にそういう訳ではないのだけれど。」

「で、でもめっせー   」

「て、手作りというならチョコレートそのものを作るのではなくて、素材として利用してはどうかしら」

「素材って言うと?」

「そ、そうね。例えばケーキとかクッキーにいれるとか・・。」

「クッキー・・・。それいいかも。クッキーなら作ったことあるし。」

「なあ、由比ヶ浜だぞ。どんどんハードル上げてどうするんだ。」

「ヒッキーうるさい。あ、でもクッキーだとお返しとかぶっちゃうかも。あー、貰えるなら私は別にかぶったり とかー、何でも、いいんだけど・・」

「そうね。確かにホワイトデーのお返しといえばクッキーが無難で一般的といえるようね。

他にもマシュマロや キャンディーが一般的みたいなのだけど。

ソースが不確かなのだけど、それぞれ贈る品物に意味があると言う場 合もあるようね。キャンディーだとどうだとかそういうのが。」

「やっぱりゆきのん詳しくない?」

今おまえソースっていったよね、それ確実に調べてるだろ

「い、いえ、そういえば最近はお返しは別に食べ物には限らないらしいし、あまり気にする必要は無いのではな いかしら。」

「食べ物じゃないってどんな?」

「そうね。お菓子と同額程度の返礼で趣旨に即した品ということであれば・・・・、意外と難しいわね・・・。」

同額とか考えるのは雪ノ下らしい。俺も興味ある。

だがそんな物より、今は特別な意味を感じさせない、そんなもののほうが知りたい。

「例えば・・は、花とか。」

「花・・、それイイ!」

いや無理。絶対無理。花とかハードル高いなんてもんじゃ無いから。

「ヒッキーは、その、家族とか以外の女の子に貰ったこと無いんだよね。」

結局話が戻ってきてしまった。あまりいい流れじゃない。

「しつこいな。あーそうだよ。何」

「いやぁ、ちゃ、ちゃんと、もらったらどうする?」

これは直球だ。もう少し時間がほしい。どう対応するのが良いだろうか・・。

「どうするというか、二人共くれるのか?貰ったら嬉しいに決まってる。」

するりと言葉が出た。自分でも気味悪いくらい軽い調子で。

普段の俺なら絶対にこんな台詞は言わない。こんな言い方はしない。

これは予防線だ。それに特別な意味を持たせないための。

ただ俺の一方的な期待、願望、妄想、根拠はそれしか無い。

そして何か予感が合った。俺の勝手な、気持ち悪いな根拠。その上での予感。

だが、これは葉山のやっていることと同じだ。

踏み込ませない事。葉山と俺の場合は理由は異なる。

俺が彼女のことを知り、彼女たちへふみこむまでの時間を確保する為に。

そのために相手には踏み込ませない。

葉山と俺、どっちがタチが悪いんだろう。一色の言葉がチラリと頭をかすめた。

葉山の場合は自分に向けられる好意を確信できている。実際そうなのだろう。

それなら他に取れる手段もある。

だが俺には、僅かであっても俺のただの妄想であるという可能性を排除できない。

だから俺にはこれしか思い浮かばない。

雪ノ下が怪訝な表情を向けていた。

「あはは、そ、そうなんだ。そりゃあ、ほら、部活仲間なんだし、絶対にあげるよー。あはは。」

これは残念な声なのだろうか?でも由比ヶ浜ならそうするだろう。別に変なことじゃない。

まだ雪ノ下の顔は気になる。でも大丈夫、変では無かったはずだ。

「そ、その、いろはちゃんもあげるって言ってたけど、ど、どうかな。あ、もちろん隼人君にもあげるとおもう ・・けど。」

「そこも聞いてたんじゃないの?アイツから物貰うとか怖いだろ。

ホワイトデーのことなんて考えたくもないね 。一色からとかいらん。お前らと小町から貰えれば嬉しいけど。」

完璧とは思えないが、それでも思惑は成功したと思っていた。だから簡単に言葉をつないだ。いつもの軽口のは ずだった。」

一瞬間があった。しっかりと聞くべきだった。次の問が真剣な口調だったことを。

「それじゃヒッキーは、もしいろはちゃんがくれたとしても受け取らないってこと?」

「まーその時考える、ほんとにどうでも~」

「それはダメっ!」

俺の言葉を遮りいきなり立ち上がってそう言った由比ヶ浜の声は厳しかった。

そして今度は消え入りそうな声でこういった。

「そういうの受け取らないとか・・しちゃダメだよ。」

「え、いや、一色だぞ。葉山のついでだろ。戸部とかサッカー部とか色々配るんだろうし別に俺がどうしようが 関係ないっっていうか。」

由比ヶ浜は黙ったままじっとこっちを睨んでいる。

「大体あいつにとっては、生徒会の手伝いの礼っていうか、雑用押し付ける為の報酬っていうか、そんなもんだ 。

そもそも全然労力に見合ってないけどな。」

この頭は屁理屈を並べるときだけよく回るのだ。

捻くれたいつもの調子の言葉が自然に転がり落ちてきてしまう。

何か間違ったのだろう。それだけはわかる。考えがまとまらない。

ほんとうに必要な言葉を絞り出すために考える時間がほしい。

だから喋りながら考えてしまう。悪循環だ。

真剣な由比ヶ浜の目を見ているのが怖かった。

その後ろの雪ノ下はどんな顔をしているのだろうか。

視界には入っているのに焦点を合わせられない。怖い。

「そういうことじゃないよ。前に言ったよね。人の気持ち、もっと考えてって。」

これはあの時、竹林で聞いたのと同じ言葉そして同じ声だ。

由比ヶ浜がはっと表情を変える。

いつもの明るい声の調子で、ところどころつまりながら、それでも捲し上げるよに早口で・・・

「あ、いやあ、ほら、いろはちゃんが何って言うんじゃなくて、なんて言うんだろ、ホラ・・・・・」

「ヒッキーにもさ、今じゃなくても・・、いつとか・・・誰とかわかんないけど・・・・・気持ちを込めてって のがあるかもしれないじゃん」

「あ、わ、わかんないよ。ほんとに何でもないってことだってあると思うけど・・・。」

「でも、ちゃんと、そういう事考えるよ様にして欲しい・・ってそんな感じ・・かな。」

最後に小さくつぶやいた。

「そういうものを貰うのって・・・怖い?」

図星をつかれた。どちらかと言えば鈍いほうだと思っていた由比ヶ浜に。

この二人から貰いたいと期待している。

反面、貰ったものに対して何か特別な意味を考えるのは怖い。

というより俺は貰ったら考えてしまうのだ。

特に今は、二人のことだけを考えてしまう。

他の人の事など考えている余裕など無いってほど。

「あ・・いや・・」

考えがまとまらない。言うべき言葉が出てこない。

間違ったという思いだけが頭の中を回る。

雪ノ下が椅子を引いて立ち上がった。

顔を見る勇気がない。

由比ヶ浜にさえ見透かされた。

雪ノ下にわからないはずはないだろう。

何時かと同じ、雪ノ下が嫌悪した行為。

こちらに近づいて斜め前に立つ。

その手にはティーポットが握られていた。

「お茶のおかわりは?」

返事を返す前に雪ノ下は俺の湯のみへ手を伸ばした。

いやどのみち声は出せなかったかもしれない。

少し屈んでゆっくりと紅茶を注ぐ雪ノ下はジッと俺の目を覗きこんでいた。

背後の由比ヶ浜には見えてないはずだ。

いつもと変わらない表情、真剣で、だが非難するような視線ではない。

お茶を注ぎ終わり、雪ノ下は一瞬目を閉じ、またこちらを見た。

その表情はとても穏やかで、そして優しかった。

ゆっくりと背を向け、窓際の机に戻りポットを保温する。

そしてこちらを向いた。

「比企谷くん。」

普段なら身構えるただろう。だがこの時は厳しい声ではなかった。

「あなたがこれまで女性に好意を持たれたことがあると、などと思っている人がいると思っているのかしら。?」

「由比ヶ浜さんが聞いたのだって確認ですら無いと思うわ。」

いつものヤツが始まった。

だが、なんだろう?普段とはどこか違うように感じる。そして長い。というか返答ができない。

「そのような惨めな思いをしてきたあなたに施しを~

基本俺への皮肉・悪態、そして注意、そんな言葉だ。

おそらく意図して由比ヶ浜に意味がわからないであろう難しい単語は使っていない。

難しいい回しを好み、それだけの語彙を蓄えている雪ノ下が。

そして問いかける言葉もあるのに返答をさせない。

それ力ずくではない。答えられない質問でもない。

ただなぜかできないのだ。会話術というのだろうか?

なんというか、うまい、そんな事を考えてしまう。

今俺は非難を、詰問をされなければいけない状況なのだ。酷く不謹慎だ。

ゆっくりと背を向け、窓際の机に戻りポットを保温する。

そしてこちらを向いた。

「比企谷くん。」

普段なら身構えるただろう。だがこの時は厳しい声ではなかった。

「あなたがこれまで女性に好意を持たれたことがあると、などと思っている人がいると思っているのかしら。?」

「由比ヶ浜さんが聞いたのだって確認ですら無いと思うわ。」

いつものヤツが始まった。

だが、なんだろう?普段とはどこか違うように感じる。そして長い。というか返答ができない。

「そのような惨めな思いをしてきたあなたに施しを~

基本俺への皮肉・悪態、そして注意、そんな言葉だ。

おそらく意図して由比ヶ浜に意味がわからないであろう難しい単語は使っていない。

難しいい回しを好み、それだけの語彙を蓄えている雪ノ下が。

そして問いかける言葉もあるのに返答をさせない。

それ力ずくではない。答えられない質問でもない。

ただなぜかできないのだ。会話術というのだろうか?

なんというか、うまい、そんな事を考えてしまう。

今俺は非難を、詰問をされなければいけない状況なのだ。酷く不謹慎だ。

雪ノ下は続ける。

相手を論破しようとする時のまくし立てるような言い方でもなく、

こちらの意見を挟ませないような一方的な物でもない。

そして、俺を見、由比ヶ浜を見、腕を組み、手でこめかみや額を抑え・・・そして表情を変える。

一つ一つは普段から彼女がよく見える仕草。

他の誰が見ても違和感は感じないはずだ。だがこれは一人芝居なのだろうか?

雪ノ下の表情はオレと目が合うたび柔らかくなっていく。

声も変わる。最近はたまに見ることができる、楽しそうに俺を罵倒するような声。

そして由比ヶ浜の方を向き、目を合わすたび、

どうしていいかわからない、そんな顔をしていた由比ヶ浜の表情が徐々に戻っていく。

たっぷり3分は話していただろうか。

そこから調子が変わった。俺を刺すような厳しい単語は使われなくなった。

由比ヶ浜の顔はすでにこわばってはいない。

なんだろうか?ワクワクしているとでも言うのだろうか?

雪ノ下の声はもう完全に楽しそうだ。

多分、俺や由比ヶ浜にしかわからない声。

「とは言え、経験がないということでは私にも当てはまることだから、知識が乏しいのは仕方ないの・・かしら。」

「そうね・・・特別な意味が無くても楽しむものであるということであれば経験として・・

それに小町さんの場合にかぎらず女性にとって大きなリターンを期待できる行事のようだしそこは魅力的ではあるわね。

投資を抑えるとするなら手作りというのは理にかなっているわ。

本来なら貰う側から主張するのはマナー違反なのだろうけど、

今回はあなたが先に要求したわけだから、私達が同じようにリクエストをしても構わない・・と考えるべきだと思うのだけど。

それでいいわよね?」

俺の返事など待たず更に続ける。

由比ヶ浜は声こそ挟まないものの、ウンウンと雪ノ下の言葉に頷いている。

「そうね。それなら・・。」

俺に向けたのは少し意地悪そうな顔、そして次に由比ヶ浜の顔を見た。

雪ノ下の顔を見てきょとんとしている?

それは多分、友達をいたずらに誘うような顔だったのだろう。

こちらに向き直った雪ノ下は笑顔でこういった。

「そういえば比企谷くんはジェラートが美味しいお店を知っていると聞いたのだけど、

そこへ言ってみたいわ。それでどうかしら?」

由比ヶ浜が飛びついた。

ああ、あの顔はそうだ、楽しそうなことに飛びつく前によく見せる顔だ。

「あ、あたしもそれがいい。」

二人は顔を見合わせ、同時に、ゆっくりとこちらを向いた。

とびきり意地悪な顔をしていた。

「あ、ああ、わかった。」


ああ、雪ノ下は俺を助けたのだろう。

俺の顔を、目を見て察したのだろうか?

決して彼女が好むやり方ではないはずだ。

そういうやり方を使ってまでおれに猶予をくれたのだろうか?

今の雪ノ下にとっては、俺達の関係は自分の信念を曲げてまで守りたいものなのだろうか。

全部、勝手な期待で想像でしかないのだが。

迷い、どこへ行けばいいかわからない俺の目の前に、一瞬で一本のレールを引いてしまった。

ただ進めばいいだけ、絶対安全な道をだ。


「ところで由比ヶ浜さん。今回比企谷くんへ食べさせるのにピッタリなお菓子があるのだけど。」

「ピッタリ?」

「そうね。生まれてはじめて妹以外の女性からバレンタインデーに物をもらうのだもの。

一生心につきまとう、いえ、心に残るものにして与えるべきだと思うわ。

そうね・・・・・、思い出ではないわね。・・・そう、トラウマかしら?」

トラウマ残るのかよ

「?」

「ただ作るのはとても難しいのだけれど・・、私も実際に作ったことはないの。由比ヶ浜さんさえ良ければ、一緒にどうかしら」

「でも私なんかで役に立てるかな?」

「今回は私も同じよ。少し練習をしないと難しいと思うの。それに比企谷くんがその時どんな顔をするのか・・」

クスクスと笑う。

「きっと楽しいと思うわ。」

もう意地悪を通り越して悪い顔だ。怖くはない。悪いのだ。

「なんかわかんないけど、楽しそう!」

「そうね、では一緒に作らない?」

どうやらレールの先にはとびきり危険な罠が待っているようだ。

もう降りることは出来ない。

やっぱり雪ノ下には敵わない。

結局雪ノ下で14日はいつもとおり部室でお茶をすることとなった。

二人が何かチョコレートの菓子を作って来てくれるらしい。

バレンタインデーという気はしない。

パーティのようなものだろうが、それでも雪ノ下がこういうことを提案するのは珍しい。

「比企谷くんはそろそろ帰らないと行けない時間ね。それじゃあ今日は私達もこの辺にしましょう。」

二人はこの後一緒に買物に行くことになったらしい。

お菓子の材料と、由比ヶ浜の話した見ているだけで楽しいチョコレートを見に行きたいと雪ノ下が誘ったからだ。

雪ノ下の方が由比ヶ浜を誘うのも珍しい。

今日は下駄箱をでたところでそのまま別れた。。

雪ノ下の背中に、心の中でありがとうとつぶやいてから自転車置場に向かった。

彼女に助けられた。多分そうなのだろう。

俺はまだ助けていない。

俺は彼女を助けなければならない。

それは彼女からの依頼だからだろうか。

何時、何処で、何から・・何もわからないけれど、その時には彼女のそばにいなければならない。

いや、単におれが助けたいだけだ。そばにいたいだけだ。

その時までそばにいることを許してくれたのだろうか?

情けないとは思うが、ありがたくレールに乗せてもらおう。

ホワイトデーまで何もしなくても良い。

ただ、小町には言えないな、そんなことを思った。

翌日も、その次も、奉仕部の空気は変わることはなかった。

何事もなかったかのようにいつもどおりだ。

よほど手のこんだものを作るつもりなのか、二人は毎日、俺と同じ時間に下校する。

どうやら毎日雪ノ下の部屋で料理を楽しんでいるらしい。。

放課後の部室では毎日のように、由比ヶ浜の、昨日は何を教わったと言う話があり、

雪ノ下によればどうやら由比ヶ浜の筋は悪く無いらしい。

14日、小町はすでに2つ入試を終えた。どちらも手応えはなかなかのようだ。

しかしあくまで本命はうちの高校。試験は明日、明後日の2日。

マスクの着用期間もあと2日、家事の一切を引き受けるのも後2日。

あと、合格菓子の差し入れもあと2日。

あれ実は結構痛い。

2月に入った頃からすでに小町はあまり夜遅くまで勉強はしていない。

入試も間近という時期までくれば後は体調管理のほうが重要。

起きる時間、寝る時間を普段通りに戻し、試験開始のには十分に頭が働く状態になるようにするのだ。

だが夜食のお菓子だけはしっかり要求してくる。

台詞内改行と常時age進行なのが気になる
あと単純に読みづらい

2月に入ってから買ったお菓子の金額はすでに五千円を超えた。

親父のホワイトデーのお返し分を超えてる。

スカラシップの不正蓄財をしてなければ小遣い全部飛んでるんだけど、これ。

「お兄ちゃん、あれは合格祈願のお菓子なの。発表があるまで食べ続けないとご利益がないんだよ。」等と言っていたが、

そもそもあんなもんご利益があるような有難いもんじゃない。

屁理屈を並べて打ち切りを打診したら、不思議とすんなり折れてくれた。

ただ試験終了までは貢ぎ続けないといけないらしい。

まあ明日は本命の試験だ。財布にもまだ多少の余裕はある。今日明日は小町の好きなモノを買って帰ろう。

でも合格菓子って別の意味でありがたいよね。バレンタインデーに男がまわり気にせず買えるもの。

ここ数週間は小町より早く起き、予めリビングを暖房で温めてから朝食の準備をする。

部屋が暖まり、ほとんどの準備が済んでからゆっくり小町を起こす。

俺のスマホは、以前は俺にとって最重要だった目覚し機能を遺憾なく発揮している。

よって小町のお兄ちゃん時計が狂うことは絶対にない。

朝食の用意があらかた終わったところで小町を起こしに行く。

ノックをして声をかけてから扉を開けると、小町の勉強机の上リボンのかかった小さな箱が2つ置いてあるのに気がついた。

なんだあんなこと言ってやっぱりくれるんじゃないか。うん、ポイント高いぞ小町。

「お兄ちゃん、おはよー。」

「ああ、おはよ。もうすぐできる。顔洗ってこいよ。」

「はーい。」

今日はあの約束がある。

朝からちょっと緊張気味だったが、心が軽くなった気がする。

なんだかんだ言ってもやはり小町から貰えるのは嬉しいのだ。

>>84
なれてなくてごめんよおー

朝食を終えて出かける準備をする。

「マスクとカイロ出しておいたから。休み時間にはうがいしろよ。帰りはまっすぐ」

「お兄ちゃん。わかってるから早く行きなよ。最近毎日毎日おかーさんみたいだよ。」

最近毎日このやりとりをしている。

いい加減うんざりされているのはわかるんだが、心配なんだから仕方ないだろう。

あと、おかーさんとかやめて。川崎のこと笑えないな。

「そうだ、お兄ちゃん、今日は何の日かしってるよね?」

「もちろん、バレンタインデーだな。」

「おー、とぼけない、エライッ。進歩だねお兄ちゃん。捻くれた屁理屈聞かされてたのが去年のことのようだよ。」

「いや実際去年だろ。」

「じゃあ小町との約束も忘れてないね。帰ったら今日のことちゃんと聞かせてね。」

「それ約束じゃなくてお前が一方的に決めたよな。」

「細かいなー、お兄ちゃん。嫌なら雪乃さんと結衣さんに聞くよ。」

「話すからマジでやめて。」

「よろしい。じゃ、行って来まーす。」

「え、ちょっと小町ちゃん、お兄ちゃんにチョコくれないの?」

「なにいってんの?お兄ちゃん、そっちは覚えてないのー。今年はあげないって言ったよね。」

「え?」

「ハイ、じゃあ、お兄ちゃんも早く出なよ。」

え、あれ俺のじゃないの?

なに、あのチョコレート俺のじゃないの?スゲー気になるんだけど。

そういや2つとも同じだったような。

お兄ちゃん専用チョコが無かったよね。フルアーマー的な。

一つは親父としてももう一個どうするの?

机の上置いてたけど、まさか学校持っていったんじゃないよね。

クラスの男子にあげたりしないよね。

今日はこんなこと考えてる場合じゃないんだが気になって仕方がない。

そうだ、自分チョコだ。なんかそんなのもあるって聞いた。うん。

これ以上のことは帰りに考えよう。

一つは親父、一つは小町の分と勝手に結論付けて俺は校門をくぐった。

教室に入ると、予想通り葉山のまわりには人だかりが合った。

いつものメンツとは別の女子も混じっているようだ。

去年の事を知ってるわけではないのだが、多分昨年よりは減るのではないだろうかと思う。

あいつはマラソン大会の時、表彰式で三浦と一色の名を呼んだ。

おそらく生徒の中では、あれで本命はあの二人のどちらかに絞られたと思われているのでは無いだろうか。

いま葉山のまわりにいるのは、葉山をアイドル視するただのファンだに過ぎないのだろう。

「おはようヒッキー。」

ぼんやりと葉山たちの方を見ていると背後から声をかけられた。

由比ヶ浜だ。今登校してきたらしい。なぜかいつもの訳の分からない挨拶じゃない。

「うす。」

「ヒッキー、今日放課後ね。」

由比ヶ浜はにかんだような笑顔でそれだけ言って葉山達の和の方へ向かった。

「優美子やっはろー、隼人君も戸部っちもやっはろー。」

由比ヶ浜は早速チョコレートを配り始めた。

戸部はいつもどおりのテンションを保とうとしているようだが、俺から見ても明らかにそわそわしているのがわかる。

まだ登校していない海老名さんを気にしているのだろう。

うん、今はわかるよ戸部。

もうそういうのを滑稽だとは思えない。

俺も由比ヶ浜を見ていてなんか面白く無いもんな。

気にすることはない。由比ヶ浜はこういうイベントははずさない。

さて、俺の用事はもう時間が決まっている。

ホームルームまでもう少しある。

いつもどおり机に突っ伏した。

昼休み、外で昼食を済ませて教室に戻る。

俺のマスク着用期間は明後日までだ。

それで小町の試験は終わる。

川崎はあれ以来毎日マスクをしている。

大志は総北の2次試験を受ける事ができるそうだ。

翌週にお礼を言われた。

あいつは意外にそういうとこはしっかりしている。

スカラシップの時も礼を言われたっけか。

実質俺何もしてないけど。

2次試験は少しまだ先だ。あいつはまだしばらくマスクは外せないんだろう。

女子高生って花粉症ならともかくマスクなんて嫌がるもんだよな。

実際クラスでマスクつけてんの川崎だけだし。

家ではホントに良いお姉ちゃんなんだろう。妹の前ではカーチャンでもあるみたいだけど。

でもお前そのマスク似合いすぎ。ほら族とかヤンキーとかそういうのつけてるよね。

まわりを伺うようにキョロキョロとしている川崎と目が合った。

変なこと考えてたから半笑いのような顔をしてるのが自分でもわかる。

やべ、慌てて目をそらそうとしたが、先に川崎が反対側を向いてしまった。

あ、マスクしてたから表情は見えてないか。

マスクって捻ねたやつには結構便利かも。

「葉山せんぱーい。」

席に戻ると背後から一色の声が聞こえてきた。

うわぁ、思わず机に突っ伏して見ないふり。

一色の声がぼんやりと聞こえる。

予想通り葉山にチョコレートを渡しているようだ。

おそらく三浦はまたイライラした顔をしてるんだろう。

なだめ役のはずの由比ヶ浜は、今日はまだ戻っていない。

海老名超頑張れ。

アイツほんとに俺にまでくれる気なのか。いや無いなら無いでいいけど。

というかなにお前、なんでまた教室に来てんだ。

葉山になら放課後部活で渡せばいいだろ。

俺のもあるなら頼むから放課後にしてくれ。

あ、いや放課後はマズイ。今日はあの約束がある。

一色には悪いが今日は部室には来てほしくない。

それにしても、くれるのかどうかもわからないってのに受け取り方を考えている自分を滑稽だと思う。

由比ヶ浜の言葉を思い出す。

どれだけ滑稽でも今回はもらうことを前提に対処を考えておかなくてはならない。

あ、いやそうじゃない。そういう考え方をしてはいけないと言われたのだ。

「そうだ、いろは。悪いんだけど今日は部活の方に出てもらえないかな。ちょっと人手がいるんだ。」

「はい。今日は生徒会はないんでそのつもりですよ。あ、だったらー」

会話が途切れたのがわかる。嫌な予感しかしない。

「せーんぱーい。」クラス中に聞こえる声だ。

軽く耳を掴まれる。

「なーに寝たふりしてるんですか先輩。」

前にもあったよね、このやりとり。

「声かけるなら、せめてあまり目立たないようにしてくれ。」

「またですかソレ、往生際悪いですよ先輩。」

しらっとした目を向けた一色だがすぐにニコリと笑った。

「ま、いいや。はい先輩にも。」

とチョコレートを両手で差し出した。

円形の箱に色とりどりの花の包装、素直に一色らしい可愛いものだと思った。

「あ、ああサンキュー。」

一瞬きょとんとした顔をして一色がこう返した。

「あれ、ふつーに受け取るんですね。先輩だからほら、なんかこう」

「なんだよ、くれないの?」

「いいんですか、ほんとーにガッツリ働いてもらいますからね。あ、ホワイトデーもちゃんと頂きますから。」

「ああ、まあ、ソレはなんか考えとくから、仕事の方はお手柔らかに頼みたい」

「はぁ、なんか余裕があってつまんないですね。」

「は?」

「いえ、じゃあ早速、来週卒業式の打ち合わせがあるんですけどー。」

「そんなもん手伝いがいるような行事じゃないだろ。毎年テンプレ通り進めりゃいいだけだ。いくらでも資料のこってるだろうが。」

「いやーほら送辞とかやらないといけないですし、先輩文章考えるの得意でしょ。」

「そういう堅いのは雪ノ下の方が向いてるぞ」

「いやー、雪ノ下先輩は、ほら、そういう物は自分でやるべきよ、とか言いそうじゃないですか。」

まあ間違いなく言うだろうけどな

「そりゃはじめから丸投げだからだ。雑でもいいからまず自分でやった上でなら、アイツは真剣に相談に乗ってくれるぞ」

少し間が空く。会話が途切れたかと思ったら、一色が少し身を乗り出して顔を近づけてきた。

「な、なんだよ。」

一色は数秒ジッと俺の目を見た後、元の位置に戻って言った。

「そうかもしれませんけどー・・・。言い方キツイですよね。相当。」

「そだな。」

お互いにクスリと笑う。お、いい感じかも。このままやり過ごせるかな?

と思ったが、そこは一色のことだ。やはりそのまま見逃してはもらえない。

「でも、やっぱり先輩にお願いします。」

一色はスマホを見せながらニヤリと笑い、身を翻して葉山グループの方に戻っていった。

「あ、そ。」

ほんとに携帯変えた方がいいかもな。

「はい、戸部先輩にも。」

「いろはす、俺にもくれんのー、ていうか俺ヒキタニくんより後ってひどくね」

「卒業式、戸部先輩も手伝ってくれたら来年は一番にあげますよー。」

「えーそれ、葉山くんの方が向いてね」

「いえ、主に力仕事の方をお願いしたいので。」

葉山グループの皆が乾いた笑いをしていた。

一色は徐々に自分のキャラを演じる機会が少なくなってきていると感じる。

本当の、素の自分で行くと決めたようだ。

葉山の趣味はわからんが、やっぱり俺はそっちのほうが可愛いと思う。

思わず笑みが溢れるがこういう時マスクは便利だ。表情がバレない。

戸部へのチョコレートも四角の箱に地味な色のリボンをかけた、事務的とでもいうかはっきりと義理と分かるも のだ。

さっきの一色とのやりとりもある。あれなら戸部も海老名さんの前でも気楽に受け取れるだろう。

ふと葉山の手元の箱に目が止まった。その箱は包み紙は違うが俺へのものと同じ物のように見えた。

いつまでもガン見してるのも変だ。

また寝た振りでもしてようと、椅子に深くかけ正面に体を戻すと、真正面に川崎が立っていた。

マスクを耳にかけたまま顎までおろして、少しナナメを向いている。

「なんか用か?」

「な、なあ、あんたって意外とモテんの?」

「なわけ無いだろ。」

「へ、へえー」

話を切って、机に伏せようと視線を落としたところで、ふと朝のことを思い出した。

「なあ川崎、バレンタインのことなんだが。」

「なっ、何!」

川崎は驚いた声を上げた。

「お前の弟、小町からチョコ貰ったりしてる?」

慌てたような表情が、普段のキツイ目の表情に、そして今度は呆れたような顔に変わる。忙しいなお前。

「あんた、そういう事、姉に探り入れるとかサイテーだかんね。だいたい、だったら何なの。」

「回収しに行く。」

怖い目できつい言葉が返ってくると思っていたが、川崎は心底呆れたような顔でため息を付き、手の甲を額に当 てるようなポーズを取った。

そういう仕草なんとなく雪ノ下に似てるよな、こいつも結構キツイし。

そんなことを考えていると、目の前に川崎の手が差し出された。

「はい、な、なんていうの、その、大志の件のお礼というか。そんな感じ。」

「お前ってこういう事するんだな?」

言い終わってちょっと失礼だったかもしれ無いと思ったが、俺の中での印象はそうなのだから仕方がない。

が、返ってきた言葉にはそれを避難する声はなかった。

「な、だからただのお礼つっ・・、べ、別に何もいいし、ほら、マスクとか・・・願書とか色々貰ったし。」

なんか色々言葉が足りてないようだが、そこは口数の少ないボッチ同士だ。

足らない単語を勝手に頭のなかで補完しコミニュケーションが成立する。

マスクはもちろん、願書を取り寄せるのも金がかかる。そして大体の金額も川崎は把握してるだろう。

その返礼なのでお返しはいらないということだろう。実際こいつはこれで意外に礼儀正しい。

でもこれは今日、この日に渡されたものだ。別にこいつに変な期待をしてるわけじゃないがちゃんと対応しないとな、由比ヶ浜。

「いや、さすがにそういうわけにはいかないだろ。ありがたく受け取っとくけどまあなんか返すよ」

「あ、ああ、ありがと。じゃあ」

いや、お礼言うのこっちだろ。

渡された箱を改めて見ると、やたらと可愛い模様の包みだった。

川崎のキャラクターに合ってないような気がする。

川崎を見ようと顔をあげようとして、また思い出したことが合った。

しまった。大志の事話題に出すならこっちを先にすべきだったな。タイミングを外したがそれでも言っておいた ほうがいいだろう。

「そうだ川崎、受かるといいな。」

「あんたのトコもね。」

やっぱりボッチ同士だ。少ない言葉で意思疎通ができる。

それにしてもすごく優しい笑顔で言われてしまった。

案外川崎には、ああいう可愛い物は似合ってるのかもしれない。

川崎が背を向けたところで予鈴がなった。

「先輩、先輩」

葉山に挨拶をして、教室を出て行くのかと思ってた一色がこっちへ来たらしい。

後ろから指でちょんちょんと肩を叩かれ呼ばれる。

「何だ、もう予鈴なってるぞ。」

「さっきの人とかとは普通に話してません?」

「?」

さっきの人とは川崎のことを指しているのだろうが意味がわからなかった。

「ほら、こないだ迷惑をかけるのがナントカとか。」

「あー、あいつもまあ、ぼっち・・・みたいなもんだからな。」

最近は海老名さんとは仲いいけどね。三浦とは仲悪いみたいだが、

実は三浦は可愛い・・・ところもあることがわかった。陰湿なことをするやつじゃない。

2年のはじめの頃、由比ヶ浜を問い詰めたようなことも、もうしないだろう。

それに川崎は強いからなー。カースト2位とは言え相模程度じゃ川崎にダメージ与えるのは無理だろう。

小町と大志が入学したら、下級生の兄妹をもつ同士、距離が近づくこともあるのかもしれない。

「はーーあ」

そんなことを考えていると、一色の大きなため息が聞こえた。

そのまま後ろを向いて出て行ってしまう。

おい、俺には挨拶もなしかよ。まあいいけど。

前に向き直ると川崎がくれたチョコレートを出したままだった。

由比ヶ浜が戻ってくる前に仕舞ってしまおう。

眠いのでまた明日来ます。見ててくれた方ありがとうございました。

>>110

乙です

>>104
こういうとき、「なあ」じゃなくて「ねえ」って言うのが川崎だから

乙!
『。』が多く感じた

>>113
たかが二次創作に原作の押し付けは止めた方がいい

>>115
だめだなんだこいつ笑ったwwwwwwww

台詞内の。とage進行を突っ込まれてからのsaga進行がすごい気になったけど乙

sageじゃなくてsaga入れるとNGワード回避できる

>>117
たかが二次創作に原作の押し付けは止めた方がいい

ID変わりましたが1です

>>113
ごめん
アニメの「ゆきのんに勝つよ」で続きが気になり、ごく最近原作読んだ新参です。
何度も読み返して検証してる余裕がないっす
八幡の口調も変なのわかってるので、SSということで脳内補完でお願いします
昨日の時点で気づいたけど、由比ヶ浜に一回戸部くんって呼ばせてるし


再開します

ショートホームルームが終わり平塚先生がゆっくりと教室を出て行くといつもの様に教室はガヤガヤと騒ぎ出す

いそいそと片付けを済ませた由比ヶ浜は、椅子を引いて立ち上がりその場で俺を呼んだ」

「じゃあヒッキー、先部室行くからちょっと遅れてきてね」

「お前教室でっ、声でかっ・・」慌てて注意をうながすように視線を向けて小声でつたえようとした

ゆっくりとこちらへ近づいて俺の前に立った由比ヶ浜は今度は少し小さい声で言った

「そういう難しいのはもういいかなって。もっと簡単に行こうって決めたから・・。じゃ、先言ってる」

「わ、分かった。あとで行く」

さっきのは絶対教室中に聞こえてだろ。これ絶対目立ってる。クラスのやつ絶対こっち見てる

奇異や嫌悪の目で見られる事には慣れている俺だが、こういう注目のされ方にはまるで耐性がない

湯を沸かして紅茶の準備をするなら、10分もあればいいだろう

早々に教室を立ち去って時間を潰そう。そうするといつものアレだなと考えたその時、

「そうだヒッキー。お茶入れるし、甘いコーヒーとか飲んじゃダメだからね」

由比ヶ浜に止められた

だから声大きいって

鞄を肩にかけて早足で廊下に出ると少し離れたところで平塚先生が窓側にもたれかかってこっちを見ていた

楽しそうな顔をしてこっちを見ている。慌てて目を逸らしてしまった

ていうか先生、誰かチョコあげる相手いないんすか。いや声には出さないけど

振り返って挨拶でもしようかと考えたがやめた

捕まったらあの人の話10分じゃ済まないからな

できれば一人になりたいと思った

さて、どこで時間を潰そう。

部室に行くといつもどおりの声で迎えられた。

机の上に箱が置かれている。

改まって物を送るような深刻さは全くない。

それは由比ヶ浜が俺と雪ノ下を無理やり連れ出すパーティーのような雰囲気。

いつもの席につくと由比ヶ浜がお菓子の箱を開けた

「ハイ、じゃーん、ゆきのんと一緒に作ったんだよ。ヒッキー、これなんだと思う?」

中にあったのはケーキだった

少し小さめのホール。全面をチョコレートで覆ってある

余計な装飾は無い。チョコの表面はとても滑らかに仕上げられている

ごまかしの効かないシンプルなものだからこそ、そのままで美しく完成されているように感じる

まるでプロの職人が作った物のようだ。これは雪ノ下の仕事だろう

「チョコレートケーキじゃないのか?」

「あなたの知識の量は評価しているのだけどやはり偏っているのね。大体チョコレートを使わないものを作ると思う?」

「ヒッキー、大雑把すぎ。」

「まあ、間違ってはいないのだけれど、外観だけを見てならば有名所ではザッハトルテとか、そう推測ができると 思うのだけれど。」

「ザッハトルテって何だ?」

「チョコレートケーキの王様と言われるお菓子よ。元はオーストリアのお菓子ね。今は決して珍しいものではな いと思うのだけど?」

やっぱりチョコレートケーキなんじゃねーか

「でも本当は違うんだよねー、ゆきのん」

「ええ、今切り分けるわ」

切られたケーキの切り口を見て驚いた

なんと断面がチェック柄になっている

本当にすごい。こんなもの素人が作れるの?と驚いた顔をしていると雪ノ下が楽しそうに笑う

「あら、これも知らない?サンセバスチャンというの」

「フランスの街の名前なんだよねー」

「由比ヶ浜さん、一度説明したでしょう。スペインの街の名前よ。切り口の市松模様はその街の石畳を模したものらしい わ」

「あ、そうそう、それそれ。」

お前スペイン好きだな。千葉県民なのに。パエリアとかうまかったけど

「ハァ。ところで物知りの比企谷くんは、スペイン語で”サン”と言うのは一般的には”セント”、日本では” 聖”と訳されるのは知っているわよね。」

「それくらいは。」

「聖人の名前やそれに由来する祝祭日、教会建築などでもよく見られるかしら。」

由比ヶ浜がニヤニヤしている。

「その街の名前もそのまま聖セバスチャンという聖人の名前に由来するのだけど・・・」

雪ノ下が言いよどむ

もともと持って回った言い方をするやつであるが、一体なんの話がしたいのかわからない

さっきまでもそうだったが、こいつは俺の知らない知識を披露するとき勝ち誇ったよううな嬉しそうな声ではなすはずのだ

雪ノ下は困ったような少し赤い顔で由比ヶ浜をみる

由比ヶ浜はニコニコしながら両手のひらを雪ノ下に向けた

あの仕草はお前から言え、ということだろうか?

「じ、じゃあ、コホン、聖セバスチャンは・・・その、ど、同性愛の守護聖人なのよ。」

戸塚か、戸塚のことか、フリペの時、写真撮りまくったけどさ。部屋に飾ってあるのバレてないよね

「そ、その・・・・」

また言いよどむ。

「・・・・ハヤ・・ハチと言うのは賛ど・・、関心できないわね。」

由比ヶ浜を見ると、プイと顔を反らしやがった。

お前か、お前が教えたのか。ほんとにやめて

ユキペディアにそっちの語彙が増えたらどうする

「ま、まあ、ハヤ・・、いえ、そういうのは知らなかったのだけれど、そうではなくて」

続きがあるらしい。

表情が変わる。あ、こないだの顔だ

イタズラっぽいというのだろうか?あまり雪ノ下が見せない顔

最近原作読んでこんだけ書けるとかすげーじゃん

「そして聖セバスチャンはね、隠し事がバレて矢で射られて殺されかけたそうよ。」

「その時は一命を取り留めたのだけれど、その後また、今度は棍棒で撲殺された・・ということらしいわ。」

ニッコリと笑う雪ノ下。その笑顔がちょっと怖い

由比ヶ浜の方に目をやるとこっちもニヤリと笑った

多分背中の汗がすごいことになっているはずだ

何もかもお見通しよと、そういうことなのだろうか

俺はどんな顔をしていたのだろうか?

それでもその二人の表情はとても魅力的だった

だれかハチハヤ派ゆきのんが、ハヤハチ派海老を論破して泣かせるSS書いてくれ
逆でも良しww

「今お茶を入れるわ。かなり甘いはずだから今日はコーヒーにしましょう」

二人の手作りのお菓子はとても美味しかった。

バレンタインデーという気は全くしない。

本当にいつものパーティのようだ。おしゃべりにも花が咲く。

俺達はいつもは部室では静かに過ごす。

ときおり由比ヶ浜が思いついたように話を始めることがあるが、半分以上の時間を静かに読書をしている。

部室の中でこれだけ話をしたことは記憶に無いぐらい。

なんでSSの雪乃と結衣って彼女でもないのにさも彼女かのような精神的圧迫かけてくるのがデフォになるんだろうな
ほんと不思議

「と、ところでヒッキー。け、結局いろはちゃんからもらったんだよね」

「あ、ああ。受け取った。昼、見てたのか?」

「あ、や、隼人君から・・」

あのやろう

「そ、それと、沙希ちゃんも・・・。あ、姫菜がその」

海老名さんか、結構黒いんだよな。、多分楽しんでないか?

「あーあれは弟の入試の件で色々、ま大したことしてないんだが何か礼だとかで。」

「へー、ど、どんなのだった・・、あ、いやあ、ちょっと興味がと言うかー、そ、そういうの見せてとかダメだよねー。」

「そ、そうね。あまり褒められたことではないかもしれないけれど、そもそもちゃんと受け取れと言ったのは私たちなのだし、確認ということであれば・・」

「それに一色さんの場合はお礼ということならば私達にも要求する権利はあるわ。」

「もちろん部活動の一環ということであれば対価を求めるようなことはするつもりはないけれど、一色さんが私達の手助けの価値をどれの程度と評価しているのかは知っておきたいところね。」

あーこれ絶対に見せないといけない流れだ。

「あ、こっちは沙希ちゃんのかわいー、手作りじゃないん・・・、あー、なんでもない。」

「ずいぶん可愛らしい柄ね。ラッピングは自分でしているののかしら?」

「え、ゆきのん、そ、そんなのすぐわかるものなの?」

「包装の技術は結構難しい物なのよ。折り目や模様のバランスとか。」

「そ、そうなんだー。じゃこっちがいろはちゃんか」

「派手と言うかすごく目立つ色使いね。一色さんらしいのかしら」

「でも可愛いよ。ほら花とか。何だろこれ?」

「イラストだから何というのも・・・・、スミレ、いやもしかしてパンジーかしら・・・。いえ何でもないわ。」

*135
三角関係もんの定番だろ
原作の続きや、空白期間の補完、完璧にしたって意味ない
妄想書き散らすのがSS

その後話題があの写真の一色とのデートの件に及び、いつになく押しの強い二人の質問に仕方なくすべてを話してしまった

まあ背中から射られて殴り殺されるのはごめんだ。仕方ないだろう

この後小町の尋問が待っているかと思うとちょっと気が重い

それでもとても楽しかった

いつも通りの奉仕部だ

小町の受験が明日でなければ、このまま下校時刻まで部室で過ごしていたい

そんなことを思った

そろそろ俺の帰宅の時間になったというところで

「実はもう一つあるんだー。」といって由比ヶ浜が小さな箱を取り出した

由比ヶ浜は長方形の青いリボンがかかった箱を鞄から取り出した。市販のもののようだ

小振で飾り気のない包装。万年筆が入っていると言われればそう信じそうだ

普通に見れば、たいていの人は義理チョコだと思う、そんな箱だった

深い意味は感じさせない。誰が見てもそんな品だ

「はい、ヒッキー。それとこっちはゆきのんに、友チョコーっ。」

俺がお礼を言う前に、鞄の中からもう一つ箱を取り出す

そっちはハート型だ。こちらのほうが由比ヶ浜らしいと思える

「あ、ありがとう。由比ヶ浜さん。でも私うっかりお返しを用意していなかったわ。そういえば部室で聞いていたのだけど、その、忘れてしまっていて。本当にごめんなさい。」

「そんなの全然いーよ。ゆきのんにはお菓子のレシピいっぱいおしえてもらったし。ケーキすっごく美味しかっ たし」

「じゃあ私、ちょっと用があるから。先に帰るね。ヒッキー、ゆきのんと一緒に鍵お願い」

「あ、由比ヶ浜、その、うまかった。それとコレもありがとう。」

「また明日ね。あヒッキー、小町ちゃん合格するといいね。」

「ああ、ありがとう。伝えとくよ。」

慌てたように教室を出て行く。

もっとちゃんとお礼を言うべきだったのだろうが、タイミングを外されてしまった。

明日言おう。教室で。今日の由比ヶ浜のように、周りの目など気にせずに。

「じゃあそろそろ片付けましょうか。」

雪ノ下が言った。

部室の鍵を返し、雪ノ下と校舎からで出た

普段なら一緒に帰るときでも俺が自転車を取ってくるまで校門近くで待っているのだが、雪ノ下は珍しく自転車置き場までついてくるという。

この中途半端な時間、自転車置場は人気がない

俺は期待している

ケーキで十分に嬉しかったのだが、まだ何かもらえるのではないかと期待してしまう

そう、期待をすることをためらわないと決めたが、こんなに欲張りな期待をするのはまずいだろうか?

帰る用意をした雪ノ下の荷物の中に、普段の通学時はもっていない大きめの紙袋がある

由比ヶ浜はくれたのだ。もしかして・・

ポケットから自転車の鍵を探していると雪ノ下が俺を呼んだ

「あの、比企谷くん、これは私から」

「その、前にも言ったけれどこれまでこういうことをしたことがなかったので・・・、比企谷くんへだけ渡すというのも・・・どう言えばいいのか・・その。」

「だから小町さんの分も用意したの。家に帰ってから二人で開けてくれるかしら。」

雪ノ下は持っていた紙袋をそのまま差し出した。随分大きなもののようだ

「あ、ありがとう」

俺はあの時、雪ノ下に助けられた。

雪ノ下が引いてくれたレール。そこを進めばただ進めばいい。この後のことは何も考えなくてよかった。

それで安心していたはずだったが、自分でも思ってもいない言葉が口から出た

「あー、ええと、お返しって別のじゃダメか?いやあのカフェへは、また別に行くってことで」

雪ノ下は一瞬驚いた顔を見せ、そして微笑みながら言った

「そうね。あなたに任せるわ。楽しみにしてる。じゃあ、また明日。小町さんに頑張ってと伝えて。」

雪ノ下には家でとは言われたのだが、小町の持ち物検査の件もある。先に一度見ておきたい

何より俺が気になって仕方がない

心の中で雪ノ下に謝りながら紙袋を開いた

口をリボンで結んだ透明なラッピングの袋が2つ

中に見えるのは雪ノ下にしては意外だとも思えるの市販のお菓子だった

スティック状の物やビスケットなど、商品自体はどれもコンビニでも売っている定番のもの

だがこの時期にしか店頭に並ばない桜などをあしらった商品、そう合格菓子だ

一度箱や袋からバラしたものを小袋単位でリボンでまとめて、赤やピンクの鮮やかな花束のように飾り付けてある

目にも楽しい。飾りつけも美しくまとまっている。作業自体を思い浮かべると器用な雪ノ下ならではだと思った

それでも雪ノ下のイメージとは合わないような気がする

贈り物の王道とは言えない、サンタの靴に入ったお菓子の詰め合わせ、一回こっきりのインパクトを狙ったアイデア

特別な意味など感じさせない・・・貰ったら楽しい気分になる、そんな贈り物だろう

そう考えていた時に、袋を結んだリボンが目に止まった

ピンク色だ。袋の中のお菓子をまとめたリボンも全てピンク色だ

由比ヶ浜は青のりボン、そして雪ノ下はピンクのリボン

果たして偶然だろうか?俺がクリスマスに二人に送ったシュシュの色だ

二人はこの約一週間の間、毎日会って多くの時間を一緒に過ごしていた

二人はどのような話をしていたのだろうか?

たぶん・・・偶然では無いのだろう

ああ、やはりプレゼントは二人のイメージ通りだ

玄関を入ると、ドアの開閉の音に気がついたのかリビングからドタドタと足音が聞こえてきた

カマクラが出迎えに来た・・・・なわけないよね

「お兄ちゃん、検疫を行います」小町だ

「検疫ってお前、俺が何持って帰ってきたと思ってんの、と言うかお前そんなで明日の試験とか大丈夫なのか?」

比企谷菌ならお前も保有者だからな

「お兄ちゃーん、試験前の妹にそういうこと言うの、小町的にポイント低い。」

しまった。今日は色々あったから俺のお兄ちゃんスイッチがまだ切り替わってなかったようだ

「すまん。無神経だったか。」

「んー、まあもうジタバタしてもしょうがないしねー。それはいいや。それで、ん、ん」

両手を差し出してニコニコしている。どうやら小町的には二人から貰えた事が前提になってるらしい

「あー、まあ二人ともくれた・・。ちゃんと話すからウチの入試終わってからにしない?」

「えー、お兄ちゃん、気になってよけい集中できないよ。ホレホレ」

手を引っ込める気は無いみたいだ

「わかった。話すからせめて飯の後にしよう。暖かいうちに食おうぜ。小町に渡すものもあるし。」

帰りによったスーパーの袋を小町の手の上においた

明日は小町の本命、ウチの高校の入試日だ。メニューはもちろん今日もトンカツだ

スーパーのお惣菜で申し訳ないが、一応揚げたてを買ってきた

「んー、まいいか。後でちゃんと聞かせてね、お兄ちゃん」

「すぐ作る。できたら呼ぶから待ってろ」

着替えに自室に戻りながらちょっとホッとした

できれば一色と川崎に貰ったことは伏せておきたい。いやなんとなくだけど

夕食をすませお茶を飲んでいると、小町はテーブルに手をつき、さあ!と身を乗り出してきた

「さて、ではお兄ちゃん。事情聴取を行います。合わせて証拠物件の提出も要求しまーす」

「あ、ああ。じゃあまず・・」

一週間前の経緯は小町には話していない

そこはボカして部室で食べたケーキのことから話し始めた

例の聖人の由来は決して言えないが・・

「それで、由比ヶ浜からはこれを貰った」

由比ヶ浜からもらったチョコレートをテーブルの上に載せる

「おーお。お兄ちゃん小町は嬉しいよ。お兄ちゃんが小町以外の女の子からチョコを貰える日が来るなんて。うるうる。あ、そだ、記念に写真とっていい?」

「やめろバカ」

「んー、でもなんか結衣さんっぽくないねー。なんか大人っぽいっていうか。本命は手作りの方ってことかなー。ね、お兄ちゃんケーキは写真撮ってない?」

「んなことやるわけ無いだろ」

「えー、小町見たかったなー。ま、いいや。で、雪乃さんからは。早く早く」

「こんなの貰った。同じものを2つな。これは小町の分だ」

「おー、なんかこれも雪乃さんっぽくないような気もするけど、うーん、すっごい綺麗だね。こういううチョコなのに、ちゃんとプレゼントーって思えるというか。うんうん。やっぱり雪乃さんらしいのかなー?」

「でもお兄ちゃん。こういうものなら黙って独り占めしても小町怒んないからね。小町もちょくちょくしてるしー」

そういやコイツ事故の時の由比ヶ浜のお礼も一人で全部喰ってやがったな

「いやそこは俺の分も残しといてね、お兄ちゃんも甘いもの好きだって知ってるよね。」

「ね、本当に小町も貰っていいの?」

「そのために用意してくれたんだから当然だろ。それにほれ」

袋を指さす。メッセージカードが添えてあるのだ。

文字の方を向けて入れてあるので取り出さなくても俺からも読める。というかもう見えてたから知ってる

”小町さんへ

奉仕部で待っています。

雪ノ下雪乃”

短っ、そして敬語、ついでにフルネームだし。な、これ以上ないぐらい雪ノ下だろ小町。

「さっすが雪乃さん!うんやる気出てきた。」

「そうだ、はいお兄ーちゃん。これは小町から」

ひと通り俺の話を聞いた後、小町が簡素な小箱を渡してくれた

朝チラリと見えたものと同じだろう

「あれ今年は中止なんじゃなかったのか?」

「小町がお兄ちゃんにあげないわけ無いじゃない。本気にしてたの」

「ああ、じゃあども。」

「感謝も感激も感動もなーーんもないなー。やっぱりあんな素敵な人達から貰うようになったら変わっちゃうのかー。小町悲しい」

「あざとい。これって朝持ってたやつだよな?」

「そだよ。ってなんで知ってんのおにーちゃん?」

「あ、ちがうぞ。朝起こしにいった時にだな。その、2つあったよな。学校で誰かにあげたのか?」

「あー、だからお兄ちゃん、そういう詮索はキモイ」

朝も言われたなー。昼もに川崎に似たようなこと言われたなー。これって気にしてたらほんとに変なの?」

「まあ学校ではないよー。ほら、この時期微妙だし」

たしか初詣の時もそんなこと言ってたな。受験生は色いろあるんだろう

ただでさえ小町は同じ中学の奴らが少ない学校狙ってるわけだし

「もうひとつはお父さんの分」

なるほど、って、え?

「親父と同じ物って、お兄ちゃんちょっとショックなんだけど」

「お兄ちゃん酷いなー。あのねお兄ちゃん、お父さんはお母さんや会社の人からも義理チョコ貰ってるの」

「お兄ちゃんは毎年小町からしかもらってなかったでしょ。今年は雪乃さんや結衣さんからもらえたし、それにこれからだって絶対くれる人いるって」

「んー、まだまだ駄目なとこもあるけどー、お兄ちゃんの不器用だけど良いところわかってくれる人、今はお兄ちゃんのまわりにいっぱいいると思う」

「だからー、来年からもお兄ちゃんとお父さんのチョコは同じものになりまーす」

俺を褒めた時の言葉には珍しく、最後にポイント高いとは言わなかった

「だからホワイトデーも、適当ー・・はヤダけど安いものでいいからね。いっぱい貰うようになるとお返しにもお金かかるの」

「義理チョコだって気持ちがこもってる場合もあるんだよ。くれた人にはちゃんとお返しをすること。小町のことは一番最後でいいからね。あ、今の小町的にポイント高い」

あ、やっぱり言いやがった

「だからね、お兄ちゃん、雪乃さんと結衣さんへのお返しの事、ちゃんと考えてね。今回はどちらか一人に選ぶの手伝ってもらうとか出来ないからね。あ、もちろん小町も手伝わない」

「一人でちゃんと考えるよ」

一瞬意外そうな顔をした小町は、一言だけ返した

「うん」

小町は嬉しそうにうなずいた

「じゃあ小町は部屋に戻るね」

「ああ、今日は早く寝ろよ」

「うん、ちょっとだけ英単語見なおしとく。雪乃さんのお菓子も食べたいしー」

リビングを出ようとした小町は振り返りこういった

「お兄ちゃん。、小町頑張るからね」

「ん、俺も待ってる」

さて、とりあえずホワイトデーの件は棚上げだ

最近多いなー。これで最後にする。うん、2年生では最後にする

明日と明後日は小町の合格だけを願って過ごそう

雪ノ下と由比ヶ浜と俺と、そして小町。あの部室に4人でいる情景を思い浮かべる

あれ、今俺カッコつけてる、と言うかかっこいいよな。多分スゲーかっこいい顔してるはず・・

ぼっちって一人でいるときカッコつけるよなー、などと考えているとドタドタと足音が近づいてきた

「そだ、お兄ちゃん、ホワイトデーの朝も持ち物検査するからねー。そのつもりで」

それだけ言ってまたリビングを出て行った

さっきのカッコ良い俺台無しだよ。一色と川崎のチョコの件どうしよう

俺は自室に戻った

朝から緊張して、騒がしくて、そして楽しかった一日もあともう少し

学校を出た時から、俺はそわそわと落ち着かない思いをしている

小町への雪ノ下のチョコレートにはメッセージカードが添えられていた

もちろん俺への物にも。俺のは2つ折りになっている。取り出さなくては読むことは出来ない

自分への物にもメッセージがあったのだ。気づかないはずがない。小町あえて触れなかったのだろう。

それに由比ヶ浜の物もまだ包みを解いてはいない

三人の関係を大きく変えるような事は書かれていないだろう

それでも・・・

椅子に座り、深呼吸をして、そして俺は二人のプレゼントへ手を伸ばした



お付き合いありがとうございました
SSどころかスレ立て自体始めてでしたので不手際申し訳ないです

八幡普通の男の子でオレタタENDってことで
それでは

途中までは面白かったんだけどなあ…
ぶっちゃけ奉仕部の二人いらなかったよねこれ

ホワイトデー編ももちろん書くよな?
当たり前だよなぁ!?

>>160
読者様ちっす

>>135
書き手のの願望じゃね
あとザマァしたい時にその傾向が特にある感じ

えー

>>160
うわぁ…

>>163
お前どこのスレでも日付変わってから自分にレスしてるよな

>>166
ドヤ顔で俺にレスしてる所悪いがそれ俺じゃないけど…
何?ひょとしてよく見るやりとりなのか?これ

>>135は俺だな
なんでうわあ…とかあったま悪そうに煽られてんのか知らないけど

いろはと沙希のチョコは小町には隠したのか

>>168
いや、だってこれ奉仕部の微妙な三人の関係をメインに書いてるじゃん?
そのメインの話を最後になっていらないって
このSSのメイン所全否定じゃん
何言ってんだコイツ?ともなる

乙!
これからもがんばってかいてくれよな(ニッコリ)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月02日 (火) 21:17:20   ID: 9miXd58Z

おもしろいよ!
続きおなしゃす!!

2 :  SS好きの774さん   2015年06月26日 (金) 17:53:01   ID: AjaQghhx

誤字があるよ、後、誰が喋ってるか分からないから名前をつけて欲しいです

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